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明細書 :フラーレン誘導体を含む光電変換材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5062765号 (P5062765)
登録日 平成24年8月17日(2012.8.17)
発行日 平成24年10月31日(2012.10.31)
発明の名称または考案の名称 フラーレン誘導体を含む光電変換材料
国際特許分類 H01M  14/00        (2006.01)
H01L  31/04        (2006.01)
FI H01M 14/00 P
H01L 31/04 Z
請求項の数または発明の数 10
全頁数 20
出願番号 特願2008-514530 (P2008-514530)
出願日 平成19年5月2日(2007.5.2)
国際出願番号 PCT/JP2007/059810
国際公開番号 WO2007/129767
国際公開日 平成19年11月15日(2007.11.15)
優先権出願番号 2006129854
優先日 平成18年5月9日(2006.5.9)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年12月22日(2008.12.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】中村 栄一
【氏名】松尾 豊
【氏名】金井塚 勝彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100092783、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100095360、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 英二
【識別番号】100114409、【弁理士】、【氏名又は名称】古橋 伸茂
【識別番号】100104282、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 康仁
審査官 【審査官】植前 充司
参考文献・文献 特開2003-238692(JP,A)
特開2003-031832(JP,A)
特開2002-094146(JP,A)
特開2005-236278(JP,A)
Yutaka Matsuo, Ayako Muramatsu, Kazukuni Tahara, Madoka Koide, and Eiichi Nakamura,SYNTHESIS OF 6,9,12,15,18-PHENTAMETHYL-1,6,9,12,15,18-HEXAHYDRO(C60-Ih)[5,6]FULLERENE,Organic Synthesis,2006年,vol.83,p.80-87
調査した分野 H01M 14/00
H01L 31/04
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)
【化1】
JP0005062765B2_000017t.gif
[式中、はそれぞれ独立してカルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を有する、C~C30アルキル基、C~C30アルケニル基、C~C30アルキニル基、C~C30アルキルジエニル基、C~C18アリール基、C~C30アルキルアリール基、C~C30アリールアルキル基、C~C30シクロアルキル基またはC~C30シクロアルケニル基を示し;Rは水素原子またはC~C30アルキル基を示す。]
で表されるフラーレン誘導体を含む、光電変換材料。
【請求項2】
下記式(10)
【化3】
JP0005062765B2_000018t.gif
[式中、Rは水素原子またはC~C30アルキル基を示し;Rはそれぞれ独立して下記式(
【化4】
JP0005062765B2_000019t.gif
(式中、Xはカルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を示す。)で表される基である。]
で表されるフラーレン誘導体を含む、光電変換材料。
【請求項3】
下記式(11)
【化5】
JP0005062765B2_000020t.gif
[式中、Rは水素原子またはC~C30アルキル基を示し、Rはそれぞれ独立して下記式(
【化6】
JP0005062765B2_000021t.gif
(式中、Xはカルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を示す。
で表されるフラーレン誘導体を含む、光電変換材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の光電変換材料が自己組織化された単分子膜を有する、光電変換素子。
【請求項5】
自己組織化された請求項1~4のいずれかに記載の光電変換材料の単分子膜が形成されたITO電極を有する、光電変換素子。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光電変換素子を有する、太陽電池。
【請求項7】
下記式(1)
【化7】
JP0005062765B2_000022t.gif
[式中、はそれぞれ独立してチオール基またはジスルフィド基を有する、C~C30アルキル基、C~C30アルケニル基、C~C30アルキニル基、C~C30アルキルジエニル基、C~C18アリール基、C~C30アルキルアリール基、C~C30アリールアルキル基、C~C30シクロアルキル基またはC~C30シクロアルケニル基を示し;Rは水素原子またはC~C30アルキル基を示す。]
で表されるフラーレン誘導体を含む、光電変換材料。
【請求項8】
請求項に記載の光電変換材料が自己組織化された単分子膜を有する、光電変換素子。
【請求項9】
自己組織化された請求項に記載の光電変換材料の単分子膜が形成された金電極を有する、光電変換素子。
【請求項10】
請求項8または9に記載の光電変換素子を有する、太陽電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はフラーレン誘導体を含む光電変換材料、光電変換材料が自己組織化された単分子膜を有する光電変換素子、および、当該光電変換素子を有する太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素原子が球状またはラグビーボール状に配置して形成される炭素クラスター(以下、「フラーレン」ともいう)の合成法が確立されて以来、フラーレンに関する研究が精力的に展開されている。その結果、数多くのフラーレン誘導体が合成されてきた。
【0003】
一般的に、フラーレン誘導体は広く拡張したπ電子系を有する。そしてフラーレン誘導体はHOMO-LUMOギャップが比較的小さく(1.5~2.0eV程度)、かつ、幅広い波長域での光吸収特性と高効率なSinglet-to-Triplet項間交差を経由した発光特性とを有することが特徴的である。また、フラーレンは炭素原子のみで構成されていながら、多段階の可逆な酸化還元反応(6電子還元)を示す。このような特性から、フラーレン誘導体の応用の可能性は大変幅広く、たとえば、FET、有機EL、太陽電池、触媒等の利用が考えられている。
【0004】
フラーレン金属錯体の光吸収特性を利用した光電変換素子に関しては、フラーレンの高い電子アクセプター能の性質を利用した人工光合成構築の研究が報告されている。具体的には、フェロセン(電子ドナー)-ポルフィリン(光吸収中心)-フラーレン(電子アクセプター)を用いて化学結合を介して連結した分子を金電極上に作製した単分子膜の湿式太陽電池[Eur. J. Org. Chem. 2445. (1999)(非特許文献1)]や、フラーレン金属錯体とポルフィリンを連結した分子をITO電極上に固定した湿式太陽電池[J. Am. Chem. Soc. 127, 2380, (2005)](非特許文献2)]などが報告されている。
しかしながら、これらの太陽電池において、その光電変換素子に用いるフラーレン誘導体の合成が煩雑であることに加えて、所望の特性を充分に発揮できないという問題点があった。
【0005】
上記の状況の下、たとえば、光電流発生の量子効率が極めて高いフラーレン誘導体が求められている。光電流発生の量子効率が極めて高く、かつ、合成が容易なフラーレン誘導体が求められている。また、発電効率の高い太陽電池が求められている。
【発明の開示】
【0006】
本発明者等は、比較的合成が容易なフラーレン誘導体の中から、光電流発生の量子効率が高い誘導体を見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。本発明は以下のようなフラーレン誘導体を含む光電変換材料、光電変換材料が自己組織化された単分子膜を有する光電変換素子、および、当該光電変換素子を有する太陽電池を提供する。
【0007】
[1] 下記式(1)
【化8】
JP0005062765B2_000002t.gif

[式中、Rはそれぞれ独立してカルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を有する、C~C30炭化水素基、C~C30アルコキシ基、C~C30アリールオキシ基、アミノ基、シリル基、アルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)、アリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、アルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)またはアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)を示し、
は水素原子、または、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基を示す。]
で表されるフラーレン誘導体を含む、光電変換材料。
【0008】
[1]において、R1はそれぞれ独立してカルボン酸基を含む有機基であることが好ましい。[2] Rはそれぞれ独立してカルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を有する、C~C30アルキル基、C~C30アルケニル基、C~C30アルキニル基、C~C30アルキルジエニル基、C~C18アリール基、C~C30アルキルアリール基、C~C30アリールアルキル基、C~C30シクロアルキル基またはC~C30シクロアルケニル基を示し、Rは水素原子またはC~C30アルキル基を示す、[1]に記載の光電変換材料。
【0009】
[3] 下記式(10)
【化9】
JP0005062765B2_000003t.gif

[式中、Rは水素原子、または、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立して下記式(A)
【化10】
JP0005062765B2_000004t.gif
(式中、Xはカルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を示し、R20はそれぞれ独立して有機基を示し、nは0~4の整数である。)で表される基である。]
で表されるフラーレン誘導体を含む、光電変換材料。
[3]において、X1はそれぞれ独立してカルボン酸基を示すことが好ましく、nは0が好ましく、Xはパラ位にあることが好ましい。
【0010】
[4] 下記式(11)
【化11】
JP0005062765B2_000005t.gif

[式中、Rは水素原子、または、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立して下記式(B)
【化12】
JP0005062765B2_000006t.gif
(式中、Xはカルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を示し、R20はそれぞれ独立して有機基を示し、nは0~4の整数であり、mは0~4の整数である。)で表される基であ。]
で表されるフラーレン誘導体を含む、光電変換材料。
【0011】
[4]において、式(B)で表される基は、下記式(B1)
【化13】
JP0005062765B2_000007t.gif
(式中、Xはカルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を示し、R20はそれぞれ独立して有機基を示し、nは0~4の整数であり、mは0~4の整数である。)で表される基であることが好ましい。
式(B)または式(B1)において、X1はそれぞれ独立してカルボン酸基を示すことが好ましく、nとmはそれぞれ0が好ましく、Xはパラ位にあることが好ましい。
【0012】
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の光電変換材料が自己組織化された単分子膜を有する、光電変換素子。
[6] 自己組織化された[1]~[4]のいずれかに記載の光電変換材料の単分子膜が形成されたITO電極を有する、光電変換素子。
[7] [5]または[6]に記載の光電変換素子を有する、太陽電池。
【0013】
[8] 下記式(1)
【化14】
JP0005062765B2_000008t.gif
[式中、Rはそれぞれ独立してチオール基またはジスルフィド基を有する、C~C30炭化水素基、C~C30アルコキシ基、C~C30アリールオキシ基、アミノ基、シリル基、アルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)、アリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、アルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)またはアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)を示し、
は水素原子、または、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基を示す。]
で表されるフラーレン誘導体を含む、光電変換材料。
【0014】
[8]において、R1はそれぞれ独立してカルボン酸基を含む有機基であることが好ましい。[9] Rはそれぞれ独立してチオール基またはジスルフィド基を有する、C~C30アルキル基、C~C30アルケニル基、C~C30アルキニル基、C~C30アルキルジエニル基、C~C18アリール基、C~C30アルキルアリール基、C~C30アリールアルキル基、C~C30シクロアルキル基またはC~C30シクロアルケニル基を示し、Rは水素原子またはC~C30アルキル基を示す、[8]に記載の光電変換材料。
【0015】
[10] [8]または[9]に記載の光電変換材料が自己組織化された単分子膜を有する、光電変換素子。
[11] 自己組織化された[8]または[9]に記載の光電変換材料の単分子膜が形成された金電極を有する、光電変換素子。
[12] [10]または[11]に記載の光電変換素子を有する、太陽電池。
【0016】
本発明の好ましい態様に係るフラーレン誘導体を用いると、たとえば、光電流発生の量子効率が極めて高い光電変換材料が提供できる。また、たとえば、合成が容易なフラーレン誘導体を含む、光電流発生の量子効率が極めて高い光電変換材料が提供できる。本発明の好ましい態様に係る光電変換素子は量子効率が高い。また、本発明の好ましい態様に係る太陽電池は効率的に発電をすることができ、また、低いコストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1は、光電変換素子を用いた光電変換のメカニズムを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
1.本発明の光電変換材料に含まれるフラーレン誘導体
上述したとおり、本発明の製造方法で得られるフラーレン誘導体は、C60(R(R)[式中、Rはそれぞれ独立して置換基を有する有機基を示し、Rは水素原子、または、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基を示す。]で表されるフラーレン誘導体であり、具体的には、上記式(1)で表されるフラーレン誘導体である。
【0019】
(1)式中、Rはそれぞれ独立して置換基を有する有機基を示す。これらの有機基の中でも、Rはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示すことが好ましい。
【0020】
は、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、チオール基、ジスルフィド基、エステル基、アミド基、アルキン基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルエチニル基、アリール基、アミノ基、ホスホニル基、チオ基、カルボニル基、ニトロ基、スルホ基、イミノ基、ハロゲノ基およびアルコキシ基からなる群から選ばれる1以上の置換基を有することができる。Rは、これらの置換基の中でも、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、チオール基およびジスルフィド基なる群から選ばれる1以上の置換基を有することが好ましい。
【0021】
(1)式中、Rは水素原子またはC~C30炭化水素基を示し、水素原子またはC~C30アルキル基を示すことが好ましく、メチル基を示すことがさらに好ましい。
【0022】
また、(1)で表されるフラーレン誘導体がITO(インジウム-スズ酸化物)電極に用いられる場合には、(1)式中、Rはそれぞれ独立して、カルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を有する、C~C30炭化水素基、C~C30アルコキシ基、C~C30アリールオキシ基、アミノ基、シリル基、アルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)、アリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、アルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)またはアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)を示すことが好ましく、Rはそれぞれ独立してカルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を有する、C~C30アルキル基、C~C30アルケニル基、C~C30アルキニル基、C~C30アルキルジエニル基、C~C18アリール基、C~C30アルキルアリール基、C~C30アリールアルキル基、C~C30シクロアルキル基またはC~C30シクロアルケニル基を示すことがさらに好ましい。さらには、(1)式中、R1はそれぞれ独立して、
【化15】
JP0005062765B2_000009t.gif
(式中、Xはカルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を示し、R20はそれぞれ独立して有機基を示し、nは0~4の整数である。)で表される基、または、
【化16】
JP0005062765B2_000010t.gif
(式中、Xはカルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を示し、R20はそれぞれ独立して有機基を示し、nは0~4の整数であり、mは0~4の整数である。)
で表される基が好ましい。ここで、式(A)および式(B)中、nとmは共に0であることが好ましい。また、R20は有機基であれば特に限定されないが、C~C30炭化水素基が好ましい。
【0023】
また、式(A)は
【化17】
JP0005062765B2_000011t.gif
(式中、X1はそれぞれ独立してカルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、チオール基またはジスルフィド基を示す。)
で表される基であることが特に好ましく、式(B)は
【化18】
JP0005062765B2_000012t.gif
(式中、X1はそれぞれ独立してカルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、チオール基またはジスルフィド基を示す。)
で表される基であることが特に好ましい。
【0024】
本明細書において、「C~C30炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C~C30炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。「C~C30炭化水素基」には、C~C30アルキル基、C~C30アルケニル基、C~C30アルキニル基、C~C30アルキルジエニル基、C~C18アリール基、C~C30アルキルアリール基、C~C30アリールアルキル基、C~C30シクロアルキル基、C~C30シクロアルケニル基、(C~C10シクロアルキル)C~C10アルキル基などが含まれる。
【0025】
本明細書において、「C~C30アルキル基」は、C~C10アルキル基であることが好ましく、C~Cアルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「C~C30アルケニル基」は、C~C10アルケニル基であることが好ましく、C~Cアルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチルアリル、2-ブテニル等を挙げることができる。
【0027】
本明細書において、「C2~C30アルキニル基」は、C~C10アルキニル基であることが好ましく、C~Cアルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。
【0028】
本明細書において、「C~C30アルキルジエニル基」は、C~C10アルキルジエニル基であることが好ましく、C~Cアルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3-ブタジエニル等を挙げることができる。
【0029】
本明細書において、「C~C18アリール基」は、C~C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0030】
本明細書において、「C~C30アルキルアリール基」は、C~C12アルキルアリール基であることが好ましい。アルキルアリール基の例としては、制限するわけではないが、o-トリル、m-トリル、p-トリル、2,3-キシリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、o-クメニル、m-クメニル、p-クメニル、メシチル等を挙げることができる。
【0031】
本明細書において、「C~C30アリールアルキル基」は、C~C12アリールアルキル基であることが好ましい。アリールアルキル基の例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、2,2-ジフェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル、5-フェニルペンチル等を挙げることができる。
【0032】
本明細書において、「C~C30シクロアルキル基」は、C~C10シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0033】
本明細書において、「C~C30シクロアルケニル基」は、C~C10シクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。
【0034】
本明細書において、「C~C30アルコキシ基」は、C~C10アルコキシ基であることが好ましく、C~Cアルコキシ基であることが更に好ましい。アルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
【0035】
本明細書において、「C~C30アリールオキシ基」は、C~C10アリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等を挙げることができる。
【0036】
本明細書において、「アルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)」及び「アルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)」において、Y及びYは、C~C10アルキル基であることが好ましく、C~Cアルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0037】
本明細書において、「アリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)」及び「アリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)」において、Y及びYは、C~C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0038】
2.本発明の光電変換材料に含まれるフラーレン誘導体の製造方法
本発明の光電変換材料に含まれるフラーレン誘導体の製造方法は特に限定されるものではないが、たとえば、フラーレン、下記式(2)
(2)
[式中、Rは有機基を示し;Xはハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン化有機化合物(A)、
下記式(3)
MgX (3)
[式中、Rは有機基を示し;Xはハロゲン原子を示す。]
で表されるグリニャール試薬(B)、および、1価もしくは2価の銅化合物から調製される有機銅試薬(C)を反応させてフラーレン誘導体を合成することができる。
【0039】
2.1 フラーレン
本発明のフラーレン誘導体の製造方法に用いられるフラーレンは、たとえば、フラーレンC60(いわゆる「バックミンスター・フラーレン」)が挙げられる。
【0040】
2.2 ハロゲン化有機化合物(A)
本発明の製造方法で用いられるハロゲン化有機化合物(A)は上記式(2)で表される。
(2)式中、Rは有機基であれば特に限定されるものではないが、たとえば、置換基を有していてもよいC~C20炭化水素基、置換基を有していてもよいC~C20アルコキシ基、置換基を有していてもよいC~C20アリールオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有していてもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有していてもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有していてもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有していてもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有していてもよいC~C18アリール基を示す。)を示す。
【0041】
さらに具体的には、Rは、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アルキン基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルエチニル基、アリール基、アミノ基、ホスホニル基、チオ基、カルボニル基、ニトロ基、スルホ基、イミノ基、ハロゲノ基、アルコキシ基等の官能基を含む置換基を有することができる。ハロゲン化有機化合物の合成の容易性の点から、エステル基、アミド基、アルキン基、トリメチルシリル基およびアリール基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含むことが好ましい。この際、Rに含まれる官能基が2以上の場合、各官能基は同一であっても異なっていてもよい。
(2)式中、Xはハロゲン原子を示す。Xはハロゲン原子の中でも、Cl、BrまたはIが好ましい。
【0042】
2.3 グリニャール試薬(B)
本発明の製造方法で用いられるグリニャール試薬(B)は上記式(3)で表される。
(3)式中、Rはグリニャール試薬の調整が可能な不活性置換基を有する有機基であれば特に限定されるものではない。上記置換基としては、たとえば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基またはアリール基が挙げられる。
(3)式中、Xはハロゲン原子を示す。Xはハロゲン原子の中でも、Cl、BrまたはIが好ましい。
【0043】
2.4 有機銅試薬(C)
本発明の製造方法で用いられる有機銅試薬(C)は、1価または2価の銅化合物から調整されたものであれば、特に限定されるものではない。これらの中でも、精製が容易で純度を高めることができる点から、有機銅試薬としてCuBr・S(CHを用いることが好ましい。
また、有機銅試薬の安定化や溶解度を向上させること等を目的として、場合により、N,N-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)や、N-ブチルピロリドン(NBT)などの添加剤を適時用いることもできる。
【0044】
2.5 混合比等
通常、ハロゲン化有機化合物(A)、グリニャール試薬(B)および有機銅試薬(C)は、フラーレンに対して5~50当量、好ましくは10~20当量用いられる。
また、本件発明の製造方法に用いられるハロゲン化有機化合物(A)とグリニャール試薬(B)との混合比(モル比)は1:0.8~1:1の範囲が好ましく、グリニャール試薬(B)と有機銅試薬(C)との混合比(モル比)は1:0.8~0.8:1の範囲が好ましい。
高純度のフラーレン誘導体を合成するためには、グリニャール試薬に対してハロゲン化有機化合物と有機銅試薬をやや過剰に用いることが好ましい。
【0045】
2.5 反応条件
本発明の光電変換材料に含まれるフラーレン誘導体の製造方法における、フラーレン、ハロゲン化有機化合物(A)、グリニャール試薬(B)および有機銅試薬(C)の反応は、一般的には、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロベンゼン、またはそれらの混合溶媒などの不活性溶媒中で行われる。
当該反応は-70℃~70℃の温度範囲で行われることが好ましく、-50℃~50℃の温度範囲で行われることがさらに好ましい。
また、反応時間は用いられる溶媒や温度等に依存するが、一般的には、通常、数分~5時間、好ましくは10分~4時間程度で行われる。
本発明の光電変換材料に含まれるフラーレン誘導体の合成反応の停止は、塩化アンモニウム水溶液などを反応系中に添加することによって行うことができる。
【0046】
2.6 フラーレン誘導体の単離
本発明の光電変換材料に含まれるフラーレン誘導体の合成反応の反応系からフラーレン誘導体を単離する方法は、特に限定されないが、たとえば反応液をそのままシリカゲルカラムに通すことによって、無機物等の副生成物を除くことによって行われる。必要に応じて、単離した物質について、HPLCや通常のカラムクロマトグラフィー等で更に精製し、フラーレン誘導体の純度を向上させてもよい。
【0047】
2.7 フラーレン骨格に付加された置換基の変換
上記本発明のフラーレン誘導体合成反応によってフラーレン骨格に付加された置換基を変換することができる。
たとえば、カルボキシル基が付加されたフラーレン誘導体は、上記フラーレン誘導体合成反応によって得られた、エステル基が置換基として付加されたフラーレン誘導体にNaHやNaOH等の塩基を添加して処理し、エステル基をカルボキシル基に変換することによって得ることができる。
【0048】
3.本発明の光電変換素子
本発明の光電変換素子は、支持体の上に前記光電変換材料が自己組織化された単分子膜が形成された構成を有する。
本発明の光電変換素子に用いられる支持体には、金属板のような導電性材料や、ガラス板やプラスチックフイルムのような非導電性材料に導電性物質を設けた構造のものを用いることができる。支持体に用いられる材料の例としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム)あるいは導電性金属酸化物(例えばインジウム-スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの)や炭素を挙げることができる。支持体の厚さは特に制約されないが、0.3mm~5mmが好ましい。
【0049】
また支持体は実質的に透明であることが好ましく、実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが最も好ましい。透明な支持体を得るためには、ガラス板またはプラスチックフイルムの表面に、導電性金属酸化物からなる導電性層を設けることが好ましい。透明な支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
支持体の表面抵抗は、50Ω/cm2以下であることが好ましく、10Ω/cm2以下であることがさらに好ましい。
【0050】
また、自己組織化された膜とは、膜を構成する有機化合物の一部を、基板表面の官能基と結合させたものであり、きわめて欠陥が少なく、高い秩序性すなわち結晶性を有した膜である。この自己組織化された膜は、製造方法が比較的簡便であるため、基板への成膜を容易に行うことができる。
本発明の自己組織化された単分子膜は、当該膜を構成するフラーレン誘導体の一部を電極等の支持体の表面に結合させたものである。
【0051】
支持体表面への結合方法は特に限定されないが、たとえば、フラーレン誘導体の溶液を調整し、表面処理を施した基板を浸漬することによって、自己組織化されたフラーレン誘導体の単分子膜を支持体表面上に形成させたり、表面処理を行わずに単分子膜を形成させることができる。
【0052】
本発明の光電変換素子用材料を得るのに用いられる支持体としては、たとえば、用いられるフラーレン誘導体が有する官能基とは反対の電荷を持つように表面処理され且つ導電性の支持体が挙げられる。好ましい支持体として、ガラス基板上にITOが蒸着されたITO電極や、ガラス基板上に金が蒸着された金電極等を挙げることができる。
【0053】
金電極上にアニオン性表面を付与する処理を行なうには、たとえば、メルカプトエタンスルホン酸(MES)のように、一方の末端に金と結合するチオール部位を有し、他方の末端にはアニオン性部位を有する化合物のエタノール溶液に金電極を浸す。その後、水で洗浄して結合していないMESを洗い流す。逆に、カチオン性表面を作製するときにはチオール部位とカチオン性部位を両末端に有する化合物(例えば、メルカプトエチルアミン塩酸塩)の水溶液を用いてアニオン性表面電極の場合と同様の操作を行なう。
基板としてITO電極を用いる場合も、金電極と全く同じ手法により、表面がアニオン性またはカチオン性になるように処理することができる。
【0054】
このように、アニオン性またはカチオン性を有するように表面処理された支持体を、前述のフラーレン誘導体の溶液に浸漬した後、洗浄して、支持体に結合していないフラーレン誘導体を洗い流すことにより、支持体上にフラーレン誘導体が自己組織化された単分子膜が形成される。このようにして、光電変換材料が自己組織化された単分子膜を有する光電変換素子を得ることもできる。
【0055】
単分子膜が形成される支持体がITO電極の場合には、当該単分子膜に含まれる上記式(1)で表されるフラーレン誘導体におけるRはそれぞれ独立してカルボン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を有することが好ましく、これらの置換基がフラーレン骨格部位とπ共役結合によって結合していることがさらに好ましい。
また、単分子膜が形成される支持体が金電極の場合には、当該単分子膜に含まれる上記式(1)で表されるフラーレン誘導体におけるRはそれぞれ独立してチオール基またはジスルフィド基を有することが好ましく、これらの置換基がフラーレン骨格部位とπ共役結合によって結合していることがさらに好ましい。
【0056】
本発明の光電変換素子は、支持体上に単分子膜が形成されているが、必要に応じて、更に別の物質を積層させた多層構造を有してもよい。そのような多層構造は、一般的に、交互積層法として知られる手法に従って、最外層の物質と反対の電荷を有する物質の溶液に逐次浸漬することによって得られる。
【0057】
4.本発明の太陽電池
本発明の太陽電池は、上記光電変換素子を含む太陽電池であれば特に限定されるものではないが、たとえば、本発明の光電変換素子の単分子膜上に電荷移動層が積層され、この電荷移動層上にさらに対向電極が形成された電池が挙げられる。
【0058】
本発明の太陽電池が有する電荷移動層は、公知の電荷移動層が用いられる。本発明の太陽電池が有する電荷移動層は、たとえば、レドックス電解質の分散物で構成される。そして、この分散物は、溶液である場合に液体電解質、常温において固体である高分子中に分散させた場合に固体高分子電解質、ゲル状物質に分散された場合にゲル電解質と呼ばれる。電荷移動層として液体電解質が用いられる場合、その溶媒としては、電気化学的に不活性なものが用いられ、たとえば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。ここで、レドックス電解質としては、I/I系や、Br/Br系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようなレドックス電解質は、公知の方法によって得ることができ、たとえば、I/I系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素を混合することによって得ることができる。
また、本発明において用いられる電荷移動層の具体例としては、アスコルビン酸を溶存させた硫酸ナトリウム水溶液である液体電解質が挙げられる。
【0059】
本発明の太陽電池が有する対向電極は、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられるが、Iイオン等の酸化や他のレドックスイオンの還元反応を充分な速さで行わせる触媒能を持ったものが好ましい。このようなものとしては、白金電極、導電材料表面に白金めっきや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン等が挙げられる。
【0060】
5.本発明の光電変換素子を用いた光電変換のメカニズム
本発明の光電変換素子を用いた光電変換のメカニズムを、図1に基づいて説明する。なお、図1では、ITO電極上にフラーレン誘導体の単分子膜が形成された光電変換素子を具体例に挙げている。
まず、外部から照射される光エネルギー(hv)はフラーレン誘導体で吸収されると、電荷移動層を構成するアスコルビン酸がフラーレンに電子(e)を供与し、フラーレン誘導体のLUMOに入った電子(e)がITOに電子を供与する。その結果、アノード電流が発生し、太陽電池に接続された回路に電流が流れることになる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0062】
[合成例1]C60(C64COOH-4)5CH3の製造
下記スキーム1に示すように、窒素雰囲気下において、72mgのフラーレンC60を5mLのオルトジクロロベンゼンに溶解させ、12当量の4-ヨード安息香酸エチルエステル、11当量のイソプロピルグリニャール試薬(CH32CHMgClのTHF溶液(濃度約0.7M)、及び12当量の臭化銅(I)ジメチルスルフィド錯体CuBr・S(CH32を加え、-25℃で反応させた。その後、反応混合物を室温に昇温し、2時間撹拌した後、ヨウ化メチルを加えて、70℃で2時間反応させた。生成液に10mLの脱気したトルエンを加えて希釈し、展開溶媒をトルエンとしたシリカゲルショートパスを通して副生するマグネシウム塩等を除去した。溶媒を留去し、メタノール100mLを加えて再沈して得られた固体をろ過した後、メタノール及びヘキサンで洗浄して、100mgの5重付加フラーレン誘導体C60(C64COO(C25)-4)5CH3を得た(単離収率74%)。
【化19】
JP0005062765B2_000013t.gif

【0063】
次に、下記スキーム2に示すように、製造されたC60(C64COO(C25)-4)5CH3(14.8mg,0.01mmol)をトルエン (5mL) に溶かし、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(0.5mol/L,0.20mL,0.10mmol) を加えた。反応混合物を60℃に加熱し、30分撹拌した。冷却後、沈殿した固体をろ取し、ヘキサンで洗浄した。得られたナトリウム塩の固体に、2mLの1mol/LHCl水溶液を加えてプロトン化処理した。固体をろ取し、水で洗浄し、70℃、6時間、減圧下で乾燥させて、13.0mgの5重付加フラーレン誘導体C60(C64COOH-4)5CH3の固体を得た (収率95%)。
【化20】
JP0005062765B2_000014t.gif

【0064】
得られた生成物のNMR、IR、APCI-MSによる分析データを以下に示す。
1H NMR (THF-d8): δ 1.59 (s, 3H, Me), 7.36 (d, J = 8.40 Hz, 2H, ArH), 7.75 (d, J = 8.40 Hz, 2H, ArH), 7.95 (d, J = 8.40 Hz, 4H, ArH), 8.05 (m, 12H, ArH), 11.53 (s, br, 5H, COOH). 13C NMR (THF-d8): δ 30.64 (C60CH3), 59.18 (2C, C60(Ca)), 62.12 (2C, C60(Ca)), 63.48 (1C, C60(Ca)), 63.50 (C60(C)Me), 129.00, 129.45, 130.45, 130.68, 130.92, 131.13, 131.40, 131.81, 131.99, 143.10, 143.47, 143.72, 144.53, 144.66, 144.73, 144.98, 145.18, 145.22, 145.32, 145.56, 146.34, 146.68, 147.57, 148.04, 148.24, 148.58, 148.78, 149.08, 149.14, 149.26, 149.38, 149.56, 149.70, 152.60, 153.61, 157.79, 161.63, 166.80 (1C, COOH), 167.01 (2C, COOH), 167.05 (2C, COOH).
IR (powder, cm-1): 3390-2910 (br, νO-H), 1694 (m, νC=O), 1607 (s), 1270 (νC-O), 1102 (s), 1019 (s), 752 (s).
APCI-MS (-): m/z 1340 (M-). APCI-HRMS (-): calcd for C96H28O10 (M-) 1340.1682, found 1340.1661.
【0065】
[合成例2]C60(C6464COOH-4)5CH3の製造
製造されたC60(C6464COO(C25)-4)5CH3(24.4mg,0.0132mmol)をトルエン (5mL) に溶かし、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(0.5mol/L,0.15mL,0.15mmol) を加えた。反応混合物を60℃に加熱し、2時間撹拌した。冷却後、沈殿した固体をろ取し、ヘキサンで洗浄した。得られたナトリウム塩の固体に、1mLの1mol/L塩酸水溶液を加えてプロトン化処理した。固体をろ取し、水で洗浄し、70℃、6時間、減圧下で乾燥させて、20.0mgの5重付加フラーレン誘導体C60(C6464COOH-4)5CH3の固体を得た (収率88%)。
【化21】
JP0005062765B2_000015t.gif

【0066】
得られた生成物のNMR、APCI-MSによる分析データを以下に示す。 1H NMR (500 MHz, THF-d8): d 1.53 (s, 3H, Me), 7.46 (d, J = 8.00 Hz, 2H, ArH), 7.51 (d, J = 8.00 Hz, 2H, ArH), 7.61 (d, J = 8.55 Hz, 2H, ArH), 7.76-8.10 (m, 12H, ArH), 11.50 (s, br, 5H, COOH). 13C NMR (125 MHz, THF-d8): d 32.59 (C60CH3), 59.20 (2C, C60(Ca)), 62.10 (2C, C60(Ca)), 63.50 (1C, C60(Ca)), 127.46, 127.69, 127.73, 127.88, 128.51, 128.77, 129.80, 130.41, 130.75, 130.82, 130.96, 131.06, 131.10, 131.18, 140.34, 140.71, 140.83, 143.74, 144.50, 144.91, 145.01, 145.11, 145.26, 145.36, 145.86, 146.50, 146.87, 148.29, 148.80, 149.19, 149.32, 149.44, 149.55, 149.71, 153.38, 154.17, 157.92, 158.37, 161.55, 167.36 (1C, COOH), 167.41 (2C, COOH), 167.43 (2C, COOH). APCI-HRMS (-): calcd for C126H48O10[M-H]- 1720.32029, found 1720.31655.
【0067】
[合成例3]C60(CH3536Si(OCH33の製造
下記スキーム3に示すように、窒素雰囲気下において、106mgのC60(CH35Hを5mLのTHFに溶解させ、1当量のt-BuOKのTHF溶液を加え、続いて2当量の3-トリメトキシシリルプロピルクロリドを加え、45℃で24時間反応させた。その後、反応混合物を室温に戻し、0.2mLの塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応をクエンチした。300mLのメタノールを加え、再沈して得られた固体をろ過した後、メタノールで洗浄して、128mgのC60(CH3536Si(OCH33を得た(単離収率88%)。
【化22】
JP0005062765B2_000016t.gif

【0068】
得られた生成物のNMR、APCI-MSによる分析データを以下に示す。1H NMR (500 MHz, CDCl3): d 0.90 (t, J = 8.0 Hz, 2H, SiCH2), 2.00 (m, 2H, SiCH2CH2), 2.21 (s, 6H, C60CH3), 2.33 (s, 6H, C60CH3), 2.40 (s, 3H, C60CH3), 2.60 (t, J = 8.0 Hz, 2H, C60CH2), 3.71 (s, 9H, OCH3). APCI-HRMS (-): calcd for C71H28O3Si (M-- H) 958.1964, found 958.2002.
【0069】
[実施例1]ITO電極を含む光電変換素子
合成例1で得られたC60(C64COOH-4)5CH3の0.1mM THF溶液に、透明ガラススライド表面にITOを10Ω/sqになるようにITO蒸着したITO電極を23℃で72時間浸漬させ、ITO上に自己組織化された単分子膜を作製し、これによって、光電変換素子が得られた。
【0070】
サイクリックボルタンメトリー法を用いて、この光電変換素子のフラーレン部分のカソード電流を測定し、その電流量を積分した結果、ファラデー電流量(S)は9.7μCcm-2であった。以下の式に従い、ITO単位面積当たりの吸着量、すなわち、電極上に固定された分子の数(Γ)を測定したところ0.1nmolcm-2であった。
【0071】
Γ=S/F
(Fはファラデー定数:96500 Cmol-1
Γ=9.7μCcm-2/96500Cmol-1=0.1nmolcm-2
【0072】
[実施例2]合成例2で得られたフラーレン誘導体を用いた光電変換素子
フラーレン誘導体として合成例2で得られた誘導体C60(C6464COOH-4)5CH3を用いた他は、実施例1と同様にして、ITOに自己組織化単分子膜を作製し、光電変換素子を製造した。さらに、実施例1と同様に電極上に固定された分子の数(Γ)を測定したところ0.08nmolcm-2であった。
【0073】
[比較例1]合成例3で得られたフラーレン誘導体を用いた光電変換素子
フラーレン誘導体として合成例3で得られた誘導体C60(CH3536Si(OCH33を用いた他は、実施例1と同様にして、ITOに自己組織化単分子膜を作製し、光電変換素子を製造した。さらに、実施例1と同様に電極上に固定された分子の数(Γ)を測定したところ0.24nmolcm-2であった。
【0074】
[実施例3]実施例1の光電変換素子を用いた太陽電池
作用極として実施例1で得られたC60(C64COOH-4)5CH3が自己組織化された単分子膜が積層された光電変換素子を、対極として白金線を、これらの2つの極を0.1モル硫酸ナトリウムを含む水溶液に電子供与体としてアスコルビン酸(AsA)を溶存させた電解質溶液中で対向させて配置し、本発明の太陽電池を製造した。この際、当該電解質溶液が2つの極の間に存し電荷移動層として機能している。
そして、参照電極としてAg/AgCl電極を用いて、25℃の条件下で、前記太陽電池について光電流測定実験を行った。
【0075】
作用極の電位を0Vに設定して、波長400nm、強度407μWのXeランプからの単色光を太陽電池に照射すると、アノード電流が観測された。この際の吸光度(A)は、2.34×10-4で、光電流(i)は30.7×10-9Aであった。
【0076】
以下の式にしたがって、ITO上の化合物によって吸収された光子の数に対する流れた電子数の割合を表す量子収率(φ)を求めたところ44%であった。
量子収率(φ)=(i/e)/[I(1-10-A)]×100(%)
ここで、I=(Wλ/hc)であり、単位時間、単位面積あたりのフォトン数(8.2×1014WJ)を、iは光電流(A)を、Aはλnmにおける吸光度を表す。なお、eは電気素量(C)=1.60×10-19C、Wは実験に用いたλnmにおける光照射パワー(W)=407×10-6W、λは実験に用いた光照射波長(m)=400nm、hはプランク定数(Js)=6.63×10-34Js、cは光速(ms-1)=3.00×108ms-1
を表す。
【0077】
作用極の電位を+0.1Vに設定してバイアス電圧をかけたときの光電流(i)は68.0×10-9Aであった。このときの量子収率(φ)は95%であった。
また、波長が400nm~600nmの光を照射したときの光電流スペクトルと、C60(C64COOH-4)5CH3のTHF溶液中での吸収スペクトルとがほぼ同じ形状を示した。これによって、C60(C64COOH-4)5CH3が光電流変換の活性中心であることが確認された。
【0078】
[実施例4]実施例2の光電変換素子を用いた太陽電池
実施例2の光電変換素子を用いた他は、実施例3と同様に本発明の太陽電池を製造した。
また、実施例3と同様に、作用極の電位を0Vに設定して、波長400nm、強度407μWのXeランプからの単色光を当該太陽電池に照射すると、アノード電流が観測された。この際の吸光度(A)は、1.87×10-4で、光電流(i)は22.5×10-9Aであった。また、ITO上の化合物によって吸収された光子の数に対する流れた電子数の割合を表す量子収率(φ)を上記式にしたがって求めたところその値は、40%であった。
作用極の電位を0.1Vに設定してバイアス電圧をかけたときの光電流(i)は45.0×10-9Aであった。このときの量子収率(φ)は80%であった。
また、波長が400nm~600nmの光を照射したときの光電流スペクトルと、C60(C6464COOH-4)5CH3のTHF溶液中での吸収スペクトルとがほぼ同じ形状を示した。これによって、C60(C6464COOH-4)5CH3が光電流変換の活性中心であることが確認された。
【0079】
[比較例2]比較例1の光電変換素子を用いた太陽電池
比較例1の光電変換素子を用いた他は、実施例4と同様に本発明の太陽電池を製造した。
また、実施例4と同様に、作用極の電位を0Vに設定して、波長400nm、強度407μWのXeランプからの単色光を当該太陽電池に照射すると、アノード電流が観測された。この際の吸光度(A)は、5.18×10-4で、光電流(i)は4.4×10-9Aであった。また、ITO上の化合物によって吸収された光子の数に対する流れた電子数の割合を表す量子収率(φ)を上記式にしたがって求めたところその値は、2.8%であった。
作用極の電位を0.07Vに設定してバイアス電圧をかけたときの光電流(i)は12.8×10-9Aであった。このときの量子収率(φ)は8.2%であった。
また、波長が400nm~600nmの光を照射したときの光電流スペクトルと、C60(CH3536Si(OCH33のTHF溶液中での吸収スペクトルとがほぼ同じ形状を示した。これによって、C60(CH3536Si(OCH33が光電流変換の活性中心であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明で得られた光電変換素子材料および光電変換素子は、たとえば、有機太陽電池等に利用することができる。
図面
【図1】
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