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明細書 :抗原濃度測定法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5137266号 (P5137266)
登録日 平成24年11月22日(2012.11.22)
発行日 平成25年2月6日(2013.2.6)
発明の名称または考案の名称 抗原濃度測定法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 19/00
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/00 101
G01N 33/53 D
請求項の数または発明の数 9
全頁数 26
出願番号 特願2009-525286 (P2009-525286)
出願日 平成20年7月30日(2008.7.30)
国際出願番号 PCT/JP2008/002049
国際公開番号 WO2009/016839
国際公開日 平成21年2月5日(2009.2.5)
優先権出願番号 2007201147
優先日 平成19年8月1日(2007.8.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年8月1日(2011.8.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】上田 宏
【氏名】小嶋 美樹
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】飯室 里美
参考文献・文献 米国特許出願公開第2003/0165825(US,A1)
国際公開第2005/072392(WO,A1)
Anal.Chem.,2002年,Vol.74,p.2500-2504
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1999年,Vol.96,p.11241-11246
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2002年,Vol.99, No.6,p.3469-3474
調査した分野 C12N 15/09 - 15/90
C07K 19/00
G01N 33/53
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
抗体のV領域を含むポリペプチド;所定のタンパク質;リンカーペプチド:前記タンパク質と結合する活性を有し、前記タンパク質との結合の有無が検出可能であるパートナータンパク質;及び、前記抗体のV領域を含むポリペプチド;をこの順又はこの順の逆の順で含んでなり
所定のタンパク質とパートナータンパク質との組み合わせが、βラクタマーゼのN末端側フラグメントを含むタンパク質とβラクタマーゼのC末端側フラグメントを含むタンパク質との組み合わせであり、
前記V領域を含むポリペプチド及びV領域を含むポリペプチドの抗原に対する結合の有無により前記タンパク質と前記パートナータンパク質の結合の有無が生じ、及び、
前記タンパク質と前記パートナータンパク質の結合の有無を、βラクタマーゼのβラクタマーゼ活性の変化により検出可能であることを特徴とする
融合タンパク質。
【請求項2】
リンカーペプチドが、Asp-Lys-Serからなるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質
【請求項3】
βラクタマーゼのN末端側フラグメントを含むタンパク質が、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、βラクタマーゼのC末端側フラグメントを含むタンパク質が、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
所定のタンパク質;リンカーペプチド:パートナータンパク質の配列が、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするDNA。
【請求項6】
請求項に記載のDNAを有する組換えベクター。
【請求項7】
請求項に記載の組換えベクターで形質転換された形質転換細胞。
【請求項8】
サンプル中の抗原を検出する方法であって、V領域を含むポリペプチド及びV領域を含むポリペプチドが前記抗原に結合し得る請求項1~のいずれかに記載の融合タンパク質又は請求項に記載の形質転換細胞をサンプルに接触させる工程、及び、前記融合タンパク質又は前記形質転換細胞が発現する融合タンパク質における所定のタンパク質とパートナータンパク質の結合を、βラクタマーゼのβラクタマーゼ活性の変化により検出する工程を有することを特徴とする抗原の検出方法。
【請求項9】
所定のタンパク質とパートナータンパク質が、互いに結合していない場合に比べて互いに結合すると所定のタンパク質及び/又はパートナータンパク質が発揮するβラクタマーゼ活性が変化するタンパク質である請求項1~のいずれかに記載の融合タンパク質又は請求項に記載の形質転換細胞;及び、前記βラクタマーゼ活性の変化を検出し得る発色基質又は発光基質;を備えたことを特徴とする抗原の検出用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体酵素融合タンパク質、及び、該抗体酵素融合タンパク質を用いた抗原の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体を用いた免疫測定法として、酵素標識固相免疫測定法(ELISA)等が広く用いられている。しかし、抗原が低分子である場合は、第一に抗体の抗原結合部位(パラトープ)と抗原との界面積が小さくなるため、第二に抗原が小さすぎて感度の良いサンドイッチ法が適用できず競合法によって測定せざるを得ないため、ELISA法等は低分子抗原に対しては感度が低下するという問題があった。そのため、低分子抗原についても非競合的に高感度で測定し得る方法が開発されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、低分子である4-hydroxy-3-nitrophencetyl(NP)を高感度で検出する方法であって、NPに結合するB1-8抗体のV領域ポリペプチド及び大腸菌βガラクトシダーゼのαフラグメントからなる融合タンパク質(V領域ポリペプチドはαフラグメントのN末端側に結合)と、前記抗体のV領域ポリペプチド及び大腸菌βガラクトシダーゼのωフラグメントからなる融合タンパク質(V領域ポリペプチドはωフラグメントのN末端側に結合)とを用いた方法が開示されている。この方法は、一方の融合タンパク質におけるV領域ポリペプチドと、他方の融合タンパク質におけるV領域ポリペプチドが、NP抗原を介して相互作用すると、両融合タンパク質におけるαフラグメントとωフラグメントが結合し、その結果生じるβガラクトシダーゼ活性の上昇(いわゆる活性相補)を検出することによって、NP抗原の検出を行う。この方法により、低分子抗原についても、従来のELISA法に比べて高感度で測定することが可能となった。また、この方法は、通常のELISA法とは異なり、結合しなかった標識2次抗体(非競合法)や標識抗原(競合法)などを洗浄する操作を要することなく測定し得る測定法(ホモジニアス法)であり、測定装置の自動化が容易で迅速な測定が可能という点で、通常のELISA法に比べてメリットがあった。しかし、この方法により高感度で測定するには、用いる両融合タンパク質の濃度設定をある程度正確に行う必要があるなど、検出の簡便性、効率性、安定性などに関して改善の余地があった。
【0004】

【非特許文献1】Anal. Chem., 74, 2500-2504 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景技術を改善したもので、検出対象である抗原が低分子抗原であっても、より簡便、効率的、安定性良くかつ高感度で検出し得る検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、V領域ポリペプチドと酵素タンパク質の一部を含む融合タンパク質と、V領域ポリペプチドと上記酵素タンパク質の残部を含む融合タンパク質をリンカーペプチドで結合することによって、非特許文献1の方法の不十分な点を顕著に改善し得ることを見いだした。すなわち、本発明者らは、イミダクロプリド(ICP)を認識する抗体のV領域ポリペプチド、βラクタマーゼ(BLA)の一部のポリペプチド、リンカーペプチド、前記BLAの別の一部のポリペプチド、及び、前記抗体のV領域ポリペプチドをこの順で含んでなる融合タンパク質を発現させた大腸菌と、非常に低濃度のICP抗原とを接触させたところ、該大腸菌内のBLA活性がICP抗原の濃度依存的に、かつ、リンカーペプチドを持たない分子に比べて著しく感度良く上昇することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち具体的には本発明は(1)抗体のV領域を含むポリペプチド;所定のタンパク質;リンカーペプチド:前記タンパク質と結合する活性を有し、前記タンパク質との結合の有無が検出可能であるパートナータンパク質;及び、前記抗体のV領域を含むポリペプチド;をこの順又はこの順の逆の順で含んでなり、所定のタンパク質とパートナータンパク質との組み合わせが、βラクタマーゼのN末端側フラグメントを含むタンパク質とβラクタマーゼのC末端側フラグメントを含むタンパク質との組み合わせであり、前記V領域を含むポリペプチド及びV領域を含むポリペプチドの抗原に対する結合の有無により前記タンパク質と前記パートナータンパク質の結合の有無が生じ、及び、前記タンパク質と前記パートナータンパク質の結合の有無を、βラクタマーゼのβラクタマーゼ活性の変化により検出可能であることを特徴とする融合タンパク質や、(2)リンカーペプチドが、Asp-Lys-Serからなるアミノ酸配列であることを特徴とする前記(1)に記載の融合タンパク質や、)βラクタマーゼのN末端側フラグメントを含むタンパク質が、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、βラクタマーゼのC末端側フラグメントを含むタンパク質が、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする前記(又は(2)に記載の融合タンパク質や、(4)所定のタンパク質;リンカーペプチド:パートナータンパク質の配列が、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれかに記載の融合タンパク質や、()前記(1)~()のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするDNAや、()前記()に記載のDNAを有する組換えベクターや、()前記()に記載の組換えベクターで形質転換された形質転換細胞や、()サンプル中の抗原を検出する方法であって、V領域を含むポリペプチド及びV領域を含むポリペプチドが前記抗原に結合し得る前記(1)~()のいずれかに記載の融合タンパク質又は前記()に記載の形質転換細胞をサンプルに接触させる工程、及び、前記融合タンパク質又は前記形質転換細胞が発現する融合タンパク質における所定のタンパク質とパートナータンパク質の結合を、βラクタマーゼのβラクタマーゼ活性の変化により検出する工程を有することを特徴とする抗原の検出方法や、()所定のタンパク質とパートナータンパク質が、互いに結合していない場合に比べて互いに結合すると所定のタンパク質及び/又はパートナータンパク質が発揮するβラクタマーゼ活性が変化するタンパク質である前記(1)~()のいずれかに記載の融合タンパク質又は前記()に記載の形質転換細胞;及び、前記βラクタマーゼ活性の変化を検出し得る発色基質又は発光基質;を備えたことを特徴とする抗原の検出用キットに関する。なお、本明細書中の配列は、5’側から3’側にかけて記載している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】V領域ポリペプチド及びV領域ポリペプチドの抗原に対する結合の有無による本発明の融合タンパク質の構造変化の模式図を示す。
【図2】本発明の抗体-円順列変異体BLA混成タンパク質発現ベクターのコンストラクト、及び、該ベクターの調製に用いたコンストラクトを示す図である。
【図3】抗体-リンカー欠如円順列変異体BLA混成タンパク質発現ベクターのコンストラクトを示す図である。
【図4】抗体-リンカー欠如円順列変異体BLA混成タンパク質発現ベクターの調製に用いたコンストラクト、及び、該コンストラクトの調製方法の概要を示す図である。
【図5】円順列変異体BLA混成タンパク質発現ベクターのコンストラクトを示す図である。
【図6】ICPの存在下又は非存在下での大腸菌の生育を示す図である。
【図7】アンピシリン存在下若しくは非存在下、及び、ICPやTCPの存在下又は非存在下でのV-cpBLA-V/pET26/BL21株の生育を示す図である。
【図8】アンピシリン存在下若しくは非存在下、及び、ICPやTCPの存在下又は非存在下でのV-split・cpBLA-V/pET26/C43株の生育を示す図である。
【図9】抗原(TCP若しくはICP)存在下又は非存在下で培養したV-cpBLA-V/pET26/BL21株の菌体を用いたウェスタンブロットの結果を示す図である。
【図10】V-cpBLA-V/pET26/BL21株から部分精製したタンパク質のSDS-PAGEの結果を示す図である。
【図11】精製抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V)のICP結合活性を示す図である。
【図12】Nitrocefinを基質とした、精製抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V)のICP/TCP添加による活性変化を示す図である。
【図13】Fluorocillinを基質とした、精製抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V)のICP/TCP添加による活性変化を示す図である。
【図14】Fluorocillinを基質とした、精製抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V(219))のBGP-C7ペプチド添加による活性変化を示す図である。
【図15】Fluorocillinを基質とした、精製抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V(219))の各種BGPペプチド/ICP/TCP添加による活性変化を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の融合タンパク質としては、抗体のV領域を含むポリペプチド;所定のタンパク質;リンカーペプチド:前記タンパク質と結合する活性を有し、前記タンパク質との結合の有無が検出可能であるパートナータンパク質;及び、前記抗体のV領域を含むポリペプチド;をこの順又はこの順の逆の順で含んでなり、かつ、前記V領域を含むポリペプチド及びV領域を含むポリペプチドの抗原に対する結合の有無により前記タンパク質と前記パートナータンパク質の結合の有無が生じる融合タンパク質であれば特に制限されない。なお、V領域を含むポリペプチド及びV領域を含むポリペプチドの抗原に対する結合の有無による本発明の融合タンパク質の構造変化の模式図を図1に示す。
【0010】
本発明の融合タンパク質に用いるV領域を含むポリペプチド(以下、「V領域ポリペプチド」ともいう。)やV領域を含むポリペプチド(以下、「V領域ポリペプチド」ともいう。)としては、所定の抗原に特異的に結合する抗体のV領域ポリペプチドやV領域ポリペプチドであり、かつ、本発明の融合タンパク質において用いた場合に、V領域ポリペプチド及びV領域ポリペプチドの抗原に対する結合の有無により、所定のタンパク質とそのパートナータンパク質の結合の有無が生じるものであれば特に制限されず、例えば4-hydroxy-3-nitrophencetyl(NP)に結合するB1-8抗体のV領域ポリペプチド(アミノ酸配列:配列番号1; 塩基配列:配列番号2)やV領域ポリペプチド(アミノ酸配列:配列番号3; 塩基配列:配列番号4)、リゾチームに結合するHyHEL-10のV領域ポリペプチドやV領域ポリペプチド(Nat. Biotechnol., 14, 1714-1718 (1996); J.Immunol. Methods, 224, 171-184 (1999))、イミダクロプリド(ICP)に結合する抗体(33C3-1-1:FERM P-17094で寄託されたハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体:特開2000-191698号公報)のV領域ポリペプチドやV領域ポリペプチド、オステオカルシンC末ペプチドに結合する抗体KTM219のV領域ポリペプチドやV領域ポリペプチド(Anal. Chem. 79, 6197 (2007))を好ましく例示することができる。
なお、本発明の融合タンパク質に用いるV領域ポリペプチドやV領域ポリペプチドとしては、V領域からなるポリペプチドやV領域からなるポリペプチドを好ましく例示することができ、また、所定の抗原に特異的に結合する限り、V領域の一部に変異や挿入、欠失を導入したポリペプチドやV領域の一部に変異や挿入、欠失を導入したポリペプチドも用いることができる。該変異、挿入、欠失としては特に制限されないが、好ましくは10アミノ酸以下、より好ましくは5アミノ酸以下、さらに好ましくは3アミノ酸以下、さらにより好ましくは1アミノ酸以下の変異、挿入又は欠失である。
【0011】
本発明の融合タンパク質に用いるV領域ポリペプチドやV領域ポリペプチドの調製方法としては特に制限されず、配列公知の抗体から調製してもよいし、また、慣用のプロトコール(例えば特表2006-523088号公報参照)を用いて、目的抗原に対する抗体を作製し、さらに、その抗体のV領域ポリペプチドやV領域ポリペプチドをコードするDNA配列をクローニングするなどして、本発明の融合タンパク質に用いるポリペプチドやそれをコードするDNA配列を入手し、該DNA配列を適当な細胞で発現させるなどして調製してもよい。このような方法に従えば、検出対象とする所望の抗原に特異的に結合し得るV領域ポリペプチドやV領域ポリペプチドをコードするDNA配列を容易に入手することができる。例えば、前述の特表2006-523088号公報には、ヒトIL-8に特異的に結合する抗体や、そのV領域及びV領域の配列が記載されている。なお、調製したV領域ポリペプチドやV領域ポリペプチドが本発明の融合タンパク質に好適に用い得るかどうかは、後述の実施例記載のアッセイを行うことなどにより、容易に確認することができる。
【0012】
本発明の融合タンパク質に用いる所定のタンパク質やそのパートナータンパク質(以下、併せて「両タンパク質」ともいう。)としては、パートナータンパク質が前記タンパク質と結合する活性を有し、前記タンパク質との結合の有無が検出可能であり、かつ、本発明の融合タンパク質におけるV領域ポリペプチド及びV領域ポリペプチドの抗原に対する結合の有無により前記タンパク質と前記パートナータンパク質の結合の有無が生じるものであれば特に制限されないが、両タンパク質が結合すると、両タンパク質が結合していない場合に比べて、所定のタンパク質及び/又はパートナータンパク質が発揮する所定の酵素活性が変化(上昇、低下、発現又は消滅)する組み合わせ(特に、その酵素活性の変化を発色基質や蛍光基質で視覚的に検出できる組み合わせ)等の、両タンパク質の結合の有無を簡便に検出し得る組み合わせを好ましく例示することができ、中でも、酵素タンパク質の一部を含むタンパク質と、前記酵素タンパク質の残部を含むタンパク質であって、両タンパク質が結合するとその酵素の酵素活性が変化(特に上昇又は発現)する組み合わせをより好ましく例示することができ、特定の酵素のN末端側のフラグメントを含むタンパク質とC末端側のフラグメントを含むタンパク質であって、両タンパク質が結合するとその酵素の酵素活性が変化(特に上昇又は発現)する組み合わせをさらに好ましく例示することができ、大腸菌由来のβガラクトシダーゼのαフラグメントとそのωフラグメントの組み合わせや、大腸菌由来のβラクタマーゼ(BLA)の24位~170位のアミノ酸配列からなるタンパク質(アミノ酸配列:配列番号5; 塩基配列:配列番号6)とその168位~286位のアミノ酸配列からなるタンパク質(アミノ酸配列:配列番号7; 塩基配列:配列番号8)をよりさらに好ましく例示することができる。なお、上記本発明における所定のタンパク質とパートナータンパク質は便宜上名称を区別しているだけであり、例えば、上記BLAの24位~170位のアミノ酸配列からなるタンパク質を所定のタンパク質とし、そのBLAの168位~286位のアミノ酸配列からなるタンパク質をパートナータンパク質としてもよいし、上記BLAの168位~286位のアミノ酸配列からなるタンパク質を所定のタンパク質とし、そのBLAの24位~170位のアミノ酸配列からなるタンパク質をパートナータンパク質としてもよい。
【0013】
本発明における上記両タンパク質が、大腸菌由来のβガラクトシダーゼのαフラグメントとそのωフラグメントの組み合わせの場合は、これらの両フラグメントが結合すると、いわゆる活性相補が生じ、βガラクトシダーゼ活性が上昇する。βガラクトシダーゼ活性の上昇は、例えばGalacton-Plus(登録商標)(Applied Biosystems社製)等の化学発光基質を添加することにより、高感度で検出することができる。また、大腸菌由来のβラクタマーゼ(BLA)の24位~170位のアミノ酸配列からなるタンパク質とその168位~286位のアミノ酸配列からなるタンパク質の組み合わせの場合は、これらの両タンパク質が結合すると、βラクタマーゼ活性が上昇する。βラクタマーゼ活性の上昇は、例えばニトロセフィン等の発色基質を添加したり(Nature Biotechnol., 20, 619-622 (2002))、Fluorocillin Green495/525 beta lactamase substrate (Invitrogen社製)等の蛍光基質を添加することにより、高感度で検出することができる。
【0014】
この他、本発明の両タンパク質として用い得ると考えられる組み合わせとして、ルシフェラーゼのN末端側フラグメントとそのC末端側フラグメントであって、両フラグメントが結合するとルシフェラーゼ活性が回復するもの(Anal. Chem., 75, 1584-1589 (2003))や、Cre酵素の59位までのフラグメントと60位以降のフラグメントであって、両フラグメントが結合するとCre活性が回復するもの(Nucleic Acids Research, 31, e131 (2003))や、ジヒドロ葉酸レダクターゼのN末端側フラグメントとC末端側フラグメントであって、両フラグメントが結合するとジヒドロ葉酸レダクターゼ活性が回復するもの(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 12141-12146 (1998))や、GFPのN末端側フラグメントとC末端側フラグメントを入れ替えて、C末端側フラグメントのC末端とN末端側フラグメントのN末端をインサーション配列(リンカー配列)で連結したGFPの円順列変異体(circular permutant)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 11241-11246 (1999))等を例示することができる。
【0015】
本発明の融合タンパク質に用いる両タンパク質としては、上記以外にも、公知の任意の酵素タンパク質等を用いることができる。特定の酵素の2つのフラグメントであって、両フラグメントが結合していないときはその酵素活性を発現しないか又は酵素活性が弱く、両フラグメントが結合すると酵素活性が発現するか又は酵素活性が上昇する(活性相補する)フラグメントの組み合わせは、公知のprotein-fragment complementation assays (Nature Biotechnol., 20, 619-622 (2002)やUSP 7, 160, 691)により容易に作製することができ、また、活性相補する両フラグメントがリンカー配列で連結されたものである円順列変異体(circular permutant)についても、上述の文献(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 11241-11246 (1999))等に基づいて容易に作製することができる。
なお、活性相補する両フラグメントは、一部に重複する配列を有していてもよい。
【0016】
本発明の融合タンパク質に用いるリンカーペプチドとしては、本発明に用いる所定のタンパク質とそのパートナータンパク質を該リンカーペプチドにて連結した場合に、前記タンパク質とそのパートナータンパク質の結合や、その結合の有無の検出を妨げない限り特に制限されないが、本発明の融合タンパク質を用いた目的抗原の検出をより高感度で行うためには、リンカーペプチドの長さを適宜調節することが好ましい。本発明に用いる所定のタンパク質とそのパートナータンパク質として、大腸菌由来のβラクタマーゼ(BLA)の24位~170位のアミノ酸配列からなるタンパク質(N末端側フラグメント)とその168位~286位のアミノ酸配列からなるタンパク質(C末端側フラグメント)の組み合わせを用いる場合は、そのリンカーペプチドとして、Asp-Lys-Ser(DKS)からなるアミノ酸配列(塩基配列:gacaagagc)を好適に例示することができる。リンカーペプチドの好ましいアミノ酸数は、リンカーペプチドのアミノ酸数を変化させた複数のサンプルについて、後述の実施例記載のアッセイを行うことなどにより、容易に調べることができる。
【0017】
本発明の融合タンパク質は、V領域ポリペプチド及びV領域ポリペプチドの抗原に対する結合や、所定のタンパク質とそのパートナータンパク質の結合や、所定のタンパク質とそのパートナータンパク質の結合の検出を妨げない限り、抗体のV領域ポリペプチド;所定のタンパク質;リンカーペプチド:前記タンパク質と結合する活性を有し、前記タンパク質との結合の有無が検出可能であるパートナータンパク質;及び、前記抗体のV領域ポリペプチド;以外にも、His-Tag等の精製用Tag配列などのポリペプチドを含んでいることが、容易に精製し得る点で好ましい。
【0018】
本発明の融合タンパク質をコードするDNAとしては、本発明の上記融合タンパク質をコードするDNAである限り特に制限されず、前述のV領域ポリペプチド、所定のタンパク質、リンカーペプチド、パートナータンパク質、V領域ポリペプチドのDNA配列を、慣用のプロトコールを用いて、この順で配置することにより構築することができる。本発明の融合タンパク質をコードするDNAとして、具体的には、V-cpBLA-V/pET26ベクターのNcoI-NotI断片を好適に例示することができる。
【0019】
本発明の組換えベクターとしては、上記の本発明の融合タンパク質をコードするDNAを含み、かつ本発明の融合タンパク質を発現することができる組換えベクターであれば特に制限されないが、V-cpBLA-V/pET26ベクターを好適に例示することができる。
本発明の組換えベクターは、本発明のDNAを発現ベクターに適切にインテグレイトすることにより構築することができる。かかる発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製可能であるものや、あるいは宿主細胞の染色体中へ組込み可能であるものが好ましく、また、本発明の遺伝子を発現できる位置にプロモーター、エンハンサー、ターミネーター等の制御配列を含有しているものを好適に使用することができる。
【0020】
上記発現ベクターのうち、細菌用の発現ベクターとしては、例えば、pBTrP2、pBTac1、pBTac2(いずれもロシュダイアグノスティクス社製)、pKK233-2(GEヘルスケア社製)、pSE280(Invitrogen社製)、pGEMEX-1(Promega社製)、pQE-8(QIAGEN社製)、pQE-30(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58-110600)、pKYP200〔Agrc. Biol. Chem., 48, 669 (1984)〕、pLSA1〔Agrc. Blo1. Chem., 53, 277 (1989)〕、pGEL1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4306 (1985)〕、pTP5、pC194、pUC18〔Gene, 33, 103(1985)〕、pUC19〔Gene, 33, 103 (1985)〕、pSTV28(タカラバイオ社製)、pSTV29(タカラバイオ社製)、等を例示することができる。細菌用のプロモーターとしては、例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SP01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーター等を挙げることができる。
【0021】
本発明の形質転換細胞としては、上記本発明の組換えベクターが導入され、かつ上記本発明の融合タンパク質を発現する形質転換細胞であれば特に制限されないが、本発明のV-cpBLA-V/pET26組変えベクターを大腸菌BL21(DE3,pLysS)株に導入して得られるV-cpBLA-V/pET26/BL21株を好適に例示することができる。上記形質転換細胞を作製する際の、宿主細胞への上記本発明の組換えベクターの導入方法としては、Davisら(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 1986)及びSambrookら(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載される方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入等により行うことができる。そして、宿主細胞としては、細菌、酵母、動物細胞等を例示することができるが、XL10-Gold株やBL21株等の大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス等の細菌を好適に例示することができ、大腸菌を特に好ましく例示することができる。
【0022】
本発明の抗原の検出方法としては、サンプル中の抗原を検出する方法であって、V領域ポリペプチド及びV領域ポリペプチドが前記抗原に結合し得る本発明の融合タンパク質又は本発明の形質転換細胞をサンプルに接触させる工程、及び、前記融合タンパク質又は前記形質転換細胞が発現する融合タンパク質における所定のタンパク質とパートナータンパク質の結合を検出する工程を有する方法であれば特に制限されず、また、抗原としては特に制限されないが、抗原が分子量1000以下の低分子化合物等である場合に、特に本発明の抗原の検出方法のメリットを享受し得る。上記低分子化合物としては、イミダクロプリド等のネオニコチノイド系農薬、ポリ塩化ビフェニル、ビスフェノールA等の環境汚染物質、マイコトキシン等の毒性物質、オステオカルシンペプチド等の生体物質等を好適に例示することができる。本発明の抗原の検出方法は、これらの物質を抗原として検出し得るため、疾患の臨床診断、食品の毒性検査、環境分析等に有利に応用することができる。
なお、本発明の抗原の検出方法では、通常のELISA法とは異なり、本発明の融合タンパク質等とサンプルを接触した後の洗浄工程が不要であるため、抗原の検出を非常に簡便、迅速に行うことができる。
【0023】
上記の本発明の融合タンパク質又は形質転換細胞のサンプルへの接触は、例えば本発明の融合タンパク質又は形質転換細胞とサンプルとを適当な溶媒に懸濁又は溶解するなどして行うことができる。ただし、本発明の形質転換細胞をそのまま用いる場合は、形質転換細胞が発現する本発明の融合タンパク質と対象抗原とが接触し得る必要があるため、対象抗原が形質転換細胞内に取り込まれるか、又は、形質転換細胞が発現する本発明の融合タンパク質が細胞外へ分泌されることを確認して用いることが好ましい。一方、本発明の形質転換細胞を破砕して用いる場合は、この点を確認する必要は特にない。
なお、本発明の抗原の検出方法においては、用いる本発明の融合タンパク質の濃度や形質転換細胞の濃度を適宜調節することが、より高い検出感度を得る観点から好ましい。より高い検出感度が得られる上記濃度は、融合タンパク質や形質転換細胞の種類などにより異なるため一概にいうことはできないが、上記濃度を段階的に変えて実験を行うことにより容易に設定することができる。ただし、本発明の融合タンパク質はリンカーペプチドを有しているため、本発明の抗原の検出方法は、非特許文献1の方法に比べて、より高い検出感度をより安定的に得ることができる。
【0024】
また、上記所定のタンパク質とパートナータンパク質の結合の検出は、例えば前記タンパク質及び/又はパートナータンパク質が発揮する所定の酵素活性の変化(上昇、低下、発現又は消滅)、より好ましくは所定の酵素活性の上昇又は発現を検出することにより、簡便かつ高感度に行うことができる。上記所定の酵素活性の変化の検出は、例えば、反応系にその酵素の基質を含有させて、一定期間経過後の基質量の変化を検出することにより行うことができるが、より簡便かつ高感度に検出し得る観点から、酵素活性の変化を視覚的に検出し得る発色基質や蛍光基質などを用いることが好ましい。具体的には、所定のタンパク質とパートナータンパク質が、βガラクトシダーゼのαフラグメントとそのωフラグメントの組み合わせである場合は、Galacton-Plus(登録商標)(Applied Biosystems社製)等の化学発光基質を用いることにより、βガラクトシダーゼ活性の発現や上昇を発光や発光量の増加として検出することができ、βラクタマーゼ(BLA)の24位~170位のアミノ酸配列からなるタンパク質(N末端側フラグメント)とその168位~286位のアミノ酸配列からなるタンパク質(C末端側フラグメント)の組み合わせの場合は、ニトロセフィン等の発色基質や、CCF2/AM, Fluorocillin Green 495/525 beta lactamase substrate(Invitrogen社製)等の蛍光基質を用いることにより、βラクタマーゼ活性の発現や上昇を、発色又は発光や、発色量又は発光量の増加として検出することができる。発色や発光の有無、発色量や発光量は、レーザー顕微鏡等を用いることにより、高感度で検出することができる。
【0025】
また、本発明の抗原の検出方法において、本発明の形質転換細胞を用いる場合は、上記所定のタンパク質とパートナータンパク質の結合の検出を、該形質転換細胞の増殖速度の変化を調べることによってより安価に好適に行うこともできる。例えば、所定のタンパク質とパートナータンパク質が、βラクタマーゼ(BLA)の24位~170位のアミノ酸配列からなるタンパク質(N末端側フラグメント)とその168位~286位のアミノ酸配列からなるタンパク質(C末端側フラグメント)の組み合わせの場合、βラクタマーゼが、その形質転換細胞の宿主細胞の増殖を妨げるアンピシリンを分解する活性を有していることを利用して、上記所定のタンパク質とパートナータンパク質の結合を、形質転換細胞の増殖速度の上昇により検出することができる。形質転換細胞の増殖を利用した増殖アッセイの具体的な方法として、後述の実施例4に記載されている方法を好適に例示することができる。
【0026】
本発明の検出用キットとしては、所定のタンパク質とパートナータンパク質が、互いに結合していない場合に比べて互いに結合すると所定のタンパク質及び/又はパートナータンパク質が発揮する所定の酵素活性が変化するタンパク質である本発明の融合タンパク質又は本発明の形質転換細胞、並びに、前記酵素活性の変化を検出し得る発色基質又は発光基質を備えている限り特に制限されないが、サンプルが固体である場合にそれを懸濁するために用いる適当な溶媒をさらに備えていてもよい。
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。なお、後述の実施例の概要を述べると、実施例1から2にかけて、本発明の融合タンパク質を発現するベクターを作製し、実施例6において、その本発明の融合タンパク質を発現する形質転換体の増殖アッセイを行い、その比較実験として、実施例3において、上記の本発明の融合タンパク質の分割変異体(上記の本発明の融合タンパク質において、リンカーを欠いたもの)を発現するベクターを作製し、実施例7において、その分割変異体を発現する形質転換体の増殖アッセイを行い、別の比較実験の準備として、実施例4において、上記の本発明の融合タンパク質の抗体分子欠失変異体(上記の本発明の融合タンパク質において、その抗体分子を欠失したもの)を発現するベクターを作製した。また、実施例5、8、9は、上記の増殖アッセイの結果が、cpBLAの活性相補を反映したものであることを確認等する目的で行った。さらに、実施例10、11において、上記の本発明の融合タンパク質が、その分割変異体や、その抗体分子欠失変異体と比較して、抗原存在下でのBLA活性の上昇が著しいことを確認した。加えて、実施例12においては、上記の本発明の融合タンパク質における抗体分子を別の抗体分子に置き換え、その融合タンパク質が、その抗体分子に結合する抗原存在下において、その抗原依存的にBLA活性が上昇することを確認することによって、本発明の融合タンパク質の汎用性を確認した。
【実施例1】
【0028】
[円順列変異体βラクタマーゼ(cpBLA)遺伝子の調製]
野生型βラクタマーゼ(野生型BLA)のDNA配列を鋳型としたPCR法により、野生型BLAタンパク質の24-170位のアミノ酸配列(配列番号5)をコードするDNA断片(配列番号6)と、168-286位のアミノ酸配列(配列番号7)をコードするDNA断片(配列番号8)を調製した。より詳細には以下のような方法で調製を行った。
【0029】
まず、上記PCR法のプライマーとして、以下の4種類のプライマーを用意した。
BLA24rev(配列番号9:CATTGGGACAAGAGCCACCCAGAAACGCTGGTGAAA)
BLA170for(配列番号10:GGCGATATCGGCTTCATTCAGCTCCGGTTC)
BLA168rev(配列番号11:GGCGATATCAATGAAGCCATACCAAAC)
BLA286for(配列番号12:TGGGTGGCTCTTGTCCCAATGCTTAATCAGTGA)
BLA24rev及びBLA286forの5’末端にはリンカー配列(配列番号9及び12の7~15番目の塩基配列)を配置し、BLA170for及びBLA168revの5’末端には作製したDNA断片を挿入するための制限酵素切断部位としてEcoRVの認識配列(配列番号10及び11の4~9番目の塩基配列)を配置した。
なお、これらの4種類のプライマーは、Guntasらの報告(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 102, 11224-11229 (2005))にならい、BLAの活性部位近傍の168位と170位を新規末端とする遺伝子断片を最終的に得るべく設計を行った。上記24-170位のアミノ酸配列をコードするDNA断片の増幅には、BLA24rev及びBLA170forを用い、上記168-286位のアミノ酸配列をコードするDNA断片の増幅には、BLA168rev及びBLA286forを用いた。
【0030】
また、上記PCR法の鋳型として、野生型BLA遺伝子をコードするベクターpET20b(+)(メルク社製)を用い、酵素としてEx-Taq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いた。具体的には、50pmolずつの2種類のプライマー、10ng pET20b(+)、0.2mM(反応溶液の最終濃度)dNTPs、10μl Ex-Taq Buffer、5unit Ex-Taq 1μlを混合して100μlの反応溶液とし、94℃、5分間の後に、94℃で30秒間、56℃で30秒間、72℃で1分間からなるサイクルを25サイクル繰り返した後、72℃で10分間反応させた。このPCRにより、野生型BLAタンパク質の24-170位のアミノ酸配列をコードするDNA断片と、168-286位のアミノ酸配列をコードするDNA断片を調製した。次いで、これらの2種類のDNA断片をTAE緩衝液を含む1%アガロースゲルで電気泳動した後、目的のバンドを含むゲルを切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(プロメガ社製)を用いて精製した。
【0031】
得られた2種類のDNA断片を用いたoverlap extension PCRによって、本来のN末端(24位のアミノ酸)とC末端(286位のアミノ酸)を、DKSリンカー配列(アミノ酸配列:Asp-Lys-Ser; 塩基配列:gacaagagc)を介して結合し、168位と170位がそれぞれ新たなN末端及びC末端であるPCR断片(円順列変異体遺伝子)を調製した(図2の左上のコンストラクト;cpBLA)。より詳細には、以下のような方法で調製を行った。
約100ngずつの2種類のPCR産物(野生型BLAタンパク質の24-170位のアミノ酸配列をコードするDNA断片と、168-286位のアミノ酸配列をコードするDNA断片)、0.2mM(反応溶液の最終濃度)dNTPs、10μl Ex-Taq Buffer、5unit Ex-Taqを混合して100μlの反応溶液とし、94℃、5分間の後に94℃で30秒間、58℃で30秒間、72℃で1分間からなるサイクルを10サイクル繰り返した後、72℃で10分間反応させた。このようにして作製した目的のBLA円順列変異体遺伝子をcpBLA(アミノ酸配列:配列番号13; 塩基配列:配列番号14)と命名した。
【0032】
この後、cpBLAのDNAのみを増幅するため、さきほど得られた反応溶液に2種類のプライマー(BLA168rev及びBLA170for)を50pmolずつ、2.5unitEx-Taqを加え、94℃で5分間の後に、94℃で30秒間、56℃で30秒間、72℃で1分間からなるサイクルを25サイクル繰り返した後、72℃で10分間反応させた。得られた反応溶液をアガロースゲルにて電気泳動し、目的サイズのDNA断片が増幅されていることを確認した。さらに、その目的サイズのバンド部分のゲルを切り出し精製した。
【0033】
精製して得られたDNA断片をpCR4-TOPO(Invitrogen社製)に組み込み、その塩基配列を確認した。より詳細な手順については以下に述べる。
pCR4-TOPO Vectorを使ったキットであって、Taqポリメラーゼで増幅した3’-dA突出末端を持つPCR産物をクローニング、シーケンスするのに適したTOPO TA Cloning Kit for Sequencing(Invitrogen社製)を使用した。1μlのpCR4-TOPO Vectorに対し、等モル量の上記精製DNA断片を加え、さらにSalt Solutionを1μl加えて室温で30分間放置した。このligation mixtureを氷上で溶かした大腸菌XL10-Gold株(Tetr, Δ(mcrA)183, Δ(mcrCB-hsdSMR-mrr)173, endA1, supE44, thi-1, recA1, gyrA96, relA, lac, The, [F’, proAB, laclqZΔM15, Tn10(Tetr), Tn5(Kanr), Amy)に加え氷上で30分間放置した後、42℃で45秒ヒートショックを与え、200μlのSOC培地(1Lあたり20g bacto tryptone、5g bacto yeast extract、0.5g NaCl、0.2ml 5N NaOH、20ml 1M グルコース、10ml 1M MgCl、10ml 1M MgSO)を加え37℃で30分間キュアリングして形質転換し、予め10μlの0.4M IPTGと200μlの10mg/ml X-galを撒いておいた100μg/mlアンピシリン、1%グルコースを含むLB寒天培地プレート(1Lあたり10g bacto tryptone、 5g bactoyeastextract、5g NaCl、0.2ml 5N NaOH、15g agar)にて37℃で一晩培養した。翌日、白いコロニー、青いコロニー各数個のうち白いコロニーを竹串でつつき、Taqポリメラーゼ(タカラバイオ)とT3、T7の2本のプライマーを用いてコロニーPCRを行なった。そのPCR産物をアガロースゲルにて泳動し、目的の大きさのバンドが確認できたコロニーのみを100μg/mlアンピシリンを含む滅菌LB液体培地(1Lあたり10g bacto tryptone、 5g bactoyeastextract、 5g NaCl、0.2ml 5N NaOH)に植菌して、37℃で一晩培養した。培養して得られた菌体から、Wizard(登録商標) plus SV Minipreps(プロメガ社製)を用いてプラスミドを抽出し、ABI3100DNAシーケンサーを用いて、BLA円順列変異体遺伝子(cpBLA)の配列を確認した。このcpBLAを有する上記プラスミドを、cpBLA/TOPOと命名した。
【実施例2】
【0034】
[抗体-円順列変異体BLA混成タンパク質発現ベクターの作製]
ネオニコチノイド系農薬イミダクロプリド(ICP)を認識する抗体(33C3-1-1:FERMP-17094で寄託されたハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体:特開2000-191698号公報)の可変領域をファージミドベクターpIT2(Nature Biotechnol., 18, 989-994 (2000))に組込み,これを用いて常法に従い一本鎖抗体(scFv)提示ファージを調製しその抗原結合能を確認した(scFv(ICP)/pIT2)。このscFv(ICP)/pIT2から、該抗体遺伝子をタンパク質大量発現用プラスミドベクターに移し替え、scFv(ICP)/pET26を作製した。より詳細には以下のような方法で調製を行った。
【0035】
scFv(ICP)/pIT2中の抗体遺伝子を、目的タンパクをペリプラズムに分泌させ発現させることができ、かつカナマイシン耐性を示すプラスミドpET26b(+)(メルク社製)に組み込んだ。scFv(ICP)/pIT2と、pET26b(+)1μgに対し、10unit NcoI(New England Biolabs社製)、10unit NotI(New England Biolabs社製)、5μl 10×NEB Buffer3(New England Biolabs社製)、5μlの0.1% BSA(New England Biolabs社製)に滅菌水を加えて50μlにし、37℃で16時間制限酵素処理した。この制限酵素処理物をアガロースゲル電気泳動を行い切り出し精製したscFv(ICP)遺伝子断片3μlと、同様の制限酵素処理後に切り出し精製したベクター2μlと、Ligation high(東洋紡社製)5μlを加え、16℃で30分間ライゲーション反応を行った。ライゲーション反応により得られた反応液のうち5μlを用いて、100μlの大腸菌TOP10株(F-mcrA, Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC), φ80lacZΔM15, ΔlacX74, deoR, recA1, araD139, Δ(ara,leu)7697galU, galK, rpsL(StrR)endA1, nupG)を形質転換し、50μg/mlカナマイシンを含むLB寒天培地プレートにて37℃で一晩培養した。翌日、コロニー数個を竹串でつつき、Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)とT7 promoterとT7 terminatorの2本のプライマーを用いてコロニーPCRを行った。そのPCR産物をアガロースゲルにて泳動し、目的の大きさのバンドが確認できたコロニーのみを50μg/mlカナマイシンを含むLB液体培地4mlに植菌し、37℃で一晩培養した。培養して得られた菌体からscFv(ICP)/pET26を抽出した。
【0036】
cpBLAをコードするDNA断片を組み込むための制限酵素サイトとして、DraIサイトをscFv(ICP)/pET26中のリンカー領域にクイックチェンジ(ストラタジーン社製:登録商標)を用いたPCRにより導入した(図2の右上のコンストラクト)。このDraIサイトで切断することによりscFv(ICP)/pET26は平滑末端を持つリニアDNAとなり、EcoRV処理により同じく平滑末端を生じるcpBLA断片を組み込むことができる。DraIサイトを導入するPCRは以下のように行った。
15pmolずつの後述の2種類のプライマー、1ng scFv(ICP)/pET26、0.2mM(反応溶液の最終濃度)dNTPs、2.5unit PfuUltraHigh-Fidelity DNA Polymerase(ストラタジーン社製)、5μl 10×PfuUltra reaction Buffer(ストラタジーン社製)を混合して50μlの反応溶液とし、95℃、1分間の後に、95℃で30秒間、55℃で30秒間、68℃で15分間からなるサイクルを18サイクル繰り返した。用いたプライマーの配列は以下のとおりである。Dra1rev(配列番号15:GGTGGAGGCGGTTCAGGCTTTAAAGGCAGTGGCGGTGGCGGG)Dra1for(配列番号16:CCCGCCACCGCCACTGCCTTTAAAGCCTGAACCGCCTCCACC)
(配列番号15及び16の19~24番目の塩基配列はそれぞれDraI切断部位である)
【0037】
上記PCRにより得られた反応液に1μl DpnIを加え、37℃で1時間処理してメチル化された鋳型DNAを分解し、5μlを用いて、100μlの大腸菌TOP10株を形質転換した。これを50μg/mlカナマイシンを含むLB寒天培地にて37℃で一晩培養し、翌日生成したコロニー数個を竹串でつついて50μg/mlカナマイシンを含むLB寒天培地4mlに植菌し、37℃で一晩培養した。培養して得られた菌体からプラスミドを抽出した後、ABI3100DNAシーケンサーを用いて配列を決定し、所定の位置DraIサイトが導入されていることを確認した。
【0038】
次いで、DraIサイトが導入されたscFv(ICP)/pET26をDraIにて開裂したscFv(ICP)/pET26に、EcoRV処理したcpBLA断片を組み込み、抗体-円順列変異体酵素発現ベクターV-cpBLA-V/pET26(図2の中央下のコンストラクト)を作製した。より詳細な手順については以下に述べる。
1μg scFv(ICP)/pET26に20unit DraI(New England Biolabs, NEB社製)、10unit Alkaline Phosphatase,Calf Intestinal(NEB社製)、10×NEB Buffer4(NEB社製)に滅菌水を加えて50μlにし、37℃で16時間制限酵素処理した。ベクターのセルフライゲーションを防ぐため、制限酵素処理と同時にアルカリフォスファターゼにて末端の脱リン酸化も行った。また、cpBLA断片が組み込まれたpCR4-TOPOベクター1μg、20unit EcoRV(NEB社製)、10×NEB Buffer3、5μlの0.1% BSAに滅菌水を加えて50μlにし、37℃で16時間制限酵素処理した。この制限酵素処理物をアガロースゲル電気泳動を行い切り出し精製したscFv(ICP)/pET26ベクター3μlと、同様の制限酵素処理後に切り出し精製したcpBLA断片3μlと、Ligation high6μlを加え、16℃で30分ライゲーション反応を行った。ライゲーション反応により得られた反応液のうち5μlを用いて100μlの大腸菌TOP10株を形質転換し、50μg/mlカナマイシンを含むLB寒天培地プレートにて37℃で一晩培養した。翌日、コロニー数個を竹串でつつき、TaqポリメラーゼとT7プロモーターとBLA170forの2本のプライマーを用いてコロニーPCRを行った。そのPCR産物をアガロースゲルにて泳動し、目的の大きさのバンドが確認できたコロニーのみを50μg/mlカナマイシンを含むLB液体培地4mlに植菌し、37℃で一晩培養した。培養して得られた菌体からV-cpBLA-V/pET26(抗体-円順列変異体BLA混成タンパク質発現ベクター)を抽出した。
【実施例3】
【0039】
[抗体-分割・円順列変異体BLA混成タンパク質発現ベクターの作製]
本発明の融合タンパク質におけるリンカーペプチドの意義を調べるため、V-cpBLA-V中のリンカーペプチドをコードする配列に代えて、stopコドン及びRBSをコードする配列を有する、V-split・cpBLA-V/pET26(抗体-分割・円順列変異体BLA混成タンパク質発現ベクター)を作製した。該ベクターのコンストラクトを図3に示す。このV-split・cpBLA-V/pET26は、図3に示すように、V-BLAc(V領域ポリペプチドと、野生型BLAタンパク質の168-286位のアミノ酸配列との融合タンパク質)と、BLAn-V(V領域ポリペプチドと、野生型BLAタンパク質の24-170位のアミノ酸配列との融合タンパク質)を発現するベクターである。V-split・cpBLA-V/pET26の作製は、図4に示すような概要にしたがって、以下のような方法で行なった。
【0040】
まず、図4に示すようなコンストラクトのpBR322を用意した。このpBR322に対して、BLAsigBack(配列番号17:TCACCATCACTAAGAAGGAGATATCATATGAGTATTCAACATTTCC)(5’末端から1~18番目のヌクレオチドがBLAHisForとのオーバーラップ領域)及びBLAdraFor(配列番号18:CGGCGACCGAGTTGCTCTTG)の2種類のプライマーを用いてPCRを行い、pBR322のアンピシリン耐性遺伝子から、シグナル配列を経て、BLA前半部に存在するDraIサイトまでを増幅してその断片(BLA-DraI断片)を得た。また、pBR322に対して、BLAbsaBack(配列番号19:ATGGAGGCGGATAAAGTTGC)及びBLAHisFor(配列番号20:CCTTCTTAGTGATGGTGATGATGATGCCAATGCTTAATCAGTGAGGC)(5’末端から1~18番目のヌクレオチドがBLAsigBackとのオーバーラップ領域)の2種類のプライマーを用いてPCRを行い、pBR322のBLA後半部に存在するBsaIサイトからBLAタンパク質の296位までを増幅してその断片(BLA-BsaI断片)を得た。なお、BLAHisForの5’末端にはHis tag をコードする配列の相補鎖が含まれており、これによってV-BLAcのC末端に、精製のためのHis tagが付加される。BLA-DraI断片やBLA-BsaI断片を増幅するPCRは以下のように行った。
【0041】
50pmolずつの2種類のプライマー(BLA-DraI断片増幅用として、BLAsigBack及びBLAdraFor;BLA-BsaI断片増幅用としてBLAbsaBack及びBLAHisFor)、10ng pBR322、0.2mM(反応溶液の最終濃度)のdNTPs、10μl 10´Ex-Taq buffer、5unit Ex-Taqを混合して100μlの反応溶液とし、95℃、5分間の後に、95℃で30秒間、50℃で30秒間、72℃で30秒間からなるサイクルを25サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応させた。これらのPCRにより得られたBLA-DraI断片やBLA-BsaI断片を、TAE緩衝液を含む1.5%アガロースゲルでそれぞれ電気泳動した後、目的のバンドを含むゲルを切り出し精製した。
【0042】
次に、精製したBLA-DraI断片及びBLA-BsaI断片について、オーバーラップ・エクステンションPCRを行なうことによって、BLA-DraI断片とBLA-BsaI断片とを結合させた(図4の中央のコンストラクト参照)。オーバーラップ・エクステンションPCRは具体的に以下のような方法で行なった。
精製したBLA-DraI断片(約100ng)及びBLA-BsaI断片(約100ng)、0.2mM(反応溶液の最終濃度)のdNTPs、10ml 10´Ex-Taq buffer、5unit Ex-Taqを混合して100mlの反応溶液とし、95℃、5分の後に95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で45秒間からなるサイクルを15サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応させて反応液を得た。次いで、目的DNA断片をさらに増やすため、得られた反応溶液に、BLAbsaBackプライマー(50pmol)、BLAdraForプライマー(50pmol)、2.5unit Ex-Taqを添加し、95℃で5分間の後に、95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で45秒間からなるサイクルを25サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応させて反応液を得た。得られた反応液をアガロースゲル電気泳動し、目的サイズのDNA断片が増幅されていることを確認した。次いで、目的サイズ近辺のゲルを切り出し、目的サイズのDNA断片を精製した。
【0043】
精製して得られたDNA断片をpCR4-TOPO(Invitrogen社製)に組み込み、その塩基配列を確認した。より詳細な手順については以下に述べる。
pCR4-TOPO Vectorを使ったキットであって、Taqポリメラーゼで増幅した3’-dA突出末端を持つPCR産物をクローニング、シーケンスするのに適したTOPO TA Cloning Kit for Sequencing(Invitrogen社製)を使用した。1μlのpCR4-TOPO Vectorに対し、等モル量の上記精製DNA断片を加え、さらにSalt Solutionを1μl加えて室温で30分間放置した。このligation mixtureを氷上で溶かした大腸菌XL10-Gold株(Tetr,Δ(mcrA)183, Δ(mcrCB-hsdSMR-mrr)173, endA1, supE44, thi-1, recA1, gyrA96, relA, lac, The, [F’, proAB, laclqZΔM15, Tn10(Tetr), Tn5(Kanr), Amy)に加え氷上で30分間放置した後、42℃で45秒ヒートショックを与え、200μlのSOC培地(1Lあたり20g bacto tryptone、5g bacto yeast extract、0.5g NaCl、0.2ml 5N NaOH、20ml 1M グルコース、10ml 1M MgCl、10ml 1M MgSO)を加え37℃で30分間キュアリングして形質転換し、予め10μlの0.4M IPTGと200μlの10mg/ml X-galを撒いておいた100μg/mlアンピシリン、1%グルコースを含むLB寒天培地プレート(1Lあたり10g bacto tryptone、 5g bacto yeast extract、5g NaCl、0.2ml 5N NaOH、15g agar)にて37℃で一晩培養した。翌日、白いコロニー、青いコロニー各数個のうち白いコロニーを竹串でつつき、Taqポリメラーゼ(タカラバイオ)とT3、T7の2本のプライマーを用いてコロニーPCRを行なった。そのPCR産物をアガロースゲルにて泳動し、目的の大きさのバンドが確認できたコロニーのみを100μg/mlアンピシリンを含む滅菌LB液体培地(1Lあたり10g bacto tryptone、 5g bacto yeast extract、5g NaCl、0.2ml 5N NaOH)に植菌して、37℃で一晩培養した。培養して得られた菌体からプラスミドを抽出し、ABI3100DNAシーケンサーを用いて、前述の精製DNA断片の配列を決定し、その配列が、分割・円順列変異体BLA(split・cpBLA)(図4の中央のコンストラクト参照)であることを確認した。このsplit・cpBLAを有する上記プラスミドを、split・cpBLA/TOPOと命名した。
【0044】
1μgのsplit・cpBLA/TOPOに対し、10unitのDraI、5μlのNEBuffer2を添加し、さらにmilliQ水を添加して50μlに調整し、この溶液を37℃で6時間処理後、5unitのBsaIを添加し、これを50℃で一晩静置して制限酵素処理を行った。1μgのsplit・cpBLA/TOPOに代えて、1μgのV-cpBLA-V/pET26を用いて、同様に、DraI及びBsaIで制限酵素処理を行なった。制限酵素処理して得られたそれぞれの溶液をアガロースゲルにて泳動して精製したDNA溶液各5μlにLigation high ver.2(東洋紡社製)をそれぞれ10μl添加し、16℃で30分間ライゲーション反応を行った。このライゲーション反応により得られた反応液のうち5μlを用いて、100μlの大腸菌TOP10株を形質転換し、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地プレートにて37℃で一晩培養した。翌日、シングルコロニーを4mlのLBKにてさらに一晩培養後、得られた菌体からプラスミドを抽出し、そのプラスミドのDNA配列を確認した。DNA配列を確認した複数のプラスミドの中から、V-cpBLA-V/pET26におけるBsaIサイト・DraIサイト間の配列が、split・cpBLAにおけるBsaIサイト・DraIサイト間の配列に置換されたプラスミド(図4)を見いだし、このプラスミドをV-split・cpBLA-V/pET26と命名した(図3)。
【実施例4】
【0045】
[円順列変異体BLAタンパク質発現ベクターの作製]
本発明の融合タンパク質の1つであるV-cpBLA-V/pET26のコントロールとして、抗体遺伝子を持たない、cpBLAのみの発現ベクター(円順列変異体BLAタンパク質発現ベクター:cpBLA/pET26)(図5)を作製した。より詳細には以下のような方法で作製を行った。
【0046】
実施例1で作製したcpBLA/TOPOを鋳型とするPCRによって、末端にNcoIサイトとXhoIサイトが付加されたcpBLA遺伝子を増幅し、pET26b(+)に組み込んだ。このPCRは以下のように行なった。
50pmolのBLA168Ncorev(配列番号21:CATGCCATGGGCAATGAAGCCATACCAAAC)(5’末端から5~10番目のヌクレオチドがNcoIサイト)、50pmolのBLA170Xhofor(配列番号22:CCGCTCGAGGGCTTCATTCAGCTCCGGTTC)(5’末端から4~9番目のヌクレオチドがXhoサイト)、10ngのV-cpBLA-V/TOPO(V-cpBLA-VをpCR4-TOPOに組み込んだプラスミド)、0.2mM(反応溶液の最終濃度)のdNTPs、10μlの10´Ex-Taq buffer、5unitのEx-taqを混合して100mlの反応溶液とし、94℃で5分間の後に、94℃で30秒間、65℃で30秒間、72℃で1分間からなるサイクルを25サイクル繰り返した後、72℃で10分間反応させて反応液を得た。得られた反応液をアガロースゲル電気泳動して精製を行った後、NcoI及びXhoIにて制限酵素処理した。この制限酵素処理した溶液をアガロースゲル電気泳動し、精製を行った。精製したDNA断片を、同じくNcoI及びXhoI処理並びに精製を行ったpET26b(+)に組み込んで、cpBLA/pET26とした(図5)。
【実施例5】
【0047】
[ICPの大腸菌に対する毒性の確認]
まず、後述の実施例6の増殖アッセイの前提として、ICPが大腸菌に対して毒性あるいは増殖促進活性がないことを調べるため、高濃度のICPを含む培地中での野生型BL21(DE3,pLysS)株の増殖を以下の方法により調べた。
BL21(DE3,pLysS)株を、37μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地プレートにおいて30℃にて一晩培養して生成したコロニーを竹串でつつき、37μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB液体培地4mlに植菌し、27℃で一晩培養した。この前培養液40μlを、37μg/mlのクロラムフェニコール、100ng/mlのICPを含むLB液体培地4mlに植菌し、27℃で一晩培養しながら、Mini photo518R(タイテック社製)にて660nmにおける濁度の経時変化を測定した。また、ICPを含まないこと以外は同じLB液体培地を用いて、同様に濁度の経時変化を測定した。その結果を図6に示す。図6から分かるように、大腸菌BL21(DE3,pLysS)株は、ICPの有無に関わらずほぼ同様の増殖曲線を示した。したがって、ICPの大腸菌に対する毒性および増殖促進活性はないと考えられる。
【実施例6】
【0048】
[V-cpBLA-V発現株を用いた増殖アッセイ]
-cpBLA-V(抗体酵素混成タンパク質)の発現株が、目的抗原の有無の検出に用い得るかどうかを調べるために、この抗体酵素混成タンパク質の目的抗原であるICP、およびICPの類似体でICPより交差反応性が低いことが確認されているチアクロプリド(TCP)を用いて、目的抗原が抗体酵素混成タンパク質に結合した場合に発揮されるBLA活性の基質となり得るアンピシリンを用いた増殖アッセイを行った。より詳細には以下のような方法で行った。
【0049】
まず、V-cpBLA-V(抗体酵素混成タンパク質)の発現株の作製を行った。
0.5μg V-cpBLA-V/pET26を用いて100μlのBL21(DE3, pLysS)株(F-, ompT, hsdSB, (rB-, mB-), dcm, gal, λ(DE3), pLysS, Cmr)を形質転換し、50μg/mlのカナマイシンと37μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地プレートにて30℃で一晩培養することにより、抗体酵素混成タンパク質発現株(V-cpBLA-V/pET26/BL21株)を作製した。一晩培養した上記LB寒天培地プレートに生じたコロニーを竹串でつつき、50μg/mlのカナマイシンと37μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB液体培地4mlに植菌し、27℃で一晩培養した。この前培養液4μlを、50μg/mlのカナマイシン、37μg/mlのクロラムフェニコール、1mM IPTG、0又は100μg/mlのアンピシリン、0-10ng/mlのICP又はTCPを含むLB液体培地4mlに植菌し、27℃で33時間培養しながら、Mini photo 518Rにて660nmにおける濁度の経時変化を測定した。その結果を図7に示す。
【0050】
図7から分かるように、100μg/mlアンピシリンを含むLB培地において、測定開始後24時間前後から5-10ng/mlで,また30時間前後から1ng/mlという低濃度でICP濃度依存的な増殖が確認された。これに対し、TCPは同濃度のICPを添加した場合よりも遅れて30時間前後から増殖がみられ、10ng/mlTCPを添加した場合に、1ng/ml ICPを添加した場合と同程度の有意な増殖がみられた。一方、アンピシリンを含まない培地においては、アンピシリン含有培地よりも早く、抗原の種類、濃度によらずほぼ同様の増殖が見られた(図7)。なお、日本の農作物における含有農薬の基準値は20-5000ng/mlであり(http://m5.ws001.squarestart.ne.jp/zaidan/agrdtl.php?a_inq=8800)、今回の結果は、本発明の誘導タンパク質が対象抗原に対して十分な感度を有しているといえる。
【実施例7】
【0051】
[V-split・cpBLA-V発現株等を用いた増殖アッセイ]
上記実施例6のアッセイにおいて、V-cpBLA-V/pET26に代えて、V-split・cpBLA-V/pET26を用い、また、BL21(DE3,pLysS)株に代えて、毒性の高いタンパク質の過剰発現に適している大腸菌C43(DE3)株(Lucigen社製)を用いて、該株での発現を試みた。具体的には、0.5μgのV-split・cpBLA-V/pET26を用いて、C43(DE3)株を形質転換し、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地プレートにて30℃で一晩培養することにより、V-split・cpBLA-V発現株(V-split・cpBLA-V/pET26/C43株)を作製した。一晩培養した上記LB寒天培地プレートに生じたコロニーを竹串でつつき、50μg/mlのカナマイシン含むLB(LBC)液体培地4mlに植菌し、27℃で一晩培養した。この前培養液10μlを、1mMのIPTG、0又は10μg/mlのアンピシリン、10ng/mlのICP又はTCPを含むLBKC液体培地1mlに植菌し、27℃で45時間培養した後の660nmにおける濁度をMini photo 518Rにて測定した。その結果を図8に示す。図8から分かるように、アンピシリン非添加時には、増殖の差は見られなかったものの、実施例6の場合より低い10μg/mlのアンピシリン添加時に、ようやくICP依存的な増殖が確認された。しかし,100μg/mlのアンピシリン添加時,および10ng/ml未満のICPあるいはTCP添加時には有意な増殖を確認することが出来なかった。更にBL21(DE3,pLysS)株を用いた場合には増殖が見られなかったことから,V-split・cpBLA-VではV-cpBLA-Vに比べ低い抗原依存的酵素活性しか得られず,その結果低い抗原検出感度しか得られないものと考えられた。
【0052】
なお、同様の増殖アッセイを、cpBLA発現株(cpBLA/pET26/BL21株やcpBLA/pET26/C43株)を用いて行なったところ、いずれのcpBLA発現株においても、抗原依存的な増殖は見られず、アンピシリン非添加時には、抗原の有無にかかわらず増殖し、アンピシリン添加時にはすべてのサンプルにおいて増殖しなかった。
【実施例8】
【0053】
[Western blottingによる抗体酵素混成タンパク質発現の確認]
実施例6の増殖アッセイでは、培地中の抗原の有無や違いによって、V-cpBLA-V(抗体酵素混成タンパク質)の発現量が変化したことにより増殖速度の違いが生じた可能性を否定することはできないため、抗BLA抗体を用いたWestern blottingにより、抗体酵素混成タンパク質発現株中の抗体酵素混成タンパク質の発現量の確認を行った。より詳細には以下のような方法で行った。
【0054】
抗体酵素混成タンパク質発現株(V-cpBLA-V/pET26/BL21株)を50μg/mlカナマイシンと37μg/mlクロラムフェニコールを含むLB液体培地4mlに植菌し、27℃で一晩培養した。この前培養液4μlを、50μg/mlカナマイシン、37μg/mlクロラムフェニコール、1mM IPTG、10 ng/mlのICP又はTCPを含むLB液体培地4mlに植菌し、27℃で一晩培養した。また、ICP、TCPのいずれも含まないこと以外は同一の方法で一晩培養した。これらの培養によりOD660が0.6程度にまで上昇した培養液100μlを15000rpmにて5分間遠心して菌体を回収し、SDS-PAGEを行った。泳動後のゲル中のタンパク質のバンドをニトロセルロース膜(バイオラッド社製)に転写した後、このニトロセルロース膜をイムノブロック(大日本住友製薬社製)にて4℃で一晩静置してブロッキングを行った。このニトロセルロース膜を、PBS-T(10mM リン酸、145mM NaCl、5mM KCl、pH7.2、0.1%Tween-20)にて5分間の洗浄することを3回繰り返した後、1/5000希釈したウサギ抗BLAポリクローナル抗体(Chemicon社製)を含む5%イムノブロック溶液にて室温で1時間反応させた。反応後のニトロセルロース膜を、PBS-Tにて3回洗浄した後、1/5000希釈したHRP-Goat anti Rabbit 1gを含む5%イムノブロック溶液に浸して室温で1時間反応させた。反応後のニトロセルロース膜をPBS-Tにて3回洗浄した後、そのHRP活性をSuperSignal WestPico Chemiluminescent Substrate(Pierce社製)にて検出した。その結果を図9に示す。レーン1はICP存在下で培養した菌体サンプルを、レーン2はTCP存在下で培養した菌体サンプルを、レーン3はICP、TCPのいずれの抗原(Ag)も含まない培地で培養した菌体サンプルを表す。
【0055】
図9から分かるように、抗原の種類を問わず、すべてのサンプルにおいて58kD付近にほぼ同量のタンパク質(V-cpBLA-V)の発現が確認された(図9)。したがって、抗原(特にICP)添加による増殖速度の上昇は、抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V)の発現量の増加によるものではなく、抗原結合による抗体酵素混成タンパク質の構造安定化がもたらす酵素活性上昇によるものと考えられる。
【実施例9】
【0056】
[SDS-PAGEやWestern blottingによる抗体酵素混成タンパク質発現の確認]
抗体酵素混成タンパク質発現株(V-cpBLA-V/pET26/BL21株)において、抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V)が実際に発現されているかを確認するために、抗体酵素混成タンパク質発現株からの抗体酵素混成タンパク質の部分精製を行った。より詳細には以下のような方法で行った。
【0057】
抗体酵素混成タンパク質発現株(V-cpBLA-V/pET26/BL21株)を50μg/mlカナマイシンと37μg/mlクロラムフェニコールを含むLB液体培地4mlに植菌し、27℃で一晩培養した。この培養液を50μg/mlカナマイシン、37μg/mlクロラムフェニコールを含むLB液体培地(LBKC液体培地)250mlに植菌し、O.D600が約0.6に達したとき1M IPTGを250μl加えて発現を誘導後、27℃でさらに16時間培養した。その後、培養液を4℃条件下6000gで10分間遠心して回収した上清に107.5gの硫酸アンモニウムを加え4℃で一晩静置し、可溶性タンパク質を沈殿させた。この溶液を4℃条件下10000gで20分間遠心して上清を廃棄し、沈殿を10ml TALON Buffer(50mM リン酸、300mM NaCl、pH7.0)にて懸濁した。これに200μlのTALON金属アフィニティーカラム(クロンテック社製)を加え、説明書に従いバッチ/重力方式カラム精製法によりタンパク質を精製した。タンパク質の溶出にはElution Buffer(125mM イミダゾール、50mM リン酸、300mM NaCl、pH7.0)を用いた。この濃縮タンパク質を用いてSDS-PAGEを行った結果を図10に示す。
【0058】
図10から分かるように、レーン5の58kD付近において、目的タンパク質である抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V)の分子量に相当するバンドを確認した。
【0059】
また、BL21(DE3,pLysS)株を、V-cpBLA-V/pET26、V-split・cpBLA-V/pET26、cpBLA/pET26のそれぞれのベクターにて形質転換して得られたV-cpBLA-V/pET26/BL21株、V-split・cpBLA-V/pET26/BL21株、cpBLA/pET26/BL21株を、前述のLBKC液体培地4mlにそれぞれ植菌し、27℃で一晩培養した。この培養液をLBKC液体培地250mlに植菌し、O.D600が約0.6に達したとき1M IPTGを250μl加えて発現を誘導後、27℃でさらに16時間培養した。その後、培養液を4℃条件下6000gで10分間遠心して回収した上清に107.5gの硫酸アンモニウムを加え4℃で一晩静置し、可溶性タンパク質を沈殿させた。この溶液を4℃条件下10000gで20分間遠心して上清を廃棄し、沈殿を10ml TALON Buffer(50mM リン酸、300mM NaCl、pH7.0)にて懸濁した。これに200μlのTALON金属アフィニティーカラム(クロンテック社製)を加え、説明書に従いバッチ/重力方式カラム精製法によりタンパク質を精製した。タンパク質の溶出にはElution Buffer(125mM イミダゾール、50mM リン酸、300mM NaCl、pH7.0)を用いた。この濃縮タンパク質溶液10μlを用いてSDS-PAGEを行なった後、上記実施例8と同様の方法でWestern blottingを行なった結果、目的タンパク質の理論値付近の位置にそれぞれバンドを確認することができた。すなわち、V-cpBLA-V/pET26/BL21株については、58kD付近にV-cpBLA-Vと考えられるバンドが確認され、V-split・cpBLA-V/pET26/BL21株については、28kD付近にV-BLAc、31kD付近にBLAn-Vと考えられるバンドが確認され、cpBLA/pET26/BL21株については、30kD付近にcpBLAと考えられるバンドが確認された。
【実施例10】
【0060】
[抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V)等の抗原結合能の確認]
抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V)が実際に抗原(ICP)に結合する能力を有しているかどうか確認するために、以下のELISA実験を行った。
10μg/mlのICP-BSA又はBSAを含むPBS溶液をFalcon3912マイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で16時間静置した。マイクロプレートから溶液を廃棄した後、そこに25%イムノブロックを含むPBSを200μl加え、室温で2時間置いてブロッキングを行った。次いで、マイクロプレートをPBS-Tで洗浄した後、上記実施例9で得られた50μg/mlの精製抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V)と5%イムノブロックを含むPBSを100μl加え室温で、90分間静置した。ここまでの操作で固相化された抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V)を検出するために、マイクロプレートをPBS-T洗浄後、5%イムノブロックを含むPBSで1/2000に希釈したHRP標識PentaHis(QIAGEN社製、東京)を加え室温で1時間静置した。その後マイクロプレートをPBS-Tで三回洗浄した後、あらかじめ調製した酵素反応溶液(50ml ELISA buffer、TMBZ(in DMSO)500μl、H2O2 10μl)を各wellへ100μlずつ添加して反応を開始した。暗所で5分間反応させた後、3.2N HSOを50μlずつ添加して反応を止め、プレートリーダーで吸光度を測定した(450nm)。
【0061】
また、上記のELISA実験の方法において、V-cpBLA-Vに代えて、V-split・cpBLA-V(V-BLAc及びBLAn-V)又はcpBLAを用いて、同様のELISA実験を行い、同様に吸光度を測定したその結果を図11に示す。図11から分かるように、cpBLAの場合と比較すると、V-cpBLA-V、V-split・cpBLA-Vのいずれの場合も、有意なICP-BSA特異的な結合が確認されたが、V-cpBLA-Vの場合はV-split・cpBLA-Vの場合と比較しても顕著なICP-BSA特異的結合能が認められた。なお、V-split・cpBLA-VにおいてはV-BLAcとBLAn-Vの両方にHis tagが存在することを考慮すると、V-split・cpBLA-Vと比較したV-cpBLA-Vのシグナルの高さは、図11に示されている以上のものがある。また、cpBLAにおいては、ICP(抗原)の有無にかかわらず、同程度の低いシグナルを示していることから、BLAのコンフォメーションが崩れ、非特異に結合している可能性がある。
【実施例11】
【0062】
[抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V)の抗原結合による活性変化]
抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V)が抗原に結合することによって、実際に酵素活性の変化(上昇)が生じているかどうか確認するために、発色基質Nitrocefin(Calbiochem社製)又は蛍光基質Fluorocillin (Invitrogen社製)、及び、実施例9で濃縮したV-cpBLA-Vを用いて以下の実験を行った。
【0063】
まず、実施例9で濃縮したV-cpBLA-Vタンパク質溶液 5μl、10μg/mlのICP又はTCP 5μl、及び、1mM Nitrocefinを含むPBS 90μlを混合し、室温で18時間暗所に静置した。その後、その反応液について490nmの吸光度を測定することによって、βラクタマーゼの活性の変化を調べた。また、ICPやTCPに代えてPBSを用いた場合(図12中の「PBS」の項目)や、V-cpBLA-Vタンパク質溶液を添加しなかった場合(図12中の「Nitrocefin」の項目)についても同様に490nmの吸光度を測定した。その結果を図12に示す。図12から分かるように、ICPを添加したサンプルにおいて、これを加えなかったサンプル(「TCP」、「PBS」、「Nitrocefin」)と比較して有意なシグナル上昇が観察された。すなわち、ICP依存的なβラクタマーゼ活性の上昇が認められた。また、TCPを添加したサンプルにおいても、ICP、TCPのいずれも添加しなかったサンプル(「PBS」)に比較してわずかながら有意な信号増加が観察された(n=2)。これにより、抗原添加により混成タンパク質の酵素活性が活性化されたと考えられる。
【0064】
次に、発色基質Nitrocefinに代えて蛍光基質Fluorocillinを用いて同様の実験を行なった。具体的には、実施例9で濃縮したV-cpBLA-Vタンパク質溶液 5μl、10μg/mlのICP又はTCP 5μlを混合し、4℃にて30分間インキュベーションした後に、10μM Fluorocillinを含むPBS 90μlを添加し、室温で30分間反応を行なった後に、マイクロプレートリーダーGenios Pro(TECAN社製)を用いて、485nmで励起し、535nmの蛍光を測定した。V-cpBLA-Vタンパク質溶液を添加しなかった場合の測定値をバックグラウンドとして引いた値を図13に示す。図13から分かるように、ICPを添加したサンプルにおいて、これを加えなかったサンプル(「TCP」、「PBS」)と比較して有意なシグナル上昇が観察された。すなわち、ICP依存的なβラクタマーゼ活性の上昇が認められた。
【実施例12】
【0065】
[抗ペプチド抗体酵素混成タンパク質を用いたペプチドの検出例]
本発明の融合タンパク質(抗体酵素混成タンパク質)を用いた抗原検出システムの汎用性を確かめるため、上記のFvとは異なる抗体Fvを有する抗体酵素混成タンパク質を用いた検出系を構築し、同様の抗原依存的酵素活性変化が見られるかどうか検証した。すなわち、実施例3で作製したV-cpBLA-V/pET26におけるVHおよびVL遺伝子を、抗オステオカルシンC末ペプチド抗体KTM219(Anal. Chem. 79, 6197 (2007))由来のものに置き換えた抗体酵素混成タンパク質を用いて、抗原ペプチドの検出実験を行なった。この実験は具体的には以下のような方法で行なった。
【0066】
まずV-cpBLA-V/pET26のVL遺伝子の交換、および3‘側に存在する不要なXhoIサイトの除去のため、KTM219のVL遺伝子を以下のプライマーを用いて増幅した。50pmolのMKback2A(配列番号23:GCGCAAGCTCAGTCGACGGAYATTGTGMTSACMCARWCTMCA)(5’末端から12~17番目のヌクレオチドがSalIサイト)、50pmolのVkNotFor(配列番号24:ATGGTGCTCGACTGCGGCCGCCCGTTTTAT)、10ngのpKST2(KTM219;Anal. Chem. 79, 6197 (2007))、0.2mM(反応溶液の最終濃度)のdNTPs、10μlの10´Ex-Taq buffer、5unitのEx-Taqを混合して100mlの反応溶液とし、94℃で5分間の後に、94℃で30秒間、65℃で30秒間、72℃で1分間からなるサイクルを25サイクル繰り返した後、72℃で10分間反応させて反応液を得た。更に得られた反応液をアガロースゲル電気泳動により精製した。次に同様にして50pmolのNotdXback(配列番号25:GCAGTCGAGCACCATCACCACCACCAC)、50pmolのpETDra3For(配列番号26:TGAGTGTTGTTCCAGTTTGG)、10ngのV-cpBLA-V/pET26を用いてpET26のNotI-DraIII領域を含む断片を増幅し、得られた反応液を同様に精製した。
【0067】
精製して得られたこれらのDNA断片、および、プライマーとしてMKback2AとpETDra3Forを用いて、実施例1と同様にオーバーラップ・エクステンションPCRを行い、得られたPCR産物を精製した後、該PCR産物を制限酵素SalIおよびDraIIIで処理して精製し、SalI-DraIII断片を得た。このSalI-DraIII断片を、同じくSalIおよびDraIII処理並びに精製を行なったV-cpBLA-V/pET26に組み込み、該プラスミドをV(ICP)-cpBLA-V(219)/pET26とした。このプラスミドの配列を確認後、同様にしてプライマーM13RV(配列番号27:CAGGAAACAGCTATGAC)およびJH1(配列番号28:ACTGCTCGAGACGGTGACCGTGGTCCC)、およびテンプレートとしてpKST2(KTM219)を用いてKTM219VH遺伝子をPCR増幅し、得られたPCR産物をNcoI及びXhoIにて制限酵素処理して精製し、NcoI-XhoI断片を得た。このNcoI-XhoI断片を、同じくNcoI及びXhoI処理並びに精製を行ったV(ICP)-cpBLA-V(219)/pET26に組み込み、該プラスミドをV-cpBLA-V/pET26(219)とした。
【0068】
[不溶性タンパク質の発現と精製、およびリフォールディング]
-cpBLA-V/pET26(219)でBL21(DE3, pLysS)株を形質転換し、50μg/mlのカナマイシンと37μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地プレートにて30℃で一晩培養し、抗体酵素混成タンパク質発現株(V-cpBLA-V/pET26(219)/BL21株)を作製した。コロニーを竹串でつつき、50μg/mlのカナマイシンと37μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB液体培地(LBCK培地)4mlに植菌し、37℃で一晩培養した。この前培養液250μlをLBCK培地250mlに植菌して37℃で培養し、OD600が0.6に達した時点で終濃度1mMのIPTGを添加して37℃で更に一晩培養した。その後、培養液を4℃条件下6000gで10分間遠心して回収し、25mlのTALON Bufferに懸濁、氷上での超音波処理により菌体を破砕し、2.5μlのBenzonase(Novagen社製)および終濃度1mMのMgClを加え氷上30分反応させてDNAを分解した後、6000g10分間遠心して上清をとり除いた。その後残ったペレットに25mlの1%TritonX-100、1mM EDTAを加えボルテックスし、6000g10分遠心する操作を3回繰り返して不溶性画分を洗浄した。
【0069】
洗浄した沈殿(不溶性画分)を10ml 6M塩酸グアニジン(GdnHCl)を含むTALON Bufferにて懸濁した。この懸濁液に200μlのTALON金属アフィニティーカラム(メルク社製)を加え、説明書に従った変性条件でのバッチ/重力方式カラム精製法によりタンパク質を精製した。タンパク質の溶出にはElution Buffer(200mM イミダゾール、50mM リン酸、300mM NaCl、5.4M GdnHCl,pH7.0)を用いた。
【0070】
溶出液中のタンパク質量をUVで定量し、溶出液のうち150μl(約320μgのタンパク質を含む)を分取し、終濃度10mMの2メルカプトエタノールと同1mM EDTAを加え、30℃で30分間おいたのち、Slide-A-Lyzer透析カセット(MW 10kcutoff, Pierce 社製)に移した。透析は、J. Immunol. Methods 219, 119 (1998)記載の透析外液(後述の透析外液1~5)ならびに方法に従って、500mLの透析外液に対して4℃で24時間ずつ計5回行い、最後に、4℃、15krpmにて10min遠心して最終的に約1.7mlの可溶化サンプルを得た。この可溶化サンプルには、3.7μMの抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V(219))が含まれていた。
透析外液1:50mM TrisHCl,3M GdnHCl,200mM NaCl,1mM EDTA,pH8.0;
透析外液2:50mM TrisHCl,2M GdnHCl,200mM NaCl,1mM EDTA,pH8.0;
透析外液3:50mM TrisHCl,1M GdnHCl,200mM NaCl,1mM EDTA,180μM GSSG,400mM L-アルギニン,pH8.0;
透析外液4:50mM TrisHCl,0.5M GdnHCl,200mM NaCl,1mM EDTA,pH8.0;
透析外液5:50mM TrisHCl,200mM NaCl,1mM EDTA,pH8.0;
【0071】
[抗体酵素混成タンパク質の活性測定]
上記により調製した抗体酵素混成タンパク質(V-cpBLA-V(219))を用い、Fluorocillinを用いて活性測定を行った。50μlのPBS中に終濃度0-2000ng/mlの抗原ペプチドBGP-C7、および終濃度300nMの抗体酵素混成タンパク質を混合し、黒色マイクロプレートウェルに分注した。これに50μL PBS中の2μM Fluorocillinを加えて28℃で60分反応させ、反応液の蛍光強度(485nmの励起光照射による535nmの蛍光強度)を測定した。なおこの際、抗体酵素混成タンパク質を加えない対照実験を行い、これらのウェルの蛍光強度をバックグラウンドとして減算した。この結果、図14に示すようにBGP-C7濃度依存的に有意な蛍光強度の増加がみられた。なお、本実験の測定は3連で行なった。図14中の黒丸は測定値の平均値を表し、エラーバーは1SDを示す。
【0072】
また、抗原としてBGP-C7以外のもの(BGP-C8,BGP-C10,ICP,TCP各終濃度1μg/ml)を用いて、同様の実験を行った。その結果を図15に示す。図15の結果から分かるように、KTM219を用いたオープンサンドイッチELISAで検出が可能なBGP-C8、BGP-C10(Anal. Chem. 79, 6197 (2007))では信号強度が増大したのに対し、特異的に認識されないICP、TCPではPBSと同じ信号強度しか得られなかった。なお、本実験の測定も3連で行なった。図15中のグラフの値は測定値の平均値を表し、エラーバーは1SDを示す。
【0073】
以上の実験結果より、本発明の融合タンパク質(抗体酵素混成タンパク質)を用いた抗原検出システムの汎用性と、目的抗原に対する特異性が示された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、検出対象である抗原が低分子抗原であっても、より簡便、効率的、安定性良くかつ高感度で検出することができる。また、本発明の抗原の検出方法は、通常のELISA法とは異なり、結合しなかった標識2次抗体(非競合法)や標識抗原(競合法)などを洗浄する操作を要することなく測定し得る測定法(ホモジニアス法)であり、測定装置の自動化が容易で(操作が簡便で熟練を要さずに)迅速な測定が可能という点で、通常のELISA法に比べて非常に大きなメリットがある。そのため、本発明は、臨床診断、食品検査、環境分析等における免疫測定系にきわめて有用に用いることができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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