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明細書 :抵抗変化型不揮発性メモリー素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5096294号 (P5096294)
公開番号 特開2010-114332 (P2010-114332A)
登録日 平成24年9月28日(2012.9.28)
発行日 平成24年12月12日(2012.12.12)
公開日 平成22年5月20日(2010.5.20)
発明の名称または考案の名称 抵抗変化型不揮発性メモリー素子
国際特許分類 H01L  27/105       (2006.01)
H01L  45/00        (2006.01)
H01L  49/00        (2006.01)
FI H01L 27/10 448
H01L 45/00 Z
H01L 49/00 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2008-287236 (P2008-287236)
出願日 平成20年11月8日(2008.11.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 (1)掲載日;2008年5月10日 掲載アドレス;http://stac.ceram.titech.ac.jp/ (2)研究集会名;Joint Conference of The 2▲nd▼ International Conference on Science and Technology for Advanced Ceramics(STAC2) And The 1▲st▼ International Conference on Science and Technology of Solid
審査請求日 平成21年11月25日(2009.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】神谷 利夫
【氏名】平野 正浩
【氏名】金 聖雄
【氏名】足立 泰
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】酒井 朋広
参考文献・文献 特開2008-177469(JP,A)
特開2008-251108(JP,A)
国際公開第2005/000741(WO,A1)
特開2008-244018(JP,A)
国際公開第2005/077859(WO,A1)
特開2008-003218(JP,A)
調査した分野 H01L 27/10
H01L 45/00
H01L 49/00
特許請求の範囲 【請求項1】
基板上に形成された下部電極、抵抗変化層、上部電極にて構成され、抵抗変化層として活
性層を用い、活性層の両面に下部電極及び上部電極を形成した抵抗変化メモリー素子にお
いて、
活性層が12CaO・7Al酸化膜/12CaO・7Al:e(ここで、「
12CaO・7Al:e」は、12CaO・7Al中のフリー酸素イオンの
1020cm-3以上、2.3×1021cm-3以下を電子で置換したエレクトライド
化合物からなる導電体、「12CaO・7Al酸化膜」は、「12CaO・7Al
:e」の表面を酸化して形成された膜からなる絶縁体)の積層構造からなる二層膜
であり、両電極間の電圧印加による二層膜中のフリー酸素イオンの層間移動による二層膜
の抵抗変化を利用したことを特徴とする不揮発性メモリー素子。
【請求項2】
電圧印加による高抵抗状態と低抵抗状態の電気抵抗値の差が10以上であることを特徴
とする請求項1記載のメモリー素子。
【請求項3】
12CaO・7Al酸化膜の膜厚が20~100nmであることを特徴とする請求
項1記載のメモリー素子。
【請求項4】
Pt金属膜を電極に用いることを特徴とする請求項1記載のメモリー素子。
【請求項5】
12CaO・7Al:eの表面を酸化することにより、12CaO・7Al
酸化膜/12CaO・7Al:eの積層構造からなる二層膜を形成することを特徴
とする請求項1記載のメモリー素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧印加により電気抵抗値が変化する抵抗変化材料を利用した不揮発性メモリ
ー装置のメモリー素子及び、当該メモリー素子の製造方法に関する。
【0002】
近年、携帯電話などのモバイル機器が広く使われているが、それら機器では、データを保
持するために、フラッシュメモリーなど、不揮発性メモリーが必要であり、より高性能の
不揮発メモリーの開発が必要となっている。さらに、パソコンなどの機器においても、メ
モリー素子のさらなる高速処理性、高集積化、大容量化が求められている。
【0003】
すなわち、今後の高度情報社会(ユビキタス社会)を迎えるうえで、フラッシュメモリー
、DRAM、磁気デスクなど大容量メモリーのさらなる高性能化の必要性が挙げられる。
現在、フラッシュメモリーの性能向上がなされ、その結果としての市場規模は、DRAM
を凌ぐ勢いであるが、フラッシュメモリーにおいても、素子の微細化が進むにつれ、隣接
メモリー間干渉の増大など、フラッシュメモリー特有の問題が生じ始めており、大容量化
の障害になりつつある。
【0004】
これらの現状を踏まえると、既存のメモリー素子とは、全く異なる原理で作動する次世代
メモリー素子の開発が望まれている。こうした次世代メモリー素子に課せられた条件は、
SRAM並みの高速アクセス(書き込み/読み出し)、DRAM並みの高集積化(大容量
化)、フラッシュメモリー並の不揮発性、低消費電力などである。
【0005】
次世代メモリーの候補として、FeRAM(抵抗変化メモリ;resistive random access
memory),MRAM,PRAMなど様々なメモリーが挙げられるが、そうした次世代メモリ
ーの1つであるReRAMが注目を浴びている。
【0006】
このReRAMは、電極で挟んだ活性層(酸化物、固体電解質、又は有機物)に電圧を印加
することによって発生する電気抵抗値の可逆かつ不揮発的な変化を利用した抵抗スイッチ
ング型メモリーである。抵抗スイッチングの現象は、1960年代にAl23,NiOな
どで報告されている(非特許文献1、2)が、これらの材料系では、動作機構に不明な部
分が多いこともあり、メモリー素子としての実用化までには至っていない。
【0007】
その後、ヒューストン大学の研究グループによってPCMO(Pr1-xCaxMnO3)を用
いた抵抗変化型不揮発性メモリー(ReRAM)(非特許文献3)及びその素子を用いた
集積化メモリー(非特許文献4)が発表され、研究・開発が一気に加速された。
【0008】
ReRAMは、電圧を印加することによって起こる抵抗値の変化現象をメモリーに応用し
ているが、このメモリーは、電流(I)-電圧(V)特性から、2つの種類に大別されてい
る。一つは、NiOなどの二元系酸化物で多く報告されているもの(非特許文献5、6、
特許文献1、2)で、電圧の極性によらず抵抗状態を変化させるノンポーラ型である。
【0009】
もう一方は、ペロブスカイト型やスピネル型の複合酸化物(PCMO,STO,Cr-do
ped SrZnO3,MM‘、RMCoO,AA’1-x)で多く報
告されている(非特許文献1、2、7、8、特許文献3~7)、電圧の極性の違いによっ
て抵抗状態を変化させるバイポーラ型である。
【0010】
本発明者らは、これまで複合酸化物である12CaO・7Al(以下、「C12A
7」と記す)化合物について種々の研究開発を行なってきた。複合酸化物であるC12A
7は、マイエナイト型結晶構造を有し、三次元的に連結された、単位格子当たり12個の
、直径約0.4nmの空隙(ケージ)から構成される特徴的な構造を持つ。
【0011】
ケージを構成する骨格は正電荷を帯びており、ケージの1/6(3個)は、結晶の電気的中
性条件を満たすため、酸素イオン(O2-)によって占められているが、この酸素イオンは
、骨格を構成する他の酸素イオンとは化学的に異なる特性を持つことから、とくに、「フ
リー酸素イオン」と呼ばれている。
【0012】
すなわち、C12A7結晶は化学組成として、[Ca24Al28644+・2O
と表記され、非常に電気抵抗の高い、典型的な電気絶縁体である。CaをSrで完全に
置換したS12A7もマイエナイト型結晶構造を有し、その電気特性もC12A7と同様
である。
【0013】
本発明者らは、絶縁体であるC12A7を化学的に還元処理にすることによって、ケージ
構造骨格を維持したまま、ケージの中のフリー酸素イオンが電子と置き換わることを見出
した。電子置換の結果、C12A7の電気伝導特性は、絶縁体から、半導体、金属、さら
には、超電導転移まで変化する(非特許文献9~11、特許文献8~12)。
【0014】
すなわち、置換電子濃度により、C12A7の電気抵抗は、8桁以上変化することを見出
した。C12A7中の電子濃度は、光吸収スペクトルの2.4eV付近にピークを有する
吸収バンドの強度から求めることができる(非特許文献12)。フリー酸素を電子で置換
したC12A7はエレクトライド化合物とみなすことができる。このC12A7エレクト
ライド膜の下面にPtなどの金属をコーティングするとC12A7エレクトライドと該金
属を電極とするオーミック接触が得られる(非特許文献13)。
【0015】
<patcit num="1"> <text>特開2004-363604号公報</text></patcit><patcit num="2"> <text>特開2006-140489号公報</text></patcit><patcit num="3"> <text>特表2002-537627号公報</text></patcit><patcit num="4"> <text>WO2006/028117</text></patcit><patcit num="5"> <text>WO2006/030814</text></patcit><patcit num="6"> <text>特開2007-293969号公報</text></patcit><patcit num="7"> <text>特開2008-034641号公報</text></patcit><patcit num="8"> <text>WO2005/000741</text></patcit><patcit num="9"> <text>WO2005/077859</text></patcit><patcit num="10"> <text>特開2008-266105号公報</text></patcit><patcit num="11"> <text>特開2008-195582号公報</text></patcit><patcit num="12"> <text>特開2008-195583号公報</text></patcit><nplcit num="1"> <text>T. W. Hickmott, J. Appl. Phys. 33(1962) 2669</text></nplcit><nplcit num="2"> <text>J. Gibbsons and W. E. Beadle, Solid-State Electron. 7 (1964) 785</text></nplcit><nplcit num="3"> <text>S. Q. Liu, N. J. Wu and A. IgnaTiev : Appl. Phys. Lett. 76 (2000) 2749</text></nplcit><nplcit num="4"> <text>W. W. Zhang, W. Pan, B. D. Ulrich, J. J. Lee, L. Stecker, A. Burmaster, D. R. Evans, S. T. Hsu, M. Tajiri, A. Shimaoka, K. Inoue, T. Naka, N. Awaya, K. Sakiyama, Y. Wang, S. Q. Liu, N. J. Wu and A. IgnaTiev, Tech. Dig. Int. Electron Devices Meet., San Francisco, 2002, p.193.</text></nplcit><nplcit num="5"> <text>S. Seo, M. J. Lee, D. H. Seo, E. J. Jeoung, D. S. Suh, Y. S. Joung, I. K. Yoo, Appl. Phys. Lett. 85 (2004) 5655.</text></nplcit><nplcit num="6"> <text>K. Kinoshita, T. Tamura, M. Aoki, Y. Sugiyama, and H. Tanaka, Appl. Phys. Lett. 89 (2006) 103509.</text></nplcit><nplcit num="7"> <text>K. Szot, W. Speier, G. Bihlmayer and R. Waser, Nat. Mater. 5 (2006) 312</text></nplcit><nplcit num="8"> <text>A. Beck, J. G. Bednorz, Ch. Gerber, C. Rossel, and D. Widmer, Appl. Phys. Lett. 77(2000) 139.</text></nplcit><nplcit num="9"> <text>S. Matsuishi, Y. Toda, M. Miyakawa, K. Hayashi, T. Kamiya, M. Hirano, I.Tanaka, H. Hosono, Science 301 (2003) 626.</text></nplcit><nplcit num="10"> <text>S. W. Kim, S. Matsuishi, T. Nomura, Y. Kubota, M. Takata, K, Hayashi, T, Kyamiya, M. Hirano, H. Hosono, Nano Lett. 7 (2007) 1138.</text></nplcit><nplcit num="11"> <text>M. Miyakawa, S.W. Kim, M. Hirano, Y. Kohama, H. Kawaji, T. Atake, H. Ikegami, K. Kono, H. Hosono, J. Am. Chem. Soc.; (CommuniCaTion), 129, 7270-7271, (2007).</text></nplcit><nplcit num="12"> <text>K. Kurashige, Y, Toda, S, Matuishi, K, Hayashi, K, Ueda, T, Kamiya, M, Hirano, H. Hosono, Cryst. Growth Des. 6 (2006) 1602.</text></nplcit><nplcit num="13"> <text>T. Kamiya, S. Aiba, M. Miyakawa, K. Nomura, S. Matsuishi, K. Hayashi, K. Ueda, M. Hirano and H. Hosono, Chem. Mater. 17 (2005) 6311</text></nplcit>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ReRAMは、活性層を電極で挟んだ単純なキャパシター構造素子から構成されているた
めに、記憶装置の高密度化が期待され、さらに高抵抗値と低抵抗値との間の電気抵抗値の
差、すなわちon/off比を大きくできれば、印加電圧のパルス間隔を非常に短時間にするこ
とができ、高速のメモリー書き込み・消去が可能となる。
【0017】
ReRAMは、高集積・大容量メモリー素子として、将来性の大きなメモリー素子ではあ
るが、これまで、その動作機構が完全には解明されていないなどのために、実用化に適し
た素子構造の作製及び特性の設計・制御が難しく、素子の最適化ができないという問題点
がある。また、従来から用いられてきたメモリー材料に代えて、化学的に安定で、高抵抗
値と低抵抗値との間の電気抵抗値の差が大きく、抵抗スウィッチ特性の再現性に優れた新
材料を開発する必要もある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記のように、ReRAMは、次世代の高度情報化社会に必要な大容量メモリーデバイス
を実現するポテンシャルを有する有望なメモリー素子であるが、これまでの材料系では、
化学的安定性に乏しく、また、動作原理が明確でなく、素子の最適設計がし難い、などの
課題があった。
【0019】
こうした課題を解決するために、鋭意研究開発を重ねた結果、発明者らは、空気中で化学
的変化が生じ難い、すなわち化学的に安定な複合酸化物である12CaO・7Al
を活性層として用い、酸素イオン伝導を原理とした、電気抵抗の可逆的かつ不揮発性(電
圧を除いても抵抗変化が維持される。)変化を見出した。よって、本発明は、新しい原理
に基づく抵抗変化型不揮発性メモリー素子とその製造方法を提供する。
【0020】
すなわち、本発明は、基板上に形成された下部電極、抵抗変化層、上部電極にて構成され
、抵抗変化層として活性層を用い、活性層の両面に下部電極及び上部電極を形成した抵抗
変化メモリー素子において、活性層が12CaO・7Al酸化膜/12CaO・7
Al:eの積層構造からなる二層膜であり、両電極間の電圧印加による二層膜中の
フリー酸素イオンの層間移動による二層膜の抵抗変化を利用したことを特徴とする不揮発
性メモリー素子である。

【0021】
上記の不揮発性メモリー素子において、「12CaO・7Al:e」は、12C
aO・7Al中のフリー酸素イオンの1020cm-3以上、2.3×1021
-3以下を電子で置換したエレクトライド化合物からなる導電体、「12CaO・7A
酸化膜」は、「12CaO・7Al:e」の表面を酸化して形成された膜
からなる絶縁体である。
【0022】
また、本発明は、電圧印加による高抵抗状態と低抵抗状態の電気抵抗値の差が10以上
であることを特徴とする上記のメモリー素子である。
【0023】
また、本発明は、12CaO・7Al酸化膜の膜厚が20~100nmであること
を特徴とする上記のメモリー素子である。
【0024】
また、本発明は、Pt金属膜を電極に用いることを特徴とする上記のメモリー素子である

【0025】
また、本発明は、12CaO・7Al:eの表面を酸化することにより、12Ca
O・7Al酸化膜/12CaO・7Al:eの積層構造からなる二層膜を形
成することを特徴とする上記のメモリー素子の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
電気抵抗値が変化する抵抗変化材料を利用した不揮発性メモリー装置のメモリー素子は、
基板上に形成された下部電極、抵抗変化層、上部電極にて構成されている。本発明は、抵
抗変化層として複合酸化物であるC12A7を用いる。電極材料としては、Pt、Au、
Ir、Os、Ru、Os、Rh、Pd、Cu、Al、Ag、Ti、Ta、Co、Wなどの
金属やこれらを主成分とする合金、導電性酸化物が挙げられる。
【0027】
C12A7は、単結晶、多結晶、又は薄膜でもよい。C12A7エレクトライドは、上述
の特許文献や非特許文献で開示されている公知の方法を用い、C12A7を高温(例えば
、600~1200℃)で還元処理することにより得ることができる。単結晶及び多結晶
の時は、Ti、Caなどの還元性の強い金属単体と、真空中で、高温処理をすればよい。
薄膜の場合は、化学当量組成に比較して、2%程度酸素含有量の少ないアモルファスC1
2A7薄膜をC12A7薄膜の上に堆積し、高温(例えば、700~900℃程度)処理
すればよい。
【0028】
C12A7中の電子は、高温、酸素雰囲気中では不安定で、高温熱処理をすると、電子と
酸素イオンの置換が起こる。この特性を利用して、C12A7エレクトライドの単結晶、
多結晶のバルク、又は薄膜の表面部のみの電子が酸素イオと置換するようにC12A7エ
レクトライドを酸素雰囲気中で高温に保つことで、C12Aエレクトライドの表面にC1
2A7からなる酸化膜を作成することができる。すなわち、C12A7酸化膜(絶縁体)
/C12A7エレクトライド(導電体)の積層構造の二層膜を形成することができる。
【0029】
C12A7エレクトライドの好ましい厚みは、バルク結晶または多結晶を用いるときは、
2mm~0.1mm程度でよい。厚みが小さいほど抵抗変化を大きくできるが、0.1m
m以下では、薄すぎて素子が物理的に保持できない。また、2mm以上になると電気抵抗
値が大きくなるが、高抵抗状態と低抵抗状態の間の抵抗値の変化比が小さくなる。薄膜の
場合は、基板上に堆積するために、0.5mm~0.1mm程度でよい。薄すぎると、酸
化膜との二層構造が作成できない。厚すぎると、堆積して薄膜を形成するのに長時間を要
することになる。
【0030】
C12A7酸化膜の厚さは、加熱雰囲気の酸素濃度が大きいほど、温度が高いほど、及び
該温度における保持時間とともに増加するが、純酸素をフローした雰囲気で、250℃に
6時間保持すると、C12A7酸化膜は50nm程度の膜厚となる。C12A7酸化膜の
膜厚は、表面反射スペクトルを、2層モデルを適用し、誘電関数フィティングすることで
求めることができる。
【0031】
C12A7酸化膜の膜厚が厚くなることにより、電気抵抗スウィッチが生じる電圧が増加
し、C12A7酸化膜の膜厚が20~100nmのとき、該電圧が1~10Vとなり、メ
モリー素子として望ましい。したがって、高温に加熱する条件は、このような膜厚が得ら
れる条件を適宜選択して実施する。
【0032】
図2にデバイス構造を模式的に示すように、金属基板1上に電極膜2を形成し、その上に
C12A7エレクトライド層3を形成し、該エレクトライド層3の表面を酸化したC12
A7酸化膜層4を形成し、さらに電極膜5を形成する。C12A7酸化膜/C12A7エ
レクトライドの積層構造からなる二層膜を電極2と電極5で挟んで、電極5側をプラス、
電極2側をマイナスにして、二層膜に膜面に垂直方向に負電圧を印加すると、C12A7
酸化膜中のフリー酸素イオンが、C12A7エレクトライド中に両者の界面からイオン拡
散し、電子と置換してC12A7エレクトライド中の電子濃度が減少するために、二層膜
の電気抵抗が増加する。
【0033】
一方、二層膜に膜面に垂直方向に正電圧を印加した時は、逆に、C12A7エレクトライ
ド中に拡散していたフリー酸素イオンがC12A7酸化膜中に再拡散し、C12A7エレ
クトライドの電気抵抗が減少する。すなわち、正負の電圧印加によるC12A7酸化膜/
C12A7エレクトライドの積層構造からなる二層膜中のフリー酸素イオンの層間移動に
よるC12A7エレクトライド化合物の抵抗変化が生じることになり、この抵抗変化を利
用したメモリー素子を製造できる。
【0034】
C12A7エレクトライドの電気抵抗は、C12A7エレクトライド中の電子濃度が高い
ときには、正電圧の印加により雪崩的に減少するので、電圧変化により、抵抗値の急激な
スィッチ(遷移)が生じる。また、印加した電圧を除去すると、電子及び酸素イオンの拡
散は抑制されるので、抵抗値の変化は起こらない。さらに、電圧の印加による電流-電圧
カーブには、ヒステリシスが見られる。以上の電流-電圧特性を利用して、C12A7酸
化膜/C12A7エレクトライドの積層構造からなる二層膜を活性層として、電気抵抗変
化型不揮発メモリーを構成することができる。
【実施例1】
【0035】
[C12A7エレクトライドの調製]
まず、下記のとおりC12A7エレクトライドを製造した。
チョクラルスキー法(CZ法)により作製したC12A7単結晶を5mm×5mm×0.5
mmの大きさの薄片に切り出し、5gのTi片とともに石英ガラス中に真空封管し、電気
炉内で1100℃に加熱した。
【0036】
この加熱還元処理により、C12A7単結晶の表面に堆積したTi金属とC12A7単結
晶中のフリー酸素イオンが反応し、C12A7単結晶の表面にTiOxが形成され、ケー
ジ中の酸素がはき出され、C12A7単結晶の結晶構造のケージ中に電子が残った。すな
わち、上記、高温還元処理により、結晶構造のケージ中のフリー酸素が電子に置換された
。電子置換量は、1100℃に保持する時間とともに増加する。高温保持時間を24時間
とし、電子濃度2×1021/cmを含むC12A7単結晶エレクトライド試料を得た
。電子濃度は、光吸収スペクトルの2.4eV付近にピークを有する吸収バンドの強度か
ら求めた。
【0037】
[メモリー素子の製造]
上記により得られた、電子を高濃度に含む表面に付着したTiOxをメカノケミカル研磨
で除去した後、C12A7エレクトライドの薄片の下面に電極としてPtを電子ビーム蒸
着によりコーティングし、真空チャンバー内(約10-5Pa)で、500℃に加熱し、1時
間保持した。この処理により、C12A7エレクトライドとPt電極間に、オーミック接
触が得られた。
【0038】
さらに、C12A7エレクトライドの薄片の上面を、ダイヤモンドペースト(9μm,3μm,1
μm)及びアルミナ(50nm)を用いて機械研磨(MA-150, ムサシノ電子)し、鏡面に仕上げた

【0039】
鏡面研磨したC12A7エレクトライドの薄片の上面を酸素フロー(500ml/min)中で、
250℃に加熱し6時間保持して、その表面にC12A7酸化膜を作製した。C12A7
酸化膜は、エレクトライドではないC12A7であるので、C12A7酸化膜/C12A
7エレクトライドの二層構造が形成された。
【0040】
C12A7酸化膜の厚さは、分光エリプソメーター(UVISEL, Jobin Yvon)を用いて測定し
た反射スペクトルに、C12A7酸化膜/ C12A7エレクトライドの積層構造からなる
二層モデルを適用し、誘電関数のフイッティングを行い、決定した。図1に、酸化処理後
の酸化膜のフィッティング結果を示す(実線は測定結果、黒丸・赤四角はフィッティング
値)。該二層膜では、C12A7酸化膜の膜厚は、約50nmであった。
【0041】
C12A7酸化膜/C12A7エレクトライドの積層構造からなる二層膜の上面に、電子
ビーム蒸着(EB)によって、Ptを150nm蒸着し上部電極を作成し、図2に示すよう
に、Pt/C12A7酸化膜//C12A7エレクトライド/Ptのデバイス構造を作製した
。C12A7エレクトライドの厚さは、1mmであった。
【0042】
上記の手順で得られたPt/C12A7酸化膜//C12A7エレクトライド/Ptの素子の
I-Vカーブを、電流計(Keithley 4200)を用いて測定した。図2に示すように上部電極
をプラスとし、下部電極をマイナスとした場合、図3に示すように、両電極間に、0Vか
ら負の電圧を印加すると、電流はほとんど流れないが、約-3Vで電流値の大きなジャン
プがみられ、電流は、-3mAとなり、その後、電圧を増加しても、電流はほとんど変化
しない。電流が一定値を保つ理由は、電圧リミット回路のためで、C12A7材料の特性
ではない。
【0043】
すなわち、3Vの印加電圧で、高抵抗状態から低抵抗状態への変化が起こる。印加電圧を
減少させると、低抵抗状態が維持され、オーミックな特性が観測された。すなわち、電流
は電圧とともに減少する。電圧の印加による電流-電圧カーブには、ヒステリシスが見ら
れた。電圧を負電圧から正電圧に増加させると、1Vまでは低抵抗状態が維持され、1V
付近で、高抵抗状態へ遷移する。なお、遷移がなだらかに見えるのは、試料の欠陥による
と考えられる。低抵抗領域と高抵抗領域の電気抵抗値の比、すなわち、on/off比は、約1
2以上であった。
【0044】
また、該素子を抵抗変化型不揮発性メモリーとして、作動させたが、図4に示すように、
抵抗値の繰り返し測定結果から分かるように、繰り返し安定した動作が確認できた。測定
電圧は、+-2Vであり、電流リミット回路を除いて測定した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
上記のとおり、C12A7酸化膜/C12A7エレクトライド積層構造からなる二層膜を
活性層としたダイオード(二電極デバイス)において、バイポーラ型の抵抗変化が実現し
、該二層膜を用いて、抵抗変化型不揮発性メモリー素子を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】酸化処理後の酸化膜のフィッティング結果を示す(実線は測定結果、 黒丸・赤四角はフィッティング値) グラフである。
【図2】実施例1のデバイス構造の模式図である。
【図3】実施例1のデバイス構造の電圧-電流特性を示すグラフである。
【図4】実施例1のデバイス構造を抵抗変化型不揮発性メモリーとして、作動させた場合のグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3