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明細書 :金属ガラス及びそれを用いた磁気記録媒体並びにその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5267884号 (P5267884)
登録日 平成25年5月17日(2013.5.17)
発行日 平成25年8月21日(2013.8.21)
発明の名称または考案の名称 金属ガラス及びそれを用いた磁気記録媒体並びにその製造方法
国際特許分類 C22C  45/02        (2006.01)
G11B   5/72        (2006.01)
G11B   5/65        (2006.01)
G11B   5/64        (2006.01)
C21D   6/00        (2006.01)
G11B   5/667       (2006.01)
G11B   5/84        (2006.01)
FI C22C 45/02 A
G11B 5/72
G11B 5/65
G11B 5/64
C21D 6/00 B
G11B 5/667
G11B 5/84 Z
請求項の数または発明の数 16
全頁数 18
出願番号 特願2009-533165 (P2009-533165)
出願日 平成20年9月17日(2008.9.17)
国際出願番号 PCT/JP2008/066793
国際公開番号 WO2009/038105
国際公開日 平成21年3月26日(2009.3.26)
優先権出願番号 2007241595
優先日 平成19年9月18日(2007.9.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年3月20日(2010.3.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】牧野 彰宏
【氏名】井上 明久
【氏名】張 偉
【氏名】木村 久道
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】河野 一夫
参考文献・文献 久保田健ら,鉄-半金属系強磁性バルク金属ガラスの創製とそのガラス形成能,日本金属学会講演概要,日本,社団法人日本金属学会,2007年 3月27日,第140巻,第417頁
福田泰行ら,FIB-Wデポジション・パターニングによるナノ金型の創製と金属ガラスのナノインプリント,平成18年度塑性加工春季講演会講演論文集,日本,社団法人日本塑性加工学会,2006年 5月10日,第277-278頁
福田泰行ら,金属ガラスの50nmナノインプリント成形における金型と成形材料の挙動,2006年度年次大会講演論文集Vol.1,日本,社団法人日本機械学会,2006年 9月15日,第165-166頁
久保田健ら,ガラス遷移現象を示すFePt基磁性金属ガラスの創製,日本金属学会講演概要,日本,社団法人日本金属学会,2008年 3月26日,第142巻,第224頁
調査した分野 C22C 1/00 - 49/14
C21D 6/00
G11B 5/64
G11B 5/65
G11B 5/667
G11B 5/72
G11B 5/84
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)で表される組成を有することを特徴とする、金属ガラス。
FePtSi(ここで、20<m≦60原子%、20<n≦55原子%、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%である。) (1)
【請求項2】
前記組成が下記式(2)で表されることを特徴とする、請求1に記載の金属ガラス。
Fe55Pt25Si(ここで、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%、x+y+z=20原子%である。) (2)
【請求項3】
下記式(3)で表される組成を有することを特徴とする、金属ガラス。
(Fe0.55Pt0.25Si0.160.020.02100-x(ここで、0<X≦6原子%である。Mは、Zr,Nb,Ta,Hf,Ti,Mo,W,VCr,Mn,Al,Y,Ag,希土類元素から選ばれる1つ又はこれらの元素の組み合わせからなる元素である。) (3)
【請求項4】
前記Mが、Zrであることを特徴とする、請求3に記載の金属ガラス。
【請求項5】
基板と、該基板上に設けられかつ複数の凹凸部が形成された金属ガラス層と、を備え、
金属ガラス層は、下記式(1)で表される組成を有する金属ガラスからなり、
上記複数の凹部は軟質磁性層であり、上記複数の凸部は硬質磁性層であることを特徴とする、磁気記録媒体。
FePtSi(ここで、20<m≦60原子%、20<n≦55原子%、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%である。) (1)
【請求項6】
前記組成が、下記式(2)で表されることを特徴とする、請求項5に記載の磁気記録媒体。
Fe55Pt25Si(ここで、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%、x+y+z=20原子%である。) (2)
【請求項7】
基板と、該基板上に設けられかつ複数の凹凸部が形成された金属ガラス層と、を備え、
金属ガラス層は、下記式(3)で表される組成を有する金属ガラスからなり、
上記複数の凹部は軟質磁性層であり、上記複数の凸部は硬質磁性層であることを特徴とする、磁気記録媒体。
(Fe0.55Pt0.25Si0.160.020.02100-x(ここで、0<X≦6原子%である。Mは、Zr,Nb,Ta,Hf,Ti,Mo,W,VCr,Mn,Al,Y,Ag,希土類元素から選ばれる1つ又はこれらの元素の組み合わせからなる元素である。) (3)
【請求項8】
前記複数の凹部は、非磁性体材料で被覆された表面保護層を備えていることを特徴とする、請求項5の何れかに記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
前記凹部及び凸部は、マトリクス状、千鳥格子状及びライン状のいずれかの配列パターンで配列されていることを特徴とする、請求項5の何れかに記載の磁気記録媒体。
【請求項10】
前記Mが、Zrであることを特徴とする、請求項7に記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
基板に金属ガラス層を堆積する工程と、
上記金属ガラス層に金型により凹凸部を形成する工程と、
上記金属ガラス層の凸部を熱処理して硬磁性特性とする工程と、を備え、
上記金属ガラス層が下記式(1)で表される組成を有することを特徴とする、磁気記録媒体の製造方法。
FePtSi(ここで、20<m≦60原子%、20<n≦55原子%、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%である。) (1)
【請求項12】
前記金属ガラスの組成は下記式(2)で表されることを特徴とする、請求項11に記載の磁気記録媒体の製造方法。
Fe55Pt25Si(ここで、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%、x+y+z=20原子%である。) (2)
【請求項13】
基板に金属ガラス層を堆積する工程と、
上記金属ガラス層に金型により凹凸部を形成する工程と、
上記金属ガラス層の凸部を熱処理して硬磁性特性とする工程と、を備え、
上記金属ガラス層が下記式(3)で表される組成を有することを特徴とする、磁気記録媒体の製造方法。
(Fe0.55Pt0.25Si0.160.020.02100-x(ここで、0<X≦6原子%である。Mは、Zr,Nb,Ta,Hf,Ti,Mo,W,VCr,Mn,Al,Y,Ag,希土類元素から選ばれる1つ又はこれらの元素の組み合わせからなる元素である。) (3)
【請求項14】
前記Mが、Zrであることを特徴とする、請求項13に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項15】
前記金属ガラス層の凸部を熱処理する温度が、750℃以上850℃以下であることを特徴とする、請求項1113の何れかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項16】
前記金属ガラス層の凸部を熱処理する時間が、10分以上30分以下であることを特徴とする、請求項1113の何れかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ガラス及びそれを用いた磁気記録媒体並びにその製造方法に関する。さらに詳しくは、金属ガラスの組成物を主としてFePt(Si)から構成すると共に、この金属ガラスを用いた磁気記録媒体並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化社会の進展により大容量の画像情報記録へのニーズが高まり、平方インチ当り1テラビット(1Tb/inch)というような面記録密度が磁気記録媒体に要求されている。このような高密度磁気記録媒体として、磁性ドットを非磁性体で分離する構造の所謂パターンド磁気記録媒体が注目されている(例えば、非特許文献1参照)。
非特許文献1に記載の技術は、ナノインプリントによりレジストをパターン化したマスクを用い、このマスクで磁性膜をエッチングすることにより、分離した磁性ドットを形成している。
【0003】
Fe-Pt-B合金の急冷リボン材では、均質なナノサイズのアモルファスとfccγ-FePt相の複相組織が得られ、熱処理後は良好な硬質磁性を示すナノ構造が得られることがわかっている(非特許文献2参照)。
【0004】

【非特許文献1】晋山勉,佐藤勇武,石尾俊二、「パターンド磁気記録媒体の製作方法と磁気的特性」、応用物理、2003、第72巻、第3号、P.298-303
【非特許文献2】A. Inoue and W. Zhang, J.Appl.Phys., 97,10H308, 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパターンド磁気記録媒体では、レジストをナノインプリント加工しているためドットピッチは100nm以上と大きく、1Tb/inchの面記録密度を実現するのは難しい。また、上述したような一連の加工作業を磁気記録媒体毎に行う必要があるので、加工コストが増大するという課題があった。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、金属ガラス及び金属ガラスによる磁気記録媒体並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の金属ガラスは、下記式(1)で表されることを特徴とする。
FePtSi(ここで、20<m≦60原子%、20<n≦55原子%、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%である。) (1)
上記構成において、特に組成が好ましくは下記式(2)で表される。
Fe55Pt25Si(ここで、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%、x+y+z=20原子%である。) (2)

【0008】
本発明の別の構成の金属ガラスは、下記式(3)で表されることを特徴とする。
(Fe0.55Pt0.25Si0.160.020.02100-x(ここで、0<X≦6原子%である。Mは、Zr,Nb,Ta,Hf,Ti,Mo,W,VCr,Mn,Al,Y,Ag,希土類元素から選ばれる1つ又はこれらの元素の組み合わせからなる元素である。) (3)

【0009】
上記構成において、(3)式の金属ガラスのMは、Zrであってもよい

【0010】
本発明の磁気記録媒体は、基板と、基板上に設けられ複数の凹凸部が形成された金属ガラス層と、を備え、金属ガラス層は、下記式(1)で表される組成を有する金属ガラスからなり、複数の凹部は軟質磁性層であり、複数の凸部は硬質磁性層であることを特徴とする。
FePtSi(ここで、20<m≦60原子%、20<n≦55原子%、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%である。) (1)
好ましくは、組成は下記式(2)で表される。
Fe55Pt25Si(ここで、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%、x+y+z=20原子%である。) (2)
または、上記金属ガラスは、下記(3)式で表される組成を有していてもよい。
(Fe0.55Pt0.25Si0.160.020.02100-x(ここで、0<X≦6原子%である。Mは、Zr,Nb,Ta,Hf,Ti,Mo,W,VCr,Mn,Al,Y,Ag,希土類元素から選ばれる1つ又はこれらの元素の組み合わせからなる元素である。) (3)

【0011】
上記構成において、複数の凹凸部は、好ましくは非磁性体から成る材料で被覆された表面保護層を備え、表面保護層の表面が平坦とされている。凹部及び凸部は、好ましくは、マトリクス状、千鳥格子状及びライン状のいずれかの配列パターンで配列されている。
上記構成において、(3)式の金属ガラスのMは、Zrであってもよい

【0012】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、基板に金属ガラス層を堆積する工程と、金属ガラ
ス層に金型により凹凸部を形成する工程と、金属ガラス層の凸部を熱処理して硬磁性特性
とする工程と、を備え、金属ガラス層を下記式(1)で表される組成とすることを特徴と
するものである。
FePtSi(ここで、20<m≦60原子%、20<n≦55原子%、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%である。) (1)
上記構成において、金属ガラスは、好ましくは下記式(2)で表される。
Fe55Pt25Si(ここで、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%、x+y+z=20原子%である。) (2)
または、上記金属ガラスは、下記(3)式で表される組成であってもよい。
(Fe0.55Pt0.25Si0.160.020.02100-x(ここで、0<X≦6原子%である。Mは、Zr,Nb,Ta,Hf,Ti,Mo,W,VCr,Mn,Al,Y,Ag,希土類元素から選ばれる1つ又はこれらの元素の組み合わせからなる元素である。) (3)
【0013】
上記構成において、(3)式の金属ガラスのMは、Zrであってもよい。金属ガラス層の凸部を熱処理する温度は、好ましくは、750℃以上850℃以下であり、熱処理時間は、10分以上30分以下であればよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属ガラス及びそれを用いた磁気記録媒体並びにその製造方法によれば、金属ガラスからなる強磁性体層に凹部及び凸部をより微細に加工することができ、しかも、凸部の強磁性体だけを硬磁性層とすることができるので、磁気記録媒体の記録密度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による磁気記録媒体1の一実施の形態を示すもので、(A)は平面図、(B)はA-A断面図である。
【図2】本発明の磁気記録媒体の実施形態の変形例を示す断面図である。
【図3】凸部の他の配列パターンを示したものであり、(A)は千鳥格子パターン図、(B)はライン状パターン図である。
【図4】本発明の磁気記録媒体の製造方法を順次示す図である。
【図5】金型の製造方法を順次説明する図である。
【図6】金型の製造方法を順次説明する図である。
【図7】実施例2のDSC特性を示す図である。
【図8】実施例2のXRD特性を示す図である。
【図9】実施例2の金属ガラスの磁化特性を示す図である。
【図10】実施例2の金属ガラスの保磁力に対する熱処理温度依存性を示す図である。
【図11】実施例3のDSC特性を示す図である。
【図12】実施例3のXRD特性を示す図で図である。
【図13】実施例3の金属ガラスの磁化特性を示す図である。
【図14】実施例1~3の金属ガラスのXRDを纏めて示す図である。
【図15】実施例1~3の金属ガラスの磁化特性を纏めて示す図である。
【図16】実施例1~4のFe55Pt25Siの金属ガラスの磁化特性から求めた各パラメータのSi及びBの組成依存性を示す図であり、(A)は残留磁束密度、(B)は保磁力、(C)は最大エネルギー積((BH)max)を示す。
【図17】実施例1~13のFe55Pt25(Si)の金属ガラスの保磁力に対するSi、B及びPの組成依存性を示す図である。
【図18】実施例14のDSC特性を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
1:磁気記録媒体
11:基板
12:金属ガラス層
12A:金属ガラス層の凸部
12B:金属ガラス層の凹部
13:表面保護層
15:金型
15A:金型の凸部
15B:金型の凹部
20:基板
21:SiO
22:マスクパターン
25:凸部
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照してこの発明の幾つかの実施の形態を詳細に説明する。各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
最初に、本発明の金属ガラスの好適な態様について詳細に説明する。
本発明の金属ガラスは、下記式(1)で表される組成を有する永久磁石材料である。
FePtSi(ここで、20<m≦60原子%、20<n≦55原子%、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%である。) (1)
【0018】
本発明の金属ガラスの組成は、好適には下記式(2)で表される。
Fe55Pt25(Si20(ここで、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%である。) (2)
【0019】
本発明の金属ガラスは、下記(3)式で表わされる組成を有していてもよい。
(Fe0.55Pt0.25Si0.160.020.02100-x(ここで、0<X≦6原子%である。Mは、Zr,Nb,Ta,Hf,Ti,Mo,W,V.Cr,Mn,Al,Y,Ag,希土類元素から選ばれる1つ又はこれらの元素の組み合わせからなる元素である。) (3)
上記組成において、Mを添加することによって、さらに金属ガラス形成能を高めることができる。例えば、MとしてZrを好適に用いることができる。ここで、Mの組成Xは、6原子%を越えると金属ガラス形成能を高めることは可能であるが、(Fe0.55Pt0.25Si0.160.020.02100-xからなる金属ガラスの磁気特性が低下するので好ましくない。磁気特性を考慮した場合、金属ガラスとして、(Fe0.55Pt0.25Si0.160.020.0296Zrを好適に用いることができる。
【0020】
上記(1)~(3)式で表わされる金属ガラス合金において、Feの一部を、Feと同様な強磁性体であるCo又はNiに置換してもよい。
【0021】
上記(1)~(3)式で表わされる金属ガラス合金において、Ptの一部を、後述するL1-FePd相を形成するPdに置換してもよい。
【0022】
上記式(1)~(3)の組成で表される本発明の金属ガラスは強磁性である。この金属ガラスは、その形成直後は軟磁性特性を示す。さらに、本発明の金属ガラスは、高温で所定時間の熱処理を施した後には結晶化して硬磁性特性を示す。
【0023】
本発明の金属ガラスは、高周波溶解炉及びアーク溶解炉を用いて溶製した母合金から、単ロール液体急冷法により製造することができる。
【0024】
本発明の金属ガラスは、これまでの研究で良好な磁気特性が得られたFe-Pt-B-P合金にSiを添加した合金である。本発明によりSiを添加すると、さらにアモルファス形成を向上させることができる。急冷リボン材に対し熱処理を施すと、L1-FePt相、Fe2B相、PtSi相及びFeSi相からなる複合組織が形成され、L1-FePt相の強磁性特性を示す。最も良好なアモルファス形成能が得られた合金組成は、残留磁束密度(Br)、保磁力(Hc)及び最大エネルギー積((BH)max)が、それぞれ0.69T、172kA/m及び44kJ/m程度である。
【0025】
本発明の金属ガラスは、冷却速度の速い急冷法により作製することが好ましい。溶融した材料を、速い冷却速度で冷却しつつ作製することにより、磁性粒子の微細化や金属ガラス中に非平衡相を形成することができる。すなわち、溶融した材料を急冷することにより、例えばBやSiなどの添加元素が金属ガラス中に強制的に固溶した過飽和固溶体やアモルファス相などの非平衡相が容易に形成されるという効果が得られる。この非平衡相はより安定なL1-FePt相に容易に変化させることができ、結果として高い保磁力を得易くなる。
【0026】
このような急冷法としては、単ロール法、双ロール法、遠心急冷法等の液体急冷法や、スパッタ法、真空蒸着法等の気相急冷法が好ましい。例えば、液体急冷法は、非晶質合金を作製する方法として知られているが、100K/秒程度の極めて早い冷却速度が得られるため、非晶質化しない合金においても急冷の効果により結晶粒径の微細化の効果や非平衡相を得ることができる。また、気相冷却法では、液体冷却法と同等以上の冷却速度が得られるので、同じく結晶粒径の微細化の効果や非平衡相を得ることができる。
【0027】
本発明の金属ガラスを液体急冷法により作製すると、厚さ数μm~数十μmの連続或いは不連続の薄い帯状金属ガラスを得ることができる。こうして得られた薄帯を粉砕して粉末にすることもできる。薄帯状の金属ガラスは、例えば、バルク状の材料を加工すると高コストになりかつ磁気特性の劣化が生じて適用できないような、小型磁性部品用の永久磁石材料としても最適である。
【0028】
本発明によって得られる粉末状の金属ガラスは、例えば樹脂等と混合してボンド磁石材料として使用するのに最適である。
【0029】
本発明の金属ガラスを気相急冷法により基板上に作製する場合は、金属ガラスを厚さ数nmから数10nmの薄膜状にすることができる。このようにして基板上に形成した薄膜は、例えば、高密度の磁気記録用媒体に最適である。これにより熱処理を必要としない、あるいは800K前後の熱処理による結晶化で硬磁気特性が得られる。そのため、基板として安価なガラス基板が使用できる。また、本発明の金属ガラスにおいては、結晶粒の成長が抑えられるために微細な結晶組織が得られるので、高密度の磁気記録用媒体の必要条件を満たすことができる。
【0030】
熱処理による結晶化は、大凡750K以上から850K位までの800K前後の温度で行うことが好ましい。750K未満の熱処理温度では結晶化が進まず、硬磁気特性が得られないので好ましくない。熱処理温度が750K以上では熱処理温度を高くすると共に、結晶化が進み保磁力が増大し硬磁気特性が得られる。熱処理温度が850K以上では保磁力が飽和するので、これ以上熱処理温度を増大する必要はない。
【0031】
熱処理を行う時間は、上記の熱処理温度条件下で、大凡10分以上から30分以下の時間で行うことが好ましい。10分未満の熱処理時間では結晶化が進まず、硬磁気特性が得られないので好ましくない。逆に、熱処理時間が30分を越えると、結晶化による保磁力が飽和するので、これ以上の熱処理時間を増大する必要はない。
【0032】
図1は本発明による磁気記録媒体1の一実施の形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)はA-A断面図である。本発明の磁気記録媒体1は、基板11と、この基板11上に設けられ、かつ複数の凹凸部を有する金属ガラス層12と、を備えている。複数の凹部12Bは軟質磁性層であり、複数の凸部12Aは、少なくともその最表面が磁気記録ができる硬質磁性層で成っている。金属ガラス層12は、上記(1)式及び(2)式で表わされる組成の金属ガラスを用いることができる。
【0033】
凸部12AのピッチPは、図1に示した凹部12BのピッチPと同一であり、25nm程度に設定される。また、凸部12Aの高さtは25nm程度に設定される。
【0034】
ところで、従来の磁気記録媒体であるHDディスクでは、基板として主に酸化ガラスが用いられている。本発明の場合、基板11に金属ガラスを用いてもよい。金属ガラスを基板11に用いた場合、金属ガラスのバルク材を挟み、そのバルク材を金層ガラスの過冷却液体温度域に保持してプレス加工することにより所望の厚さの基板11を成形することができる。
【0035】
このとき、金型の表面は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置により鏡面状態に仕上げ加工されている。金属ガラスの過冷却液体温度域でプレス加工することでプレス時の荷重が小さくて済むとともに、金型の鏡面形状が基板11の表面に面精度に転写され、平坦性、平滑性の優れた均一厚さの基板11が得られる。そのため、プレス加工しただけの金属ガラス基板を基板11として用いることができ、基板11の加工コストの低減を図ることができる。このようにして形成した金属ガラス基板11は、磁気記録媒体に限らず、DVD、CD及びHD等の基板としても用いることができ、それらの軽量化が達成できる。
【0036】
また、アモルファス合金である金属ガラスは、強度が高くしなやかで耐食性にも優れている。そのため基板11を薄くすることができ、磁気記録媒体1の小型化や軽量化が可能になる。なお、本実施の形態の磁気記録媒体は、情報の記録だけでなく、ナノメートル(nm)オーダーの磁気記録媒体用スケールとしても使用することができる。
【0037】
図2は、本発明の磁気記録媒体の実施形態における変形例を示す断面図である。図2に示す磁気記録媒体が図1の磁気記録媒体と異なるのは、凹凸部12A,12Bが非磁性体からなる材料で被覆された表面保護層13を備えている点である。被覆される箇所は凹部12Bだけに凹状に被覆しても、または、凹部12Bを埋め込みさらに凸部12Aの表面まで被覆してもよい。この表面保護層13の表面が平坦とされていてもよい。表面保護層13の材料としては、SiO膜などを使用することができる。
【0038】
図3は図1に示す凸部12Aの他の配列パターンを示したものである。図3(A)は千鳥格子パターンを、図3(B)はライン状パターンを示している。図3(A)に示す配列パターンのピッチPは図1に示した配列のものと同じであるが、ライン間のピッチPlは、ピッチPよりも大きく設定されている。配列パターンを凹部12Bで構成する場合も、同様の千鳥格子パターン及びライン状パターンが使用可能である。
【0039】
なお、凹部12B及び凸部12Aは、上記したマトリクス状、千鳥格子状及びライン状などのパターンに限らず、必要に応じて又は任意にいずれかの配列パターンで配列されていればよい。
【0040】
本実施形態では、金属ガラス層12における凹部12Bや凸部12Aは、後述するように、金属ガラス層12を過冷却液体領域でナノインプリント成形して形成するため、ナノオーダーの凹凸であっても高精度な成形を行うことができる。このため、高密度な磁気記録媒体を精度良く形成することができる。また、プレス加工を行うだけで金属ガラス層12に凹凸部12B,12Aを形成できるので、加工時間の短縮及び加工コストの低減を図ることができる。
【0041】
図1に示した磁気記録媒体1では、表面が硬磁性層からなる凸部12Aの周囲には軟磁性層からなる凹部12Bが介在している。軟磁性層からなる凹部12Bは磁気ヘッドからの記録磁界をサポートする機能を有するものである。磁気ヘッドの記録磁界は、凹部12Bを通って閉ループを形成し、記録磁界の取り込みや信号再生感度を向上させることができる。
【0042】
さらに、凹部12Bは、非磁性体材料で被覆された表面保護層13を備えているので、凸部12Aの硬磁性層のそれぞれが磁気的に独立した記録ビットを構成している。
【0043】
基板11には、アルミニウム、酸化物ガラス、金属ガラスなどの非磁性材料が用いられる。後述するように、製造過程で基板11の全体を成形温度Tmまで昇温させるので、基板11が非晶質材料の場合には結晶化温度が成形温度Tmよりも高いものを使用する。
【0044】
金属ガラス層12全体の厚さtは20nm程度であって、凹部12Bの底部分の厚さtを数nm程度とする。金属ガラス層12の硬磁性層となる以外の領域は軟磁性層である。この軟磁性層は従来の垂直磁気記録媒体の中間層に相当するものである。また、マトリクス状に形成された凹部12BのピッチPを25nm程度とすることで、1Tb/inchの記録密度を達成することができる。凹部12BのピッチPは上記したナノインプリント成形における金型の精度で決まる。金型をイオンビーム等で形成する場合には、ピッチPを10nmオーダー程度までに縮小できる。この場合には、磁気記録媒体1の記録密度は、数Tb/inchとなる。
【0045】
次に、本発明の磁気記録媒体1の製造方法について説明する。
図4は、本発明の磁気記録媒体の製造方法の工程を示す図である。この実施形態では、金属ガラス層12の微細な凹凸パターンを、ナノインプリント法により形成する。
最初に、図4(A)に示すように、スパッタ蒸着などにより所定厚さの金属ガラス層12を基板11上に形成する。
【0046】
次に、図4(B)に示すように、金型15を用いたナノインプリント法により金属ガラス層12に凹凸部を形成する。金型15には、金属ガラス層12に形成すべき凹部12Bに対応する凸部15Aと、凸部12Aに対応する凹部15Bとが形成されている。なお、金型15の製作方怯については後述する。
【0047】
金属ガラスと称されるアモルファス合金は、ガラス遷移温度Tgが結晶化温度Txよりも低温側に存在し、安定な過冷却液体温度域△Tx(=Tx-Tg)が存在する。この過冷却液体温度域では、金属ガラスが完全ニュートン粘性流動を呈し、低応力での粘性流動加工が可能であることから優れた微細成形特性(微細形状転写性)を有する。本実施形態では、金属ガラスのこのような性質を利用し、金型15に形成されたnmオーダーの微細凹凸形状を金属ガラス層12に転写することにより、微細凹凸形状を容易にかつ高精度に形成するようにしている。
【0048】
図4(B)に示す工程では、金属ガラス層12が形成された基板11と金型15とを、金属ガラス層12のガラス遷移温度Tgよりも高い成形温度Tmまで加熱し、所定の荷重を所定時間加え、金属ガラス層12をインプリント成形する。その後、基板11及び金型15を冷却し、それらの温度が金属ガラス層12のガラス遷移温度Tgよりも低くなったら負荷を取り除く。これにより、図4(C)に示すように、t-tの深さを有する凹部12Bが金属ガラス層12に形成される。
【0049】
その後、図4(D)に示すように、形成された凸部12Aの表面のみを加熱して結晶化させ、金属ガラスのアモルファス層を熱処理することで凸部12Aの表面を結晶化し、硬磁性層とすることができる。この凸部12Aの表面の加熱処理にはレーザを用いることができる。
【0050】
アモルファス合金の例としては、上記(1)~(3)の組成式で表わされる金属ガラス合金を使用することができる。例えば、Fe55Pt25Si16の組成を有するアモルファス合金がよい。この合金は、アモルファス状態では軟磁性層となり、熱処理を施すことで結晶化してL1構造を有するFe-Pt層からなる硬磁性層が得られる。Ptの一部をPdに置換した場合には、熱処理を施すことで結晶化してL1構造を有するFe-Pd層からなる硬磁性層も得られる。
【0051】
図5及び図6は金型2の製造方法を説明する図である。
図5(A)に示す第1の工程では、(100)面を有するSi基板20の表面に、熱酸化法により厚さが100nm程度のSiO膜21を形成する。
図5(B)に示す第2の工程では、収束イオンビーム援用化学気相成長(FIB-CVD)によりタングステン(W)の薄膜を形成し、SiO膜21上にマスクパターン22を形成する。このパターニングは、加工領域にガス化したW(CO)(タングステンヘキサカルボニル)を吹き付けながらGaのイオンビームを照射する。これにより、W(CO)ガスはWとCOとに分解され、SiO膜21の表面にタングステン(W)の堆積膜が形成される。図5(C)は、SiO膜21上に形成された複数のマスクパターン22を示す図である。
【0052】
図6(A)に示す第3の工程では、タングステンのマスクパターン22を用いて、CHFを用いたRIE(反応性イオンエッチング)によりSiO膜21を異方性エッチングする。このようにして形成された金型15の成形転写面には、図6(B)に示すように、金層ガラス層12の凹部12Bに対応する凸部25が複数形成される。
【0053】
上述した実施形態では、Si基板20をFIB加工して形成したものを金型15として用いたが、金型15を金層ガラスで形成するようにしても良い。この場合、Si基板20をFIB加工してマザーダイを形成し、そのマザーダイを用いて金属ガラスをインプリント成形することで金型15を形成することができる。マザーダイの表面形状(凹凸形状)は、図1に示した金層ガラス層12の表面形状と同一に形成される。
【実施例1】
【0054】
以下、本発明の金属ガラスについて実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
高周波溶解炉及びアーク溶解炉を用いて溶製した母合金から、単ロール液体急冷法によりリボン形状のFe55Pt25Si13からなる組成の金属ガラスを作製した。リボン形状の実施例1の試料における熱的性質はDSCを用いて測定し、過冷却液体領域を求めた。
【0055】
ここで、「過冷却液体領域」とは、結晶化に対する抵抗力、すなわち非晶質の安定性及び加工性を示すもので、本明細書では、毎分40Kの加熱速度で示差走査熱量分析(DSC:Differential Scanning Calorimetry)を行うことで得られるガラス遷移温度Tgと結晶化温度Txの差で定義される値である。実施例1で得た金属ガラスの過冷却液体領域における結晶化開始温度Txとガラス遷移温度Tgとの温度間隔ΔTx(=Tx-Tg)は25Kであった。実施例1の金属ガラスは、Siを添加しないFePtBP系金属ガラスよりもアモルファス形成能が向上した。
【0056】
実施例1の試料を石英管中に真空封入し、900秒の熱処理を施した。相同定にはX線回折(XRD)を、磁気特性は試料振動型磁力形(Vibrating Sample Magnetometer:VSM)を用いて測定した。
【0057】
実施例1の急冷リボン材に対し、810K以上の温度で熱処理を施すと、L1-FePt相、FeB相、PtSi相及びFeSi相からなる複合組織が形成された。最も良好なアモルファス形成能が得られた合金組成での残留磁束密度(Br)、保磁力(Hc)及び最大エネルギー積((BH)max)は、それぞれ、0.69T、172kA/m及び44kJ/m前後の値が得られた。
【実施例2】
【0058】
組成をFe55Pt25Si16とした以外は実施例1と同様にして、実施例2の金属ガラスを作製した。ΔTx(=Tx-Tg)は37Kであった。
図7は、実施例2のDSC特性を示す図である。縦軸は熱量で、横軸は温度(K)である。なお、通常DSC曲線で相転移現象を調べる際には発熱反応が観測される。一方、金属ガラスでは吸熱反応を示す過冷却液体領域を考慮し、縦軸の下向き矢印を吸熱と表現している。図7から明らかなように、実施例2の金属ガラスのΔTx(=Tx-Tg)は37Kであった。
【0059】
図8は実施例2のXRD特性を示す図である。縦軸はX線回折強度、横軸は角度(°)、即ち、X線の原子面への入射角θの2倍に相当する角度である。図8から明らかなように、実施例2の組成を有する金属ガラスでは、金属ガラス形成直後(as-Q)から熱処理温度を上げるに従い結晶性が生じ、810Kでは硬磁性のL1-FePt相が明瞭に生じている。L1-FePt相以外には、fcc-FePt相、FeSi相、PtSi相が生じていることが分かる。
【0060】
図9は実施例2の金属ガラスの磁化特性を示すもので、縦軸は磁化J(T:テスラ)、横軸は磁場Hc(A/m)である。図9から、実施例2の組成を有する金属ガラスでは、金属ガラス形成後(as-Q)の675K,750Kの熱処理後で軟磁性特性を示し、810Kの熱処理後には硬磁性の磁化特性が得られることが分かる。Bが2%の場合には、Pt-Si相の析出はFePt相の変態と分離していないことが分かる。
【0061】
図10は実施例2の金属ガラスの保磁力に対する熱処理温度依存性を示す図である。縦軸は保磁力Hc(kA/m)で、横軸は熱処理温度(K)である。熱処理時間は900秒である。図10から、実施例2の組成を有する金属ガラスでは、金属ガラス形成後の750K以上の熱処理温度で硬磁性の磁化特性が得られることが分かる。約780Kから830K程度の熱処理温度で、100kA/mから170kA/mの保磁力が得られることが分かった。
【実施例3】
【0062】
組成をFe55Pt25Si18とした以外は実施例1と同様にして、実施例3の金属ガラスを作製した。図11は実施例3のDSC特性を示す図である。ΔTxは37Kであった。
【0063】
図12は実施例3のXRD特性を示すもので、縦軸はX線回折強度、横軸は角度(°)、即ち、X線の原子面への入射角θの2倍に相当する角度である。図12から、実施例3の組成を有する金属ガラスでは、金属ガラス形成直後(as-Q)から熱処理温度を上げるに従い結晶性が生じ、795Kでは硬磁性のL1-FePt相が明瞭に生じることが分かる。L1-FePt相以外には、fcc-FePt相、FeSi相、PtSi相が生じていることが分かる。
【0064】
図13は実施例3の金属ガラスの磁化特性を示すもので、縦軸は磁化J(T:テスラ)で、横軸は磁場H(A/m)である。図13から分かるように、実施例3の組成を有する金属ガラスは、金属ガラス形成後(as-Q)の750K,795Kの熱処理後で軟磁性特性を示し、810Kの熱処理後には硬磁性の磁化特性が得られる。
【0065】
図14は実施例1~3の金属ガラスのXRDを纏めて示す図である。795~810K程度の熱処理後に金属ガラスにL1-FePtの結晶相が生じることが分かる。
【0066】
図15は実施例1~3の金属ガラスの磁化特性を纏めて示す図である。795~810K程度の熱処理後に金属ガラスが硬磁性を示すことが分かる。
【実施例4】
【0067】
組成をFe55Pt25Si15とした以外は実施例1と同様にして、実施例4の金属ガラスを作製した。ΔTxは37Kであった。
【0068】
図16(A)~(C)は、実施例1~4のFe55Pt25Siの金属ガラスの磁化特性から得た、それぞれ、残留磁束密度、保磁力、最大エネルギー積((BH)max)に対するSi及びBの組成依存性を示すものである。上横軸はBの組成(原子%)であり、下横軸はSiの組成(原子%)である。
図16(A)から明らかなように、残留磁束密度(Br)は、Siの組成が18原子%から10原子%の間で、約0.73Tから約0.8Tの値が得られた。
図16(B)から明らかなように、保持力は、Siの組成が18原子%から10原子%の間で、約164kA/mから205kA/mの値が得られた。
図16(C)から明らかなように、最大エネルギー積は、Siの組成が18原子%から10原子%の間で、約49kJ/mから60kJ/mの値が得られた。
従って、上記のFe55Pt25Siからなる組成の金属ガラスでは、SiやBの組成を変化させると磁気特性を変えることができる。
【実施例5】
【0069】
組成をFe55Pt25Si11とした以外は実施例1と同様にして、実施例5の金属ガラスを作製した。ΔTxは26Kであった。
【実施例6】
【0070】
組成をFe55Pt25Si13とした以外は実施例1と同様にして、実施例6の金属ガラスを作製した。ΔTxは32Kであった。
【実施例7】
【0071】
組成をFe55Pt25Si13とした以外は実施例1と同様にして、実施例7の金属ガラスを作製した。ΔTxは26Kであった。
【実施例8】
【0072】
組成をFe55Pt25Si14とした以外は、実施例1と同様にして実施例8の金属ガラスを作製した。ΔTxは27Kであった。
【実施例9】
【0073】
組成をFe55Pt25Si15とした以外は、実施例1と同様にして実施例9の金属ガラスを作製した。ΔTxは31Kであった。
【実施例10】
【0074】
組成をFe55Pt25Si15とした以外は、実施例1と同様にして実施例10の金属ガラスを作製した。ΔTxは32Kであった。
【実施例11】
【0075】
組成をFe55Pt25Si15とした以外は、実施例1と同様にして実施例11の金属ガラスを作製した。ΔTxは17Kであった。
【実施例12】
【0076】
組成をFe55Pt25Si16とした以外は、実施例1と同様にして実施例12の金属ガラスを作製した。ΔTxは23Kであった。
【実施例13】
【0077】
組成をFe55Pt25Si17とした以外は、実施例1と同様にして実施例13の金属ガラスを作製した。ΔTxは29Kであった。
【0078】
実施例4~実施例13の何れにおいても、熱処理後にはL1-FePtの結晶相が生じ、磁化特性が硬磁性となることが分かった。
【0079】
図17は、実施例1~13のFe55Pt25(Si)の金属ガラスの保磁力に対するSi、B及びPの組成依存性を示す図である。図中の丸印(○)が測定した金属ガラスの組成を示しており、添えた数字が保磁力である。160から200までの各曲線は保磁力の分布を示している。
図17から明らかなように、Pの組成zが、2~4原子%の領域で大きな保磁力が得られた。
【実施例14】
【0080】
組成を(Fe0.55Pt0.25Si0.160.020.0296Zrとした以外は、実施例1と同様にして実施例14の金属ガラスを作製した。
図18は、実施例14のDSC特性を示す図である。縦軸は熱量で、横軸は温度(K)である。なお、通常DSC曲線で相転移現象を調べる際には発熱反応が観測される。一方、金属ガラスでは吸熱反応を示す過冷却液体領域を考慮し、縦軸の下向き矢印を吸熱と表現している。図18から明らかなように、実施例14の金属ガラスのΔTx(=Tx-Tg)は48Kであった。
以上のことから、(Fe0.55Pt0.25Si0.160.020.0296Zrは、Fe55Pt25(Si20(ここで、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%である。)と同様に、ΔTxが大きい金属ガラス合金であることが分かった。さらに、800Kで900秒の熱処理によってL1-FePt相が生じ、磁化特性が硬磁性であることが分かった。
【0081】
次に、比較例について説明する。
(比較例1)
組成をFe55Pt25Siとした以外は、実施例1と同様にして比較例1の合金を作製した。この合金はDSC測定により金属ガラスではないことが分かった。
【0082】
(比較例2)
組成をFe55Pt25Si10とした以外は、実施例1と同様にして比較例2の合金を作製した。この合金はDSC測定により金属ガラスではないことが分かった。
【0083】
上記実施例及び比較例から、実施例のFe55Pt25(Si20(ここで、11≦x<19原子%、0≦y<8原子%、0<z<8原子%である。)及び(Fe0.55Pt0.25Si0.160.020.0296Zrは、ΔTxが大きい金属ガラスを作製することができることが判明し、熱処理によりL1-FePtの結晶相が生じ、磁化特性が硬磁性となることが分かった。
【0084】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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