TOP > 国内特許検索 > 量子エンタングルメント生成装置及び方法並びに量子エンタングルメント生成検出装置及び方法 > 明細書

明細書 :量子エンタングルメント生成装置及び方法並びに量子エンタングルメント生成検出装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5041256号 (P5041256)
登録日 平成24年7月20日(2012.7.20)
発行日 平成24年10月3日(2012.10.3)
発明の名称または考案の名称 量子エンタングルメント生成装置及び方法並びに量子エンタングルメント生成検出装置及び方法
国際特許分類 G02F   1/39        (2006.01)
G02F   1/377       (2006.01)
G02F   2/00        (2006.01)
FI G02F 1/39
G02F 1/377
G02F 2/00
請求項の数または発明の数 23
全頁数 28
出願番号 特願2009-529007 (P2009-529007)
出願日 平成20年8月11日(2008.8.11)
国際出願番号 PCT/JP2008/064436
国際公開番号 WO2009/025195
国際公開日 平成21年2月26日(2009.2.26)
優先権出願番号 2007213205
優先日 平成19年8月18日(2007.8.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年8月2日(2011.8.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501086714
【氏名又は名称】学校法人 学習院
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】平野 琢也
【氏名】衛藤 雄二郎
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】林 祥恵
参考文献・文献 特開平4-172329(JP,A)
T.C.Zhang, et al.,"Quantum teleportation of light beams",Physical Review A,2003年 3月,Vol. 67, No. 3,p.033802-1 - 033802-16
Y, Eto, et al.,"Observation of squeezed light at 1.535 um using a pulsed homodyne detector",Optics Letters,2007年 6月15日,Vol. 32, No. 12,p.1698-1700
Y.Zhang, et al.,"Experimental generation of broadband quadrature entanglement using laser pulses",Physical Review A,2007年 7月,Vol. 76, No. 1-A,p.012314-1 - 012314-9
松岡正浩,"裳華房テキストシリーズ-物理学 量子光学",株式会社裳華房,2006年 6月20日,第6版,p.166-169
調査した分野 G02F 1/00-7/00
G06E 1/00
H04L 9/12
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
IEEE Xplore
特許請求の範囲 【請求項1】
光周波数2fの光を発生するレーザー光源と、
一つのビームスプリッタと複数の鏡でリング状の光路を形成するリング型干渉計と、
上記リング型干渉計の光路中に挿入され、光周波数2foの光が入射すると光周波数foの光を発生する光パラメトリック増幅器と、
上記リング型干渉計の光路中に挿入された分散媒質と、
を備え、
光周波数2foの光が上記レーザー光源から上記ビームスプリッタに入射し、
上記ビームスプリッタが2foの光周波数を有する光を分岐して上記リング型干渉計内を互いに反対方向へ進ませ、分岐した各光が上記光パラメトリック増幅器に入射することで、上記リング型干渉計内を互いに反対方向へ進む第1及び第2のスクイーズ光が発生し、
上記分散媒質が上記第1及び第2のスクイーズ光の相対的な位相を所定の値に調整し、
上記ビームスプリッタが上記第1及び第2のスクイーズ光を合波して、量子エンタングルビームが生成される、量子エンタングルメント生成装置。
【請求項2】
前記リング型干渉計は、三角形以上の多角形の各辺で光路が構成され、
前記ビームスプリッタは、上記多角形の一頂点に配置され、
前記複数の鏡は、上記多角形の残りの頂点に配置されている、請求項1に記載の量子エンタングルメント生成装置。
【請求項3】
前記リング型干渉計は、前記ビームスプリッタと前記複数の鏡のうち第1及び第2の鏡とが反時計方向に順に配設されて形成された三角形状の光路を有しており、
前記分散媒質は、前記ビームスプリッタと上記第1の鏡との間の光路に配置され、
前記光パラメトリック増幅器は、上記第1の鏡と上記第2の鏡との間の光路に配置される、請求項1に記載の量子エンタングルメント生成装置。
【請求項4】
前記リング型干渉計は、前記ビームスプリッタと前記複数の鏡のうち第1~第3の鏡とが反時計方向に順に配設されて形成された矩形形状の光路を有しており、
前記光パラメトリック増幅器は上記第1の鏡と上記第2の鏡との間の光路に配置され、
前記分散媒質は前記ビームスプリッタと上記第3の鏡との間の光路に配置される、請求項1に記載の量子エンタングルメント生成装置。
【請求項5】
前記光パラメトリック増幅器と前記第1の鏡との光軸上及び前記光パラメトリック増幅器と前記第2の鏡との光軸上には、それぞれ集光手段が配設される、請求項3又は4に記載の量子エンタングルメント生成装置。
【請求項6】
前記光パラメトリック増幅器は、電気光学結晶からなる光導波路構造を有している、請求項1に記載の量子エンタングルメント生成装置。
【請求項7】
前記分散媒質は2枚のガラス板からなる、請求項1に記載の量子エンタングルメント生成装置。
【請求項8】
前記レーザー光源が、光周波数fの光を発生する光源と、該光源から入射される光周波数fの光を光周波数2fに変換する第2高調波発生器と、からなる、請求項1に記載の量子エンタングルメント生成装置。
【請求項9】
前記第2高調波発生器が、電気光学結晶からなる光導波路構造を有している、請求項8に記載の量子エンタングルメント生成装置。
【請求項10】
前記ビームスプリッタは、光周波数f及び光周波数2fの両方の光に対して透過率及び反射率が共に約50%である、請求項1に記載の量子エンタングルメントの生成装置。
【請求項11】
前記リング型干渉計が面上に形成されている、請求項1に記載の量子エンタングルメント生成装置。
【請求項12】
レーザー光源から光周波数2fの光を発生し、
一つのビームスプリッタと複数の鏡とでリング状の光路を形成するリング型干渉計に、上記レーザー光源からの光を入射し、
入射する光を上記ビームスプリッタで分岐して上記リング型干渉計内で互いに反対方向へ進む2つの光とし、
上記ビームスプリッタで分岐された一方の光を、上記リング型干渉計内の光路に配置された光パラメトリック増幅器から、該リング型干渉計内の光路に配置された分散媒質へ進ませて、光周波数fの第1のスクイーズ光を発生させ、
上記ビームスプリッタで分岐された他方の光を、上記分散媒質から上記光パラメトリック増幅器へ進ませて、光周波数fの第2のスクイーズ光を発生させ、
上記第1及び第2のスクイーズ光の相対的な位相を、上記分散媒質によって所定の値に調整し、かつ、上記第1及び第2のスクイーズ光を、上記ビームスプリッタで合波することにより量子エンタングルビームを生成する、量子エンタングルメント生成方法。
【請求項13】
前記第1及び第2のスクイーズ光の相対的な位相をπ/2とする、請求項12に記載の量子エンタングルメント生成方法。
【請求項14】
前記量子エンタングルビームを、前記ビームスプリッタを透過する第1の量子エンタングルビームとし、前記ビームスプリッタを反射する第2の量子エンタングルビームとする、請求項12に記載の量子エンタングルメント生成方法。
【請求項15】
光周波数fのパルスレーザー光源と光周波数fの光が入射すると光周波数2fの光を発生する第2高調波発生器とからなり、光周波数fのパルスレーザー光と光周波数2fのパルスレーザー光を同じ光軸上に出射する光源部と、
一つのビームスプリッタ及び複数の鏡でリング状の光路を形成するリング型干渉計と、
上記リング型干渉計の光路中に挿入され、光周波数2fの光が入射すると光周波数fの光を発生する光パラメトリック増幅器と、
上記リング型干渉計の光路中に挿入された分散媒質と、
ホモダイン検出器と、
を備え、
光周波数2foの光が上記レーザー光源から上記ビームスプリッタに入射し、
上記ビームスプリッタが2foの光周波数を有する光を分岐して上記リング型干渉計内を互いに反対方向へ進ませ、分岐した各光が上記光パラメトリック増幅器に入射することで、上記リング型干渉計内を互いに反対方向へ進む光周波数foの直線偏光した第1及び第2のスクイーズ光を発生し、
上記分散媒質が上記第1及び第2のスクイーズ光の相対的な位相を所定の値に調整し、
上記ビームスプリッタが上記第1及び第2のスクイーズ光を合波して、光周波数fの直線偏光した量子エンタングルビームが生成され、
上記ホモダイン検出器に対して、光周波数fの直線偏光した量子エンタングルビーム光が信号光として、上記光源部から出射される光周波数fで該信号光とは直交する偏光を有しているパルスレーザー光が局部発振光として、それぞれ入射し、直交位相振幅が検出される、量子エンタングルメントの生成検出装置。
【請求項16】
前記量子エンタングルビームは第1及び第2の量子エンタングルビームからなり、上記ホモダイン検出器は第1及び第2のホモダイン検出器からなり、上記第1及び第2の量子エンタングルビーム光が、それぞれ、上記第1及び第2のホモダイン検出器への信号光となる、請求項15に記載の量子エンタングルメントの生成検出装置。
【請求項17】
前記ビームスプリッタは、光周波数f及び光周波数2fの水平直線偏光の光に対して透過率及び反射率が共に約50%であり、光周波数fの垂直直線偏光の光に対して反射率が約100%である、請求項15に記載の量子エンタングルメントの生成検出装置。
【請求項18】
前記ホモダイン検出器は、前記信号光及び前記局部発振光が入射される電気光学結晶と、該電気光学結晶から入射する光を偏光させる1/2波長板と、該1/2波長板で偏光した光を重ね合わせると共に透過光と反射光とに分岐するビームスプリッタと、該ビームスプリッタで分岐される2つの光をそれぞれ検出する検出器と、該検出器の差分を出力する手段と、からなる、請求項15に記載の量子エンタングルメントの生成検出装置。
【請求項19】
前記ホモダイン検出器は、前記信号光及び前記局部発振光が入射され、光周波数f及び光周波数2fを透過させるフィルタと、該フィルタからの光の位相を変化させる1/4波長板と、該1/4波長板からの光を重ね合わせると共に透過光と反射光とに分岐するビームスプリッタと、該ビームスプリッタで分岐される2つの光をそれぞれ検出する検出器と、該検出器の差分を出力する手段と、からなる、請求項15に記載の量子エンタングルメントの生成検出装置。
【請求項20】
さらに、前記局部発振光及び前記信号光と前記ホモダイン検出器との間に配設される分散媒質を備え、該ホモダイン検出器は、上記分散媒質を通過した光から光周波数f及び光周波数2fを透過させるフィルタと、該フィルタからの光を重ね合わせると共に透過光と反射光とに分岐するビームスプリッタと、該ビームスプリッタで分岐される2つの光をそれぞれ検出する検出器と、該検出器の差分を出力する手段と、からなる、請求項15に記載の量子エンタングルメントの生成検出装置。
【請求項21】
前記リング型干渉計が、面上に形成されている、請求項15に記載の量子エンタングルメントの生成検出装置。
【請求項22】
光周波数fのレーザー光源からの光と該レーザー光源から第2高調波発生器を介して発生させた光周波数2fの光とを、同じ光軸上に発生し、
一つのビームスプリッタ及び複数の鏡でリング状の光路を形成するリング型干渉計に、上記レーザー光源からの光周波数2fの光を入射し、
入射する光を、上記ビームスプリッタで分岐して上記リング型干渉計内で互いに反対方向へ進む2つの光とし、
上記ビームスプリッタで分岐された一方の光を、上記リング型干渉計内の光路に配置された光パラメトリック増幅器から、該リング型干渉計内の光路に配置された分散媒質へ進む光とし、光周波数fの直線偏光した第1のスクイーズ光を発生し、
上記ビームスプリッタで分岐された他方の光を、上記分散媒質から上記光パラメトリック増幅器へ進む光とし、光周波数fの直線偏光した第2のスクイーズ光を発生し、
上記第1及び第2のスクイーズ光の相対的な位相を、上記分散媒質によって所定の値に調整し、かつ、上記第1及び第2のスクイーズ光を、上記ビームスプリッタで合波することにより、光周波数fの直線偏光した量子エンタングルビームを生成し、
光周波数fの直線偏光した量子エンタングルビームをホモダイン検出器の信号光とし、上記ビームスプリッタで分岐された一方の光と同じ光路を介して上記レーザー光源からの光周波数fの光を上記リング型干渉計内を通過させると共に、上記信号光とは直交する偏光とし、上記ホモダイン検出器の局部発振光とし、上記ホモダイン検出器が、上記信号光の直交位相振幅を検出する、量子エンタングルメントの生成及び検出方法。
【請求項23】
前記光パラメトリック増幅器の前後の光軸上に光周波数2fを阻止するフィルタを挿入し、前記量子エンタングルビームの発生を停止する、請求項22に記載の量子エンタングルメントの生成及び検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、量子エンタングルメント生成装置と量子エンタングルメント生成検出装置、並びに量子エンタングルメントの生成方法と量子エンタングルメント生成検出方法に関する。さらに詳細には、2次の非線型光学効果を用いる連続変数の量子エンタングルメント生成装置及び生成方法と、この量子エンタングルメント生成装置で生成した量子エンタングルビームの検出も同時に行うことができる装置とその検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子情報技術は、量子力学的効果を直接的に利用することにより、従来よりも優れた情報処理を実現する技術あるいは技術分野である。量子エンタングルメントは、量子情報技術の最も重要な資源である。量子エンタングルメントを利用することにより、絶対に安全な通信や、従来よりも桁違いに高速な計算処理を実現することができる。
【0003】
量子的にエンタングルした状態は、複数の離れた場所にある物理系が互いに相関を持った状態であり、それら複数の物理系を分離して扱うことができない状態である。2つの離れた場所にある物理系が量子的にエンタングルした状態を共有しているとき、2つの場所で行う測定の結果には、古典論では説明することができない相関が生じる。
【0004】
量子エンタングルメントという言葉は、一般に、量子的にエンタングルした状態そのもの、あるいは、エンタングルした状態が示す量子論特有の物理現象、または、量子論が非分離の特性を内包しているという概念を表すのに用いられる。しかし、本明細書では、量子エンタングルメントを、量子的にエンタングルした状態を示す言葉として用いる。
【0005】
量子情報処理には、主に2つのアプローチがあり、ひとつは離散的な物理量を用いるもの、もう一つは連続的な物理量を用いるものである(例えば、非特許文献1参照)。光の場合には、通常、電場の直交振幅を連続的な値をとる物理量として用いる。連続的な物理量に対する量子エンタングルメントのことを、連続変数量子エンタングルメントと呼ぶ。
【0006】
従来の連続変数エンタングルメントの生成方法を説明する。最も初期に用いられた方法は、非縮退のパラメトリック増幅器を用いる方法である(例えば、特許文献1参照)。特許文献1で紹介されている実験では、非線型媒質としてチタン酸リン酸カリウム(KTP)を用い、タイプII(type II)の位相整合を行うことで、互いに直交した偏光状態のシグナル光とアイドラ光を発生した。非縮退とは、偏光状態が異なるということである。パラメトリック増幅をタイプIIの位相整合で行ったときのシグナル光とアイドラ光は、量子的な相関を有しており、連続変数量子エンタングルメントを生成することができる。
【0007】
しかしながら、従来のタイプIIの位相整合を用いる方法では、シグナル光とアイドラ光に対する非線型媒質の屈折率が異なるため、これらの2つの光に対して光共振器を同時に共鳴させることが技術的に困難であった。また、一般に、タイプIIの位相整合ではビームのウォークオフが起こり、量子エンタングルメントの質が低下していた。
【0008】
次に実施された方法は、2つのスクイーズ光を発生し、それらを透過率と反射率がともに50%のビームスプリッタで重ね合わせることで、量子エンタングルメントを生成するというものである。このとき、2つのスクイーズ光の相対的な位相差がπ/2となるように精密に制御する必要がある。
【0009】
例えば、非特許文献2では、リング共振器内に置かれたタイプIの位相整合を行うパラメトリック増幅により、リングを右回りと左回りに進行するスクイーズ光を発生し、それらをリングの外に置いたビームスプリッタで重ね合わせることで、量子エンタングルメントを発生した。この方法の問題点は、リング共振器を出た後にビームスプリッタで重なり合うまでに、2つのスクイーズ光は別の経路をたどるので、2つの経路間の相対的な光路長が不安定になることである。
【0010】

【特許文献1】H. J. Kimble et al., U.S.Patent 5,339,182, Aug. 16, 1994
【非特許文献1】S. L. Braunstein and P. van Loock, Rev. Mod. Phys. Vol.77, p.513, 2005
【非特許文献2】T. C. Zhang, et al., Phys. Rev. A, Vol.67, p.033802, 2003
【非特許文献3】Yujiro Eto, et al., Optics Letters, Vol. 32, pp. 1698-1700, 2007
【非特許文献4】L. M. Duan, et al., Physical Review Letters, Vol. 84, p.2722, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の2つのスクイーズ光を用いる方法では、光路長の差を常に監視し、帰還制御(フィードバック制御)による安定化を行う必要があるが、相対的な光路長の安定化は有限の精度でしか実現できない上に、装置が複雑になるという課題があった。
【0012】
上記課題に鑑み、本発明の第1の目的は、2つのスクイーズ光を重ね合わせるエンタングルメント生成において、2つのスクイーズ光の相対的な位相差を安定的に制御できる、量子エンタングルメント生成装置を提供することである。本発明の第2の目的は、量子エンタングルメントを生成する方法を提供することである。
本発明の第3の目的は、この量子エンタングルメント生成装置で生成した量子エンタングルビームの検出も同時に行うことができる装置を提供することにある。さらに、本発明の第4の目的は量子エンタングルメントを生成し、さらに生成した量子エンタングルビームの検出も同時に行うことができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記第1の目的を達成するため、本発明の量子エンタングルメント生成装置は、光周波数2fの光を発生するレーザー光源と、光周波数2fの光が入射されるビームスプリッタ及び複数の鏡でリング状光路が構成されるリング型干渉計と、リング型干渉計の光路中に挿入され、光周波数2fの光が入射すると光周波数fの光を発生する光パラメトリック増幅器と、リング型干渉計の光路中に挿入され、光周波数2fの光と光周波数fとの相対的な光路長を変化させる分散媒質と、を備え、ビームスプリッタで分岐されリング型干渉計内を互いに反対方向へ進む2つの光周波数2fの光を、光パラメトリック増幅器に入射させることで、リング型干渉計内を互いに反対方向へ進む第1及び第2のスクイーズ光を発生させ、第1及び第2のスクイーズ光の相対的な位相を分散媒質により所定の値に調整し、第1及び第2のスクイーズ光を、ビームスプリッタで合波することにより量子エンタングルビームを生成する。
上記構成において、リング型干渉計は、好ましくは、三角形以上の多角形の各辺で光路が構成され、ビームスプリッタは多角形の一頂点に配置され、複数の鏡は多角形の残りの頂点に配置されている。
リング型干渉計は、好ましくは、ビームスプリッタと複数の鏡のうち第1及び第2の鏡とが反時計方向に順に配設される三角形状の光路を有しており、分散媒質はビームスプリッタと第1の鏡との間の光路に配置され、光パラメトリック増幅器は第1の鏡と第2の鏡との間の光路に配置される。
リング型干渉計は、好ましくは、ビームスプリッタと複数の鏡のうち第1~第3の鏡とが反時計方向に順に配設される矩形形状の光路を有しており、光パラメトリック増幅器は第1の鏡と第2の鏡との間の光路に配置され、分散媒質はビームスプリッタと第3の鏡との間の光路に配置される。
光パラメトリック増幅器と第1の鏡との光軸上及び光パラメトリック増幅器と第2の鏡との光軸上には、好ましくは、それぞれ集光手段が配設される。前記光パラメトリック増幅器は、好ましくは、電気光学結晶からなる光導波路構造を有している。
分散媒質は、好ましくは、2枚のガラス板からなる。
レーザー光源は、好ましくは、光周波数fの光を発生する光源と、光源から入射される光周波数fの光を光周波数2fに変換する第2高調波発生器と、からなる。
第2高調波発生器は、好ましくは、電気光学結晶からなる光導波路構造を有している。
ビームスプリッタは、好ましくは、光周波数f及び光周波数2fの両方の光に対して透過率及び反射率が共に約50%である。
前記リング型干渉計は、好ましくは面上に形成されている。
【0014】
上記第2の目的を達成するため、本発明の量子エンタングルメント生成方法は、レーザー光源から光周波数2fの光を発生し、レーザー光源からの光を、ビームスプリッタ及び鏡からなる光路と光路内に配置される光パラメトリック増幅器及び分散媒質とからなるリング型干渉計へ入射し、入射する光をビームスプリッタで分岐してリング型干渉計内で互いに反対方向へ進む2つの光とし、分岐された一方の光を光パラメトリック増幅器から分散媒質へ進む光とし、光周波数fの第1のスクイーズ光を発生し、分岐された他方の光を分散媒質から光パラメトリック増幅器へ進む光とし、光周波数fの第2のスクイーズ光を発生し、第1及び第2のスクイーズ光の相対的な位相を分散媒質によって所定の値に調整し、第1及び第2のスクイーズ光をビームスプリッタで合波することにより量子エンタングルビームを生成する。
上記構成において、好ましくは、第1及び第2のスクイーズ光の相対的な位相をπ/2とする。量子エンタングルビームを、好ましくは、ビームスプリッタを透過する第1の量子エンタングルビームとし、ビームスプリッタを反射する第2の量子エンタングルビームとする。
【0015】
上記構成によれば、リング型干渉計で生成する2つのスクイーズ光の相対的な位相を安定に保つことにより、安定に量子エンタングルメントを生成することができる。
【0016】
上記第3の目的を達成するため、本発明の量子エンタングルメントの生成検出装置は、光周波数fのパルスレーザー光源と光周波数fの光が入射すると光周波数2fの光を発生する第2高調波発生器とからなり、光周波数fのパルスレーザー光と光周波数2fのパルスレーザー光を同じ光軸上に出射する光源部と、光周波数2fの光が入射されるビームスプリッタ及び複数の鏡でリング状光路が構成されるリング型干渉計と、リング型干渉計の光路中に挿入され、光周波数2fの光が入射すると光周波数fの光を発生する光パラメトリック増幅器と、リング型干渉計の光路中に挿入され、光周波数2fの光と光周波数fとの相対的な光路長を変化させる分散媒質と、ホモダイン検出器と、を備え、ビームスプリッタで分岐されてリング型干渉計内を互いに反対方向へ進む2つの光周波数2fの光を光パラメトリック増幅器に入射させることで、リング型干渉計内を互いに反対方向へ進む光周波数fの第1及び第2の直線偏光したスクイーズ光を発生させ、第1及び第2のスクイーズ光の相対的な位相を分散媒質により所定の値に調整し、第1及び第2のスクイーズ光を、ビームスプリッタで合波することにより量子エンタングルビームを生成させ、ホモダイン検出器に対して、光周波数fの直線偏光した量子エンタングルビーム光が信号光として、光源部から出射される光周波数fで信号光とは直交する偏光を有しているパルスレーザー光が局部発振光として、それぞれ入射され、直交位相振幅が検出される。
【0017】
上記構成において、好ましくは、量子エンタングルビームは第1及び第2の量子エンタングルビームからなり、ホモダイン検出器は第1及び第2のホモダイン検出器からなり、第1及び第2の量子エンタングルビーム光が、それぞれ、第1及び第2のホモダイン検出器への信号光となる。
ビームスプリッタは、好ましくは、光周波数f及び光周波数2fの水平直線偏光の光に対して透過率及び反射率が共に約50%であり、光周波数fの垂直直線偏光の光に対して反射率が約100%である。
ホモダイン検出器は、好ましくは、信号光及び局部発振光が入射される電気光学結晶と、電気光学結晶から入射する光を偏光させる1/2波長板と、1/2波長板で偏光した光を重ね合わせると共に透過光と反射光とに分岐するビームスプリッタと、分岐される2つの光をそれぞれ検出する検出器と、検出器の差分を出力する手段と、からなる。
ホモダイン検出器は、好ましくは、信号光及び局部発振光が入射される光周波数f及び光周波数2fを透過させるフィルタと、フィルタからの光の位相を変化させる1/4波長板と、1/4波長板からの光を重ね合わせると共に透過光と反射光とに分岐するビームスプリッタと、分岐される2つの光をそれぞれ検出する検出器と、検出器の差分を出力する手段と、からなる。
さらに、好ましくは、局部発振光及び信号光とホモダイン検出器との間に配設される分散媒質を備え、ホモダイン検出器は、分散媒質を通過した光から光周波数f及び光周波数2fを透過させるフィルタと、フィルタからの光を重ね合わせると共に透過光と反射光とに分岐するビームスプリッタと、分岐される2つの光をそれぞれ検出する検出器と、検出器の差分を出力する手段と、からなる。
前記リング型干渉計は、好ましくは面上に形成されている。
【0018】
上記第4の目的を達成するため、本発明の量子エンタングルメントの生成及び検出方法は、光周波数fのレーザー光源からの光とレーザー光源から第2高調波発生器を介して発生させた光周波数2fの光とを同じ光軸上に発生し、レーザー光源からの光周波数2fの光を、ビームスプリッタ及び複数の鏡からなるリング状光路と光路内に配置される光パラメトリック増幅器及び分散媒質とからなるリング型干渉計へ入射し、入射する光をビームスプリッタで分岐してリング型干渉計内で互いに反対方向へ進む2つの光とし、分岐された一方の光を光パラメトリック増幅器から分散媒質へ進む光とし、光周波数fの第1の直線偏光したスクイーズ光を発生し、分岐された他方の光を分散媒質から光パラメトリック増幅器へ進む光とし、光周波数fの第2の直線偏光したスクイーズ光を発生し、第1及び第2のスクイーズ光の相対的な位相を分散媒質によって所定の値に調整し、第1及び第2のスクイーズ光をビームスプリッタで合波することにより量子エンタングルビームを生成し、光周波数fの直線偏光した量子エンタングルビームをホモダイン検出器の信号光とし、光周波数fのレーザー光源からの光を分岐された一方の光と同じ光路を介してリング型干渉計内を通過させると共に、信号光とは直交する偏光とし、ホモダイン検出器の局部発振光とし、ホモダイン検出器により信号光の直交位相振幅を検出する。
【0019】
上記構成において、好ましくは、光パラメトリック増幅器の前後の光軸上に光周波数2fの光を阻止するフィルタを挿入し、量子エンタングルビームの発生を停止する。
【0020】
上記構成によれば、リング型干渉計で生成する2つのスクイーズ光の相対的な位相を安定に保つことにより、安定に量子エンタングルビームを生成することができる。さらに、ホモダイン検出器の局部発振光が、リング型干渉計に入射する光と同じ光軸から供給されるので、量子エンタングルビームのホモダイン検出も安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の量子エンタングルメント生成装置及び量子エンタングルメント生成方法によれば、リング型干渉計内で互いに反対方向へ進む2つのスクイーズ光の相対的な位相を安定に保つことにより、安定に量子エンタングルメントを生成することができる。
本発明の量子エンタングルメント生成検出装置及び量子エンタングルメント生成及び検出方法によれば、リング型干渉計内で互いに反対方向へ進む2つのスクイーズ光の相対的な位相を安定に保つことにより、安定に量子エンタングルメントを生成することができると共に、生成した量子エンタングルメントビームのホモダイン検出も安定して行うことができる。さらに、エンタングルメントビームとホモダイン検出のための局部発振光とを同軸上に出力することにより、ホモダイン検出の安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る量子エンタングルメント生成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る量子エンタングルメント生成装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る量子エンタングルメント生成装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態による量子エンタングルメントの生成検出装置を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置を示すブロック図である。
【図6】〈Δ(X(φa1)+X(φ))〉の値が最小になった位相(その位相をφ=φb1とする。)におけるX(φa1)とX(φb1)の散布図である。
【図7】φ=φb2=φb1+π/2を満たす位相(その位相をφ=φb1とする。)におけるX(φa2)とX(φb2)の散布図である。
【図8】測定したX(φ),X(φ)から計算した第1の量子エンタングルビームと第2の量子エンタングルビームの和と差の分散のφへの依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1:レーザー光源
2,105:第2高調波発生器
3:第1の鏡
4:ビームスプリッタ
5:第2の鏡
6,122:光パラメトリック増幅器
7:第3の鏡
8:第4の鏡
9,124,128:分散媒質
10,130:第1の量子エンタングルビーム
11,131:第2の量子エンタングルビーム
15:光周波数fのレーザー光源
20,25,70,170:リング型干渉計
30,35,40:量子エンタングルメント生成装置
50,150:量子エンタングルメントの生成検出装置
60,160:光源部
80,180:第1のホモダイン検出器
90,190:第2のホモダイン検出器
100:パルスレーザー光源
101:光パルス(光周波数fで水平偏光の光)
102,132,138,139:光周波数fに対するゼロオーダーの1/2波長板
103,107,110,113:光周波数fの光の水平偏光成分
104,108,111:光周波数fの光の垂直偏光成分
106:光周波数2fで水平偏光の光
109,117,219:光周波数fに対する偏光ビームスプリッタ
112,118:2波長用波長板(光周波数fでは1/2波長板、光周波数2fでは1波長板となる)
114:鏡
115:光周波数fの光
116:光周波数2fの光
120,134,213:特殊ビームスプリッタ
121,123,203,204,210:鏡(2波長鏡)
125,216:第1のガラス板
126,217:第2のガラス板
133,135,214,215,220:光周波数fに対する鏡
136:第1の電気光学結晶
137:第2の電気光学結晶
140,141:光周波数fに対する偏光ビームスプリッタ
142:第1のフォトダイオード
143:第2のフォトダイオード
144:第3のフォトダイオード
145:第4のフォトダイオード
146:第1のRFコンバイナー
147:第2のRFコンバイナー
148:第1の増幅器
149:第2の増幅器
200,202,206,208,226,227,228,229:レンズ
205,207,223,224:赤色フィルタ
211,212:平行平面ガラス板
221,222:バンドパスフィルタ
225:1/4波長板
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
(量子エンタングルメント生成装置の第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る量子エンタングルメント生成装置30の構成を示す平面視のブロック図である。光路は直線で示している。図示したXY座標によって、平面図における横方向をX方向とし、縦方向をY方向として説明する。図1に示すように、本発明の量子エンタングルメント生成装置30は、レーザー光源1とリング型干渉計20とから構成されている。光周波数が2fのレーザー光源1から出射した光は、第1の鏡3を介してリング型干渉計20に入射される。
【0025】
(量子エンタングルメント生成装置の第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る量子エンタングルメント生成装置35の構成を示す平面視のブロック図である。光路は直線で示している。図2に示す量子エンタングルメント生成装置35が図1に示す量子エンタングルメント生成装置30と異なるのは、レーザー光源1の構成である。レーザー光源1は、光周波数fのレーザー光源15と第2高調波発生器2とから構成されており、光周波数2fの光を発生する。レーザー光源1から発生したレーザー光は、図2において、-X方向(左向き)に直進して第1の鏡3に入力され、その反射光が-Y方向(下向き)に反射されてリング型干渉計20へ入射する。
【0026】
リング型干渉計20は、ビームスプリッタ4と第2の鏡5と光パラメトリック増幅器6と第3の鏡7と第4の鏡8と分散媒質9とから構成されている。ビームスプリッタ4の-Y方向(下側)に第2の鏡5が配置されている。第2の鏡5のX方向(右側)に第3の鏡7が配置されている。また、ビームスプリッタ4のX方向(右側)に第4の鏡8が配置されている。
【0027】
リング型干渉計20は、ビームスプリッタ4と第2~4の鏡5,7,8とが四角形、具体的には矩形の各頂点に配置され、光路を形成している。つまり、リング型干渉計20は、ビームスプリッタ4と、リング型干渉計20用の第1~第3の鏡5,7,8が反時計方向に順に配設されている。光パラメトリック増幅器6は第2の鏡5と第3の鏡7とから形成される光路軸に沿って配置されている。分散媒質9は、ビームスプリッタ4と第4の鏡8とから形成される光路軸に沿って配置されている。
【0028】
ビームスプリッタ4は、光周波数2fと光周波数fの両方の光に対して、透過率及び反射率が50%であることが望ましい。
【0029】
第1~4の鏡3,5,7,8は、何れも光周波数2fと光周波数fの両方の光を反
射する鏡であり、例えば、誘電体からなる。
【0030】
光パラメトリック増幅器6は光周波数2fの光をfに変換する。光パラメトリック増幅器6は、2次の非線型光学効果を有する結晶を用いることができ、例えば、周期分極反転構造を有するLiNbOからなる光導波路を用いることができる。
【0031】
分散媒質9は光学ガラスを用いることができる。光学ガラスの材料としては、BK7のようなホウケイ酸ガラスを使用してもよい。分散媒質9が光学ガラスからなる場合には、光学ガラスの光軸内の寸法が変化するように微動することにより、レーザー光がガラス内を透過する距離を変化させることで、レーザー光の相対的な位相を制御することができる。光学ガラスとしては、楔形状のウェッジガラス板を用いてもよく、後述するように、2枚用いた分散媒質9としてもよい。別の分散媒質9としては、空気などの気体を容器に充填し、光の入り口及び出口となる窓部を有する、所謂ガスセルを用いることができる。分散媒質9がガスセルからなる場合には、気体の圧力を変化させることで、気体を通過するレーザー光の相対的な位相を制御することができる。
【0032】
リング型干渉計20は、平面の上に形成されていることが好ましい。リング型干渉計20は、ブレッドボード上に形成することができる。ブレッドボードは、光学定盤とも呼ばれている。ブレッドボードは、剛性がある材料からなる板または基板であってもよい。リング型干渉計20を単一のブレッドボード上に形成することにより、温度変動や振動に対して光路長の安定化を図ることができると共に、装置の構成が簡単になる。第1の鏡3も単一のブレッドボード上に形成してもよい。レーザー光源1からの光も、光ファイバで単一のブレッドボードへ導光すれば、さらに、温度変動や振動に対して光路長の安定化を図ることができる。
【0033】
次に、本発明の量子エンタングルメント生成装置30,35の動作を説明する。
レーザー光源1から出射して第1の鏡3とビームスプリッタ4と第2の鏡5とを通過した光周波数2fの光は、光パラメトリック増幅器6の励起光入力となり、光周波数fの第1のスクイーズ光を発生する。この第1のスクイーズ光は、リング型干渉計20の中を反時計回りに進み、第3の鏡7及び第4の鏡8で反射されたのち、分散媒質9を通過し、ビームスプリッタ4に至る。
【0034】
次に、ビームスプリッタ4でX方向(右側)に反射されたレーザー光は、分散媒質9を通過し、第4の鏡8で-Y方向(下側)に反射され、第3の鏡7で-X方向(左側)に反射されたのち、光パラメトリック増幅器6に入射し、光周波数fの第2のスクイーズ光を発生する。したがって、この第2のスクイーズ光は、リング共振器の中を時計回りに進み第2の鏡5で反射された後、ビームスプリッタ4に至る。
【0035】
このようにして、リング型干渉計20で発生し、互いに反対方向へ進む第1及び第2のスクイーズ光は、ビームスプリッタ4で空間的に重ね合わせが生起される。このとき、第1のスクイーズ光と第2のスクイーズ光との相対的な位相がπ/2となるように分散媒質9を操作することにより、量子的な相関をもつ第1の量子エンタングルビーム10と第2の量子エンタングルビーム11を発生することができる。第1の量子エンタングルビーム10は、ビームスプリッタ4を通過した後、図1に示すように-X方向(左方向)に出射する。第2の量子エンタングルビーム11は、ビームスプリッタ4によりY方向(上方向)へ反射し、第1の鏡3を通過して出射する。
【0036】
第1のスクイーズ光と第2のスクイーズ光とを、ビームスプリッタ4で重ね合わせた際の相対的な位相を、分散媒質9を用いて制御できるのは、次の理由による。リング型干渉計20を反時計回りに進む経路では、光周波数fの光が分散媒質9を通過するのに対し、時計回りに進む経路では光周波数2fの光が分散媒質を通過するからである。すなわち、時計回りと反時計回りの互いに反対方向に進む場合には、分散媒質9を通るときの光周波数が異なるので、分散の大きさを変えることで、第1のスクイーズ光と第2のスクイーズ光の相対的な位相を変えることができる。
【0037】
さらに、第1のスクイーズ光と第2のスクイーズ光との相対的な位相を、分散媒質9により所望の値、例えば、π/2となるように設定することにより、第1及び第2の量子エンタングルビーム10,11を生成することができる。
【0038】
本発明の第1,第2の実施形態に係る量子エンタングルメント生成装置30,35によれば、第1及び第2の2つのスクイーズ光は、互いに異なる経路をたどるのではなく、同一のリング型干渉計20内を互いに逆向きに回るだけであるので、それらの間の相対的な位相は機械的に安定である。さらに、リング型干渉計20内で光の波長が変換される。すなわち、光周波数2fのレーザー光源1による励起光によって、光パラメトリック増幅器6において光周波数fのスクイーズ光を発生し、分散媒質9を制御することにより、第1及び第2のスクイーズ光間の相対的な位相を変化させることができる。したがって、本発明の量子エンタングルメント生成装置30,35によれば、第1及び第2のスクイーズ光を重ね合わせるエンタングルメント生成において、第1及び第2のスクイーズ光の相対的な位相差を安定に制御することができる。
【0039】
(量子エンタングルメント生成装置の第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る量子エンタングルメント生成装置40の構成について説明する。
図3は、本発明の第3実施形態に係る量子エンタングルメント生成装置40の構成を示す平面視したブロック図である。光路は直線で示している。図3に示す量子エンタングルメント生成装置40が、図1に示す量子エンタングルメント生成装置30と異なるのは、リング型干渉計25である。他の構成は、量子エンタングルメント生成装置30と同じであるので説明は省略する。
リング型干渉計25は、ビームスプリッタ4と分散媒質9と第2の鏡5と光パラメトリック増幅器6と第3の鏡7とから構成されている。ビームスプリッタ4の垂直下方(-Y方向)に第2の鏡5が配置されている。ビームスプリッタ4のX方向(右方向)に第3の鏡7が配置されている。
【0040】
リング型干渉計25は、ビームスプリッタ4と第2の鏡5と第3の鏡7とが三角形の各頂点に配置されて光路を形成している。つまり、リング型干渉計25は、ビームスプリッタ4と、リング型干渉計25用の第1及び第2の鏡5,7が反時計方向に順に配設されている。光パラメトリック増幅器6は第2の鏡5と第3の鏡7とから形成される光路軸に沿って配置されている。分散媒質9は、ビームスプリッタ4と第2の鏡5とから形成される光路軸に沿って配置されている。
【0041】
リング型干渉計25は、リング型干渉計20と同様に基板上に形成されていることが好ましい。リング型干渉計25を基板上に形成することにより、温度変動や振動に対して光路長の安定化を図ることができると共に、装置の構成が簡単になる。第1の鏡3も同一の基板上に形成してもよい。レーザー光源1からの光を光ファイバで基板へ導光すれば、さらに、温度変動や振動に対して光路長の安定化を図ることができる。
【0042】
次に、第3実施形態の量子エンタングルメント生成装置40による量子エンタングルメント生成について説明する。
レーザー光源1から出射した光周波数2fの光は、第1の鏡3で反射され、ビームスプリッタ4を透過した後、分散媒質9を通過して第2の鏡5で反射され、光パラメトリック増幅器6の励起光入力となる。光パラメトリック増幅器6は、光周波数fの第1のスクイーズ光を発生する。光周波数fの第1のスクイーズ光は、水平偏光した光であってもよい。
この第1のスクイーズ光は、リング型干渉計25の中を反時計回りに進み、第3の鏡7で反射されたのち、ビームスプリッタ4に至る。
【0043】
レーザー光源1から出射し、第1の鏡3で反射された光はビームスプリッタ4へ入射し、ビームスプリッタ4に入射した光周波数2fの光はX方向へ反射され、第3の鏡7で紙面左斜め下方に反射されて光パラメトリック増幅器6に入射し、光周波数fの第2のスクイーズ光を発生する。
次に、光周波数fの第2のスクイーズ光は第2の鏡5でY方向に反射されたのち、分散媒質9を通過し、ビームスプリッタ4に至る。したがって、この第2のスクイーズ光は、リング型干渉計25の中を時計回りに進み、分散媒質9を通過してビームスプリッタ4に至る。
【0044】
このようにして、リング型干渉計25で発生した第1及び第2のスクイーズ光は、ビームスプリッタ4で空間的に重ね合わせが生起される。このとき、第1のスクイーズ光と第2のスクイーズ光との相対的な位相がπ/2となるように分散媒質9を操作することにより、量子的な相関をもつ第1の量子エンタングルビーム10及び第2の量子エンタングルビーム11を発生することができる。第1の量子エンタングルビーム10は、ビームスプリッタ4を通過した後、図3に示すように-X方向(左方向)に出射する。第2の量子エンタングルビーム11は、ビームスプリッタ4によりY方向(上側)へ反射し、第1の鏡3を通過して出射する。
【0045】
第1のスクイーズ光及び第2のスクイーズ光の相対的な位相をπ/2となるように分散媒質9を設定することにより、第1及び第2の量子エンタングルビーム10,11を生成することができる。
【0046】
(量子エンタングルメント生成検出装置の第1実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置50について説明する。
図4は、第1実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置50を示す平面視におけるブロック図である。光路は直線で示している。量子エンタングルメントの生成検出装置50は、量子エンタングルビームを生成する手段と、生成された量子エンタングルビームを検出する手段と、を備えた装置である。図4に示すように、量子エンタングルメントの生成検出装置50は、光源部60とリング型干渉計70と第1のホモダイン検出器80と第2のホモダイン検出器90とから構成されている。
【0047】
ここで、量子エンタングルビームの生成は、光源部60とリング型干渉計70とにより行われる。生成された量子エンタングルビーム信号は、第1及び第2のホモダイン検出器80,90により検出される。この場合、光源部60からの光が局部発振光となる。ホモダイン検出とは、同じ光周波数を有する信号光及び局部発振光の混合による検波であり、信号光の直交位相振幅を測定するものである。
【0048】
光源部60は、パルスレーザー光源100と、パルスレーザー光源100から出射されるパルスレーザー光の光路に沿って順に配置されている1/2波長板102と第2高調波発生器105と偏光ビームスプリッタ109と2波長用波長板112と鏡114と偏光ビームスプリッタ117と2波長用波長板118とから構成されている。2波長用波長板118を通過したレーザー光がリング型干渉計70へ入射される。
【0049】
パルスレーザー光源100は、光周波数がfで水平偏光の光パルス101を発生する。水平偏光の光パルス光101は、光周波数fに対してゼロオーダーの1/2波長板102に入射する。1/2波長板102は、水平偏光の光パルス光101の偏光面を回転し、斜め直線偏光の光に変換する。つまり、光パルス光101の偏光面が、水平偏光成分103と垂直偏光成分104に変換され、水平偏光成分103及び垂直偏光成分104が第2高調波発生器105へ入射する。この場合、偏光面の回転角により局部発振光の強度を調節することができる。
【0050】
第2高調波発生器105により、光周波数fのパルス光の水平偏光成分103の一部は、光周波数が2fで水平偏光のパルスレーザー光106に変換される。この水平偏光のパルスレーザー光106は、偏光ビームスプリッタ109及び2波長用波長板112で変化を受けることなくそのまま透過する。第2高調波発生器105には、2次の非線型光学効果を有する結晶、例えば、周期分極反転したLiNbOからなる光導波路を用いることができる。
【0051】
光周波数2fに変換されなかった水平偏光成分の光周波数fの光107は、垂直偏光を透過するように配置された光周波数fに対する偏光ビームスプリッタ109により反射され、光周波数fの光の水平偏光成分110となり外部へ出射し、エンタングルビーム生成には使用しない。これは、第2高調波への変換効率が高い場合には、変換されずに残った基本波の時間波形が乱れるためである(非特許文献3参照)。しかしながら、第2高調波発生器105の変換効率が高くない場合には、水平偏光成分110を必ずしも捨てる必要はなく、再利用することも可能である。
【0052】
一方、光周波数fのパルス光の垂直偏光成分104は、第2高調波発生器105の非線形相互作用を受けることなく通過するので、出力される垂直偏光成分108は、元のパルスレーザー光源100から出力されるパルスと同じパルス幅とスペクトルを有している。この光周波数fのパルス光の垂直偏光成分108は、偏光ビームスプリッタ109を透過し、透過した垂直偏光の光111は、光周波数fでは1/2波長、光周波数2fでは1波長となる2波長用波長板112によって水平偏光の光113となる。
【0053】
鏡114は、光周波数2fに対する反射率が高いものを用いる。鏡114としては、誘電体からなる鏡を使用することができる。鏡114の光周波数fに対する反射率は、後述するホモダイン検出に必要な局部発振光の強度に応じて選ぶことができる。鏡114の光周波数fに対する反射率が小さいときは、鏡114を光周波数fのみを選択的に減衰するフィルタとして用いることができる。
【0054】
したがって、パルスレーザー光源100から出射した光は、同じ光軸上において、どちらも水平偏光である光周波数fのパルス光115と光周波数2fのパルス光116となる。ここで、光周波数fのパルス光115及び光周波数2fのパルス光116は同じ光軸にあるので、同軸上のパルス光115及び光周波数2fのパルス光116とも呼ぶ。
【0055】
偏光ビームスプリッタ117が、光周波数fの水平偏光成分を透過するように配置されている。したがって、光周波数fのパルス光はそのまま透過する。つぎに、2波長用波長板118により、光周波数fのパルス光が垂直偏光へと変換される。
【0056】
リング型干渉計70は、後述する特殊な機能を有するビームスプリッタ120(以下、本発明では特殊ビームスプリッタと呼ぶ。)と鏡121と光パラメトリック増幅器122と鏡123と分散媒質124とから構成されている。鏡121は特殊ビームスプリッタ120の平面視-X方向(左側)に配置されており、鏡123は特殊ビームスプリッタ120の-Y方向(下側)に配置されている。
【0057】
リング型干渉計70は、特殊ビームスプリッタ120と鏡121,123とが三角形の各頂点に配置されている。光パラメトリック増幅器122は、鏡121と鏡123とから形成される光路軸に沿って配置されている。分散媒質124は、特殊ビームスプリッタ120と鏡123とから形成される光路軸に沿って配置されている。上述したリング型干渉計20と同様に、リング型干渉計70は、ブレッドボードや基板上に形成されていることが好ましい。リング型干渉計70をブレッドボードや基板上に形成することで、温度変動や振動に対して光路長の安定化を図ることができると共に、装置の構成が簡単になる。
【0058】
特殊ビームスプリッタ120は、光周波数f及び光周波数2fの水平直線偏光の光に対しては透過率及び反射率が共にほぼ50%であり、光周波数fの垂直直線偏光の光に対してはほぼ100%の反射率を有している。したがって、光周波数2fのパルス光116は水平偏光であるので、特殊ビームスプリッタ120により、ほぼ1対1の割合で分岐され、リング型干渉計70に入射した後、後述するように第1及び第2の量子エンタングルビーム131,132を発生する。
【0059】
鏡121,123は、光周波数f及び2fに対して反射率がほぼ100%の鏡であり、例えば誘電体からなる。
【0060】
光パラメトリック増幅器122は、2次の非線型光学効果を有する結晶を用いることができ、例えば、周期分極反転したLiNbOからなる光導波路を用いることができる。
【0061】
分散媒質124は、第1のガラス板125と第2のガラス板126とから構成されている。第1及び第2のガラス板125,126は、波長に対して微小な光路長差を与えることができる光学部品のウェッジガラス板を使用することができる。ウェッジガラス板125,126の一例は、片面が光軸に対して直角な面であり、他面が光軸に対して傾斜面として形成されている。ウェッジガラスの材料としては、BK7のようなホウケイ酸ガラスを使用することができる。第1または第2のウェッジガラス板125,126は、光軸に対して垂直方向へ移動することができる。第1または第2のウェッジガラス板125,126を光の進行方向に垂直方向に移動しても、2つのウェッジガラス板125,126を通過後の光ビーム位置の変動を抑えることができる。
上記の構成において、ウェッジガラス板125,126のウェッジの向きを互い逆にすることで、すなわち、2つのウェッジガラス板125,126の厚さが薄い側が光軸に対して左右逆になるように配置することで、光ビーム位置の変動をさらに抑えることができる。
【0062】
さらに、ウェッジガラス板125,126の両面に、光周波数f及び光周波数2fに対する無反射コーティングを施すことで、ウェッジガラス板125,126に高い透過率をもたせることができる。ウェッジガラス板125,126を光軸に対して垂直方向へ移動すると、ガラス板中を透過する光路長が変化するので、分散の効果を得ることができる。すなわち、第1のウェッジガラス板125と第2のウェッジガラス板126とを用い、光の周波数による屈折率の違いの効果により、光周波数がfと2fとの光の間の相対的な光路長を変化させることができる。例えば、ウェッジガラス板125,126の材料としてBK7を使用し、ウェッジガラスの傾斜角を1度とする。光周波数fの光の波長が1535nmで、光周波数2fの光の波長が767nmとした場合、ウェッジガラス板125,126を光軸に対して垂直方向に0.86mm移動すると、光周波数fの光と光周波数2fの光の相対的な位相がπ/2変化する。この時の光周波数fと光周波数2fとの光ビームの相対的な位置変動は3nmよりも小さい。また、好ましくは、光ビームを1枚目のウェッジガラス板125に対して垂直に入射させ、2枚目のウェッジガラス板126から光ビームを垂直に出射するように第1及び第2のウェッジガラス板125,126を配置し、さらに、2枚のウェッジガラス板125,126の間隔を可能な限り接近させることで,光周波数f及び光周波数2fの光ビームの位置のずれを小さくすることができる。
【0063】
次に、第1実施形態に係る量子エンタングルメント生成検出装置50の動作について説明する。
特殊ビームスプリッタ120によりほぼ1対1の割合で分岐された光周波数2fの2つの光において、その一方の光は、リング型干渉計70内を反時計方向、つまり、鏡121と光パラメトリック増幅器122と鏡123と分散媒質124との順に通過する。他方の光は、リング型干渉計70内を時計方向、つまり、分散媒質124と鏡123と光パラメトリック増幅器122と鏡121との順に通過する。
【0064】
反時計方向に進む光周波数2fの水平偏光の光は、光パラメトリック増幅器122に入射し、光周波数2fのパルス光はパラメトリック増幅の励起光としてはたらき、光周波数fの水平偏光したスクイーズ光を発生する。この反時計回りに進むスクイーズ光は、鏡123で反射され、分散媒質124を通過し、再び特殊ビームスプリッタ120に入射する。
【0065】
時計方向に進む光周波数2fの水平偏光の光は、分散媒質124を通過して光パラメトリック増幅器122に入射し、光周波数2fのパルス光はパラメトリック増幅の励起光としてはたらき、光周波数fの水平偏光したスクイーズ光を発生する。この時計回りに進むスクイーズ光は、鏡121で反射され、再び特殊ビームスプリッタ120に入射する。
【0066】
特殊ビームスプリッタ120に入射され互いに反対方向に進むスクイーズ光、つまり、時計回りに進むスクイーズ光と反時計回りに進むスクイーズ光とは、どちらも水平偏光であり、ほぼ1対1で重ね合わせることができる。2つのスクイーズ光間の相対的な位相は、分散媒質124内の第1及び第2のウェッジガラス板124,125の相対位置により任意の値に設定することができる。相対的な位相差をπ/2となるように設定すると、量子的な相関をもつ第1及び第2の量子エンタングルビーム130,131を発生することができる。
【0067】
特殊ビームスプリッタ120は、光周波数fで水平直線偏光の光に対しては透過率及び反射率が共にほぼ50%である。したがって、発生した量子エンタングルビームは、特殊ビームスプリッタ120により反射された成分が第1の量子エンタングルビーム130となり、特殊ビームスプリッタ120を透過した成分が第2の量子エンタングルビーム131となる。
【0068】
図示するように、第1の量子エンタングルビーム130は、1/2波長板132と鏡133と特殊ビームスプリッタ134とを介して、第1のホモダイン検出器80に入射する。1/2波長板132は、光周波数fに対するゼロオーダーの波長板であって、光周波数fで水平直線偏光の光を垂直偏光に変換する。鏡133は光周波数fの光を反射し、例えば、誘電体からなる。特殊ビームスプリッタ134は垂直偏光の光を反射する。これにより、第1の量子エンタングルビーム130は、垂直偏光に変換された後に、第1のホモダイン検出器80に入射する。
【0069】
第2の量子エンタングルビーム131は、2波長用波長板118により垂直偏光の光に変換され、偏光ビームスプリッタ117と特殊ビームスプリッタ134と鏡135とで反射されて、第2のホモダイン検出器90に入射する。鏡135は光周波数fの光を反射し、例えば誘電体からなる。
【0070】
第1及び第2のホモダイン検出器80,90の局部発振光となる光について説明する。光源部60からの光は、光周波数fの垂直直線偏光の光と光周波数2fとが同軸上に形成されて、特殊ビームスプリッタ120に入射される。光周波数2fのパルス光は上記したように、リング型干渉計70内で量子エンタングルビームを発生させるのに使用されている。一方、光周波数fの垂直直線偏光の光は、第1及び第2のホモダイン検出器80,90の局部発振光となるパルス光となる。以下、詳細に説明する。
【0071】
光周波数fの垂直直線偏光は、特殊ビームスプリッタ120で反射され、図4の左水平方向に配置されている鏡121で反射されて、光パラメトリック増幅器122を通過して鏡123で反射され、分散媒質124を通過して、再び特殊ビームスプリッタ120に入射する。ここで、特殊ビームスプリッタ120は光周波数fの垂直直線偏光は反射する。したがって、特殊ビームスプリッタ120に入射した光周波数fの垂直直線偏光した光は、反射されて光周波数fに対するゼロオーダーの1/2波長板132に向かう。1/2波長板132に入射した光周波数fの垂直直線偏光した光は、1/2波長板132により光周波数fの光の偏光面を90度回転し、光周波数fの垂直直線偏光の光は水平偏光となり、光周波数fに対して反射率の高い鏡133で反射され、特殊ビームスプリッタ134へ到達する。
【0072】
特殊ビームスプリッタ134は、光周波数fの水平直線偏光の光に対しては透過率及び反射率が共にほぼ50%である。したがって、特殊ビームスプリッタ134に入射した光周波数fの水平に偏光した光は、反射光及び透過光となる。反射光が第1のホモダイン検出器80に入射し、透過光が第2のホモダイン検出器90に入射し、それぞれ、ホモダイン検出器80,90の局部発振光となる。
【0073】
次に、第1及び第2のホモダイン検出器80、90について説明する。
第1のホモダイン検出器80は、電気光学結晶136と1/2波長板138と偏光ビームスプリッタ140と2つのフォトダイオード142,143とRFコンバイナー146と増幅器148とからなる。第2のホモダイン検出器90も、第1のホモダイン検出器80と同様に、電気光学結晶137と1/2波長板139と偏光ビームスプリッタ141と、2つのフォトダイオード144,145とRFコンバイナー147と増幅器149からなる。
【0074】
第1のホモダイン検出器80へは、第1の量子エンタングルビーム130が上述したように、光周波数fの垂直偏光したパルス光が信号光照射として入射し、光周波数fの水平直線偏光したパルス光が局部発振光として入射する。同様に、第2のホモダイン検出器90へは、第2の量子エンタングルビーム131が上述したように、光周波数fの垂直偏光したパルス光が信号光照射として入射し、光周波数fの水平直線偏光したパルス光が局部発振光として入射する。
【0075】
第1のホモダイン検出器80に入射する第1の量子エンタングルビーム130は水平偏光であり、一方、局部発振光となる垂直偏光したコヒーレントな光パルスも同じ光軸上を進む。つまり、信号光となる第1の量子エンタングルビーム130と局部発振光となる垂直偏光したコヒーレントな光パルスは同軸上を進む。したがって、第1の量子エンタングルビーム130と局部発振光は常に同じ経路をたどるので、これらの間の相対的な位相は非常に安定に保つことが可能である。
【0076】
第2のホモダイン検出器90に入射する第2の量子エンタングルビーム131の場合には、量子エンタングルビーム131と局部発振光は、特殊ビームスプリッタ120で分かれた後、特殊ビームスプリッタ134で再合流するため、一部異なる経路をたどることになる。このことにより生じる相対的な位相の不安定さは、特殊ビームスプリッタ120、偏光ビームスプリッタ117、誘電体ミラー133、特殊ビームスプリッタ134の4つの光学部品を共通のブレッドボードや基板上に設置し、ビームの高さを低く保つことで改善することができる。
【0077】
第1のホモダイン検出器80において、電気光学結晶136は、結晶に印加される電圧を変化させることで、水平偏光成分と垂直偏光成分との間の相対的な位相を変化させることができる。光周波数fに対するゼロオーダーの1/2波長板138は、直線偏光の偏光面を45度回転するように配置されている。このため、第1の量子エンタングルビーム130と局部発振光は互いに偏光面は直交しつつ、45度偏光面が回転した偏光状態となる。
【0078】
これにより、光周波数fに対する偏光ビームスプリッタ140で、第1の量子エンタングルビーム130と局部発振光を、ほぼ1対1の割合で重ね合わせることができる。偏光ビームスプリッタ140を反射した光及び透過した光が、それぞれフォトダイオード142,143へ入射する。
【0079】
RFコンバイナー146は、2つのフォトダイオード142と143の光電流の差を出力し、増幅器148で増幅した後、その出力電圧を計測することで、第1の量子エンタングルビーム130における直交位相振幅の測定が可能となる。RFコンバイナー146は2つのフォトダイオード142と143とからなる検出器の差分を出力する手段である。RFコンバイナー146の代わりに、2つのフォトダイオード142,143のアノードとカソードを接続することで、差電流を取り出すこともできる。
【0080】
第2のホモダイン検出器90も第1のホモダイン検出器80と同様に、電気光学結晶137に印加される電圧を変化させることで、水平偏光成分と垂直偏光成分との間の相対的な位相を変化させることができる。光周波数fに対するゼロオーダーの1/2波長板139は、直線偏光の偏光面を45度回転するように設置する。その結果、第2の量子エンタングルビーム131と局部発振光は互いに偏光面は直交しつつ、45度偏光面が回転した偏光状態となる。
【0081】
これにより、光周波数fに対する偏光ビームスプリッタ141で、第2の量子エンタングルビーム131と局部発振光を、ほぼ1対1の割合で重ね合わせることができる。偏光ビームスプリッタ141を反射した光及び透過した光が、それぞれフォトダイオード144,145へ入射する。
【0082】
RFコンバイナー147は、2つのフォトダイオード144及び145の光電流の差を出力し、増幅器149で増幅した後、その出力電圧を計測することで、第2の量子エンタングルビーム131における直交位相振幅の測定が可能となる。RFコンバイナー146は2つのフォトダイオード144と145とからなる検出器の差分を出力する手段である。RFコンバイナー147の代わりに、2つのフォトダイオード144,145のアノードとカソードを接続することで、差電流を取り出すこともできる。
【0083】
このような構成によれば、2つのスクイーズ光の相対的な位相を安定に保つことにより、安定に量子エンタングルメントを生成できる。さらに、量子エンタングルメントと同軸の局部発振光を出力することができ、ホモダイン検出の安定性を向上することができる。
本実施例では、偏光の自由度を利用することにより、量子エンタングルビームとホモダイン検出のための局部発信光を同軸に出力し、エンタングルビームと局部発信光の相対的な位相を安定に保つことができる。
【0084】
(量子エンタングルメント生成検出装置の第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置150について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置150を示す平面視におけるブロック図である。光路は直線で示している。図5に示すように、量子エンタングルメントの生成検出装置150は、量子エンタングルビームを生成する生成手段と、生成された量子エンタングルビームを検出する検出手段と、を備え、生成手段は光源部160とリング型干渉計170とから構成され、検出手段は第1のホモダイン検出器180と第2のホモダイン検出器190とから構成されている。
【0085】
光源部160が、第1実施形態の量子エンタングルメントの生成検出装置50における光源部60と異なるのは、第2高調波発生器105である。第2高調波発生器105は、第2高調波発生器となる光導波路201と、この光導波路201のパルスレーザー光源100側及び第2高調波の出射側に配置される集光手段となるレンズ200,202と、を備えている。つまり、光導波路201が、光軸上で2枚のレンズ200,202に挟まれている点が異なっている。光導波路201は、例えば周期分極反転型でMgOを添加したLiNbOからなる光導波路を用いることができる。レンズ200,202としては、凸レンズを用いることができる。光導波路201へのパルスレーザー光源100の集光を凸レンズ200により効率良く行うことができる。同様に、光導波路201から発生させる第2高調波をレンズ202によって効率良く出射させることができる。他の構成は、量子エンタングルメントの生成検出装置50における光源部60と同じであるので、説明は省略する。
【0086】
第2実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置150におけるリング型干渉計170の構成は、第1実施形態に係る生成検出装置50におけるリング型干渉計70に対して、特殊ビームスプリッタ120を備える点は同じ構成であるが、光路形状(第1の相違点)、光パラメトリック増幅器122の構造(第2の相違点)、分散媒質124の構造(第3の相違点)、赤色フィルタ205,209を挿入可能にした構造(第4の相違点)が異なっている。以下、これらの相違点について図5を参照して詳細に説明する。
【0087】
第1の相違点である光路形状について説明する。
図5において、リング型干渉計170は、特殊ビームスプリッタ120と、鏡203,204,121と、光パラメトリック増幅器122と、鏡123,210と分散媒質124とから構成されている。鏡203は特殊ビームスプリッタ120の平面視-X方向に配置され、鏡204は鏡203のY方向に配置され、鏡121は鏡204の-X方向に配置され、鏡123は光パラメトリック増幅器122の-Y方向に配置され、鏡210は鏡123のX方向に配置されると共に特殊ビームスプリッタ120の-Y方向に配置されている。
ここで、鏡203,204,210は、鏡121,123と同様に、光周波数f及び2fに対して反射率がほぼ100%の鏡であり、例えば誘電体からなる。
【0088】
リング型干渉計170は、特殊ビームスプリッタ120と鏡203,204,121,123,210とが六角形の各頂点に配置されている。第1実施形態におけるリング型干渉計70が三角形の光路を有しているのに対して、本第2実施形態におけるリング型干渉計170は六角形の光路を有している点(第1の相違点)が異なっているが、リング型干渉計170としての動作は基本的に同じである。
【0089】
第2の相違点である光パラメトリック増幅器122について説明する。
光導波路207の光軸方向の前後にレンズ206,208を配置した点が、第1実施形態によるリング型干渉計70とは異なっている。リング型干渉計170内の光パラメトリック増幅器122は、鏡121と鏡123とから形成される光路軸に沿って配置されており、2枚のレンズ206,208で挟まれた周期分極反転型のMgOが添加されたLiNbOからなる光導波路207とから構成されている。レンズ206,208としては、凸レンズを用いることができる。リング型干渉計170内を周回し、光導波路207を通過する光周波数fと光周波数2fの光は、2枚のレンズ206,208によって効率良く入射と出射が行われる。
【0090】
第1実施形態によるリング型干渉計70と比べて、本実施形態のリング型干渉計170では鏡203,204,210が追加されている。光導波路207の両脇それぞれに2枚以上の鏡を配置することにより、光導波路207への両側からの光パルスの入射効率を最適化することができる。また、リング型干渉計170中で、右回りと左回りで光導波路207から特殊ビームスプリッタ120までの距離を等しくすることにより、右回りと左回りで生成されたスクイーズド光間の空間的なモードの一致を高めることができる。
【0091】
第3の相違点である分散媒質124について説明する。
リング型干渉計170に配置する分散媒質124として、2枚の平行に配置された平面ガラス板(以下、平行平面ガラス板と呼ぶ)211,212を分散媒質124として使用している点が、2枚のウェッジガラス板125,126を使用した第1実施形態によるリング型干渉計70と相違している。
【0092】
平行平面ガラス板211,212は、光軸に垂直な面に対して対称に等しい傾き角を持つように配置されている。この光軸に対する傾き角を、平行平面ガラス板211,212の両者で等しく保ちながら変化させることが好ましい。この場合、平行平面ガラス板211,212の傾き角が変化しても、これらのガラス板211,212を通過後の光ビームの光軸は変化しない。光軸に垂直な面に対してこれらのガラス板211,212の傾き角を変化させると、平行平面ガラス板211,212の間を透過する光路が変化するので、2枚のウェッジガラス板124,125と同様に分散の効果を得ることができる。すなわち、第1及び第2の平行に配置された平行平面ガラス板211,212を用い、光周波数による屈折率の違いの効果により、光周波数fと2fとの光の間の相対的な光路長を変化させることができる。
【0093】
ここで、平行平面ガラス板211,212の材料としては、BK7のようなホウケイ酸ガラスを使用することができる。さらに、これらのガラス板211,212の両面には、光周波数f及び光周波数2fに対する無反射コーティングを施し、光周波数f及び光周波数2fにおいて高い透過率を持たせることが好ましい。
【0094】
例えば、平行平面ガラス板211,212の材料としてBK7を用い、それらの厚さを5mmとする。光周波数fの波長が1535nmで光周波数2fの波長が767nmの場合、平行平面ガラス板211,212を対称に0°から4.8°回転させることで、光周波数fの光と光周波数2fの光の相対的な位相差をπ/2だけ変化させることができる。
【0095】
第4の相違点である赤色フィルタ205,209について説明する。
リング型干渉計170内の光軸上に抜き差しできるように2枚の赤色フィルタ205,209を配設しており、図示の場合には、赤色フィルタ205は鏡121とレンズ206との間の光軸上に配置され、赤色フィルタ209はレンズ208と鏡123との間の光軸上に配置されている。赤色フィルタ205,209は、光周波数fをほぼ100%透過し、光周波数2fをほぼ100%吸収する特性を有している。赤色フィルタ205,209を上記した配置、つまり、2つのレンズに挟まれた光導波路207の前後に配置することで、光導波路207には光周波数2の光が入射しなくなる。従って、光パラメトリック増幅器122を構成する光導波路207には、励起光となる光周波数2fのパルス光は赤色フィルタ205,209で除去されるので、光導波路207から光周波数fの水平偏光したスクイーズ光が発生しなくなる。このため、リング型干渉計170から第1及び第2の量子エンタングルビーム130,131が発生しなくなる。

【0096】
赤色フィルタ205,209を光軸に挿入した場合、ホモダイン検出器180,190には、スクイーズ光131,132が信号光として入射せず、光周波数fの局部発振光だけが入射する。これにより、ホモダイン検出器180,190は、信号光が入射しない状態、つまりショット雑音レベルの検出器として動作する。
【0097】
第2実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置150において、光源部160及びリング型干渉計170は、赤色フィルタ205,209を光軸に挿入できる以外は、第1実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置50と同様に、第1の量子エンタングルビーム130及び第2の量子エンタングルビーム131を発生する。
【0098】
第1の量子エンタングルビーム130から第1のホモダイン検出器180への伝播光路について説明する。
図示するように、水平直線偏光の第1の量子エンタングルビーム130は、1/2波長板132と特殊ビームスプリッタ213と鏡214との順に通過し、第1のホモダイン検出器180に入射する。1/2波長板132は、光周波数fに対するゼロオーダーの波長板であって、光周波数fで水平直線偏光の光を垂直偏光に変換する。特殊ビームスプリッタ213は垂直偏光の光を反射させ、この光周波数fの光が鏡214によって反射される。鏡214は、例えば誘電体からなる。
これにより、第1の量子エンタングルビーム130は、垂直偏光に変換された後に、第1のホモダイン検出器180に入射する。これは、第1実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置50と同じである。
【0099】
第2の量子エンタングルビーム131から第2のホモダイン検出器190への伝播光路について説明する。
第2の量子エンタングルビーム131は、2波長用波長板118により垂直偏光の光に変換され、偏光ビームスプリッタ117,219を通過し、鏡220で反射されて、第2のホモダイン検出器190に入射する。鏡220は、例えば誘電体からなり、光周波数fの光を反射する。
これにより、第2の量子エンタングルビーム131は、垂直偏光に変換された後に、第2のホモダイン検出器190に入射する。これは、第1実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置50と同じである。
【0100】
次に、局部発振光の伝播光路を説明する。
光源160からの光周波数fの垂直偏光は、特殊ビームスプリッタ120で反射され、リング型干渉計170を1周した後、再び特殊ビームスプリッタ120で反射される。反射された光周波数fの垂直偏光の光パルスは、1/2波長板132で水平偏光に変換され、特殊ビームスプリッタ213により強度比がほぼ50対50の水平偏光の反射光及び水平偏光の透過光となる。特殊ビームスプリッタ213によって反射された光周波数fの水平偏光の光パルスは、鏡214により反射され、第1のホモダイン検出器180に入射し、局部発振光となる。
【0101】
一方、特殊ビームスプリッタ213を透過した水平偏光の光パルスは、分散媒質218と偏光ビームスプリッタ219を透過し、鏡220によって反射された後、第2のホモダイン検出器190に入射し、局部発振光として使用される。
【0102】
第1実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置50のホモダイン検出器80及び90では、水平偏光した第1の量子エンタングルビーム130と垂直偏光した局部発振光間の位相差を第1の電気光学結晶136によって調整し、同様に、水平偏光した第2の量子エンタングルビーム131と垂直偏光した局部発振光間の位相差を第2の電気光学結晶137によって調整している。
【0103】
第2実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置150のホモダイン検出器180及び190においては、第1実施形態に係る量子エンタングルメントの生成検出装置50のホモダイン検出器80及び90とは異なる構成を採用している。
第1のホモダイン検出器180は、バンドパスフィルタ221と赤色フィルタ223と、光軸上に抜き差しできる1/4波長板225と、1/2波長板138と、偏光ビームスプリッタ140と、偏光ビームスプリッタ140で反射された光を集光するレンズ226と集光された反射光を検出するフォトダイオード142と、偏光ビームスプリッタ140を透過した光を集光するレンズ227と集光された透過光を検出するフォトダイオード143と、2つのフォトダイオード142,143で検出された光電流の差を出力するRFコンバイナー146とから構成されている。RFコンバイナー146からの出力は、ホモダイン検出器80と同様にさらに図示しない増幅器148で増幅されても良い。
【0104】
第1のホモダイン検出器180においては、鏡214と1/2波長板138との光軸上にバンドパスフィルタ221と赤色フィルタ223と、光軸上に抜き差しできる1/4波長板225と、レンズ226,227が配置されている以外の構成は、第1のホモダイン検出器80の構成と同じである。
【0105】
バンドパスフィルタ221は、光周波数fでの透過率が最も高い光透過特性を有している。このため、光周波数fの局部発振光と干渉しない光振動数の成分は、可能な限り除去される。
【0106】
赤色フィルタ223は、リング型干渉計170で用いた赤色フィルタ205,209と同様に光周波数fでの透過率がほぼ100%で、光周波数2fでの透過率がほぼ0%の光学特性を有している。このため、赤色フィルタ223によって、周波数2fの光パルスが、フォトダイオード142,143へ入射しなくなる。
【0107】
1/4波長板225は、光路に挿入した場合、光周波数fの光パルスの水平偏光成分と垂直偏光成分の位相差をπ/2ずらすことができる。1/4波長板225を配置して測定を行うことで、1/4波長板225がない場合と比べて、垂直偏光の第1の量子エンタングルビーム130と水平偏光の局部発振光との位相差をπ/2ずらすことができる。これにより、第1のホモダイン検出器80における電気光学結晶137と同様に、垂直偏光した第1の量子エンタングルビーム130と水平偏光した局部発振光間の位相差を調整することができる。
【0108】
偏光ビームスプリッタ140とフォトダイオード142,143との間に配置されるレンズ226,227は集光のために設けているが、例えば凸レンズを用い得る。
【0109】
第1のホモダイン検出器180においては、1/2波長板138よりも右側に配置される偏光ビームスプリッタ140とフォトダイオード142,143とRFコンバイナー146の機能は、第1のホモダイン検出器80と同じであるので説明は省略する。
【0110】
第1のホモダイン検出器180によれば、バンドパスフィルタ221、赤色フィルタ223、集光用のレンズ226,227を備えているので、第1のホモダイン検出器80よりも感度を増大させることができる。
【0111】
次に、第2のホモダイン検出器190について説明する。
第2のホモダイン検出器190は、バンドパスフィルタ222と、赤色フィルタ224と、1/2波長板139と、偏光ビームスプリッタ141と、偏光ビームスプリッタ141で反射された光を集光するレンズ228と集光された反射光を検出するフォトダイオード144と、偏光ビームスプリッタ141を透過した光を集光するレンズ229と集光された透過光を検出するフォトダイオード145と、2つのフォトダイオード144,145で検出された光電流の差を出力するRFコンバイナー147とから構成されている。RFコンバイナー147からの出力は、ホモダイン検出器90と同様にさらに図示しない増幅器149で増幅されても良い。
【0112】
第2のホモダイン検出器190が第1のホモダイン検出器180と異なるのは、光軸上に抜き差しできる1/4波長板225を備えていない点にある。つまり、第1のホモダイン検出器180の1/4波長板225の替わりに分散媒質218を用いている。分散媒質218は、上記したように、特殊ビームスプリッタ213を透過した水平偏光の光パルスを反射させる鏡215と偏光ビームスプリッタ219との間の光軸上に配置されている。
【0113】
分散媒質218は、2枚のガラス板216,217から構成されている。2枚のガラス板216,217は、波長に対して微小な光路長差を与えることができる光学部品のウェッジガラス板を使用することができる。上記したように、ウェッジガラス板216,217は、ガラス板216又はガラス板217を光軸に対して垂直方向に移動することができる。ガラス板216又はガラス板217を光軸に対して垂直方向に移動することにより、第2のホモダイン検出器190において、第2の量子エンタングルビーム131と局部発振光との位相差を変化させることができる。
【0114】
第2のホモダイン検出器190によれば、第1のホモダイン検出器180と同様にバンドパスフィルタ222、赤色フィルタ224、集光用のレンズ228,229を備えているので、第2のホモダイン検出器90よりも感度を増大させることができる。
【0115】
(エンタングルメントの判定基準)
次に、第1及び第2の量子エンタングルビーム130,131のエンタングルメントの判定基準について説明する。
第1及び第2の量子エンタングルビーム130,131の直交位相振幅を、それぞれX(φ),X(φ)とする。
ここでφ,φは、それぞれ、第1及び第2の量子エンタングルビーム130,131と対応する局部発振光の位相差を表す。
また、2つの真空状態の直交位相振幅をそれぞれXa,vac,Xb,vacとする。
【0116】
生成された状態がエンタングルしているための十分条件は、下記(1)式の不等式で表される(非特許文献4参照)。
【数1】
JP0005041256B2_000002t.gif
ここで、φa1,φa2,φb1,φb2,は、φa2-φa1=π/2,φb2-φb1=π/2の関係を満たす必要がある。
生成された第1及び第2の量子エンタングルビーム130,131の状態が上記(1)式の不等式を満足していれば、実際にエンタングルしていることになる。
【0117】
ホモダイン検出器180において、第1の量子エンタングルビーム130と局部発信光は、同軸であることから、φはある特定の値に固定されている。ここで、1/4波長板225がない場合の位相差をφ=φa1と定義すると、1/4波長板225を挿入したときの位相差はφ=φa2=φa1+π/2となる。分散媒質218により、φは任意の値に変えることができる。
【0118】
測定手順としては、1/4波長板225が光路上にない状況で、φを不連続的に走査させながら、ホモダイン検出器180でX(φa1)とホモダイン検出器190でX(φ)を同時に測定する。
次に、1/4波長板225を配置し、φを不連続的に走査させながら、X(φa2)及びX(φ)を同時に測定する。次に、赤色フィルタ205,209をリング型干渉計170中に配置し、ホモダイン検出器180,190に局部発信光のみを入射しXa,vac,Xb,vacを測定する。
上記の得たX(φa1),X(φ),X(φa2),X(φ),Xa,vac及びXb,vacから、上記(1)式中の下記(2)式の値を得ることができる。
【数2】
JP0005041256B2_000003t.gif

【0119】
(量子エンタングルメント生成検出装置の第2実施形態の測定例)
量子エンタングルメント生成検出装置150の構成の主要部を説明する。
パルスレーザー光源100として、波長1535nm,パルス幅3.7ns,繰り返し周波数2.7kHzの受動Qスイッチエルビウム(Er)添加ガラスレーザー(cobolt社製、tangoレーザー)を使用した。第2高調波発生器105として、周期分極反転型のMgOが添加されたLiNbOからなる光導波路201を用いた。同様に、リング型干渉計170内の光パラメトリック増幅器122として、周期分極反転型のMgOが添加されたLiNbOからなる光導波路207を用いた。従って、光周波数fは、波長1535nmであり、光周波数2fは波長が約767nmである。
【0120】
量子エンタングルメント生成検出装置150によって、第1及び第2の量子エンタングルビーム130,131を発生させ、第1及び第2のホモダイン検出器180,190によって第1及び第2の量子エンタングルビーム130,131の直交位相振幅を測定した。上記のエンタングルメントの判定基準で説明した手順によって第1及び第2の量子エンタングルビーム130,131の直交位相振幅であるX(φ),X(φ)、φ,φb、2つの真空状態の直交位相振幅であるXa,vac,Xb,vac等の測定を行った。
【0121】
次に、上記測定で得た結果について説明する。
図6は、〈Δ(X(φa1)+X(φ))〉の値が最小になった位相(その位相をφ=φb1とする。)におけるX(φa1)とX(φb1)の散布図である。
図6から明らかなように、X(φa1)とX(φb1)とは、和の相関を有していることが分かり、〈Δ(X(φa1)+X(φ))〉=0.31という値を得た。この値は、対応する真空雑音に対して-2.0dBである。
【0122】
図7は、φ=φb2=φb1+π/2を満たす位相(その位相をφ=φb1とする。)におけるX(φa2)とX(φb2)の散布図である。
図7から明らかなように、X(φa2)とX(φb2)とは、差の相関を有していることが分かり、〈Δ(X(φa2)-X(φb2))〉=0.33という値を得た。この値は、対応する真空雑音に対して-1.9dBである。
【0123】
図8は、測定したX(φ),X(φ)から計算した第1の量子エンタングルビーム130と第2の量子エンタングルビーム131の和と差の分散のφへの依存性を示す図である。図8の横軸はφ(πラジアン)であり、縦軸は対応する真空雑音と比較した場合の分散の大きさ(dB)である。図において、丸印(●)及びバツ印(×)は、それぞれ、〈Δ(X(φa1)+X(φ))〉、〈Δ(X(φa2)-X(φb2))〉に対応している。すなわち、丸印のデータは、1/4波長板225が光路上にない状況で、φを不連続的に走査させながら、ホモダイン検出器180でX(φa1)を、ホモダイン検出器190でX(φ)を同時に測定し、測定されたX(φa1),X(φ)から計算された和の分散である。また、バツ印のデータは、1/4波長板225を配置し、φを不連続的に走査させながら、X(φa2)及びX(φ)を同時に測定し、測定したX(φa2),X(φ)から計算した差の分散である。
図8から明らかなように、〈Δ(X(φa1)+X(φ))〉は、φがπラジアン及び3πラジアンのときに最小となり、φが2πラジアンのときに最大となることが分かる。また、〈Δ(X(φa2)-X(φ))〉は、φがおおよそ1.6πラジアンのときに最小となり、φがおおよそ2.7πラジアンのときに最大となることが分かる。
【0124】
得られた〈Δ(X(φa1)+X(φ))〉及び〈Δ(X(φa2)-X(φb2))〉の値から、上記(1)式を計算すると、下記(3)式に示す不等式が得られる。
【数3】
JP0005041256B2_000004t.gif
つまり、上記(3)式の左辺の値が0.64であり、1よりも小さいので、明白にエンタングルメントに対する十分条件を満たす。つまり、第1の量子エンタングルビーム130と第2の量子エンタングルビーム131は、エンタングルしていることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の量子エンタングルメント生成装置と量子エンタングルメントの生成検出装置により発生した量子エンタングルメントを利用することにより、絶対に安全な通信や、従来よりも桁違いに高速な計算処理を実現することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7