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明細書 :ケイ素粒子層の形成方法およびシリコン膜の形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5299903号 (P5299903)
公開番号 特開2010-168633 (P2010-168633A)
登録日 平成25年6月28日(2013.6.28)
発行日 平成25年9月25日(2013.9.25)
公開日 平成22年8月5日(2010.8.5)
発明の名称または考案の名称 ケイ素粒子層の形成方法およびシリコン膜の形成方法
国際特許分類 C25D  13/02        (2006.01)
C25D  13/22        (2006.01)
FI C25D 13/02 Z
C25D 13/22 301
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2009-013409 (P2009-013409)
出願日 平成21年1月23日(2009.1.23)
審査請求日 平成23年11月1日(2011.11.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】松木 安生
【氏名】下田 達也
【氏名】申 仲▲榮▼
【氏名】川尻 陵
個別代理人の代理人 【識別番号】100080609、【弁理士】、【氏名又は名称】大島 正孝
【識別番号】100122404、【弁理士】、【氏名又は名称】勝又 秀夫
【識別番号】100109287、【弁理士】、【氏名又は名称】白石 泰三
審査官 【審査官】井上 由美子
参考文献・文献 特開平09-246236(JP,A)
特表2006-501370(JP,A)
特表2005-503984(JP,A)
F.Hossein-Babaei, B.Raissi-Dehkordi,Fabrication of poly-Si thick films by electrophoretic deposition,ELECTRONICS LETTERS,英国,2001年 8月16日,vol.37/No.17,1090-1092
調査した分野 C25D 9/00
C25D 13/00-21/00
H01L 31/04
H01L 21/208
H01L 29/786
H01L 21/336
C30B 33/00
C30B 19/00
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ケイ素粒子を含有する液状組成物に、カソードおよびアノードからなる一対の電極を浸漬し、該一対の電極間に電界を発生させてカソード上に前記ケイ素粒子を堆積するケイ素粒子層の形成方法であって、
前記ケイ素粒子が、四ハロゲン化ケイ素と、ナトリウムナフタレニド、ナトリウムビフェニリド、ナトリウム-4,4’-ジ-t-ブチルビフェニリドおよびナトリウム-8-(N,N-ジメチルアミノ)ナフタレニドよりなる群から選択される金属系還元剤とを、金属系還元剤に含まれる金属原子と四ハロゲン化ケイ素に含まれるケイ素原子とのモル比(M/Si)が1~10となる割合で反応させて得られる反応生成物であることを特徴とする、前記方法
【請求項2】
前記ケイ素粒子を含有する液状組成物がエーテル溶媒をさらに含有するものである、請求項1に記載のケイ素粒子層の形成方法。
【請求項3】
上記一対の電極間に発生させる電界の強度が、5×10~5×10V/mである、請求項1または2に記載のケイ素粒子層の形成方法。
【請求項4】
前記ケイ素粒子の平均粒径が、0.1~100nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のケイ素粒子層の形成方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法により形成されたケイ素粒子層を有するカソードを加熱することによってカソード上のケイ素粒子層をシリコン膜に変換することを特徴とする、シリコン膜の形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素粒子層の形成方法およびシリコン膜の形成方法に関する。
さらに詳しくは、シリコン前駆体成分が、その原料に由来するアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を不純物として含んでいる場合であっても、精製を要せずに、高純度のシリコン膜または高性能のケイ素合金膜に変換することができるケイ素粒子層の形成方法、および該ケイ素粒子層を用いて行うシリコン膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アモルファスシリコン膜やポリシリコン膜の形成方法としては、モノシランガスやジシランガスの熱CVD(ChemicalVapor Deposition)法やプラズマCVD、光CVDなどが利用されており、一般的に、ポリシリコン膜の形成には熱CVD(非特許文献1)が、またアモルファスシリコン膜の形成にはプラズマCVD(非特許文献2)が、それぞれ広く用いられており、薄膜トランジスターを有する液晶表示素子、太陽電池などの製造に利用されている。
これらのCVD法によるシリコン膜の形成は、装置面において、複雑で高価であり、且つ多大のエネルギーを要する装置が必要であるとともに、材料面において、毒性、反応性の高いガス状の水素化ケイ素を用いるため取り扱いに難点があるとの欠点を有する。
近年、液状の水素化ケイ素化合物を基板上に塗付して塗膜を形成し、次いでこの塗膜を加熱する方法により、シリコン膜を形成する方法が提案された(塗布法、特許文献1)。この技術は、シリコン膜の形成工程を著しく容易とし、コストを大幅に削減しうる優れた技術であるが、水素化ケイ素化合物は空気中で不安定であり、極めて安全であるとはいえず、また、原料に起因する不純物を厳密に除去してから使用に供する必要があり、工程管理上の手間およびコストが軽微であるとはいえないことから、さらに安全、簡易なシリコン膜の形成方法の開発が望まれている。
【0003】
ところで近年、電界中で基板(電極)上に微粒子を堆積する技術が進展を見せている。例えば非特許文献3には、原子間力顕微鏡を用いて、固体状イオン導電体RbAg上に電気化学的に銀を堆積し、微細パターンを形成する技術が開示されれている。また、非特許文献4には、電気力顕微鏡のプローブを用いてSi/SiO/Siエレクトレット上に微粒子を自己組織化させる技術が開示されている。これらの技術は、微細材料を階層的に集積して高次の材料ないし素子を迅速に形成するための新たな技術として期待されている。
しかしながら、ケイ素を主成分として含有する合金膜またはシリコン膜の形成について、かかる技術を適用ないし応用して工業的に適用可能な方法を開示した例は未だ知られていない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第WO00/58409号パンフレット
【0005】

【非特許文献1】J. Vac. Sci. Technology., 14巻1082頁(1977年)
【非特許文献2】Solid StateCom.,17巻、1193頁(1975年)
【非特許文献3】Appl. Phis. Lett., 85, p3552(2004)
【非特許文献4】Adv. Mater. 18, p1147(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケイ素を主成分として含有する合金膜またはシリコン膜の形成に有用なケイ素粒子層の形成方法、および高純度のシリコン膜を形成するための簡易な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第一に、
ケイ素粒子を含有する液状組成物に、カソードおよびアノードからなる一対の電極を浸漬し、該一対の電極間に電界を発生させてカソード上に前記ケイ素粒子を堆積するケイ素粒子層の形成方法であって、
前記ケイ素粒子が、四ハロゲン化ケイ素と、ナトリウムナフタレニド、ナトリウムビフェニリド、ナトリウム-4,4’-ジ-t-ブチルビフェニリドおよびナトリウム-8-(N,N-ジメチルアミノ)ナフタレニドよりなる群から選択される金属系還元剤とを、金属系還元剤に含まれる金属原子と四ハロゲン化ケイ素に含まれるケイ素原子とのモル比(M/Si)が1~10となる割合で反応させて得られる反応生成物である、前記方法によって達成される。
本発明の上記目的および利点は、第二に、
上記の方法により形成されたケイ素粒子層を有するカソードを加熱することによってカソード上のケイ素粒子層をシリコン膜に変換するシリコン膜の形成方法によって達成される。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリコン前駆体成分が、その原料に由来するアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を不純物として含んでいる場合であっても、精製を要せずに、高純度のシリコン膜または高性能のケイ素合金膜に変換することができるケイ素粒子層の形成方法、および該ケイ素粒子層を用いて行うシリコン膜の形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】合成例で得られたケイ素粒子溶液に含まれるケイ素粒子の、光散乱光度計による粒径分布のチャート(Na/Si=4/1)。
【図2】合成例で得られたケイ素粒子溶液に含まれるケイ素粒子の、光散乱光度計による粒径分布のチャート(Na/Si=5/1)。
【図3】実施例で得られたカソードのSEM像。
【図4】実施例で得られたカソードのエネルギー分散型X線分析チャート。
【図5】実施例で得られたアノードのSEM像。
【図6】実施例で得られたアノードのエネルギー分散型X線分析チャート。
【図7】未処理ITOのSEM像。
【図8】未処理ITOのエネルギー分散型X線分析チャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ケイ素粒子を含有する液状組成物>
本発明に用いられるケイ素粒子は、ケイ素-ケイ素結合を有し、クラスター状をなすケイ素粒子であって、好ましくはハロゲン原子と結合しているケイ素原子を有するものである。ハロゲン原子と結合しているケイ素原子を有するケイ素粒子は安定であるほか、後述する溶媒に溶解または分散し、液状組成物として安定または準安定に存在することができる利点を有する。なお本明細書において、溶媒とは、化学的に厳密な意味における溶媒のほか、分散媒も包含する概念である。
かかるケイ素粒子は、一般に組成式SiX(ただし、Xはハロゲン原子であり、aは0を超え4未満の数である。)で表される。上記Xのハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを挙げることができ、これらのうち塩素原子が好ましい。上記aは、好ましくは0.1~2である。
上記ケイ素粒子の粒径は、任意の値とすることができるが、光散乱法により測定した平均粒径として、好ましくは0.1~100nmであり、より好ましくは0.5~50nmである。
ケイ素粒子を含有する液状組成物に用いる溶媒としては、エーテル溶媒を好ましく使用することができ、その具体例として、例えばテトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタンなどを挙げることができる。
液状組成物中のケイ素粒子の含有割合としては、好ましくは0.1~50g/Lであり、より好ましくは0.5~20g/Lである。

【0011】
上記の如きケイ素粒子は、適当な溶媒中で、四ハロゲン化ケイ素と、特定の金属系還元剤とを反応させることにより得られる。
この反応に使用される溶媒としては、ケイ素粒子を含有する液状組成物の溶媒として上記したものと同様の溶媒を使用することができる。
上記四ハロゲン化ケイ素は、上記SiXにおける所望のXの種類に応じて選択することができ、例えば四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四ヨウ化ケイ素などを挙げることができ、これらのうちの四塩化ケイ素が好ましい。
上記金属系還元剤は、ナトリウムナフタレニド、ナトリウムビフェニリド、ナトリウム-4,4’-ジ-t-ブチルビフェニリド、ナトリウム-8-(N,N-ジメチルアミノ)ナフタレニドよりなる群から選択される。特にナトリウムナフタレニドが好ましい。

【0012】
上記四ハロゲン化ケイ素と金属系還元剤との使用割合は、金属系還元剤に含まれる金属原子と四ハロゲン化ケイ素に含まれるケイ素原子とのモル比(M/Si)が、好ましくは1~10となる割合であり、より好ましくは3~8となる割合である。
上記反応において、四ハロゲン化ケイ素と金属系還元剤との使用割合を適当に調整することにより、得られるケイ素粒子を所望の粒径とすることができる。すなわち、上記M/Si比を大きくするほど得られるケイ素粒子の粒径を大きくすることができる。このとき、同時に上記組成式SiXにおけるaの価が小さくなることとなる。
上記反応は、適宜の条件で行うことができ、例えば、好ましくは-78~100℃、より好ましくは-20~50℃の反応温度において、好ましくは1~120分、より好ましくは10~60分の反応時間で行うことができる。

【0013】
このようにしてハロゲン原子と結合しているケイ素原子を有するケイ素粒子を含有する反応混合物が得られる。この反応混合物からケイ素粒子を単離して上記溶媒に溶解または分散することにより、ケイ素粒子を含有する液状組成物として本発明の方法に供することができ、あるいは上記のようにして得られる反応混合物を、必要に応じて適当なフィルターで濾過したうえで、さらなる精製操作を行わずに、ケイ素粒子を含有する液晶組成物として本発明の方法に供することができる。
本発明においては、上記のうち後者の方法を採ることが、本発明の有利な効果を最大限に発揮できることとなる。すなわち、従来知られている例えば塗布法によるシリコン膜形成方法におけるシリコン前駆体は、原料に由来する不純物であるアルカリ金属塩ないしアルカリ土類金属塩を厳密に除去しないと、これら不純物が形成されるケイ素粒子膜に取り込まれ、これを用いて形成されるシリコン膜またはケイ素合金膜の性状を損なうこととなるため、この精製および分析がプロセスの煩雑性およびコストアップの原因となっていた。しかし、本発明の方法においては、ケイ素粒子を含有する溶液中にアルカリ金属塩ないしアルカリ土類金属塩が含まれていたとしても、後述のように基板(カソード)上にケイ素粒子のみを選択的に堆積することができるので、ケイ素粒子の精製およびその分析に労力およびコストをかける必要がない。
本発明の方法によれば、ケイ素粒子を含有する液状組成物が、ケイ素粒子に対して例えば0.1重量%程度、さらには0.5重量%程度のアルカリ金属塩ないしアルカリ土類金属塩を含有していたとしても、高純度のシリコン膜またはケイ素合金膜を形成することができる。

【0014】
<ケイ素粒子層の形成方法>
本発明のケイ素粒子層の形成方法は、上記の如きケイ素粒子を含有する液状組成物中にカソードおよびアノードからなる一対の電極を浸漬し、該一対の電極間に電界を発生させてカソード上に前記ケイ素粒子を堆積する方法である。
上記電極としては、例えば基板の片面表面に透明電極を形成した電極、炭素電極、アルミニウム電極、ステンレス電極などを用いることができる。
上記基板の片面表面に透明電極を形成した電極の基板としては、例えばガラス基板、プラスチック基板などを;透明電極としては、例えば酸化スズ、酸化インジウム-酸化スズ(In-SnO)からなるITO膜、酸化亜鉛からなるZnO膜などを、それぞれ挙げることができる。
電極として基板の片面表面に透明電極を形成した電極を用いる場合、透明電極を形成した面が対向するように配置して使用することが好ましい。

【0015】
上記一対の電極間に発生させる電界の強度は、好ましくは5×10~5×10V/mであり、より好ましくは1×10~1×10V/mである。電極間の距離および両電極間に印加する電圧は、上記好ましい強度の電界を実現するように、採用する堆積反応のスケールに応じて適宜に設定することができる。
電界発生の際の温度は、好ましくは-20~100℃であり、より好ましくは0~50℃であり、電界の発生時間は好ましくは1~60分であり、より好ましくは5~30分である。
このように両電極間に電界を発生させることにより、溶液中からカソード上に上記ケイ素粒子のみが選択的に堆積し、一方、アノード上には原料に由来する不純物であるアルカリ金属塩ないしアルカリ土類金属塩が堆積することとなる。電気的に中性であるケイ素粒子と、アルカリ金属塩ないしアルカリ土類金属塩とが、上記のようにそれぞれカソード上およびアノード上に選択的に堆積することは、驚くべきことである。
上記堆積工程における電界の強度および電界の発生時間により、形成されるケイ素粒子層の膜さを任意に調整することができるが、この層の厚さは、例えば50nm~1μmとすることができる。

【0016】
上記のようにして形成されたケイ素粒子層を有するカソードは、次いで該カソードをそのまま加熱することによってカソード上のケイ素粒子層をシリコン膜に変換することができ、あるいは上記ケイ素粒子層に適当な添加剤をドープした後に該カソードを加熱することによって、カソード上のケイ素粒子層をn型シリコン膜、p型シリコン膜またはその他のケイ素合金膜に変換することができる。n型シリコン膜を形成するための添加剤としては、例えば周期表の第3B族元素またはこれを含む化合物を;
p型シリコン膜を形成するための添加剤としては、例えば周期表の第5B族元素(リン、ホウ素、砒素等の元素)またはこれを含む物質を;
その他のケイ素合金膜を形成するための添加剤としては、例えばコバルト、アルミニウム、銅などを、それぞれ挙げることができる。
上記ケイ素粒子層に上記の如き添加剤をドープするには、例えばスパッタリング法、溶液塗布法などによることができる。
以下、上記の如くして形成されたカソード上のケイ素粒子層を無ドープのシリコン膜に変換する方法について説明するが、下記の方法に上記の如き添加剤を応用することにより、所望の性質を有するシリコン膜またはケイ素合金膜を得ることができることについては、当業者に自明であろう。

【0017】
<シリコン膜の形成方法>
本発明のシリコン膜の形成方法は、上記の誤得して形成されたケイ素粒子層を有するカソードを加熱することによってカソード上のケイ素粒子をシリコン膜に変換する方法である。
この加熱工程は、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で行うことが好ましい。上記不活性雰囲気としては、例えば希ガス(好ましくはヘリウムまたはアルゴン)、窒素などの不活性ガスにより実現することができる。上記還元性雰囲気は、例えば上記の不活性ガスと水素などの還元性ガスとの混合物により実現することができる。
加熱工程の際の雰囲気の圧力は問わない。
加熱工程は、一段階または多段階で行うことができるが、一段階加熱または二段階加熱が好ましい。加熱工程を一段階で行う場合には、好ましくは350~1,000℃、より好ましくは400~800℃において、好ましくは30~480分、より好ましくは60~360分の加熱が行われる。加熱工程を二段階で行う場合には、一段目では好ましくは100~300℃、より好ましくは120~250℃において、好ましくは10~180分、より好ましくは30~120分の加熱が行われ、二段目では好ましくは350~1,000℃、より好ましくは400~800℃において、好ましくは30~360分、より好ましくは60~240分の加熱が行われる。

【0018】
上記の如くしてカソード上にシリコン膜を形成することができる。
本発明の方法により形成されたシリコン膜は、後述の実施例から明らかなように、前駆体たるケイ素粒子を含有する溶液が原料に由来するアルカリ金属塩ないしアルカリ土類金属塩を含んでいる場合であっても実質的にアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子、およびハロゲン原子を含有しないものであり、高い品質を示すものである。
上述の方法により形成されたシリコン膜または上述の方法に自明の変更を加えて形成されたケイ素合金膜は、例えば太陽電池、導電性シリコン膜、各種合金被膜、炭素基板のシリコンカーバイド層などの用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0019】
合成例
四塩化ケイ素0.85gを1,2-ジメトキシエタン60mLに溶解して四塩化ケイ素溶液とし、これを約20mLずつに3分割した。
上記とは別に、1,2-ジメトキシエタン60mL中にナトリウム0.46gおよびナフタレン1.92gを投入して一晩撹拌して濃緑色のナトリウムナフタレニド溶液とし、これを約15mL、約20mLおよび約25mLに3分割した。各分割分は、四塩化ケイ素とナトリウムナフタレニドとの反応におけるNa/Si比が、3/1、4/1および5/1(モル比。以下同じ。)である三つの反応にそれぞれ供した。
窒素で満たしたグローブバッグ中で、上記の各四塩化ケイ素溶液を撹拌しつつ、上記3分割したナトリウムナフタレニド溶液をそれぞれ加えた。いずれの場合も、直ちに沈殿が生じた。その後さらに30分間撹拌を継続した後、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターで濾過することにより、表面が塩素原子で封止されたケイ素粒子を含有する淡黄色(Na/Si=3/1)、黄色(Na/Si=4/1)および濃褐色(Na/Si=5/1)の溶液をそれぞれ得た。
上記で得た溶液のうち、Na/Si=4/1およびNa/Si=5/1の溶液に含まれるケイ素粒子の平均粒径を光散乱光度計により測定したところ、それぞれ1.0nmおよび33.8nmであった。これら光散乱光度計による粒径分布のチャートを、図1および図2にそれぞれ示した。
上記のうち、Na/Si=5/1のケイ素粒子溶液につき、上記の濾過以外の精製を行わずに、以下のシリコン膜の形成に供した。
【実施例】
【0020】
実施例
片面表面にITOを有するガラス基板2枚を準備し、これらを、各ITO面が対向するように3.1mmの間隙を介して配置して、堆積用セルを作製した。
窒素で満たしたグローブバッグ中、20℃において、上記で合成したNa/Si=5/1のケイ素粒子溶液中に上記堆積用セルを浸漬して直流10Vの電圧を印加して強度3.23×10V/mの電界を発生させ、ケイ素粒子の堆積を10分間行った。
10分後、カソードとした方のITO面は赤褐色となり、一方アノードとした方のITO面は無色透明のままであった。
これら電界処理後の電極それぞれにつき、窒素中で、200℃にて1時間、次いで600℃にて2時間加熱した。これにより、カソードとした方のITO面は黄褐色となり、一方アノードとした方のITO面については外観上の変化は認められなかった。
上記加熱後の電極(カソードおよびアノード)ならびに未処理のITOについて、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDX)により原子組成の分析を行った。その結果を表1に、SEM像およびEDXのチャートを図3~8に、それぞれ示した。
【実施例】
【0021】
【表1】
JP0005299903B2_000002t.gif
【実施例】
【0022】
上記結果を見ると、カソード上のSi/In原子比は、未処理のITOにおけるSi/In比に比べて顕著に増加しており、また、カソード上にはNa原子およびCl原子が観察されなかった。これらのことから上記の電界の発生により、カソード上にはケイ素粒子のみが堆積したことが示された。
一方、アノード上のSi/In原子比は、未処理ITOのSi/In比に比べて増加しておらず、その反面、相当量のNa原子およびCl原子がみられる。
すなわち、本発明の方法によると、堆積に不純物を含むケイ素粒子溶液を用いた場合であっても、電極間に電界を発生させることにより、ケイ素粒子と不純物であるNaClとの選別がなされ、カソード上にはケイ素粒子のみが選択的に堆積し、これにより高純度のシリコン膜が容易に得られることが分かった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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