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明細書 :信号処理装置、方法およびプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4889718号 (P4889718)
公開番号 特開2010-156793 (P2010-156793A)
登録日 平成23年12月22日(2011.12.22)
発行日 平成24年3月7日(2012.3.7)
公開日 平成22年7月15日(2010.7.15)
発明の名称または考案の名称 信号処理装置、方法およびプログラム
国際特許分類 G10L  19/00        (2006.01)
H03M   7/30        (2006.01)
FI G10L 19/00 220G
H03M 7/30 Z
請求項の数または発明の数 15
全頁数 15
出願番号 特願2008-334401 (P2008-334401)
出願日 平成20年12月26日(2008.12.26)
審査請求日 平成20年12月26日(2008.12.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】寅市 和男
個別代理人の代理人 【識別番号】100103171、【弁理士】、【氏名又は名称】雨貝 正彦
審査官 【審査官】毛利 太郎
参考文献・文献 特開平01-306900(JP,A)
特開平03-192400(JP,A)
特開2001-069010(JP,A)
平林 晃 Akira HIRABAYASHI,近似手法としての標本化定理の一拡張 An Extension of Sampling Theorem as an Approximation Technique,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.105 No.637 IEICE Technical Report,日本,社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2006年 2月27日,p.37-42
調査した分野 G10L 19/00-19/14
H03M 7/00- 7/50
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の離散データを格納する離散データ格納手段と、
前記離散データ格納手段に格納された複数の離散データの中から値が極大あるいは極小となるピーク値を抽出するピーク値抽出手段と、
パラメータを可変することにより波形が変更可能な標本化関数を用い、1番目のピーク値に中央の極大値を合わせた前記標本化関数と1番目のピーク値に隣接する2番目のピーク値に中央の極大値を合わせた前記標本化関数との和と、隣接するこれら2つの前記ピーク値の間に存在する前記離散データとの誤差が最小になるように、1番目のピーク値に対応する前記標本化関数のパラメータとして固定値あるいは既知の値を用い、2番目のピーク値に対応する前記標本化関数のパラメータを決定する動作を、ピーク値を一つずつずらしながら行うパラメータ決定手段と、
を備え、前記パラメータ決定手段によって決定したパラメータと、これに対応する前記ピーク値に関する情報とを圧縮データとすることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記標本化関数は、それぞれが有限台の区分的多項式で表される基本標本化関数および制御標本化関数の線形結合で表されることを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記基本標本化関数をf(t)、前記制御標本化関数をC(t)、変更可能なパラメータをαとしたときに、
前記関数は、f(t)+αC(t)により表されることを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記基本標本化関数および前記制御標本化関数のそれぞれは、標本位置の区間[-1,1]において1回だけ微分可能な区分的多項式で表されることを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれかにおいて、
標本位置をtとしたとき、
前記基本標本化関数f(t)は、
【数1】
JP0004889718B2_000010t.gif
で表され、
前記制御標本化関数をC0(t)=Cr(t)+Cr(-t)としたときに、前記Cr(t)は、
【数2】
JP0004889718B2_000011t.gif
で表されることを特徴とする信号処理装置。
【請求項6】
離散データ格納手段に格納された複数の離散データの中から値が極大あるいは極小となるピーク値をピーク値抽出手段によって抽出するピーク値抽出ステップと、
パラメータを可変することにより波形が変更可能な標本化関数を用い、1番目のピーク値に中央の極大値を合わせた前記標本化関数と1番目のピーク値に隣接する2番目のピーク値に中央の極大値を合わせた前記標本化関数との和と、隣接するこれら2つの前記ピーク値の間に存在する前記離散データとの誤差が最小になるように、1番目のピーク値に対応する前記標本化関数のパラメータとして固定値あるいは既知の値を用い、2番目のピーク値に対応する前記標本化関数のパラメータを決定する動作を、ピーク値を一つずつずらしながらパラメータ決定手段によって行うパラメータ決定ステップと、
を有し、前記パラメータ決定手段によって決定したパラメータと、これに対応する前記ピーク値に関する情報とを圧縮データとすることを特徴とする信号処理方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記標本化関数は、それぞれが有限台の区分的多項式で表される基本標本化関数および制御標本化関数の線形結合で表されることを特徴とする信号処理方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記基本標本化関数をf(t)、前記制御標本化関数をC(t)、変更可能なパラメータをαとしたときに、
前記関数は、f(t)+αC(t)により表されることを特徴とする信号処理方法。
【請求項9】
請求項7または8において、
前記基本標本化関数および前記制御標本化関数のそれぞれは、標本位置の区間[-1,1]において1回だけ微分可能な区分的多項式で表されることを特徴とする信号処理方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれかにおいて、
標本位置をtとしたとき、
前記基本標本化関数f(t)は、
【数3】
JP0004889718B2_000012t.gif
で表され、
前記制御標本化関数をC0(t)=Cr(t)+Cr(-t)としたときに、前記Cr(t)は、
【数4】
JP0004889718B2_000013t.gif
で表されることを特徴とする信号処理方法。
【請求項11】
コンピュータを、
離散データ格納手段に格納された複数の離散データの中から値が極大あるいは極小となるピーク値を抽出するピーク値抽出手段と、
パラメータを可変することにより波形が変更可能な標本化関数を用い、1番目のピーク値に中央の極大値を合わせた前記標本化関数と1番目のピーク値に隣接する2番目のピーク値に中央の極大値を合わせた前記標本化関数との和と、隣接するこれら2つの前記ピーク値の間に存在する前記離散データとの誤差が最小になるように、1番目のピーク値に対応する前記標本化関数のパラメータとして固定値あるいは既知の値を用い、2番目のピーク値に対応する前記標本化関数のパラメータを決定する動作を、ピーク値を一つずつずらしながら行うパラメータ決定手段と、
して機能させ、前記パラメータ決定手段によって決定したパラメータと、これに対応する前記ピーク値に関する情報とを圧縮データとする信号処理プログラム。
【請求項12】
請求項11において、
前記標本化関数は、それぞれが有限台の区分的多項式で表される基本標本化関数および制御標本化関数の線形結合で表される信号処理プログラム。
【請求項13】
請求項12において、
前記基本標本化関数をf(t)、前記制御標本化関数をC(t)、変更可能なパラメータをαとしたときに、
前記関数は、f(t)+αC(t)により表される信号処理プログラム。
【請求項14】
請求項12または13において、
前記基本標本化関数および前記制御標本化関数のそれぞれは、標本位置の区間[-1,1]において1回だけ微分可能な区分的多項式で表される信号処理プログラム。
【請求項15】
請求項12~14のいずれかにおいて、
標本位置をtとしたとき、
前記基本標本化関数f(t)は、
【数5】
JP0004889718B2_000014t.gif
で表され、
前記制御標本化関数をC0(t)=Cr(t)+Cr(-t)としたときに、前記Cr(t)は、
【数6】
JP0004889718B2_000015t.gif
で表される信号処理プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号等を符号化して圧縮する信号処理装置、方法およびプログラムに関する。
【0002】
なお、本明細書においては、関数値が局所的な領域(標本位置を除く)の全部あるいは一部において0以外の有限の値を有し、それ以外の領域で0となる場合を「有限台」と称して説明を行うものとする。
【背景技術】
【0003】
従来から、移動体通信等の分野では、限られた通信帯域を有効に利用するために、音声信号に対して高効率符号化が行われている(例えば、特許文献1~3参照。)。また、高効率符号化が求められる点は、ICレコーダ等における音声のデジタル録音においても同じであり、限られたメモリ容量で長時間録音を行うためには、より高い圧縮率のデータ符号化方式が求められる。

【特許文献1】国際公開第2005/004113号パンフレット
【特許文献2】特開2005-151082号公報
【特許文献3】特表2007-532963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した各種の従来手法に対しては、符号化に際しての圧縮率の高さだけでなく、伸張の際に高い精度が要求される。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、データの圧縮率が高く、伸張した際に高い精度を確保することができる信号処理装置、方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の信号処理装置は、複数の離散データを格納する離散データ格納手段と、離散データ格納手段に格納された複数の離散データの中から値が極大あるいは極小となるピーク値を抽出するピーク値抽出手段と、パラメータを可変することにより波形が変更可能な標本化関数を用い、1番目のピーク値に中央の極大値を合わせた前記標本化関数と1番目のピーク値に隣接する2番目のピーク値に中央の極大値を合わせた前記標本化関数との和と、隣接するこれら2つのピーク値の間に存在する離散データとの誤差が最小になるように、1番目のピーク値に対応する前記標本化関数のパラメータとして固定値あるいは既知の値を用い、2番目のピーク値に対応する前記標本化関数のパラメータを決定する動作を、ピーク値を一つずつずらしながら行うパラメータ決定手段とを備え、パラメータ決定手段によって決定したパラメータと、これに対応するピーク値に関する情報とを圧縮データとしている。
【0007】
また、本発明の信号処理方法は、離散データ格納手段に格納された複数の離散データの中から値が極大あるいは極小となるピーク値をピーク値抽出手段によって抽出するピーク値抽出ステップと、パラメータを可変することにより波形が変更可能な標本化関数を用い、1番目のピーク値に中央の極大値を合わせた前記標本化関数と1番目のピーク値に隣接する2番目のピーク値に中央の極大値を合わせた前記標本化関数との和と、隣接するこれら2つのピーク値の間に存在する離散データとの誤差が最小になるように、1番目のピーク値に対応する前記標本化関数のパラメータとして固定値あるいは既知の値を用い、2番目のピーク値に対応する前記標本化関数のパラメータを決定する動作を、ピーク値を一つずつずらしながらパラメータ決定手段によって行うパラメータ決定ステップとを有し、パラメータ決定手段によって決定したパラメータと、これに対応するピーク値に関する情報とを圧縮データとしている。
【0008】
また、本発明の信号処理プログラムは、コンピュータを、離散データ格納手段に格納された複数の離散データの中から値が極大あるいは極小となるピーク値を抽出するピーク値抽出手段と、パラメータを可変することにより波形が変更可能な標本化関数を用い、1番目のピーク値に中央の極大値を合わせた前記標本化関数と1番目のピーク値に隣接する2番目のピーク値に中央の極大値を合わせた前記標本化関数との和と、隣接するこれら2つのピーク値の間に存在する離散データとの誤差が最小になるように、1番目のピーク値に対応する前記標本化関数のパラメータとして固定値あるいは既知の値を用い、2番目のピーク値に対応する前記標本化関数のパラメータを決定する動作を、ピーク値を一つずつずらしながら行うパラメータ決定手段として機能させ、パラメータ決定手段によって決定したパラメータと、これに対応するピーク値に関する情報とを圧縮データとしている。
【0010】
また、上述した標本化関数は、それぞれが有限台の区分的多項式で表される基本標本化関数および制御標本化関数の線形結合で表されることが望ましい。
【0011】
一般的に、制御標本化関数をck(t)とし、ck(t)=cr(t-k)+cr(-t-k)とおくと、離散データの標本位置[-N,N]間で標本化関数sN(t)が次式で表される。
【0012】
【数7】
JP0004889718B2_000002t.gif

【0013】
なお、αkは可変パラメータを示し、ユーザによって設定可能な任意の値を有する。α1=α2=α3・・・のようにkによって値が可変しないものであってもよい。
【0014】
また、上述した基本標本化関数をf(t)、制御標本化関数をC(t)、変更可能なパラメータをαとしたときに、関数は、f(t)+αC(t)により表されることが望ましい。
【0015】
また、上述した基本標本化関数および制御標本化関数のそれぞれは、標本位置の区間[-1,1]において1回だけ微分可能な区分的多項式で表されることが望ましい。
【0016】
また、標本位置をtとしたとき、基本標本化関数f(t)は、
【0017】
【数8】
JP0004889718B2_000003t.gif

【0018】
で表され、
制御標本化関数をC0(t)=Cr(t)+Cr(-t)としたときに、Cr(t)は、
【0019】
【数9】
JP0004889718B2_000004t.gif

【0020】
で表されることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、圧縮前の離散データのピーク値のみを抽出してデータの圧縮を行っているため、データの圧縮率を高くすることができる。また、圧縮前の離散データのピーク値を正確に再現することができ、伸張した際に高い精度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を適用した一実施形態の信号処理装置について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、一実施形態の信号処理装置の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の信号処理装置は、入力されたアナログ信号をデジタルデータに変換した後圧縮して格納するものであり、A/D(アナログ-デジタル)変換器10、離散データ格納部20、ピーク値抽出部30、パラメータ決定部40、圧縮データ格納部50を含んで構成されている。
【0024】
A/D変換器10は、入力されるアナログ信号(例えば、オーディオ信号)を所定周波数でサンプリングして離散データを出力する。A/D変換器10から出力される離散データは離散データ格納部20に格納される。なお、離散データ格納部20に予め格納されている離散データを処理対象とする場合には、A/D変換器10は省略してもよい。また、アナログ信号の代わりに離散データが入力される場合には、A/D変換器10を離散データを取り込むための入出力機器に置き換えるようにしてもよい。
【0025】
ピーク値抽出部30は、離散データ格納部20に格納された離散データに基づいてピーク値を抽出する。パラメータ決定部40は、ピーク値抽出部30によって抽出されたピーク値毎に近似関数を設定し、この近似関数を特定するためのパラメータを決定する。ピーク値抽出部30によって抽出されたピーク値に関する情報とパラメータ決定部40によって決定されたパラメータとが圧縮データとして圧縮データ格納部50に格納される。
【0026】
本実施形態におけるデータ圧縮の原理は、隣接する2つのピーク値間の信号波形を、パラメータを可変することで波形形状が変更可能な関数(標本化関数)を用いて近似し、ピーク値に関する情報とこのパラメータの組合せを圧縮データとするものである。
【0027】
次に、パラメータを可変することで波形形状が変更可能な標本化関数の具体例について説明する。
【0028】
図2は、本実施形態において用いられる標本化関数を構成する基本標本化関数f(t)と制御標本化関数c0(t)の波形形状を示す図である。図2において、横軸は離散データの標本位置tを、縦軸は各標本化関数値をそれぞれ示している。離散データの標本位置[-2,2]間での基本標本化関数f(t)および制御標本化関数c0(t)からなる標本化関数s2(t)は、次式で表される。
【0029】
【数10】
JP0004889718B2_000005t.gif

【0030】
一般的に、制御標本化関数をck(t)とし、ck(t)=cr(t-k)+cr(-t-k)とおくと、離散データの標本位置[-N,N]間で標本化関数sN(t)が次式で表される。
【0031】
【数11】
JP0004889718B2_000006t.gif

【0032】
なお、αkは可変パラメータを示し、ユーザによって設定可能な任意の値を有する。α1=α2=α3・・・のようにkによって値が可変しないものであってもよい。
【0033】
基本標本化関数f(t)は、微分可能性に着目した有限台の区分多項式関数であり、例えば全域において1回だけ微分可能であって、横軸に沿った標本位置tが-1から+1(すなわち、区間[-1,1])にあるときに0以外の有限な値を有し、他の区間では恒等的に0で表される関数である。具体的には、基本標本化関数f(t)は、区間[-1,1]内を2以上に区分した各小区間においてn次多項式関数であって、各小区間の境界で連続(値と傾きのそれぞれが連続)な関数である。この基本標本化関数f(t)は、全範囲でn-1回(nは2以上の整数)だけ微分可能な凸形状の波形形状を示し、t=0の標本位置でのみ1になり、t=±1に向けて0に収束し、t=±2の標本位置までそのまま0の値を維持するという特徴を有する。
【0034】
また、この基本標本化関数f(t)は、区間[-1,1]で有限台のインパルス応答波形の関数でもよく、あるいは、標本位置区間の任意の位置で少なくとも1回微分可能で連続なn次の区分多項式関数でもよい。
【0035】
具体例として、2次の区分多項式関数で表した基本標本化関数f(t)は、次式で表される。
【0036】
【数12】
JP0004889718B2_000007t.gif

【0037】
そして、この基本標本化関数f(t)を用いて各離散データに基づく重ね合わせを行うことにより、離散データ間の任意の点における値を仮補間することができる。
【0038】
一方、制御標本化関数c0(t)は、微分可能性に着目した有限台の区分多項式関数であり、基本標本化関数と同様にm次多項式関数で表される。例えば、全域において1回だけ微分可能であって、横軸に沿った標本位置tが-2から+2(すなわち、区間[-2,2])にあるときに0以外の有限な値を有し、他の区間では恒等的に0で表される関数である。また、制御標本化関数c0(t)は、全範囲で1回だけ微分可能な波形を示し、t=0、±1、±2の各標本位置で0なるという特徴を有する。
【0039】
また、この制御標本化関数c0(t)は、有限台のインパルス応答波形の関数でよく、標本位置区間の任意の位置で少なくとも1回微分可能で連続なm次の区分多項式関数で良い。
【0040】
ここで、制御標本化関数c0(t)は、上述したように制御標本化関数c0(t)=cr(t)+cr(-t)で表される。このcr(t)は、例えば2次の区分多項式で表現すると、次式で表される。
【0041】
【数13】
JP0004889718B2_000008t.gif

【0042】
この制御標本化関数c0(t)を用いて各離散データに基づく重ね合わせを行うことにより、離散データ間の値を仮補間することができる。
【0043】
このようにして、基本標本化関数f(t)に基づいて算出した仮の補間値(以下、これを「基本補間値」と呼ぶ)と、制御標本化関数c0(t)に基づいて算出した仮の補間値(以下、これを「制御補間値」と呼ぶ)とを線形加算することにより、離散データ間の任意の点における値を補間することができる。
【0044】
因みに、2次の区分多項式関数で表した標本化関数の場合、基本標本化関数f(t)と制御標本化関数c0(t)との線形結合では、下記の6つの条件が成立する。
・第1としては、S2(0)=1、S2(±1)=S2(±2)=0となること。
・第2としては、偶関数、すなわちy軸に関して対称となること。
・第3としては、標本位置区間[-∞,-2]、[2,+∞]で恒等的に0であること。
・第4としては、各区間[n/2,(n+1)/2](-4≦n≦3)においては高々二次の多項式であること。
・第5としては、全区間で連続、かつ、一回微分可能であること。
・第6としては、標本位置区間[-1/2,1/2]において、次式で表されること。
【0045】
【数14】
JP0004889718B2_000009t.gif

【0046】
なお、N=2のときの標本化関数s2(t)については、説明の便宜上、単に標本化関数sN(t)として、以下の説明を行うものとする。
【0047】
また、これに加えて、このとき制御標本化関数c0(t)には、任意の数値が設定された可変パラメータαを乗算する。これにより、制御標本化関数c0(t)は、t=0、±1、±2の標本位置で0としたまま、標本位置-2から+2までの間で当該可変パラメータαの数値に応じてその波形の振幅を変形することができる。
【0048】
図3は、可変パラメータαの値を変化させたときの標本化関数sN(t)の波形を示す図である。図3に示すように、基本標本化関数f(t)が示す波形と、制御標本化関数c0(t)が示す波形とを合成した標本化関数sN(t)の波形は、可変パラメータαの数値によって大きく異なるものとなる。例えば、可変パラメータαを-1.5、-0.25、1.5の順に変化させてゆくと、-2≦t≦-1の領域と、1≦t≦2の領域とでは、標本化関数sN(t)の波長の振幅が次第に高くなり波形の極性が反転することを確認した。一方、-1≦t≦0の領域と、0≦t≦1の領域とでは、標本化関数sN(t)の波形の振幅が次第に低くなり波形の極性が反転することを確認した。なお、本実施形態では、上述した標本化関数sN(t)の-1≦t≦1の領域の波形が使用される。
【0049】
上述した離散データ格納部20が離散データ格納手段に、ピーク値抽出部30がピーク値抽出手段に、パラメータ決定部40がパラメータ決定手段にそれぞれ対応する。また、ピーク値抽出部30による動作がピーク値抽出ステップの動作に、パラメータ決定部40による動作がパラメータ決定ステップの動作にそれぞれ対応する。
【0050】
また、上述した信号処理装置は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータの構成によって実現することができる。この場合に、離散データ格納部20や圧縮データ格納部50はハードディスク装置や半導体メモリによって構成することが可能である。ピーク値抽出部30、パラメータ決定部40は、ROMやRAMあるいはハードディスク装置等に格納された所定の画像処理プログラムをCPUで実行することにより実現することができる。
【0051】
本実施形態の信号処理装置はこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。図4は、本実施形態の信号処理装置の動作手順を示す流れ図である。
【0052】
まず、A/D変換器10を用いた離散データの取得および離散データ格納部20への格納が行われる(ステップ100)。次に、ピーク値抽出部30は、離散データ格納部20に格納された離散データを読み出してピーク値の抽出を行う(ステップ101)。
【0053】
図5は、ピーク値抽出の概要を示す図である。図5において、横軸は時間t(例えば、入力されたアナログ信号に対してサンプリングを行った時間)を、縦軸は各離散データの値を示している。また、図5において●で示された各点が離散データを示している。
【0054】
ピーク値抽出部30は、アナログ信号の入力順に、時間t0、t1、t2、・・・のそれぞれに対応する離散データの値Y(t0)、Y(t1)、Y(t2)、・・・を読み出し、極小あるいは極大となる値をピーク値として抽出する。図5に示す例では、時間t0、t3、t8、t13、t17、t21のそれぞれに対応する値Y(t0)、Y(t3)、Y(t8)、Y(t13)、Y(t17)、Y(t21)がピーク値として抽出される。なお、時間t0に対応する離散データの値Y(t0)は極小値ではないが、最初および最後の離散データについてはピーク値に含めるものとする。抽出されたピーク値に関する情報(時間と離散データの値)は圧縮データ格納部50あるいは作業用メモリ等(図示せず)に格納される。
【0055】
次に、パラメータ決定部40は、ピーク値抽出部30によって抽出されて圧縮データ格納部50等に格納された各ピーク値の中から、処理に必要な1番目のピーク値に関する情報と2番目のピーク値に関する情報を読み出し(ステップ102)、1番目のピーク値に対応する標本化関数の可変パラメータαを設定するとともに(ステップ103)、2番目のピーク値に対応する標本化関数の可変パラメータαを決定する(ステップ104)。
【0056】
図6は、最初に読み出された2つのピーク値に対応して可変パラメータαを設定あるいは決定する動作の説明図である。図5に示す例では、最初に読み出された1番目のピーク値は時間t0の離散データの値Y(t0)に対応し、2番目のピーク値は時間t3の離散データの値Y(t3)に対応している。
【0057】
パラメータ決定部40は、1番目のピーク値に対応する可変パラメータαとして固定値を設定する。例えば、可変パラメータαとして-0.25を設定する。図7は、可変パラメータαを-0.25に設定した場合の標本化関数を示す図である。この標本化関数φ(t)は、以下の式で示される区分多項式であり、補間位置を中心に左右2画素の画素値を用いて補間画素の画素値を算出することができる。
【0058】
φ(t)=-1.75|t|2+1.0 (|t|≦0.5)
1.25|t|2-3.0|t|+1.75 (0.5<|t|≦1.0)
0.75|t|2-2.0|t|+1.25 (1.0<|t|≦1.5)
-0.25|t|2+|t|-1.0 (1.5<|t|≦2.0)
0 (2.0<|t|)
但し、本実施形態では、第1のピーク値に対応する標本化関数として、図7に示す標本化関数の波形の0≦t≦1の領域が使われる。また、この標本化関数は、t=0の値が第1のピーク値としての値Y(t0)に一致し、t=1の位置が時間t3に一致するように波形の縦方向および横方向の大きさが調整される。
【0059】
また、パラメータ決定部40は、2番目のピーク値に対応する可変パラメータαとして誤差が最小となる値を決定する。具体的には、1番目のピーク値に対応する標本化関数(図6ではAで示されている)と2番目のピーク値に対応する標本化関数(図6ではB1、B2、B3で示されている)とを合成(加算)した波形(合成波形)と、これら2つのピーク値の間に存在する離散データの値Y(t1)、Y(t2)との間で誤差を算出し、この誤差が最小となるような可変パラメータαの値を決定する。例えば、各離散データの値Y(t1)、Y(t2)と合成波形の値との差を二乗して加算した二乗誤差の値が最小となる可変パラメータαの値が決定される。
【0060】
但し、本実施形態では、第2のピーク値に対応する標本化関数として、図3に示す標本化関数の波形の-1≦t≦0の領域が使われる。また、この標本化関数は、t=0の値が第2のピーク値としての値Y(t3)に一致し、t=-1の位置が時間t0に一致するように波形の縦方向および横方向の大きさが調整される。
【0061】
図6に示す例では、可変パラメータαの値が-0.1の標本化関数sN(t)を用いたときに上述した二乗誤差が最小になったとすると、この値-0.1が第2のピーク値に対応する可変パラメータαの値として決定される。なお、2番目のピーク値に対応する標本化関数として、図6ではB1、B2、B3の3つが図示されているが、実際にはαの値を可変して得られる多数の標本化関数が存在し、その中から最適な可変パラメータαの値が決定される。
【0062】
このようにして決定(あるいは設定)された可変パラメータαが2つのピーク値に関する情報(時間と離散データの値)が圧縮データ格納部50に格納される(ステップ105)。
【0063】
次に、パラメータ決定部40は、他にピーク値があるか否かを判定する(ステップ106)。他にピーク値がある場合には肯定判断が行われ、パラメータ決定部40は、処理に必要な次のピーク値に関する情報を圧縮データ格納部50等から読み出す(ステップ107)。その後、ステップ104に戻って2番目のピーク値に対応する可変パラメータαの決定動作以降が繰り返される。
【0064】
図8は、時間t8に対応する新たなピーク値に関する情報が読み出された場合にこのピーク値に対応して可変パラメータαを設定する動作の説明図である。図8に示す1番目のピーク値に対応する可変パラメータα(=-0.1)の値は、先のステップ104の動作において既に決定されている。したがって、時間t8に対応する2番目のピーク値に対応する可変パラメータαの値のみを決定すればよい。
【0065】
すなわち、パラメータ決定部40は、2番目のピーク値に対応する可変パラメータαとして誤差が最小となる値を決定する。具体的には、1番目のピーク値に対応する標本化関数(図8ではB3で示されている)と2番目のピーク値に対応する標本化関数(図8ではC1、C2、C3で示されている)とを合成(加算)した波形(合成波形)と、これら2つのピーク値の間に存在する離散データの値Y(t4)、Y(t5)、Y(t6)、Y(t7)との間で誤差を算出し、この誤差が最小となるような可変パラメータαの値を決定する。例えば、各離散データの値Y(t4)、Y(t5)、Y(t6)、Y(t7)と合成波形の値との差を二乗して加算した二乗誤差の値が最小となる可変パラメータαの値が決定される。
【0066】
このようにして、抽出されたピーク値が一つ追加される毎に、対応する可変パラメータαの値が決定されて、このピーク値に関する情報とともに圧縮データ格納部50に格納される。
【0067】
ところで、圧縮データ格納部50に格納されたピーク値に関する情報と可変パラメータαの値とを読み出すことにより、圧縮前の離散データを容易に復元(伸張)することができる。例えば、図8に示す2つのピーク値に関する情報とそれぞれのピーク値に対応する可変パラメータαの値とを読み出すことにより、一方のピーク値に対応する標本化関数B3と、他方のピーク値に対応する標本化関数(例えばC1)とを決定し、これら2つの標本化関数の波形を合成した波形を得ることができる。したがって、これら2つのピーク値の間に存在する離散データの値Y(t4)、Y(t5)、Y(t6)、Y(t7)を、この合成波形の値を演算することにより復元することができる。また、このようにして伸張された離散データでは、圧縮前の離散データのピーク値を正確に再現することができ、伸張した際に高い精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】一実施形態の信号処理装置の構成を示す図である。
【図2】本実施形態において用いられる標本化関数を構成する基本標本化関数f(t)と制御標本化関数c0(t)の波形形状を示す図である。
【図3】可変パラメータαの値を変化させたときの標本化関数sN(t)の波形を示す図である。
【図4】本実施形態の信号処理装置の動作手順を示す流れ図である。
【図5】ピーク値抽出の概要を示す図である。
【図6】最初に読み出された2つのピーク値に対応して可変パラメータαを設定あるいは決定する動作の説明図である。
【図7】可変パラメータαを-0.25に設定した場合の標本化関数を示す図である。
【図8】新たなピーク値に関する情報が読み出された場合にこのピーク値に対応して可変パラメータαを設定する動作の説明図である。
【符号の説明】
【0069】
10 A/D(アナログ-デジタル)変換器
20 離散データ格納部
30 ピーク値抽出部
40 パラメータ決定部
50 圧縮データ格納部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7