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明細書 :核磁気共鳴撮像素子、及びそれを用いた撮像システム、撮像方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5131667号 (P5131667)
登録日 平成24年11月16日(2012.11.16)
発行日 平成25年1月30日(2013.1.30)
発明の名称または考案の名称 核磁気共鳴撮像素子、及びそれを用いた撮像システム、撮像方法
国際特許分類 G01R  33/28        (2006.01)
G01R  33/34        (2006.01)
FI G01N 24/02 Y
G01N 24/04 520A
請求項の数または発明の数 16
全頁数 24
出願番号 特願2008-547046 (P2008-547046)
出願日 平成19年11月30日(2007.11.30)
国際出願番号 PCT/JP2007/073138
国際公開番号 WO2008/066146
国際公開日 平成20年6月5日(2008.6.5)
優先権出願番号 2006324443
優先日 平成18年11月30日(2006.11.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年4月28日(2010.4.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】遊佐 剛
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124291、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 悟
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 特開2000-051174(JP,A)
特開2006-334238(JP,A)
特開2008-298612(JP,A)
Edzer Wu et al.,Preliminary study of planar RF coils for Magnetic Resonance Microscopy,Proceedings of the 2005 IEEE Engineering in Medicine and Biology 27th Annual Conference,2005年,Vol.2,pp.1363-1366
調査した分野 G01N 24/00-24/14
G01R 33/20-33/64
A61B 5/055
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の面である測定面上に集積化されて設けられ、前記基板に対して所定領域に設定された核磁気共鳴の測定領域に磁場を印加して、前記測定領域内で局所的な測定位置を設定するための磁場印加用電極群と、
前記基板に対して所定位置に設けられ、前記基板での前記測定領域に対してRFパルスを照射するためのRF照射手段とを備え、
前記磁場印加用電極群は、
前記測定領域に対して、設定すべき前記測定位置に応じた均一磁場を印加する均一磁場用電極と、
前記測定領域に対して、前記基板の前記測定面に平行な第1軸方向について傾斜磁場を印加する第1傾斜磁場用電極と、
前記測定領域に対して、前記測定面に平行で前記第1軸と直交する第2軸方向について傾斜磁場を印加する第2傾斜磁場用電極と
を有することを特徴とする核磁気共鳴撮像素子。
【請求項2】
前記磁場印加用電極群において、
前記均一磁場用電極は、前記測定領域を囲むように形成されたループ電極を含み、
前記第1傾斜磁場用電極は、前記第1軸方向について前記測定領域を挟むように形成された一対の第1スプリット電極を含み、
前記第2傾斜磁場用電極は、前記第2軸方向について前記測定領域を挟むように形成された一対の第2スプリット電極を含む
ことを特徴とする請求項1記載の撮像素子。
【請求項3】
前記磁場印加用電極群において、
前記第1傾斜磁場用電極は、前記第1軸方向について前記測定領域を挟むように形成された一対の第1スプリット電極を含み、
前記第2傾斜磁場用電極は、前記第2軸方向について前記測定領域を挟むように形成された一対の第2スプリット電極を含むとともに、
前記均一磁場用電極は、前記一対の第1スプリット電極及び前記一対の第2スプリット電極を合わせたループ状の電極パターンによって構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の撮像素子。
【請求項4】
前記磁場印加用電極群は、電極群を構成する各電極のパターン幅が10nm~10μmの範囲内の幅であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の撮像素子。
【請求項5】
前記磁場印加用電極群は、電極群を構成する電極パターンの内側の幅が100nm~100μmの範囲内の幅であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の撮像素子。
【請求項6】
前記RF照射手段は、前記基板の前記測定面上に、前記磁場印加用電極群に対して絶縁層によって絶縁されて形成されたRFアンテナを含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の撮像素子。
【請求項7】
前記RF照射手段は、前記基板の前記測定面とは反対側の面上に形成されたRFアンテナを含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の撮像素子。
【請求項8】
前記基板において、前記測定領域内での測定対象物は、前記測定面上、または前記測定面から所定深さの前記基板内に配置されることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項記載の撮像素子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項記載の核磁気共鳴撮像素子と、
前記均一磁場用電極に均一磁場発生用の電流を供給する均一磁場用電流源と、
前記第1傾斜磁場用電極に傾斜磁場発生用の電流を供給する第1傾斜磁場用電流源と、
前記第2傾斜磁場用電極に傾斜磁場発生用の電流を供給する第2傾斜磁場用電流源と、
前記RF照射手段に対して前記RFパルスを供給するRFパルス供給手段と、
前記核磁気共鳴撮像素子の前記測定領域内での測定対象物からの核磁気共鳴信号を検出する検出手段と、
前記測定対象物に対する核磁気共鳴による撮像を制御する撮像制御手段と
を備えることを特徴とする核磁気共鳴撮像システム。
【請求項10】
前記撮像制御手段は、
前記第1傾斜磁場用電極または前記第2傾斜磁場用電極への電流の供給、及びそれによって前記測定領域に印加される傾斜磁場を制御することで、前記測定位置を設定する軸方向を選択するとともに、
前記均一磁場用電極への電流の供給、及びそれによって前記測定領域に印加される均一磁場を制御することで、前記測定領域内において、前記測定位置を走査することを特徴とする請求項9記載の撮像システム。
【請求項11】
前記撮像制御手段は、
前記第1傾斜磁場用電極への電流供給をON、前記第2傾斜磁場用電極への電流供給をOFFとして、前記第1軸方向について傾斜磁場が印加されて前記測定位置が選択された状態で、前記測定領域に前記RFパルスを照射する第1期間と、
前記第2傾斜磁場用電極への電流供給をON、前記第1傾斜磁場用電極への電流供給をOFFとして、前記第2軸方向について傾斜磁場が印加されて前記測定位置が選択された状態で、前記測定領域に前記RFパルスを照射する第2期間と
を含む測定期間を用いて、前記測定対象物に対して前記核磁気共鳴による撮像を行うことを特徴とする請求項9または10記載の撮像システム。
【請求項12】
前記撮像制御手段は、前記測定期間での測定モードについて、
前記第1期間において前記RFパルスとして所定位相の90°パルスを照射するとともに、前記第2期間において前記RFパルスとして前記第1期間と同じ位相の90°パルスを照射する第1測定モードと、
前記第1期間において前記RFパルスとして所定位相の90°パルスを照射するとともに、前記第2期間において前記RFパルスとして前記第1期間と異なる位相の90°パルスを照射する第2測定モードと
の2種類の測定モードを用いることを特徴とする請求項11記載の撮像システム。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項記載の核磁気共鳴撮像素子を用い、
前記均一磁場用電極、前記第1傾斜磁場用電極、及び前記第2傾斜磁場用電極のそれぞれに対して必要に応じて磁場発生用の電流を供給する電流供給ステップと、
前記RF照射手段に対して前記RFパルスを供給するRFパルス供給ステップと、
前記核磁気共鳴撮像素子の前記測定領域内での測定対象物からの核磁気共鳴信号を検出する検出ステップと、
前記測定対象物に対する核磁気共鳴による撮像を制御する撮像制御ステップと
を備えることを特徴とする核磁気共鳴撮像方法。
【請求項14】
前記撮像制御ステップにおいて、
前記第1傾斜磁場用電極または前記第2傾斜磁場用電極への電流の供給、及びそれによって前記測定領域に印加される傾斜磁場を制御することで、前記測定位置を設定する軸方向を選択するとともに、
前記均一磁場用電極への電流の供給、及びそれによって前記測定領域に印加される均一磁場を制御することで、前記測定領域内において、前記測定位置を走査することを特徴とする請求項13記載の撮像方法。
【請求項15】
前記撮像制御ステップにおいて、
前記第1傾斜磁場用電極への電流供給をON、前記第2傾斜磁場用電極への電流供給をOFFとして、前記第1軸方向について傾斜磁場が印加されて前記測定位置が選択された状態で、前記測定領域に前記RFパルスを照射する第1期間と、
前記第2傾斜磁場用電極への電流供給をON、前記第1傾斜磁場用電極への電流供給をOFFとして、前記第2軸方向について傾斜磁場が印加されて前記測定位置が選択された状態で、前記測定領域に前記RFパルスを照射する第2期間と
を含む測定期間を用いて、前記測定対象物に対して前記核磁気共鳴による撮像を行うことを特徴とする請求項13または14記載の撮像方法。
【請求項16】
前記撮像制御ステップにおいて、前記測定期間での測定モードについて、
前記第1期間において前記RFパルスとして所定位相の90°パルスを照射するとともに、前記第2期間において前記RFパルスとして前記第1期間と同じ位相の90°パルスを照射する第1測定モードと、
前記第1期間において前記RFパルスとして所定位相の90°パルスを照射するとともに、前記第2期間において前記RFパルスとして前記第1期間と異なる位相の90°パルスを照射する第2測定モードと
の2種類の測定モードを用いることを特徴とする請求項15記載の撮像方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴現象を用いて測定対象物の画像を取得する核磁気共鳴撮像素子、及びそれを用いた撮像システム、撮像方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴撮像(MRI:Magnetic Resonance Imaging)法は、磁場中に置かれた測定対象物に高周波(RF波)を照射し、測定対象物中の原子核に生じる核磁気共鳴現象を用いて、その内部の画像情報を非破壊で取得する方法である。このMRI法では、測定対象物に傾斜磁場を印加することによって対象物中での測定位置を特定して、その画像情報を取得する方法が用いられている。
【0003】
核磁気共鳴撮像装置(MRI装置)は、一般には、核磁気共鳴測定用のRFパルスを測定対象物に照射するためのRF照射コイル、測定対象物に静磁場、傾斜磁場を印加するための磁石またはコイル、及び測定対象物からの核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)信号を検出するための検出コイルなどによって構成される(例えば、特許文献1参照)。このようなMRI法は、例えば、医療分野における被検体の画像取得などに広く利用されている。

【特許文献1】特開2006-158767号公報
【特許文献2】特開2003-329756号公報
【特許文献3】特開2006-66603号公報
【特許文献4】特開2006-135054号公報
【特許文献5】特開2006-204551号公報
【非特許文献1】D. Gammon et al., "Nuclear Spectroscopy in Single Quantum Dots: NanoscopicRaman Scattering and Nuclear Magnetic Resonance", Science Vol.277, pp.85-88 (1997)
【非特許文献2】G. Yusa et al., "Controlled Multiple Quantum Coherences of Nuclear Spins in a Nanometre-Scale Device", Nature Vol.434, pp.1001-1005 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の核磁気共鳴撮像装置では、その核磁気共鳴測定の位置分解能は、通常、数mm程度である。一方、例えばナノメートル(nm)スケールなどの微細構造についても、微細構造を測定対象物としたMRI法による画像取得の可能性が考えられる。しかしながら、従来の核磁気共鳴撮像装置の構成では、そのような微細構造を測定可能な、高い位置分解能を実現することは困難である。
【0005】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、核磁気共鳴撮像法による測定対象物の画像取得を高い分解能で行うことが可能な核磁気共鳴撮像素子、及びそれを用いた撮像システム、撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明による核磁気共鳴撮像(MRI)素子は、基板と、基板の一方の面である測定面上に集積化されて設けられ、基板に対して所定領域に設定された核磁気共鳴の測定領域に磁場を印加して、測定領域内で局所的な測定位置を設定するための磁場印加用電極群と、基板に対して所定位置に設けられ、基板での測定領域に対してRFパルスを照射するためのRF照射手段とを備え、磁場印加用電極群は、測定領域に対して、設定すべき測定位置に応じた均一磁場を印加する均一磁場用電極と、測定領域に対して、基板の測定面に平行な第1軸方向について傾斜磁場を印加する第1傾斜磁場用電極と、測定領域に対して、測定面に平行で第1軸と直交する第2軸方向について傾斜磁場を印加する第2傾斜磁場用電極とを有することを特徴とする。
【0007】
上記した核磁気共鳴撮像素子では、基板に対して所定領域において、測定対象物を含む測定領域を設定するとともに、その基板上に磁場印加用電極群を集積することによって、撮像素子を構成している。このように、核磁気共鳴測定に必要な磁場印加用の電極等が集積化された構成の素子を用いることにより、測定対象物についての画像情報を高い分解能で取得することができる。
【0008】
さらに、測定領域への磁場の印加に用いられる電極群について、均一磁場用電極、第1傾斜磁場用電極、及び第2傾斜磁場用電極の3種類の電極を設けている。これらの電極を用いることにより、測定領域内での局所的な測定位置の設定、及びそれによる測定対象物の画像情報の取得を好適に実現することが可能となる。
【0009】
本発明による核磁気共鳴撮像システムは、上記した核磁気共鳴撮像素子と、均一磁場用電極に均一磁場発生用の電流を供給する均一磁場用電流源と、第1傾斜磁場用電極に傾斜磁場発生用の電流を供給する第1傾斜磁場用電流源と、第2傾斜磁場用電極に傾斜磁場発生用の電流を供給する第2傾斜磁場用電流源と、RF照射手段に対してRFパルスを供給するRFパルス供給手段と、核磁気共鳴撮像素子の測定領域内での測定対象物からの核磁気共鳴信号を検出する検出手段と、測定対象物に対する核磁気共鳴による撮像を制御する撮像制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による核磁気共鳴撮像方法は、上記した核磁気共鳴撮像素子を用い、均一磁場用電極、第1傾斜磁場用電極、及び第2傾斜磁場用電極のそれぞれに対して必要に応じて磁場発生用の電流を供給する電流供給ステップと、RF照射手段に対してRFパルスを供給するRFパルス供給ステップと、核磁気共鳴撮像素子の測定領域内での測定対象物からの核磁気共鳴信号を検出する検出ステップと、測定対象物に対する核磁気共鳴による撮像を制御する撮像制御ステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
上記した核磁気共鳴撮像システム、及び核磁気共鳴撮像方法では、上記したように磁場印加用の電極等が基板に集積化された構成の撮像素子を用い、電極群を構成する3種類の電極に対して、それぞれ対応する電流源から磁場発生用の電流を供給して測定を行っている。これにより、測定領域内での局所的な測定位置を確実に制御しつつ、測定対象物の画像情報の取得を高い分解能で好適に実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の核磁気共鳴撮像素子、及び撮像システム、撮像方法によれば、測定対象物を含む測定領域が設定された基板上に磁場印加用電極群を集積するとともに、その電極群を、均一磁場用電極、第1傾斜磁場用電極、及び第2傾斜磁場用電極の3種類の電極から構成することにより、測定領域内での局所的な測定位置を好適に設定して、測定対象物についての画像情報を高い分解能で取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、核磁気共鳴撮像素子の一実施形態の平面構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した撮像素子の断面構造を示す断面図である。
【図3】図3は、核磁気共鳴撮像システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、撮像素子における電極パターンの作製例を示す電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、撮像素子の変形例(a)、(b)の断面構造を示す断面図である。
【図6】図6は、測定領域に照射されるRFパルス、及び磁場印加用電極群に供給される電流パルスについて示すタイミングチャートである。
【図7】図7は、第1測定モードでの核磁気共鳴の測定方法について示す模式図である。
【図8】図8は、第2測定モードでの核磁気共鳴の測定方法について示す模式図である。
【図9】図9は、核磁気共鳴撮像素子の他の実施形態の平面構成を概略的に示す図である。
【図10】図10は、核磁気共鳴撮像システムの他の実施形態の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0014】
1A…核磁気共鳴撮像素子、10…基板、11…測定面、12…測定領域、13…測定対象物、15…RFアンテナ、16…絶縁層、20…磁場印加用電極群、25…均一磁場用電極、26、27…配線、30、35…第1傾斜磁場用電極、31、32、36、37…配線、40、45…第2傾斜磁場用電極、41、42、46、47…配線、50…均一磁場用電流源、51…第1傾斜磁場用電流源、52…第2傾斜磁場用電流源、54…検出器、56…制御装置、60…RF波発生器、61…分配器、62…位相調整器、63…第1スイッチ、64…第2スイッチ、65…合成器。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面とともに本発明による核磁気共鳴撮像素子、及び撮像システム、撮像方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0016】
まず、本発明による核磁気共鳴撮像素子の構成について説明する。図1は、核磁気共鳴撮像素子の一実施形態の平面構成を概略的に示す図である。また、図2は、図1に示した撮像素子の断面構造を示す断面図である。
【0017】
ここで、図1においては、核磁気共鳴撮像素子1Aの構成のうちで、後述する磁場印加用電極群20の構成、及びRFアンテナ15の設置位置(設置範囲)等を具体的に示すとともに、その他の素子構造については模式的に図示している。また、以下の説明においては、図1の平面構成において、基板の測定面に平行で互いに直交する2つの軸をそれぞれx軸(第1軸)、及びy軸(第2軸)とし、測定面に垂直な軸をz軸とする。また、図2は、撮像素子1Aにおける電極群20の中心位置を通りx軸及びz軸に平行な面での断面構造を示している。
【0018】
本実施形態による核磁気共鳴撮像素子1Aは、基板10と、磁場印加用電極群20と、RFアンテナ15とを備えて構成されている。本撮像素子1Aでは、基板10に対して所定領域に核磁気共鳴の測定領域12が設定される。図2に示す構成では、測定領域12の設定の具体的な一例として、基板10の一方の面である測定面(図2中の上面)11から所定深さの基板10内の領域が測定領域12として設定されており、その測定領域12内に測定対象物13が配置されている。
【0019】
撮像素子1Aは、図2に示すように、基板10に対して磁場印加用電極群20とRFアンテナ15とが集積化された素子構造となっている。磁場印加用電極群20は、基板10の測定面11上に集積化されて設けられた複数の電極から構成され、測定領域12に対して核磁気共鳴測定に必要な磁場を印加して、測定領域12内で局所的な測定位置を設定するために用いられる。また、この電極群20は、測定面11上において測定領域12を囲むように、領域12からみてx軸方向、及びy軸方向に略対称となる電極パターンで形成されている。
【0020】
具体的には、磁場印加用電極群20は、均一磁場用電極25と、第1傾斜磁場用電極30、35と、第2傾斜磁場用電極40、45との3種類の電極によって構成されている。均一磁場用電極25は、測定領域12に対して、設定すべき測定位置に応じた均一磁場を印加するための電極であり、測定領域12を囲むように形成された矩形のループ電極によって構成されている。このループ電極25は、図1中の左下を起点とした一巻きコイルを構成しており、その両端部にそれぞれ電流供給用の配線26、27が設けられている。
【0021】
本撮像素子1Aでは、この電極25によって測定領域12に印加される均一磁場の大きさを制御することにより、領域12内での測定位置を所望の位置に設定することが可能な構成となっている。例えば、電極25による均一磁場の大きさを変えていくことにより、領域12内においてx軸方向またはy軸方向に測定位置を走査することができる。なお、測定領域12に対する均一磁場の印加については、この基板10上に集積化されて測定位置の制御に用いられる均一磁場用電極25に加えて、磁石、コイル等による通常の静磁場印加装置22(図3参照)が合わせて用いられる。
【0022】
第1傾斜磁場用電極30、35は、測定領域12に対して、基板10の測定面11に平行な第1軸であるx軸方向について傾斜磁場を印加するための電極であり、x軸方向について測定領域12を挟むように形成された一対の第1スプリット電極によって構成されている。スプリット電極30は、図1中で領域12からみて左側(x軸の負の側)で、電極25の左辺の外側にy軸に沿って延びる直線状の電極パターンで形成されており、その両端部にそれぞれ電流供給用の配線31、32が設けられている。また、スプリット電極35は、領域12からみて右側(x軸の正の側)で、電極25の右辺の外側に同じくy軸に沿って延びる直線状の電極パターンで形成されており、その両端部にそれぞれ電流供給用の配線36、37が設けられている。
【0023】
第2傾斜磁場用電極40、45は、測定領域12に対して、基板10の測定面11に平行な第2軸であるy軸方向について傾斜磁場を印加するための電極であり、y軸方向について測定領域12を挟むように形成された一対の第2スプリット電極によって構成されている。スプリット電極40は、図1中で領域12からみて下側(y軸の負の側)で、電極25の下辺の外側にx軸に沿って延びる直線状の電極パターンで形成されており、その両端部にそれぞれ電流供給用の配線41、42が設けられている。また、スプリット電極45は、領域12からみて上側(y軸の正の側)で、電極25の上辺の外側に同じくx軸に沿って延びる直線状の電極パターンで形成されており、その両端部にそれぞれ電流供給用の配線46、47が設けられている。
【0024】
これらの各電極からなる電極群20に対し、基板10に対して所定位置にRFアンテナ15が設けられている。RFアンテナ15は、基板10での測定領域12に対して、測定対象物13中の原子核に生じる核磁気共鳴を測定するためのRFパルスを照射するRF照射手段である。本実施形態においては、図2に示すように、基板10の測定面11上には電極群20を覆う絶縁層16が設けられており、この絶縁層16上にRFアンテナ15が形成されている。これにより、RFアンテナ15は、基板10の測定面11上に、電極群20に対して絶縁層16によって絶縁された状態で集積化されている。
【0025】
次に、上記の撮像素子1Aを用いた本発明による核磁気共鳴撮像システムについて説明する。図3は、核磁気共鳴撮像システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態による撮像システムは、核磁気共鳴撮像素子1Aと、均一磁場用電流源50と、傾斜磁場用電流源51、52と、RF波発生器60と、検出器54と、制御装置56とを備えて構成されている。これらのうち、撮像素子1Aの構成については、図1及び図2に関して上述した通りである。
【0026】
均一磁場用電流源50は、撮像素子1Aの電極25に均一磁場発生用の電流Istを供給するための電流源であり、図1に示すように、配線26、27の間に接続されている。第1傾斜磁場用電流源51は、電極30、35にx軸方向の傾斜磁場発生用の電流Ixを供給するための電流源であり、配線31、32の間、及び配線36、37の間に接続されている。第2傾斜磁場用電流源52は、電極40、45にy軸方向の傾斜磁場発生用の電流Iyを供給するための電流源であり、配線41、42の間、及び配線46、47の間に接続されている。これらの電流源50、51、52としては、例えば、立ち上がり時間がナノ秒程度の高速スイッチを有する直流電流源が好適に用いられる。
【0027】
RF波発生器60は、分配器61、位相調整器62、第1スイッチ63、第2スイッチ64、及び合成器65とともに、撮像素子1AのRFアンテナ15に対してRFパルスを供給するRFパルス供給手段を構成している。このRFパルス供給手段からRFアンテナ15へのRFパルスは、具体的な測定内容に応じて単一のRFパルス、または複数のRFパルスからなるRFパルス列として供給される。
【0028】
具体的には、RF波発生器60から出力されたRF波は、分配器61によって等分配される。そして、分配された一方のRF波は、スイッチ63を介して合成器65へと入力される。また、他方のRF波は、位相調整器62で位相が調整された後にスイッチ64を介して合成器65へと入力される。そして、合成器65で合成されたRF波が、核磁気共鳴測定用のRFパルスとして撮像素子1AのRFアンテナ15へと供給される。
【0029】
このような構成において、発生器60からのRF波出力のON/OFF、及び位相調整器62、スイッチ63、64の動作を制御することにより、撮像素子1AのRFアンテナ15へと供給されるRFパルスを制御することができる。なお、RFパルス供給手段の具体的な構成については、図3はその一例を示すものであり、これ以外にも様々な構成を用いて良い。
【0030】
検出器54は、撮像素子1Aにおける測定領域12内での測定対象物13からの核磁気共鳴信号を検出する検出手段である。この検出器54は、静磁場印加装置22による静磁場、及び磁場印加用電極群20による磁場を含む所定の磁場が測定領域12に印加された状態で、RFアンテナ15から測定領域12へとRFパルスを照射することによって生じた核磁気共鳴信号を、光学的または電気的な方法等で検出して外部へと取り出す。このような核磁気共鳴信号の取得を、測定領域12への磁場の印加条件、及びRFパルスの照射条件を変えながら実行することにより、測定領域12内にある測定対象物13の2次元の画像情報を取得することができる。
【0031】
これらの電流源50、51、52、RF波発生器60を含むRFパルス供給手段、及び検出器54に対して、制御装置56が設置されている。制御装置56は、撮像素子1Aにおいて測定領域12内に配置されている測定対象物13に対する核磁気共鳴による撮像を制御する撮像制御手段である。なお、制御装置56による撮像の制御方法については、具体的には後述する。
【0032】
本実施形態による核磁気共鳴撮像素子、及び撮像システムの効果について説明する。
【0033】
図1及び図2に示した撮像素子1Aでは、素子1Aを構成する基板10に対して所定領域において、測定対象物13を含む測定領域12を設定するとともに、その基板10上に磁場印加用電極群20等を集積することによって、撮像素子1Aを構成している。このように、核磁気共鳴測定に必要な磁場印加用の電極等が集積化された構成の素子を用いることにより、測定対象物13についての画像情報を高い分解能で取得することができる。
【0034】
さらに、測定領域12への磁場の印加に用いられる電極群20について、均一磁場用電極25、第1傾斜磁場用電極30、35、及び第2傾斜磁場用電極40、45の3種類の電極を設けている。これらの電極を組み合わせて用いることにより、測定領域12内での局所的な測定位置の設定、制御、測定位置の変更、走査、及びそれによる測定対象物13の画像情報の取得を好適に実現することが可能となる。
【0035】
また、図3に示した撮像システムでは、上記したように磁場印加用の電極等が基板10上に集積化された構成の撮像素子1Aを用い、電極群20を構成する3種類の電極に対して、それぞれ対応する電流源から磁場発生用の電流を供給して測定を行っている。これにより、測定領域12内での局所的な測定位置を確実に制御しつつ、測定対象物13の画像情報の取得を高い分解能で好適に実現することが可能となる。
【0036】
また、図1に示した構成例では、測定領域12に磁場を印加するための電極群20での各電極の具体的な構成として、ループ電極25、一対の第1スプリット電極30、35、及び一対の第2スプリット電極40、45によって電極群20を構成している。このような電極パターンとすることにより、測定位置設定用の均一磁場、x軸方向の傾斜磁場、及びy軸方向の傾斜磁場の測定領域12への印加を、基板10上に好適に集積することが可能な簡単な電極構成で実現することができる。
【0037】
図4は、図1に示した構成の電極群20を有する撮像素子1Aにおける電極パターンの作製例を示す電子顕微鏡写真である。ここでは、素子1Aの基体となる基板10として厚さ0.5mmのGaAs半導体基板を用い、金によって電極群20の各電極パターンを形成している。本作製例では、基板上に厚さ20nmのチタンを介して金の電極パターンを形成している。なお、チタン層は基板と金との密着性を高めるためのものであり、不要であれば設けなくても良い。また、電極パターンについては、均一磁場用電極25のループ形状の内側の幅(電極間隔)を50μmとし、各電極のパターン幅を1μmとしている。図4より、図1に示した構成の電極群20の電極パターンが良好に得られていることがわかる。また、電極群20の具体的な電極構成については、これ以外にも様々な構成を用いて良い。
【0038】
一般には、撮像素子1Aを構成する基板10としては、上記したGaAs基板のように表面が充分に平坦な材質の基板を好適に用いることができる。また、電極群20の各電極については、蒸着可能な金属を用いることが好ましく、例えば金、アルミ、チタンなどの材質による電極パターンを用いることができる。あるいは、測定が超伝導転移温度以下の低温で行われる場合には、超伝導材料からなる電極パターンを用いても良い。
【0039】
磁場印加用電極群20を構成する電極パターンについては、電極群20を構成する各電極のパターン幅を、10nm~10μmの範囲内の幅とすることが好ましい。上記したパターン幅1μmは、この条件を満たしている。また、電極群20を構成する各電極の厚さについては、200nm~1μmの範囲内の厚さとすることが好ましい。このような条件を満たす電極パターンを用いることにより、測定領域12内で局所的な測定位置を設定するための磁場印加用電極群20を好適に構成することができる。
【0040】
また、磁場印加用電極群20を構成する電極パターンのサイズについては、電極パターンの内側の幅、図1に示す構成においては均一磁場用電極25のループ形状の内側の幅を100nm~100μmの範囲内の幅とすることが好ましい。上記した幅50μmは、この条件を満たしている。同様に、ループ電極25の各辺の長さ、及びスプリット電極30、35、40、45のそれぞれの長さを100nm~100μmの範囲内の長さとすることが好ましい。
【0041】
また、撮像素子1Aの断面構造についても、図2に示した構造以外にも様々な構成を用いることが可能である。図5は、図1及び図2に示した撮像素子の変形例(a)、(b)の断面構造を示す断面図である。
【0042】
図5の変形例(a)は、測定領域12にRFパルスを照射するRFアンテナ17が基板10の測定面11とは反対側の面、すなわち、基板10に対して電極群20とは反対側の面上に形成されている点で図2に示した構成と異なっている。このように、RFアンテナについては、基板の測定面11上、または測定面11とは反対側の面上に集積化される構成など、必要に応じてその設置位置を変更して良い。
【0043】
一般には、RFアンテナなどのRF照射手段は、電極群20が測定面11上に集積化される基板10に対して、測定領域12にRFパルスを照射することが可能な所定位置に設けられていれば良い。また、RFアンテナ15、17のサイズについては、RFアンテナの幅を200nm~300μmの範囲内の幅とすることが好ましい。また、RFアンテナは、印加された静磁場に対して垂直にRF電磁波を照射できるように、上記のように測定対象物の上、または下に配置されていることが好ましい。
【0044】
図5の変形例(b)は、基板10に対する測定領域の設定が図2の構成例、及び図5の変形例(a)と異なっている。すなわち、変形例(b)では、測定領域の設定の他の例として、基板10の測定面11上の領域が測定領域18として設定されており、その測定領域18内に測定対象物19が配置されている。このように、測定領域及び測定対象物については、具体的な測定対象物の種類等に応じて、基板10の測定面11上、または測定面11から所定深さの基板10内の領域など、必要に応じて測定領域を設定して良い。
【0045】
例えば、図2の構成例、及び図5の変形例(a)のように、基板10の測定面11から所定深さの基板10内に測定対象物13が配置される構成では、測定対象物13はあらかじめ基板10内に埋め込まれて配置される。このような測定対象物13の具体的な例としては、例えば量子ドット、量子ビットなどが挙げられる。すなわち、このような構成の撮像素子は、量子コンピュータ等に用いられる量子ビットの読み出しに利用することが可能である。この場合、基板10中での量子ビットの深さは、例えば測定面11から数100nm~数μm程度とすることが好ましい。
【0046】
また、図5の変形例(b)のように、基板10の測定面11上に測定対象物19が配置される構成では、測定対象物19はあらかじめ基板10上に配置されていても良く、あるいは必要に応じて基板10上に配置、交換される構成であっても良い。
【0047】
上記した核磁気共鳴撮像素子による測定対象物の例としては、半導体材料からなりサイズが10nm~100μm程度の対象物が挙げられる。また、RFアンテナなどのRF照射手段によって測定領域に照射されるRFパルスの周波数の例としては、10MHz~2GHzの範囲内の周波数が挙げられる。また、測定領域に印加される静磁場(均一磁場)の値は、例えば0.1T~10T(テスラ)程度である。また、傾斜磁場の値の範囲は、例えば10μT~1T程度である。また、RFの強度は、例えば10μT~100mT程度である。
【0048】
ここで、本発明における核磁気共鳴による「撮像」とは、例えば、医療分野においてMRI装置を用いて行われている画像取得のような例に限られるものではない。例えば、測定領域内において、ナノ領域の核スピンによる量子ビットが複数配列されている場合に、測定位置を制御しながら、個々の量子ビットについて局所検出を行っていくような場合も「撮像」、すなわち測定領域12についての画像取得に含んでいる。一般には、設定された測定領域内において、測定位置を特定、制御しながら、局所的な情報を核磁気共鳴信号によって検出することが可能であれば良い。
【0049】
測定領域12内での測定対象物13からの核磁気共鳴信号を検出する検出器54(図3参照)に用いられる核スピン検出方法については、上記したように、例えば光学的または電気的な方法で核磁気共鳴信号を検出する方法を用いることができる。あるいは、それら以外の方法で核磁気共鳴信号を検出する方法を用いても良い。
【0050】
核磁気共鳴信号を光学的に検出する方法は、例えば図5に示す変形例(a)、(b)のような構造において好適に用いることができる。このような光学的な検出方法の一例について説明する(例えば非特許文献「D. Gammon et al., "Nuclear Spectroscopy in Single Quantum Dots: Nanoscopic Raman Scattering and Nuclear Magnetic Resonance", Science Vol.277, pp.85-88 (1997)」を参照)。この方法では、まず、円偏光した光を測定対象物に照射することにより、対象物中の原子核での核スピンを偏極させる。そして、核スピンの偏極の度合いによって量子ドットの発光エネルギーがシフトすることを利用し、RFパルスを照射して核スピンの状態を変化させた際のエネルギーシフト量を核磁気共鳴信号として検出する。
【0051】
一方、核磁気共鳴信号を電気的に検出する方法は、例えば図2に示す構成例、及び図5に示す変形例(a)のような構造において好適に用いることができる。このような電気的な検出方法の一例について説明する(例えば非特許文献「G. Yusa et al., "Controlled Multiple Quantum Coherences of Nuclear Spins in a Nanometre-Scale Device", Nature Vol.434, pp.1001-1005 (2005)」を参照)。この方法では、まず、スピン偏極した電流をナノ領域に流して、対象物中の原子核での核スピンを偏極させる。そして、核スピンを偏極させると対象物の電気抵抗が変化することを利用し、RFパルスを照射して核スピンの重ね合わせ状態を生成した際の電気抵抗を核磁気共鳴信号として検出する。
【0052】
図1~図3に示した核磁気共鳴撮像素子1A、及び撮像システムの構成について、本発明による核磁気共鳴撮像方法とともにさらに説明する。本発明による撮像素子及び撮像システムでは、上記したように、検出器54による核磁気共鳴信号の取得を、測定領域12への磁場の印加条件、及びRFパルスの照射条件を変えながら実行することにより、測定領域12についての2次元の画像情報が取得される。また、このような測定領域12への磁場の印加条件、及びRFパルスの照射条件は、例えばパーソナルコンピュータなどを用いて構成される撮像制御手段である制御装置56によって制御される(図3参照)。ここで、電極群20の各電極に供給される電流パルス、及び測定領域12に照射されるRFパルスは、制御装置56によってパルス幅、強度、パルスの同期等が制御される。また、検出器54で取得された核磁気共鳴信号は制御装置56へと入力され、制御装置56において、画像化処理、あるいは量子ビットの読み出し処理などの必要な処理が行われる。
【0053】
このような構成では、制御装置56が、第1傾斜磁場用電極30、35、または第2傾斜磁場用電極40、45への電流の供給、及びそれによって測定領域12に印加される傾斜磁場を制御することで、測定位置を設定する軸方向を選択するとともに、均一磁場用電極25への電流の供給、及びそれによって測定領域12に印加される均一磁場を制御することで、領域12内において、測定位置を走査することが好ましい。
【0054】
このように、第1傾斜磁場用電極30、35または第2傾斜磁場用電極40、45によって傾斜磁場を印加して、測定位置を設定する軸方向(x軸方向またはy軸方向)を選択するとともに、均一磁場用電極25によって測定領域12に印加される均一磁場の大きさの設定または変更を制御することにより、領域12内における測定位置の設定、及びその変更、走査を好適に実現することができる。また、このような構成では、各電極に供給される電流値を変化させることで測定位置となる共鳴位置をスキャンすることができる。
【0055】
また、制御装置56が、(1)第1傾斜磁場用電極30、35への電流供給をON、第2傾斜磁場用電極40、45への電流供給をOFFとして、第1軸方向について傾斜磁場が印加されて測定位置が選択された状態で、測定領域12にRFパルスを照射する第1期間と、(2)第2傾斜磁場用電極40、45への電流供給をON、第1傾斜磁場用電極30、35への電流供給をOFFとして、第2軸方向について傾斜磁場が印加されて測定位置が選択された状態で、測定領域12にRFパルスを照射する第2期間とを含む測定期間を用いて、測定対象物13に対して核磁気共鳴による撮像を行うことが好ましい。
【0056】
このような構成では、第1期間で第1軸(x軸)方向について測定位置(x座標)が選択された状態で測定を行い、第2期間で第2軸(y軸)方向について測定位置(y座標)が選択された状態で測定を行うことにより、それらを合わせて、第1軸及び第2軸の両方向について測定位置(x,y)が選択された状態で測定対象物13の情報を取得することが可能となる。
【0057】
また、制御装置56が、上記測定期間での測定モードについて、(1)第1期間において第1RFパルスとして所定位相の90°パルスを照射するとともに、第2期間において第2RFパルスとして第1期間と同じ位相の90°パルスを照射する第1測定モードと、(2)第1期間において第1RFパルスとして所定位相の90°パルスを照射するとともに、第2期間において第2RFパルスとして第1期間と異なる位相(好ましくは、90°異なる位相)の90°パルスを照射する第2測定モードとの2種類の測定モードを用いることが好ましい。
【0058】
このような構成では、上記した第1期間及び第2期間を含む測定期間による核磁気共鳴測定において、測定領域12へのRFパルスの照射条件を変えた2種類の測定モードで、それぞれ核磁気共鳴信号を検出することにより、それらの検出結果を合わせて、設定された測定位置(x,y)についての局所的な情報を確実に取得することが可能となる。
【0059】
このような核磁気共鳴撮像方法について、図6~図8を参照して、具体的に説明する。図6は、測定領域12に照射されるRFパルス、及び磁場印加用電極群20に供給される電流パルスについて示すタイミングチャートである。また、図7は、第1測定モードでの核磁気共鳴の測定方法について示す模式図である。また、図8は、第2測定モードでの核磁気共鳴の測定方法について示す模式図である。
【0060】
図6において、チャート(a)、(b)は、それぞれ、RFアンテナ15から測定領域12に照射されるRFパルスを示すタイミングチャートであり、チャート(a)は第1測定モードで照射されるRFパルスを、また、チャート(b)は第2測定モードで照射されるRFパルスを示している。
【0061】
また、チャート(c)、(d)、(e)は、それぞれ、電極群20から測定領域12に印加される磁場発生用に各電極へと供給される電流パルスを示すタイミングチャートであり、チャート(c)は均一磁場用電極25へと供給される電流パルスIstを、チャート(d)はx軸方向の第1傾斜磁場用電極30、35へと供給される電流パルスIxを、また、チャート(e)はy軸方向の第2傾斜磁場用電極40、45へと供給される電流パルスIyを示している。
【0062】
図6に示す実施形態の撮像方法では、上記したように、第1期間と、第2期間とを含む測定期間を用いて、測定対象物13の核磁気共鳴による撮像を行う方法を採用している。これに対応して、図6のチャート(a)~(e)では、測定期間の中心時刻を時刻t=0とし、この時刻t=0よりも前の期間を第1期間T1、後の期間を第2期間T2としている。また、期間T1、T2の期間長さは略同一である。
【0063】
このような測定期間において、測定領域12へのRFパルスの照射については、図6のチャート(a)、(b)に示すように、第1期間T1において第1RFパルス、第2期間T2において第2RFパルスの2つのRFパルスを照射している。これらの第1、第2のRFパルスの時間差τ(τ>0)は、測定対象物13における核スピンのコヒーレント時間に比べて充分に短い時間差に設定される。このような設定により、後述するように核スピンが初期状態から中間状態、反転状態へと変化する場合には、中間状態となる時間は、核スピンのコヒーレント状態が保持される時間となる。また、ここでは、上記したように第1期間T1と第2期間T2との中心時刻となる測定期間の中心時刻が時刻t=0に設定されているため、第1RFパルスの終了時刻がt=-τ/2、第2RFパルスの開始時刻がt=τ/2となっている。
【0064】
また、本実施形態では、これらの第1、第2のRFパルスについて、測定期間に対して2種類の測定モードを用いている。また、各測定モードにおいては測定領域12へと照射するRFパルスとして90°パルスを用いているが、この90°パルスについては、例えば、静磁場印加装置22から印加される磁場B0の条件下で、測定対象物13を構成している原子核の核スピンに共鳴する周波数に固定することが好ましい。
【0065】
具体的には、第1測定モードでは、チャート(a)に示すように、第1期間T1で照射されるRFパルスは、所定位相(位相0°)の90°パルスである。また、第2期間T2で照射されるRFパルスは、第1期間と同じ位相(位相0°)の90°パルスである。第2測定モードでは、チャート(b)に示すように、第1期間T1で照射されるRFパルスは、上記第1測定モードと同様の所定位相(位相0°)の90°パルスである。また、第2期間T2で照射されるRFパルスは、第1期間と90°異なる位相(位相90°)の90°パルスである。
【0066】
これらのRFパルスの位相については、図3に示した構成において、位相調整器62の動作を制御することによって、RFパルスの位相を制御することができる。また、第1、第2の測定モードで、条件が異なっているのは第2RFパルスの位相のみであり、第1、第2のRFパルスの時間差τ、RFパルスの強度等の条件は同一である。
【0067】
基板10上に集積化された電極群20によって測定領域12に印加される磁場(局所磁場)を発生させるための磁場発生用電流パルスとしては、図3に関して上述したように、電流源50から電極25に供給される電流パルスIst、電流源51から電極30、35に供給される電流パルスIx、及び電流源52から電極40、45に供給される電流パルスIyの3種類の電流パルスがある。
【0068】
電流パルスIstは、均一磁場Bstを発生させるための電流パルスである。また、電流パルスIxは、x軸方向についての傾斜磁場(磁場勾配)を発生させるための電流パルスである。また、電流パルスIyは、y軸方向についての傾斜磁場(磁場勾配)を発生させるための電流パルスである。図6のタイミングチャートにおいては、これらの電流パルスIst、Ix、Iyは、それぞれチャート(c)、(d)、(e)に示されている。また、第1期間T1、及び第2期間T2のそれぞれでの電流パルスの供給時間幅は、図6に示すように、RFの90°パルスの照射時間幅よりも若干長めに設定されている。
【0069】
1回の測定期間のうちで前半の第1期間T1(t<0)では、x軸方向についての電流パルスIxがON、y軸方向についての電流パルスIyがOFFとされる。これにより、測定領域12においてx軸方向に傾斜磁場が発生し、x軸方向についての測定位置xが選択可能な状態となる。これに対して、第1期間T1において、測定位置設定用の均一磁場の電流パルスIstを、設定したい測定位置Xに対応する電流値Ist1で供給する。これにより、第1期間T1においては、x軸方向で測定位置Xが選択された状態で核磁気共鳴の測定が行われる。
【0070】
後半の第2期間T2(t>0)では、y軸方向についての電流パルスIyがON、x軸方向についての電流パルスIxがOFFとされる。これにより、測定領域12においてy軸方向に傾斜磁場が発生し、y軸方向についての測定位置yが選択可能な状態となる。これに対して、第2期間T2において、測定位置設定用の均一磁場の電流パルスIstを、設定したい測定位置Yに対応する電流値Ist2で供給する。これにより、第2期間T2においては、y軸方向で測定位置Yが選択された状態で核磁気共鳴の測定が行われる。
【0071】
以上の第1期間及び第2期間を有する測定期間と、第1測定モード及び第2測定モードの2種類の測定モードとを用いた場合の核磁気共鳴の測定方法の具体的な例について説明する。ここでは、全体の測定領域12中で、核磁気共鳴測定によって情報を得ようとする測定位置(測定範囲)が(X,Y)に設定されているとする。
【0072】
また、以下の説明においては、RFパルス照射前の磁場中での核スピンの状態を「初期状態」、核スピンが90°パルスの照射によって90°倒れた状態を「中間状態」、核スピンが180°倒れて反対方向を向いている状態を「反転状態」とする。ただし、これらの用語は、説明のための便宜的なものである。
【0073】
まず、測定領域12に対し、チャート(a)に示すRFパルスを用いる第1測定モードで核磁気共鳴測定を行う。第1期間T1では、測定領域12に対して電流Ist1による均一磁場Bst1が印加され、領域12での均一静磁場成分はB0+Bst1となる。さらに、電流IxがONとなっていることにより、x軸方向に傾斜磁場が形成される。この状態で、第1RFパルスである位相0°の90°パルスを測定領域12に照射すると、図7(a)に示すように、x軸方向の位置が均一磁場Bst1によって設定された位置Xの帯状領域121内で核磁気共鳴が発生し、初期状態にあった原子核の核スピンが90°倒れて中間状態となる。
【0074】
続いて、第2期間T2では、測定領域12に対して電流Ist2による均一磁場Bst2が印加され、領域12での均一静磁場成分はB0+Bst2となる。さらに、電流IyがONとなっていることにより、y軸方向に傾斜磁場が形成される。この状態で、第2RFパルスである位相0°の90°パルスを測定領域12に照射すると、図7(b)に示すように、y軸方向の位置が均一磁場Bst2によって設定された位置Yの帯状領域122内で核磁気共鳴が発生し、初期状態にあった原子核の核スピンが90°倒れて中間状態となる。
【0075】
また、このとき、帯状領域121、122の重なり部分の領域120、すなわち、測定位置(X,Y)に対応する領域120では、既に90°倒れて中間状態となっていた核スピンがさらに90°倒れて、核スピンが反対方向を向いた反転状態となる。この状態で、核磁気共鳴信号の検出を行い、第1共鳴信号S1を得る。共鳴信号S1を取得したら、核スピンを緩和もしくは励起させて、初期状態へと戻す。
【0076】
次に、測定領域12に対し、チャート(b)に示すRFパルスを用いる第2測定モードで2回目の核磁気共鳴測定を行う。今回の測定モードにおいても、第1期間T1については、図8(a)に示すように1回目の測定と同様である。
【0077】
続いて、第2期間T2では、測定領域12に対して電流Ist2による均一磁場Bst2が印加され、領域12での均一静磁場成分はB0+Bst2となる。さらに、電流IyがONとなっていることにより、y軸方向に傾斜磁場が形成される。この状態で、第2RFパルスである位相90°の90°パルスを測定領域12に照射すると、図8(b)に示すように、y軸方向の位置が均一磁場Bst2によって設定された位置Yの帯状領域122内で核磁気共鳴が発生し、初期状態にあった原子核の核スピンが90°倒れて中間状態となる。
【0078】
また、このとき、帯状領域121、122の重なり部分の領域120、すなわち、測定位置(X,Y)に対応する領域120では、第2RFパルスの位相が0°ではなく90°とされているために、90°倒れて中間状態となっていた核スピンは、中間状態のままとなる。この状態で、核磁気共鳴信号の検出を行い、第2共鳴信号S2を得る。
【0079】
以上の測定により、第1共鳴信号S1から第2共鳴信号S2を差し引くことによって、測定位置(X,Y)における局所的な核スピンの情報を取得することができる。さらに、この方法では、測定位置(X,Y)は、均一磁場(Bst1、Bst2)、すなわち均一磁場用電極25に供給される電流(Ist1、Ist2)によって設定される。したがって、これらの電流値を制御することによって測定位置を測定領域12内で走査して、測定領域12内にある測定対象物13の画像情報を取得することが可能である。
【0080】
また、例えばこのような核磁気共鳴撮像システムを、ナノ領域の核スピンを量子ビットとした量子コンピュータ等における量子ビットの局所検出装置に応用する場合、上記の電流値を制御することにより、読み出す量子ビットを選択することが可能となる。また、上記した核磁気共鳴撮像素子、及び撮像システムは、高分解能なMRI装置として、例えば各種の計測分野、先端研究分野などに広く応用することが可能である。
【0081】
ここで、上記構成の核磁気共鳴撮像素子1Aにおいて、電極群20によって印加される磁場で設定される測定位置の分解能は、傾斜磁場用の一対のスプリット電極の電極間距離、及び傾斜磁場用電極に供給される電流値等の条件によって決まる。
【0082】
すなわち、上記構成では、核磁気共鳴の読み出しにおいて核磁気共鳴のピークに有限の幅があるため、その幅を分離するために必要なエネルギー差、すなわち周波数の差を見積もることができる。一方、磁場印加用電極群での電極配置によって、得られる傾斜磁場の強さが計算でき、そのときに得られる核磁気共鳴のエネルギーのシフト量を計算することができる。したがって、所望の位置分解能を得るために必要な磁場の値(電極に供給される電流値)が、スプリット電極の電極間距離の関数として求められ、また、その分解能が電極間距離及び供給される電流値によって決まることとなる。
【0083】
例えば、測定位置の分解能を500nm以下にするためには、上記した傾斜磁場用の電極間距離と電流値との比を50m/A以下とする必要がある。具体的な例としては、上記したように傾斜磁場用の一対のスプリット電極の電極間距離(ほぼ均一磁場用電極のループ形状の内側の幅に相当)を50μmとした構成では、供給する電流値を100μAとした場合、得られる位置分解能は5nm程度となる。
【0084】
また、均一磁場用電極に供給される電流については、その電流値を傾斜磁場用電極での電流値と同程度に設定することが好ましい。このような条件は、例えば静磁場印加装置から印加される磁場の値を適切に設定することで実現することができる。
【0085】
本発明による核磁気共鳴撮像素子、及びそれを用いた撮像システム、撮像方法は、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、磁場印加用電極群を構成する各電極の具体的な電極パターンについては、図1に示した構成以外にも様々な構成を用いて良い。一般には、基板に集積化される磁場印加用電極群は、測定領域に対して、設定すべき測定位置に応じた均一磁場を印加する均一磁場用電極と、測定領域に対して、基板の測定面に平行な第1軸方向について傾斜磁場を印加する第1傾斜磁場用電極と、測定領域に対して、測定面に平行で第1軸と直交する第2軸方向について傾斜磁場を印加する第2傾斜磁場用電極とを有して構成されていれば良い。
【0086】
また、撮像素子における基板、電極群、RFアンテナの積層構造等についても、上記した構成に限らず、様々な構成を用いて良い。また、上記構成の撮像素子を用いた具体的な撮像方法についても、上記した方法に限らず、具体的な測定対象物の種類、配置、電極群の構成等に応じて様々な方法を用いることが可能である。
【0087】
本発明による核磁気共鳴撮像素子の構成について、さらに説明する。図9は、核磁気共鳴撮像素子の他の実施形態の平面構成を概略的に示す図である。本実施形態による核磁気共鳴撮像素子1Bは、基板10と、磁場印加用電極群20と、RFアンテナ15とを備えて構成されている。また、図9に示す構成において、磁場印加用電極群20は、電極70、75、80、85の4つのスプリット電極から構成されている。
【0088】
スプリット電極70は、測定領域12からみて左側に直線状の電極パターンで形成されており、その両端部にそれぞれ電流供給用の配線71、72が設けられている。また、スプリット電極75は、領域12からみて右側に直線状の電極パターンで形成されており、その両端部にそれぞれ電流供給用の配線76、77が設けられている。
【0089】
スプリット電極80は、測定領域12からみて下側に直線状の電極パターンで形成されており、その両端部にそれぞれ電流供給用の配線81、82が設けられている。また、スプリット電極85は、領域12からみて上側に直線状の電極パターンで形成されており、その両端部にそれぞれ電流供給用の配線86、87が設けられている。
【0090】
このような構成において、測定領域12に対して均一磁場を印加する均一磁場用電極は、4つのスプリット電極70、75、80、85を合わせたループ状の電極パターンによって構成されている。また、x軸方向について傾斜磁場を印加する第1傾斜磁場用電極は、一対のスプリット電極70、75によって構成されている。同様に、y軸方向について傾斜磁場を印加する第2傾斜磁場用電極は、一対のスプリット電極80、85によって構成されている。
【0091】
次に、上記の撮像素子1Bを用いた本発明による核磁気共鳴撮像システムについて説明する。図10は、核磁気共鳴撮像システムの他の実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態による撮像システムは、核磁気共鳴撮像素子1Bと、電流源91~94とを備えて構成されている。なお、本実施形態において、RF発生器60を含むRFパルス供給手段については、図3に示した構成と同様である。また、図10においては、静磁場印加装置22、検出器54、及び制御装置56について図示を省略している。
【0092】
第1電流源91は、撮像素子1Bの電極70に電流Ix1を供給するための電流源であり、図9に示すように、配線71、72の間に接続されている。第2電流源92は、電極75に電流Ix2を供給するための電流源であり、配線76、77の間に接続されている。第3電流源93は、電極80に電流Iy1を供給するための電流源であり、配線81、82の間に接続されている。第4電流源94は、電極85に電流Iy2を供給するための電流源であり、配線86、87の間に接続されている。
【0093】
このような構成において、均一磁場用電極に電流を供給する均一磁場用電流源は、4つの電流源91~94によって構成されている。また、第1傾斜磁場用電極に電流を供給する第1傾斜磁場用電流源は、2つの電流源91、92によって構成されている。また、第2傾斜磁場用電極に電流を供給する第2傾斜磁場用電流源は、2つの電流源93、94によって構成されている。
【0094】
また、上記構成では、左側のスプリット電極70に供給される電流Ix1は、図1の構成においてループ電極25の左辺及びスプリット電極30に供給される電流を加算したものとなる。また、右側のスプリット電極75に供給される電流Ix2は、ループ電極25の右辺及びスプリット電極35に供給される電流を加算したものとなる。ここで、ループ電極25の左辺と右辺とでは、電流の向きが異なることに注意が必要である。
【0095】
同様に、上記構成では、下側のスプリット電極80に供給される電流Iy1は、ループ電極25の下辺及びスプリット電極40に供給される電流を加算したものとなる。また、上側のスプリット電極85に供給される電流Iy2は、ループ電極25の上辺及びスプリット電極45に供給される電流を加算したものとなる。ここで、ループ電極25の下辺と上辺とでは、左辺と右辺と同様に電流の向きが異なることに注意が必要である。
【0096】
図9及び図10の実施形態に示すように、磁場印加用電極群を構成する各電極の電極パターン、及びそれらの電極に電流を供給する電流源の構成については、具体的には様々な構成を用いることが可能である。
【0097】
ここで、上記実施形態による核磁気共鳴撮像(MRI)素子では、基板と、基板の一方の面である測定面上に集積化されて設けられ、基板に対して所定領域に設定された核磁気共鳴の測定領域に磁場を印加して、測定領域内で局所的な測定位置を設定するための磁場印加用電極群と、基板に対して所定位置に設けられ、基板での測定領域に対してRFパルスを照射するためのRF照射手段とを備え、磁場印加用電極群は、測定領域に対して、設定すべき測定位置に応じた均一磁場を印加する均一磁場用電極と、測定領域に対して、基板の測定面に平行な第1軸方向について傾斜磁場を印加する第1傾斜磁場用電極と、測定領域に対して、測定面に平行で第1軸と直交する第2軸方向について傾斜磁場を印加する第2傾斜磁場用電極とを有する構成を用いている。
【0098】
上記撮像素子における磁場印加用電極群の具体的な構成については、均一磁場用電極は、測定領域を囲むように形成されたループ電極を含み、第1傾斜磁場用電極は、第1軸方向について測定領域を挟むように形成された一対の第1スプリット電極を含み、第2傾斜磁場用電極は、第2軸方向について測定領域を挟むように形成された一対の第2スプリット電極を含むことが好ましい。これにより、3種類の電極を用いた測定領域への均一磁場、第1軸方向の傾斜磁場、及び第2軸方向の傾斜磁場の印加を、基板上への集積化が可能な簡単な電極構成で実現することができる。
【0099】
あるいは、磁場印加用電極群において、第1傾斜磁場用電極は、第1軸方向について測定領域を挟むように形成された一対の第1スプリット電極を含み、第2傾斜磁場用電極は、第2軸方向について測定領域を挟むように形成された一対の第2スプリット電極を含むとともに、均一磁場用電極は、一対の第1スプリット電極及び一対の第2スプリット電極を合わせたループ状の電極パターンによって構成されていることとしても良い。このような構成によっても、測定領域への均一磁場、第1軸方向の傾斜磁場、及び第2軸方向の傾斜磁場の印加を、基板上への集積化が可能な簡単な電極構成で実現することができる。また、電極群の具体的な電極構成については、これら以外にも様々な構成を用いて良い。
【0100】
磁場印加用電極群を構成する電極パターンについては、磁場印加用電極群は、電極群を構成する各電極のパターン幅が10nm~10μmの範囲内の幅であることが好ましい。また、磁場印加用電極群は、電極群を構成する各電極の厚さが200nm~1μmの範囲内の厚さであることが好ましい。また、磁場印加用電極群は、電極群を構成する電極パターンの内側の幅が100nm~100μmの範囲内の幅であることが好ましい。
【0101】
また、測定領域へのRFパルスの照射に用いられるRF照射手段については、基板の測定面上に、磁場印加用電極群に対して絶縁層によって絶縁されて形成されたRFアンテナを含む構成を用いることができる。あるいは、基板の測定面とは反対側の面上に形成されたRFアンテナを含む構成を用いることができる。これらの構成では、RFアンテナは、磁場印加用電極群とともに基板に集積化される。
【0102】
また、撮像素子による画像取得の対象となる測定対象物については、基板において、測定領域内での測定対象物は、測定面上、または測定面から所定深さの基板内に配置されることが好ましい。
【0103】
上記実施形態による核磁気共鳴撮像システムでは、上記した構成の核磁気共鳴撮像素子と、均一磁場用電極に均一磁場発生用の電流を供給する均一磁場用電流源と、第1傾斜磁場用電極に傾斜磁場発生用の電流を供給する第1傾斜磁場用電流源と、第2傾斜磁場用電極に傾斜磁場発生用の電流を供給する第2傾斜磁場用電流源と、RF照射手段に対してRFパルスを供給するRFパルス供給手段と、核磁気共鳴撮像素子の測定領域内での測定対象物からの核磁気共鳴信号を検出する検出手段と、測定対象物に対する核磁気共鳴による撮像を制御する撮像制御手段とを備える構成を用いている。
【0104】
また、上記実施形態による核磁気共鳴撮像方法では、上記した構成の核磁気共鳴撮像素子を用い、均一磁場用電極、第1傾斜磁場用電極、及び第2傾斜磁場用電極のそれぞれに対して必要に応じて磁場発生用の電流を供給する電流供給ステップと、RF照射手段に対してRFパルスを供給するRFパルス供給ステップと、核磁気共鳴撮像素子の測定領域内での測定対象物からの核磁気共鳴信号を検出する検出ステップと、測定対象物に対する核磁気共鳴による撮像を制御する撮像制御ステップとを備える構成を用いている。
【0105】
ここで、撮像システムは、撮像制御手段が、第1傾斜磁場用電極、または第2傾斜磁場用電極への電流の供給、及びそれによって測定領域に印加される傾斜磁場を制御することで、測定位置を設定する軸方向を選択するとともに、均一磁場用電極への電流の供給、及びそれによって測定領域に印加される均一磁場を制御することで、測定領域内において、測定位置を走査することが好ましい。
【0106】
同様に、撮像方法は、撮像制御ステップにおいて、第1傾斜磁場用電極、または第2傾斜磁場用電極への電流の供給、及びそれによって測定領域に印加される傾斜磁場を制御することで、測定位置を設定する軸方向を選択するとともに、均一磁場用電極への電流の供給、及びそれによって測定領域に印加される均一磁場を制御することで、測定領域内において、測定位置を走査することが好ましい。
【0107】
このように、傾斜磁場用電極によって傾斜磁場を印加して、測定位置を設定する軸方向を選択するとともに、均一磁場用電極によって測定領域に印加される均一磁場の大きさの設定または変更を制御することにより、測定領域内における測定位置の設定、及びその変更、走査を好適に実現することができる。
【0108】
また、撮像システムは、撮像制御手段が、第1傾斜磁場用電極への電流供給をON、第2傾斜磁場用電極への電流供給をOFFとして、第1軸方向について傾斜磁場が印加されて測定位置が選択された状態で、測定領域にRFパルスを照射する第1期間と、第2傾斜磁場用電極への電流供給をON、第1傾斜磁場用電極への電流供給をOFFとして、第2軸方向について傾斜磁場が印加されて測定位置が選択された状態で、測定領域にRFパルスを照射する第2期間とを含む測定期間を用いて、測定対象物に対して核磁気共鳴による撮像を行うことが好ましい。
【0109】
同様に、撮像方法は、撮像制御ステップにおいて、第1傾斜磁場用電極への電流供給をON、第2傾斜磁場用電極への電流供給をOFFとして、第1軸方向について傾斜磁場が印加されて測定位置が選択された状態で、測定領域にRFパルスを照射する第1期間と、第2傾斜磁場用電極への電流供給をON、第1傾斜磁場用電極への電流供給をOFFとして、第2軸方向について傾斜磁場が印加されて測定位置が選択された状態で、測定領域にRFパルスを照射する第2期間とを含む測定期間を用いて、測定対象物に対して核磁気共鳴による撮像を行うことが好ましい。
【0110】
このような構成では、第1期間で第1軸(x軸)方向について測定位置(x座標)が選択された状態で測定を行い、第2期間で第2軸(y軸)方向について測定位置(y座標)が選択された状態で測定を行うことにより、それらを合わせて、第1軸及び第2軸の両方向について測定位置(x,y)が選択された状態で測定対象物の情報を取得することが可能となる。
【0111】
また、撮像システムは、撮像制御手段が、測定期間での測定モードについて、第1期間においてRFパルスとして所定位相の90°パルスを照射するとともに、第2期間においてRFパルスとして第1期間と同じ位相の90°パルスを照射する第1測定モードと、第1期間においてRFパルスとして所定位相の90°パルスを照射するとともに、第2期間においてRFパルスとして第1期間と異なる位相(好ましくは、90°異なる位相)の90°パルスを照射する第2測定モードとの2種類の測定モードを用いることが好ましい。
【0112】
同様に、撮像方法は、撮像制御ステップにおいて、測定期間での測定モードについて、第1期間においてRFパルスとして所定位相の90°パルスを照射するとともに、第2期間においてRFパルスとして第1期間と同じ位相の90°パルスを照射する第1測定モードと、第1期間においてRFパルスとして所定位相の90°パルスを照射するとともに、第2期間においてRFパルスとして第1期間と異なる位相の90°パルスを照射する第2測定モードとの2種類の測定モードを用いることが好ましい。
【0113】
このような構成では、上記した第1期間及び第2期間を含む測定期間による核磁気共鳴測定において、測定領域へのRFパルスの照射条件を変えた2種類の測定モードで、それぞれ核磁気共鳴信号の検出を行うことにより、それらの検出結果を合わせて、設定された測定位置(x,y)についての局所的な情報を確実に取得することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、核磁気共鳴撮像法による測定対象物の画像取得を高い分解能で行うことが可能な核磁気共鳴撮像素子、及びそれを用いた撮像システム、撮像方法として利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図4】
9