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明細書 :新規な(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、組成物、光学部材及び電気部材

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2009-536225 (P2009-536225A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成21年10月8日(2009.10.8)
特許番号 特許第5349972号 (P5349972)
登録日 平成25年8月30日(2013.8.30)
発行日 平成25年11月20日(2013.11.20)
発明の名称または考案の名称 新規な(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、組成物、光学部材及び電気部材
国際特許分類 C08F 220/12        (2006.01)
C08F 220/22        (2006.01)
G02B   5/00        (2006.01)
G02B   6/00        (2006.01)
FI C08F 220/12
C08F 220/22
G02B 5/00
G02B 6/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 18
出願番号 特願2008-550566 (P2008-550566)
出願日 平成18年10月5日(2006.10.5)
国際出願番号 PCT/JP2006/320360
国際公開番号 WO2007/129418
国際公開日 平成19年11月15日(2007.11.15)
優先権出願番号 60/797,649
優先日 平成18年5月5日(2006.5.5)
優先権主張国 アメリカ合衆国(US)
審査請求日 平成20年12月1日(2008.12.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小池 康博
【氏名】岡本 善之
【氏名】多加谷 明広
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100085279、【弁理士】、【氏名又は名称】西元 勝一
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】細井 龍史
参考文献・文献 特開平01-503072(JP,A)
特開平10-095751(JP,A)
特開平02-184653(JP,A)
特開昭61-007311(JP,A)
特開昭63-234006(JP,A)
特開昭63-115106(JP,A)
門磨義則 増原英一,メタクリル酸メチルとペンタフルオロフェニルメタクリラートの共重合体と生成ポリマーの諸物性,医用器材研究所報告,日本,1981年,v15,p23-29
調査した分野 C08F 6/00-246/00
C08F 301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとを含み、繰り返し単位Aと繰り返し単位Bの重合比率(wt%)が、76:24~95:5であり、繰り返し単位A及び繰り返し単位Bの総量の含有率が94モル%以上である一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルの共重合体。
【化1】
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[一般式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数が1~4のアルキル基を表す。]
【請求項2】
前記Rが、メチル基である請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
前記繰り返し単位Aと前記繰り返し単位Bとのモル比が、90:10~95:5であることを特徴とする請求項1に記載の共重合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の共重合体を含む組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の共重合体を含む光学部材。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の共重合体を含む電気部材。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の共重合体を含む液晶ディスプレイ用の光学フィルム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なメタアクリル酸エステルの共重合体、組成物、光学部材及び電気部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルメタクリレート(PMMA)は、光透過性が高く、無色で、化学的耐久性や、耐候性に優れ、工業的に大量生産される重要なポリマーである。PMMAは、ガラスの代替として、光デバイス用途に広く用いられている。しかし、PMMAのガラス転移温度(Tg)は比較的低く、約100℃であり、吸湿性がある。これらの特性が光エレクトロニクス分野でのPMMAの用途を制限している。
【0003】
PMMAのガラス転移温度を高めるために、剛直あるいは嵩高いモノマーを共重合によって導入すること(例えば、非特許文献1~3参照)や、PMMAのカルボキシ基と水素結合を形成するような基を有するモノマーを導入すること(例えば、非特許文献4~6参照)が、これまで研究されてきた。PMMAの吸湿性は、メチルアクリレートで置換された嵩高い環状炭化水素とメチルメタクリレートとを共重合させることによって、低減できることが報告されている。
しかし、嵩高い基による修飾は、導入された共重合モノマーの光吸収によって、PMMAの透明性を低下させる傾向にある。
【0004】
PMMAの可視光域での主な光の損失は、C-H伸縮振動の倍音伸縮によるものや、倍音伸縮と変形振動との組み合わせによるものである。重水素やフッ素のような、より重い原子によってC-H結合の水素原子を置換した場合、振動吸収のエネルギーが増加し、吸収帯は可視光域から近赤外域での吸収を極小化する。
そこで、Bontevinらは、幾つかのフッ素置換アクリレートモノマーを合成し、それらのポリマーが非常に透明な有機化合物であったことを報告している(例えば、非特許文献7参照)。これらのフッ素置換アクリレートモノマーのうち、ペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFPA)とそのポリマーの屈折率が報告された。また、ポリPFPAのガラス転移温度(Tg)は125℃であり、PMMAよりも約20℃高いことが報告された。

【非特許文献1】Y. Tan, G. Ekenstein, Eur. polym. J. 1994, 30, 1363
【非特許文献2】Mishra, T. Sinha, V. Choudhary, J. Appl. Polym. Sci. 1998, 68, 527
【非特許文献3】S. Dong, Q. Wang, Y. Wei, Z. Zhang, J. Appl. Polym. Sci. 1999, 72, 1335
【非特許文献4】E. M. Pearce, T. K. Kwei, B. Y. Min, J. Macromol. Sci.Chem. 1984, 21, 1181
【非特許文献5】S. Kuo, F. Chang, Macromolecules 2001, 34, 7737、
【非特許文献6】S. Kuo, H. Kao, F. Chang, Polymer 2003, 44, 6873
【非特許文献7】B. Bontevin, A Rousseau, D. Bosc, J. Polym. Sci. Pol. Chem. 1992, 30, 1279
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、PMMA又はPMAなどのホモポリマーよりも、耐熱性が向上し、吸湿性が低減し、複屈折が低く透明性が高いポリマーを提供することである。
また、本発明の課題は、前記ポリマーを用いた組成物、光学部材、及び電気部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を鑑みて、下記の新規なメチル(メタ)アクリレートの共重合体を得ることに成功した。すなわち、本発明は以下に示す通りである。
【0007】
本発明の第1の態様は、下記繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとを含み、繰り返し単位Aと繰り返し単位Bの重合比率(wt%)が、76:24~95:5であり、繰り返し単位A及び繰り返し単位Bの総量の含有率が94モル%以上である一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルの共重合体である。
【化1】
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一般式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数が1~4のアルキル基を表す。
【0008】
本発明の第の態様は、第1の態様において、前記Rが、メチル基である共重合体である。
本発明の第の態様は、第1の態様において、前記繰り返し単位Aと前記繰り返し単位Bとのモル比が、a:b=90:10~95:5である共重合体である。
【0009】
本発明の第の態様は、第1の態様から第の態様の共重合体を含む組成物である。
本発明の第の態様は、第1の態様から第の態様の共重合体を含む光学部材である。
本発明の第の態様は、第1の態様から第の態様の共重合体を含む電気部材である。
本発明の第7の態様は、第1の態様から第3の態様の共重合体を含む液晶ディスプレイ用の光学フィルムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、PMMA又はPMAなどのホモポリマーよりも、耐熱性が向上し、吸湿性が低減し、複屈折が低く透明性が高いポリマー、並びに該ポリマーを用いた組成物、光学部材、及び電気部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、下記繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとを含む一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルの共重合体(以下「本発明の共重合体」と称する場合がある。)を提供する。
【化2】
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【0012】
一般式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数が1~4のアルキル基を表す。
【0013】
このように、メチルメタクリレート(MMA)又はメチルアクリレート(MA)(以下、2つの物質を総称して「メチル(メタ)アクリレート」とする場合がある。)に起因する繰り返し単位Aと、フッ素置換した芳香族基のメタククリル酸エステル又はアクリル酸エステル(以下、2つの物質を総称して、「フッ素置換芳香族の(メタ)アクリル酸エステル」とする場合がある。)のモノマーに起因する繰り返し単位Bと、を含む共重合体にすることにより、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又はポリメチルアクリレート(PMA)などのホモポリマーよりも耐熱性が向上し、かつ吸湿性が低減する。また、高い透明性を示す。なお本発明では、前記繰り返し単位Bは、ペンタフルオロフェニルメタクリレートに起因する単位である。
【0014】
PMMA又はPMAなどのホモポリマーよりも、耐熱性を向上させ、かつ吸湿性を低減させ、複屈折が低く透明性が高いポリマーを準備するために、本発明者らは、繰り返し単位Bをポリマー骨格に含ませること、すなわち、フッ素置換芳香族の(メタ)アクリル酸エステルのモノマーを共重合することが極めて有効であることを明らかにした。
【0015】
ベンゼン環およびナフタレン環などの芳香族基をフッ素化すると、それぞれの環を構成するπ電子が、最も大きな電気陰性度を有するフッ素原子によって吸引されるため、環の中央部分の電子密度が低下するように分極すると考えられる。さらにこの分極によって、環構造がMMAのカルボニル基と引き合うような相互作用をすることによって、本発明の共重合体ではガラス転移温度が向上すると考えられる。
したがって、フッ素化した芳香族基を少量導入しただけでも、耐熱性が著しく向上するので、汎用のPMMAやPMAの特性(透明性や機械的強度など)を損なうことなく、耐熱性を向上させることができる。
【0016】
さらにフッ素化した構造のポリマーへの導入は、疎水性を高め、吸湿性を低減する効果がある。しかし、テフロン(登録商標)のように嵩高い側鎖を持たないフッ素化ポリマーは、一般に結晶性が高く、ポリマーの透明性を低下させる。このようなフッ素化ポリマーの短所も、フッ素化した環構造をポリマーの側鎖に導入することによって解決できる。
【0017】
また、フッ素置換芳香族基の(メタ)アクリル酸エステルと、MMA又はMAとを共重合させた場合であっても、得られる共重合体の透明性は高く、PMMAやPMAの透明性を損なわない。
更には、ランダムに共重合が起こらずに、繰り返し単位Aと、繰り返し単位Bとが塊として存在するブロック共重合体の状態になったとしても、あるいは、モノマーが反応せずに残存していたとしても、フッ素置換芳香族基の(メタ)アクリル酸エステルとそのポリマーは、MMA及びPMMAに、それぞれ極めて近い屈折率であることから、透明性を低下させない。
【0018】
また、本発明者らの研究により、ペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFPA)のホモポリマーは、PMMAよりも複屈折が大きく、かつ機械的強度が低く脆い性質であることも明らかにしている。
【0019】
光学用途のポリマーにおいてよく観測される主な複屈折には、配向複屈折(orientational birefringence)と光弾性複屈折(photoelastic birefringence)が知られている。配向複屈折は、鎖状のポリマー分子の主鎖が配向することにより発現する。射出成形や押出成形、熱延伸などの工業的に通常用いられる成形方法において、ポリマーを溶融させて成形する過程で生じ易い。光弾性複屈折は、ポリマーが弾性変形した時に発現する複屈折である。光学用途の透明ポリマーにおいては、主にガラス転移温度以下で歪が生じた時に光弾性複屈折が生じる。例えば液晶ディスプレイ用の光学フィルムでは、画面に貼られているフィルムの四方、つまり画面の周辺部が、機械的に固定されている。液晶ディスプレイ使用時の温度・湿度の変化によって、フィルムが伸縮するため歪が生じる。その結果、光弾性複屈折が発現する。その複屈折が大きくなると、液晶ディスプレイの画質が著しく劣化する。この光弾性複屈折発現時の分子レベルでみたポリマー鎖の動きは、詳細には解明されていない。しかし、ガラス転移温度以下で発現する場合は、ポリマー分子の主鎖はほとんど動かない状態で側鎖が配向するというようなメカニズムによることが多い。つまり、前述の配向複屈折はポリマー分子の主鎖が配向することによって生じる複屈折であり、光弾性複屈折は主にポリマー分子の側鎖が配向することによって生じる複屈折であるといえる。
【0020】
ポリマーは、通常、正負いずれかの複屈折性を有し、それらはポリマーの化学構造に由来する。それゆえ、ポリマーの種類に固有の性質である。配向複屈折の大きさは、このポリマー固有の複屈折性とポリマー鎖の配向度に起因する。光弾性複屈折の大きさは、ポリマー固有の複屈折性と歪の大きさに起因する。前述のように配向複屈折と光弾性複屈折はその発現のメカニズムが異なる。それゆえ、同一のポリマーにおいても配向複屈折に関する固有の複屈折性と、光弾性複屈折に関する固有の複屈折性は異なるものとなる。
【0021】
配向複屈折についての固有の複屈折性は、例えばある一定の配向度における複屈折値を種々のポリマーにおいて測定することによって、比較することができる。光弾性複屈折に関する固有の複屈折性は、光弾性定数(光弾性係数と呼ばれることもある)によって比較できる。
【0022】
MMAを重合して得られるホモポリマーのPMMAは、配向複屈折性と光弾性複屈折性が両方とも負である。したがって、MMAは配向複屈折性と光弾性複屈折性が両方とも負の効果を示すモノマーであるといえる。
これに対し、フッ素置換芳香族基の(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーは、配向複屈折性と光弾性複屈折性が両方とも正を示し、かつPMMAに比べて、配向複屈折性と光弾性複屈折性の絶対値が、いずれも大きい。
具体的には、PMMAの配向複屈折性は、主鎖の配向度約0.03において、約-1×10-4であり、光弾性複屈折性は、約-5×10-12[Pa-1]であるのに対し、ポリPFPAの配向複屈折性は、主鎖の配向度約0.03において、約5×10-4であり、光弾性複屈折性は、約35×10-12[Pa-1]である。
【0023】
フッ素化した芳香族環構造がポリマーの側鎖に導入されることによって、配向複屈折発現時および光弾性複屈折発現時の側鎖の動きが決まり、その結果としてポリPFPAは、配向複屈折と光弾性複屈折の両方が正になるものと推測される。
【0024】
これに対し、本発明の共重合体では、負の複屈折を示す繰り返し単位Aと、正の複屈折を示す繰り返し単位Bとを有するので、複屈折の正負が相殺され、結果、複屈折を低減することができ、非複屈折材料とすることも可能である。
また、用途によっては、特定の複屈折を示す材料が望まれる場合がある。負の複屈折を示す繰り返し単位Aと、正の複屈折を示す繰り返し単位Bの組成比を変更することで、所望の複屈折を示す共重合体を得ることができる。複屈折の値は、繰り返し単位Aのみからなるホモポリマーでの複屈折の値と、繰り返し単位Bのみからなるホモポリマーでの複屈折の値との間の広範な範囲で、調整することができる。
【0025】
以下、一般式(1)で表される本発明の共重合体について詳細に説明する。
【0026】
<繰り返し単位A>
本発明の共重合体は、下記繰り返し単位Aを有する。
【化3】
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【0027】
繰り返し単位Aにおいて、Rは、水素原子又はメチル基を表す。すなわち、繰り返し単位Aは、アルキルメタクリレート又はアルキルアクリレートが共重合したことにより形成されたものである。なお、繰り返し単位Aは、メチルメタクリレートとメチルアクリレートの2種が併用されている場合であってもよい。
好ましくは、透明性や、一般的に汎用されているとの観点から、繰り返し単位Aは、メチルメタクリレートによって形成されたものであることが好ましい。
【0028】
繰り返し単位Aにおいて、Rは炭素数が1~4のアルキル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表す。
【0029】
<繰り返し単位B>
本発明の共重合体は、下記繰り返し単位Bを有する。
【化4】
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【0033】
繰り返し単位Bは、フッ素置換芳香族基の(メタ)アクリル酸エステルが共重合したことにより形成されたものである。このフッ素置換芳香族基の(メタ)アクリル酸エステルとしては、ペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFPA)である。その他、併用し得るフッ素置換した芳香族基の(メタ)アクリル酸エステルの具体例を含めて下記構造式に示すが、これらの具体例に限定されない。
【0034】
【化5】
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【0035】
繰り返し単位Bは、上記フッ素置換芳香族基の(メタ)アクリル酸エステルが1種類のみで形成されていても、2種類以上併用して形成されていてもよい。つまり、一般式(1)で表される共重合体は、2種の(メタ)アクリル酸エステルの共重合によって得られるものであっても、3種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合によって得られるものであってもよい。
【0036】
<その他の繰り返し単位>
本発明の共重合体は、繰り返し単位A及びBのほかに、他の繰り返し単位を含んでいてもよい。この繰り返し単位は、ラジカル重合により形成され得るものであれば特に制限さない。例えば、エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物により形成される繰り返し単位を挙げることができる。
エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物として具体的には、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート等のアルキルアクリレートなどが挙げられる。また、シリコンアクリレートなどを挙げることができる。他の例としては、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-置換された(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルのようなビニルエステル、イソブチルビニルエーテルのようなビニルエーテル、スチレン、アルキル-及びハロスチレン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル又は塩化ビニリデンなどが挙げられる。
【0037】
その他の繰り返し単位の含有率は、本発明の共重合体中、6モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、実質的には含有されないことが、透明性などの物理的物性の観点から特に好ましい。
【0038】
<共重合体>
吸湿性を低下させ、かつ透明性を低下させず、複屈折を低減し、高い耐熱性を示す共重合体とする総合的な観点からは、MMA又はMAで形成される繰り返し単位Aとフッ素置換芳香族基の(メタ)アクリル酸エステルで形成される繰り返し単位Bとを含んでいれば、その共重合比は特に制限されないが、耐熱性や吸湿性について重点的に考慮すれば、繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとの重合比率は、共重合体中、繰り返し単位A:繰り返し単位B=99モル%:1モル%~1モル%:99モル%であることが好ましく、60モル%:40モル%~90モル%:10モル%であることがより好ましく、70モル%:30モル%~90モル%:10モル%であることが更に好ましく、機械特性やコスト的な要因を加味すると、95モル%:5モル%~70モル%:30モル%であることが更に好ましく、特に95モル%:5モル%~90モル%:10モル%が好適である。
【0039】
MMAとPFPAとの共重合により得られる共重合体の場合、複屈折を重点に考慮したときには、配向複屈折と光弾性複屈折とを低減するよう、MMAとPFPAとの重合比率は、共重合体中、MMA:PFPA=76wt%:24wt%~95wt%:5wt%であり、79wt%:21wt%~89wt%:11wt%であることが更に好ましい。
【0040】
本発明の共重合体は、繰り返し単位Aと繰り返し単位Bと(更には、他の繰り返し単位と)のランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよいが、透明性の観点から、好ましくはランダム共重合体である。
【0041】
<共重合体の製造方法>
メチルメタクリレートとフッ素置換の芳香族アクリレートは、ラジカル重合にて共重合することができる。
ラジカル重合の開始剤としてはフェニルアゾトリフェニルメタン、アゾイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスバレロニトリル、アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)等のアゾ化合物、クメンヒドロぺルオキシド(CHP)、過酸化ベンゾイル(BPO)、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル(LP)、t-ブチルヒドロぺルオキシド(BHP)、ジ-t-ブチルヒドロぺルオキシド(DBP)、t-ブチルぺルオキシ-2-エチルヘキサノール等の過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の通常一般的に用いられる開始剤を単独あるいは混合させて用いることができる。
【0042】
重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、ラジカル重合で適用し得る一般的な方法を採用できる。この中でも、得られるポリマーの透明性を低下させる不純物の混入を阻止し、及び加熱による着色を避ける観点から、塊状重合法、溶液重合法、又は懸濁重合法を適用することが好適である。
【0043】
溶液重合法の場合には、反応溶剤としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等、一般の有機溶剤を用いることができる。また、使用する前には予め30分~1時間ほど窒素ガスを吹き込みバブリングすることが好ましい。
反応溶剤は、モノマーの含有率が40質量%以下となるように用いることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましい。
【0044】
得られる共重合体の分子量が非常に高くなり有機溶媒に不溶となる場合には、連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤としては、ドデカンチオール(n-C1225SH)、プロパンチオール(n-CSH)、ブタンチオール等の含イオウ化合物や四臭化炭素、モノクロロトリブロモカーボンのようなハロゲン化合物等、公知のものを用いることができる。
連鎖移動剤の添加量は、モノマーの総質量に対して、2質量%~10質量%であることが好ましく、3質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0045】
<用途>
本発明の共重合体は、汎用のPMMAよりも、低い吸湿性、低い複屈折、及び高いガラス転移温度(耐熱性)を示し、PMMAと同程度の透明性を示す。この本発明の共重合体は、PMMA又はPMAの一部分として、上記繰り返し単位Bを導入するが、その導入量が少量であっても、耐熱性を向上させることができるので、PMMAやPMAの優れた特性(透明性、機械的強度など)を損ねることがない。また、上述の導入量であれば、実用上充分な機械的強度を実現できる。
したがって、本発明の共重合体は、これまでのPMMAの用途に円滑に代替することができ、ビデオディスクやコンパクトディスク、ピックアップレンズなどの種々のレンズ等の光デバイスや、光ファイバーや光導波路などの光学部材の用途に好適に適用できる。更に詳細には、液晶ディスプレイ用の種々の機能性光学フィルム(偏光板保護フィルム、位相差フィルムなど)、液晶ディスプレイ用及びリアプロジェクションテレビ用拡散板、液晶ディスプレイ用導光板、液晶ディスプレイのバックライト用各種機能性光学フィルム(プリズムシート、拡散シートなど)にも好適に適用できる。
また、コネクターなどの電子部品や携帯電話の筐体等モールド部分に使用したり、架橋剤を添加して半導体の封止材に使用したりなど、電気部材に好適に適用できる。封止材料のなかでも光学的な特性が要求されるものの一例としては、砲弾型LEDの砲弾形状部分を挙げることができる。
【0046】
<組成物>
本発明の共重合体は、上述のような用途に好適に用いることができ、その用途に合わせた組成物を調製する。
封止材の用途には、本発明の共重合体と架橋材とを含有する組成物を用いる。フィルムの用途には、本発明の共重合体を溶解し得る溶剤に本発明の共重合体を含有させた組成物を用いる。本発明の共重合体を溶解し得る溶剤としては、ヘキサフルオロベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。レンズや光ファイバーに用いる場合には、本発明の共重合体のほかに、屈折率を高めるあるいは低めるような低分子量有機化合物などを含有する組成物とすることが好ましい。
【実施例】
【0047】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、下記実施例では、2,3,5,6-テトラフルオロフェニルメタクリレート(TFPA)を用いた重合体を参考例として含めて掲載する。
[実施例1]
【0048】
メチルメタクリレート(MMA)、メタクリロイルクロライド、ピリジン、ジエチルエーテル、クロロホルム、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)は、アルドリッチ社から購入した。ペンタフルオロフェノールと2,3,5,6-テトラフルオロフェノールは、シンクェスト社から購入した。MMAは、使用に先立って、真空化で蒸留して、精製を行なった。ジチルエーテルは、水素化カルシウム(CaH)で蒸留し、フリーラジカル開始剤AIBNは、メタノールで再結晶して、精製した。
ペンタフルオロフェノール、2,3,5,6-テトラフルオロフェノール、ピリジンなどは、特に精製せず、購入時の状態で使用した。
【0049】
<2,3,5,6-テトラフルオロフェニルメタクリレート(TFPA)の合成>
50gの2,3,5,6-テトラフルオロフェノール(0.30モル)は、800mlのジエチルエーテルに溶解された。溶液を氷及び水で冷却した後、24gのピリジン(0.30モル)をゆっくりと加え、そして、32gのメタクリロイルクロライド(0.31モル)の400mlエーテル溶液を、上記冷却溶液にゆっくりと滴下した。
ピリジンと塩化水素の反応生成物である塩が、白い沈殿物として生成した。室温で5時間放置したあと、反応を停止し、白い沈殿物を濾別し、エーテルで洗浄した。濾別されたエーテル溶液は、3質量%の塩酸水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液、及び3質量%の炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、エーテル溶液を濾過し、回転式エバポレーターで濃縮した。
無色の液体が得られ、5mmHgで61℃で蒸留され、80%の収率であった。
【0050】
HNMR(CDCl):2.1(s,3H)、5.9(s,1H)、6.5(s,1H)、7.0(m,1H)
13CNMR(CDCl):19,103,130,131,134,141,146,163
19FNMR(CDCl):-140(s,2F)、-154(s,2F)
【0051】
<フェニルメタクリレート(phMA)とペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFPA)の合成>
上記TFPAの合成と同様の方法で、フェニルメタクリレート(phMA)とペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFPA)を準備した。
【0052】
(phMA)
沸点:69℃/1mmHg
HNMR(CDCl):1.9(s,3H)、5.5(s,1H)、6.0(s,1H)、7.2(m,1H)
13CNMR(CDCl):18,122,126,128,129,135,151,166
【0053】
(PFPA)
沸点:56℃/3.0mmHg
HNMR(CDCl):2.1(s,3H)、5.9(s,1H)、6.5(s,1H)、7.0(m,1H)
13CNMR(CDCl):19,103,130,131,134,141,146,163
19FNMR(CDCl):-140(s,2F)、-154(s,2F)
【0054】
<重合>
モノマーに対して1モル%のAIBNを開始剤として用いた。上記で調製したモノマーの混合物は、ガラス重合管に移され、凍結融解サイクルを施されて、真空下で封止された。サーモスタットで60℃に制御して重合を行なった後、ガラス管は開封され、ポリマーを沈殿させるために、内容物を大量のメタノールに注ぎ、激しく攪拌した。
24時間、50℃、真空下で乾燥した後、ポリマー試料をメタノールを使ったクロロホルムから再結晶した。精製したポリマー試料は、真空下で48時間50℃で乾燥した。
【0055】
得られたポリマー試料の、H、13C、19FのNMRスペクトルが、Bruker ACF300スペクトロメーターで測定された。HNMRは300MHz、13CNMRは75MHz、19FNMRは標準としてトリクロロフルオロメタンを用い、周波数282MHzで測定した。
分子量と分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Water510、Waters-Wyatt GPC system)で測定され、1.0ml/分の流量で、溶離剤としてクロロホルムを用いた。分子量の検量線は、スチレン標準を用いて得た。
ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、TA測定器5100システムのDSC2920モデル(TA Instruments社製)を用いて決定し、30~180℃の温度範囲で、10℃/分の走査速度によって測定した。
【0056】
測定は、5~10mgの試料を使い、Tgは、加熱走査の2回目の値を用い、外挿した液/ガラス曲線から寸法許容差の上限値と下限値との間の熱容量遷移の中心点として求めた。
【0057】
測定するポリマーのヘキサフルオロベンゼン溶液をガラス板上に付与し、0.1~0.2mmの膜厚のポリマー膜を作製し、その膜の屈折率を測定した。プリズムカプラー(Metricon、モデル2010)を用いた。測定精度は、±0.0005であった。屈折率の測定波長は、532nm、632nm、839nm、1544nmであった。
【0058】
<結果>
メチルメタクリレート(MMA)とPFPAとの共重合は、塊状重合によって、連鎖移動剤を添加せずに行なった。得られたすべての種類の共重合体はクロロホルムに溶解した。
MMAとフッ素置換アクリレートの共重合は、種々のモノマー仕込み組成比で行なった。表2に、共重合体の組成、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Tgを示す。
【0060】
(屈折率)
メチルメタクリレート(MMA)とPFPAとの共重合は、様々なモノマー仕込み比で行なわれた。モノマーの反応性比を決定するために、ポリマーの重合反応における転化率を10wt%以下に制御した。なお、転化率とは、初期のモノマーを100%としたときに、重合した割合(%)を表す指標である。共重合体の組成は、1H-NHRの測定と、Kelen-Tudos法によって算出して決定した。得られたポリマーの組成、Tg及び屈折率を表3に示し、そのデータを図1(A)(B)にプロットした。
【0062】
PFPAとMMAの共重合におけるモノマー反応性比は、PFPAについてr=1.2、MMAについてr=0.5であった。モノマー反応性比とは、共重合におけるそれぞれのモノマーの反応性を表すものである。例えばモノマー1とモノマー2による共重合を考えると、ある瞬間の成長ラジカル(ラジカル重合反応をし、成長している途中の1個のポリマー鎖であり、その末端にラジカルが存在しているもの)に着目すると、その末端はモノマー1あるいはモノマー2のラジカルである。その末端がモノマー1のラジカルである場合、さらにその末端に連続してモノマー1が反応して付加する時の反応速度定数をk11、モノマー2が反応して付加する時の反応速度定数をk12とすると、r=k11/k12と定義される。成長ラジカルの末端がモノマー2である場合、同様にさらにその末端に連続してモノマー2が付加する時の反応速度定数をk22、モノマー1が反応して付加する時の反応速度定数をk21とすると、r=k22/k21と定義される。rとrの組み合わせからどのような共重合組成となるか理論的に見積もることができる。これらの結果から、これらのモノマーでは、良好な共重合性を示し、ほぼ理想的なランダム共重合体が得られることが示された。
共重合体中のPFPAの組成が0mol%のとき、すなわち、PMMAのホモポリマーのときのTg105℃に比べて、試料21~23のいずれの共重合体もTgが上昇している。特に、図1(B)に示すように、少量のPFPAの導入で、Tgの上昇割合が著しい。
一方で、試料21~23のいずれの共重合体でも、屈折率はPMMAとほぼ同じであることがわかった。
更に、共重合体中のPFPAの組成が100mol%の試料24では、すなわち、PFPAのホモポリマーのときには、Tgは上昇して125℃であったが、機械的強度が低く、脆い材料であった。
【0063】
次に、メチルメタクリレート(MMA)とTFPAとの共重合が、様々なモノマー仕込み比で行なわれた。その結果を表4に示し、データを図2(A)(B)にプロットした。
【0064】
【表3】
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【0065】
TFPAのモノマー反応性比r1.5であり、MMAのモノマー反応性比rは、0.77であり、rは1.1であった。これらの結果から、これらのモノマーでは、良好な共重合性を示し、ほぼ理想的なランダム共重合体が得られることが示された。
共重合体中のTFPAの組成が0mol%のとき、すなわち、PMMAのホモポリマーのときのTg105℃に比べて、試料31~33のいずれの共重合体でもTgが上昇している。特に、図2(B)に示すように、少量のTFPAでのTgの上昇割合が著しく大きい。
一方で、試料31~33のいずれの共重合体でも、屈折率はPMMAとほぼ同じであることがわかった。
【0066】
更に、共重合体中のTFPAの組成が100mol%の試料34では、すなわち、TFPAのホモポリマーのときには、Tgは上昇して135℃であったが、機械的強度が低く、脆い材料であった。
それらの結果から、この共重合体によってTgは上昇するが、PMMAの透明性を維持できることが示された。
【0067】
(吸湿性)
上記試料22(PFPA:MMAの仕込み比=20モル%:80モル%)の共重合体について、30mm×30mm×2mmのサンプルを作製し、温度60℃、湿度60%RHの環境下に置いたときの、吸水量の経時変化を測定した。その結果を図3に示す。
図3に示すように、PMMAに比べて、試料22の共重合体は、経時における吸水量の増加を抑えることができた。
【0068】
(複屈折)
メチルメタクリレート(MMA)とペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFPA)を、MMA/PFPA=90/10,80/20,50/50(wt%/wt%)の比率で調製したモノマー溶液を、それぞれサンプル管に入れた。それぞれに連鎖移動剤としてn-ブチルメルカプタンを0.3wt%と、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネートを0.5wt%入れ、攪拌して均一にした。
得られた溶液をメンブランフィルター(孔径:0.2μm)を通してろ過し、内径18mmφのガラス製の試験管に入れた。試験管を密封した状態で70℃の湯浴中で24時間重合し、続いて90℃の恒温槽中で24時間重合・熱処理した。その後、試験管を割り、ポリマーを取り出した。
【0069】
得られた円柱状のポリマー固体の中心軸に直交する2つの面を研磨し、長さ約10mm、直径約18mmfのポリマーサンプルとした。このサンプルの光弾性複屈折を、複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR-10A-EX)により測定し、光弾性定数を求めた。
【0070】
次に配向複屈折測定のためのポリマーフィルムサンプルを作製した。前述の試験管から取り出したポリマー固体を重量比で4倍の酢酸エチルに浸し、振とう機で振とうし、完全に溶解させた。得られたポリマー溶液を、室温でナイフコーターを用いて水平なガラス板上に展開し、24時間放置して乾燥させた。続いてフィルムをガラス板よりはがし、60℃の減圧乾燥機中で24時間乾燥させ、ほとんどの溶媒を取り除いた。
得られた厚さ約40μmのポリマーフィルムからダンベル上に測定用フィルムを切り出し、テンシロン汎用試験機(株式会社オリエンテック製)を用いて一軸熱延伸を行った。この時、延伸温度、延伸速度を調整し、ポリマー主鎖の配向度が0.03となるようにした。延伸後のフィルム中のポリマー主鎖の配向度を赤外二色法により測定し、配向度が0.03であることを確認した。
なお、赤外二色法による共重合体分子の主鎖やホモポリマーの主鎖の配向度の測定方法は、学術論文(Akihiro Tagaya, Shuichi Iwata, Eriko Kawanami, Hisashi Tsukahara, and Yasuhiro Koike, Jpn. J. Appl. Phys. vol. 40, p. 6117-6123 (2001))などを参照することができる。
延伸により得られたサンプルの配向複屈折を、複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR-10A-EX)により測定した。
【0071】
結果を図4に示す。これより、共重合体におけるPFPAの組成が41.0wt%以下では共重合体の配向複屈折の絶対値はPMMAよりも低減され、PFPAの組成が23.9wt%以下では共重合体の光弾性複屈折性(光弾性定数)の絶対値はPMMAよりも低減されることがわかる。共重合組成比がMMA/PFPA=約80wt%/約20wt%において配向複屈折はゼロとなり、MMA/PFPA=約88wt%/約12wt%において光弾性複屈折性(光弾性定数)はゼロとなることがわかる。
【0072】
[参照例]
共重合体としたときのTgの上昇のメカニズムについて考察するため、フッ素置換していないフェニルメタクリレート(phMA)とMMAとの共重合体を作製し、Tgを測定した。なお、この考察によるメカニズムによって、本発明が限定されることはなく、このメカニズムによらず共重合体のTgが上昇する場合であっても、前記一般式(1)で表される共重合体であれば、本発明に該当する。
【0073】
一般的な推測では、フェニル基は剛直で、PMMA中のメトキシ基に比べて嵩高いために、MMAとフェニルメタクリレート(phMA)との共重合では、PMMAのセグメントの動きを減じることになり、その結果、共重合体のTgが上昇するものと考えられる。
そこで、塊状重合で得たMMAとphMAとの共重合体についてTgを測定し、その結果を図5(A)と図5(B)に示す。
【0074】
共重合反応性比r(phMA)とr(MMA)は、それぞれ1.18と0.65であり、rは0.77であった。これらの結果から、これらのモノマーでは、ランダム共重合体が得られることが示された。
図5(B)に示す結果では、共重合体のTgは、共重合体中のphMAの共重合割合が増加するにつれて、1次直線的に増加していた。この傾向は、上述のフッ素置換の芳香族基を有するメタクリレートモノマーを用いた場合(図1(B)及び図2(B)参照。)とは異なっていた。
この原因は、フッ素置換のフェニル基がフェニルよりも少し嵩高いためであることも影響していると思われる。しかし、より嵩高い2,6-ジフェニルフェニルメタクリレートとMMAとの共重合体では、Tgが1次直線的に増加しないことを鑑みると、本発明の共重合体におけるTgの増大は、フェニル基がフッ素原子に置換されたことにより、このフッ素原子とカルボニル基との幾つかの相互作用が起こり、ポリマーのセグメントの動きが増加したことによるものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1(A)は、実施例において、メチルメタクリレート(MMA)とペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFPA)との共重合体における、PFPA仕込み比を変更したときの共重合体中のPFPAの含有率を示すグラフである。図1(B)は、実施例において、MMAとPFPAとの共重合体における、PFPA仕込み比を変更したときのTgの変化を示すグラフである。
【図2】図2(A)は、実施例において、MMAと2,3,5,6-テトラフルオロフェニルメタクリレート(TFPA)との共重合体における、TFPA仕込み比を変更したときの共重合体中のTFPAの含有率を示すグラフである。図2(B)は、実施例において、MMAとTFPAとの共重合体における、TFPA仕込み比を変更したときのTgの変化を示すグラフである。
【図3】MMAとPFPAとの共重合体、及びPMMAのホモポリマーについて、経時での吸水量の変化を示すグラフである。
【図4】実施例において、MMAとPFPAとの共重合体における、PFPA仕込み比を変更したときの配向複屈折及び光弾性定数を示すグラフである。
【図5】図5(A)は、参照例において、MMAとphMAとの共重合体における、phMA仕込み比を変更したときの共重合体中のphMAの含有率を示すグラフである。図5(B)は、参照例において、MMAとphMAとの共重合体における、phMA比を変更したときのTgの変化を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4