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明細書 :透明導電性薄膜の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5150630号 (P5150630)
登録日 平成24年12月7日(2012.12.7)
発行日 平成25年2月20日(2013.2.20)
発明の名称または考案の名称 透明導電性薄膜の製造方法
国際特許分類 H01B  13/00        (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
FI H01B 13/00 503B
C01B 31/02 101F
請求項の数または発明の数 6
全頁数 21
出願番号 特願2009-522676 (P2009-522676)
出願日 平成20年7月10日(2008.7.10)
国際出願番号 PCT/JP2008/062521
国際公開番号 WO2009/008486
国際公開日 平成21年1月15日(2009.1.15)
優先権出願番号 2007181411
優先日 平成19年7月10日(2007.7.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年1月15日(2010.1.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】前田 優
【氏名】赤阪 健
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】渡部 朋也
参考文献・文献 特開2008-251273(JP,A)
特開2005-325020(JP,A)
特開2005-104750(JP,A)
特開2005-089738(JP,A)
調査した分野 H01B 13/00
C01B 31/02
特許請求の範囲 【請求項1】
金属性の単層カーボンナノチューブ(m-SWNTs)と半導体性の単層カーボンナノチューブ(s-SWNTs)とが混在する単層カーボンナノチューブを沸点が20~400℃のアミンを分散剤として含有するアミン溶液に分散する工程と、得られた分散液を遠心分離または濾過することによりm-SWNTsを濃縮し、m-SWNTs高含有の分散液を得る工程と、得られたm-SWNTs高含有の分散液をエアブラシを用いて噴霧することにより基材に塗布して薄膜形成する工程とを含むことを特徴とする透明導電性薄膜の製造方法。
【請求項2】
金属性の単層カーボンナノチューブ(m-SWNTs)と半導体性の単層カーボンナノチューブ(s-SWNTs)とが混在する単層カーボンナノチューブを沸点が20~400℃のアミンを分散剤として含有するアミン溶液に分散する工程と、得られた分散液を遠心分離または濾過することによりm-SWNTsを濃縮し、m-SWNTs高含有の分散液を得る工程と、得られたm-SWNTs高含有の分散液を基材に塗布して薄膜とし、その後、薄膜を酸で処理することにより薄膜を形成する工程とを含むことを特徴とする透明導電性薄膜の製造方法。
【請求項3】
金属性の単層カーボンナノチューブ(m-SWNTs)と半導体性の単層カーボンナノチューブ(s-SWNTs)とが混在する単層カーボンナノチューブを沸点が20~400℃のアミンを分散剤として含有するアミン溶液に分散する工程と、得られた分散液を40,000~100,000Gかつ1~168時間の条件で遠心分離することによりm-SWNTsを濃縮し、m-SWNTs高含有の分散液を得る工程と、得られたm-SWNTs高含有の分散液を基材に塗布して薄膜形成する工程とを含むことを特徴とする透明導電性薄膜の製造方法。
【請求項4】
アミンは、1級アミン、2級アミン、3級アミン、および芳香族アミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の透明導電性薄膜の製造方法。
【請求項5】
アミンは、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、1-メチルプロピルアミン、トリエチルアミン、およびN,N,N’,N’-テトラメチレンジアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の透明導電性薄膜の製造方法。
【請求項6】
単層カーボンナノチューブをアミン溶液に分散させる際に超音波処理を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の透明導電性薄膜の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性薄膜とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ITO(Indium Tin Oxide)は、酸化インジウム(In2O3)に数%の酸化スズ(SnO2)を添加した化合物であり、導電性を有すると共に可視光透過率が約90%程度と透明性が高いため、主にフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)向けの電極として用いられ、近年、FPDの出荷量が増加しているためITO透明導電性薄膜の需要も拡大している。
【0003】
しかしながら、ITOの主成分であるインジウムは希少金属であるためインジウムの資源枯渇は深刻な問題であり、危機感が高まっていると共に、インジウムの価格の高騰が続いている。
【0004】
そのため、ITOの廃材を回収してインジウムをリサイクルする手法が提案され、さらに回収率を高める試みもなされているが、抜本的な解決方法として、ITO透明導電性薄膜に代わる材料開発が強く求められている。
【0005】
ITO透明導電性薄膜に代わる材料として、カーボンナノチューブの透明導電性薄膜が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1では、カーボンナノチューブを分散した状態で透明性基材上に配置することによって、波長550nmの光透過率95%で105~1011Ω/sq.の表面抵抗となることが開示されている。
【0006】
しかしながら、カーボンナノチューブのうち単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotubes:SWNTs)には、その合成過程において不可避的に金属性のもの(m-SWNTs)と半導体性のもの(s-SWNTs)とが混在しているが、SWNTsを用いた従来の薄膜においてはm-SWNTsとs-SWNTsとの混在については考慮されていない。そのため、薄膜の導電性と光透過性の両立には限界があった。
【0007】
また、SWNTsを用いた従来の薄膜形成技術ではSWNTsの分散剤として酸性ポリマーのアルキルアンモニウム塩やポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体などのポリマー(高分子)を用いていることから、その薄膜はSWNTs含有高分子薄膜として特徴づけられるものであり、特許文献1の場合にもその事情は同じである。このような薄膜では高分子分散剤が薄膜中に残存するため、薄膜の導電性と光透過性の両立および薄膜形成工程において一定の制約があった。
【0008】
なお、本発明者らはアミンを分散剤として用いた単層カーボンナノチューブの分散について研究を進めており、これまでに遠心分離等との組み合わせによってm-SWNTsを濃縮する技術を提案しているが(特許文献2参照)、それを用いた薄膜形成とその光透過性や導電率などの諸物性についてはこれまでに検討を行っておらず、具体的な事実は何ら明らかにされていない。

【特許文献1】特開2006-049843号公報
【特許文献2】国際公開WO2006/013788号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、導電性および光透過性のさらなる向上を可能とし、薄膜形成プロセスの簡便化も図ることができる単層カーボンナノチューブの透明導電性薄膜とその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0011】
第1:金属性の単層カーボンナノチューブ(m-SWNTs)と半導体性の単層カーボンナノチューブ(s-SWNTs)とが混在する単層カーボンナノチューブを沸点が20~400℃のアミンを分散剤として含有するアミン溶液に分散する工程と、得られた分散液を遠心分離または濾過することによりm-SWNTsを濃縮し、m-SWNTs高含有の分散液を得る工程と、得られたm-SWNTs高含有の分散液を基材に塗布して薄膜形成する工程とを含むことを特徴とする透明導電性薄膜の製造方法。
【0012】
第2:アミンは、1級アミン、2級アミン、3級アミン、および芳香族アミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記第1の透明導電性薄膜の製造方法。
【0013】
第3:アミンは、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、1-メチルプロピルアミン、トリエチルアミン、およびN,N,N’,N’-テトラメチレンジアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記第1または第2の透明導電性薄膜の製造方法。
【0014】
第4:単層カーボンナノチューブをアミン溶液に分散させる際に超音波処理を行うことを特徴とする上記第1から第3のいずれかの透明導電性薄膜の製造方法。
【0015】
第5:エアブラシを用いてm-SWNTs高含有の分散液を基材に噴霧して薄膜形成することを特徴とする上記第1から第4のいずれかの透明導電性薄膜の製造方法。
【0016】
第6:m-SWNTs高含有の分散液を基材に塗布した後、薄膜を塩酸で処理する工程を含むことを特徴とする上記第1から第5のいずれかの透明導電性薄膜の製造方法。
【0017】
第7:40,000~100,000Gかつ1~168時間の条件で分散液を遠心分離することを特徴とする上記第1から第6のいずれかの透明導電性薄膜の製造方法。
【0018】
第8:実質的に、金属性の単層カーボンナノチューブ(m-SWNTs)を含有する単層カーボンナノチューブからなり、波長400~800nmの範囲の可視光線の透過率が96~97%であり、表面抵抗率が5×104Ω/sq.未満であることを特徴とする透明導電性薄膜。
【0019】
第9:実質的に、金属性の単層カーボンナノチューブ(m-SWNTs)を含有する単層カーボンナノチューブからなり、波長400~800nmの範囲の可視光線の透過率が85~96%であり、表面抵抗率が1×104Ω/sq.未満であることを特徴とする透明導電性薄膜。
【発明の効果】
【0020】
本発明の製造方法によれば、アミンを分散剤として用いることで束状の単層カーボンナノチューブをほぐして分散することが可能であることから、この分散液を塗布して成膜することで導電性の高い薄膜が得られると共に、遠心分離または濾過によってm-SWNTsを濃縮してm-SWNTs高含有の分散液としていることから、単層カーボンナノチューブの使用量を少なくしても薄膜の導電性を大幅に高めることができ、高い導電性と光透過性を両立した薄膜を得ることができる。具体的には、m-SWNTsを濃縮しない場合に比べて例えば薄膜の表面抵抗率を50倍も高めることができる。
【0021】
また、分散剤やバインダーとしての有機高分子の使用を必須とせず、分散剤として低沸点のアミンを用いているので、単層カーボンナノチューブの分散、m-SWNTsの濃縮、および成膜操作をより一連の工程として簡便に行うことが可能となる。そして分散剤として低沸点のアミンを用いているので、分散液を基材に塗布した後、加熱や洗浄等によって容易にアミンを薄膜から除去することができ、導電性の低下に繋がり得る不純物としての分散剤を容易に除去することができるため導電性の高い薄膜を簡便に得ることができる。さらに、アミンを用いた単層カーボンナノチューブの分散と濃縮は化学反応を伴わないためm-SWNTsの導電性が低下することがない。
【0022】
また、低沸点アミンを用いることで、アミンの種類および濃度、遠心分離等の各条件を変更することにより分散液におけるm-SWNTsの濃縮率を容易に制御でき、その結果として薄膜の導電性を低導電率から高導電率まで広い範囲で容易に調整することができる。
【0023】
本発明の透明導電性薄膜は、ポリマー分散剤やバインダー等の高分子を実質的に含有せず、アミンを分散剤としてm-SWNTsを濃縮した単層カーボンナノチューブを塗布することにより形成したものであるので、単層カーボンナノチューブの使用量を少なくしても薄膜の導電性を大幅に高めることができ、高い導電性と光透過性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1における分散液1の単層カーボンナノチューブ(点線)および分散液2の単層カーボンナノチューブ(実線)の吸収スペクトルである。
【図2】実施例1における分散液1の単層カーボンナノチューブ(点線)および分散液2の単層カーボンナノチューブ(実線)の励起波長514.5nm、633nmでのラマンスペクトルである。
【図3】実施例1における光透過率と表面抵抗値との関係を分散液1、2のそれぞれについて示したグラフである。
【図4】実施例1における光透過率と表面抵抗値との関係を分散液1、2のそれぞれについて示したグラフである。
【図5】実施例2における光透過率と表面抵抗値との関係を分散液1、2のそれぞれについて示したグラフである。
【図6】m-SWNTsが濃縮された分散液1を用いて成膜した単層カーボンナノチューブ薄膜の電子顕微鏡写真である。
【図7】m-SWNTsが濃縮された分散液1を用いて成膜した単層カーボンナノチューブ薄膜の電子顕微鏡写真である。
【図8】m-SWNTsが濃縮された分散液1を用いて成膜した単層カーボンナノチューブ薄膜の原子間力顕微鏡写真である。
【図9】m-SWNTsが濃縮されていない分散液2を用いて成膜した単層カーボンナノチューブ薄膜の電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例5における分散液1の単層カーボンナノチューブ(点線)および分散液2の単層カーボンナノチューブ(実線)の吸収スペクトルである。
【図11】遠心分離条件を変更した場合の単層カーボンナノチューブ分散液の吸収スペクトル変化を示した図である。
【図12】プロピルアミン濃度を変更した場合の単層カーボンナノチューブ分散液の吸収スペクトル変化を示した図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明において、単層カーボンナノチューブとしては市販されているものなど各種の合成法によるものを用いることができる。一般的に用いられている単層カーボンナノチューブの直径は、例えば0.8~2.0nm程度である。また、単層カーボンナノチューブの種類によっては予め精製処理を行ったものを用いることが好ましい。例えば、単層カーボンナノチューブの合成法によっては、無定形炭素や金属触媒等の不純物が単層カーボンナノチューブに含まれてくるが、空気中における加熱処理を主とする酸化精製法を前処理として行うことで、m-SWNTsの濃縮度を調整した高純度SWNTs分散液が容易に調整でき、これを用いることで、m-SWNTsの含有量が調整されたSWNTs透明導電性薄膜を作製することができる。
【0027】
単層カーボンナノチューブの形態に特に制限はないが、薄膜の導電性を高める点からはより長いものが好ましい。すなわち、1本の単層カーボンナノチューブの導電性は高いが、単層カーボンナノチューブ間の電子移動の際の抵抗値が高いために薄膜の導電性としては理論予測されている程の性能は実際には出ない。しかし、単層カーボンナノチューブが長いほど広い範囲を1本でカバーでき、また単層カーボンナノチューブ同士の重なりの確率が高くなり、結果として1本1本の単層カーボンナノチューブの各々が導電性の向上に寄与するため、薄膜の導電性が向上する。
【0028】
通常の合成法による単層カーボンナノチューブは、金属性の単層カーボンナノチューブ(m-SWNTs)の含有率が約30%であるといわれているが、本発明においては、その割合は任意であってよい。
【0029】
本発明では、単層カーボンナノチューブとアミンとの電子的相互作用、そして金属性の単層カーボンナノチューブ(m-SWNTs)と半導体性の単層カーボンナノチューブ(s-SWNTs)とのアミンに対する相互作用の相違を利用して、束状の単層カーボンナノチューブを分離すると共にm-SWNTsを濃縮する。
【0030】
m-SWNTsとs-SWNTsとのアミンに対する相互作用は、アミンの種類にもよるが、典型的には、m-SWNTsの強い電子受容性によってm-SWNTsとアミンとの間にs-SWNTsとアミンとの間よりも強い相互作用が生じるものと考えられる。より詳細には、m-SWNTsはアミンの窒素原子の電子に対して強い電子受容性を有するので両者間に強い相互作用が生じる。このような強い相互作用によって、m-SWNTsは束状から非束状の1本ずつ孤立したm-SWNTsに分散する。一方、非分散状態で固まっている比重が大きいs-SWNTsは沈殿物として沈むため、m-SWNTsが分散した上澄み液を分離することでm-SWNTsを濃縮することができる。
【0031】
分散剤のアミンとしては、沸点20~400℃、好ましくは20~300℃のアミン、例えば脂肪族アミン、環式アミン、酸アミドなどの1~3級アミン、芳香族アミンなどを用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
脂肪族アミンの具体例としては、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、1-メチルプロピルアミン、n-オクチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジオクチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリオクチルアミン、N,N-ジメチル-n-オクチルアミン等のモノアミン;エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等のジアミン;ジエチレントリアミン、N-(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン等のトリアミンなどが挙げられる。
【0033】
環式アミンの具体例としては、シクロヘキシルアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセンなどが挙げられる。
【0034】
芳香族アミンの具体例としては、ピペリジン、1-メチルピペリジンなどが挙げられる。
【0035】
酸アミドの具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0036】
中でも、m-SWNTsの濃縮を効率的に行うことができる点からは、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、1-メチルプロピルアミン、トリエチルアミン、およびN,N,N’,N’-テトラメチレンジアミンから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0037】
本発明において、アミン溶液の溶媒としては、アミンと親媒性があるものであれば特に制限はないが、その具体例としてはテトラヒドロフラン(THF)、アルコール、グリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
また、アミン溶液には界面活性剤や消泡剤等の添加剤を加えることもできる。但し、ポリマー分散剤や、熱可塑性樹脂等のバインダーなどの有機高分子は、薄膜物性を低下させたり薄膜形成プロセスを複雑化したりする場合があり、有機高分子は薄膜物性や薄膜形成プロセスの簡便化の観点からは使用を避けることが望ましい。
【0039】
単層カーボンナノチューブをアミン溶液に分散させる際には超音波処理を行うことが好ましい。超音波処理は、例えば1分~168時間超音波照射することにより行うことができる。
【0040】
アミン溶液におけるアミン濃度は、特に制限はないが、例えば1~5Mの範囲内である。
【0041】
単層カーボンナノチューブの分散液を遠心分離または濾過することによりm-SWNTsを濃縮し、m-SWNTs高含有の分散液を得ることができる。遠心分離は、好ましくは100~100,000G、より好ましくは40,000~100,000Gのパワーにて、好ましくは1分~168時間、より好ましくは1~168時間で行うことができ、遠心分離のパワーや時間を調整することによって、m-SWNTsの含有率を調整することもできる。遠心分離のパワーを上げるか、あるいは時間を長くすることで、m-SWNTsの含有率が増加する。
【0042】
また、溶媒の比重を変更することで、分散液に対する非分散s-SWNTsの相対的な比重を変えることができるため、溶媒の比重によってもm-SWNTsの含有率を制御することができる。
【0043】
このようにして得られたm-SWNTs高含有の分散液を基材に塗布して成膜する際には、エアブラシ等を用いて噴霧塗布する方法、LB(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett)法、ディップコーティング、スピンコーティング、乾燥法、濾過法等を用いることができる。中でも、エアブラシを用いることで、m-SWCNT高含有の分散液から薄膜を直接に形成でき、さらに薄膜の透過率を容易に調整することができる。
【0044】
基材としては、固体基板、透明性(例えば可視光透過率が80%以上)の樹脂のフィルムやシート、ガラス板等が例示される。
【0045】
m-SWNTs高含有の分散液を基材に塗布した後、加熱、減圧、溶剤による洗浄などによりアミンを除去することができる。溶剤としては、例えばエタノール、エーテル、脂肪族炭化水素系溶剤などを用いることができる。
【0046】
なお、m-SWNTs高含有の分散液を基材に塗布した後、薄膜を塩酸で処理することにより、薄膜の導電性をさらに高めることができる。特に、s-SWNTs含有量の高い薄膜において塩酸処理により大幅に導電性が向上するが、これは塩酸処理によって薄膜中のs-SWNTsに対するドーピングが起きることによるものと考えられる。
【0047】
このようにして、導電性、光透過性が共に優れた透明導電性薄膜が得られる。薄膜は、目立つ不純物のない密で均一な単層カーボンナノチューブのネットワークとして電子顕微鏡などにより観察できる。膜厚は、特に制限はないが例えば10~100nmとすることができる。
【0048】
本発明の方法により得られる単層カーボンナノチューブ薄膜は、条件を適切に制御することで導電性を広範囲で制御できるが、本発明によれば例えば次の薄膜を得ることができる。
i) 実質的に、金属性の単層カーボンナノチューブ(s-SWNTs)を含有する単層カーボンナノチューブからなり、波長400~800nmの範囲の可視光線の透過率が96~97%であり、表面抵抗率が5×104Ω/sq.未満、好ましくは1×104Ω/sq.未満である透明導電性薄膜。
ii) 実質的に、金属性の単層カーボンナノチューブ(s-SWNTs)を含有する単層カーボンナノチューブからなり、波長400~800nmの範囲の可視光線の透過率が85~96%であり、表面抵抗率が1×104Ω/sq.未満である透明導電性薄膜。
【0049】
なお、ここで「実質的に」とは不揮発性の高分子量成分、例えばポリマー分散剤や、熱可塑性樹脂等のバインダーなどを多量に含有しないことを意味する。
【0050】
例えば実施例に示す単層カーボンナノチューブのように直径分布の広いSWNTs(一例として、0.9~1.3nmの直径分布をもつもの)の場合には、ラマンスペクトルのピーク面積比からm-SWNTsの見かけの濃縮率を算出することが可能であるが、この場合、m-SWNTsの濃縮処理によって、ラマンスペクトルのRBMにおけるm-SWNTsの割合:(m-SWNTsRBM/( m-SWNTsRBM + s-SWNTsRBM)×100)が励起波長514.5nmの測定で94%以上、かつ励起波長633nmの測定で80%以上である分散液とすることが考慮される。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
m-SWNTsとs-SWNTsとが束状に混合した単層カーボンナノチューブ(HiPcoチューブ、Carbon Nanotechnologies, Inc.製)4mgを5Mのプロピルアミン溶液(溶媒:テトラヒドロフラン)に添加した後、超音波処理を5~10℃で2時間行い単層カーボンナノチューブを均一に分散した。次いで45,620Gの遠心分離を12時間行い分散液を調製した(以下「分散液1」と言う。)。
【0052】
一方、上記の単層カーボンナノチューブ4mgを1Mのプロピルアミン溶液(溶媒:テトラヒドロフラン)に添加した後、超音波処理を5~10℃で2時間行い単層カーボンナノチューブを均一に分散した。次いで14,000Gの遠心分離を1時間行い分散液を調製した(以下「分散液2」と言う。)。
【0053】
これらの分散液1、2の単層カーボンナノチューブについて分光分析を行った。図1は波長400~1600nmの吸収スペクトルを示している。吸収スペクトルの測定は分光光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用いて行った。分散液1の単層カーボンナノチューブ(点線)では400~650nmにおいてシャープなピークが現れているが、これはTHF溶液にプロピルアミンを添加することでm-SWNTsが1本ずつほぐれて非バンドル化することを示している。また、分散液2の単層カーボンナノチューブ(実線)に比べてm-SWNTsの第一バンド遷移(400~650nm)における吸収が増大しs-SWNTsの第二バンド遷移(550~900nm)における吸収が減衰していることから、分散液1ではm-SWNTsが濃縮されていることが分かる。
【0054】
図2は514.5nm励起と633nm励起のラマンスペクトルを示している。ラマンスペクトルの測定はラマン分光器(HR-800、(株)堀場製作所製)を用いて行った。分散液1の単層カーボンナノチューブ(点線)ではm-SWNTsに起因するRadical Breathing Modes(RBM)のピークが260cm-1と200cm-1の付近に現れた。一方、分散液2の単層カーボンナノチューブ(実線)ではs-SWNTsに起因するRBMのピークが180cm-1と260cm-1の付近に現れた。
【0055】
1600cm-1付近のtangential G bandは、m-SWNTsとs-SWNTsとを容易に識別できる特徴的なバンドであり、分散液1の単層カーボンナノチューブの場合にtangential G bandにおける強いBreit-Winger-Fano線形成分が観察されたことによりm-SWNTsが濃縮されていることが分かる。
【0056】
また、分散液2について、遠心分離前後の各分散液の単層カーボンナノチューブの吸収スペクトル測定を行ったところ、m-SWNTsとs-SWNTsの特性吸収の強度比には差が見られず、ラマンスペクトル測定の結果も同様にm-SWNTsとs-SWNTsの特性吸収の強度比には差が見られなかったことから、分散液2では遠心分離前後においてm-SWNTsの含有率に差がないことが示された。
【0057】
なお、ラマンスペクトルのRBMにおけるm-SWNTsの割合:(m-SWNTsRBM/( m-SWNTsRBM + s-SWNTsRBM)×100)は、分散液1では94%(励起波長514.5nm)、87%(励起波長633nm)であり、分散液2では91%(励起波長514.5nm)、43%(励起波長633nm)であった。
【0058】
次に、約85℃のホットプレート上に設置した厚さ100μmの市販のPETシート(透過率:86.5%)の表面に、エアブラシを用いて分散液1を均一に塗布し、ホットプレートの加熱により溶媒のテトラヒドロフランと分散剤のプロピルアミンを蒸発除去した。その後、薄膜をメタノールで洗浄してアミン残渣を除去することにより単層カーボンナノチューブ薄膜付きPETシートを得た。
【0059】
単層カーボンナノチューブ薄膜を走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡で観察したところ、単層カーボンナノチューブの凝集塊は存在しておらず、多数の単層カーボンナノチューブが一本ずつ分離した状態で均一に分散し、ランダムに交差した状態で接触していることが確認された。
【0060】
この単層カーボンナノチューブ薄膜の表面抵抗率を四探針法抵抗率測定装置(ロレスター、三菱化学(株)製)により室温、大気中にて測定したところ、表面抵抗率は9.0×103Ω/sq.であった。
【0061】
また、単層カーボンナノチューブ薄膜付きPETシートと、元のPETシートのそれぞれの波長400~800nmの可視光線の範囲における透過率を分光光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用いて測定し、それらの差から単層カーボンナノチューブ薄膜の透過率を導出したところ、透過率は97.1%であった。
【0062】
一方、分散液2についても上記と同様の方法によりPETシート表面に成膜して単層カーボンナノチューブ薄膜を得た。単層カーボンナノチューブ薄膜を走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡で観察したところ、単層カーボンナノチューブの凝集塊は存在しておらず、多数の単層カーボンナノチューブが一本ずつ分離した状態で均一に分散し、ランダムに交差した状態で接触していることが確認された。
【0063】
この単層カーボンナノチューブ薄膜の表面抵抗率を四探針法抵抗率測定装置(ロレスター、三菱化学(株)製)により室温、大気中にて測定したところ、表面抵抗率は2.15×105Ω/sq.であった。
【0064】
また、単層カーボンナノチューブ薄膜付きPETシートと、元のPETシートのそれぞれの波長400~800nmの可視光線の範囲における透過率を分光光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用いて測定し、それらの差から単層カーボンナノチューブ薄膜の透過率を導出したところ、透過率は96.6%であった。
<実施例2>
約85℃のホットプレート上に設置した厚さ2mmの市販の石英ガラス(透過率:93.3%)の表面に、エアブラシを用いて実施例1で得た分散液1を均一に塗布し、ホットプレートの加熱により溶媒のテトラヒドロフランと分散剤のプロピルアミンを蒸発除去した。その後、薄膜をメタノールで洗浄してアミン残渣を除去することにより単層カーボンナノチューブ薄膜付き石英ガラスを得た。
【0065】
単層カーボンナノチューブ薄膜の膜厚は、表面形状測定装置により測定した値で28nmであった。また、単層カーボンナノチューブ薄膜を走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡で観察したところ、単層カーボンナノチューブの凝集塊は存在しておらず、多数の単層カーボンナノチューブが一本ずつ分離した状態で均一に分散し、ランダムに交差した状態で接触していることが確認された。
【0066】
この単層カーボンナノチューブ薄膜の表面抵抗率を四探針法抵抗率測定装置(ロレスター、三菱化学(株)製)により室温、大気中にて測定したところ、表面抵抗率は8.0×102Ω/sq.であった。
【0067】
また、単層カーボンナノチューブ薄膜付き石英ガラスと、元の石英ガラスのそれぞれの波長400~800nmの可視光線の範囲における透過率を分光光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用いて測定し、それらの差から単層カーボンナノチューブ薄膜の透過率を導出したところ、透過率は80.7%であった。
【0068】
一方、分散液2についても上記と同様の方法により石英ガラス表面に成膜して単層カーボンナノチューブ薄膜を得た。単層カーボンナノチューブ薄膜の膜厚は、表面形状測定装置により測定した値で30nmであった。また、単層カーボンナノチューブ薄膜を走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡で観察したところ、単層カーボンナノチューブの凝集塊は存在しておらず、多数の単層カーボンナノチューブが一本ずつ分離した状態で均一に分散し、ランダムに交差した状態で接触していることが確認された。
【0069】
この単層カーボンナノチューブ薄膜の表面抵抗率を四探針法抵抗率測定装置(ロレスター、三菱化学(株)製)により室温、大気中にて測定したところ、表面抵抗率は8.6×103Ω/sq.であった。
【0070】
また、単層カーボンナノチューブ薄膜付き石英ガラスと、元の石英ガラスのそれぞれの波長400~800nmの可視光線の範囲における透過率を分光光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用いて測定し、それらの差から単層カーボンナノチューブ薄膜の透過率を導出したところ、透過率は78.2%であった。
<実施例3>
実施例1の分散液1、2について、エアブラシによる噴霧量を調整して薄膜の膜厚を制御し、実施例1と同様の方法でPETシート表面に膜厚の異なる複数の単層カーボンナノチューブ薄膜を成膜した。
【0071】
これらの単層カーボンナノチューブ薄膜の光透過率と表面抵抗率の測定値の関係を図3、図4、および表1に示す。
【0072】
【表1】
JP0005150630B2_000002t.gif

【0073】
アミンを分散剤として用いてm-SWNTsを濃縮し、このm-SWNTs高含有の分散液を用いて成膜することにより、単層カーボンナノチューブの使用量を少なくしても薄膜の導電性を大幅に高めることができ、高い導電性と光透過性を両立した薄膜を得ることができた。さらに、アミン濃度、遠心分離等の各条件を変更することにより分散液におけるm-SWNTsの濃縮率を容易に制御でき、その結果として薄膜の導電性を低導電率から高導電率まで広い範囲で容易に調整することができた。
【0074】
なお、m-SWNTs高含有の分散液を成膜した後、メタノールで洗浄後に12N塩酸に30分間浸漬したものでは、薄膜の導電性をさらに高めることができた。特に、s-SWNTs含有量の高い薄膜である分散液2による薄膜において塩酸処理により大幅に導電性が向上した。
【0075】
なお、m-SWNTsが濃縮された分散液1を用いて成膜した単層カーボンナノチューブ薄膜の電子顕微鏡写真を図6、図7に(図6:透過率99.4%、表面抵抗率360×103Ω/sq.、図7:透過率98.7%、表面抵抗率24×103Ω/sq.)に、原子間力顕微鏡写真を図8に(透過率99.4%、表面抵抗率360×103Ω/sq.)示す。また、m-SWNTsが濃縮されていない分散液2を用いて成膜した単層カーボンナノチューブ薄膜の電子顕微鏡写真を図9に(透過率98.8%、表面抵抗率1190×103Ω/sq.)示す。
<実施例4>
実施例2の分散液1、2について、エアブラシによる噴霧量を調整して薄膜の膜厚を制御し、実施例2と同様の方法で石英ガラス表面に膜厚の異なる複数の単層カーボンナノチューブ薄膜を成膜した。
【0076】
これらの単層カーボンナノチューブ薄膜の光透過率と表面抵抗率の測定値の関係を図5および表1に示す。アミンを分散剤として用いてm-SWNTsを濃縮し、このm-SWNTs高含有の分散液を用いて成膜することにより、単層カーボンナノチューブの使用量を少なくしても薄膜の導電性を大幅に高めることができ、高い導電性と光透過性を両立した薄膜を得ることができた。さらに、アミン濃度、遠心分離等の各条件を変更することにより分散液におけるm-SWNTsの濃縮率を容易に制御でき、その結果として薄膜の導電性を低導電率から高導電率まで広い範囲で容易に調整することができた。
<実施例5>
360℃にて熱処理をしたm-SWNTsとs-SWNTsとが束状に混合した単層カーボンナノチューブ(CarboLex AP-Grade、CarboLex, Inc.製)10mgを3Mのプロピルアミン溶液(溶媒:テトラヒドロフラン)に添加した後、超音波処理を5~10℃で2時間行い単層カーボンナノチューブを均一に分散した。次いで45,620Gの遠心分離を12時間行い分散液を調製した(以下「分散液1」と言う。)。
【0077】
一方、上記の熱処理をした単層カーボンナノチューブ10mgを1Mのプロピルアミン溶液(溶媒:テトラヒドロフラン)に添加した後、超音波処理を5~10℃で2時間行い単層カーボンナノチューブを均一に分散した。次いで14,000Gの遠心分離を12時間行い分散液を調製した(以下「分散液2」と言う。)。
【0078】
これらの分散液1、2の単層カーボンナノチューブについて分光分析を行った。図10は波長400~1400nmの吸収スペクトルを示している。吸収スペクトルの測定は分光光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用いて行った。分散液1の単層カーボンナノチューブ(点線)では500~800nmにおいてシャープなピークが現れているが、これはTHF溶液にプロピルアミンを添加することでm-SWNTsが1本ずつほぐれて非バンドル化することを示している。また、分散液2の単層カーボンナノチューブ(実線)に比べてm-SWNTsの第一バンド遷移(600~800nm)における吸収が増大しs-SWNTsの第二バンド遷移(850~1200nm)における吸収が減衰していることから、分散液1ではm-SWNTsが濃縮されていることが分かる。
【0079】
また、分散液2について、単層カーボンナノチューブ(実線)の吸収スペクトルを行ったところ、分散液1の単層カーボンナノチューブ(点線)に比べてm-SWNTsの第一バンド遷移(600~800nm)における吸収が減少しs-SWNTsの第二バンド遷移(850~1200nm)における吸収が増加していることから、分散液2ではm-SWNTsが濃縮されていないことが分かる。
【0080】
次に、約85℃のホットプレート上に設置した厚さ100μmの市販のPETシート(透過率:86.5%)の表面に、エアブラシを用いて分散液1を均一に塗布し、ホットプレートの加熱により溶媒のテトラヒドロフランと分散剤のプロピルアミンを蒸発除去した。その後、薄膜をメタノールで洗浄してアミン残渣を除去することにより単層カーボンナノチューブ薄膜付きPETシートを得た。
【0081】
この単層カーボンナノチューブ薄膜の表面抵抗率を四探針法抵抗率測定装置(ロレスター、三菱化学(株)製)により室温、大気中にて測定したところ、表面抵抗率は920Ω/sq.であった。
【0082】
また、単層カーボンナノチューブ薄膜付きPETシートと、元のPETシートのそれぞれの波長400~800nmの可視光線の範囲における透過率を分光光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用いて測定し、それらの差から単層カーボンナノチューブ薄膜の透過率を導出したところ、透過率は81.9%であった。
【0083】
一方、分散液2についても上記と同様の方法によりPETシート表面に成膜して単層カーボンナノチューブ薄膜を得た。この単層カーボンナノチューブ薄膜の表面抵抗率を四探針法抵抗率測定装置(ロレスター、三菱化学(株)製)により室温、大気中にて測定したところ、表面抵抗率は1.8×103Ω/sq.であった。
【0084】
また、単層カーボンナノチューブ薄膜付きPETシートと、元のPETシートのそれぞれの波長400~800nmの可視光線の範囲における透過率を分光光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用いて測定し、それらの差から単層カーボンナノチューブ薄膜の透過率を導出したところ、透過率は80.5%であった。
<参考例1>
各種アミンについてテトラヒドロフランを溶媒として1M、3M、5Mのアミン溶液を調製し、実施例1と同様の条件で単層カーボンナノチューブ(精製HiPco)の分散および遠心分離を行った。
【0085】
得られた分散液について、実施例1と同様に吸収スペクトルを測定し、波長400nmにおける吸光度(λ400nm)、波長550nmにおける吸光度(λ550nm)、および波長800nmにおける吸光度(λ800nm)を導出した。ここで、λ400nmはSWNTsの分散度を示し、λ550nmはm-SWNTsの分散度を示し、λ800nmはs-SWNTsの分散度を示す指標となる。λ550nmとλ800nmの値からm-SWNTsの濃縮度が推定できる。
【0086】
1Mアミン溶液の結果を表2に、3Mアミン溶液の結果を表3に、5Mアミン溶液の結果を表4に示す。
【0087】
【表2】
JP0005150630B2_000003t.gif

【0088】
【表3】
JP0005150630B2_000004t.gif

【0089】
【表4】
JP0005150630B2_000005t.gif

【0090】
表2~4より、アミンの種類および濃度を変更することにより分散液におけるm-SWNTsの濃縮率を広範囲で容易に制御できることが分かる。
【0091】
図11は、オクチルアミンを用いて、遠心分離時間を変更した場合の単層カーボンナノチューブ分散液の吸収スペクトル変化を示す。遠心分離時間を7時間、12時間、24時間とすることで、m-SWNTs含有率も変化することが吸収スペクトルから確認できる。
【0092】
図12は、プロピルアミンを用いて、プロピルアミン濃度を1Mから9Mまで変更した場合の単層カーボンナノチューブ分散液の吸収スペクトル変化を示す。濃度を1M、3M、5M、7M、9Mとすることで、m-SWNTs含有率も変化することが吸収スペクトルから確認できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図10】
5
【図11】
6
【図12】
7
【図6】
8
【図7】
9
【図8】
10
【図9】
11