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明細書 :シロール化合物とその製造方法およびそれを用いた有機電界発光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5159551号 (P5159551)
公開番号 特開2009-108053 (P2009-108053A)
登録日 平成24年12月21日(2012.12.21)
発行日 平成25年3月6日(2013.3.6)
公開日 平成21年5月21日(2009.5.21)
発明の名称または考案の名称 シロール化合物とその製造方法およびそれを用いた有機電界発光素子
国際特許分類 C07F   7/08        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
C07F   7/10        (2006.01)
FI C07F 7/08 CSPR
H05B 33/14 B
H05B 33/22 B
C09K 11/06 660
C09K 11/06 690
C07F 7/10 Q
請求項の数または発明の数 10
全頁数 31
出願番号 特願2008-264653 (P2008-264653)
出願日 平成20年10月10日(2008.10.10)
優先権出願番号 2007265948
優先日 平成19年10月11日(2007.10.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年3月30日(2010.3.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】中村 栄一
【氏名】佐藤 佳晴
【氏名】辻 勇人
【氏名】イリエシュ・ラウレアン
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】松澤 優子
参考文献・文献 特開平09-194487(JP,A)
J. Am. Chem. Soc.,2005年,Vol.127,p.1638-1639
Journal of Organometallic Chemistry,2005年,Vol.690,p.5365-5377
Organic Letters,2004年,Vol.6, No.21,p.3707-3710
Tetrahedron,1994年,Vol.50, No.8,p.2439-2458
調査した分野 C07F 7/08
C07F 7/10
C09K 11/06
H01L 51/50
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(I)で表されるシロール化合物。
【化1】
JP0005159551B2_000040t.gif
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示し、R1とR2は互いに結合して飽和または不飽和の環を形成していてもよい。R3は、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。a,b,c,dは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子を示す。Arはn価の芳香族炭化水素環残基または芳香族複素環残基を示し、nは2~6の整数を示す。)
【請求項2】
下記一般式(II)で表されるシロール化合物。
【化2】
JP0005159551B2_000041t.gif
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示し、R1とR2は互いに結合して飽和または不飽和の環を形成していてもよい。R3は、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。a,b,c,dは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子を示す。Mは高周期14族の原子を示し、Yはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルアミノ基、またはアリール基を示し、mはMの価数から1を引いた整数を示す。)
【請求項3】
請求項2記載のシロール化合物の製造方法であって、下記一般式(III)で表わされるアセチレン誘導体と有機スタンニルリチウム化合物および有機シリルリチウム化合物から選ばれるいずれかの高周期14族アニオン種とを反応させることを特徴とするシロール化合物の製造方法。
【化3】
JP0005159551B2_000042t.gif
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示し、R1とR2は互いに結合して飽和または不飽和の環を形成していてもよい。R3は、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。a,b,c,dは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子を示す。)
【請求項4】
請求項2記載のシロール化合物と、下記一般式(IV)で表わされる芳香族ハロゲン化物を反応させて前記一般式(I)で表されるシロール化合物を得ることを特徴とするシロール化合物の製造方法。
【化4】
JP0005159551B2_000043t.gif
(式中、Arはn価の芳香族炭化水素環残基もしくは芳香族複素環残基を示し、nは1~6の整数を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
【請求項5】
下記一般式(V)で表されるシロール化合物。
【化5】
JP0005159551B2_000044t.gif
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示し、R1とR2は互いに結合して飽和または不飽和の環を形成していてもよい。R3は、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。a,b,c,dは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子を示す。)
【請求項6】
請求項5記載のシロール化合物と、下記一般式(VI)で表わされる芳香族化合物とを反応させて前記一般式(I)で表されるシロール化合物を得ることを特徴とするシロール化合物の製造方法。
【化6】
JP0005159551B2_000045t.gif
(式中、Arはn価の芳香族炭化水素環残基もしくは芳香族複素環残基を示し、nは1~6の整数を示し、Zはそれぞれ独立にZnX、MgX、BR、SnR、またはSiR(ここでXはハロゲン原子を示し、Rはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルアミノ基、またはアリール基を示す。)を示す。)
【請求項7】
基板上に、陽極、陰極、および該両極間に存在する発光層を有する有機電界発光素子であって、請求項1記載のシロール化合物を含有する層が設けられていることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項8】
シロール化合物を含有する層は、陰極と発光層との間に設けられた電子輸送層であることを特徴とする請求項7記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
シロール化合物を含有する層は、発光層と電子輸送層との間に設けられた正孔阻止層であることを特徴とする請求項7記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
シロール化合物を含有する層は、発光層であることを特徴とする請求項7記載の有機電界発光素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シロール化合物とその製造方法およびそれを用いた有機電界発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、電界を印加することにより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子との再結合エネルギーによって蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。
【0003】
イーストマン・コダック社のC.W. Tangらによって積層型素子による低電圧駆動の有機電界発光素子に関する報告(非特許文献1)がなされて以来、有機材料を構成材料とする有機電界発光素子に関する研究が盛んに行われている。Tangらは、トリス(8-ヒドロキシキノリノールアルミニウム)を発光層に、トリフェニルジアミン誘導体を正孔輸送層に用いている。積層構造の利点としては、発光層への正孔の注入効率を高めること、陰極より注入された電子をブロックして再結合により生成する励起子の生成効率を高めること、発光層内で生成した励起子を閉じこめることなどが挙げられる。
【0004】
有機電界発光素子の素子構造としては、正孔輸送(注入)層、電子輸送性発光層の2層型、または正孔輸送(注入)層、発光層、電子輸送(注入)層の3層型等がよく知られている。こうした積層型構造素子では、注入された正孔と電子の再結合効率を高めるため、素子構造や形成方法の工夫がなされている。材料に関しても様々な化合物が有機電界発光素子用材料として開発されている。
【0005】
正孔輸送材料としてはスターバースト分子である4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミンやN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン等のトリフェニルアミン誘導体や芳香族ジアミン誘導体がよく知られている(特許文献1~5参照)。
【0006】
また、発光材料としてはトリス(8-キノリノラート)アルミニウム錯体等のキレート錯体、ビススチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンゾチオフェン誘導体等の発光材料が知られており、それらの発光色として青色から赤色までの可視領域の発光が得られることが報告されており、フルカラー表示素子の実現が期待されている(特許文献6~9参照)。
【0007】
電子輸送材料としては、上記に発光材料として例示したトリス(8-キノリノラート)アルミニウム錯体が用いられており、その他、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール化合物(特許文献10参照)等がよく知られている。シロール化合物については素子の低電圧化が報告されているが(非特許文献2,3参照)、電子移動度については2×10-4cm/V・secとまだ低い状態にあり(非特許文献4参照)、耐熱性とともに改善の必要がある。

【特許文献1】特開平8-20771号公報
【特許文献2】特開平8-40995号公報
【特許文献3】特開平8-40997号公報
【特許文献4】特開平8-53397号公報
【特許文献5】特開平8-87122号公報
【特許文献6】特開昭59-194393号公報
【特許文献7】特開平2-247278号公報
【特許文献8】特開平10-340786号公報
【特許文献9】特開2001-196182号公報
【特許文献10】特開平9-194487号公報
【非特許文献1】C.W. TangおよびS.A. VanSlyke:Appl. Phys. Lett.,51巻,913頁,1987年
【非特許文献2】K. Tamaoら:J. Am. Chem. Soc., 118巻,11974頁,1996年
【非特許文献3】S. Tabatakeら:Jpn. J. Appl. Phys., 41巻,6582頁,2002年
【非特許文献4】H. Murataら:Chem. Phys. Lett.,339巻,161頁,2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来提案されているいずれの素子においても、電子輸送材料における各種の点について改良の余地があり、さらなる性能の向上、特に、素子発光効率の向上と動作電圧の低電圧化が求められていた。
【0009】
そこで、本発明は、このような従来の問題点を解消し、素子の効率が高く、素子動作電圧が低く、さらに、薄膜構造の安定性が良く、長期にわたり安定で高い発光特性を得ることができる有機電界発光素子を提供することを課題としている。
【0010】
また本発明は、上記の有機電界発光素子に好適に用いられる新規なシロール化合物と、このようなシロール化合物を得るために有用な中間体ならびにそれらの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
【0012】
<1>下記一般式(I)で表されるシロール化合物。
【0013】
【化7】
JP0005159551B2_000002t.gif

【0014】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示し、R1とR2は互いに結合して飽和または不飽和の環を形成していてもよい。R3は、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。a,b,c,dは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子または窒素原子を示す。Arはn価の芳香族炭化水素環残基または芳香族複素環残基を示し、nは1~6の整数を示す。)
<2>下記一般式(II)で表されるシロール化合物。
【0015】
【化8】
JP0005159551B2_000003t.gif

【0016】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示し、R1とR2は互いに結合して飽和または不飽和の環を形成していてもよい。R3は、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。a,b,c,dは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子または窒素原子を示す。Mはケイ素,ゲルマニウム,スズなどの高周期14族の原子を示し、Yはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルアミノ基、またはアリール基を示し、mはMの価数から1を引いた整数を示す。)
<3>上記<2>のシロール化合物の製造方法であって、下記一般式(III)で表わされるアセチレン誘導体と高周期14族アニオン種とを反応させることを特徴とするシロール化合物の製造方法。
【0017】
【化9】
JP0005159551B2_000004t.gif

【0018】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示し、R1とR2は互いに結合して飽和または不飽和の環を形成していてもよい。R3は、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。a,b,c,dは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子または窒素原子を示す。)
<4>上記<2>のシロール化合物と、下記一般式(IV)で表わされる芳香族ハロゲン化物を反応させて前記一般式(I)で表されるシロール化合物を得ることを特徴とするシロール化合物の製造方法。
【0019】
【化10】
JP0005159551B2_000005t.gif

【0020】
(式中、Arはn価の芳香族炭化水素環残基もしくは芳香族複素環残基を示し、nは1~6の整数を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
<5>下記一般式(V)で表されるシロール化合物。
【0021】
【化11】
JP0005159551B2_000006t.gif

【0022】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示し、R1とR2は互いに結合して飽和または不飽和の環を形成していてもよい。R3は、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。a,b,c,dは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子または窒素原子を示す。)
<6>上記<5>のシロール化合物と、下記一般式(VI)で表わされる芳香族化合物とを反応させて前記一般式(I)で表されるシロール化合物を得ることを特徴とするシロール化合物の製造方法。
【0023】
【化12】
JP0005159551B2_000007t.gif

【0024】
(式中、Arはn価の芳香族炭化水素環残基もしくは芳香族複素環残基を示し、nは1~6の整数を示し、Zはそれぞれ独立にZnX、MgX、BR、SnR、またはSiR(ここでXはハロゲン原子を示し、Rはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルアミノ基、またはアリール基を示す。)を示す。)
<7>基板上に、陽極、陰極、および該両極間に存在する発光層を有する有機電界発光素子であって、上記<1>のシロール化合物を含有する層が設けられていることを特徴とする有機電界発光素子。
【0025】
<8>シロール化合物を含有する層は、陰極と発光層との間に設けられた電子輸送層であることを特徴とする上記<7>の有機電界発光素子。
【0026】
<9>シロール化合物を含有する層は、発光層と電子輸送層との間に設けられた正孔阻止層であることを特徴とする上記<7>の有機電界発光素子。
【0027】
<10>シロール化合物を含有する層は、発光層であることを特徴とする上記<7>の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、有機電界発光素子等に有用な新規なシロール化合物と、このようなシロール化合物を得るために有用な中間体ならびにそれらの製造方法が提供される。
【0029】
本発明に係る有機電界発光素子は、特定のシロール化合物からなる電子輸送層を有しているので、素子の効率が高く、素子動作電圧が低い。さらに、薄膜構造の安定性が向上するため、長期にわたり、安定で高い発光特性を得ることができる。
【0030】
したがって、本発明に係る有機電界発光素子は、フラットパネル・ディスプレイ(たとえばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や、面発光体としての特徴を生かした光源(たとえば、照明,複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源等)、表示板、標識灯などへの応用が考えられ、その技術的価値はきわめて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0032】
一般式(I)のシロール化合物を得るための中間体である一般式(II)、(V)のシロール化合物の合成法と、当該中間体を用いた一般式(I)のシロール化合物の合成法の一例を下記に示す。
【0033】
【化13】
JP0005159551B2_000008t.gif

【0034】
一般式(I)~(III),(V)において、RおよびRが脂肪族炭化水素基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基等の炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルケニル基などが挙げられる。
【0035】
およびR2がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~6の直鎖状または分岐状のものなどが挙げられる。
【0036】
およびR2が芳香族炭化水素環基である場合の具体例としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~14のアリール基などが挙げられる。該芳香族炭化水素環に置換する置換基の具体例としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基等の炭素数6~14のアリール基などが挙げられる。
【0037】
およびR2が芳香族複素環基である場合の具体例としては、ピリジル基、キノリル基などが挙げられる。該芳香族複素環に置換する置換基の具体例としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基等の炭素数6~14のアリール基などが挙げられる。
【0038】
一般式(I)~(III),(V)において、Rが脂肪族炭化水素基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基等の炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルケニル基などが挙げられる。
【0039】
が芳香族炭化水素環基である場合の具体例としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~14のアリール基などが挙げられる。該芳香族炭化水素環に置換する置換基の具体例としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキル基;シアノ基;ニトロ基;フッ素等のハロゲン原子;フェニル基等の炭素数6~14のアリール基などが挙げられる。
【0040】
が芳香族複素環基である場合の具体例としては、ピリジル基、ビピリジル基、ピラジニル基、キノリニル基、キノキサリニル基、トリアジニル基などが挙げられる。該芳香族複素環に置換する置換基の具体例としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキル基;シアノ基;ニトロ基;フッ素等のハロゲン原子;フェニル基等の炭素数6~14のアリール基などが挙げられる。
【0041】
一般式(I)~(III),(V)におけるa,b,c,dの具体例としては、水素原子と結合した炭素原子、置換基を有する炭素原子、窒素原子が挙げられる。炭素原子に置換する置換基の具体例としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキル基;フッ素等のハロゲン原子;シアノ基;フェニル基等の炭素数6~14のアリール基などが挙げられる。また、一般式(I)、(II)、(V)におけるbとcは互いに結合して不飽和環、例えば置換または無置換のシロール環を形成してもよい。例えば、一般式(I)、(II)、(V)において、後述する実施例14のように、b、cの炭素原子と共に不飽和六員環の反対側のシロール部分と対称な構造を形成してもよい。
【0042】
また、一般式(III)においても同様に不飽和六員環の反対側の部分と対称な置換基をb、cに有していてもよい。
【0043】
一般式(I),(IV),(VI)におけるArの具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、1,4-ジシアノベンゼン、1,3,5-トリフルオロベンゼン、ピリジン、2,2'-ビピリジン、ピラジン、キノリン、キノキサリン環、1,3,5-トリアジン、カルバゾール、芳香族チオール環等の残基などが挙げられる。これらの環は必要に応じて置換基を有していてもよく、置換基の具体例としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキル基;フッ素等のハロゲン原子;シアノ基;フェニル基等の炭素数6~14のアリール基などが挙げられる。
【0044】
一般式(I)のシロール化合物は、出発物質として一般式(III)のアセチレン誘導体を用い、スタンニルリチウムなどの高周期14族アニオン種を反応剤として用いることにより、0度から室温という穏和な条件下で、ほぼ定量的に、芳香族環が縮合したシロール骨格形成が可能となる。他の方法と比べた優位点としては、3位にスズなどを有し、水や空気に対して安定で取り扱いが容易な一般式(II)のような中間体を形成することと、この中間体は適切な活性化によりスズなどを他の官能基に変換することが容易であり、さらなる誘導化が可能であることが挙げられる。一般式(II)の中間体を、さらにヨウ素等のハロゲン原子が置換した一般式(IV)の芳香族環化合物とパラジウム触媒の存在下で反応させることにより、目的とするシロール化合物を高収率で得ることができる。なお、一般式(II)におけるMは、ケイ素、ゲルマニウム、スズなどの、高周期14族の4価の原子であり、Yは、アルキル基、アルキルアミノ基、またはアリール基である。これらのアルキル基とアルキルアミノ基としては、炭素数1~6のものが好ましい。
【0045】
本発明の有機電界発光素子は、少なくとも陽極、陰極、および両極間に存在する発光層を有し、電子輸送層、発光層、あるいはこれら両方の層に、一般式(I)のシロール化合物を含有することを特徴としている。
【0046】
本発明においては、平面性の高い分子骨格をもつ一般式(I)のシロール化合物を用いることで電子輸送性が改善され、その結果、素子の発光効率を向上させ、駆動電圧を低下させることができる。
【0047】
一般式(I)のシロール化合物を含有する層は電子輸送性を示し、陰極と発光層との間であればどの場所に形成されていてもよいが、たとえば図1,2に示すように、陰極8と発光層5との間に電子輸送層6として形成することで、当該層による効果を十分に発揮させることができる。
【0048】
また、当該シロール化合物を発光層5に含有させて、発光層5における正孔-電子の再結合バランスを向上させる構成としてもよい。このようにすることで、素子発光効率を改善させることができる。
【0049】
以下に、本発明において用いられる一般式(I)のシロール化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明に用いられるシロール化合物はこれらに限定されるものではない。また、以下においては対称性の良い分子構造のものを主に例示しているが、これらの部分的な構造の組み合わせによる非対称構造のものであってもよい。
【0050】
【化14】
JP0005159551B2_000009t.gif

【0051】
【化15】
JP0005159551B2_000010t.gif

【0052】
本発明では、上記に例示したもの等の一般式(I)で表されるシロール化合物を、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
以下に、上記のシロール化合物を用いた本発明に係る有機電界発光素子について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る有機電界発光素子の第1の実施形態を模式的に示す断面図であり、図2は、本発明に係る有機電界発光素子の第2の実施形態を模式的に示す断面図である。図3は、本発明に係る有機電界発光素子の第3の実施形態を模式的に示す断面図である。これらの図において、符号1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は電子注入層、8は陰極,9は正孔阻止層を示している。
【0054】
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやプラスチックシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合には、ガスバリア性に留意する必要がある。すなわち、基板のガスバリア性が低過ぎると、基板を通過する外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので望ましくない。このため、合成樹脂基板を使用する場合には、少なくとも一方の板面に緻密なシリコン酸化膜等を設ける等の方法により、ガスバリア性を確保するのが望ましい。
【0055】
基板1上には、陽極2が設けられる。陽極2は正孔注入層3への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、あるいは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。
【0056】
陽極2は、たとえばスパッタリング法、真空蒸着法などにより形成することができる。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などを適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することも可能である。さらに、陽極2として導電性高分子を用いる場合には、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成し、あるいは基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することも可能である。陽極2は、異なる物質の積層構造とされていてもよい。
【0057】
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。陽極2に透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とし、この場合、陽極2の厚みは、通常5~1000nm、好ましくは10~500nmである。陽極2が不透明でよい場合には、陽極2は、基板1と同一であってもよい。また、陽極2の上に、異なる導電材料をさらに積層することも可能である。
【0058】
陽極2の上には正孔注入層3が設けられる。正孔注入層3の材料に要求される条件としては、陽極2からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送できることである。そのためには、正孔注入材料のイオン化ポテンシャルと陽極の仕事関数との差が小さいことが要求される。また、可視光の光に対して透明性が高いことも必要である。
【0059】
さらに、正孔注入層3の材料には、陽極2とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定であること、すなわち、融点およびガラス転移温度Tgが高いことが要求される。正孔注入層3の材料の融点は200℃以上が好ましく、ガラス転移温度は85℃以上が好ましい。このような要求を考慮した正孔注入層3の材料としては、たとえばポルフィリン誘導体やフタロシアニン化合物(特開昭63-295695号公報)、スターバースト型芳香族トリアミン(特開平4-308688号公報)等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜(特開平8-31573号公報)や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物(第43回応用物理学関係連合講演会,27a-SY-9,1996年)が挙げられる。
【0060】
正孔注入層3の材料の代表的なものとしては、ポルフィリン化合物およびフタロシアニン化合物が挙げられるが、これらの化合物は中心金属を有していてもよいし、無金属のものであってもよい。フタロシアニン化合物の具体例としては、29H,31H-フタロシアニン、銅(II)フタロシアニン、亜鉛(II)フタロシアニン、チタンフタロシアニンオキシド、銅(II)4,4',4'',4'''-テトラアザ-29H,31H-フタロシアニンなどが挙げられる。
【0061】
この他、正孔注入層3の好ましいものとして、正孔輸送性高分子に電子受容性化合物を混合した系が挙げられる。このような正孔輸送性高分子としては、ポリチオフェン(特開平10-92584号公報)、ポリアニリン、芳香族アミン含有ポリエーテル(特開2000-36390号公報)などが挙げられる。
【0062】
正孔注入層3の薄膜を形成する方法としては、昇華性を有する化合物の場合には真空蒸着法、溶媒に可溶な化合物の場合にはスピンコートやインクジェット等の湿式塗布法、無機物の場合にはさらにスパッタ法、電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法を用いることができる。
【0063】
このようにして形成される正孔注入層3の膜厚は、通常3~200nm、好ましくは10~100nmである。
【0064】
正孔注入層3の上には正孔輸送層4が設けられる。正孔輸送層4の材料は、正孔注入層3からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく発光層5に輸送することができるものであることが望ましい。そのためには、正孔注入材料のイオン化ポテンシャルと正孔輸送材料のイオン化ポテンシャルの差が小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、さらに酸化に対する安定性に優れ、製造時や使用時においてトラップとなる不純物が発生しにくいことが要求される。車載表示用の応用等を考慮した場合には、これらの要求に加えて、素子には耐熱性が要求される。素子の耐熱性を満足するためには、ガラス転移温度(Tg)が85℃以上の材料を用いるのが好ましい。
【0065】
このような正孔輸送材料としては、例えば、4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5-234681号公報)、4,4',4”-トリス(1-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J. Lumin., 72-74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem. Commun., 2175頁、1996年)、2,2',7,7'-テトラキス-(ジフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth. Metals, 91巻、209頁、1997年)等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、各々、混合して用いてもよい。
【0066】
正孔輸送層4は、前記芳香族アミン化合物を塗布法あるいは真空蒸着法により、前記正孔注入層3上に積層することにより形成される。
【0067】
塗布法の場合は、前記芳香族アミン化合物の1種又は2種以上と、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤とを添加し、溶解して塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により正孔注入層3上に塗布し、乾燥して正孔輸送層4を形成する。この場合、バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂はその添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、通常、50質量%以下が好ましい。
【0068】
真空蒸着法の場合には、前記芳香族アミン化合物を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた基板1上の正孔注入層3上に正孔輸送層4を形成させる。
【0069】
正孔輸送層4の膜厚は、通常10~300nm、好ましくは30~100nmである。このような薄い膜を一様に形成するためには、真空蒸着法が好適に用いられる。
【0070】
正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において陰極からの電子を効率よく正孔輸送層4の方向に輸送することができる化合物(電子輸送材料)を用いて形成することができる。
【0071】
このような条件を満たす材料としては、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体(特開昭59-194393号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2-247278号公報)、アントラセン誘導体(特開平8-12600号公報、特開平11-312588号公報)などが挙げられる。これらの材料は、通常は真空蒸着法により正孔輸送層4上に積層される。
【0072】
また、素子の発光効率を向上させるとともに発光色を変える目的で、たとえば、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレーザ用蛍光色素をドープしてもよい。この方法の利点としては、以下の(1)ないし(4)などが挙げられる。
(1)高効率の蛍光色素により発光効率が向上する。
(2)蛍光色素の選択により発光波長を変えることができる。
(3)濃度消光を起こす蛍光色素も使用可能である。
(4)薄膜性に劣る蛍光色素も使用可能である。
【0073】
さらに、素子の駆動寿命を改善する目的においても、上記の材料をホスト材料として蛍光色素をドープすることは有効である。たとえば、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体をホスト材料として、ルブレンに代表されるナフタセン誘導体を、ホスト材料に対して0.1~10質量%ドープすることにより、素子の発光特性、特に駆動安定性を大幅に向上させることができる。
【0074】
蛍光色素以外には、りん光性金属錯体を上記発光層ホスト材料に対して1~30重量%ドープすることにより、素子の発光効率を大きく改善することも行われる。この場合、りん光性金属錯体としては、中心金属としてイリジウムや白金等を有し配位子としてフェニルピリジン、フェニルイソキノリン等を有するものが使用できる。
【0075】
本発明における一態様では、発光層5に、一般式(I)で表わされるシロール化合物が含有される。発光層5に当該シロール化合物を含有させることは、特に、素子の駆動安定性を向上するために有効である。この場合、発光層5の材料として当該シロール化合物を単独で用いてもよく、あるいは、当該シロール化合物を上記の発光層材料と混合したものを発光層5としてもよい。後者の場合、当該シロール化合物の混合比率を、それ以外の発光層材料との合計量に対して5~50質量%とすることが好ましい。
【0076】
発光層5の膜厚は、通常10~200 nm、好ましくは30~100 nmである。
【0077】
有機電界発光素子の発光効率をさらに向上させるために、図1および図2に示すように、発光層5の上に電子輸送層6を積層することが有効である。この電子輸送層6に用いられる材料は、陰極7からの電子注入が容易で、電子の輸送能力が大きいものであることが望ましい。本発明における一態様では、電子輸送層6に、一般式(I)で表わされるシロール化合物が含有される。
【0078】
さらに、電子輸送層6にアルカリ金属を含有させることにより、電子輸送材料がアルカリ金属との反応により還元され、電荷キャリアとなるアニオンラジカルを効率よく生成することが可能となることから、導電性を大きく改善することができる。(特開平10-270171号公報)。アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs等が用いられる。アルカリ金属の電子輸送層6における含有量は、1~50質量%が好ましい。アルカリ金属を電子輸送材料に混合させる方法としては、電子輸送材料とアルカリ金属の共蒸着を用いることができる。
【0079】
電子輸送層6の膜厚は、通常5~200nm、好ましくは10~100 nmである。
【0080】
電子輸送層6の形成方法としては、正孔輸送層4の形成方法として上記に例示したものと同様の薄膜形成法を用いることができる。
【0081】
有機電界発光素子の発光効率をさらに向上させるために、図に示すように、発光層5に電子輸送層6を積層することが有効である。この電子輸送層6に用いられる材料は、陰極7からの電子注入が容易で、電子の輸送能力が大きいものであることが望ましい。本発明における一態様では、電子輸送層6に、一般式(I)で表わされるシロール化合物が含有される。
【0082】
有機電界発光素子の効率をさらに改善するために、発光層と電子輸送層との間に図に示す正孔阻止層9を設けることは有効である。この正孔阻止層9に用いられる材料には電子輸送性とともに電子輸送層材料より広いHOMO-LUMOギャップを有することが求められる。このような条件を満たす材料としては、従来、フェナントロリン誘導体などが用いられている。正孔阻止層を設けることは特にリン光性発光素子に効果的である。本発明における一態様では、正孔阻止層に、一般式(I)で表わされるシロール化合物が含有される。
【0083】
正孔阻止層9の膜厚は、通常1~100nm、好ましくは3~30nmである。
【0084】
電子輸送層6の上にさらに、陰極からの電子注入を容易にするために、電子注入層7を設けることも効果的である。電子注入層に用いられる材料としては,電子親和力が大きい化合物が好ましく、たとえば8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体やフラーレン誘導体を用いることができる。
【0085】
陰極8は、発光層5に電子を注入する役割を果たす。陰極8の材料としては、陽極2に使用される材料として上記に例示したものなどを用いることができるが、効率よく電子注入を行なうためには、仕事関数の低い金属が好ましく、このような金属の具体例としては、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の金属またはそれらの合金などが挙げられる。より具体的には、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、アルミニウム-リチウム合金等が挙げられる。
【0086】
さらに、陰極8と、電子輸送層6または電子注入層7との界面に、LiF、MgF、LiO、CsCO、8-ヒドロキシキノリンのLi錯体等の極薄絶縁膜(膜厚0.1~5 nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Appl. Phys. Lett.,70巻,152頁,1997年、IEEE Trans. Electron. Devices,44巻,1245頁,1997年、SID 04 Digest,154頁,2004年、特開平11-233262号公報)。
【0087】
陰極8の膜厚は、通常は陽極2と同程度である。陰極8上にはさらに、低仕事関数の金属からなる陰極8を保護する目的で、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層してもよい。このような金属層を形成することで、素子の安定性を向上させることができる。当該金属層の材料の具体例としては、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金などが挙げられる。
【0088】
なお、図1,図2および図3は、本発明に係る有機電界発光素子の一実施形態を示すものであって、本発明は何ら図示した構成に限定されるものではない。たとえば、図1とは逆の積層構造とすること、すなわち、基板1上に陰極8、電子輸送層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2をこの順に積層することも可能である。このことは図2,図3の構造についても同様である。
【0089】
本発明の有機電界発光素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX-Yマトリックス状に配置された構造の素子のいずれにおいても適用することができる。
【0090】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、以下の例示によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0091】
<実施例1>
1,1-ジメチル-2-フェニル-3-(トリメチルスタンニル)-1H-ベンゾ[b]シロールおよび1,1-ジメチル-2-(4-ジフェニル)-3-(トリメチルスタンニル)-1H-ベンゾ[b]シロールの合成
【0092】
【化16】
JP0005159551B2_000011t.gif

【0093】
クロロトリメチルスズ(1.0M THF溶液)1.05mLに,0℃にて粒状リチウムを29mg (4.4mmol)加えた後、反応混合物を4時間攪拌した。得られた緑色溶液をガスタイトシリンジを用いて他の反応容器に移し、溶媒を減圧下で除去し、ジエチルエテールを1.0mL加えた。そこにジメチル{2-(フェニルエチニル)フェニル}シランを224.0mg (0.95mmol)加え、反応混合物を室温まで昇温した後、3時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応停止させた後ジエチルエテールで希釈したものをフロリジルカラムに通すことで塩等を除去した。引き続きシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ペンタン100%)で精製することで、浅黄色固体の目的物を353.6mg (収率93%)得た。
【0094】
【表1】
JP0005159551B2_000012t.gif

【0095】
同様に1,1-ジメチル-2-(4-ジフェニル)-3-(トリメチルスタンニル)-1H-ベンゾ[b]シロール(収率99%)を白色固体として得た。
【0096】
【表2】
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【0097】
<実施例2>
3-[ジメチル(フェニル)シリル]-1,1-ジメチル-2-フェニル-1H-ベンゾ[b]シロールの合成
【0098】
【化17】
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【0099】
クロロトリメチルシラン0.10mL (0.60mmol)の脱水テトラヒドロフラン(0.6mL)溶液に、0℃にて粒状リチウムを17mg (2.4mmol)加えた後、反応混合物を4時間攪拌した。得られた深紅色溶液をガスタイトシリンジを用いて他の反応容器に移し、-78℃へ冷却後ジメチル{2-(フェニルエチニル)フェニル}シランを118.0 mg (0.50 mmol)加えた。反応混合物を0°Cまで昇温した後、1時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応停止させた後ジエチルエテールで希釈したものをフロリジルカラムに通すことで塩等を除去した。1,1,2,2-テトラクロロエタンを内部標準として用いた1H NMR分析により、目的物を0.085mmol(収率17%)得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ペンタン100%)、引き続きGPC(展開溶媒:クロロホルム100%,5サイクル)で精製することで、無色液体の、少量の不純物を含んだ目的物を得た。
【0100】
【表3】
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【0101】
<実施例3>
1-(1,1-ジメチル-2-フェニル-1H-ベンゾ[b]シロール-3-イル)-N,N-ジエチル-1,1-ジフェニルシランアミンの合成
【0102】
【化18】
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【0103】
1-クロロ-N,N-ジエチル-1,1-ジフェニルシランアミン96mg (0.33mmol)の脱水テトラヒドロフラン(0.33mL)溶液に、0℃にて粒状リチウムを9mg (1.3mmol)加えた後、反応混合物を4時間攪拌した。得られた深緑色溶液をガスタイトシリンジを用いて他の反応容器に移し、ジメチル{2-(フェニルエチニル)フェニル}シランを71.0mg (0.30mmol)加え、反応混合物を0℃にて1時間攪拌した。反応混合物に2-プロパノールを0.5mL、塩化アンモニウムを50mg加え、反応混合物を室温まで昇温した後、12時間攪拌した。ジエチルエテールで希釈したものをフロリジルカラムに通すことで塩等を除去した。1,1,2,2-テトラクロロエタンを内部標準として用いた1H NMR分析により、目的物を0.26mmol(収率87%)得た。GPC(展開溶媒:クロロホルム100%,6サイクル)で精製することで、無色液体の、少量の不純物を含んだ目的物を得た。
【0104】
【表4】
JP0005159551B2_000017t.gif

【0105】
<実施例4>
小杉・右田カップリングによる1,1-ジメチル-2,3-ジフェニル-1H-ベンゾ[b]シロールの合成
【0106】
【化19】
JP0005159551B2_000018t.gif

【0107】
1,1-ジメチル-2-フェニル-3-(トリメチルスタンニル)-1H-ベンゾ[b]シロール440mg(1.10mmol)の1,2-ジメトキシエタン(2.0mL)溶液にPd2(dba)3・CHCl3を52 mg(0.05mmol)、P(t-Bu)3の1.0Mトルエン溶液を0.20mL(0.20mmol)、ヨードベンゼンを200.0mg (0.98mmol)、フッ化セシウムを310mg (2.0mmol)加え、室温にて12時間攪拌した。反応混合物をジエチルエテールで希釈し、フロリジルカラムを通すことで塩等を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペンタン100%)で精製することで、白色固体の目的物を192.4mg (ヨードベンゼンに基づいた収率63%)得た。
【0108】
【表6】
JP0005159551B2_000019t.gif

【0109】
<実施例5>
根岸カップリングによる1,1-ジメチル-2,3-ジフェニル-1H-ベンゾ[b]シロールの合成
【0110】
【化20】
JP0005159551B2_000020t.gif

【0111】
1,1-ジメチル-2-フェニル-3-(トリメチルスタンニル)-1H-ベンゾ[b]シロール440mg(1.10mmol)の脱水テトラヒドロフラン(0.6mL)溶液に、0℃にてBuLi(1.65Mヘキサン溶液)を0.67mLを滴下した後、反応混合物を30分攪拌した。反応溶液は深紅色から徐々に濃緑色へと変化した。この反応混合物に塩化亜鉛の1.0Mテトラヒドロフラン溶液を1.10mL加え、室温まで昇温し、30分攪拌した。得られた黄色反応溶液に1-メチルピロリジン-2-オンを1.65mL、Pd2(dba)3・CHCl3を52mg(0.05mmol)、ジシクロヘキシル(2’,6’-ジメトキシジフェン-2-イル)ホスフィンを82mg (0.20mmol)、ヨードベンゼンを204.0mg (1.00mmol)加え、室温にて12時間攪拌した。反応混合物をジエチルエテールで希釈し、フロリジルカラムを通すことで塩等を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ペンタン100%)で精製し、白色固体の目的物を 272.7mg (ヨードベンゼンに基づいた収率87%)得た。
【0112】
【表7】
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【0113】
同様に1,1-ジメチル-2-フェニル-3-(チエン-2-イル)-1H-ベンゾ[b]シロール(収率53%)を白色固体として得た。
【0114】
【表8】
JP0005159551B2_000022t.gif

【0115】
<実施例6>
根岸カップリングによる1,4-ビス(1,1-ジメチル-2-フェニル-1H-ベンゾ[b]シロール-3-イル)ベンゼンの合成
【0116】
【化21】
JP0005159551B2_000023t.gif

【0117】
1,1-ジメチル-2-フェニル-3-(トリメチルスタンニル)-1H-ベンゾ[b]シロール440mg(1.10mmol)の脱水テトラヒドロフラン(0.3mL)溶液に、0℃にてBuLi(1.65Mヘキサン溶液)を0.67mLを滴下した後、反応混合物を30分攪拌した。反応溶液は深紅色から徐々に濃緑色へと変化した。この反応混合物に塩化亜鉛の1.0Mテトラヒドロフラン溶液を1.10mL加え、室温まで昇温し、30分攪拌した。得られた黄色反応溶液にN-メチルピロリジン-2-オン(NMP)を1.0mL、Pd2(dba)3・CHCl3を26 mg(0.025mmol)、ジシクロヘキシル(2’,6’-ジメトキシジフェン-2-イル)ホスフィンを41mg (0.10mmol)、1,4-ジヨードベンゼンを166mg (0.50mmol)加え、室温にて12時間攪拌した後、60℃に昇温し、さらに4時間攪拌した。反応混合物をクロロホルムで希釈し、フロリジルカラムにより塩等を除去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(5%のジクロロメタンを含んだヘキサン)で精製することで、白色固体の目的物を230.8mg (1,4-ジヨードベンゼンに基づいた収率84%)得た。
【0118】
【表9】
JP0005159551B2_000024t.gif

【0119】
<実施例7>
1,1-ジメチル-3-ヨード-2-フェニル-1H-ベンゾ[b]シロールの合成
【0120】
【化22】
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【0121】
1,1-ジメチル-2-フェニル-3-(トリメチルスタンニル)-1H-ベンゾ[b]シロール400.0mg(1.0mmol)のジクロロメタン(20mL)溶液に、室温にてヨウ素(0.03Mジクロロメタン溶液)を67mL滴下したところ、反応溶液が淡いピンク色に変化した。色が消えるまで飽和Na2S2O3水溶液を加え、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した後、反応混合物をフロリジルカラムにより塩等を除去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ペンタン100%)で精製することで、浅黄色固体の目的物を410.5mg (収率99%)得た。
【0122】
【表10】
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【0123】
<実施例8>
1,1-ジメチル-2-フェニル-3-(2-フェニルベンゾフラン-3-イル)-1H-ベンゾ[b]シロールの合成
【0124】
【化23】
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【0125】
2-(フェニルエチニル)フェノール 107mg(0.55mmol)の脱水テトラヒドロフラン(0.5mL)溶液に、0℃にてBuLi(1.66Mヘキサン溶液)を0.33mLを滴下した後、反応混合物を30分攪拌した。反応混合物に塩化亜鉛の1.0Mテトラヒドロフラン溶液を0.55mL加え、室温まで昇温した。得られた反応溶液に脱水テトラヒドロフランを0.5mL、Pd2(dba)3・CHCl3を26mg(0.025mmol)、P(t-Bu)3の1.0Mトルエン溶液を0.10mL(0.10mmol)、1,1-ジメチル-3-ヨード-2-フェニル-1H-ベンゾ[b]シロールの合成を181mg (0.50mmol)加え、室温にて12時間攪拌した。反応混合物をクロロホルムで希釈し、フロリジルカラムにより塩等を除去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(1%の酢酸エチルを含んだヘキサン)で精製することで、白色固体の目的物を194.0mg (収率91%)得た。
【0126】
【表11】
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【0127】
<実施例9>
1,1-ジメチル-3-ヨード-2-フェニル-1H-ベンゾ[b]シロールを出発物とした根岸カップリングによる1,4-ビス(1,1-ジメチル-2-フェニル-1H-ベンゾ[b]シロール-3-イル)ベンゼンの合成
【0128】
【化24】
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【0129】
1,4-ジブロモベンゼン29mg(0.12mmol)の脱水ジエチルエテール(0.25mL)溶液に、-78°Cにてt-BuLi(1.58Mペンタン溶液)0.33mLを滴下した後、反応混合物を1時間攪拌した。塩化亜鉛(1.00Mテトラヒドロフラン溶液)を0.56mL加え、0℃まで昇温した後、10分間攪拌した。再び-78℃に冷却した後、反応混合物にPd2(dba)3・CHCl3を21mg(0.02mmol)、P(t-Bu)3の1.0Mトルエン溶液を80mL(0.08mmol),1,1-ジメチル-3-ヨード-2-フェニル-1H-ベンゾ[b]シロールを72.3 mg (0.20mmol)加え、0℃まで昇温した後、12時間かけて室温までゆっくり昇温し、攪拌した。反応混合物をクロホルムで希釈し、フロリジルカラムを通すことで塩等を除去した。1,1,2,2-テトラクロロエタンを内部標準として用いた1H NMR分析により、目的物が0.052mmol(1,4-ビス(1,1-ジメチル-2-フェニル-1H-ベンゾ[b]シロール-3-イル)ベンゼンに基づいた収率52%)生成していることを確認した。
<実施例10>電子移動度の測定
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜をスパッタ法で145nm堆積したもの(シート抵抗10Ω,平均表面粗さ1.5nm)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。パターン形成したITO基板に対して、界面活性剤(横浜油脂工業株式会社製 セミクリーンM-LO)による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄、および流水洗浄を行った後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0130】
このITO基板を,実施例7で合成した例示化合物(1)120mgを充填した金属ボートとともに、真空蒸着装置内に設置した。この時、ITO基板と金属ボート間の距離は10cmとした。上記真空蒸着装置の粗排気を油回転ポンプにより行った後、装置内の真空度が5x10-4Pa以下になるまで液体窒素トラップ付の油拡散ポンプを用いて排気した。上記金属ボートに入れたシロール化合物を250℃に加熱し、ITO基板の上に3.8μmの厚さで堆積させた。蒸着時の真空度は5-6x10-4Pa、蒸着時間は15分であった。
【0131】
次に、金属蒸着用の真空蒸着装置に基板を移動し、電極蒸着用のマスクとして、2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、前記ITOストライプとは直交するように素子に密着させて、装置内の真空度が3x10-4Pa以下になるまでクライオポンプにより排気した。電極としてアルミニウムを蒸着速度0.5 nm/秒でシロール膜上に膜厚100nmで形成した。蒸着時の真空度は2.3x10-4Paであった。以上のようにして、2mm x 2mmのサイズの有効面積を有する移動度測定用素子が得られた。
【0132】
飛行時間(TOF)による電子移動度を住友重機械アドバンストマシナリー社製測定装置(TOF-401)を用いて行った。ITO電極側にマイナスの電圧を印加して、窒素レーザを励起光源として、電子が膜中を移動する時間を測定した。電界強度として2x105V/cmをシロール膜に印加した時に、5.4x10-3cm2/V・secの電子移動度が観測された。
<実施例11>
下記に示す高周期14族アニオン種を用いて、下記スキームに従ってアセチレン誘導体からシロール化合物を合成した。収率は64%であった。
【0133】
【化25】
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【0134】
<実施例12>
下記に示す3種類のアセチレン誘導体を用いて、下記スキームに従ってシロール化合物を合成した。収率は下記のとおりであった。
【0135】
【表12】
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【0136】
<実施例13>
下記スキームに従ってシロール化合物を合成した。収率は下記のとおりであった。
【0137】
【表13】
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【0138】
<実施例14>
下記スキームに従ってベンゾジシロール化合物を合成した(収率30%)。
【0139】
【表14】
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【0140】
<実施例15>
図2に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜をスパッタ法で145nm堆積したもの(シート抵抗10Ω,平均表面粗さ1.5nm)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2 mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。パターン形成したITO基板に対して、界面活性剤(横浜油脂工業株式会社製 セミクリーンM-LO)による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄、および流水洗浄を行った後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0141】
上記洗浄処理を行ったITO基板上に、正孔注入層3として、導電性高分子(ポリチオフェン)であるPEDOT:PSS(スタルクヴィテック社製 品名Baytron CH 8000)を70nmの膜厚でスピンコートした後、大気中、120℃で10分間加熱乾燥し、次いで、窒素中、180℃で3分間加熱処理した。
【0142】
次に、正孔注入層3を形成したITO基板を真空蒸着装置内に設置した。当該装置の粗排気を油回転ポンプにより行った後、装置内の真空度が2x10-4Pa以下になるまでクライオポンプを用いて排気した。
【0143】
上記装置内に配置された金属ボートに入れた以下の構造式に示す芳香族ジアミン化合物を加熱し、正孔注入層3を形成したITO基板への蒸着を行った。蒸着時の真空度は2.4x10-4Pa、蒸着速度は0.15nm/秒であり、膜厚45nmの膜を正孔注入層3の上に積層して正孔輸送層4を形成した。
【0144】
【化26】
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【0145】
続いて、発光層5の材料として、以下の構造式に示すアルミニウムの8-ヒドロキシキノリン錯体Al(CHNO)を用いて、正孔輸送層4と同様にして蒸着を行った。
【0146】
【化27】
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【0147】
蒸着時の真空度は2.2x10-4Pa、蒸着速度は0.23nm/秒であり、蒸着された発光層5の膜厚は20nmであった。
【0148】
次に、電子輸送層6として、例示化合物(1)を同様にして真空蒸着により膜厚30nmで発光層5の上に形成した。
【0149】
さらに、電子注入層7として、アルミニウムの8-ヒドロキシキノリン錯体Al(CHNO)を10nmの膜厚で電子輸送層6の上に積層した。
【0150】
陰極8からの電子注入を容易にするために、陰極界面層として、以下の構造式に示す8-ヒドロキシキノリンのリチウム錯体を蒸着速度0.008nm/秒、蒸着時の真空度2.2x10-4Paの条件において、膜厚1.0nmで形成した。続いて、アルミニウムを蒸着速度0.5nm/秒で陰極界面層上に膜厚80nmで形成した。蒸着時の真空度は2.3x10-4Paであった。
【0151】
【化28】
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【0152】
その後、陰極界面層までの蒸着を行った素子を真空中で金属蒸着用の真空室に移動し、陰極蒸着用のマスクとして、2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、有機層の場合と同様にして装置内の真空度が3x10-4Pa以下になるまでクライオポンプにより排気した。
【0153】
以上のようにして、2mm x 2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
【0154】
この素子について、実用輝度である1000cd/m2で電流発光効率を測定したところ、4.0cd/Aを示した。
<比較例1>
電子輸送層6として、例示化合物(1)の代わりに8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体を用いた以外は、実施例15と同様にして素子を作製した。
【0155】
この素子を実施例14と同様に1000cd/m2の輝度で評価したところ、電流発光効率は3.6cd/Aと効率の低下がみられた。
<実施例16>
図3に示す構造を有する有機電界発光素子を実施例15と同様の方法で作製した。
【0156】
ITO基板上に,正孔注入層/正孔輸送層を実施例15と同様にして形成した後、下記構造のカルバゾール誘導体(CBP)をホスト材料として,下記リン光性イリジウム錯体を4.5質量%共蒸着法によりドープして,発光層5を膜厚30nmで積層した。
【0157】
【化29】
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【0158】
【化30】
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【0159】
引き続き、正孔阻止層9として、例示化合物(1)を膜厚10nmで発光層5の上に形成した。さらに電子輸送層6として8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体を20nm形成した後、電子注入層および陰極を実施例15と同様にして形成した。
【0160】
この素子について、実用輝度である1000cd/m2で電流発光効率を測定したところ、25.0cd/Aを示した。
<比較例2>
正孔阻止層として下記構造のバソクプロインを用いた他は実施例16と同様の方法で有機電界発光素子を作製した。
【0161】
【化31】
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【0162】
この素子について、実用輝度である1000cd/m2で電流発光効率を測定したところ、13.6cd/Aであった。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本発明に係る有機電界発光素子の第1の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る有機電界発光素子の第2の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明に係る有機電界発光素子の第3の実施形態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0164】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
9 正孔阻止層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2