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明細書 :フラーレン誘導体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5246699号 (P5246699)
登録日 平成25年4月19日(2013.4.19)
発行日 平成25年7月24日(2013.7.24)
発明の名称または考案の名称 フラーレン誘導体の製造方法
国際特許分類 C07C   1/32        (2006.01)
C07C  13/64        (2006.01)
C07C  41/30        (2006.01)
C07C  43/20        (2006.01)
C07F   7/08        (2006.01)
C07F   7/18        (2006.01)
FI C07C 1/32
C07C 13/64
C07C 41/30
C07C 43/20 D
C07F 7/08 C
C07F 7/18 D
請求項の数または発明の数 21
全頁数 24
出願番号 特願2008-544124 (P2008-544124)
出願日 平成19年11月6日(2007.11.6)
国際出願番号 PCT/JP2007/071868
国際公開番号 WO2008/059771
国際公開日 平成20年5月22日(2008.5.22)
優先権出願番号 2006308357
優先日 平成18年11月14日(2006.11.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年2月26日(2010.2.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】中村 栄一
【氏名】松尾 豊
【氏名】岩下 暁彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100092783、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100095360、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 英二
【識別番号】100114409、【弁理士】、【氏名又は名称】古橋 伸茂
【識別番号】100104282、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 康仁
審査官 【審査官】藤代 亮
参考文献・文献 特開2005-232165(JP,A)
特開2003-212881(JP,A)
特開平07-089972(JP,A)
特開平11-255509(JP,A)
調査した分野 ・IPC
C07C 1/32
C07C 13/64
C07C 41/30
C07C 43/20
C07F 7/08
C07F 7/18

・DB
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
フラーレンまたはフラーレン誘導体に、少なくともグリニャール試薬とドナー数が25~33.1の極性物質とを反応させて有機基を付加する工程であって、有機基が付加されるフラーレンまたはフラーレン誘導体に対して極性物質を3~100当量用いる有機基付加工程Aを含む、モノ付加体、2重付加体、3重付加体または4重付加体のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項2】
有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレンまたはフラーレン誘導体が、下記式(1)
【化1】
JP0005246699B2_000020t.gif
[式中、A~Eの位置にある5つの炭素の中の0~4の炭素に、それぞれ独立して有機基が付加されている;Fの位置にある炭素に水素原子もしくはC1~C30炭化水素基が付加されている、または、何も付加されていない。]
で表されるフラーレンまたはフラーレン誘導体である、請求項1に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項3】
有機基付加工程Aにおいて、式(1)で表される前記フラーレンまたはフラーレン誘導体のA~Eの位置にあり有機基が付加されていない炭素の少なくとも1つに有機基を付加する、請求項2に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項4】
有機基付加工程Aでフラーレンまたはフラーレン誘導体の有機基が付加されていない炭素の1つに有機基を付加する、請求項1~3のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項5】
有機基付加工程Aにおいて付加される有機基が水素原子、置換基を有してもよいC1~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC1~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC6~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY1、式中、Y1は置換基を有してもよいC1~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY2、式中、Y2は置換基を有してもよいC6~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO23、式中、Y3は置換基を有してもよいC1~C20アルキル基を示す。)および置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO24、式中、Y4は置換基を有してもよいC6~C18アリール基を示す。)からなる群から選ばれる1以上である、請求項1~4のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項6】
有機基付加工程Aにおいて付加される有機基が、下記式(2)
【化2】
JP0005246699B2_000021t.gif

[式中、R21~R23は、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC1~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC1~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC6~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY1、式中、Y1は置換基を有してもよいC1~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY2、式中、Y2は置換基を有してもよいC6~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO23、式中、Y3は置換基を有してもよいC1~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO24、式中、Y4は置換基を有してもよいC6~C18アリール基を示す。)である]
で表される基である、請求項1~4のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項7】
21~R23が、それぞれ独立してC1~C20アルキル基である、請求項6に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項8】
グリニャール試薬が、下記式(3)
3MgX (3)
[式中、R3は有機基を示し;XはCl、BrまたはIを示す。]
で表される、請求項1~7のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項9】
式(3)中のR3が、置換基を有してもよいC1~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC1~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC6~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY1、式中、Y1は置換基を有してもよいC1~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY2、式中、Y2は置換基を有してもよいC6~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO23、式中、Y3は置換基を有してもよいC1~C20アルキル基を示す。)または置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO24、式中、Y4は置換基を有してもよいC6~C18アリール基を示す。)である、請求項8に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項10】
3が、それぞれ独立してC1~C20アルキル基である、請求項9に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項11】
グリニャール試薬を、有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレンまたはフラーレン誘導体に対して1~20当量用いる、請求項1~10のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項12】
極性物質のドナー数が26.6~33.1である、請求項1~11のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項13】
極性物質が、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはピリジンである、請求項1~11のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項14】
有機基付加工程Aによって有機基が付加されたフラーレン誘導体が、下記式(1A)
【化3】
JP0005246699B2_000022t.gif

[式中、A~Eの位置にある5つの炭素の中のの炭素に、それぞれ独立して有機基が付加されている。]
で表されるフラーレン誘導体である、請求項1~13のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項15】
式(1A)中、A~Eの位置にある炭素に付加している有機基が、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC1~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC1~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC6~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY1、式中、Y1は置換基を有してもよいC1~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY2、式中、Y2は置換基を有してもよいC6~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO23、式中、Y3は置換基を有してもよいC1~C20アルキル基を示す。)または置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO24、式中、Y4は置換基を有してもよいC6~C18アリール基を示す。)である、請求項14に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項16】
有機基付加工程Aによって水素原子と有機基とが付加されて得られたフラーレン誘導体に、さらに、少なくとも塩基性化合物とハロゲン化合物とを反応させて有機基を付加する有機基付加工程Bを含む、請求項1~15のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項17】
有機基付加工程Bで用いられる塩基性化合物が、金属ヒドリド、金属アルコキシド、アルカリ金属試薬、アルカリ金属および有機アルカリからなる群から選ばれる1以上を含む、請求項16に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項18】
有機基付加工程Bで用いられる塩基性化合物が、KまたはNaを含むアルコキシドである、請求項16に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項19】
有機基付加工程Bで用いられる塩基性化合物が、t-BuOKまたはt-BuONaである、請求項16のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項20】
有機基付加工程Bで用いられるハロゲン化合物が、下記式(4)
4X (4)
[式中、R4は有機基を示し、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される、請求項16~19のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項21】
式(4)中、R4が水素原子、置換基を有してもよいC1~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC1~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC6~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY1、式中、Y1は置換基を有してもよいC1~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY2、式中、Y2は置換基を有してもよいC6~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO23、式中、Y3は置換基を有してもよいC1~C20アルキル基を示す。)または置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO24、式中、Y4は置換基を有してもよいC6~C18アリール基を示す。)であり、XがCl、BrまたはIである、請求項20に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体の製造方法に関する。具体的には、フラーレンまたはフラーレン誘導体に、有機基を付加する工程を含むフラーレン誘導体の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
炭素原子が球状またはラグビーボール状に配置して形成される炭素クラスター(以下、「フラーレン」ともいう)の合成法が確立されて以来、フラーレンに関する研究が精力的に展開されている。その結果、数多くのフラーレン誘導体が合成されてきた。
このようなフラーレン誘導体の具体例として、フラーレン骨格に5個の有機基が結合したフラーレン誘導体(以下、単に、「5重付加フラーレン誘導体」ともいう)の合成方法について報告されている[例えば、特開平10-167994号公報(特許文献1)、特開平11-255509号公報(特許文献2)、J.Am.Chem.Soc.,118,12850(1996)(非特許文献1),Org.Lett.,,1919(2000)(非特許文献2),Chem,Lett.,1098(2000)(非特許文献3)]。
5重付加フラーレン誘導体の製造方法としては、例えば、フェニルグリニヤール試薬とCuBr・S(CHとから調製される有機銅試薬をフラーレンC60と反応させることにより、フェニルグリニヤール試薬を構成するフェニル基がフラーレンC60の一つの5員環の周囲を取り囲むように位置選択的に付加したフェニル化フラーレン誘導体(C60PhH)が定量的に得られることが知られている[例えば、特開平10-167994号公報(特許文献1)]。
しかしながら、フェニルグリニヤール試薬と前記有機銅試薬を用いるフラーレン誘導体の製造方法は、フラーレンの6重付加体、7重付加体、10重付加体などの製造においては目的物の収率が高く極めて有効であるが、モノ付加体、2重付加体、3重付加体、4重付加体等の付加する置換基が少ないフラーレン誘導体を合成する場合には収率が低いという問題があった。
【発明の開示】
【0003】
上記の状況の下、例えば、モノ付加体、2重付加体、3重付加体、4重付加体等の付加された置換基が少ないフラーレン誘導体を高い収率で製造する方法が求められている。
本発明者等は、フラーレンまたはフラーレン誘導体に、少なくともグリニャール試薬と極性物質とを反応させて、位置選択的にさらに有機基をフラーレン(誘導体)に付加する工程(有機基付加工程A)を含むフラーレン誘導体の製造方法を見出した。さらに、本発明者等は、有機基付加工程Aの後に、さらに
少なくとも塩基性化合物とハロゲン化合物とを反応させて有機基を付加する工程(有機基付加工程B)を含むフラーレン誘導体の製造方法を見出した。そして、本発明者等はこれらの知見に基づいて本発明を完成した。
本発明は以下のようなフラーレン誘導体の製造方法等を提供する。
[1] フラーレンまたはフラーレン誘導体に、少なくともグリニャール試薬と極性物質とを反応させて有機基を付加する工程であって、有機基が付加されるフラーレンまたはフラーレン誘導体に対して極性物質を3~100当量用いる有機基付加工程Aを含む、フラーレン誘導体の製造方法。すなわち、[1]の方法では、有機基が付加される反応工程が行われる反応系において、フラーレンまたはフラーレン誘導体に対して極性物質が3~100当量投入される。
[2] 有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレンまたはフラーレン誘導体が、下記式(1)
JP0005246699B2_000002t.gif[式中、A~Eの位置にある5つの炭素の中の0~4の炭素に、それぞれ独立して有機基が付加されている;Fの位置にある炭素に水素原子もしくはC~C30炭化水素基が付加されている、または、何も付加されていない。]
で表されるフラーレンまたはフラーレン誘導体である、[1]に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[3] 有機基付加工程Aにおいて、式(1)で表される前記フラーレンまたはフラーレン誘導体のA~Eの位置にあり有機基が付加されていない炭素の少なくとも1つに有機基を付加する、[2]に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[4] 有機基付加工程Aにおいて付加される有機基が水素原子、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)および置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)からなる群から選ばれる1以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[5] 有機基付加工程Aにおいて付加される有機基が、下記式(2)
JP0005246699B2_000003t.gif[式中、R21~R23は、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)である]
で表される基である、[1]~[3]のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[6] R21~R23が、それぞれ独立してC~C20アルキル基である、[5]に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[7] グリニャール試薬が、下記式(3)
JP0005246699B2_000004t.gif[式中、Rは有機基を示し;XはCl、BrまたはIを示す。]
で表される、[1]~[6]のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[8] 式(3)中のRが、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)または置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)である、[7]に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[9] Rが、それぞれ独立してC~C20アルキル基である、[8]に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[10] グリニャール試薬を、有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレンまたはフラーレン誘導体に対して1~20当量用いる、[1]~[9]のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。すなわち、[10]の方法では、有機基が付加される反応工程が行われる反応系において、フラーレンまたはフラーレン誘導体に対してグリニャール試薬が1~20当量投入される。
[11] 極性物質が、ドナー数が25以上である、[1]~[10]のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[12] 極性物質が、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはピリジンである、[1]~[10]のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[13] 有機基付加工程Aによって有機基が付加されたフラーレン誘導体が、下記式(1A)
JP0005246699B2_000005t.gif[式中、A~Eの位置にある5つの炭素の中の1~5の炭素に、それぞれ独立して有機基が付加されている。]
で表されるフラーレン誘導体である、[1]~[12]のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[14] 式(1A)中、A~Eの位置にある炭素に付加している有機基が、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)または置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)である、[13]に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[15] 有機基付加工程Aによって水素原子と有機基とが付加されて得られたフラーレン誘導体に、さらに、少なくとも塩基性化合物とハロゲン化合物とを反応させて有機基を付加する有機基付加工程Bを含む、[1]~[14]のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[16] 有機基付加工程Bで用いられる塩基性化合物が、金属ヒドリド、金属アルコキシド、アルカリ金属試薬、アルカリ金属および有機アルカリからなる群から選ばれる1以上を含む、[15]に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[17] 有機基付加工程Bで用いられる塩基性化合物が、KまたはNaを含むアルコキシドである、[15]に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[18] 有機基付加工程Bで用いられる塩基性化合物が、t-BuOKまたはt-BuONaである、[15]のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[19] 有機基付加工程Bで用いられるハロゲン化合物が、下記式(4)
JP0005246699B2_000006t.gif[式中、Rは有機基を示し、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される、[15]~[18]のいずれかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[20] 式(4)中、Rが水素原子、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)または置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)であり、XがCl、BrまたはIである、[19]に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
本明細書において、「フラーレン」とは炭素原子が球状またはラグビーボール状に配置して形成される炭素クラスターの総称であり(現代化学2000年6月号46頁,Chemical Reviews,98,2527(1998)参照)、例えば、フラーレンC60(いわゆるバックミンスター・フラーレン)、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC94、フラーレンC96等が挙げられる。
本発明の好ましい態様に係るフラーレン誘導体の製造方法を用いると、例えば、モノ付加体、2重付加体、3重付加体、4重付加体等、付加されている基が少ないフラーレン誘導体を高い収率で製造することができる。
本発明の好ましい態様に係るフラーレン誘導体の製造方法を用いると、フラーレンまたはフラーレン誘導体に、特定の有機基を段階的に付加することができ、さらには、前記有機基を位置選択的に付加することもできる。
また、本発明の好ましい態様に係るフラーレン誘導体の製造方法を用いると、特定の有機基が特定の位置に付加されたフラーレン誘導体を選択的に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
I 本発明の有機基付加工程A
本発明の有機基付加工程Aは、フラーレンまたはフラーレン誘導体に、少なくともグリニャール試薬と極性物質とを反応させて有機基を付加する工程である。
1 有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレンまたはフラーレン誘導体
1.1 有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレン
本発明の有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレンは特に限定されないが、例えば、フラーレンC60(いわゆるバックミンスター・フラーレン)、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC94、フラーレンC96等が挙げられる。これらの中でも、上記式(1)において、A~Fの位置にある全ての炭素に何も付加されていないフラーレンが特に好ましい。
フラーレンの製造方法は特に限定されず、公知の方法によって製造されたフラーレンを本発明の製造方法の出発物質として用いることができる。1種のフラーレンであっても、2種類以上のフラーレン混合物であっても好適に用いることができる。
1.2 有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレン誘導体
本発明の有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレン誘導体は、フラーレンに有機基が付加されたものである。そして、当該フラーレン誘導体の基本骨格となるフラーレンは、本発明の製造方法において出発物質となるフラーレンと同様である。
有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレン誘導体は、有機基が1つ付加されているモノ付加体または、有機基が2つ付加されている二重付加体が好ましいが、これらに限定されない。
有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレン誘導体としては、上記式(1)において、A~Fの位置にある1つ以上の炭素に水素原子や有機基が付加されているフラーレン誘導体が好ましい。
本発明の有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレン誘導体において、フラーレン骨格に付加する有機基は特に限定されないが、例えば、水素原子、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC~C20アルコキシ基、置換基を有してもよいC~C20アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基等が挙げられる。
本明細書において、「C~C30炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C~C30炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。「C~C30炭化水素基」には、C~C30アルキル基、C~C30アルケニル基、C~C30アルキニル基、C~C30アルキルジエニル基、C~C28アリール基、C~C30アルキルアリール基、C~C30アリールアルキル基、C~C30シクロアルキル基、C~C30シクロアルケニル基、(C~C15シクロアルキル)C~C15アルキル基などが含まれる。
本明細書において、「C~C30アルキル基」は、C~C20アルキル基であることが好ましく、C~C10アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
本明細書において、「C~C30アルケニル基」は、C~C20アルケニル基であることが好ましく、C~C10アルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチルアリル、2-ブテニル等を挙げることができる。
本明細書において、「C~C30アルキニル基」は、C~C20アルキニル基であることが好ましく、C~C10アルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。
本明細書において、「C~C30アルキルジエニル基」は、C~C20アルキルジエニル基であることが好ましく、C~C10アルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3-ブタジエニル等を挙げることができる。
本明細書において、「C~C28アリール基」は、C~C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
本明細書において、「C~C30アルキルアリール基」は、C~C12アルキルアリール基であることが好ましい。アルキルアリール基の例としては、制限するわけではないが、o-トリル、m-トリル、p-トリル、2,3-キシリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、o-クメニル、m-クメニル、p-クメニル、メシチル等を挙げることができる。
本明細書において、「C~C30アリールアルキル基」は、C~C12アリールアルキル基であることが好ましい。アリールアルキル基の例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、2,2-ジフェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル、5-フェニルペンチル等を挙げることができる。
本明細書において、「C~C30シクロアルキル基」は、C~C10シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
本明細書において、「C~C30シクロアルケニル基」は、C~C10シクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。
本明細書において、「C~C30アルコキシ基」は、C~C10アルコキシ基であることが好ましく、C~Cアルコキシ基であることが更に好ましい。アルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
本明細書において、「C~C30アリールオキシ基」は、C~C10アリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等を挙げることができる。
本明細書において、「アルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)」及び「アルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)」において、Y及びYは、C~C10アルキル基であることが好ましく、C~Cアルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
本明細書において、「アリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)」及び「アリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)」において、Y及びYは、C~C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
「C~C30炭化水素基」、「C~C30アルコキシ基」、「C~C30アリールオキシ基」、「アミノ基」、「シリル基」、「アルキルチオ基」、「アリールチオ基」、「アルキルスルホニル基」、「アリールスルホニル基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アルキン基、トリメチルシリル基、アミノ基、ホスホニル基、チオ基、カルボニル基、ニトロ基、スルホ基、イミノ基、ハロゲノ基、アルコキシ基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上、置換可能な最大数まで導入されていてもよく、好ましくは1個~4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
本明細書において、「置換基を有してもよいアミノ基」の例としては、制限するわけではないが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等がある。
本明細書において、「置換基を有していてもよいシリル基」の例としては、制限するわけではないが、ジメチルシリル、ジエチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル等がある。
本明細書において、「芳香族基」の例としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等がある。
本明細書において、「複素環基」の例としては、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ビピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基等がある。
本明細書において、「縮合多環芳香族基」の例としては、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等がある。
本明細書において、「縮合多環複素環基」の例としては、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントロリル基等がある。
また、これらの、「芳香族基」、「複素環基」、「縮合多環芳香族基」および「縮合多環複素環基」が有してもよい置換基の例としては、制限するわけではないが、C~C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C~C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C~C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個~4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
2 有機基付加工程Aで用いられるグリニャール試薬
本発明の製造方法の有機基付加工程Aで用いられるグリニャール試薬は上記式(3)で表される。
(3)式中、Rはグリニャール試薬の調整が可能な不活性置換基を有する有機基であれば特に限定されるものではない。
(3)式中、RはC~C20アルキル基、アリル基、ベンジル基、4-メトキシベンジル基、フェニル基、p-メトキシフェニル基、カルバゾリルフェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、ピレニル基、ジ(アルキロキシ)ベンゾイロキシフェニル基等が好ましい。
また、(3)式中、Rはナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体含有基、アントラキノン誘導体含有基、テトラチアフルバレン誘導体含有基、ポリチオフェン誘導体含有基等が好ましい。
(3)式中、Rは下記式(2)
JP0005246699B2_000007t.gif[式中、R21~R23は、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)である]
で表される基であることが好ましい。これらの中でも、Rはトリメチルシリルメチル基、(ヘキシル)ジメチルシリルメチル基、(ドデカ)ジメチルシリルメチル基等の(アルキル)ジメチルシリルメチル基、(イソプロポキシ)ジメチルシリルメチル基、(フェニル)ジメチルシリル基、(4-メトキシフェニル)ジメチルシリルメチル基、(4-ビフェニル)ジメチルシリルメチル基、(1-ナフチル)ジメチルシリルメチル基、(ピレノキシフェニル)ジメチルシリルメチル基、((アルキロキシ)ベンゾイロキシフェニル)ジメチルシリルメチル基、(ジ(アルキロキシ)ベンゾイロキシフェニル)ジメチルシリルメチル基、(テルピリジニル)ジメチルシリルメチル基、(カルバゾリルフェニル)ジメチルシリルメチル基および(ピレニルフェニル)ジメチルシリルメチル基が好ましい。
有機基付加工程Aにおいて、グリニャール試薬は、有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレンまたはフラーレン誘導体に対して1~20当量を用いることが好ましく、1~10当量を用いるとさらに好ましい。
本件発明の好ましい態様によれば、上記式(3)のRが、出発物質のフラーレンまたはフラーレン誘導体に付加されることになる。
3 有機基付加工程Aで用いられる極性物質
本発明の製造方法の有機基付加工程Aで用いられる極性物質は、そのような性質を有していれば特に限定されないが、ドナー数(DN)が25以上であることが好ましい。
本発明の製造方法で用いられる極性物質としては、非プロトン性溶媒が好ましく、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ピリジン等を用いることがさらに好ましい。これらの中でもN,N-ジメチルホルムアミドを用いると得られるフラーレン誘導体の収率が高くなるので特に好ましい。
有機基付加工程Aにおいて、極性物質は、有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレンまたはフラーレン誘導体に対して3~100当量を用いると、得られるフラーレン誘導体の収率が高まるため好ましく、5~60当量を用いるとさらに好ましく、10~50当量を用いると特に好ましい。
4 有機基付加工程Aを用いたフラーレン誘導体の製造
有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレンまたはフラーレン誘導体に少なくとも前述のグリニャール試薬と前述の極性物質とを反応させて有機基を付加して、フラーレン誘導体が製造される。
有機基付加工程Aの反応は、溶媒を用いて行われることが好ましい。溶媒としては、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロベンゼンまたはそれらの混合溶媒等が用いられるが、これらの中でもジクロロベンゼンを溶媒として用いることが好ましい。
有機基付加工程Aの反応を促進するために、種々の目的に応じた各種の添加剤を使用してもよい。触媒や添加剤の種類は特に限定されず、出発物質や製造するフラーレン誘導体の種類(付加基の種類)に応じて適宜選択すればよい。
フラーレンまたはフラーレン誘導体とグリニャール試薬と極性物質との反応系は任意であり、密閉系,開放系,ガス流通系の何れでもよい。また、反応方式も特に限定されず、使用するフラーレン、フラーレン誘導体、グリニャール試薬および極性物質の種類、ならびにそれらの量等を勘案して、適切に選択することが可能である。
フラーレンもしくはフラーレン誘導体、グリニャール試薬ならびに極性物質の反応槽への添加順序および添加方法は任意であるが、フラーレンもまたはフラーレン誘導体が溶解した溶媒に極性物質を添加し、その後にグリニャール試薬を添加することが好ましい。
反応温度は、通常-70~70℃、好ましくは-50~50℃の範囲である。反応温度が低すぎると反応速度が充分でなく、高すぎると副反応が優先して起こる傾向にある。反応圧力は特に制限されず、常圧でも高圧でもよいが、常圧が好ましい。反応時間は、使用するフラーレンおよび有機金属化合物の種類や、溶媒の種類、酸化剤の種類、反応方式等によって適切な範囲を適宜選択すればよいが、通常、2分~2時間、好ましくは5分~1時間で行われる。
反応の停止は、例えば、塩化アンモニウム水溶液などを反応系中に添加することにより行われる。
本発明の有機基付加工程Aでは、フラーレンまたはフラーレン誘導体とグリニャール試薬と極性物質とを反応させることにより、フラーレンのモノ付加体や2重付加体、3重付加体、4重付加体等の付加体を選択的に製造できる。
反応により製造されたフラーレン誘導体は、その選択生成率が高い場合には精製する必要はない。しかし、原料フラーレンや微量のヒドロアルキル化体や酸化物等の副生成物と混在する粗生成物として得られる場合があるので、粗生成物から所定の有機基が付加されたフラーレン誘導体を単離・精製することが好ましい。製造されたフラーレン誘導体を単離・精製する手法としては、HPLCやカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィーによる手法、有機溶媒等を用いて溶媒抽出する手法などが挙げられる。
有機基付加工程Aで有機基が付加されるフラーレン誘導体に、予め有機基が付加されているフラーレン誘導体を用いた場合、本発明の有機基付加工程Aの好ましい態様によれば、付加される有機基は特定の位置に付加できる。具体的には、出発物質として上記式(1)で表されA~Eの位置にある5つの炭素の中の1~4の炭素に有機基が付加しているフラーレン誘導体を用いた場合、本発明の有機基付加工程Aによって、有機基が付加していないA~Eの位置にある炭素に対して新たに有機基が付加される。
5 有機基付加工程Aによって製造されるフラーレン誘導体
有機基付加工程Aによって製造されるフラーレン誘導体は、フラーレンを構成する炭素に有機基が付加されていれば特に限定されないが、本発明の好ましい態様によれば、上記式(1A)で表わされるフラーレン誘導体が製造される。
有機基付加工程Aによって製造される上記式(1A)で表されるフラーレン誘導体において、A~Eの位置にある5つの炭素の中の1~5の炭素に付加される有機基は、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)または置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)であることが好ましい。これらの中でも、C~C20アルキル基、アリル基、ベンジル基、4-メトキシベンジル基、フェニル基、p-メトキシフェニル基、カルバゾリルフェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、ピレニル基またはジ(アルキロキシ)ベンゾイロキシフェニル基が好ましい。
有機基付加工程Aによって製造される上記式(1A)で表されるフラーレン誘導体において、A~Eの位置にある5つの炭素の中の1~5の炭素に付加される有機基は、それぞれ独立して、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体含有基、アントラキノン誘導体含有基、テトラチアフルバレン誘導体含有基、ポリチオフェン誘導体含有基が好ましい。
また、有機基付加工程Aによって製造される上記式(1A)で表されるフラーレン誘導体において、A~Eの位置にある5つの炭素の中の1~5の炭素に付加される有機基は、それぞれ独立して、好ましくは、下記式(2)
JP0005246699B2_000008t.gif[式中、R21~R23は、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)または置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)である]
で表される基である。これらの中でも、トリメチルシリルメチル基、(ヘキシル)ジメチルシリルメチル基、(ドデカ)ジメチルシリルメチル基等の(アルキル)ジメチルシリルメチル基、(イソプロポキシ)ジメチルシリルメチル基、(フェニル)ジメチルシリル基、(4-メトキシフェニル)ジメチルシリルメチル基、(4-ビフェニル)ジメチルシリルメチル基、(1-ナフチル)ジメチルシリルメチル基、(ピレノキシフェニル)ジメチルシリルメチル基、((アルキロキシ)ベンゾイロキシフェニル)ジメチルシリルメチル基、(ジ(アルキロキシ)ベンゾイロキシフェニル)ジメチルシリルメチル基、(テルピリジニル)ジメチルシリルメチル基、(カルバゾリルフェニル)ジメチルシリルメチル基または(ピレニルフェニル)ジメチルシリルメチル基が好ましい。
II 有機基付加工程B
本発明の有機基付加工程Bは、水素原子が付加されたフラーレン誘導体に、少なくとも塩基性化合物とハロゲン化合物とを反応させて、フラーレン誘導体に付加されていた水素を脱水素すると共に有機基を付加する工程である。
1 有機基付加工程Bで有機基が付加されるフラーレン誘導体
有機基付加工程Bで有機基が付加されるフラーレン誘導体は、有機基付加工程Aによって水素原子と有機基とが付加されたフラーレン誘導体である。
2 有機基付加工程Bで用いられる塩基性化合物
本発明の製造方法の有機基付加工程Bで用いられる塩基性化合物は、塩基性を有する化合物であれば特に限定されない。
有機基付加工程Bで用いる塩基性化合物としては、金属ヒドリド(KH、NaH、CaH等)、金属アルコキシド[t-BuOK(カリウムt-ブトキシド)、t-BuONa(ナトリウムt-ブトキシド)]、アルカリ金属試薬(BuLi等)、アルカリ金属(K、Na、Li等)または有機アルカリ(テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等)を用いることが好ましい。これらの中でも、NaまたはKを含む金属アルコキシド好ましく、t-BuOKまたはt-BuONaが特に好ましい。
有機基付加工程Bにおいて、塩基性化合物は、有機基付加工程Bで有機基が付加されるフラーレン誘導体に対して1~3当量用いると、得られるフラーレン誘導体の収率が高まるため好ましく、1~2当量用いるとさらに好ましい。
3 有機基付加工程Bで用いられるハロゲン化合物
本発明の製造方法の有機基付加工程Bで用いられるハロゲン化合物は、上記式(4)で表される化合物であることが好ましい。(4)式中、RはC~C30アルキル基、アリル基、ベンジル基、4-メトキシベンジル基、フェニル基、p-メトキシフェニル基、カルバゾリルフェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、ピレニル基またはジ(アルキロキシ)ベンゾイロキシフェニル基が好ましい。
また、(4)式中、Rはナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体含有基、アントラキノン誘導体含有基、テトラチアフルバレン誘導体含有基またはポリチオフェン誘導体含有基等が好ましい。
(4)式中、Rは下記式(2)
JP0005246699B2_000009t.gif[式中、R21~R23は、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C20アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)である]
で表される基等であることが好ましい。これらの中でも、Rはトリメチルシリルメチル基、(ヘキシル)ジメチルシリルメチル基、(ドデカ)ジメチルシリルメチル基等の(アルキル)ジメチルシリルメチル基、(イソプロポキシ)ジメチルシリルメチル基、(フェニル)ジメチルシリル基、(4-メトキシフェニル)ジメチルシリルメチル基、(4-ビフェニル)ジメチルシリルメチル基、(1-ナフチル)ジメチルシリルメチル基、(ピレノキシフェニル)ジメチルシリルメチル基、((アルキロキシ)ベンゾイロキシフェニル)ジメチルシリルメチル基、(ジ(アルキロキシ)ベンゾイロキシフェニル)ジメチルシリルメチル基、(テルピリジニル)ジメチルシリルメチル基、(カルバゾリルフェニル)ジメチルシリルメチル基、(ピレニルフェニル)ジメチルシリルメチル基等が好ましい。
本件発明の好ましい態様によれば、上記式(4)のRが、有機基付加工程Bで有機基が付加されるフラーレン誘導体に付加されることになる。
有機基付加工程Bにおいて、ハロゲン化合物は、有機基付加工程Bで有機基が付加されるフラーレン誘導体に対して5~100当量用いると、得られるフラーレン誘導体の収率が高まるため好ましく、10~50当量用いるとさらに好ましい。
4 有機基付加工程Bを用いたフラーレン誘導体の製造
出発物質である水素原子が付加されたフラーレン誘導体に、少なくとも前述の塩基性化合物と前述のハロゲン化合物とを反応させて有機基を付加する(有機基付加工程B)。
有機基付加工程Bの反応は、不活性ガス雰囲気下、溶媒を用いて行われることが好ましい。溶媒としては、出発物質であるフラーレン誘導体を溶解できる溶媒が好ましく、例えば、ベンゾニトリルが挙げられる。
有機基付加工程Bの反応を促進するために、種々の目的に応じた各種の添加剤を使用してもよい。触媒や添加剤の種類は特に限定されず、出発物質や製造するフラーレン誘導体の種類(付加基の種類)に応じて適宜選択すればよい。
フラーレンまたはフラーレン誘導体と塩基性化合物とハロゲン化合物との反応系は任意であり、密閉系、開放系、ガス流通系の何れでもよい。また、反応方式も特に限定されず、使用するフラーレン誘導体、塩基性化合物およびハロゲン化合物ならびにそれらの量等を勘案して、適切に選択することが可能である。
出発物質のフラーレン誘導体、塩基性化合物およびハロゲン化合物の反応槽への添加順序および添加方法は任意であるが、フラーレン誘導体が溶解した溶媒に塩基性化合物を添加し、その後にハロゲン化合物を添加することが好ましい。本発明の有機基付加工程Bの好ましい態様では、フラーレン誘導体が溶解した溶媒に塩基性化合物を滴下して5~20分間攪拌し、その後、ハロゲン化合物を添加して、通常20~180℃、好ましくは50~150℃の温度範囲で2~12時間、好ましくは4~10時間で反応させる。反応圧力は特に制限されず、常圧付近でも高圧でもよいが、常圧付近が好ましい。
本発明の有機基付加工程Bでは、フラーレンまたはフラーレン誘導体とグリニャール試薬と極性物質とを反応させることにより、フラーレンのモノ付加体や2重付加体、3重付加体、4重付加体等の多重付加体を選択的に生成させる。
また、製造されたフラーレン誘導体を単離・精製することが好ましいが、その手法は有機基付加工程Aと同様である。
本発明の有機基付加工程Bの好ましい態様によれば、付加される有機基は特定の位置に付加できる。具体的には、出発物質として上記式(1A)で表されフラーレン誘導体を用いた場合、本発明の有機基付加工程Bによって、有機基が付加していないA~Eの位置にある炭素に対して新たに有機基が付加される。すなわち、水素原子が付加されている炭素原子を含む五角形を構成している炭素原子の周囲にある5つの炭素原子に対して新たな有機基が付加される。
反応により製造されたフラーレン誘導体は、その選択生成率が高い場合には精製する必要はないが、HPLCやカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィーによる手法、有機溶媒等を用いた溶媒抽出等によって、精製してもよい。
5 有機基付加工程Bによって製造されるフラーレン誘導体
有機基付加工程Bによって製造されるフラーレン誘導体は、フラーレンを構成する炭素に有機基が付加されていれば特に限定されないが、本発明の好ましい態様によれば、下記式(1B)
JP0005246699B2_000010t.gifで表わされるフラーレン誘導体が製造される。有機基付加工程Bによって製造される上記式(1B)で表されるフラーレン誘導体において、A~Eの位置にある5つの炭素の中の1~5の炭素に付加された有機基の例は、式(1A)中、A~Eの位置にある炭素に付加される有機基の例と同様である。
【実施例】
【0005】
以下、実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]C60(CHSi(CH)Hの製造
スキーム1
JP0005246699B2_000011t.gif スキーム1に示すように、窒素雰囲気下室温にてフラーレンC60(400mg,0.555mmol)をo-ジクロロベンゼン(100mL)に溶かし、フラーレンに対して30当量のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(1.29mL,16.7mmol)を加えた。得られた紫色の溶液にフラーレンに対して3当量のMeSiCHMgClのテトラヒドロフラン(THF)溶液(2.81mL,0.592M,1.67mmol)をシリンジで滴下した。10分間攪拌して得られた黒褐色の溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(0.2mL)を加え反応を停止させた。展開溶媒をトルエンとしたシリカゲルショートパスカラムに得られた反応混合物を通して、副生するマグネシウム塩等を除去した後、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)(カラム:Nakalai Tesque社製 Buckyprep,20mm x 250mm,溶離液:トルエン/2-プロパノール=7/3)で精製を行った。C60(CHSi(CH)Hのフラクションを集めて濃縮した後、メタノールを加えてフラーレン誘導体C60(CHSi(CH)Hを析出させ、濾過・乾燥によりC60(CHSi(CH)Hを得た(単離収率93%)。
得られたフラーレン誘導体C60(CHSi(CH)Hについて、H NMR、13C NMRおよびTOF法によるAPCI-HRMSの測定を行った。結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl/CS):δ 0.604(s,9H,SiMe),2.96(s,2H,CH),6.46(s,1H,C60H);
13C NMR(100MHz,CDCl/CS):δ 0.819(3C,SiCH),38.96(1C,CH),61.72(1C,C60H),62.28(1C,C60CH),134.76(2C,C60),136.57(2C,C60),140.07(2C,C60),140.30(2C,C60),141.61(2C,C60),141.62(2C,C60),141.92(2C,C60),141.99(2C,C60),142.01(2C,C60),142.07(2C,C60),142.51(2C,C60),142.52(2C,C60),143.25(2C,C60),144.63(2C,C60),144.67(2C,C60),145.25(2C,C60),145.31(2C,C60),145.36(2C,C60),145.41(2C,C60),145.59(2C,C60),145.81(2C,C60),146.14(2C,C60),146.17(2C,C60),146.24(2C,C60),146.36(2C,C60),149.90(2C,C60),147.30(1C,C60),147.42(1C,C60),153.99(2C,C60),158.07(2C,C60);
APCI-HRMS(-):calcd for C6411Si(M-H),807.06300;found,807.05929.
[実施例2~4,比較例1]
出発物質のフラーレンに対してDMFを3当量用いた以外は、実施例1と同じ条件でC60(CHSi(CH)Hの合成した(実施例2)。
出発物質のフラーレンに対してDMFを10当量用いた以外は、実施例1と同じ条件でC60(CHSi(CH)Hの合成した(実施例3)。
出発物質のフラーレンに対してDMFを100当量用いた以外は、実施例1と同じ条件でC60(CHSi(CH)Hの合成した(実施例4)。
DMF用いなかった以外は実施例1と同じ条件でC60(CHSi(CH)Hの合成した(比較例1)。
実施例1~実施例4および比較例1において、標準試料としてC60(Ph)H(4.98mM/o-ジクロロベンゼン溶液)を用いて、高速液体クロマトグラフィ:HPLC(High Performance Liquid Chromatography)(カラム:ナカライテスク社製 Buckyprep,溶離液:トルエン/2-プロパノール=7/3)で分析を行い、C60とC60(CHSi(CH)Hの収率を測定した。その結果は以下のとおりである。
【表1】
JP0005246699B2_000012t.gif
次に、極性物質のドナー数(DN)と、付加体がフラーレンC60に付加する率(生成物の収率)との関係を調べた。具体的には、極性物質としてDMFを用いた前述の試験例の他に、ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた試験例,ピリジンを用いた試験例,エタノールを用いた試験例の4つの試験例において、C60からC60(CHSi(CH)Hを合成し、上記と同様にHPLCを用いて分析を行い、生成物の収率ならびにフラーレンの回収率を調べた。なお、C60(CHSi(CH)Hの合成方法は前述の工程と同様であった。結果は表2のとおりであった。
【表2】
JP0005246699B2_000013t.gif
この結果から、有機基付加工程Aにおいて、非プロトン性でドナー数が高い極性物質を用いた方が、生成物の収率が高くなる傾向がわかった。
[実施例5]C60(CHSi(CHの製造
スキーム2
JP0005246699B2_000014t.gif 実施例1で製造されたフラーレン誘導体C60(CHSi(CH)H(300mg,0.371mmol)をベンゾニトリル(60mL)に溶かし、カリウムt-ブトキシド(t-BuOK)のTHF溶液(0.445mL,0.445mmol)を滴下し、10分間攪拌した。得られた黒褐色の溶液にMeSiCHI(1.10mL,7.42mmol)を加え120℃に加熱し、8時間攪拌した。減圧下で溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:二硫化炭素/ヘキサン=1/2)によって精製した。フラーレン誘導体C60(CHSi(CHのフラクションを集めて濃縮した後、メタノールを加えてC60(CHSi(CHを析出させ、濾過・乾燥によりC60(CHSi(CHを得た(単離収率93%)。
得られたフラーレン誘導体C60(CHSi(CHについて、H NMR、13C NMRおよびTOF法によるAPCI-HRMSの測定を行った。結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ 0.40(s,18H,SiMe),2.47(d,2H,J=15Hz,CH),2.61(d,2H,J=15Hz,CH);
13C NMR(100MHz,CDCl):δ 0.704(6C,SiMe),33.94(2C,CH),56.28(2C,CCH),138.42(2C,C60),138.79(2C,C60),140.85(1C,C60),141.91(2C,C60),141.95(1C,C60),142.63(2C,C60),142.68(1C,C60),142.70(2C,C60),142.92(2C,C60),143.12(2C,C60),143.28(2C,C60),143.58(2C,C60),143.79(2C,C60),144.12(2C,C60),144.25(2C,C60),144.28(2C,C60),144.50(2C,C60),144.58(1C,C60),144.74(2C,C60),145.01(2C,C60),145.10(2C,C60),145.45(2C,C60),146.83(2C,C60),146.98(2C,C60),147.13(2C,C60),147.45(2C,C60),147.54(2C,C60),148.03(2C,C60),148.59(2C,C60),153.80(2C,C60),158.06(2C,C60);
APCI-HRMS(-):calcd for C6822Si(M-H),894.12600;found,894.12492.
[実施例6]C60(CHSi(CHHの製造
スキーム3
JP0005246699B2_000015t.gif スキーム3に示すように示すように、実施例5で製造されたC60(CHSi(CH(100mg,0.112mmol)を窒素雰囲気下0℃にてTHF(100mL)に溶かし、DMF(86.7・L,1.12mmol)を加えた。得られた褐色の溶液にMeSiCHMgClのTHF溶液(1.13mL,0.592M,0.670mmol)をシリンジでゆっくりと滴下した。15分攪拌した後得られた黒褐色の溶液へ飽和塩化アンモニウム水溶液(0.1mL)を加え反応を停止させた。展開溶媒をトルエンとしたシリカゲルショートパスカラムに得られた反応混合物を通して、副生するマグネシウム塩等を除去した。減圧下で溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:二硫化炭素/ヘキサン=1/1)によって精製した。表題化合物のフラクションを集めて濃縮した後、メタノールを加えて目的物を析出させ、濾過、乾燥により表題化合物を得た(単離収率64%)。
得られたフラーレン誘導体C60(CHSi(CHHについて、H NMR、13C NMRおよびTOF法によるAPCI-HRMSの測定を行った。結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ 0.222(s,9H,SiMe),0.285(s,9H,SiMe),0.288(s,9H,SiMe),2.05(d,1H,J=14.2Hz,CH),2.23(d,J=14.6Hz,1H,CH),2.29(d,J=14.2Hz,1H,CH),2.28(d,J=14.6Hz,1H,CH),2.37(d,J=14.6Hz,1H,CH),2.40(d,J=14.6Hz,1H,CH),5.29(s,1H,C60H);
13C NMR(100MHz,CDCl):δ 0.492(3C,SiMe),0.540(3C,SiMe),0.788(3C,SiMe),31.92(1C,CH),32.53(1C,CH),37.97(1C,CH),52.86(1C,C60),54.91(1C,C60),56.79(1C,C60),61.88(1C,C60),133.81(1C,C60),134.80(1C,C60),136.56(1C,C60),137.84(1C,C60),140.31(1C,C60),140.66(1C,C60),141.35(1C,C60),141.78(1C,C60),142.50(1C,C60),142.59(1C,C60),142.71(1C,C60),142.87(1C,C60),143.32(1C,C60),143.66(1C,C60),143.75(1C,C60),143.91(1C,C60),144.35(1C,C60),144.37(1C,C60),144.45(1C,C60),144.50(1C,C60),144.54(1C,C60),144.69(1C,C60),144.76(1C,C60),144.78(1C,C60),145.06(1C,C60),145.23(1C,C60),145.26(1C,C60),145.37(1C,C60),145.60(1C,C60),145.75(1C,C60),145.77(1C,C60),146.41(1C,C60),146.48(1C,C60),146.52(1C,C60),146.55(1C,C60),146.69(1C+1C,C60),146.79(1C,C60),146.87(1C,C60),147.40(1C,C60),147.41(1C,C60),147.62(1C,C60),147.63(1C,C60),147.78(1C,C60),148.65(1C,C60),149.01(1C,C60),149.18(1C,C60),149.45(1C,C60),150.03(1C,C60),152.35(1C,C60),155.03(1C,C60),156.27(1C,C60),157.00(1C,C60),158.41(1C,C60),159.94(1C,C60),162.94(1C,C60);
APCI-HRMS(-):calcd for C7233Si(M-H),981.18900;found,981.18524.
[実施例7]C60(Si(C)(CH)Hの製造
スキーム4
JP0005246699B2_000016t.gif スキーム4に示すように、MeSiCHMgClの代わりにMePhSiCHMgCl(3.04mL,0.550M,1.67mmol)をフラーレンに対して3当量用いたこと、および、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)をフラーレンに対して20当量用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で、フラーレン誘導体C60(Si(C)(CH)Hを合成した(415mg,単離収率86%)。
フラーレン誘導体についてH NMR、13C NMRおよびTOF法によるAPCI-HRMSの測定を行った。結果を以下に示す。
H NMR(500MHz,CDCl):δ 0.892(s,6H,SiMe),3.16(s,2H,CH),6.39(s,1H,C60H),7.44-7.46(m,3H,Ph),7.88-7.90(m,2H,Ph);
13C NMR(125MHz,CDCl):δ -0.752(2C,SiCH),38.03(1C,CH),61.57(1C,C60H),62.23(1C,C60CH),128.19(2C,Ph),129.68(1C,Ph),134.16(2C,Ph),134.89(2C,C60),136.57(2C,C60),138.22(1C,Ph),140.05(2C,C60),140.20(2C,C60),141.63(2C,C60),141.64(2C,C60),141.94(2C,C60),141.97(2C,C60),142.03(2C,C60),142.06(2C,C60),142.54(2C+2C,C60),143.27(2C,C60),144.66(2C,C60),144.71(2C,C60),145.28(2C,C60),145.36(2C,C60),145.39(2C+2C,C60),145.64(2C,C60),145.88(2C,C60),146.18(2C,C60),146.22(2C,C60),146.30(2C,C60),146.41(2C,C60),149.92(2C,C60),147.35(1C,C60),147.49(1C,C60),154.05(2C,C60),157.86(2C,C60);
APCI-HRMS(-):calcd for C6913Si(M-H),869.07865;found,869.07425.
[実施例8]C60(CHSiMe(i-PrO))Hの製造
スキーム5
JP0005246699B2_000017t.gif スキーム5に示すように、MeSiCHMgClの代わりにMe(i-PrO)SiCHMgCl(2.69mL,0.620M,1.67mmol)をフラーレンに対して3当量用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、フラーレン誘導体C60(CHSiMe(i-PrO))Hを合成した。得られたフラーレン誘導体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:二硫化炭素/ヘキサン=5/3)を用いて精製した(422mg,単離収率89%)。
得られたフラーレン誘導体C60(CHSiMe(i-PrO))Hについて、H NMR、13C NMRおよびTOF法によるAPCI-HRMSの測定を行った。結果を以下に示す。
H NMR(500MHz,CDCl):δ 0.664(s,6H,CHSiCH),1.36(d,J=6.10Hz,6H,CHCH),2.95(s,2H,CH),4.38(m,J=6.10,1H,CHCH),6.82(s,1H,C60H);
13C NMR(125MHz,THF-d):δ 1.023(2C,SiMe),26.38(2C,CHCH),38.49(1C,CH),62.36(1C,C60H),63.04(1C,CCH),66.72(1C,CHCH),136.10(2C,C60),137.55(2C,C60),140.88(2C,C60),141.03(2C,C60),142.45(2C,C60),142.48(2C,C60),142.83(2C,C60),142.91(2C,C60),142.99(2C,C60),143.14(2C,C60),143.38(2C+2C,C60),144.14(2C,C60),145.58(2C,C60),145.67(2C,C60),146.12(2C,C60),146.17(2C,C60),146.22(2C,C60),146.23(2C,C60),146.90(2C,C60),147.03(2C+2C,C60),147.04(2C,C60),147.07(1C,C60),147.16(2C,C60),147.24(2C,C60),148.20(2C,C60),148.39(1C,C60),156.49(2C,C60),159.93(2C,C60);
APCI-HRMS(-):calcd for C6615OSi(M-H),851.08922;found,851.08765.
[実施例9]C60(CH)Hの製造
スキーム6
JP0005246699B2_000018t.gif60を40.0mg、1,2-ジクロロベンゼンを10mL、DMFを0.129mLおよびMeSiCHMgClの代わりにMeMgBr(0.167mL,1.0M,0.167mmol)を用いた以外は実施例1と同様の手順で、C60(CH)Hを合成した(18.7mg,単離収率46%)。
得られたC60(CH)Hについて、H NMR、13C NMRおよびTOF法によるAPCI-HRMSの測定を行った。結果を以下に示す。
H NMR(500MHz,CDCl/CS):δ 3.26(s,3H,CH),6.40(s,1H,C60H);
13C NMR(125MHz,CDCl/CS):δ 35.05(1C,CH),60.12(1C,C60CH),61.30(1C,C60H),135.20(2C,C60),136.33(2C,C60),140.07(2C,C60),140.32(2C,C60),141.55(2C,C60),141.56(2C,C60),141.85(2C,C60),141.90(2C,C60),141.92(2C,C60),142.06(2C,C60),142.44(2C+2C,C60),143.14(2C,C60),144.51(2C,C60),144.57(2C,C60),145.26(2C,C60),145.27(2C,C60),145.33(2C,C60),145.39(2C,C60),145.71(2C,C60),145.77(2C,C60),146.06(2C,C60),146.11(2C,C60),146.22(2C,C60),146.29(2C,C60),146.82(2C,C60),147.20(1C,C60),147.32(1C,C60),153.46(2C,C60),156.84(2C,C60);
APCI-HRMS(-):calcd for C61(M-H),735.02348;found,735.02325.
[実施例10]C60(COCH)Hの製造
スキーム7
JP0005246699B2_000019t.gif60を40.0mg、1,2-ジクロロベンゼンを10mL、MeSiCHMgClの代わりにMeOCMgBr(0.211mL,0.790M,0.167mmol)およびDMFの代わりにジメチルスルホキシド(DMSO)(118μL,1.67mmol)を用いた以外は実施例1と同様の手順で合成を行った。精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:二硫化炭素/ヘキサン=2/1)を用い、C60(COCH)Hを得た(24.5mg,単離収率53%)。
得られたフラーレン誘導体、C60(COCH)Hについて、H NMR、13C NMRおよびTOF法によるAPCI-HRMSの測定を行った。結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl/CS):δ 3.97(s,3H,CH),6.71(s,1H,C60H),7.26(m,2H,C),8.34(m,2H,C);
13C NMR(100MHz,CDCl/CS):δ 55.21(1C,CH),63.77(1C,C60H),67.21(1C,C60C),115.13(2C,C),128.62(2C,C),135.59(2C,C60),136.21(2C,C60),140.13(2C,C60),140.20(2C,C60),140.40(1C,C),141.48(2C,C60),141.55(2C,C60),141.86(2C,C60),141.92(2C,C60),141.94(2C,C60),142.21(2C,C60),142.46(2C,C60),142.47(2C,C60),143.17(2C,C60),144.46(2C,C60),144.55(2C,C60),145.28(2C,C60),145.31(2C,C60),145.39(2C,C60),145.42(2C,C60),145.71(2C,C60),145.82(2C,C60),146.08(2C,C60),146.10(2C,C60),146.25(2C,C60),146.30(2C,C60),146.75(2C,C60),147.17(1C,C60),147.40(1C,C60),152.53(2C,C60),154.02(2C,C60),159.20(1C,C);
APCI-HRMS(-):calcd for C67O(M-H),827.05096;found,827.04969.
【産業上の利用可能性】
【0006】
本発明の活用法として、例えば、電子伝導材料、半導体材料、光機能材料、生理活性物質等を挙げることができる。