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明細書 :メモリ素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5288468号 (P5288468)
公開番号 特開2010-161272 (P2010-161272A)
登録日 平成25年6月14日(2013.6.14)
発行日 平成25年9月11日(2013.9.11)
公開日 平成22年7月22日(2010.7.22)
発明の名称または考案の名称 メモリ素子
国際特許分類 H01L  21/8246      (2006.01)
H01L  27/105       (2006.01)
H01L  29/82        (2006.01)
H01L  27/10        (2006.01)
H01F  10/22        (2006.01)
C04B  35/40        (2006.01)
FI H01L 27/10 444C
H01L 27/10 447
H01L 29/82 Z
H01L 27/10 451
H01F 10/22
C04B 35/40
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2009-003368 (P2009-003368)
出願日 平成21年1月9日(2009.1.9)
審査請求日 平成22年6月2日(2010.6.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】十倉 好紀
【氏名】徳永 祐介
【氏名】金子 良夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】小田 浩
参考文献・文献 特開2004-179219(JP,A)
特開平05-234753(JP,A)
特開2005-64397(JP,A)
調査した分野 H01L 21/8246
C04B 35/40
H01F 10/22
H01L 27/10
H01L 27/105
H01L 29/82
特許請求の範囲 【請求項1】
AFeO3 型オルソフェライト、ただし、Aは希土類元素もしくは二種類の希土類元素の混合物からなる強誘電性と反強磁性を併せ持つマルチフェロイック固体材料を用いて、外部電場により磁化を誘起させるメモリ素子であって、前記マルチフェロイック固体材料の上下に配置された金属電極に印加する電圧による外部電界によって分極を発生させ、この時に分極と同時に磁化を発生させ、この磁化により前記マルチフェロイック固体材料からなるメモリセルの外部に磁界が発生するとともに、前記外部電界の方向は前記AFeO3 型オルソフェライトのオルソロンビック構造の結晶軸であるc軸[001]方向であり、この時に発生する分極と磁化の方向もc軸[001]方向であることを特徴とするメモリ素子。
【請求項2】
請求項記載のメモリ素子において、前記希土類元素はランタノイド元素であることを特徴とするメモリ素子。
【請求項3】
請求項記載のメモリ素子において、前記ランタノイド元素がEu,Gd,Tb又はDyであることを特徴とするメモリ素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電性と反強磁性を合わせもつマルチフェロイック固体材料に係り、反復的な電界の反転により分極の強度や方向と同時に磁化の強度もしくは磁化の方向をかえることにより、制御された磁場を発生することが可能なナノメートルサイズの新機能メモリ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Ba2 Mg2 Fe1222などのY型フェライト材料は電場印加のもとで、電流や分極の強度や方向を制御できる。したがって、Y型フェライト材料はマルチフェロイック材料として電極間に記憶された情報を電荷情報として蓄積・消去できる従来タイプの超高密度メモリ素子として応用可能である。
本願発明者らは、強誘電性と強磁性とを併せ持つマルチフェロイック固体材料で、Y型フェライト化合物において外部磁場により電気分極を発生することを用いたメモリ素子を既に提案している(下記特許文献1,非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開2007/135817号
【0004】

【非特許文献1】S.Ishiwata et al.,Science Vol.319,No.5870,pp.1643-1646(2008)
【非特許文献2】D.Treves,Journal of Applied Physics,Vol.36,No.3,pp.1033-1039(1965)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここでは、従来のメモリ機能に加えて、メモリ素子自身が磁界発生装置としての機能を有する従来にないメモリ素子を提供する。すなわち、これはメモリ素子に情報を蓄積・消去できるだけでなく、セルが制御可能な磁化を保有することから、その磁化により発生する磁界を制御することが可能となる。このことを利用すれば、従来タイプのメモリ機能に加えて、その蓄積した情報を電線なしに磁界を用いて、一定の空間を伝達し得る新しいタイプのアクティブ型メモリ素子を提供することができる。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みて、新しいタイプのマルチフェロイック材料AFeO3 (A=ランタノイド元素;La,Ce,,,Gd,Tb,Dy,,,)固体材料を用いて、制御された磁場を発生し得るメモリ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕AFeO3 型オルソフェライト(ただし、Aは希土類元素もしくは二種類の希土類元素の混合物)からなる強誘電性と反強磁性を併せ持つマルチフェロイック固体材料を用いて、外部電場により磁化を誘起させるメモリ素子であって、前記マルチフェロイック固体材料の上下に配置された金属電極に印加する電圧による外部電界によって分極を発生させ、この時に分極と同時に磁化を発生させ、この磁化により前記マルチフェロイック固体材料からなるメモリセルの外部に磁界を発生させるとともに、前記外部電界の方向は前記AFeO3 型オルソフェライトのオルソロンビック構造の結晶軸であるc軸[001]方向であり、この時に発生する分極と磁化の方向もc軸[001]方向であることを特徴とする。
【0008】
〕上記〔〕記載のメモリ素子において、前記希土類元素はランタノイド元素であることを特徴とする。
〕上記〔〕記載のメモリ素子において、前記ランタノイド元素がEu,Gd,Tb又はDyであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
電場(電界)で誘起された電荷(分極)はヒステリシスを有することから、メモリ効果を持ち不揮発性メモリ素子となる。素子構造も簡単であることからナノ領域まで微小なサイズのメモリを構成することができる。したがって、超高密度メモリ素子構造の製造が可能となる。DRAMメモリデバイスのようにキャパシター構造を伴う必要がないことから、セルサイズを小さくできる。また、素子の構造が少ない層により製造できることから、その製造プロセスのコストを飛躍的に低減する。また、本発明のメモリ素子は、電流誘起磁界による磁気メモリ素子(MRAM)のように電流消費が大きい場合と異なり電界誘起メモリ素子構造なので、電力消費を大幅に抑えることが可能となる。このように低消費電力、超高集積、低製造コストの新しいマルチフェロイック不揮発性メモリ素子(MFM素子)を提供することができる。
【0010】
さらに、本発明のメモリ素子は、電場(電界)で磁化を誘起できる。誘起された磁化は磁界を発生させる。このことから従来タイプのメモリ素子機能に磁界を発生する新機能が付与されたアクティブ型メモリ素子を提供することができる。この新機能を用いれば、蓄えられた情報を磁界の形で外部空間に放出可能となり、伝達することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかるメモリ素子の基本構成を示す模式図である。
【図2】本発明にかかるメモリ素子の電場誘起分極および磁化発生の確認実験を行うための実験配置図である。
【図3】本発明にかかるメモリセルのGdFeO3 を用いた場合の結晶方位を示す図である。
【図4】本発明にかかるマルチフェロイック固体材料であるGdFeO3 の結晶構造を示す図である。
【図5】本発明にかかるマルチフェロイック固体材料であるGdFeO3 において電場を印加した場合に発生する電気分極を示す図である。
【図6】本発明にかかるマルチフェロイック固体材料であるGdFeO3 において電場を印加した場合に発生する磁化強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のメモリ素子は、AFeO3 型オルソフェライト(ただし、Aは希土類元素もしくは二種類の希土類元素の混合物)からなる強誘電性と反強磁性を併せ持つマルチフェロイック固体材料を用いて、外部電場により磁化を誘起させるメモリ素子であって、前記マルチフェロイック固体材料の上下に配置された金属電極に印加する電圧による外部電界によって分極を発生させ、この時に分極と同時に磁化を発生させ、この磁化により前記マルチフェロイック固体材料からなるメモリセルの外部に磁界を発生させるとともに、前記外部電界の方向は前記AFeO3 型オルソフェライトのオルソロンビック構造の結晶軸であるc軸[001]方向であり、この時に発生する分極と磁化の方向もc軸[001]方向であるように構成した。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
新機能メモリ素子は、マルチフェロイック固体材料からなる。特定の選択されたビット線とワード線との間に電源から配線を介して電圧を印加することにより、マルチフェロイック固体材料に分極を発生させる。電流を流す必要はない。発生した分極はヒステリシス特性を持つことから、メモリ機能を有する。印加した電界は同時に磁化を発生させる。磁化はメモリセル外に分極情報に対応した磁界を発生させることから、電線によらない情報発信源として機能する。すなわち今までにないアクティブ型メモリ素子として機能する。マルチフェロイック材料は、発生した分極に相応する電荷を有するので、その電荷を両端の電極で読み出せばよい。印加する電場強度の符号を反転することにより、保持されていた電荷の強度は変化もしくは反転する。このことにより、データの消去が可能となる。メモリセル間は電気的絶縁材料および非磁性材料が埋め込まれた構造とすればよい。
【実施例】
【0014】
図1は本発明にかかるメモリ素子の基本構成を示す模式図である。
この図において、1はマルチフェロイック固体材料、2,2′はマルチフェロイック固体材料1の上下の金属電極、3はメモリセル、4はビット線、5はワード線である。
メモリ素子におけるデータの書き込みは、特定の選択されたビット線4とワード線5の間に印加する電圧による電界で分極を発生させることにより実現する。発生した電荷は電圧がゼロであってもそのヒステリシス特性から保持される。データの読み出しは、選択されたビット線4とワード線5に挟まれメモリセル3に保持されている電気分極に起因する電圧強度で0もしくは1を判定すればよい。また、データの消去は、そのメモリセル3へ印加する電圧の符号を先に印加した電圧と反転させ、一定の強度を与えればよい。
【実施例】
【0015】
一方、分極発生すると同時に磁化6が発生する。この磁化6は磁界7をメモリセル3の外部に及ぼす。このことからメモリセル3の情報に相応した磁界を発生し得るアクティブ型メモリ素子を提供することができる。
図2は本発明にかかるメモリ素子の電場誘起分極および磁化発生の確認実験を行うための実験配置図、図3はそのメモリセルのマルチフェロイック固体材料としてGdFeO3 を用いた場合の結晶方位を示す図、図4はそのGdFeO3 結晶構造を示す図である。
【実施例】
【0016】
これらの図において、8はメモリ素子へ電圧を印加するための電源、9は印加した電界により発生した分極による電界、10は発生した磁化である。
上下の金属電極2,2′間に印加した電界は分極を発生させる。その分極により電界9が発生する。また、発生した電界9は磁化10を誘起し、メモリセル3の外に磁界7を発生する。発生した分極は上下の金属電極2,2′間に流れる電流量として測定し、同時に発生した磁界7はマルチフェロイック固体材料の近くに置かれたSQUID素子(図示なし)で測定した。電極材料としては銀ペーストを用いたが、その他アルミニウム、金、白金などの金属を用いても問題はない。
【実施例】
【0017】
マルチフェロイック固体材料としてオルソロンビック構造を持つ化合物のうち、GdFeO3 結晶を用いる。その結晶構造を図4に示す。この材料の磁気特性は温度661Kに転移温度を示し、弱強磁性特性を持つ反強磁性材料である(非特許文献2)。このGdFeO3 を用いた場合の結晶方位を図3に示す。外部電界の方向はGdFeO3 のオルソロンビック構造の結晶軸であるc軸[001]方向である。この時に発生する分極と磁化10の方向は同様にc軸[001]方向である。
【実施例】
【0018】
ここでは、マルチフェロイック固体材料としてGdFeO3 を用いたが、本発明に用いるマルチフェロイック固体材料は、AFeO3 型オルソフェライトであり、Aは希土類元素もしくは二種類の希土類元素の混合物からなる。この希土類元素は、ランタノイド元素(原子番号57から71)であり、そのランタノイド元素の中でも特に、Eu,Gd,Tb又はDyが望ましい。
【実施例】
【0019】
図5は本発明にかかるマルチフェロイック固体材料であるGdFeO3 において電場を印加した場合に発生する電気分極を示す図である。
誘起された分極強度は±0.15μC/cm2 程度であった。電場を印加することにより分極が発生する。この分極はヒステリシス特性を持つことから強誘電特性を有していることがわかる。一方この材料はこの温度範囲において弱強磁性を持つ反強磁性体であることからマルチフェロイック材料である。ヒステリシス特性を持つ分極特性を利用してメモリ素子機能を持たせることができる。両電極の電圧をゼロにしても電荷を保持することから情報を保持することが可能となる。また、両電極に発生した電位を読み出せば情報を読むことができる。逆電圧を印加すれば、電荷をマイナスにすることが可能であることからデータを消去できる。
【実施例】
【0020】
図6は本発明にかかるマルチフェロイック固体材料であるGdFeO3 において電場を印加した場合に発生する磁化強度を示す図である。
誘起される磁化強度は±0.2mμB /f.u. 程度であった。電場を印加することにより分極を発生させると同時に磁化を誘起できることが示されている。その磁化強度を変化させることができ、正負を反転することも可能である。ここで示した場合は、誘起された磁化を電場の反転に伴いその符号を反転させることに成功させている。ここでは、印加する電場の符号をプラスからマイナスに変化させたが、プラスからゼロの変化で発生した磁化が変化せずにデータが保持されるのは、誘起された分極がデータを保持するのと同様である。ここに従来型のメモリ機能が実現できると同時に、蓄えられた情報に相応した磁界をメモリセル外部に発生させることが可能となる新機能のアクティブ型メモリセルを提供できることを示した。
【実施例】
【0021】
以上、述べてきたように強誘電性と反強磁性を併せ持つマルチフェロイック固体材料GdFeO3 は、印加した電場により分極強度やその正負を制御できると同時に磁化強度の変化や正負を制御できる新機能のアクティブ型メモリ素子として機能する。
従来にない新機能としてメモリセルの磁化を制御することが可能になったことから、メモリセル内に蓄積された情報に相応した磁界をセル外部に伝播させることを可能とする。この磁界を使って物理的に離れた磁気センサー素子等に情報を伝達することができ、非接触型のセンサーで情報を読み取ることが可能となる。
【実施例】
【0022】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のメモリ素子は、低コストのメモリ素子を提供するだけでなく、メモリ情報に相応した磁界を発生させることができるアクティブ型メモリ素子として利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 マルチフェロイック固体材料
2,2′ 上下の金属電極
3 メモリセル
4 ビット線
5 ワード線
6,10 磁化
7 磁界
8 電源
9 電界
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5