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明細書 :複合人工骨

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4929286号 (P4929286)
登録日 平成24年2月17日(2012.2.17)
発行日 平成24年5月9日(2012.5.9)
発明の名称または考案の名称 複合人工骨
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
A61F   2/30        (2006.01)
FI A61L 27/00 F
A61F 2/30
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2008-531956 (P2008-531956)
出願日 平成19年8月28日(2007.8.28)
国際出願番号 PCT/JP2007/000920
国際公開番号 WO2008/026316
国際公開日 平成20年3月6日(2008.3.6)
優先権出願番号 2006235019
優先日 平成18年8月31日(2006.8.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年2月19日(2009.2.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
【識別番号】509010229
【氏名又は名称】アドバンスド・メディックス株式会社
発明者または考案者 【氏名】小久保 正
個別代理人の代理人 【識別番号】100098969、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 正行
審査官 【審査官】安居 拓哉
参考文献・文献 特開昭63-115557(JP,A)
調査した分野 A61L 27/00
A61F 2/30
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
WPI
医学・薬学予稿集全文データベース
特許請求の範囲 【請求項1】
生体骨と相補する内面を有する型を準備する工程と、
前記生体骨の外面の一部に近似した枠状をなし、気孔形成剤を含まないチタン又はチタン合金粉末の成形体aを、前記型に装填する工程と、
チタン又はチタン合金粉末及び気孔形成剤を含む混合物を前記型の残部空間に充填する工程と、
混合物を加圧成形することにより成形体bを得ると同時に成形体aと組み合わせる工程と、
組み合わせ体を焼成する工程と
を備えることを特徴とする人工骨の製造方法。
【請求項4】
前記生体骨の外面の一部が、生体骨の角、稜線又は表面を含む部分である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記成形体aが、一方の端面に尖った突起を有する請求項4に記載の方法。
発明の詳細な説明
【0001】
この発明は、チタン又はチタン合金からなり、緻密部と多孔部とが一体化された人工骨に関する。
【背景技術】
【0002】
チタンは、セラミックスや樹脂よりも機械的強度が高く、しかもアルカリ処理するだけで骨形成能をもたせることが可能であることから、人工骨材料として期待されている。人工骨材料は、生体内に埋め込まれて生体骨を形成したり周囲の生体骨と結合したりする必要性から気孔率50%以上の多孔体であることが望まれる。また、埋め込み場所にもよるが、人工骨に必要な機械的強度は脊椎代替用では40MPa以上である。チタン多孔体は、チタン粉末を必要により気孔形成材と混合し、加圧成形した後、焼結することによって得られることが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】
特開2002-285203
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、金属といえども多孔体を単独で用いると、角や稜線に欠け、折れが生じやすく、信頼性に劣る。また、生体骨の弾性率は、皮質骨で10~20GPa、海綿骨で0.2~0.3GPaと部位によってかけ離れていることから、人工骨の弾性率をこれに合わせるのは困難である。
それ故、この発明の課題は、生体骨と結合しやすく且つ生体骨の機械的性質に近似した人工骨を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
その課題を解決するために、この発明の人工骨は、
チタン又はチタン合金からなり、生体骨の外面の一部に近似した枠状をなす密度95%以上の緻密部と、
互いに焼結したチタン又は前記チタン合金と同一もしくは異なる組成のチタン合金の粒子からなり、前記生体骨の残部に近似した形状をなす気孔率40%以上の多孔部とを備え、
緻密部と多孔部との界面において緻密部と多孔部の粒子とが互いに焼結していることを特徴とする。
前記生体骨の外面の一部とは通常生体骨の皮質骨の一部であり、前記生体骨の残部は通常生体骨の皮質骨の残部及び海綿骨である。
[0005]
発明者の実験によると、純チタン多孔体に40MPa以上の圧縮強度をもたせるためには、図1に示すように気孔率を55%以下にしなければならない。また、弾性率は図2に示すように気孔率40%までは気孔率とともに低下し、40%を超えると徐々に減少し70%では2GPa程度になる。
一方、この発明の人工骨は、枠状をなす緻密部と気孔率40%以上の多孔部を備えているので、枠の開口部より生体骨や体液などの生体組織が多孔部に侵入し、多孔部と結合する。そして、緻密部が荷重を支えるので、全体としての気孔率の高い割に圧縮強度も高い。しかも、多孔部と緻密部の体積比を適当に定めることによって、弾性率を生体骨の弾性率に合わせることもできる。また、生体骨の角、稜線又は表面に相当する部分を緻密部で構成すれば、欠けや折れを防止することができる。更にまた、緻密部の一方の端面に尖った突起を一体的に形成することにより、この突起を生体骨に食い込ませて初期固定を行うことができる。
[0006]
このような人工骨は、気孔形成剤を含まないチタン又はチタン合金粉末(以下、「チタン粉末等」)の成形体aと、チタン粉末等及び気孔形成剤を含む混合物の成形体bを組み合わせた後、焼成することにより製造される。
この製造方法により、成形体aに由来する部分は、気孔形成剤を含まないので、焼成後は緻密部となる。成形体bに由来する部分は、気孔形成剤を含むので、焼成後は多孔部となる。そして、成形体aと成形体bとが組合わせられて一緒に焼成されるので、各成形体内部の粒子同士が焼結すると同時に、成形体a内の粒子と成形体b内の粒子とが界面において焼結する。従って、緻密部と多孔部とが、それらの遷移層を除いて他物を介することなく接合される。
[0007]
各成形体の成形は、他方の成形体との組み合わせ前に行ってもよいし、組み合わせと同時であってもよい。各成形体の個別の成形手段は、射出成形、加圧成形、押し出し成形、流し込み成形、シート成形などの公知の適宜の手段であってよい。特に、成形体bは、金型内に成形体aを装填し、その残部空間に前記粉末混合物を充填し、加圧成形することにより、成形と同時に成形体aと組み合わせられると好ましい。成形体aが複雑形状であっても成形体bと組み合わせ可能だからである。また、個別に成形後に組み合わせる場合は、組み合わせた後、焼成する前に流体圧成形するとよい。
[0008]
成形体a及び成形体bは、一方又は双方が有機バインダーを含んでいてもよく、双方ともに含む場合の有機バインダーは、互いに同じであっても又は異なっていてもよい。双方がバインダーを含む場合、前記加圧成形をそのバインダーが軟化する温度で行うとよい。成形段階で界面の粒子同士がより強く密着し、焼結が進みやすくなるからである。
発明の効果
[0009]
この発明の人工骨は、生体骨と結合しやすく且つ生体骨の機械的性質に近似しているので、これを装着する患者の負担が著しく軽減される。
【図面の簡単な説明】
[0010]
[図1]チタン多孔体の気孔率と圧縮耐力の関係を示すグラフである。
[図2]チタン多孔体の気孔率と弾性率の関係を示すグラフである。
[図3]実施例1の人工骨の製造方法の初期工程を示す図である。
[図4]同じく中期工程を示す図である。
[図5]中期工程で得られた焼結体を示すCT画像写真である。
[図6]実施例3の人工骨の製造方法の初期工程を示す図であり、(b)は(a)のB部拡大図である。
[図7]参考例の人工骨の製造方法を示し、(a)は緻密部単独、(b)は多孔部単独、(c)は人工骨の各写真である。
発明を実施するための最良の形態
[0011]
有機バインダーとしては、ポリアセタール0~50vol%、ポリプロピレン0~50vol%及びワックス類50~70vol%から成る。金型内に成形体aを装填し、その残部空間に成形体bとなる粉末混合物を充填し、加圧成形する場合の圧力は、20~100MPaが好ましい。20MPaに満たないと多孔部と緻密部との結合が不十分となるし、100MPaを超えると、成形体aに掛かる負荷が大きくなりすぎ、成形体aが破損するからである。有機バインダーを含有させて成形した場合は、組み合わせ体を焼成する前に大気中で加熱することにより有機バインダーを脱脂するのが望ましい。焼結は、非酸化雰囲気中1200~1400℃の温度で行う。
[0012]
[実施例1]
最大粒径45μmのJIS2種(米国規格ASTMG1に相当する。)純チタン粉末と、ポリアセタール20vol%、ポリプロピレン20vol%及びワックス類60vol%からなる有機バインダーとを体積比で65対35になるように混合し、緻密部用混合物とした。体積比は各々の真密度と重量から算出した。そして、緻密部用混合物を165℃で射出成形することにより、図3に示すように幅1.50mmの正四角柱からなる四角枠部の四隅に同幅の正四角柱の脚が立てられた外寸法9.6mm×12.0mm×24.0mm(幅×奥行き×高さ)の成形体a1を得た。
【0013】
別途、前記純チタン粉末と篩にて500~1500μmの粒径に調整した炭酸水素アンモニウムとを体積比で34対66になるように混合し、多孔部用混合物とした。図4に示すように、成形体a1を、内寸が成形体a1の外寸より僅かに大きい金型に装填し、多孔体用混合物を残部空間に充填し、90MPaの圧力を加えることにより、成形体a1の内側に略直方体状の成形体b1が成形された組み合わせ体を得た。
【0014】
この組み合わせ体をアルゴンガス雰囲気中1250℃で2時間保持することにより、焼成した。得られた焼結体のCT画像を観察すると、図5に示すように稜線部(緻密部分)及び中間部(多孔部分)はそれぞれ成形体a1及びb1に由来する形状を維持して焼結していた。同時に、互いの界面における粒子同士も境界を判別しがたいほどに焼結しており、緻密部と多孔部が一体化された10mm×8mm×20mmの人工骨が得られた。この人工骨のCT断面画像を複数枚数撮影し、得られた画像上で気孔の定方向最大径(一定方向の線による空隙部の最大長さ)を測定したところ、多孔部の気孔径は200~500μmの範囲であった。この人工骨を圧縮速度1mm/分で軸方向に圧縮したところ、圧縮強度は、53.3MPaであった。成形体a1、b1を組み合わせることなく、個別に成形し、前記と同一条件で焼成し、得られた焼結体の密度又は気孔率を重量とチタンの真密度とから算出したところ、緻密部相当の焼結体の密度は96%、多孔部相当の焼結体の気孔率は60%であった。また、緻密部及び多孔部の弾性率をそれぞれ個別に測定して得た108GPa及び4.2GPaに基づいて、得られた焼結体の弾性率を算出したところ、15.8GPaであった。
【0015】
次に、得られた人工骨を、温度60℃、濃度5MのNaOH水溶液に24時間浸け、続いて40℃の純水に12時間浸けた後、600℃の大気炉中で1時間加熱した。人工骨を炉から取り出してヒトの体液とほぼ等しい無機イオン濃度を有する擬似体液(特許第2775523、第6欄第43行~49行)に浸けたところ、3日後に緻密部及び多孔部にアパタイト相が析出していることが確認された。
【0016】
[実施例2]
多孔部用混合物のチタン粉末と炭酸水素アンモニウムの体積比を43対57とした以外は、実施例1と同一条件で成形体a1の内側に略直方体状の成形体b2が成形された組み合わせ体を得た。この組み合わせ体をアルゴンガス雰囲気中1250℃で2時間保持することにより、焼成した。緻密部相当の焼結体の密度は96%、多孔部相当の焼結体の気孔率は50.5%であった。
得られた人工骨を実施例1におけると同様にアルカリ・加熱処理し、擬似体液に浸けたところ、3日後に緻密部及び多孔部にアパタイト相が析出していることが確認された。
【0017】
[実施例3]
実施例1で調合した緻密部用混合物を165℃で射出成形することにより、図6に示すように幅3mmの正四角柱からなる直方体枠部の一方の端面に一辺1.5mmの多数の正四角錐が立てられた外寸法30mm×20mm×15mmの成形体a3を得た。
成形体a3を、内寸が成形体a3の外寸より僅かに大きい金型に装填し、実施例1で調合した多孔体用混合物を残部空間に充填し、85MPaの圧力を加えることにより、成形体a3の内側に略直方体状の成形体b3が成形された組み合わせ体を得た。
この組み合わせ体を実施例1と同一条件で焼成した。緻密部相当の焼結体の密度は97%、多孔部相当の焼結体の気孔率は61%であった。圧縮強度は73MPa、多孔部の気孔径は200~500μmの範囲であった。
得られた人工骨を実施例1におけると同様にアルカリ・加熱処理し、擬似体液に浸けたところ、3日後に緻密部及び多孔部にアパタイト相が析出していることが確認された。
[0018]
[参考例]
JIS2種(米国規格ASTMG1に相当する。)純チタン展伸材を加工することにより、図7(a)に写真で示すように平面視大豆状で側面に複数の大きな孔が形成された成形体a4を得た。
別途、実施例1におけるものと同一条件で多孔部用混合物を準備し、金型に充填して90MPaの圧力を加えた後、アルゴンガス中900℃で2時間加熱することにより、図7(b)に写真で示すように高さが成形体a4より0.5mm高い以外は成形体a4の内周面と相補する外形の仮焼結体B4を得た。
成形体a4と仮焼結体B4を嵌合し、47MPaの圧力を高さ方向に加えた後、アルゴンガス中1150℃で2時間加熱することにより、図7(c)に示す人工骨を製造した。
得られた人工骨の多孔部の気孔率は60%であった。また緻密部と多孔部はミクロ組織的に結合していることを確認した。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6