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明細書 :金属プローブ、その金属プローブの形成方法及びその形成装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4837747号 (P4837747)
登録日 平成23年10月7日(2011.10.7)
発行日 平成23年12月14日(2011.12.14)
発明の名称または考案の名称 金属プローブ、その金属プローブの形成方法及びその形成装置
国際特許分類 G01Q  60/16        (2010.01)
G01R   1/067       (2006.01)
FI G01Q 60/16 111
G01R 1/067 A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 13
出願番号 特願2008-546897 (P2008-546897)
出願日 平成19年8月24日(2007.8.24)
国際出願番号 PCT/JP2007/066406
国際公開番号 WO2008/065790
国際公開日 平成20年6月5日(2008.6.5)
優先権出願番号 2006322924
優先日 平成18年11月30日(2006.11.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年6月3日(2009.6.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】藤田 淳一
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】荒巻 慎哉
参考文献・文献 特開2006-170967(JP,A)
調査した分野 G01Q 60/16
G01R 1/067
特許請求の範囲 【請求項1】
金属プローブ本体の先端部がタングステン(W)、ハフニウム(Hf)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、タンタル(Ta)、イリジウム(Ir)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、ルテニウム(Ru)の少なくとも一つとカーボンが主たる構成物質であることを特徴とする金属プローブ。
【請求項2】
請求項1記載の金属プローブにおいて、前記金属ブローブ本体の先端部がアモルファス相であることを特徴とする金属プローブ。
【請求項3】
請求項1記載の金属プローブにおいて、前記金属プローブ本体の曲率半径が10nm以下であることを特徴とする金属プローブ。
【請求項4】
(a)金属プローブ本体の先端部を局所的に溶かす工程と、
(b)カーボンを混入する工程と、
(c)カーボンナノチューブの後端部と前記金属プローブ本体の先端部を結合し、対向電極にクーロン引力により吸引して前記金属プローブ本体の先端部を引き延ばす工程とを含むことを特徴とする金属プローブの形成方法。
【請求項5】
(a)カーボンナノチューブの後端部と金属プローブ本体の先端部を接触させる工程と、
(b)前記接触箇所に電子ビームを局所照射し、前記接触箇所にカーボンの分解生成物(コンタミネーション)を堆積して前記カーボンナノチューブと前記金属プローブ本体とを接合し、カーボンナノチューブ付きプローブを作製する工程と、
(c)前記カーボンナノチューブの先端部と該カーボンナノチューブの先端部に対向して配置される対向電極との間に電位を与え、前記金属プローブ本体の先端部を溶融する工程と、
(d)前記金属プローブ本体の先端部を引き延ばし、前記カーボンナノチューブを前記金属プローブ本体から引き離す工程と、
(e)該引き離しにより前記金属プローブ本体の先端部に曲率半径が10nm以下の先端部を形成する工程とを施すことを特徴とする金属プローブの形成方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載の金属プローブの形成方法において、前記金属プローブ本体は電解研磨により精鋭化された金属プローブからなることを特徴とする金属プローブの形成方法。
【請求項7】
請求項5記載の金属プローブの形成方法において、前記カーボンナノチューブと前記金属プローブ本体との接合に、炭化水素系ガスを原料とした、電子ビーム分解生成物を用いることを特徴とする金属プローブの形成方法。
【請求項8】
(a)カーボンナノチューブカートリッジと、
(b)該カートリッジのカーボンナノチューブの後端部を先鋭化された電解研磨プローブの先端部に接合し、カーボンナノチューブ付きプローブを作製する手段と、
(c)前記カーボンナノチューブの先端部に対向して配置される対向電極と、
(d)該対向電極と前記カーボンナノチューブ付きプローブの先端部の間に電位を与え、前記金属プローブ本体の先端部を溶融する手段と、
(e)前記カーボンナノチューブの先端部に溜まった電荷によって前記カーボンナノチューブを前記対向電極にクーロン引力により吸引して前記金属プローブ本体の先端部を引き延ばし、前記カーボンナノチューブを前記金属プローブ本体から引き離し、前記金属プローブ本体の先端部に曲率半径が10nm以下の超鋭利な先端部を形成する手段とを具備することを特徴とする金属プローブの形成装置。
【請求項9】
請求項4、5、6又は7記載の金属プローブの形成方法によって製造される金属プローブ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属プローブの形成方法及びそれによって製造される金属プローブに係り、特に、半導体極微細領域での局所計測で利用されるナノレベルの極めて尖鋭な金属プローブ、その金属プローブの形成方法及びその形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子ビームや紫外線、EUVなどの短波光を用いた超微細リソグラフィ技術の進展により、超集積化半導体デバイスはその線幅が50nm程度に至るまで超微細化され、さらに微細領域での量産が検討されるに至っている。
【0003】
このような超微細半導体デバイスが製造される一方で、配線の短絡や切断などの故障解析に欠かせないのが局所計測プローブである。今日の尖端プローブは電解研磨や、イオンビームによる局所研磨等で、尖端曲率が数十nm程度のものが比較的容易に形成され、電極プローブとして利用されている。
【0004】
しかしながら、超LSIデバイスの線幅がさらに縮小化されるなかで、これら局所計測プローブに要求される先端曲率もさらに小さなものが望まれている。
【0005】
通常このようなプローブ先端の先鋭化には下記非特許文献1に示すような電解研磨法が用いられる。KOH等の電解液中でプローブとなるタングステン線母材などをグラファイトなどの対向電極を用いて交流電流を流すとタングステン線先端が研磨され先鋭化する。このような技術で一般には数十ナノメートル(nm)から数百nmの先端曲率半径を持つプローブが作製され、走査プローブ顕微鏡探針に用いられる。しかし、探針先端の曲率半径は、電解研磨した金属探針の場合には100nm程度が限界である。
【0006】
そこで、10nm程度の径を持つカーボンナノチューブ(CNT)を金属探針の先端に接着してSTM探針等に利用する方法が、下記非特許文献2,3等に提案されているが、なかなか普及しない。
【0007】
その原因は、CNTと金属探針の接触抵抗が大きいこと、また、CNTと金属探針の機械的な接着力が弱いことなどのため、測定の再現性を得ることがなかなか困難だからである。
【0008】
一方で、下記の非特許文献4に示すように、CNTとの接触抵抗問題を、CNTを接続した金属探針全体を膜厚数nmの金属被膜でコートする技術で回避する技術的可能性も示されている。金属被膜CNT探針を用いて、STM像だけでなく正常な走査トンネルスペクトルが取れること、金属を被膜してもCNT本来の柔軟性が失われていないことも示されている。

【非特許文献1】ウルトラマイクロスコーピー誌、1992年42巻44号pp1533-1537 A computer-controlled technique for electrochemical STM tip fabrication;Ultramicroscopy,Vol.42-44,pp.1533-1537(1992);R.Fainchtein and P.R.Zarriello;Elsevier Science Publishers B.V.
【非特許文献2】Y.Shingaya,et al.,Physica B323(2002)153.
【非特許文献3】M.Ishikawa,et al.,Japan.J.Appl.Phys.41(2002)4908.
【非特許文献4】T.Ikuno,et al.,Jpn.J.Appl.Phys.43(2004)L644.
【発明の開示】
【0009】
上記したように電解研磨やナノチューブ複合プローブ等によりSTM技術は格段に進歩したが、10nmのナノチューブに数nmの金属被膜を形成するための探針先端曲率は結局20nm程度になってしまう。次世代超LSI技術としては、30nmノード技術が議論されていることを鑑みれば、さらに先端曲率半径の小さな、少なくとも曲率半径数nmオーダーの鋭い計測プローブを実現することが必要である。しかも、機械的強度や複合構造に起因する接触抵抗などを考慮すると、同種元素による金属で形成された一体物の先鋭化プローブが好ましい。一般には加熱しながら溶解温度以下で金属棒を引き延ばすことで極細の先端を作製することが可能であるが、特に、高融点金属をナノスケールで引き延ばすことは極めて困難である。
【0010】
本発明は、上記状況に鑑みて、金属プローブ本体の先端部が炭素含有の金属からなり、尖鋭化された金属プローブ、その金属プローブの形成方法及びその形成装置を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕金属プローブにおいて、金属プローブ本体の先端部が炭素含有のタングステン(W)、ハフニウム(Hf)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、タンタル(Ta)、イリジウム(Ir)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、ルテニウム(Ru)の少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0012】
〔2〕上記〔1〕記載の金属プローブにおいて、前記金属プローブ本体の先端部の曲率半径が10nm以下であり、該金属プローブ先端部が、炭素含有のアモルファス相からなることを特徴とする。
【0013】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の金属プローブであって、電界放射素子用エミッタであることを特徴とする。
【0014】
〔4〕金属プローブの形成方法において、金属プローブ本体の先端部を局所的に溶かす工程と、カーボンを混入する工程と、前記金属プローブ本体の先端部を引き延ばす工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
〔5〕金属プローブの形成方法において、カーボンナノチューブの後端部と金属プローブ本体の先端部を接触させる工程と、前記接触箇所に電子ビームを局所照射し、前記接触箇所にカーボンの分解生成物(コンタミネーション)を堆積して前記カーボンナノチューブと前記金属プローブ本体とを接合し、カーボンナノチューブ付きプローブを作製する工程と、前記カーボンナノチューブの先端部と該カーボンナノチューブの先端部に対向して配置される対向電極との間に電位を与え、前記金属プローブ本体の先端部を溶融する工程と、前記金属プローブ本体の先端部を引き延ばし、前記カーボンナノチューブを前記金属プローブ本体から引き離す工程と、この引き離しにより前記金属プローブ本体の先端部に曲率半径が10nm以下の先端部を形成する工程とを施すことを特徴とする。
【0016】
〔6〕上記〔4〕又は〔5〕記載の金属プローブの形成方法において、前記金属プローブ本体は電解研磨により先鋭化された金属プローブからなることを特徴とする。
【0017】
〔7〕上記〔5〕記載の金属プローブの形成方法において、前記カーボンナノチューブと前記金属プローブ本体との接合に、炭化水素系ガスを原料とした、電子ビーム分解生成物を用いることを特徴とする。
【0018】
〔8〕金属プローブの形成装置において、カーボンナノチューブカートリッジと、このカートリッジのカーボンナノチューブの後端部を先鋭化された電解研磨プローブの先端部に接合し、カーボンナノチューブ付きプローブを作製する手段と、前記カーボンナノチューブの先端部に対向して配置される対向電極と、この対向電極と前記カーボンナノチューブ付きプローブの先端部の間に電位を与え、前記金属プローブ本体の先端部を溶融する手段と、前記カーボンナノチューブの先端部に溜まった電荷によって前記カーボンナノチューブを前記対向電極にクーロン引力により吸引して前記金属プローブ本体の先端部を引き延ばし、前記カーボンナノチューブを前記金属プローブ本体から引き離し、前記金属プローブ本体の先端部に曲率半径が10nm以下の超鋭利な先端部を形成する手段とを具備することを特徴とする。
【0019】
つまり、(1)電解研磨で先鋭化した金属プローブ先端にカーボンナノチューブを接合させ、接合部分をジュール加熱によって局所溶融し、カーボンナノチューブと金属プローブを相互に引き離すことにより、極めて鋭利な先端部を持つ金属プローブを得る。
【0020】
(2)上記(1)記載の金属プローブの形成方法において、カーボンナノチューブの先端の極めて近い距離に対向電極を設置し、この対向電極とカーボンナノチューブ間に電位を与えることで、カーボンナノチューブ先端からの電界放射を誘導し、この電界放射に伴うジュール加熱によって金属プローブの先端を加熱することを特徴とする。
【0021】
(3)上記(1)記載の金属プローブの形成方法において、カーボンナノチューブによる金属プローブ本体の先端部の引き延ばし、および引き離しには、対向電極とカーボンナノチューブ間に働くクーロン引力を用いることを特徴とする。
【0022】
(4)上記(1)記載の金属プローブの形成方法において、カーボンナノチューブと金属プローブ本体との接合には、炭化水素系ガスを原料とした電子ビーム分解堆積法を用い、アモルファス炭素の堆積物によって行うことを特徴とする。 (5)尖鋭化された金属一体プローブであって、上記(1)~(4)記載の方法によって製造される金属プローブである。
【0023】
すなわち、本発明は、タングステン(W)、イリジウム(Ir)などの金属元素を用いた超尖鋭化プローブの形成方法において、電解研磨により先鋭化された金属プローブ先端にカーボンナノチューブを電子ビーム励起反応によるアモルファスカーボンで接合し、対向電極(陽極)との間の電界放射に伴うジュール加熱で金属との接合部を溶融し、同時に対向電極とカーボンナノチューブ間のクーロン引力で融解部分を引き延ばすことで10nm以下の先端曲率半径をもつ超鋭利な金属プローブを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例を示す超尖鋭化金属プローブの形成方法を示す模式図である。
【図2】本発明を実施した時のプローブ先端のSEM像を示す図である。
【図3】本発明に係る尖鋭化タングステンプローブ先端からの電界放射特性図である。
【図4】図3の(b)と(c)のプローブの電界放射特性のFN(ファーラー・ノードハイム)プロットを示す図である。
【図5】対向電極(陽極)とプローブ先端距離を10μmに固定した場合の電界放射特性を示す図である。
【図6】プローブ先端の高分解TEM像を示す図である。
【図7】本発明のMWCNTカートリッジの模式図である。
【図8】本発明に係るカートリッジからプローブ先端にCNTを接合し、引き抜く操作の模式図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
尖鋭化したプローブに対する潜在的需要は大きい。特に最近のLSIの発達はめざましく、DRAMの配線幅は50nmを切ろうしている。このような超微細な構造を持つLSI用のテストプローブとしては、そのプローブ先端曲率が被測定対象の構造物よりも充分に小さいことが必要とされる。一般的に水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム溶媒を用いた電解研磨によって研磨されたタングステンプローブはおおよそ50~100nm程度の先端曲率を持つ。また、非常に厳密な研磨制御を行うことで20nm程度の曲率半径を得ることも不可能ではないが、現実には極めて困難なプロセスである。
【0026】
一方で、本発明によって開示する超尖鋭化金属プローブの作製では、多層CNTなどを研磨金属(タングステン)プローブに接合させ、強電界を与える。金属(タングステン)プローブと多層CNTの接合には走査電子顕微鏡試料室内の残留炭化水素を用いる。マイクロマニピュレータで多層CNTと金属(タングステン)プローブを接触させ、接触箇所に電子ビームを局所照射すると、その場所にカーボンの分解生成物(コンタミネーション)が堆積し、多層CNTと金属(タングステン)プローブが接合する。この金属(タングステン)プローブの尖鋭化プロセスでCNTを使うことには意味がある。この尖鋭化プロセスでは、多層CNT先端からの電界放射を誘起し、このときの電流によるジュール加熱によって、金属(タングステン)プローブの先端を溶融する。しかし、多層CNT自体はまだ溶けることはなく、金属(タングステン)プローブの先端のみが溶融する。同時にCNT先端に溜まった電荷によって多層CNTは対向電極に引かれ、金属(タングステン)プローブの先端部分が引き延ばされる。
【0027】
汎用走査電子顕微鏡の視野の下で、対向電極と多層CNT先端の距離を10μm程度に設定し、この状態で電界をかけていくと約100Vの印加電圧で多層CNT先端からの電界放射が見られるようになる。この状態からさらに電位を上げると、多層CNT本体および金属(タングステン)プローブの先端が加熱され、やがて自由電子放出により、SEMの2次電子像は見えなくなる。このときSTEM装置があれば、さらに加熱・溶融による金属(タングステン)プローブの先端の変形過程をモニターすることが可能である。ほどよく先端が伸びたところで、一気に印加電圧を上げると、多層CNTは金属(タングステン)プローブの先端をくわえたまま、対向電極に向かって引きちぎられる。このとき、金属(タングステン)プローブの先端には超尖鋭化した金属(タングステン)プローブの先端が形成される。つまり、多層CNTが金属(タングステン)プローブやその他の高融点貴金属の溶解温度においても溶けないことと、同時に炭化水素によるコンタミネーション高融点貴金属の溶解温度でもなお多層CNTと金属プローブの先端を接合し続けるようにしたので、このような尖鋭化プロセスが可能となる。 以上、多層CNTを接合した金属プローブの先端に、外部電位を与えて電界放射させ、超尖鋭化された金属プローブを得るための方法として、本発明は次の実施形態に基づくものである。すなわち、
(1)電解研磨で先鋭化された金属プローブの先端に多層CNTを接合させ、接合部分をジュール加熱によって局所溶融し、多層CNTと金属プローブを相互に引き離すことで極めて鋭利な先端を持つ金属プローブを形成することを特徴とする。
【0028】
(2)金属プローブの形成方法において、多層CNTの先端の極めて近い距離に対向電極を設置し、この対向電極と多層CNTの間に電位を与えることで、多層CNT先端からの電界放射を誘導し、この電界放射に伴うジュール加熱によって金属プローブ先端を加熱することを特徴とする。
【0029】
(3)金属プローブの形成方法において、多層CNTによる金属プローブ先端の引き延ばし、および引き離しには、対向電極と多層CNT間に働くクーロン引力を用いることを特徴とする。
【0030】
(4)金属プローブの形成方法において、多層CNTと金属プローブとの接合には、炭化水素系ガスを原料とした電子ビーム分解堆積法を用い、アモルファス炭素の堆積物によって接合することを特徴とする。
【0031】
(5)本発明は、タングステン(W)、イリジウム(Ir)などの金属元素を用いた超尖鋭化プローブの形成方法において、荒削りの金属プローブ先端に多層CNTを電子ビーム励起反応によるアモルファスカーボンで接合し、対向電極(陽極)との間の電界放射に伴うジュール加熱で金属との接合部を溶融し、同時に対向電極と多層CNTの間のクーロン引力で融解部分を引き延ばすことで、10nm以下の先端曲率半径をもつ超鋭利な先端部を有する金属プローブの形成技術を提供する。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。また、この説明では、プローブとしてタングステンを用いた場合を例に挙げる。
【0033】
図1は本発明の実施例を示す超尖鋭化金属プローブの形成方法を示す模式図であり、図1(a)はその前半の製造工程の説明図、図1(b)はその後半の製造工程の説明図である。
【0034】
これらの図において、1はカーボンナノチューブ〔多層CNT〕、2は電解研磨金属〔高融点金属、例えばタングステン(W),イリジウム(Ir)〕からなる尖鋭化された金属プローブ本体、3はカーボンコンタミネーションによる接合部、4は対向電極、5は高圧電源、6は汎用走査電子顕微鏡の試料室、7は汎用走査電子顕微鏡の試料室6内の原料ガス、8はCNT接合位置で引きちぎられた金属プローブ本体(タングステン)の固まり、9は本発明によって形成される超尖鋭化された炭素含有の先端部を有する金属プローブである。つまり、プローブ先端の曲率半径が10nm以下、最小値2nmの超尖鋭化された先端部を有する金属プローブ9を形成することができる。なお、金属プローブ本体の先端部が炭素含有の金属としては、上記したタングステン(W),イリジウム(Ir)以外にもハフニウム(Hf)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、ルテニウム(Ru)を用いることができる。
【0035】
本発明の超尖鋭化金属プローブの製造プロセスは、以下の通りである。
【0036】
まず、金属プローブの製造装置を汎用走査電子顕微鏡の試料室6内に設置し、この試料室6内に残留する炭化水素ガスをコンタミネーションの原料ガス7とする。もちろん、専用のガスノズルを設置し、例えばフェナントレンやピレンといった炭化水素ガスを原料ガスとしても良い。この実施例におけるCNTの取り扱いでは、CNTを安全カミソリの刃先に分散させたカートリッジを用いた。一般に市販されている多層CNTをメノウ乳鉢でよく粉砕し、エタノール中に超音波を併用しながら分散させる。CNTを分散させた溶液をカミソリの刃を50μm程度に対向させたギャップ中に滴下し、20Vで1MHz程度の高周波を印加すると、CNTが刃先に分散する。このCNTが刃先に分散したカートリッジを用い、SEM中でナノマニピュレータの先端に写し取る。このときもマニピュレータ先端にCNT1を接触させ、局所的に電子ビームを照射すると、照射位置にカーボンコンタミネーションが形成される。そのままマニピュレータを動かすと、マニピュレータ先端に接合されたCNT1本をカートリッジから引き抜くことが可能である。このようにして得られたCNT1を、マニピュレータを操作して尖鋭化しようとする金属プローブ本体2の先端に接触させ、同様に電子ビーム照射でCNT1を接合する。このとき、マニピュレータ先端での固定は弱くしておき、尖鋭化すべき金属プローブ本体2の先端での固定が充分に強固であることが必要である。金属プローブ本体2の先端での固定が完了した後にマニピュレータを移動させることで、CNTが先端に固定された金属プローブが形成できる。以上の操作は十分に安定した汎用走査電子顕微鏡の試料室6内で顕微鏡像を観測しながら行うことが理想である。次に、CNT先端に対して約10μm程度の間隔をあけて、対向電極4を設置し、図1(a)に示すように、金属プローブ本体2に負電位を印加していく。約100V程度からCNT1先端からの電界放射が見られ、次第に金属プローブ本体2の先端の温度が上昇していく。この温度上昇に伴い、金属プローブ本体2の表面およびCNT1表面からの2次電子放出が多くなり、600℃を越えるあたりからSEMの2次電子画像は真っ白になってしまう。逆にこの状況から試料の温度を推定することが可能である。
【0037】
これ以上は2次電子画像では状況を把握できないが、STEM(透過電子検出器)を備えた装置であれば、この後の温度上昇による金属プローブ本体2の先端の伸びを把握することが可能である。
【0038】
観測している典型的な電界放射電流値は、せいぜいμA程度であるが、CNT1と金属プローブ本体2の先端は充分に温度が上昇し、金属プローブ(タングステン)ではあっても金属プローブ本体2の先端の伸びが観測される。この段階で一気に印加電圧を上げると、図1(b)に示すように、その瞬間の発熱のクーロン引力によって金属(タングステン)プローブ本体2の先端が引きちぎられ、CNT1は対向電極4に衝突し、金属プローブ本体2からの電界放射が止まる。
【0039】
この超尖鋭化された先端部を有する金属(タングステン)プローブ9を得る確率は非常に高く、先端曲率が5nm程度のものが容易に得られる。また、最終の金属プローブ先端の引き離しの直前に金属プローブ本体2と対向電極4の位置関係を変更することで、先端にくびれをもたせたような金属プローブ9を形成することも可能である。
【0040】
上記したように、本発明の金属プローブの製造方法としては、金属プローブ本体の先端部を局所的に溶かす工程と、カーボンを混入する工程と、前記金属プローブ本体の先端部を引き延ばす工程とを含む。
(具体例)
本発明のタングステンプローブの形成方法の具体例について説明する。
【0041】
(1)電解研磨したタングステンプローブ先端に電子ビーム照射によるカーボンコンタミネーションでカートリッジ端のCNTを接合する。このときの電子ビーム電流は200pA,15keVである。
【0042】
(2)ピエゾアクチュエータを操作してタングステンプローブを引き抜く。典型的なCNTサイズは直径が20~50nm程度、タングステンプローブ先端からおよそ1.5μm程度CNTが突出している。
【0043】
(3)次に、アクチュエータを操作して、CNTと対向電極の距離をおよそ5μmに設定する。タングステンプローブ側をグラウンドに、対向電極側をアノードにする。アノード電位が110V程度からCNT先端からのエミッションが始まる。
【0044】
(4)だいたい10pAのエミッションで、SEMの2次電子像がホワイトアウトする(ただし、タングステンプローブの直径に依存する)。つまり、CNTおよびタングステンプローブ先端が600℃を超え、自由電子の放出が始まったことを示す。
【0045】
(5)放射電流を徐々に上げ(典型的には1V/sec程度の電位昇圧)、おおよそ、放射電流が10~15μAで、CNTの付いたタングステンプローブ先端がクーロン力で引きちぎられる。このときの瞬間的なエミッション電流の落ち込みを検出してアノード電位を自動的に切断し、プローブ先端の曲率半径が10nm以下、最小値2nmの超尖鋭化された先端部を有する金属プローブが作製される。
【0046】
図2は本発明を実施した時のプローブ先端のSEM像を示す図である。
【0047】
図2(a)はMW(マルチウォール)CNTを接合したタングステンプローブ、図2(b)は本発明の超尖鋭化したタングステンプローブ先端であり、このタングステンプローブの先端曲率は5nm以下となっている。図2(c)は参考例としての先端がラウンドしてしまったプローブであり、図2(d)は電解研磨直後のプローブ先端である。
【0048】
一般的に電解研磨で得られる先端曲率は50nm程度であるが、条件を最適化し、また研磨に熟練すると、図2(d)に示すような先端曲率が20nm程度のものも作製可能である。しかし、図2(b)のように数nmの先端曲率を得ることは電解研磨ではほとんど不可能である。
【0049】
このようなCNT付きのプローブの電界放射特性を図3に示す。
【0050】
ここでは、対向電極(陽極)と、CNT先端の距離は5μmである。対向電極に120V程度印加されたあたりからCNT先端より電界放射が始まる。印加電圧の上昇とともに電界放射電流が増え、約10nA程度の放出で、通常のSEM(走査電子顕微鏡像)が見えなくなる。これはタングステンプローブ先端(CNTの接合部分)での温度が上昇し、自由電子の放出で、SEMの2次電子検出器が飽和するからである。このまま放射を増やしていくと、1μA程度でタングステンプローブ先端が溶け、CNTが対向電極(陽極)に引っ張られてタングステンプローブ先端が破断する。このときに非常に尖鋭な(超尖鋭化)タングステンプローブ先端が形成されることになる。
【0051】
一方で、尖鋭化タングステンプローブ先端からの電界放射特性も図3における(b)に示すように非常に低い閾値から放出が始まる。これは、超尖鋭なタングステンプローブ先端では非常に強い電界集中が起こり、タングステンプローブ先端付近にのみ局所的に強電界が形成されているからである。図3における(c)は先端がラウンドしてしまったタングステンプローブからの電界放射特性を示した物であり、測定条件は同一である。図3における(b)と(c)は同じタングステンであるから、表面仕事関数は同じである。両者の放電開始の閾値の違いは局所的電界集中の違いを反映しており、この集中を表すパラメータはエンハンスメント係数と呼ばれる。
【0052】
図4は、図3における(b)と(c)のプローブの電界放射特性のFN(ファーラー・ノードハイム)プロットを示す図である。この図において、電界放射電流j〔A〕は、電界強度をF〔V/m〕,仕事関数φ〔eV〕とすると、
【0053】
JP0004837747B2_000002t.gifである。しかし、通常電界強度Fは局所的な形状による増強効果γがあり、F=γFMとなる。ただし、FM=V/dで表される陽極とプローブ先端の間の平均の電界強度である。先端がラウンドしたタングステンプローブ(c)と超尖鋭化したタングステンプローブ(b)の傾きの違いが局所的電界強度の違いである。ここで、図4における(b)の超尖鋭化したプローブにおける電界放射の立ち上がりはFNプロットにおいて、傾きが緩い、つまり局所的電界増強係数が大きいことがわかる。ところが、電流の増加とともに、その傾きは図4における(c)と同程度つまり、丸まってしまったタングステンプローブと同じ傾きに変わっている。超尖鋭化したタングステンプローブ先端はわずかの電界放射電流で先端がジュール加熱され、タングステンであっても溶ける。つまり、先端は溶けて丸まってくる。この段階ですでに熱電子の放出も始まっていて、電界放射は継続するが先端形状はすでにラウンドしている。
【0054】
図4の(c)として示したデータは、この超尖鋭化したタングステンプローブ(b)の電界放射を行い、次に再度電界放射特性を測定したデータである。このように、非常に尖鋭化したタングステンプローブ先端はわずかの電界放射電流でも溶けやすい。
【0055】
この溶けやすさは、タングステン先端部分の引き延ばし方、つまりタングステンプローブ先端の角度に強く依存する。比較的鈍角のタングステンプローブでは、熱伝導が良好であり、電界放射による先端の溶融と丸まりは少ないが、先端角度が鋭角な(尖った)タングステンプローブでは熱伝導が悪く容易にラウンドする傾向にある。しかし、一方で、超LSIテスター用のプローブなど電流は流さないが、先端が鋭利であることが望ましい場合もある。この場合は時間をかけてタングステンプローブ先端の引き延ばしを行い、先端角度の極めて小さな鋭利な先端を形成することも可能である。例えば、プローブ先端の曲率半径が10nm以下、最小値2nmの超尖鋭化された先端部を形成することができる。
【0056】
しかし一方で、電子エミッターとしての用途の場合は、逆に先端角度を鈍角にして熱伝導を上げ、放射電流に対するジュール加熱を押さえることで電流耐圧を改善することも可能である。
【0057】
なお、上記した超尖鋭化した金属プローブは、電界放射素子用エミッタとして利用することができる。特に、大電流(約1mA)の放射に耐える電界放射素子用エミッタとして使用できることが確認できた。
【0058】
図5は対向電極(陽極)とプローブ先端距離を10μmに固定した場合の電界放射特性を示す図、図6はプローブ先端の高分解TEM像を示す図である。
【0059】
一般的な電界研磨タングステンプローブは、図5の(a)に示すように、電界放射開始の閾値電圧も高く、放射電流が1μA程度で先端が溶融してしまう。一方で、先端にCNTを接ぎ木したプローブの電界放射開始電圧は、100V程度と低く、また放射電流値も10μA程度まで流れる。これ以上の放射電流を制御しながら流すと、図6に示すようなプローブ先端が溶けた超尖鋭化したプローブを形成することができる。ここで、特筆すべきことは、このように形成された超尖鋭化した金属プローブは、図5の(b)に示すように、1000μAを超す電界放射電流を放出することができるという点である。この耐電流値は通常のSTMに用いられる電界研磨タングステンプローブの1000倍以上の値である。得られた超尖鋭化したプローブ先端の高分解TEM像からはプローブ先端がアモルファスであること、さらにEDX分析によりタングステンとカーボンが主たる構成物質であることが示されたことから、プローブ先端部はカーボンが混入したアモルファス状のタングステンとなっていることが判明した。なお、プローブ先端部がこれらのもので被覆されているようにすることができる。
【0060】
次に、MWCNTカートリッジの作製について説明する。
【0061】
図7は本発明のMWCNTカートリッジの模式図である。
【0062】
超尖鋭化した金属プローブを作製するためには、まず、図7(a)に示すように、MWCNT13がナイフエッジ12に並んでいるカートリッジ11を作製する。
【0063】
通常は〔例えば、Appl.Phys.Lett.,4061-4063(1999)〕ナイフエッジ(カミソリの刃など)12を並べて、隙間14を50μm程度にする。この隙間14にアルコールなどに分散したMWCNT溶液〔CNT分散IPA(イソプロピルアルコール)15を滴下し、ナイフエッジ12間に交流電圧16を印加すると、双極子力でMWCNT13がナイフエッジ12に対して直角に配向する。このようなMWCNTカートリッジを作製し、図示しないが所望のプローブ先端にカーボンコンタミネーションで接合する。
【0064】
一方で、図7(b)に示すように、カートリッジ21を構成するシリコン基板22の劈開面は、例えば、(100)基板を用いた場合は直角となり、電界集中による多層CNT23のエッジ配列の観点からは劣るはずであるが、実際は、シリコン基板22の劈開によるエッジは多層CNT23の直径と比較しても極めて鋭利である。本実施例では、シート抵抗1Ω程度のドーパント入りシリコン基板22を用い、双極子力によるSi基板エッジへの多層CNT23配列を行っている。
【0065】
超音波を用いて多層CNT溶液24中に分散させた多層CNT23をシリコン基板22の劈開面で作った対向エッジ間に1MHz程度の交流電圧25を加えると双極子力でMWCNT23がシリコン基板22に対して直角に配向する。
【0066】
図8は本発明に係るカートリッジからプローブ先端にCNTを接合し、引き抜く操作の模式図である。
【0067】
カートリッジ31を構成するシリコン基板32の劈開面33のエッジ34に多層CNT35を配置し、カーボンコンタミネーション接合36でエッジ34上の多層CNT35と電解研磨されたプローブ37の先端をしっかり接合した後に、プローブ37をそっとカートリッジ31から引き離す。多層CNT35はアルコール中の不純物やファンデアワールス力で物理吸着しているだけなので、容易にカートリッジ31からはずれ、多層CNT35付きプローブが完成する。
【0068】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0069】
本発明によれば、金属プローブ本体の先端部が炭素含有の金属からなり、尖鋭化された金属プローブを形成することができる。
【0070】
特に、先端曲率半径が10nm以下の超尖鋭化金属プローブを容易に形成することが可能となり、従来のSTM・AFM技術における高分解能プローブとして機能するとともに、半導体デバイス検査用プローブとしても次世代聴講集積LSIに対応することが可能となり、ナノ半導体デバイスにおける技術的産業的発展に寄与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の超尖鋭化金属プローブ、その金属プローブの形成方法及びその形成装置は、様々な材料の先端を10nm以下の曲率半径に容易に尖鋭化することを可能にする基礎技術であり、超高集積LSI用テスターや電界放射素子などへの利用が可能である。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
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【図5】
3
【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図6】
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