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明細書 :二重らせん構造を有する合成高分子化合物及びその製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5301426号 (P5301426)
登録日 平成25年6月28日(2013.6.28)
発行日 平成25年9月25日(2013.9.25)
発明の名称または考案の名称 二重らせん構造を有する合成高分子化合物及びその製造法
国際特許分類 C08G  61/02        (2006.01)
C08J   3/00        (2006.01)
C08L  65/00        (2006.01)
FI C08G 61/02
C08J 3/00 CEZ
C08L 65/00
請求項の数または発明の数 14
全頁数 22
出願番号 特願2009-503905 (P2009-503905)
出願日 平成20年3月10日(2008.3.10)
国際出願番号 PCT/JP2008/000507
国際公開番号 WO2008/111301
国際公開日 平成20年9月18日(2008.9.18)
優先権出願番号 2007061115
優先日 平成19年3月10日(2007.3.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年12月28日(2009.12.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】前田 壮志
【氏名】古荘 義雄
【氏名】八島 栄次
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査官 【審査官】阪野 誠司
参考文献・文献 Organic Letters,2006年,Vol.8 (12),p. 2583-6
Angew. Chem. Int. Ed.,2005年,Vol. 44,p. 3867-70
J. Am. Chem. Soc.,2006年,Vol. 128,p. 7176-8
J. Am. Chem. Soc.,2007年,Vol. 129,, p. 109-12
J. Am. Chem. Soc.,2006年,Vol. 128,p. 6806-7
調査した分野 C08G 61/00
C08J 3/00
C08L 65/00
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(8)
【化10】
JP0005301426B2_000011t.gif
(式中、Rは水素原子又は炭素数1~30の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、Rは炭素数1~30の炭化水素基を示し、kはそれぞれ繰り返し回数を示す。)
又は一般式(9)
【化11】
JP0005301426B2_000012t.gif
(式中、Rは前記と同じであり、Rはそれぞれ独立して炭素数1~40の炭化水素基を示し、Rは前記したものと同じであり、mは繰り返し回数を示す。)で表わされる、人工的に一方向巻きの二重鎖らせん構造を形成してなる合成高分子化合物。
【請求項2】
、炭素数6~30のアルキル基である請求項に記載の合成高分子化合物。
【請求項3】
k及びmが、10以上である請求項1又は2に記載の合成高分子化合物。
【請求項4】
一般式(6)
【化12】
JP0005301426B2_000013t.gif
(式中、R、R、及びkは前記と同じである。)
で表わされるカルボキシル基を有する一本鎖の合成高分子化合物及び/又は一般式(7)
【化13】
JP0005301426B2_000014t.gif
(式中、R、R、及びmは前記と同じである。)
で表わされるアミジノ基を有する一本鎖の合成高分子化合物を、溶媒中で混合することにより、当該カルボキシル基又はアミジノ基の相互作用により当該合成高分子化合物が相互に会合させて、請求項1~のいずれかに記載の人工的に一方向巻きの二重鎖らせん構造を形成してなる合成高分子化合物を製造する方法。
【請求項5】
溶媒が、有機溶媒である請求項に記載の方法。
【請求項6】
有機溶媒が、極性溶媒である請求項に記載の方法。
【請求項7】
有機溶媒が、テトラヒドロフランである請求項又はに記載の方法。
【請求項8】
有機溶媒が、非極性溶媒である請求項に記載の方法。
【請求項9】
有機溶媒が、クロロフォルム又はトルエンである請求項に記載の方法。
【請求項10】
合成高分子化合物の合計の濃度が、1mg/ml以下である請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
合成高分子化合物の合計の濃度が、0.001~0.3mg/mlである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
カルボキシル基を有する一本鎖の合成高分子化合物のモル数と、アミジノ基を有する一本鎖の合成高分子化合物のモル数の比が、1対2から2対1である請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
一般式(6)
【化14】
JP0005301426B2_000015t.gif
(式中、Rは水素原子又は炭素数1~30の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、Rは炭素数1~30の炭化水素基を示し、kは繰り返し回数を示す。)
で表わされるカルボキシル基を有する一本鎖の合成高分子化合物。
【請求項14】
一般式(7)
【化15】
JP0005301426B2_000016t.gif
(式中、Rはそれぞれ独立して炭素数1~40の炭化水素基を示し、Rは炭素数1~30の炭化水素基を示し、mは繰り返し回数を示す。)
で表わされるアミジノ基を有する一本鎖の合成高分子化合物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素反応によらない合成二重鎖らせん高分子ならびにその合成方法に関する。特に、剛直主鎖型二重鎖らせん構造を有する高分子とこれを溶媒中で簡便に合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸は生体内に広くみられ、遺伝現象や特異的タンパク質合成に関連する重要な生体高分子であることは周知の通りだが、その構造、機能が明らかになるにつれ、核酸における相補的な二重らせん構造が合成化学者にとっても、大きな興味の対象となってきた(非特許文献1)。
【0003】
これまでに二重らせん構造を有する多くの低分子化合物が、配位結合(非特許文献2)、水素結合(非特許文献3)やπ-πスタッキング(非特許文献4)を利用して合成されてきた。しかし、それらは核酸に見られるような選択的な相互作用により生成する相補的な二重らせん構造ではなく、一本鎖が絡まり合って二重鎖になっているにすぎない。また低分子化合物であり、成形体としてそのまま工業的に利用する事は難しい。
また、金属錯体により1本鎖DNAをスタッキングさせ相補的な二重らせんとする方法(非特許文献5)や、相補的な塩基を側鎖に有するポリペプチドから形成される相補的な二重らせん(非特許文献6)が知られているが、これらは何れも既存の天然高分子であるDNAやポリペプチドの一本鎖を二重らせんにする研究であって、完全に人工的に合成された非天然高分子に関するものではない。
最近、多中ら(非特許文献7)は、キラルなアミジンとカルボニル基を持つm-ターフェニル誘導体が有機溶媒中でアミジニウム-カルボキシレート塩橋を介して一方向巻きの二重鎖会合体を形成することを明らかにしている。しかしながらこの化合物は、低分子化合物が単なる会合体となった2量体に過ぎず、学問的には極めて優れた業績ではあるものの、そのまま工業的に利用することは難しい。一方、池田ら(非特許文献8)は、同様の化合物を金属の配位結合を利用して長く繋げることに成功している。しかしながら、これは所謂、超分子と言われる会合体で共有結合で結合されている分子ではなく、熱その他の環境の変化に対し不安定であり、これもまた優れた研究ではあるものの工業的利用は難しいと言わざるを得ない。
【0004】
このように、二重らせん構造をとる合成高分子物質は未だ見出されておらず、天然の核酸のような二重らせん構造をとり、しかも材料としての強度を有する物質の開発が要望されてきていた。
一方、一本鎖のらせん構造を有する高分子物質については、人工的に合成されたらせん高分子が数多く知られている。しかし、一方向巻きに片寄った安定ならせん高分子を不斉合成で作ることは困難であり、従来は、いずれか一方の向きのらせん構造を有する物質は、構造中にいずれか一方の光学活性体を不斉源として用いられていた(特許文献1参照)。また、温度、溶媒、光学活性添加物等によって容易にそのらせんの巻き方向を反転させることができ、室温付近において右巻きと左巻きの両方の高分子を観察することが可能な高分子物質も提案されている(特許文献2参照)。しかし、如何せんそのらせんは動的であるため、外部環境によって容易にらせんの巻き方が再反転し、機能性材料としての実用性は非常に低かった。さらに、らせん高分子は多くの場合、非常に剛直な主鎖構造を持つため溶液中、もしくは溶融状態においてコレステリック液晶相を示す(特許文献3参照)。本発明者らも剛直な主鎖構造を持つ高分子化合物や、その液晶としての利用を開発してきた(特許文献4及び5参照)。
しかしながら、2本鎖のらせん構造をとる合成高分子物質は未だ見出されていない。
【0005】

【特許文献1】特開昭56-106907号公報
【特許文献2】特開2001-294625号公報
【特許文献3】特開2001-164251号公報
【特許文献4】WO 01/79310号公報
【特許文献5】WO 2005/080500号公報
【非特許文献1】L. Stryer et al. Biochemistry 5th ed. W. E. Freeman & Co., New York 2002.
【非特許文献2】J.-M. Lehn et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1987, 84, 2565.
【非特許文献3】J.-M. Lehn et al. Nature 2000, 407, 721.
【非特許文献4】I. Huc Eur. J. Org. Chem. 2004, 17.
【非特許文献5】M. Shionoya et al. Science 2003, 299, 1212.
【非特許文献6】P. E. Nielsen et al. Science 1991, 254, 1497.
【非特許文献7】Y. Tanaka et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 3867-3870.
【非特許文献8】M. Ikeda et al. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 6806.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、酵素反応を伴わない非生物的、非生物化学的方法により、熱安定性の一方向巻きの二重鎖らせん構造を有する高分子とその簡便な製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、核酸分子のような二重らせん構造について鋭意検討してきたが、核酸の塩基のような形で水素結合による二重らせんの形成は合成的に非常に困難であり、各種の方法を検討してきた。二重らせん構造を形成させるためには、何らかの分子間の相互作用が必要であり、しかもそれが合成化学的に容易なものでなければならない。本発明者らは、ある種の官能基間に生じる相補的な結合が安定な相互作用を形成することに着目し、これらをm-ターフェニル誘導体を単位構造とする共有結合で結合された共役ポリマーに応用することによって、一方向巻きの二重らせん構造を有する高分子を非生物化学的方法により容易に合成できることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明は、相補的な2種類の人工共役一本鎖高分子から二重鎖らせん高分子を形成させた世界で初めての例である。
【0008】
即ち、本発明は、極性の官能基を有する共有結合で結合された一本鎖の合成高分子化合物が、当該極性の官能基の相互作用により当該合成高分子化合物が相互に会合して、人工的に一方向巻きの二重鎖らせん構造を形成してなる合成高分子化合物に関する。
また、本発明は、極性の官能基を有する共有結合で結合された一本鎖の合成高分子化合物を、溶媒中で混合することにより、当該極性の官能基の相互作用により当該合成高分子化合物が相互に会合させて、人工的に一方向巻きの二重鎖らせん構造を形成してなる合成高分子化合物を製造する方法に関する。
さらに、本発明は、人工的に一方向巻きの二重鎖らせん構造を形成してなる合成高分子化合物を形成し得る、極性の官能基を有する共有結合で結合された一本鎖の合成高分子化合物に関する。
【0009】
本発明をより詳細に説明すれば以下のとおりとなる。
(1) 共有結合で結合された一本鎖の合成高分子化合物の主鎖単位構造が、メタ-ターフェニル誘導体を含有し、かつ極性の官能基を有する共有結合で結合された一本鎖の合成高分子化合物が、当該極性の官能基の相互作用により当該合成高分子化合物が相互に会合して、人工的に一方向巻きの二重鎖らせん構造を形成してなる合成高分子化合物。
(2) 共有結合で結合された一本鎖の合成高分子化合物の主鎖単位構造が、メタ-ターフェニル誘導体とパラフェニレン誘導体との交互共重合体からなる合成高分子化合物である前記(1)に記載の合成高分子化合物。
(3) パラフェニレン誘導体が、炭素数6以上のアルキル基で1個又は2個以上置換されているパラフェニレン誘導体である前記(2)に記載の合成高分子化合物。
(4) アルキル基が、炭素数6~30のアルキル基である前記(3)に記載に記載の合成高分子化合物。
(5) 合成高分子化合物の重合度が、10量体以上である前記(1)~(4)のいずれかに記載の合成高分子化合物。
(6) 極性の官能基が、カルボキシル基又は炭素数1~40の炭化水素基で置換されていてもよいアミジノ基である前記(1)~(5)のいずれかに記載の合成高分子化合物。
(7) 極性の官能基が、メタ-ターフェニル誘導体に結合しているものである前記(1)~(6)のいずれかに記載の合成高分子化合物。
(8) 二重らせん構造を形成する2つの合成高分子化合物が、同じ合成高分子化合物である前記(1)~(7)に記載の合成高分子化合物。
(9) 二重らせん構造を形成する2つの合成高分子化合物が、極性の官能基として共にカルボキシル基を有する合成高分子化合物である前記(8)に記載の合成高分子化合物。
(10) 二重らせん構造を形成する2つの合成高分子化合物が、異なる官能基を有する合成高分子化合物である前記(1)~(7)に記載の合成高分子化合物。
(11) 二重らせん構造を形成する2つの合成高分子化合物の一方が、極性の官能基としてカルボキシル基を有する合成高分子化合物であり、他方が炭素数1~40の炭化水素基で置換されていてもよいアミジノ基を有する合成高分子化合物である前記(10)に記載の合成高分子化合物。
(12) 共有結合で結合された一本鎖の合成高分子化合物の主鎖単位構造が、メタ-ターフェニル誘導体を含有し、かつ極性の官能基を有する共有結合で結合された一本鎖の合成高分子化合物を、溶媒中で混合することにより、当該極性の官能基の相互作用により当該合成高分子化合物が相互に会合させて、前記(1)~(11)のいずれかに記載の人工的に一方向巻きの二重鎖らせん構造を形成してなる合成高分子化合物を製造する方法。
(13) 溶媒が、有機溶媒である前記(12)に記載の方法。
(14) 有機溶媒が、極性溶媒である前記(13)に記載の方法。
(15) 有機溶媒が、テトラヒドロフランである前記(13)又は(14)に記載の方法。
(16) 有機溶媒が、非極性溶媒である前記(13)に記載の方法。
(17) 有機溶媒が、クロロフォルム又はトルエンである前記(16)に記載の方法。
(18) 合成高分子化合物の合計の濃度が、1mg/ml以下である前記(12)~(17)のいずれかに記載の方法。
(19) 合成高分子化合物の合計の濃度が、0.001~0.3mg/mlである前記(18)に記載の方法。
(20) 極性の官能基を有する一本鎖の合成高分子化合物が、異なる極性の官能基を有する場合において、一方の合成高分子化合物のモル数と、他方の合成高分子化合物のモル数の比が1対2から2対1である前記(12)~(19)のいずれかに記載の方法。
(21) 人工的に一方向巻きの二重鎖らせん構造を形成してなる合成高分子化合物を形成し得る、共有結合で結合された一本鎖の合成高分子化合物の主鎖単位構造が、メタ-ターフェニル誘導体を含有し、かつ極性の官能基を有する共有結合で結合された一本鎖の合成高分子化合物。
(22) 一本鎖の合成高分子化合物の主鎖単位構造が、メタ-ターフェニル誘導体とパラフェニレン誘導体との交互共重合体からなる合成高分子化合物である前記(21)に記載の合成高分子化合物。
(23) パラフェニレン誘導体が、炭素数6以上のアルキル基で1個又は2個以上置換されているパラフェニレン誘導体である前記(22)に記載の合成高分子化合物。
(24) アルキル基が、炭素数6~30のアルキル基である前記(23)に記載に記載の合成高分子化合物。
(25) 合成高分子化合物の重合度が、10量体以上である前記(21)~(24)のいずれかに記載の合成高分子化合物。
(26) 極性の官能基が、カルボキシル基又は炭素数1~40の炭化水素基で置換されていてもよいアミジノ基である前記(21)~(25)のいずれかに記載の合成高分子化合物。
(27) 極性の官能基が、メタ-ターフェニル誘導体に結合しているものである前記(21)~(26)のいずれかに記載の合成高分子化合物。
【0010】
以下に、さらに詳細に本発明について説明する。
本発明における「極性の官能基を有する一本鎖の合成高分子化合物」としては、一本鎖の、好ましくは剛直な一本鎖を形成することができ、相互に又は他の極性の官能基と相互作用を形成することができる極性の官能基を有する合成高分子化合物が挙げられる。極性官能基における相互作用としては、水素結合の形成や、相互で塩を形成する塩橋などの作用により極性の官能基同士が相互の分子を会合させることができる作用を包含するものである。このような極性の官能基は合成高分子化合物中の決められた位置に規則的に配置されているのが好ましい。
合成高分子化合物の主鎖単位構造としては、一本鎖を保持できるものであって、前記した極性の官能基を規則的に配置することができるものであればよいが、好ましい主鎖単位構造としては、次の一般式(1)で表されるメタ-ターフェニル誘導体、及び一般式(2)で表されるパラフェニレン誘導体を含有してなる構造が挙げられる。このような主鎖単位構造は製造が容易で、かつ構造的に剛直であり、各種の材料に適した高分子化合物を提供することができる。
また、本発明における「共有結合で結合された合成高分子化合物」とは、合成高分子化合物の主鎖構造が共有結合で結合されているものをいう。好ましい合成高分子化合物の主鎖構造としては、その全てが共有結合で結合されているものが挙げられるが、合成高分子化合物の分子全体の化学結合のうちの70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上が共有結合であるものが挙げられる。
メタ-ターフェニル誘導体としては、次の一般式(1)
【0011】
【化1】
JP0005301426B2_000002t.gif

【0012】
(式中、Rは極性の官能基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~30の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。)
で表されるメタ-ターフェニル誘導体が挙げられ、パラフェニレン誘導体としては、次の一般式(2)
【0013】
【化2】
JP0005301426B2_000003t.gif

【0014】
(式中、Rは炭素数1~30の炭化水素基、炭素数2~30のポリアルキレンオキシ基、又は炭素数2~30のポリイミノアルキレン基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは0~4の整数を示す。)
で表されるパラフェニレン誘導体が挙げられる。
一般式(1)で表されるメタ-ターフェニル誘導体は、両末端にエチニル基を持ち、中央部のフェニル基のオルト位にRの極性の官能基が結合しているために回転障害が生じて軸不斉となりキラリティーを有するものである。メタ-ターフェニル誘導体の両末端にエチニル基は、一般式(2)で表されるパラフェニレン誘導体とクロスカップリング反応(sp混成の炭素原子とsp混成の炭素原子のカップリング反応)により結合させることができる。このようなクロスカップリング反応により、一般式(1)で表されるメタ-ターフェニル誘導体、及び一般式(2)で表されるパラフェニレン誘導体を重合させることができる。
クロスカップリング反応により生成した合成高分子化合物は、一般式(1)で表されるメタ-ターフェニル誘導体のキラリティーに応じた主鎖構造を形成する。
【0015】
前記した一般式(1)で表されるメタ-ターフェニル誘導体における、極性の官能基としては、相互に又は他の極性の官能基と相互作用を形成することができる官能基であればよく、好ましい官能基としては、カルボキシル基、又は炭素数1~40の炭化水素基で置換されていてもよいアミジノ基が挙げられる。カルボキシル基は、カルボキシル基同士で相互に水素結合による相互作用を有しており、また、炭素数1~40の炭化水素基で置換されていてもよいアミジノ基は酸性のカルボキシル基と共に相互に塩を形成して両者で塩による「塩橋」を形成するという相互作用を有している。
また、アミジノ基の2個の窒素原子は、それぞれ炭素数1~40、好ましくは6~40の炭化水素基で置換されていてもよい。炭化水素基としては、炭素数1~40、好ましくは炭素数6~40、炭素数6~20の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2~40、好ましくは炭素数6~40、炭素数6~20の直鎖状又は分枝状のアルケニル基;炭素数2~40、好ましくは炭素数6~40、炭素数6~20の直鎖状又は分枝状のアルキニル基;炭素数3~40、好ましくは炭素数6~40、炭素数6~20の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6~40、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基;炭素数6~36、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、前記した炭素数1~40のアルキル基が結合した、炭素数7~40、好ましくは炭素数7~20、炭素数7~15のアラルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)などが挙げられる。好ましいアミジノ基の窒素原子における置換基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基などの炭素数7~40、好ましくは炭素数7~20、炭素数7~15のアラルキル基が挙げられる。
【0016】
前記した一般式(1)で表されるメタ-ターフェニル誘導体の基Rにおける、炭素数1~30の飽和又は不飽和の炭化水素基としては、炭素数1~30、好ましくは炭素数6~30、炭素数6~20の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2~30、好ましくは炭素数6~30、炭素数6~20の直鎖状又は分枝状のアルケニル基;炭素数2~30、好ましくは炭素数6~30、炭素数6~20の直鎖状又は分枝状のアルキニル基;炭素数3~30、好ましくは炭素数6~30、炭素数6~20の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6~30、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基;炭素数6~30、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、前記した炭素数1~30のアルキル基が結合した、炭素数7~30、好ましくは炭素数7~20、炭素数7~15のアラルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)などが挙げられる。好ましい基Rとしては、水素原子、炭素数6~30の直鎖状又は分枝状のアルキル基、又は炭素数6~30の直鎖状又は分枝状のアルキニル基が挙げられる。
本発明における好ましいメタ-ターフェニル誘導体としては、次の一般式(3)
【0017】
【化3】
JP0005301426B2_000004t.gif

【0018】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1~30の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。)
で表されるメタ-ターフェニル誘導体、又は次の一般式(4)
【0019】
【化4】
JP0005301426B2_000005t.gif

【0020】
(式中、Rはそれぞれ独立して炭素数1~40の炭化水素基を示す。)
で表されるメタ-ターフェニル誘導体が挙げられる。
【0021】
前記した一般式(2)で表されるパラフェニレン誘導体の基Xにおける、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては、ヨウ素原子が挙げられる。
また、前記した一般式(2)で表されるパラフェニレン誘導体の基Rにおける、「炭素数1~30の炭化水素基」としては、炭素数1~30、好ましくは炭素数6~30、炭素数6~20の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2~30、好ましくは炭素数6~30、炭素数6~20の直鎖状又は分枝状のアルケニル基;炭素数2~30、好ましくは炭素数6~30、炭素数6~20の直鎖状又は分枝状のアルキニル基;炭素数3~30、好ましくは炭素数6~30、炭素数6~20の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6~30、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基;炭素数6~30、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、前記した炭素数1~30のアルキル基が結合した、炭素数7~30、好ましくは炭素数7~20、炭素数7~15のアラルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)などが挙げられる。また、「炭素数2~30のポリアルキレンオキシ基」としては、炭素数1~5、好ましくは2~5のアルキレンオキシが、2~15回、好ましくは3~10回程度繰り返したポリアルキレンオキシ基が挙げられる。また、「炭素数2~30のポリイミノアルキレン基」としては、炭素数1~5、好ましくは2~5のイミノアルキレンが、2~15回、好ましくは3~10回程度繰り返したポリイミノアルキレン基が挙げられる。
一般式(2)で表されるパラフェニレン誘導体のフェニル基に結合する置換基Rは無くてもよい(n=0)が、有機溶媒に対する溶解性を向上させるために1個(n=1)又は2個(n=2)以上存在していることが好ましい。置換基Xのハロゲン原子に対して2,5-位の2カ所(n=2)に存在してことが好ましい。有機溶媒に対する溶解性を向上させるために、炭素数が6以上のものが好ましいが、Rのアルキル基の合計の炭素数は28以下が好ましい。好ましいRのアルキル基としてはオクチル基などの長鎖アルキル基が挙げられる。
好ましい一般式(2)で表されるパラフェニレン誘導体としては、次の一般式(5)
【0022】
【化5】
JP0005301426B2_000006t.gif

【0023】
(式中、Rは水素原子又は炭素数6~30のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
で表されるパラフェニレン誘導体が挙げられる。
【0024】
本発明の合成高分子化合物の好ましい例としては、前記した一般式(1)、好ましくは一般式(3)又は(4)で表されるメタ-ターフェニル誘導体と、前記した一般式(2)、好ましくは一般式(5)で表されるパラフェニレン誘導体とを、クロスカップリング反応させることにより得られる高分子化合物が挙げられる。クロスカップリング反応は、銅触媒の存在下にアセチレン誘導体とハロゲン化アリール化合物をカップリングさせる反応として公知の方法であり、公知の方法に準じて行うことができる。好ましいクロスカップリング法としては、銅触媒及び塩基の存在下で行う薗頭クロスカップリング重合法が挙げられる。重合度としては、5以上が好ましく、更に好ましくは10以上である。重合度が小さすぎると薄膜になりにくく大きすぎると溶解度が下がり、粘度が増す等、成形しにくくなるからである。メタ-ターフェニル誘導体を用いることにより、主鎖らせん構造を形成し易い剛直な構造を得ることができる。
このようにして製造される本発明の主鎖単位構造が、メタ-ターフェニル誘導体とパラフェニレン誘導体との交互共重合体からなる合成高分子化合物の構造を、カルボキシル基を有する場合を次の一般式(6)で、アミジノ基を有する場合を次の一般式(7)でそれぞれ示す。
【0025】
【化6】
JP0005301426B2_000007t.gif

【0026】
【化7】
JP0005301426B2_000008t.gif

【0027】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1~30の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立して炭素数1~40の炭化水素基を示し、Rは炭素数1~30の炭化水素基、炭素数2~30のポリアルキレンオキシ基、又は炭素数2~30のポリイミノアルキレン基を示し、k及びmはそれぞれの繰り返し回数を示す。)
【0028】
上記のカルボキシル基を有する合成高分子化合物(6)を、水系溶媒または有機溶媒中に溶解すると所望の二重らせん高分子を得ることができる。溶媒中に於ける濃度は、溶解度が許す範囲であれば、高濃度でも良いが、濃度が高すぎると凝集が起こり易く、所望の2重らせん高分子の均一性が失われるため好ましくない。一方、希薄に過ぎると、所望の2重らせん高分子が僅かしかできず、効率的でない。好ましい範囲は、1mg/mL以下であり、更に好ましくは0.001~0.3mg/ml、更に好ましくは0.01~0.2mg/mlである。
生成した二重らせん構造を有する高分子化合物の構造を次の一般式(8)
【0029】
【化8】
JP0005301426B2_000009t.gif

【0030】
(式中、R及びR、並びにkは前記したものと同じである。)
それぞれの高分子の主鎖がターフェニル誘導体に結合しているカルボキシル基において水素結合で結合しているものと考えられる。これは丁度、核酸分子の塩基が水素結合で二重らせん構造を形成しているのと同じ様式である。
また、前記したカルボキシル基を有する合成高分子化合物(6)とアミジノ基を有する合成高分子化合物(7)とを、水系溶媒または有機溶媒中で混合すると所望の二重らせん高分子を得ることができるが、この2種類の高分子に付属するアミジン基とカルボキシル基の量比が1対1に近いほど効率的である。通常、1対2から2対1であれば、所望の二重らせん高分子を効率良く得ることができる。更に好ましい量比は、2対3から3対2の範囲である。
2種類の相補的高分子の溶媒中に於ける濃度は、溶解度が許す範囲であれば、高濃度でも良いが、濃度が高すぎると凝集が起こり易く、所望の2重らせん高分子の均一性が失われるため好ましくない。一方、希薄に過ぎると、所望の2重らせん高分子が僅かしかできず、効率的でない。好ましい範囲は、2種類の合計が1mg/ml以下であり、更に好ましくは0.001~0.3mg/ml、更に好ましくは0.01~0.2mg/mlである。溶媒は水系でも有機溶媒系でも可能であるが、溶解性の自由度が高い点で有機溶媒が好ましい。
生成した二重らせん構造を有する高分子化合物の構造を次の一般式(9)
【0031】
【化9】
JP0005301426B2_000010t.gif

【0032】
(式中、R、R、及びR、並びにmは前記したものと同じである。)
このように、両者は、アミノ基とカルボキシル基との間で複数の水素結合を介して結合し得る相補的な関係にあり、これらを有機溶媒中で混合すると相互の結合が進み、2種類の1本鎖高分子は互いに巻き付き合う様な構造をとって最終的に一方向巻きの二重鎖らせん構造を有する高分子を形成する。
【0033】
本発明は、合成高分子化合物が人工的に二重らせん構造を形成することができることを明らかにした初めての例であり、天然の核酸類と同様に、溶液中で極性の官能基の相互作用により、天然の核酸分子と同様な二重らせん構造が形成されることを証明した。本発明はこのようにして形成された人工的に一方向巻きの二重鎖らせん構造を形成してなる合成高分子化合物を提供するものである。こうして得られた二重らせん高分子は、温度変化等の環境変化に対して安定で、工業的な種々の応用に供される可能性の大きい物である。
【0034】
二重らせん構造を形成させるための溶媒は、水系でも有機溶媒系でも可能であるが、溶解性の自由度が高い点で有機溶媒が好ましい。有機溶媒の種類は二重らせん構造を形成する2種類の高分子を溶解できる物であれば何でも良いが、好ましくは極性溶媒、更に好ましくは、テトラヒドロフランなどが挙げられる。相補的な2種類の高分子間で水素結合を生じ、その故に自発的にらせん構造になるものと考えており、その為には、極性溶媒が好ましいと考えられる。一方、非極性溶媒でも本発明は達成可能であり、その中では、クロロホルムやトルエンが好ましい。非極性溶媒中では、2種類の高分子を混合した後、適当量の酸を加え、後に塩基を加えて中和後、塩を除き、溶媒を気化させて目的の二重鎖らせん構造を有する高分子を得ることができる。こうした操作が必要な訳は明確ではないが、相補的な2種類の高分子が互いに結合して二重鎖を形成する前に各々一方の高分子だけで凝集してしまうためではないかと考えている。このために、酸で一旦、乖離させ、中和によってゆっくり相互の結合を作って行く事で、こうした操作を必要としない極性溶媒の場合と同様に、目的の二重鎖らせん高分子を合成することができると考えられる。
【0035】
2種類の高分子を混合する温度は、溶媒の凝固点以上、沸点以下であれば良いが、高すぎると溶媒が失われ易くできた2重鎖らせん高分子の均質性が失われ、低過ぎると反応に時間がかかり過ぎる。好ましくは、10℃~溶媒の沸点であり、更に好ましくは、10~60℃である。
反応終了後、生成した所望の2重らせん高分子を得るには、エバポレーターにより溶媒を除去するだけで良い。
【0036】
薗頭クロスカップリング重合法などのクロスカップリング法により得られた1本鎖の高分子の重合度、すなわち分子量の測定には、幾つかの方法が知られている。本明細書では、ゲル濾過クロマトグラムによる測定を基に分子量の分っているポリスチレンから換算した相対的分子量を用いた。具体的には、東ソー株式会社製、HLC-8220GPC型装置を用いて測定した。
また、生成した二重鎖らせん高分子の構造解析は、原子間力顕微鏡による直接観察、X線回折による構造解析、紫外・可視吸収スペクトル、円二色性スペクトル等の分光的特性の観測等々が知られ使われているが、ここでは主に紫外・可視スペクトル(日本分光株式会社製V-570-DS型と円二色性スペクトル(日本分光株式会社製J-820型)から判別した。すなわち、会合体の生成による紫外域スペクトルの吸収の減少や、一方向巻きのらせん高分子の生成を示すコットン効果の向きと大小の観測等により判定した。
【発明の効果】
【0037】
本発明の完成により、人工的に所望の組成、所望の構造の2重らせん高分子が容易に合成できるようになり、反応温度等を厳しく制限される酵素反応から脱却して種々の過酷な条件下での人工二重鎖らせん高分子の入手が可能になった。その結果、医学、工学の分野での大きな貢献が期待できる。
更に、例えば、HPLCのキラル検知・分取カラム、キラル蛍光センサー等の他、分子レベルでの混合が可能になる特徴を生かし、従来は酵素反応などの生体反応以外にはなし得なかった生物化学的な反応を低温域あるいは高温域で実施するなども可能になり、遺伝子情報に類似の情報伝達や増殖に似た自発反応の誘起も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明のカルボキシル基を有する一本鎖の合成高分子化合物(高分子C)のH-NMRのチャートである。
【図2】図2は、本発明のカルボキシル基を有する一本鎖の合成高分子化合物(高分子C)の13C-NMRのチャートである。
【図3】図3は、本発明のカルボキシル基を有する一本鎖の合成高分子化合物(高分子C)のIRのチャートである。
【図4】図4は、本発明のアミジノ基を有する一本鎖の合成高分子化合物(高分子A)のH-NMRのチャートである。
【図5】図5は、本発明のアミジノ基を有する一本鎖の合成高分子化合物(高分子A)の13C-NMRのチャートである。
【図6】図6は、本発明のアミジノ基を有する一本鎖の合成高分子化合物(高分子A)のIRのチャートである。
【図7】図7は、本発明の二重らせん構造を有する高分子化合物(高分子A-C)の円二色性スペクトルのチャートである。
【図8】図8は、本発明の二重らせん構造を有する高分子化合物(高分子A-C)のIRのチャートである。
【図9】図9は、本発明の二重鎖らせん構造の合成高分子化合物(高分子C-C)のFT-IRのチャートである。
【図10】図10は、本発明の二重鎖らせん構造の合成高分子化合物(高分子C-C)のAMF像を示す写真である。
【図11】図11は、本発明の二重鎖らせん構造の合成高分子化合物(高分子C-C)のX線散乱像を示す写真である。
【図12】図12は、本発明の二重鎖らせん構造の合成高分子化合物(高分子C-C)の構造を模式的に示したものである。

【0039】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
先ず、方法(1)及び(2)により、相補的な2種類の一本鎖の高分子を合成した。
(1)カルボキシル基を有する一本鎖の高分子(以下、高分子Cと略称する)の合成。
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に2’-カルボキシ-4,4”-ビス(エチニル)-5’-(1-オクチニル)-1,1’:3’1”-ターフェニル(4)(100mg、0.189mmol)、1,4-ジヨード-2,5-ジオクチルベンゼン(105mg、0.189mmol)、ヨウ化第2銅(3.6mg、0.0189 mmol)、及びテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(22.0mg、0.0189mmol)を入れ、脱気したジ-イソ-プロピルアミンとトルエンの混合溶媒(容積比で3対7、3.8mL)を加えて60℃で12時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残渣を少量のクロロホルムに溶解させ、その溶液をジエチルエーテルに加え、生じた高分子Cを回収した(70mg、0.0846mmol、収率45% )。
H-NMR(図1参照)及び13C-NMR(図2参照)により分子構造を確認した。また、メチルエステル化した後、GPCにより分子量を求め、数平均分子量24,000、重量平均分子量83,000を得た。更に、元素分析の結果、計算通りの原子比であることが確かめられた。
【0041】
H-NMR(THF-d,poly-C(15mM),50℃):δ:
0.81-0.92 (m, CH, 9H), 1.20-1.56 (m, CH, 26H),
1.62 (m, C≡CCHCH, 2H), 1.76 (m, ArCHCH, 4H),
2.44 (m, C≡CCH, 2H), 2.66-2.90 (m, ArCH, 4H),
7.35-7.44 (m, ArH, 4H), 7.45-7.62 ppm (m, ArH, 8H).
13C-NMR(THF-d,poly-C(15mM),50℃):δ:
17.07, 17.13, 22.71, 26.15, 26.26, 32.27, 32.41, 32.98, 33.11,
33.25, 34.40, 35.08, 35.61, 37.74, 83.34, 92.57, 95.40, 97.57,
126.50, 126.56, 128.79, 132.57, 134.75, 135.30, 136.03, 136.98,
143.20, 144.22, 145.93, 172.66 ppm.
IR(neat):3035(νO-H),2230(νC≡C),
1731(νC=O),1701cm-1(νC=O).
得られた高分子CのH-NMRのチャートを図1に示し、13C-NMRのチャートを図2に示し、IRのチャートを図3に示す。
【0042】
(2)アミジン基を含有する一本鎖の高分子(以下、高分子Aと略称する)の合成。
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に2’-[N,N’-ジ(1-フェニルエチルアミジノ)]-4,4”-ビス(エチニル)-1,1’:3’1”-ターフェニル(5)(30.0mg、0.0697mmol)、1,4-ジヨード-2,5-ジオクチルベンゼン(38.6mg、0.0697mmol)、ヨウ化第2銅(0.65mg、0.0035mmol)、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(2.01mg、0.00174mmol)を入れ、脱気したジ-イソ-プロピルアミンとテトラヒドロフランの混合溶媒(容積比で3/7、2.8mL)を加えて60℃で12時間撹拌した。反応溶媒をアセトニトリルに加え、生じた沈殿を回収した。その沈殿をクロロホルムに溶解させ、1モル濃度の塩酸水溶液を加え、生じた高分子Aを回収した(37.0mg、0.0508mmol、収率73%)。
H-NMR(図4参照)及び13C-NMR(図5参照)により分子構造を確認した。また、GPCにより分子量を求め、数平均分子量38,000、重量平均分子量72,000を得た。更に、元素分析の結果、計算通りの原子比であることが確かめられた。
【0043】
H-NMR (CDCl,poly-(R)-A(20mM),
CHCOH(190mM),50℃):δ:
0.78 (m, CHCHN, 6H), 0.87 (m, CHCH, 6H),
1.22-1.48 (m, CH, 20H), 1.72 (m, ArCHCH, 4H),
2.08 (s, CHCO, 3H), 2.82 (m, ArCH, 4H), 3.99 (m, CHN, 2H),
6.74 (m, ArH, 4H), 7.06 (m, ArH, 4H), 7.20-7.34 (m, ArH, 10H),
7.38 (br, ArH, 2H), 7.55 (m, ArH, 2H), 7.78 ppm (m, ArH, 1H).
13C-NMR(CDCl,poly-(R)-A(20mM),
CHCOH(190mM),50℃):δ:
14.10, 20.87, 22.14, 22.71, 29.33, 29.57, 29.63, 30.44, 30.65,
31.97, 34.18, 55.78, 90.35, 93.31, 122.65, 124.02, 125.54,
126.73, 128.74, 129.15, 130.63, 131.85, 132.01, 137.83, 141.85,
142.62, 162.92, 176.79 ppm.
IR(neat): 3429(νN-H),1637cm-1(νC=N).
得られた高分子AのH-NMRのチャートを図4に示し、13C-NMRのチャートを図5に示し、IRのチャートを図6に示す。
【0044】
(3)二重鎖らせん高分子の合成
高分子C(1.48mg、0.0018mmol)と高分子A(1.30mg、0.0018mmol)をテトラヒドロフラン(18mL)中で混合し、溶媒を減圧留去し、二本鎖らせん高分子を定量的に得た。
高分子A-高分子Cの二本鎖らせん高分子のTHF中(濃度は0.1mM、測定温度は25℃、セル長は0.1cm)での円二色性スペクトルを図7に示す。図7の「poly-(R)-A-C」は高分子A-高分子C混合物の場合を示し、「poly-(R)-A」は高分子Aの単独の場合を示し、「poly-C」は高分子Cの単独の場合を示す。また、高分子A-高分子Cの二本鎖らせん高分子のIR(FT-IR)を図8に示す。
高分子A-高分子Cの二本鎖らせん高分子のTHF中での円二色性スペクトル(図7参照)では、主鎖のフェニレンエチニレン発色団で高分子Aの円二色性スペクトルとは符号、強度が大きく異なる、二重らせん構造に由来した強いコットン効果が観測された。この二重鎖らせん高分子溶液からテトラヒドロフランを減圧留去し、二本鎖らせん高分子を定量的に得た。二重鎖らせん高分子のFT-IRスペクトル(図8参照)では、高分子CのFT-IRスペクトル(図3参照)で観測されたC=O伸縮振動吸収帯が消失し、高分子AのFT-IRスペクトル(図6参照)で観測されたC=N伸縮振動とは異なる振動数で新たな吸収が観測された(図8参照)。このことからも、カルボン酸とアミジン基が塩橋を形成し、二重鎖らせん高分子会合体となっていることが示された。
【実施例2】
【0045】
相補的な二重鎖らせん高分子の合成
実施例1で製造した高分子C(1.64mg、0,002mmol)と、実施例1で製造した高分子A(1.44mg、0.002mmol)をテトラヒドロフラン(240mL)中で混合し、二本鎖らせん高分子を得た。
測定結果は前記した実施例と同様であった。
【実施例3】
【0046】
実施例1で得られた高分子C(1.30mg,0,0018 mg)をテトラヒドロフラン(18mL)中で混合し、溶媒を減圧留去し、高分子Cのみからなる二本鎖らせん高分子を定量的に得た。
得られた二重鎖らせん構造の合成高分子化合物(高分子C-高分子C)のFT-IRのチャートを図9に示す。
また、得られた二重鎖らせん構造の合成高分子化合物(高分子C-高分子C)のAMF像を図10に示し、そのX線散乱像を図11に示す。図11のX線散乱像においては、9.27オングストローム(0.927nm)、15オングストローム(1.5nm)、及び17.10オングストローム(1.710nm)のところに散乱像を確認することができた。これらの結果から、本発明の合成高分子化合物(高分子C-高分子C)は、図12に模式的に示される二重鎖らせん構造をなしていることが確認された。各二重らせん構造の間隔は、約24オングストローム(2.4nm)であり、らせんのピッチは約18オングストローム(1.8nm)であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の二重らせん構造を有する合成高分子化合物は、天然の核酸分子と同様な水素結合や塩橋で会合しており、二重らせん構造と1本鎖構造の可逆的な変換が人工的に可能となり、従来は核酸分子でなければ行えなかった可逆的な変換を工業材料で行うことか可能となり、本発明の合成高分子化合物は医学や製薬分野のみならず工学分野や電気分野などの広範囲な分野での利用が可能となる。
また、らせん構造を有する高分子化合物自体がキラリティーを有しており、例えば、HPLCのキラル検知・分取カラム、キラル蛍光センサー等の産業分野において有用なものであることが知られており、本発明の二重らせん構造を有する高分子化合物はこれらの分野においても利用可能となる。さらに、本発明の高分子化合物は剛直なものであり、材料としての強度があることから、各種の工業材料としても利用可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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