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明細書 :電磁攪拌装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5352236号 (P5352236)
登録日 平成25年8月30日(2013.8.30)
発行日 平成25年11月27日(2013.11.27)
発明の名称または考案の名称 電磁攪拌装置
国際特許分類 B01F  13/08        (2006.01)
C21C   7/00        (2006.01)
C21C   7/10        (2006.01)
C22B   9/22        (2006.01)
F27D  27/00        (2010.01)
FI B01F 13/08 Z
C21C 7/00 P
C21C 7/10 S
C22B 9/22
F27D 27/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2008-543156 (P2008-543156)
出願日 平成19年11月12日(2007.11.12)
国際出願番号 PCT/JP2007/071945
国際公開番号 WO2008/056809
国際公開日 平成20年5月15日(2008.5.15)
優先権出願番号 2006305359
優先日 平成18年11月10日(2006.11.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年10月6日(2010.10.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】899000035
【氏名又は名称】株式会社 東北テクノアーチ
【識別番号】505164977
【氏名又は名称】株式会社ナノキャスト
発明者または考案者 【氏名】谷口 尚司
【氏名】安斎 浩一
【氏名】上野 和之
【氏名】板村 正行
【氏名】嶋▲崎▼ 真一
個別代理人の代理人 【識別番号】100088096、【弁理士】、【氏名又は名称】福森 久夫
審査官 【審査官】新井 浩士
参考文献・文献 特開昭54-163729(JP,A)
特開平06-168831(JP,A)
特開2006-077294(JP,A)
特開2006-273673(JP,A)
特開2006-230031(JP,A)
特開2006-042534(JP,A)
特開2005-253280(JP,A)
特開2005-050918(JP,A)
特開平11-207355(JP,A)
特開平04-155807(JP,A)
特開昭61-061217(JP,A)
特開2005-028020(JP,A)
特開2001-143999(JP,A)
特開平04-158807(JP,A)
特開2003-220323(JP,A)
実開昭48-071104(JP,U)
調査した分野 B01F 13/08
C21C 7/00
C21C 7/10
C22B 9/22
F27D 27/00
特許請求の範囲 【請求項1】
容器の外周に垂直方向に沿って設けた垂直方向移動磁界発生用コイルと、該垂直方向移動磁界発生用コイルの外側に設けた回転方向移動磁界発生用コイルとを有し、該垂直方向移動発生用コイルの内面乃至はその内側まで延びる櫛の歯を有し、磁気等方性を有する磁性材料からなる鉄心を有し、前記鉄心の比抵抗が電流方向によらず0.1Ω・m以上、1000Ω・m以下であり、前記鉄心の内側の端面と容器との間の距離の前記容器内径に対する比が、30%以内であることを特徴とする電磁攪拌装置。
【請求項2】
前記鉄心の複数個を同心円上に放射状に並べ、回転方向移動磁界発生用コイルの外側において継鉄で連結し、回転方向移動磁界の磁束を閉じ込めることを特徴とする請求項1の電磁攪拌装置。
【請求項3】
前記磁性材料がフェライトあるいは絶縁コーティングした圧粉磁心材料であることを特徴とする請求項1の電磁攪拌装置。
【請求項4】
前記フェライトがマンガン亜鉛フェライトあるいはニッケル亜鉛フェライトであることを特徴とする請求項の電磁攪拌装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は電磁攪拌装置に係り、より詳細には、非接触で液体金属を強力且つ均一に攪拌する二軸移動磁界攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸移動磁界攪拌装置は、垂直方向移動磁界と回転方向移動磁界との2つを重畳させたときに、その両方の磁束を有効に容器内の液体金属に伝達させ、液体金属に対して回転運動と垂直方向運動とを生ぜしめることができる電磁攪拌装置である。
従来、二軸移動磁界攪拌装置としては、特許文献1および特許文献2に記載された技術が知られている。
この技術は、図8に示すように、円筒形の容器11の外周面において垂直方向に沿って垂直方向移動磁界発生用コイル13を設けるとともに、容器11の外周面において、回転方向移動磁界発生用コイル12を設けている。回転方向移動磁界発生用コイル12によって、容器11内に容れられた液体金属に対して回転運動が生ぜしめられ、垂直方向移動磁界発生用コイル13によって、前記液体金属に対して垂直方向運動が生ぜしめられる。
【0003】
しかし、特許文献1および特許文献2記載技術においては、磁束の漏れが生じ、その結果十分な攪拌力が得られないという問題を有している。
【0004】
一方、磁束の漏れを防止することにより攪拌力を大きくしようとする技術として、回転方向移動磁界発生用コイルと、垂直方向移動磁界発生用コイルとの間に鉄心を挿入した技術が特許文献3に記載されている。特許文献3の「第2図」を図9に示す。
【0005】
この図は、内側に垂直方向移動磁界用のコイル111を配置し、外側に回転方向移動磁界用のコイル113を配置した例を示している。すなわち、液体金属用の容器103と、該容器103の垂直方向に沿って設けた垂直方向移動磁界発生用コイル111と、垂直方向移動磁界発生用コイル111の外周に周方向に沿って設けた回転方向移動磁界発生用コイル113と、回転方向移動磁界発生用コイル113の中央に挿入し、且つ、垂直方向移動磁界発生用コイル111の内面まで延長した櫛の歯を有する鉄心109とを備えている。
【0006】
特許文献3の「第3図」に示した図を図10に示す。
この図は、外側に垂直方向移動磁界発生用コイル111を、内側に回転方向移動磁界発生用コイル113を配置した例を示している。
【0007】
しかるに、特許文献3に記載された技術は、鉄心を設けない技術に比べると磁束の漏れは少ない。しかし、容器内の液体金属に対する攪拌力についてみると、鉄心を設けた場合に比べて飛躍的に向上しているわけではない。

【特許文献1】特開2003-220323号公報
【特許文献2】特開2007-144501号公報
【特許文献3】特開昭54-163729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来よりも優れた攪拌力を与えることが可能な二軸移動磁界攪拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、液体金属用容器の外周に垂直方向に沿って設けた垂直方向移動磁界発生用コイルと、該垂直方向移動磁界発生用コイルの外側に設けた回転方向移動磁界発生用コイルと、該垂直方向移動磁界発生用コイルの内面まで延びる櫛の歯を有し、磁気等方性を有する磁性材料からなり、比抵抗が電流方向によらず0.1Ω・m以上、1000Ω・m以下である鉄心を、該垂直方向移動磁界発生用コイル間と該回転方向移動磁界発生用コイル間とに挿入したことを特徴とする液体金属用電磁攪拌装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の作用・効果を、本発明をなすに際して得た知見とともに説明する。
本発明者は、磁束漏れを防止するためにコイル間に鉄心を入れた場合であっても必ずしも優れた攪拌力が得られないことの理由を鋭意探求した。
その結果次の知見を得た。
【0011】
図9では、内側に垂直方向移動磁界用の鉄心109を、外側に回転方向移動磁界用の鉄心108を配置している。鉄心108、109は板が積層体により構成されている。そして、垂直方向移動磁界用の鉄心109は、積層方向を周方向とし、回転方向移動磁界用の鉄心108は積層方向を垂直方向として配置している。すなわち、磁束の漏れを確実に閉鎖するために、鉄心108,109は磁気異方性を持たせてある。
【0012】
ところが、鉄心108,109は異方性を有しているため、垂直方向移動磁界によって外側の鉄心108に渦電流が、回転方向移動磁界によって内側の鉄心109に渦電流が流れ、損失が発生する。
図10は、外側に垂直方向移動磁界用の鉄心を、内側に回転方向移動磁界用の鉄心を配置した例であるが、図9と同様に渦電流が流れ、損失が発生することは同様である。
【0013】
すなわち、二軸移動磁界においては、他軸の影響を受けて鉄心における渦電流の発生を招きそれが、攪拌力に限界を与える原因であろうとの知見を得た。
このように、二軸移動磁界の場合には、他軸移動磁界からの影響も防止することが重要であるとの上記知見に基づき、磁気等方性の材料により鉄心を構成することを試みたところ、優れた攪拌力を得ることが可能となった。
【0014】
なお、図10においては、上記以外の理由として、垂直方向移動磁界発生用コイルが液体金属から遠い位置に配置されているため、垂直方向の攪拌能力はほとんど期待できないため、攪拌力が小さい原因となっている。本発明では、垂直方向移動磁界発生用コイルを内側に配置している。
また、図9、10の装置における渦電流損失は、単に攪拌力の低下にとどまらず、鉄心の温度上昇をもたらし、特に高温の液体金属を攪拌する際にはその冷却が必要である。それに対して、本願発明においては、渦電流の発生による温度上昇はないため冷却は必ずしも行う必要はない。また、磁気等方性の材料で鉄心を構成している場合でも、電磁攪拌装置の外部への磁束漏れは防ぐことができる。
【0015】
(発明の効果)
本発明では、二軸移動磁界攪拌の2つの磁束の向きに対応するため、異方性がなく無方向性の(すなわち等方性の)鉄心材料を用いて鉄心を構成している。従来よりも格段に強力な二軸移動磁界攪拌を、渦電流の損失を抑えた状態で行うことができる。
渦電流の損失が抑えられた結果、鉄心の発熱を低減することができる。これはまた、鉄心内側の端面と液体金属との間の距離(ギャップ)を小さくし、垂直方向電磁力を有効に作用させることが可能となる。
その結果、より大きな攪拌力を融体に与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】鉄心を有する二軸移動磁界攪拌装置の構成例 垂直方向移動磁界、回転方向移動磁界の両方の磁束に対応した鉄心であるため、渦電流による損失がない。
【図2】二軸移動磁界攪拌装置における垂直方向移動磁界の磁力線図(鉄心あり)鉄心がある場合の磁力線図の一例。
【図3】二軸移動磁界攪拌装置における垂直方向移動磁界の磁力線図(鉄心なし)鉄心がない場合の磁力線図の一例。
【図4】二軸移動磁界攪拌装置における垂直方向移動磁界の磁束密度(鉄心あり)鉄心がある場合の磁束密度の一例。
【図5】二軸移動磁界攪拌装置における垂直方向移動磁界の磁束密度(鉄心なし)鉄心がない場合の磁束密度の一例。
【図6】二軸移動磁界攪拌装置における回転方向移動磁界の磁力線図(鉄心あり)鉄心がある場合の磁力縮図の一例。
【図7】鉄心内側の端面と液体金属の間の距離(ギャップ)の大きさによる電磁力の違いを示すグラフである
【図8】従来の二軸移動磁界攪拌装置の斜視図である。
【図9】従来の二軸移動磁界攪拌装置であり、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【図10】従来の二軸移動磁界攪拌装置であり、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 垂直方向移動磁界発生用コイル
2 回転方向移動磁界発生用コイル
3 垂直及び回転方向移動磁界用鉄心
4 回転方向移動磁界用継鉄
5 容器
11 容器
12 回転方向移動磁界発生用コイル
13 垂直方向移動磁界発生用コイル
S 液体金属
108 回転方向移動磁界用鉄心
109 垂直方向移動磁界用鉄心
111 垂直方向移動磁界発生用コイル
113 回転方向移動磁界発生用コイル
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明においては、前記鉄心の比抵抗が電流方向によらず0.1Ω・m以上であることが好ましい。
0.1Ω・m未満を境として鉄心を流れる渦電流による損失が急激に大きくなってしまう。従って、0.1Ω・m以上が好ましい。0.1-1000Ω・mが好ましい。
なお、材料としては、フェライト、絶縁コーティングした圧粉磁心材料、鉄系アモルファスなども用いることができる。
フェライトは磁気等方性の材料である。鉄心として用いられる軟磁性の材料としては、Ni-Zn系、Mn-Zn系、Cu-Zn系などが挙げられる。また、フェライト以外にも、磁気等方性で軟磁性の材料として、無方向性ケイ素鋼(Fe-Si合金)、パーマロイ(Fe-Ni合金)、センダスト(Fe-Si-Al合金)、パーメンジュール(Fe-Co合金)、アモルファス金属、その他(金属粉末を焼結したものなど)が挙げられる。
【0019】
本発明においては、前記鉄心の複数個を同心円上に放射状に並べ、回転方向移動磁界発生用コイルの外側にて継鉄で連結し、回転方向移動磁界の磁束を閉じ込めることが好ましい。
【0020】
これにより、磁束の漏れをより一段と防止することができ、それにより、より一段と優れた攪拌力を得ることが可能となる。
【0021】
本発明においては、前記鉄心の内側の端面と液体金属用容器との間の距離を、容器内径の30%以内に保持することが好ましい。
特許文献3記載技術においては、渦電流の発生により鉄心の温度上昇を招く。それ以上の温度の上昇を防止するためには、鉄心は高温である容器に近づけることに限界があった。すなわち、図9,10に示す装置においては、鉄心を容器に近づけることに阻害因子があった。そのため、図9,図10においては、その図が示すように、容器内径の約100%近いギャップをとっている。
しかるに、本発明においては、渦電流による発熱を防止しているため容器直近まで近接させることが可能である。
液体金属用容器内径の30%以内とした場合には、ギャップがない場合力と比較して、その電磁力は40%程度となる。すなわち電磁力のおよそ40%以上を有効に作用させるという理由から30%以内が好ましい。
高温の金属融体をコイル・鉄心に近づければ、コイル・鉄心の温度に影響を与える。コイル・鉄心は耐熱温度に上限があるため、この耐熱温度を上回らないように、熱設計を行なえばよい。
例えば、コイル・鉄心の強制冷却(空冷・水冷)を行なうか、金属融体とコイル・鉄心との間の断熱機構を設ければよい。
例えば、高温の金属融体のすぐ近くで超伝導コイル(液体ヘリウムにて冷却するため極低温)を稼働させてもよい。このような断熱機構を用いれば、かなりの程度まで、金属融体とコイル/鉄心を接近させることが可能となる。
以上のことから、端面容器間距離に下限はない。
【0022】
本発明においては、前記鉄心の材料特性が方向性を持たない磁性材料を用いる。かかる材料としては、フェライト、絶縁コーティングした圧粉磁心材料が好適に用いられる。
【0023】
また、フェライトとしては、比抵抗率が低いという理由からマンガン亜鉛フェライトあるいはニッケル亜鉛フェライトが好ましい。
【0024】
本発明においては、前記回転方向移動磁界発生用コイルと前記垂直方向移動磁界発生用コイルとは、それぞれ独立に制御可能とすることが好ましい。
独立に制御可能とすることによって、前記液体金属に対して回転運動及び垂直方向運動を独立に制御して印加することができ、前記液体金属の攪拌の程度を自由に設定することができる。また、回転方向と垂直方向の両方の電磁力を同時に印加すれば、回転運動を損なうことなく垂直方向運動が重畳される。回転方向電磁力と前記垂直方向電磁力との比率を任意に制御可能とすれば、その比率を制御することにより、回転運動と垂直方向運動との割合も制御することができる。また、前記容器の垂直方向におけるリニア攪拌から回転攪拌まで、攪拌モードを自由に変化させることができる。さらに、このような独自の制御により前記液体金属の、前記容器内の外周部及び中央部において下降流及び上昇流を簡易に生成させることができ、前記液体金属の液面を平坦に維持することができる。
金属精錬プロセスを例にとる。例えば、金属精錬プロセスでは、(1)反応速度の上昇や、(2)温度・成分の均一化、(3)介在物凝集の促進などを目的として、様々な攪拌が用いられる。基本的に攪拌強度が強ければ強いほど、上記の目的にとっては好都合である。
一方で、攪拌を強くすれば、必然的に液面の乱れが大きくなる。金属精錬プロセスでは、液面にスラグやパウダーなどを浮かべていることが多く、また、スラグやパウダーを用いない場合でも、液面には金属酸化物がある。液面が乱れるとこれらの異物(介在物)を液内に巻き込んでしまい、製品品質に悪影響を与えてしまう。すなわち、攪拌は強くしたいけれども、液面は平坦かつ静穏に維持したいという要求がある。
実際に、この相反する性質を達成するために、攪拌を加えつつ、液面近傍に電磁ブレーキを適用して液の速度を低下させるなどの様々な工夫がこらされてきた。二軸移動磁界攪拌の最大の特徴は、液面を平坦かつ静穏に保ったまま、液内部に強力な攪拌を印加できる。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例を図1に基づき説明する。
本例の装置は、容器5の外周に垂直方向に沿って設けた垂直方向移動磁界発生用コイル1と、垂直方向移動磁界発生用コイル1の外側に設けた回転方向移動磁界発生用コイル2とを有し、垂直方向移動磁界発生用コイル1の内面まで延びる櫛の歯3aを有し、磁気等方性を有する磁性材料からなる鉄心3を、垂直方向移動磁界発生用コイル1の間と回転方向移動磁界発生用コイル2の間とに挿入して構成されている。
【0026】
以下に本実施例をより詳細に説明する。
容器5には、例えば、内径55mm、高さ150mmの金属製容器を用いる。回転方向移動磁界発生用コイル2には、例えば、矩形状のコイルピースを用いる。垂直方向移動磁界発生用コイル1には、例えば、円形状のコイルピースを用いる。
【0027】
回転方向移動磁界発生用コイル2には、例えば、50Hzの三相交流電源から電圧調整器を経て通電し、垂直方向移動磁界発生用コイル3には周波数可変のインバータを経て任意周波数の三相交流を通電する。
【0028】
なお、回転方向移動磁界発生用コイル2及び垂直方向移動磁界発生用コイル1の数は特に限定されず、容器5内に容れて攪拌すべき液体金属の種類及び量、並びに攪拌のモード及び強度などに応じて任意に設定する。図1に示す例では、回転方向移動磁界発生用コイル2及び垂直方向移動磁界発生用コイル1の数は、それぞれ6個としている。
なお、コイルの数を6個に限定する必要はない。しかし電源として三相交流を用いた場合には、コイルの数は3の倍数個とする。
回転方向移動磁界発生用コイルは、向かい合った一対二個のコイルが貫通磁場を生み出すので、3×2=6個が好ましい。3個の場合は、磁場が貫通しないので、攪拌力は弱くなる。12個の場合には、実装するスペースがとれないおそれがある。従って、6個が最適である。
垂直方向移動磁界発生用コイルについても同様に3個、6個、12個、18個、24個などの構成も可能である。ただ、3個の構成では攪拌力が弱すぎ、18個以上は無駄に装置が大きくなる。従って、6個が最適であり、12個が次に好ましい。
一方、本例では、回転方向移動磁界発生用コイル及び垂直方向移動磁界発生用コイルの数に対応させ、縦断面においては7つの櫛の歯3aを設けてある。歯3aは容器5側に延びており、その先端は垂直方向移動磁界発生用コイル1の内面まで延びている。図1に示す例では、内面よりさらに容器5側に延び、容器5の外壁直近まで延びている。
鉄心3は、周方向には等間隔で6個設けてあり、それぞれの鉄心は回転方向移動磁界発生用コイル2の間に挿入させてある。また、6個の鉄心は、回転方向移動磁界発生用コイル2の外側において継鉄4により連結してある。なお、鉄心および継鉄4は、いずれも二軸移動磁界攪拌装置によって発生した磁束で飽和しないように、十分に大きな断面を有すように設定することが好ましい。
【0029】
(実験1)
次に、具体的に次の値に設定して実験を行った。
鉄心
材質:Ni?Znフェライト
比抵抗:3Ω・m
容器
材質ステンレス(SUS304)
内径140mm
肉厚8mm
液体金属の液高さ:690mm
ギャップ:21mm(ギャップと容器内径の比:約13%)
電流条件
垂直方向移動磁界:
相間電圧:400V
線電流:30A
回転方向移動磁界:
相間電圧:315V
線電流:30A
【0030】
上記条件で磁力線、磁束密度を測定した。
図2に、本例に係る装置における垂直方向移動磁界の磁力線図を、図4に垂直方向移動磁界の磁束密度を、図6に回転方向移動磁界の磁力線図を示す。<比較例1>
【0031】
本例では、実施例1において鉄心を使用せずに同様の実験を行った。
鉄心を使用しない以外は実施例1と同じ条件である。実験結果を図3、図5に示す。
【0032】
図2は鉄心がある場合、図3は鉄心がない場合の磁力線図である。鉄心によって磁束密度の分布が大きく異なっていることが分かる。
図4は鉄心がある場合、図5は鉄心がない場合の磁束密度を示している。同じ電源を用いた場合、鉄心の有無によってその磁束密度はおよそ2倍程度異なっている。
攪拌の電磁力は磁束密度の二乗で効いてくるので、結果的に攪拌力は約4倍に向上している。
【0033】
図6は鉄心がある場合の、回転方向移動磁界の磁力線図である。垂直方向と同様に、鉄心があることによって磁束が中央の液体金属部まで到達していることが分かる。
【実施例2】
【0034】
本例では、鉄心内側の端面(すなわち、櫛の歯の端面)と液体金属との間の距離(ギャップ)(図2に示すL)と攪拌力との関係を次ぎのようにして調べた。
液体金属の表面(r=D/2、ここでDは容器内径)において垂直方向移動磁界により発生する垂直方向の電磁力
JP0005352236B2_000002t.gifは、一般に以下の式で表すことができる(社団法人 日本鉄鋼協会 材料電磁プロセッシング研究グループ編: 材料電磁プロセッシング, 東北大学出版会, (1999).)。
JP0005352236B2_000003t.gifここでωは液体金属の導電率(S/m)、σは印加電流の角周波数(rad/s)、Κは垂直方向移動磁場の波数(1/m)、
JP0005352236B2_000004t.gifは液体金属の表面における磁束の半径方向成分(T)である。
JP0005352236B2_000005t.gifを実験的にガウスメータで測定することによって、
JP0005352236B2_000006t.gifを評価することが可能となる。この電磁力は液体金属を駆動する力であり、攪拌力と直接関係するパラメータである。
容器内径Dを変化させた場合の電磁力を計算したものを図7に示す。
図7は同一の垂直方向移動磁界発生用コイルを用い、容器内径を変えた場合の、液体金属表面に作用する垂直方向電磁力の大きさを示している。横軸はギャップと容器内径との比(L/D)、縦軸はギャップが無い場合で規格化した垂直方向電磁力である。
図7に示すように、ギャップと容器内径との比(L/D)が大きくなると、垂直方向電磁力が小さくなることが分かる。
L/Dを小さくしていくと、30%を境界として電磁力は急激に上昇し始める。すなわち、L/D=30%に臨界点があることがわかる。従って、L/Dを30%以下とすることが好ましい。
【0035】
そこで本発明では、垂直方向移動磁界発生用コイルによって発生した磁束を効率よく液体金属にまで導くために、鉄心内側の端面を垂直方向移動磁界発生用コイルよりもさらに内側に延長した鉄心形状としている(図1参照)。鉄心内側の端面と液体金属の距離(ギャップ)を可能な限り小さくすることによって、効率の良い攪拌を可能としている。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、主として金属製造分野において使用することができる。液体金属に従来よりも強い攪拌を付与することができるため、成分濃度や温度の均一化、液体金属中の介在物粒子の凝集及び肥大化などに適用可能である。
【0037】
以上、発明の実施の形態に則して本発明を説明してきたが、本発明の内容は上記に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9