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明細書 :フラーレン誘導体および当該誘導体を含む光電変換材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5072044号 (P5072044)
公開番号 特開2010-270018 (P2010-270018A)
登録日 平成24年8月31日(2012.8.31)
発行日 平成24年11月14日(2012.11.14)
公開日 平成22年12月2日(2010.12.2)
発明の名称または考案の名称 フラーレン誘導体および当該誘導体を含む光電変換材料
国際特許分類 C07F  15/06        (2006.01)
H01M  14/00        (2006.01)
FI C07F 15/06 CSP
H01M 14/00 P
請求項の数または発明の数 9
全頁数 14
出願番号 特願2009-121429 (P2009-121429)
出願日 平成21年5月19日(2009.5.19)
審査請求日 平成22年2月26日(2010.2.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】中村 栄一
【氏名】松尾 豊
【氏名】丸山 優史
個別代理人の代理人 【識別番号】100092783、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100095360、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 英二
【識別番号】100114409、【弁理士】、【氏名又は名称】古橋 伸茂
【識別番号】100104282、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 康仁
審査官 【審査官】神野 将志
参考文献・文献 国際公開第2007/129768(WO,A1)
Marcella BONCHIO et al.,Advanced Synthesis & Catalysis,2004年,346(6),pp.648-654
Yutaka MATSUO et al.,Journal of the American Chemical Society,2009年,131,pp.12643-12649
調査した分野 C07F 15/06
H01M 14/00
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(2)に記載の化合物。
【化1】
JP0005072044B2_000009t.gif

(式中、Rはそれぞれ独立して、水素がF,Cl,BrまたはIで置換されてもよい炭化水素基であり、
Mはそれぞれ独立して周期表第9族の金属原子であり;
Wはそれぞれ独立してSまたはSeであり;
Aはπ電子共役系の環を2~12有する電子供与基であって、少なくとも二重結合または三重結合を有し、ヘテロ原子を2~12有する電子供与基である。)
【請求項2】
MはCoである、請求項に記載の化合物。
【請求項3】
Aに含まれる炭素間二重結合と炭素間三重結合の合計が1~6であり、SまたはSeを2~12有する請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Aに含まれる環が炭素間二重結合を1~4有する平面型の単環である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
前記単環がSまたはSeを含む複素環である、請求項に記載の化合物。
【請求項6】
Aは、置換基を有していてもよい平面型の縮合環を1~6含む、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項7】
前記縮合環が3~16環式の縮合環である、請求項に記載の化合物。
【請求項8】
Aが式(A1)~(A3)のいずれかで表される構造の電子供与性基である、請求項1または2に記載の化合物。
【化2】
JP0005072044B2_000010t.gif

(式(A1)~(A3)中、Yはそれぞれ独立してSまたはSeである。また、式(A2および(A3)中、Rはそれぞれ独立して置換基を有してもよいC~C30炭化水素基であり、nはそれぞれ独立して0~2の整数である)
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の化合物を含む光電変換材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体に関する。また、本発明は、当該フラーレン誘導体を用いた光電材料に関し、たとえば、電子受容体のフラーレン誘導体と、電子供与体の化合物とを含む光電変換素子に用いることができる材料に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素原子が球状またはラグビーボール状に配置して形成される炭素クラスター(以下、「フラーレン」ともいう)の合成法が確立されて以来、フラーレンに関する研究が精力的に展開されている。その結果、数多くのフラーレン誘導体が合成されてきた。
【0003】
一般的に、フラーレン誘導体は広く拡張したπ電子系を有する。そしてフラーレン誘導体はHOMO-LUMOギャップが比較的小さく(1.5~2.0eV程度)、かつ、幅広い波長域での光吸収特性と高効率なSinglet-to-Triplet項間交差を経由した発光特性とを有することが特徴的である。また、フラーレンは炭素原子のみで構成されていながら、多段階の可逆な酸化還元反応(6電子還元)を示す。このような特性から、フラーレン誘導体の応用の可能性は大変幅広く、たとえば、FET、有機EL、太陽電池、触媒等の利用が考えられている。
【0004】
フラーレン金属錯体の光吸収特性を利用した光電変換素子に関しては、フラーレンの高い電子アクセプター能の性質を利用した人工光合成構築の研究が報告されている。具体的には、フェロセン(電子ドナー)-ポルフィリン(光吸収中心)-フラーレン(電子アクセプター)を用いて化学結合を介して連結した分子を金電極上に作製した単分子膜の湿式太陽電池[Eur. J. Org. Chem. 2445. (1999)(非特許文献1)]や、フラーレン金属錯体とポルフィリンを連結した分子をITO電極上に固定した湿式太陽電池[J. Am. Chem. Soc. 127, 2380, (2005)](非特許文献2)]などが報告されている。
【0005】
しかしながら、これらの太陽電池において、所望の特性を充分に発揮できないという問題点があった。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Eur. J. Org. Chem. 2445. (1999)
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc. 127, 2380, (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の状況の下、たとえば、広い領域の光を吸収できる化合物が求められている。また、たとえば、光電流発生の量子効率が極めて高い化合物、および、変換効率の高い光電変換素子が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、金属原子を含有するフラーレン誘導体とπ電子共役系の環を2以上有する化合物とを反応させることによって、新規のフラーレン誘導体を合成した。また、本発明者等は、新たなフラーレン誘導体が光電変換素子に好適に用いることができることを見出した。
本発明は以下のようなフラーレン誘導体、および、光学素子や光電変換素子に適応できる光電材料を提供する。
【0009】
[1] 下記一般式(1)に記載の化合物。
【化1】
JP0005072044B2_000002t.gif

(式中、Fはそれぞれ独立してフラーレンまたはフラーレン誘導体であり;
Mはそれぞれ独立してCo、RhまたはIrであり;
Wはそれぞれ独立してSまたはSeであり;
Aは4価の電子供与基である。)
[2] Fはそれぞれ独立して、フラーレンC60、または、置換基を有してもよい炭化水素基が2~10付加したフラーレンC60誘導体である、[1]に記載の化合物。
[3] 下記一般式(2)に記載の化合物。
【化2】
JP0005072044B2_000003t.gif

(式中、Rはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭化水素基であり、
Mはそれぞれ独立して周期表第9族の金属原子であり;
Wはそれぞれ独立してSまたはSeであり;
Aはπ電子共役系の環を2~12有する電子供与基であって、少なくとも二重結合または三重結合を有し、ヘテロ原子を2~12有する電子供与基である。)
[4] MはCoである、[1]~[3]のいずれかに記載の化合物。
[5] Aに含まれる炭素間二重結合と炭素間三重結合の合計が1~6であり、SまたはSeを2~12有する[1]~[4]に記載の化合物。
[6] Aに含まれる環が炭素間二重結合を1~4有する平面型の単環である、[1]~[4]に記載の化合物。
[7] 前記単環がSまたはSeを含む複素環である、[6]に記載の化合物。
[8] Aは、置換基を有していてもよい平面型の縮合環を1~6含む、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
[9] 前記縮合環が3~16環式の縮合環である、[8]に記載の化合物。
[10] Aはヘテロ原子を含む[5]~[9]のいずれかに記載の化合物。
[11] Aが式(A1)~(A3)のいずれかで表される構造の電子供与性基である、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
【化3】
JP0005072044B2_000004t.gif

(式(A1)~(A3)中、Yはそれぞれ独立してSまたはSeである。また、式(A2および(A3)中、Rはそれぞれ独立して置換基を有してもよいC~C30炭化水素基であり、nはそれぞれ独立して0~2の整数である)
[12] [1]~[11]のいずれかに記載の化合物を含む光電変換材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、広い領域の光、とくに長波長領域の光の吸収率が高いフラーレン誘導体を提供できる。また、本発明の好ましい態様によれば、長波長領域の光において光電流発生の量子効率が高い光電材料および光電変換素子が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1で得られた化合物の結晶充填の様子を示す図
【図2】実施例1で得られた化合物の光の吸収スペクトルおよび酸化還元特性の測定結果を示す図の様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のフラーレン誘導体等について詳細に説明する。

【0013】
1.本発明のフラーレン誘導体
本発明は、上記式(1)で表される化合物(以下、「化合物1」という)を提供する。具体的には、本発明のフラーレン誘導体は
フラーレンまたはフラーレン誘導体(F)
Co、RhまたはIr(M)
SまたはSe(W)
4価の電子供与基(A)
SまたはSe(W)
Co、RhまたはIr(M)
フラーレンまたはフラーレン誘導体(F)
が順に結合して構成された化合物、すなわち、フラーレン誘導体部分を2つ有するフラーレン誘導体である。

【0014】
1.1 フラーレンまたはフラーレン誘導体(F)
本明細書中、「フラーレン」とは、炭素原子が球状またはラグビーボール状に配置して形成される炭素クラスターの総称であり(現代化学2000年6月号46頁,Chemical Reviews, 98, 2527(1998)参照)、例えば、フラーレンC60(いわゆるバックミンスター・フラーレン)、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC94、フラーレンC96等が挙げられる。

【0015】
フラーレンまたはフラーレン誘導体(F)における「フラーレン誘導体」とは、フラーレン骨格に、水素または有機基が付加した化合物である。
フラーレン誘導体としては、たとえば、下記式(F1)
Cm(R (F1)
[式中、Cmは炭素数mのフラーレンを示し、pは1~20の整数を示し、Rはそれぞれ独立して水素または有機基を示す]
で表される化合物が挙げられる。

【0016】
mはたとえば、60,70,76,78,82,84,90,94または96であるが、これらの中でも60が最も好ましい。
pは特に制限されないが、2~10が好ましく、2~5が特に好ましい。

【0017】
は水素または有機基であるが、有機基としては、たとえば、置換基を有してもよいC~C30炭化水素基、置換基を有してもよいC~C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC~C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)が好ましい。

【0018】
本明細書において、「置換基を有してもよい」とは、たとえば、有機基に含まれる水素がF、Cl、BrまたはI等のハロゲン原子に置換されてもよいという意味である。

【0019】
本明細書において、「C~C30炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C~C30炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。「C~C30炭化水素基」には、C~C30アルキル基、C~C30アルケニル基、C~C30アルキニル基、C~C30アルキルジエニル基、C~C18アリール基、C~C30アルキルアリール基、C~C30アリールアルキル基、C~C30シクロアルキル基、C~C30シクロアルケニル基、(C~C10シクロアルキル)C~C10アルキル基などが含まれる。

【0020】
本明細書において、「C~C30アルキル基」は、C~C10アルキル基であることが好ましく、C~Cアルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。

【0021】
本明細書において、「C~C30アルケニル基」は、C~C10アルケニル基であることが好ましく、C~Cアルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチルアリル、2-ブテニル等を挙げることができる。

【0022】
本明細書において、「C2~C30アルキニル基」は、C~C10アルキニル基であることが好ましく、C~Cアルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。

【0023】
本明細書において、「C~C30アルキルジエニル基」は、C~C10アルキルジエニル基であることが好ましく、C~Cアルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3-ブタジエニル等を挙げることができる。

【0024】
本明細書において、「C~C18アリール基」は、C~C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。

【0025】
本明細書において、「C~C30アルキルアリール基」は、C~C12アルキルアリール基であることが好ましい。アルキルアリール基の例としては、制限するわけではないが、o-トリル、m-トリル、p-トリル、2,3-キシリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、o-クメニル、m-クメニル、p-クメニル、メシチル等を挙げることができる。

【0026】
本明細書において、「C~C30アリールアルキル基」は、C~C12アリールアルキル基であることが好ましい。アリールアルキル基の例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、2,2-ジフェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル、5-フェニルペンチル等を挙げることができる。

【0027】
本明細書において、「C~C30シクロアルキル基」は、C~C10シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。

【0028】
本明細書において、「C~C30シクロアルケニル基」は、C~C10シクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。

【0029】
本明細書において、「C~C30アルコキシ基」は、C~C10アルコキシ基であることが好ましく、C~Cアルコキシ基であることが更に好ましい。アルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。

【0030】
本明細書において、「C~C30アリールオキシ基」は、C~C10アリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等を挙げることができる。

【0031】
本明細書において、「アルキルチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)」及び「アルキルスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C30アルキル基を示す。)」において、Y及びYは、C~C10アルキル基であることが好ましく、C~Cアルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。

【0032】
本明細書において、「アリールチオ基(-SY、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)」及び「アリールスルホニル基(-SO、式中、Yは置換基を有してもよいC~C18アリール基を示す。)」において、Y及びYは、C~C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。

【0033】
本明細書において、「芳香族基」の例としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等がある。「芳香族基」が有してもよい置換基の例としては、制限するわけではないが、C~C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C~C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C~C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個~4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。

【0034】
化合物1を構成する、上記式(F1)で表される化合物において、下記式(F2)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【化4】
JP0005072044B2_000005t.gif

[(F2)式中のRは(F1)式中のRと同じである]
また、下記式(F2)で表される化合物において、(M)Co、RhまたはIrとの結合部位は、有機基Rに囲まれた炭素の5員環の部分であることが好ましい。

【0035】
式(1)に示すとおり、フラーレンまたはフラーレン誘導体(F)はCo、RhまたはIr(M)と結合する。

【0036】
1.2 Co、RhまたはIr(M)
(M)はCo、RhまたはIrである。これらの中でも(M)はCoであることが好ましい。
式(1)に示すとおり、(M)は(F)と2つの(W)に結合する。

【0037】
1.3 SまたはSe(W)
(W)はSまたはSeである。これらの中でも(W)はSであることが好ましい。
式(1)に示すとおり、各(W)は(M)と(A)に結合する。

【0038】
1.4 4価の電子供与基(A)
(A)は4価の電子供与基であるが、π電子共役系の環を2~12有する電子供与基であって、少なくとも二重結合または三重結合を有し、ヘテロ原子を2~12有する有機基であることが好ましい。

【0039】
(A)に含まれる炭素間二重結合と炭素間三重結合の合計が1~6であることが好ましい。また、炭素間二重結合と炭素間三重結合の一部または全部は環を構成する一部であることが好ましい。
(A)に含まれる環は縮合環であっても単環であってもよい。
(A)に含まれる環が単環の場合、ヘテロ原子が環を構成する一部であることが好ましい。
(A)に含まれる環が縮合環の場合、縮合環は芳香環であることが好ましく、ナフタレン環またはアントラセン環であることがさらに好ましい。当該縮合環において、ヘテロ原子は、縮合環の環を構成しない部分にあることが好ましい。たとえば、当該縮合環は、ナフタレン環やアントラセン環の置換基の中にヘテロ原子が含まれている構造を有することが好ましい。

【0040】
(A)に含まれるヘテロ原子はSまたはSeであることが好ましく、Sであることが特に好ましい。

【0041】
(A)は(A1)~(A3)で表される基であることが特に好ましい。

【0042】
式(1)に示すとおり、(F)は4価の電子供与基であり、(A)は4つの(W)に結合する。

【0043】
2.本発明のフラーレン誘導体の合成方法
本発明のフラーレン誘導体(化合物1)の合成方法は特に限定されないが、たとえば、以下の工程を経て合成することができる。

【0044】
まず、THF等の有機溶媒に、(F)の構造を有するフラーレン誘導体とKH等の強塩基とを混合し、当該混合液に、たとえばCo(CO)とIとを混合したもの、[IrCl(CO)または[RhCl(CO)などを加えることで、フラーレン誘導体にCo、Rh、Irなどが付加した金属含有フラーレン誘導体を合成する。
トルエンやp-キシレン等の有機溶媒中で110℃などの高温下で、得られた金属含有フラーレン誘導体に、脱離基、(W)、(A)、(W)、脱離基の順に配列された化合物を反応させることによって、化合物1を合成できる。なお、脱離基としては、たとえば、カルボニルやチオカルボニル基等が挙げられる。

【0045】
3.本発明のフラーレン誘導体の性質
本発明のフラーレン誘導体(化合物1)は、フラーレンまたはフラーレン誘導体(F)、Co、RhまたはIr(M)、SまたはSe(W)および4価の電子供与基(A)が式1に示すとおりに配列した化合物である。
化合物1は、(F)と(M)が電子受容体として、(A)が電子供与体として機能するから、電子受容性と電子供与性の2つの性質を有する。したがって、化合物1は、複数の電子が関与する可逆的な酸化還元反応が可能であり、合計6電子の供与と受容が可能である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれらに制限されるものではない。
【実施例】
【0047】
[実施例1] [C{C60(4-BuC}(SC)]の合成
下記スキーム1に示すように、C60(4-BuCH(300mg,0.216mmol)とKH(過剰量)とTHF(2mL)の混合懸濁液を60℃で30分加熱した。その上澄みを、別の反応容器内でCo(CO)(0.25mg,0.73mmol)を溶解したTHF(1.5mL)に(I)(0.15g,0.59mmol)を加えて室温で30分反応して得られた懸濁液に加え、60℃で15分加熱した。得られた赤色の反応液をトルエン(5mL)で希釈し、シリカゲルショートカラムで濾過した。濾液をMeOH(本明細書中、Meはメチル、Buはブチル、Prはプロピルを表す。)によって再沈殿し、赤色の固形物を得た。当該固形物はHPLC(高速液体クロマトグラフィ)(Buckyprep,Nacalai Tesque;溶離液:トルエン/PrOH=5/5)で精製し、204mg(0.136mmol)の赤色のフラーレン誘導体a1[Co{C60(4-BuC}(CO)]を得た(収率63%)。
同様にして、C60(4-BuCH(300mg)を用いて合成および精製を行い、120mg(0.083mmol)の赤色のフラーレン誘導体a2[Co{C60(4-BuC}(CO)]を得た(収率38%)。
【実施例】
【0048】
得られた金属含有フラーレン誘導体a1(10mg,6.7μmol)およびビス(カルボニルヂチオ)テトラチアフルバレン(5.1mg,13μmol)を溶解したp-キシレン(2mL)を140℃で4時間加熱した。得られた黄色の反応液をトルエン(5mL)で希釈しシリカパッドで濾過した。濾液をMeOHによって再沈殿し、黄緑色の固形物を得た。当該固形物はHPLC(高速液体クロマトグラフィ)(Cosmosil Buckyprep;溶離液:トルエン/PrOH=8/2)で精製し、6.3mg(2.0μmol)の暗緑色のフラーレン誘導体b([Co{C60(4-BuC}(SC)])を得た(収率59%)。
【実施例】
【0049】
【化5】
JP0005072044B2_000006t.gif
【実施例】
【0050】
得られたフラーレン誘導体bのNMR、紫外可視近赤外分光,元素分析による分析データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, C6D6) d: 0.93 (t, J = 7.5 Hz, 15H, CH3), 1.29 (m, 10 H, CH2), 1.54 (m, 10H, CH2), 2.51 (t, J = 7.5 Hz, 10H, CH2), 7.10 (d, J = 8.1 Hz, 10H, Ar) , 8.05 (d, J = 8.0 Hz, 10H, Ar); 13C NMR (125 MHz, C6D6/CS2) d: 14.5 (5C, CH3), 22.9 (5C, CH2), 34.0 (5C, CH2), 35.7 (5C, CH2), 58.1 (5C, C60(sp3)), 99.1 (5C, C60(Cp)), 120.0 (2C, sp2), 128.7, 129.8, 137.2, 142.8, 144.1, 144.4, 147.8, 148.7, 149.0, 151.6, 164.9 (4C, sp2); UV-vis-NIR (solution in CH2Cl2) λmax (ε): 1100 (3.1×104), 613 (4.5×103); Anal. Calcd for C226H130S8Co2: C, 84.08; H, 4.08. Found: C, 84.30; H, 4.07.
【実施例】
【0051】
得られたフラーレン誘導体bをX線結晶構造解析したところ、図1(a)の図を得た。
また、得られたフラーレン誘導体bの長軸方向のファンデルワールス半径は2.28nmであった。結晶充填の様子を示す図1(b)から明らかなように、薄板状の構造はフラーレンとテトラチアフルバレン(TTF)層を含有し、フラーレン部分は分子間相互作用によって同じ層に密集している。各層の距離は1.94nmであった。
【実施例】
【0052】
[比較例1]
スキーム2に示すように、実施例1の合成の過程で合成された中間体である金属含有フラーレン誘導体a1から、フラーレン誘導体c1を合成した。
金属含有フラーレン誘導体a1(20mg,13μmol)と硫黄単体(4.3mg,0.13mmol)とアセチレンジカルボン酸ジメチル(4.2μL,1.3mmol)を溶解したトルエン(5.0mL)を110℃で2日間加熱した。得られた緑色の反応液をシリカパッドで濾過した。濾液をMeOHによって再沈殿し、緑色の固形物を得た。当該固形物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン)で精製し、13.4mg(8.1μmol)の緑色のフラーレン誘導体c1[Co{C60(4-BuC}(S)(COMe)]を得た(収率61%)。
【化6】
JP0005072044B2_000007t.gif
【実施例】
【0053】
[比較例2]
スキーム3に示すように、実施例1の合成の過程で合成された中間体である金属含有フラーレン誘導体a1から、フラーレン誘導体c2を合成した。
金属含有フラーレン誘導体a1(20mg,13μmol)と4,5-ジシアノ-1,3-ジチオール-2-オン(22.4mg,0.133mmol)を溶解したp-キシレン(5.0mL)を140℃で10時間加熱した。得られた緑色の反応液をトルエン(5mL)で希釈しシリカパッドで濾過した。濾液をMeOHによって再沈殿し、緑色の固形物を得た。当該固形物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/ヘキサン=2/1)で精製し、15.7mg(9.9μmol)の緑色のフラーレン誘導体c2[Co{C60(4-BuC}(S)(CN)]を得た(収率74%)。
【化7】
JP0005072044B2_000008t.gif
【実施例】
【0054】
[光の吸収スペクトルの測定]
フラーレン誘導体bについて、光の吸収スペクトルと測定したところ、図2の(a)に示すとおりであった。また、フラーレン誘導体c2について、光の吸収スペクトルと測定したところ、図2の(b)に示すとおりであった。
図2に示すとおり、フラーレン誘導体bの吸収スペクトルの中心は波長が1100nm(1.12eV)であった。これに対し、フラーレン誘導体c2の吸収スペクトルの中心は波長が680nm(1.82eV)であった。
【実施例】
【0055】
[電気化学測定]
フラーレン誘導体bについて、サイクリックボルタングラムによって酸化還元特性を測定したところ、図2の(c)及び(d)に示すとおり、2段階の可逆な酸化と3段階の可逆な還元が観測された。
【実施例】
【0056】
[3次非線形感受率測定]
フラーレン誘導体bについて,石英ガラス上に薄膜を形成し、Maker’s fringe methodによって3次非線形感受率測定を行なったところ、3300nmの入射光に対して9.28×10-12esuという低分子としては大きな値が観測された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のフラーレン誘導体は有機電気デバイス、分子機能デバイス等に用いることができる。本発明の活用法として、例えば、太陽電池、光スイッチング装置、センサなどの各種の光電変換装置を挙げることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
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