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明細書 :光電変換素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5361612号 (P5361612)
公開番号 特開2011-045826 (P2011-045826A)
登録日 平成25年9月13日(2013.9.13)
発行日 平成25年12月4日(2013.12.4)
公開日 平成23年3月10日(2011.3.10)
発明の名称または考案の名称 光電変換素子
国際特許分類 H01M  14/00        (2006.01)
H01L  31/04        (2006.01)
FI H01M 14/00 P
H01L 31/04 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2009-195870 (P2009-195870)
出願日 平成21年8月26日(2009.8.26)
審査請求日 平成22年8月19日(2010.8.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】坂井 伸行
【氏名】立間 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100093285、【弁理士】、【氏名又は名称】久保山 隆
審査官 【審査官】濱田 聖司
参考文献・文献 M.Valden,"Onset of Catalytic Activity of Gold Clusters on Titania with the Appearance of Nonmetallic Properties",Science,Vol.281, No.5383 (1998),p.1647-1650
立間徹,「ナノ構造界面に基づく光電気化学的エネルギー変換システムの構築」,日本化学会第89春季年会(2009) 講演予稿集I,2009年 3月13日,第757頁
Yang Tian,"Mechanisms and Applications of Plasmon-Induced Charge Separation at TiO2 Films Loaded with Gold Nanoparticles",Journal of American Chemical Society,2005, Vol.127, No.20,p.7632-7637
Yuichi Negishi,"Kinetic Stabilization of Growing Gold Clusters by Passivation with Thiolates",Journal of Physical Chemistry B,2006, Vol.110, No.25,p.12218-12221
Yuichi Negishi,"Glutathione-Protected Gold Clusters Revisited: Bridging the Gap between Gold(I)-Thiolate Complexes and Thiolate-Protected Gold Nanocrystals",Journal of American Chemical Society,2005, Vol.127, No.14,p.5261-5270
M.Turner,"Selective oxidation with dioxygen by gold nanoparticle catalysts derived from 55-atom clusters",Nature,Vol.454 (2008),p.981-983
J.Kim,"Size-Controlled Interparticle Charge Transfer between TiO2 and Quantized Capacitors",Journal of the American Chemical Society,Vol.129 (2007),p.7706-7707
調査した分野 H01M
H01L
H01G
B01J
特許請求の範囲 【請求項1】
電子供与体を含有する電解質を介して配置されているアノードとカソードとを備えた光電変換素子であって、
前記アノードが、金属酸化物半導体の表面に、15~33量体の金クラスターが担持されてなり、可視光応答性を有する金クラスター修飾金属酸化物半導体を含有する層が導電性電極上に形成されてなる光電極であることを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記金属酸化物半導体が、酸化チタンである請求項1記載の光電変換素子
【請求項3】
前記金属酸化物半導体の形状が、粒状体又は膜状体である請求項1または2に記載の光電変換素子
【請求項4】
前記金クラスターが、25量体の金クラスターである請求項1から3のいずれか1項に記載の光電変換素子
【請求項5】
前記金クラスターが、保護剤で被覆されてなる請求項1から4のいずれか1項に記載の光電変換素子
【請求項6】
前記保護剤が、グルタチオンである請求項5記載の光電変換素子
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金クラスター修飾金属酸化物半導体とこれを用いた光電極並びに該光電極を備えた光電変換素子に関する。更に詳しくは、可視光応答性を有する金クラスター修飾金属酸化物半導体およびこれを用いた光電極、該光電極を備えた光電変換効率が高い光電変換素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン(TiO2)や酸化亜鉛(ZnO)などの金属酸化物半導体は、光触媒や光電変換材料として知られており、そのバンドギャップ以上のエネルギーを有する光が照射されると価電子帯の電子が伝導帯に励起され、伝導帯、価電子帯にそれぞれ電子、ホールを生成する。生成した電子やホールを利用して、光触媒や光電変換材料としてすでに応用されているが、その多くは紫外光にしか応答しない。
【0003】
これらの金属酸化物半導体に可視光応答性を付与するために、酸化チタンに金属イオンをドープしたり、格子酸素を窒素、炭素、硫黄などの他元素で置換する方法が提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【0004】
また、可視光応答性の光電変換素子として色素増感型太陽電池がある(例えば、特許文献5、6参照)。色素増感型太陽電池は、可視光応答性の色素を酸化チタンなどの酸化物半導体に吸着させた電極を利用した光電変換素子であり、太陽光により色素内で励起された光電子が酸化物半導体に注入され、この光電子が酸化物半導体を移動し、さらに、負荷を持つ外部回路を介して対極に到達することにより電気エネルギーを発生させることができる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2001-87654号公報
【特許文献2】特開2005-169216号公報
【特許文献3】特開2005-177548号公報
【特許文献4】特開2009-66594号公報
【特許文献5】特許第2664194号公報
【特許文献6】特開2009-129574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の酸化チタンに金属イオンをドープしたり、格子酸素を他元素で置換する方法では雰囲気制御した炉で高温焼成を必要とするなど、装置的に大がかりなものとなる。
また、色素増感型太陽電池では、使用される色素の耐久性(耐候性、耐熱性等)が十分でない場合が多く、また、酸化チタンの光励起に伴って分解されたり、その合成にコストがかかるなど解決すべき課題を残すものである。
【0007】
かかる状況下、本発明の目的は、可視光応答性を有し、光触媒や光電変換素子に利用できる金属酸化物半導体及び該金属酸化物半導体、該金属酸化物半導体を用いた光電極、並びに該光電極を備えた光電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 電子供与体を含有する電解質を介して配置されているアノードとカソードとを備えた光電変換素子であって、
前記アノードが、金属酸化物半導体の表面に、15~33量体の金クラスターが担持されてなり、可視光応答性を有する金クラスター修飾金属酸化物半導体を含有する層が導電性電極上に形成されてなる光電極である光電変換素子。
<2> 前記金属酸化物半導体が、酸化チタンである前記<1>記載の光電変換素子
<3> 前記金属酸化物半導体の形状が、粒状体又は膜状体である前記<1>または
<2>に記載の光電変換素子
<4> 前記金クラスターが、25量体の金クラスターである前記<から<3>のいずれかに記載の光電変換素子
<5> 前記金クラスターが、保護剤で被覆されてなる前記<1>から<4>のいずれ
かに記載の光電変換素子
<6> 前記保護剤が、グルタチオンである前記<5>記載の光電変換素子

【発明の効果】
【0010】
本発明の金クラスター修飾金属酸化物半導体は、可視光応答性を有し、優れた光電気化学反応性を示す。そのため、該金クラスター修飾金属酸化物半導体を含有してなる粒状体または膜状体は、光触媒や光電変換素子に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光電極の概略断面図である。
【図2】本発明の光電変換素子の概略断面図である。
【図3】本発明の光電変換素子(実施例4)の電流-電圧曲線を示す図である。
【図4】本発明の光電変換素子(実施例4)の光電流作用スペクトルと、Au25クラスター水溶液の吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき、詳細に説明する。
本発明は、金属酸化物半導体の表面に、8~250量体の金クラスターが担持されてなり、可視光応答性を有することを特徴とする金クラスター修飾金属酸化物半導体に係るものである。

【0013】
金属酸化物半導体を構成する金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ストロンチウム、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、あるいはチタン酸ストロンチウムなどこれらの金属の混合酸化物または酸化物混合物が挙げられる。この中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが好ましく、酸化チタンが特に好ましい。また、これらの金属酸化物は、導電性を変化させるなどの観点から、他の元素をドープしたり、酸素欠損、金属欠損があってもよい。

【0014】
本発明の金クラスター修飾金属酸化物半導体の特徴は、8~250量体の金クラスターを、金属酸化物半導体に担持したことにある。

【0015】
金クラスターとは、金原子の集合体を意味し、通常、3~500量体程度の金原子の集合体を指す。なお、以下、x量体(xは正の整数)の金クラスターをAuxクラスターと記載する場合がある。
本発明において、可視光応答性の観点から、適用可能な金クラスターは、8~250量体であり、15~33量体であることが好適である。特に、金クラスターが、実質的に25量体のみであると、可視光に対する応答性が特に高くなるため特に好適である。
このような原子数を有する金クラスターは、例えば、特開2007-45791号公報に開示されているような従来公知の製造方法によって製造することができる。

【0016】
金クラスターの励起準位は金属酸化物半導体の伝導帯よりもエネルギー的に高い位置にあり、光照射により金クラスターから金属酸化物半導体に電子注入されることで電荷分離が起こり、金クラスター上で酸化反応、金属酸化物半導体上で還元反応を起こすことができる。なお、本発明において、金属酸化物半導体における「可視光応答性」とは、可視光を照射することによって光起電力を生じ、光電気化学反応(光触媒反応を含む。)が進行することを意味する。
また、本発明に係る金属酸化物半導体は、可視光に対してのみならず可視光以外の紫外線や赤外線に対して光電気化学反応性を示してもよい。

【0017】
金属酸化物半導体への金クラスターの担持量(吸着量)は、特に制限されるものではなく、金属酸化物半導体での還元反応を阻害しない範囲内で、使用用途に応じて適宜決定される。具体的には、酸化物半導体表面に金クラスターがモノレイヤーとなる程度の量が担持されることが望ましい。

【0018】
前記金クラスターは、保護剤で被覆されていることが望ましい。
ここで、保護剤とは、金クラスターの周辺に化学的あるいは物理的に結合、吸着する化合物であって、金クラスターの凝集を抑制し、安定化させるものをいう。
金クラスターが保護剤で被覆されていることによって、金クラスター同士の凝集が抑制されるため、金クラスターの分散性が高まり、金属酸化物半導体に吸着させたのちも凝集が起こりづらい。
また、保護剤で被覆された金クラスターは、適当な分離手段と組み合わせることで選択的に原子数を制御した金クラスターを得ることができるという利点がある。

【0019】
保護剤は、物理吸着系保護剤と化学吸着系保護剤に大別される。
物理吸着系保護剤は、ファンデルワールス力や静電相互作用により、金クラスターを被覆することができる化合物であり、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン塩酸塩、クエン酸などが挙げられる。
一方、化学吸着系保護剤は、金クラスターの金原子と化学結合することができる化合物である。具体的にはメルカプト基(-SH基)を有するチオール化合物が該当し、金クラスターと硫黄原子を介して強固な化学結合を形成することができるため好適である。
このようなチオール化合物として、分子量が100~1000程度のチオール化合物が好適であり、具体的には、フェニルエタンチオール、メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト安息香酸などのメルカプト有機酸、(N,N-ジメチルアミノ)エタンチオール塩酸塩などのメルカプトアミン、メルカプトプロピオニルグリシンやグルタチオン(γ-Glu-Cys-Gly)などのメルカプト基を有するアミノ酸やペプチドなどが挙げられる。これらのチオール化合物は、水溶性とするために、これをアルカリ金属塩や塩酸塩などの塩として使用することもできる。この中でも、メルカプト基を有するペプチドが好適であり、グルタチオンが特に好適である。

【0020】
本発明の金クラスター修飾金属酸化物半導体は、それ自体が様々な形状を有していてよく、粒状体、膜状体などが挙げられる。
なお、本発明において、粒状体とは、粉体やその凝集体を意味し、その粒径や密度に特に制限はないが、通常、0.01~500μm程度である。
粒状体は、そのまま使用してもよいが、適当な温度で焼結して焼結体として使用したり、適当な溶媒に分散することによって膜状体の原料としても好適に使用される。
また、膜状体とは、薄膜や、その積層体であり、その厚みは特に限定されないが、基板に成膜した場合の好適な膜厚は、0.01~500μm程度である。

【0021】
なお、これらの粒状体や膜状体には、光触媒性や光応答性をさらに増強することや、別の機能性を付与するために他の成分を含有させてもよい。他成分として、シリカ、アルミナ等のその他酸化物、あるいはその他の無機物や、白金などの金属微粒子、樹脂等の有機物を、バインダー成分、機能性成分として用いることができる。

【0022】
本発明の金クラスター修飾金属酸化物半導体の製造方法について説明する。
本発明で用いる金クラスターは、公知の方法に従って製造され、特に制限されない。好適な一例として、塩化金酸水溶液に必要に応じて上記保護剤を加え、氷浴下で水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元する方法が挙げられる。保護剤の使用量は、特に限定されないが、金クラスター1モルに対して、通常、0.5~10モル程度であり、好適には1~5モルである。
金クラスター修飾金属酸化物半導体の製造方法は、特に限定されないが、製造した金クラスターを分散した溶液に粒状体や膜状体など適当な形状の金属酸化物半導体を浸漬する方法や金属酸化物半導体に金クラスターを含む溶液を滴下する方法が挙げられる。
また、金クラスター前駆体溶液に金属酸化物半導体を浸漬し、その後、金クラスターを析出させてもよい。
なお、金属酸化物半導体と金クラスターとの結合性を向上させる観点から、金属酸化物半導体に金クラスターを担持した後に加熱処理を行ってもよい。加熱処理を行う条件(温度、雰囲気)は、金クラスターが凝集しない条件で適宜決定される。

【0023】
本発明の金クラスター修飾金属酸化物半導体は、光電変換素子用電極、エレクトロクロミックディスプレイ用基材、光触媒反応を用いて大気中の汚染物質を分解できる汚染物質分解基板等として用いることができる。

【0024】
特に本発明の金クラスター修飾金属酸化物半導体は、光電変換素子用の光電極に好適に使用することができる。
図1に示すように本発明の光電極1は、基板1a上に導電性電極1b、金クラスター修飾金属酸化物半導体層1cが順次形成された構造を有する。特に、基板1aおよび導電性電極1bが共に透明であるものが好適であり、そのような構成では、基板1a側および金クラスター修飾金属酸化物半導体層1c側のいずれから照射された光より、電流を取り出すことができる。なお、本発明において、「透明」とは、照射された光のうち、少なくとも可視光の一部が透過することを意味する。
一方で、金クラスター修飾金属酸化物半導体層1c側から照射された光のみを使用する場合には、基板1aおよび導電性電極1bが共に透明である必要はなく、透明でないものも使用できる。

【0025】
基板1aは、照射された光、特に可視光の透過性が高い材料であることが好ましく、例えば、ガラス、アクリル、ポリエステル、ポリカーボネートなどが挙げられ、耐久性などの観点から、ガラス基板が好適に使用される。また、導電性電極1bとの密着性を高めるために、基板1aは、表面にアンダーコート層を有しているものを用いてもよい。
基板1aの厚さは、特に制限はないが、通常、0.1~10mmであり、必要な強度や光透過性などを考慮して適宜決定される。

【0026】
導電性電極1bは、導電性酸化物または金属薄膜からなる、導電性を有する電極であり、光を基板1a側から照射できるという点から、透明であることが好ましい。
導電性酸化物としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)などが挙げられる。この中でも、透明で導電性が高い点から、ITOを使用することが好ましい。
金属薄膜としては、金、銀、白金、銅やこれらの合金などからなる薄膜が挙げられ、蒸着法やスパッタリング法によって製造される。
導電性電極1bの厚さは、充分な導電性を有する限り特に制限はないが、その好適な厚さは、金属酸化物からなる場合は、20~1000nmであり、金属薄膜の場合は、5~400nmである。なお、導電性電極1bは、通常、1種の原料からなる単層であるが、2種以上の原料からなる層や、複数の層であってもよい。

【0027】
金クラスター修飾金属酸化物半導体層1cは、本発明の金クラスター修飾金属酸化物半導体からなり、その好適な膜厚は、50~5000nm程度であるが、導電性材料を混ぜ込むことで、より厚くすることもできる。
光電極として使用する場合における金属酸化物半導体への金クラスターの担持量は、多いほど可視光吸収性が向上する傾向にあるが、多くなりすぎると金属酸化物半導体への電荷移動が困難となる場合がある。そのため、好適な金クラスターの担持量は、膜の1nm2に対して金クラスターが1~100個程度である。

【0028】
本発明の光電極の形成方法の好適な一例としては、導電性電極1bが設けられた基板1a上に金属酸化物半導体の分散液を、スピンコート法、ディップコート法、スキージ法などの従来公知の方法で成膜し、大気雰囲気下、120~800℃で熱処理し、得られた金属酸化物半導体からなる薄膜に対して、金クラスターを含む溶液を滴下したり、該薄膜を形成した基板を、金クラスターを含む溶液に浸漬すればよい。

【0029】
以下、本発明の光電極をアノードとして備えた光電変換素子(以下、本発明の光電変換素子)について、図面を参照して説明する。なお、ここで示す構成は、本発明の光電極をアノードとして用いた光電変換素子の一実施形態である。本発明の光電変換素子は該形態に限ることなく、あらゆる光電変換素子に適用できる。

【0030】
本発明の光電変換素子の概略断面図を図2に示す。
本発明に係る光電変換素子10は、光電極であるアノード1Aと、カソード2とが電解質3を介して対向配置された構成であり、いわゆるサンドウィッチ型セルである。なお、アノード1Aは、上述した光電極1と同一である。
光電変換素子10の平面形状は、特に限定されず、正方形、長方形、ひし形、正六角形等隙間なく並べられる形状とすることが好ましい。大きさとしては、たとえば前記平面形状が正方形である場合、1辺が5mm~50cm程度である。

【0031】
本発明の光電変換素子10では、基板1aおよび導電性電極1bが使用され、アノード1A側およびカソード2側のいずれから光が照射され、アノード1Aにおける金クラスター修飾金属酸化物半導体層1cで光が吸収され、光エネルギーから電気エネルギーへの変換が行われ、アノード1Aとカソード2との間に電位差が生じ、発生した電子が外部に取り出され光電変換素子としての効果が生じる。

【0032】
以下、本発明に係る光電変換素子10の各構成について説明する。

【0033】
アノード1Aは、本発明の光電極からなり、その詳細は上述と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。なお、本実施形態では、基板1aおよび導電性電極1bが共に透明のものを使用したが、カソード2側(金クラスター修飾金属酸化物半導体層1c側)から光照射する場合には、それぞれ非透明なものを使用してもよい。

【0034】
カソード2は、例えば、特開2001-35551号公報などで開示された従来の光電変換素子のカソードを使用できる。具体的には、基板表面に導電層が形成されたものが好適に使用され、導電層としては、導電性酸化物、金属薄膜、カーボンや金属担持カーボン、導電性高分子が挙げられる。

【0035】
電解質3は、支持塩と電子供与体を含有する電解液であり、その形態は液体のみならずゲル状であってもよい。
電解質3の溶媒としては、例えば、水、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ジメトキシエタンや、それらの混合物などが挙げられる。

【0036】
支持塩としては、電解液に十分な導電性を与えるものであれば特に限定されないが、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化リン酸リチウム、硫酸ナトリウムなどが好適に使用される。電解質3中の支持塩の濃度は、0.1M~飽和濃度程度である。

【0037】
電子供与体としては、ヒドロキノン、カテコール、フェノール、トリエタノールアミン、フェロセン、ヨウ化リチウム、硫酸鉄(II)、フェロシアン化カリウムが好適に使用され、酸化還元電位が適当であり、また酸化体が安定であることからヒドロキノンが特に好適である。電解質3中の電子供与体の濃度は、10mM~飽和濃度であることが好ましい。電子供与体の濃度が10mM以上であれば、充分な光電変換効率が得られ易い。

【0038】
なお、電解質3には、上記支持塩、電子供与体以外のその他の化合物として、架橋剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。

【0039】
本発明の光電変換素子は、公知の方法に従って製造される。具体的には、アノード1Aと、カソード2とが所定の間隔を保つと共に、対向するように配置する。そのアノード1Aとカソード2との間に、電解質3を注入し、全体を封止する。これにより図2に表した光電変換素子10を得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
金クラスターは、既報(J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 5261; Small 2007, 3, 835)に記載の方法に準じて合成した。
0.25mmolのテトラクロロ金酸をメタノール50mLに溶かし、1mmolのグルタチオンを加え、氷冷した。これに氷冷した0.2M NaBH4水溶液12.5mLを激しく撹拌しながら一気に加え、1時間反応させた。得られた沈殿を遠心分離(3000G、5分)により取り出し、メタノールで洗浄(3回)した。沈殿を室温で真空乾燥させ、こげ茶色のグルタチオンに保護されたAuクラスター粉末を得た。
【実施例】
【0042】
Auクラスターのサイズ分離はポリアクリルアミドゲル電気泳動法(J. Phys. Chem. B 2006, 110, 12218)により行った。アクリルアミドおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドを93:7で混合した40重量%モノマー水溶液12mLに1.5M Tris-HClバッファー(pH8.8)4mLを加え、重合開始剤(10%過硫酸アンモニウム)100μLおよび重合促進剤(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)10μLを添加した水溶液をスペーサー1mmの2枚のガラス板間に流し込んだあと、純水を静かに重層し、数時間放置することにより分離ゲルを作製した。重層した純水を捨て、濃縮ゲル用モノマー水溶液で共洗いした後、濃縮ゲル用モノマー水溶液を流し込み、純水を静かに重層し、数時間放置することにより分離ゲルと濃縮ゲルを重層した電気泳動ゲルを作製した。
濃縮ゲル用モノマー水溶液として、アクリルアミドおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドを94:6で混合した6重量%モノマー水溶液5mLに、1.5M Tris-HClバッファー(pH6.8)2.5mLおよび純水2.5mLを加え、重合開始剤(10%過硫酸アンモニウム)50μLおよび重合促進剤(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)10μLを添加したものを用いた。
Auクラスター8mgをグリセリン-水(5:95in vol)混合溶媒2mLに溶解させた試料を作製した電気泳動ゲルに静かに重層し、192mMグリシンおよび25mMトリスヒドロキシメチルアミン水溶液中で150Vの電圧を9時間かけて電気泳動を行った。各サイズに分離したAuクラスターを含むポリアクリルアミドゲルをそれぞれ純水に12h浸漬し、Auクラスターを溶出させた。孔径0.2μmのフィルターを通すことにより、ゲルを除去した、15量体、18量体、22量体、25量体、29量体、及び33量体のAuクラスター水溶液を得た。
【実施例】
【0043】
また、25量体の金クラスター(Au25クラスター)は、既報(Small 2007, 3, 835)に記載の方法に準じて以下の方法でも作製した。
上述のAuクラスター粉末4.9mgを純水7mLに溶解し、グルタチオン130.7mgを加え、55℃で空気をバブリングしながら水溶液を撹拌して、Auクラスターのエッチングを行った。6時間後、得られた赤茶色の25量体の金クラスター(Au25クラスター)水溶液を孔径0.2μmのフィルターを通して回収した。余剰なグルタチオンを除去するため、Au25クラスター水溶液を分画分子量8000の透析膜に入れ、12時間透析を行った。透析中に生じた沈殿を孔径0.2μmのフィルターにより除去した。
【実施例】
【0044】
金属酸化物半導体として酸化チタンを使用した光電極は以下の手順で作製した。酸化チタン(一次粒径20nm、石原産業株式会社、品番:STS-21)を純水で3倍に希釈したスラリーをITOガラス基板にスピンコート(1500rpm、10sec)し、450℃で熱処理することにより、厚み約400nmの酸化チタン薄膜をITO基板上に成膜して作製し、これに15量体のAuクラスター水溶液をキャストし、吸着させた。24時間暗所で静置したのち、残ったキャスト液を純水で洗い流したのち、乾燥させることにより、Au15クラスター修飾酸化チタン電極である実施例1の光電極を得た。
なお、Auクラスター水溶液のpHが1から6において、酸化チタン電極に良好に吸着した。
また、上記光電極の製法において、15量体のAuクラスター水溶液に代わり、18量体、22量体、25量体、29量体、または33量体のAuクラスター水溶液を使用することにより、それぞれの原子数のAuクラスターで修飾された酸化チタン電極である実施例2(Au18クラスター)、実施例3(Au22クラスター)、実施例4(Au25クラスター)、実施例5(Au29クラスター)及び実施例6(Au33クラスター)の光電極を得た。
また、Auクラスターが担持されていない酸化チタン電極からなる比較例1の光電極を作製した。さらにAuクラスターに代わり、実施例4の光電極を大気中500℃で熱処理することで、直径30~100nm(金原子数十万個に相当)程度の金粒子が析出した酸化チタン電極からなる比較例2の光電極を得た。
【実施例】
【0045】
光電気化学測定は図2に示すようなサンドウィッチ型セルを構築して行った。作製した光電極(アノード)をAuスパッタ(厚み50nm)したITO電極(カソード)と厚み50μmのスペーサー(ハイミランフィルム、三井ポリデュポンケミカル株式会社)を挟んで向かい合わせた。電極サイズは、5mm×5mmとした。電解液は、0.1Mのヒドロキノンおよび0.1Mの過塩素酸テトラブチルアンモニウムを含むアセトニトリルをN2バブリングにより脱酸素を行った後、対極に開けた穴から注入し、封止した。光源には、100Wのキセノンランプ(LAX-102、朝日分光株式会社)を用い、光学フィルター(SCF-25C-48Y、シグマ光機株式会社)を用いて白色光照射または単色光照射を行った。
【実施例】
【0046】
図3に本発明の光電変換素子(実施例4)における波長460nm、光強度2.6mW/cm2の単色光照射下での電流-電圧曲線を示す。21.5μA/cm2の短絡光電流、0.41Vの開放端光電圧が得られ、0.078%のエネルギー変換効率が得られた。
【実施例】
【0047】
また、図4に示すように本発明の光電変換素子(実施例4)を使用した場合における入射光子-電子変換効率(IPCE)の照射光波長依存性(光電流作用スペクトル)は、Au25クラスター水溶液の吸収スペクトルとよく一致した。また、他の実施例の光電変換素子も同様の傾向を示したことから、本発明の光電変換素子において、Auクラスターの光励起により光電流が得られていることが示された。
【実施例】
【0048】
表1に実施例1~6の光電変換素子の光電変換特性の測定結果を示す。光照射条件は、波長460nmの単色光で光強度は2.6mW/cm2である。
いずれの実施例においても光電流が確認され、25量体の実施例4が最も大きな値を示した。
【実施例】
【0049】
【表1】
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【実施例】
【0050】
表2に本発明の光電変換素子(実施例4)及び比較例1、2の光電変換素子の光電変換特性の結果を示す。光照射条件は、波長460~800nm、光強度75mW/cm2の白色光である。
実施例4の光電変換素子は、金クラスターを担持していない光電極を備えた比較例1の光電変換素子及び金クラスターに代わり、直径30~100nm(金原子数十万個に相当)程度の金粒子を担持した光電極を備えた比較例2の光電変換素子と比較して、明らかに大きな光電流の値を示した。
【実施例】
【0051】
【表2】
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【実施例】
【0052】
実施例7:光触媒活性の評価
電解液において、0.1Mのヒドロキノンの代わりに0.1Mのフェノールを使用した以外は、実施例4の光電変換素子と同様の構成のサンドウィッチ型セルを作製して、波長460~800nm、光強度75mW/cm2の白色光を照射したところ30μA/cm2の酸化電流が流れた。このことから、本発明の金クラスター修飾金属酸化物半導体により、フェノールを光触媒酸化できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の金クラスター修飾金属酸化物半導体は、可視光応答性を有し、優れた光電気化学反応性を示す。そのため、可視光応答型の光触媒や光電変換素子として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 光電極
1a 基板
1b 導電性電極
1c 金クラスター修飾金属酸化物半導体層
1A アノード(光電極)
2 カソード
3 電解質
10 光電変換素子
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3