TOP > 国内特許検索 > 低分子RNAによる細胞または人工細胞モデルでの翻訳制御システム > 明細書

明細書 :低分子RNAによる細胞または人工細胞モデルでの翻訳制御システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5405312号 (P5405312)
登録日 平成25年11月8日(2013.11.8)
発行日 平成26年2月5日(2014.2.5)
発明の名称または考案の名称 低分子RNAによる細胞または人工細胞モデルでの翻訳制御システム
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12P 21/02 C
請求項の数または発明の数 16
全頁数 36
出願番号 特願2009-542597 (P2009-542597)
出願日 平成20年11月21日(2008.11.21)
国際出願番号 PCT/JP2008/071214
国際公開番号 WO2009/066758
国際公開日 平成21年5月28日(2009.5.28)
優先権出願番号 2007303661
優先日 平成19年11月22日(2007.11.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年11月15日(2011.11.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】井上 丹
【氏名】齊藤 博英
【氏名】加藤 祐章
【氏名】吉川 研一
【氏名】山田 彩子
【氏名】山中 透
個別代理人の代理人 【識別番号】100099623、【弁理士】、【氏名又は名称】奥山 尚一
【識別番号】100096769、【弁理士】、【氏名又は名称】有原 幸一
【識別番号】100107319、【弁理士】、【氏名又は名称】松島 鉄男
【識別番号】100114591、【弁理士】、【氏名又は名称】河村 英文
【識別番号】100118407、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 尚美
【識別番号】100125380、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 綾子
【識別番号】100125036、【弁理士】、【氏名又は名称】深川 英里
【識別番号】100142996、【弁理士】、【氏名又は名称】森本 聡二
【識別番号】100154298、【弁理士】、【氏名又は名称】角田 恭子
【識別番号】100162330、【弁理士】、【氏名又は名称】広瀬 幹規
審査官 【審査官】濱田 光浩
参考文献・文献 SAITO, H. and T. INOUE,RNA and RNP as new molecular parts in synthetic biology.,J. Biotehnology,2007年10月15日,Vol. 132,p. 1-7
ISAACS, F. J. et al,RNA synthetic biology.,Nature biotechnology,2006年,Vol. 24, No. 5,p. 545-554
CHEN, G. and C. YANOFSKY,Features of a leader peptide coding region that regulate translation initiation for the anti-TRAP pr,Molecular Cell,2004年,Vol. 13,p. 703-711
SHARMA C. M. et al.,A small RNA regulates multiple ABC transporter mRNAs by targeting C/A-rich elements inside and upstr,Gene & Development,2007年11月 1日,Vol. 21,p. 2804-2817
ALTUVIA, S. et al,The Escherichia coli OxyS regulatory RNA represses fhlA translation by blocking ribosome binding.,EMBO J.,1998年,Vol. 17, No. 20,p. 6069-6075
堅田俊一 他,人工RNAとRNAiを用いたヒト細胞での翻訳制御システム,第9回日本RNA学会年会(第9回RNAミーティング)要旨集,2007年 7月28日,9th,199
調査した分野 C12N 15/09
C12P 21/02
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
リボソーム結合部位の5’側にsmall RNA結合部位を設け、該small RNA結合部位の5’側にリボソーム結合部位と相補的な塩基配列を設けたmRNA。
【請求項2】
請求項1に記載のmRNAと、small RNA結合部位に相補的に結合するsmall RNAとを混合することによるmRNAの翻訳制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載のmRNAを含んでなる、翻訳発現制御システム。
【請求項4】
開始コドンの3’側にsmall RNA結合部位を設け、該small RNA結合部位の3’側に蛋白質をコードする塩基配列を設けたmRNA。
【請求項5】
請求項4に記載のmRNAと、small RNA結合部位に相補的に結合するsmall RNAとを混合することによるmRNAの翻訳制御方法。
【請求項6】
請求項4に記載のmRNAを含んでなる、翻訳発現制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載のmRNAと、請求項4に記載のmRNAとを含む翻訳発現制御システムであって、請求項1に記載のmRNAのsmall RNA結合部位と、請求項4に記載のmRNAのsmall RNA結合部位とが、同一の塩基配列である、翻訳発現制御システム。
【請求項8】
リボソーム結合部位の5’側にsmall RNA結合部位を設け、該small RNA結合部位の5’側にリボソーム結合部位と相補的な塩基配列を設け、該リボソーム結合部位と相補的な塩基配列の5’側に、前記small RNA結合部位と同一の塩基配列を設け、開始コドンの3’側に、small RNAの少なくとも連続した6塩基と同一の配列を設け、該small RNAの少なくとも連続した6塩基と同一の配列の3’側に、蛋白質をコードする塩基配列を設けたmRNA。
【請求項9】
請求項1に記載のmRNAを用いて、small RNAの発現量を検知する工程と、
目的蛋白質の翻訳を活性化する工程と
を含む、人工情報変換方法。
【請求項10】
請求項4に記載のmRNAを用いて、small RNAの発現量を検知する工程と、
目的蛋白質の翻訳を抑制する工程と
を含む、人工情報変換方法。
【請求項11】
請求項1に記載のmRNAを用いて、small RNAの発現量を検知する工程と、
請求項4に記載のmRNAを用いて、small RNAの発現量を検知する工程と、
請求項1に記載のmRNAがコードする目的蛋白質の翻訳を活性化する工程と、
請求項4に記載のmRNAがコードする目的蛋白質の翻訳を抑制する工程と
を含む、人工情報変換方法であって、
請求項1に記載のmRNAのsmall RNA結合部位と、請求項4に記載のmRNAのsmall RNA結合部位とが、同一の塩基配列である、人工情報変換方法。
【請求項12】
請求項1に記載のmRNAを内包したリポソーム。
【請求項13】
請求項4に記載のmRNAを内包したリポソーム。
【請求項14】
mRNA又はDNAと、無細胞翻訳系とを内包してなるリポソーム。
【請求項15】
油性液体中に、1種以上のリン脂質と、mRNA又はDNAと、無細胞翻訳系と、水性溶液とを混合し、前記mRNA又はDNAと前記無細胞翻訳系とが前記リン脂質小胞に内包されたWOエマルジョンを形成する工程と、
水相に外膜脂質を溶解した油性液体を加え、油水の分離界面に前記脂質が並んだ分子膜を形成させる工程と、
前記WOエマルジョンを前記分離界面における油相側に加え、前記WOエマルジョンを前記分離界面における水相側に移行させて前記WOエマルジョンの外側に前記外膜脂質を付加してリポソームを形成する工程と
を含む、mRNA又はDNAと無細胞翻訳系とを内包したリポソームの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載のリポソームを形成する工程の後に、前記リポソームを顕微鏡で観察する工程を含むリポソーム内での蛋白質翻訳反応をリアルタイムでモニタリングする方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞または人工細胞モデルにおける翻訳制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RNA構造生物学の発展により、生体内の複雑なRNA分子は物理的に分割可能な機能単位であるRNAモジュールの集積により構成されていることが明らかとなってきた。天然に存在する複数のRNAモジュールを組み合わせる方法により人工的な機能性RNA分子が構築され、さらにin vitro selection法を用いることで、人工リボザイムの創製に成功するなどモジュラーエンジニアリングの有効性が既に提示されている。
【0003】
一方、天然においては、mRNA上にアミノ酸や核酸などの代謝産物結合RNAモジュールを持ち、代謝産物濃度に依存して遺伝子の発現制御を行うリボスイッチが存在する。具体的には、アデニンリボスイッチ、グリシンリボスイッチ、SAMリボスイッチなどのリボスイッチが知られており、リボスイッチは、リガンドの結合によるmRNAの構造変化に伴うSD配列・開始コドンとリボソーム相互作用の制御、又はターミネーター構造の制御を行うことが解明されてきた。
【0004】
また、近年マイクロRNAなどのsmall RNA分子が、細胞の発生、分化、癌化などにおいて重要な役割を果たすことがわかってきた。これらsmall RNA分子の発現は、細胞の状態や細胞内での局在に応じてダイナミックに変化する。したがって、これらsmall RNA分子の発現を検知し、その発現量に応じて細胞を検出する技術や、その発現量に応じて、細胞運命を制御する技術の開発が期待されている。
【0005】
従来、標的核酸にハイブリダイズした時に構造変化を生じて分子内ハイブリダイズ部位と自己核酸酵素を含むステム部を形成する標的核酸を検出するための、HIV DNAを基質とした核酸プローブを用いたバイオセンサーが知られている(特許文献1を参照)。この技術はバイオセンサーの開発に主眼をおくもので、任意の入力因子(例えば、miRNA)を任意の出力に変換する(例えば、GFP)人工情報変換システムの構築に主眼をおくものではない。さらに、この技術においては、基質として使用されるのはDNAであって、miRNAなどのRNA基質に対する応答性の効果が未知であった。
【0006】
また、人工RNAを用いて大腸菌内部での翻訳反応を制御する技術が知られている(非特許文献1を参照)。しかし、この技術は、あらかじめ細胞内部で構築したシステムであるため、翻訳制御に他因子が関与している可能性を否定できない。また、基質RNAと人工RNAの至適濃度を厳密に調整できない。
【0007】
無細胞翻訳系と共にDNA、mRNAを静置水和法で作成したリポソームに内包する技術が知られている(非特許文献2、3を参照)。しかし、静置水和法で作成したリポソームでは、実際に翻訳反応を進行させたリポソームは全体の10%程度であり、全てのリポソーム内部で翻訳反応を進行させることが難しかった。
【0008】
一方最近、マイクロメータスケールの細胞サイズの液滴であるエマルジョンから作成したリポソーム内部での無細胞翻訳系の発現が報告された(非特許文献4を参照)。しかしこの方法では、リポソームを遠心操作により回収するという作業を要するため、同時に複数種のリポソーム内での翻訳をリアルタイムでモニタリングすることが困難である。また従来技術では、細胞抽出物による翻訳系を用いているため、未知の因子の影響を排除できなかった。
【0009】
さらに、リポソーム内で翻訳の制御をした例はない。

【特許文献1】特開2005-341865号公報
【非特許文献1】Isaacs FJ et al; Nat Biotechnol., 22(7):841-7,2004
【非特許文献2】Ishikawa K et al;, FEBS Lett., 576(3):387-90, 2004
【非特許文献3】Nomura SM et al; Chembiochem., 4(11):1172-5, 2003 Gene expression within cell-sized lipid vesicles
【非特許文献4】Vincent Noireaux et al; Proc Natl Acad Sci U S A., 101(51):17669-74, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、所望の分子に応答し、かつ所望の遺伝子の翻訳を活性化できるmRNAを構築し、任意の入力情報を目的蛋白質の出力に変換する人工情報変換システムを構築し、細胞内または無細胞翻訳系を用いて人工細胞モデル内で翻訳制御システムを構築することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、一実施の形態によれば、リボソーム結合部位の5’側にsmall RNA結合部位を設け、該small RNA結合部位の5’側にリボソーム結合部位と相補的な塩基配列を設けたmRNAである。このmRNAは、ONスイッチmRNAともいう。
【0012】
本発明は、また別の実施形態によれば、上記mRNAと、上記mRNAのsmall RNA結合部位に相補的に結合するsmall RNAとを混合することによるmRNAの翻訳制御方法である。
【0013】
本発明は、また別の実施形態によれば、上記mRNAを含んでなる、翻訳発現制御システムである。
【0014】
本発明は、また別の実施形態によれば、mRNAであって、開始コドンの3’側にsmall RNA結合部位を設け、該small RNA結合部位の3’側に蛋白質をコードする塩基配列を設けたmRNAである。このmRNAは、OFFスイッチmRNAともいう。
別の実施形態によれば、かかるmRNAと、small RNA結合部位に相補的に結合するsmall RNAとを混合することによるmRNAの翻訳制御方法、及びかかるmRNAを含んでなる、翻訳発現制御システムである。
【0015】
本発明は、さらに別の実施形態によれば、上記ONスイッチmRNAと、上記OFFスイッチmRNAとを含む翻訳発現制御システムであって、ONスイッチmRNAのsmall RNA結合部位と、OFFスイッチmRNAのsmall RNA結合部位とが、同一の塩基配列である、翻訳発現制御システムである。
【0016】
本発明は、さらに別の実施形態によれば、リボソーム結合部位の5’側にsmall RNA結合部位を設け、該small RNA結合部位の5’側にリボソーム結合部位と相補的な塩基配列を設け、該リボソーム結合部位と相補的な塩基配列の5’側に、前記small RNA結合部位と同一の塩基配列を設け、開始コドンの3’側に、small RNAの少なくとも連続した6塩基と同一の配列を設け、該small RNAの少なくとも連続した6塩基と同一の配列の3’側に、蛋白質をコードする塩基配列を設けたmRNAである。このmRNAは、ダブルONスイッチmRNAともいう。
【0017】
本発明は、また別の実施形態によれば、上記ONスイッチmRNAを用いて、small RNAの発現量を検知する工程と、目的蛋白質の翻訳を活性化する工程とを含む、人工情報変換方法である。さらに本発明はまた別の実施形態によれば、上記OFFスイッチmRNAを用いて、small RNAの発現量を検知する工程と、目的蛋白質の翻訳を抑制する工程とを含む人工情報変換方法である。さらには、人工情報変換方法は、同一のsmall RNAに特異的に反応する上記ONスイッチmRNAと、上記OFFスイッチmRNAとの組み合わせを用いて、ONスイッチmRNAがコードする蛋白質の翻訳を活性化すると同時に、OFFスイッチmRNAがコードする蛋白質の翻訳を抑制する工程を含む。
【0018】
本発明は別の実施形態によれば、上記mRNAを内包したリポソームである。
【0019】
本発明は、また別の実施形態によれば、mRNA又はDNAと、無細胞翻訳系とを内包してなるリポソームである。
【0020】
上記リポソームは、油性液体中に、1種以上のリン脂質と、mRNA又はDNAと、無細胞翻訳系と、水性溶液とを混合し、前記mRNA又はDNAと前記無細胞翻訳系とが前記リン脂質小胞に内包されたWOエマルジョンを形成する工程と、水相に外膜脂質を溶解した油性液体を加え、油水の分離界面に前記脂質が並んだ分子膜を形成させる工程と、前記WOエマルジョンを前記分離界面における油相側に加え、前記WOエマルジョンを前記分離界面における水相側に移行させて前記WOエマルションの外側に前記外膜脂質を付加してリポソームを形成する工程とを含む製造方法によって得ることができる。
【0021】
本発明は、また別の実施形態によれば、上記リポソームを形成する工程の後に、前記リポソームを顕微鏡で観察する工程を含むリポソーム内での蛋白質翻訳反応をリアルタイムでモニタリングする方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の効果として、本発明にかかるmRNAによれば、低分子RNAの存在に応答して、所望の遺伝子の翻訳制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】スイッチオフ状態にある第一の実施形態によるmRNAを示す図。
【図2】スイッチオン状態にある第一の実施形態によるmRNAを示す図。
【図3】図3Aは、miRNA164であり、図3Bは、5’miR164 responsive EGFP mRNAの二次構造を示す模式図である。
【図4】5’miR164 responsive EGFPのアッセイを示すグラフである。
【図5】5’miR164 responsive Dsred monomerのアッセイを示すグラフである。
【図6】5’miR171 responsive EGFPのアッセイを示すグラフである。
【図7】5’miR170 responsive EGFPのアッセイを示すグラフである。
【図8】PDMSチャンバーにおける、リポソームの形成を示す模式図である。
【図9】リポソームの形成を模式的に示す図である。
【図10】DNAを内包しないリポソームを1時間静置した。図10Aは、リポソーム内部の蛍光を現す(蛍光なし)写真であり、図10Bは、リポソームが安定に存在することを示す位相差顕微鏡写真である。
【図11】eGFPをコードするDNAを内包し、1時間後にリポソーム内部でのeGFPの発現を確認した。図11(A)は、リポソーム内部の蛍光を現す写真であり、図11Bは、リポソームが存在することを示す位相差顕微鏡写真である。
【図12】図12は、3種類のFeeding solution、0.5mM eggPC溶液、及び2種類のLiposome inside solutionを用いてリポソームを形成させた後、37℃で60分間、インキュベート後の顕微鏡写真である。
【図13】図13は、eGFPをコードするDNAと無細胞翻訳系をリポソームに内包させた時の作動時(0min)と、それから15分毎に、15分(15min)、30分(30min)、45分(45min)、60分(60min)、および135分(135min)後のリポソームの蛍光を示す顕微鏡写真である。
【図14】図14Aは、RNA応答人工RNAスイッチの作動時(0min)、図14Bは、作動60分後(60min)のリポソームの蛍光を示す顕微鏡写真である。
【図15】図15は、スイッチオン状態にある第三の実施形態によるmRNAを示す図である。
【図16】図16は、スイッチオフ状態にある第三の実施形態によるmRNAを示す図である。
【図17】図17Aは、第四の実施形態によるスイッチオフ状態にあるONスイッチmRNAを示し、図17Bは、第四の実施形態によるスイッチオン状態にあるOFFスイッチmRNAを示し、図17Cは、図17AのmRNAと、図17BのmRNAとの両方に特異的に結合するsmall RNAを示す。
【図18】図18Aは、図17AのONスイッチmRNAに、図17Cのsmall RNAを添加した状態を示す。図18Bは、図17BのOFFスイッチmRNAに、図17Cのsmall RNAを添加した状態を示す。
【図19】図19は、第五の実施形態によるスイッチオフ状態にあるダブルONスイッチmRNAを示す。
【図20】図20は、第五の実施形態によるスイッチオン状態にあるダブルONスイッチmRNAを示す。
【図21】図21は、5’miR164応答EGFPスイッチのアッセイを示すグラフである。
【図22】図22は、5’miR156応答EGFPスイッチのアッセイを示すグラフである。
【図23】図23は、5’miR164 responsive Dsred Monomerスイッチのアッセイを示すグラフである。
【図24】図24は、5’miR156 responsive Dsred Monomerスイッチのアッセイを示すグラフである。
【図25】図25は、5’miR164 responsive Dsred Monomerと、5’miR156 responsive EGFPのアッセイを示すグラフである。
【図26】図26は、miR156、anti miR156、及びmiR156 responsive EGFP OFFスイッチを示す図である。
【図27】図27は、miR164、anti miR164、及びmiR164 responsive EGFP OFFスイッチを示す図である。
【図28】図28は、miR156 responsive EGFP OFFスイッチのアッセイを示すグラフである。
【図29】図29は、miR164 responsive EGFP OFFスイッチのアッセイを示すグラフである。
【図30】図30は、miR156、anti miR156、及びmiR156 responsive Dsred Monomer OFFスイッチを示す図である。
【図31】図31は、miR164、anti miR164、及びmiR164 responsive Dsred Monomer OFFスイッチを示す図である。
【図32】図32は、miR156 responsive Dsred Monomer OFFスイッチのアッセイを示すグラフである。
【図33】図33は、miR164 responsive Dsred Monomer OFFスイッチのアッセイを示すグラフである。
【図34】図34は、miR164 responsive EGFP OFFスイッチとmiR164 responsive Dsred Monomer ONスイッチのアッセイを示すグラフである。
【図35】図35は、5’miR156 responsive EGFP ONスイッチ、及びmiR156 responsive Dsred Monomer OFFスイッチに、各濃度のmiR156、miR164を加えたアッセイを示すグラフである。
【図36】図36は、5’miR164 responsive EGFP ONスイッチ、及びmiR164 responsive Dsred Monomer OFFスイッチに、各濃度のmiR164、miR156を加えたアッセイを示すグラフである。
【図37】図37は、miRNA159a、RCmiRNA159a、及びダブルONスイッチmRNAであるmiRNA159a responsive EGFP ONスイッチの二次構造を示す図である。
【図38】図38は、miRNA163、RCmiRNA163、及びダブルONスイッチmRNAであるmiRNA163 responsive EGFP ONスイッチの二次構造を示す図である。
【図39】図39は、miRNA159a responsive EGFP ONスイッチのアッセイを示すグラフである。
【図40】図40は、miRNA163 responsive EGFP ONスイッチのアッセイを示すグラフである。
【符号の説明】
【0024】
1 mRNA
2 リボソーム結合部位
3 small RNA結合部位
4 オープンリーディングフレーム
4a 開始コドンAUG
4b 発現させる蛋白質の遺伝子をコードする塩基配列
5 リボソーム結合部位と相補的な塩基配列
6 small RNA
7 リボソーム
8 small RNA結合部位の一部に相補的に結合する配列
10 PDMSチャンバー
11 EggPC
12 EggPC
13 Feeding Solution
14 エマルジョン
15 Liposome Inside Solution
16 リポソーム
20 リボソーム結合部位
30 small RNAに相補的な配列
40 Dsredをコードする塩基配列
41 オープンリーディングフレーム
41a 開始コドンAUG
41b EGFPをコードする塩基配列41b
50 リボソーム結合部位に相補的な配列
60 small RNA
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を、実施形態を挙げて詳細に説明する。しかし、以下の説明は本発明を限定するものではない。
【0026】
本発明の第一の実施形態によるmRNAは、リボソーム結合部位の5’側にsmall RNA結合部位を設け、該small RNA結合部位の5’側にリボソーム結合部位と相補的な配列を設けたことを特徴とする。図1に示すmRNA1は、リボソーム結合部位2と、small RNA結合部位3と、オープンリーディングフレーム4と、リボソーム結合部位と相補的な配列5とから構成される。
【0027】
[mRNA]
本実施形態によるmRNA1は、リボソーム結合部位2を有し、翻訳機能を有する任意のmRNAであってよく、オープンリーディングフレーム4の配列は特定の配列には限定されない。また、mRNA1の転写効率を高めるために、5’末端にステム・ループ構造(図示せず)を有するmRNAであってもよい。5’末端のステム・ループ構造の例としては、通常知られている構造が挙げられるがこれには限定されない。当業者であれば、常法にしたがって、転写効率を高めるための任意のステム・ループ構造を5’末端に導入することができる。
【0028】
オープンリーディングフレーム4の配列は、所望の蛋白質を発現することができる遺伝子を有するものであってよく、特定の配列に限定されるものではないが、開始コドンを有するものである。例えば、翻訳機能が作用しているかどうかを確認する目的では、蛍光蛋白質をコードする遺伝子を有するオープンリーディングフレーム4を備えるmRNAを用いることができる。蛍光蛋白質としては、eGFP、GFPuv、Dsredなどが挙げられ、これらの配列は一般に知られている。
【0029】
そのほかに、オープンリーディングフレーム4の配列は、特定の医薬物質として働く蛋白質をコードするものであってもよい。具体的には、アポトーシス誘導蛋白質BimやBax、アポトーシス促進型BH3ペプチド及びその改変体などが挙げられるが、これらには限定されない。
【0030】
[small RNA結合部位]
small RNA結合部位3は、特定のsmall RNAに相補的な配列を有する。small RNA(低分子RNA)は、10塩基~80塩基の塩基長を有し、RNAまたは蛋白質と相互作用することで、細胞機能を制御する性質を有するRNAの総称である。本実施形態において、任意の配列、任意の塩基長のsmall RNAを用いることができる。small RNA自体が約37℃付近の温度で、ステム構造を形成しないことが好ましい。
【0031】
small RNAの一例としては、miRNAが挙げられる。miRNAは、マイクロRNAの略称である。miRNAは、蛋白質をコードしない小さなRNA分子であり、発生・分化・増殖など様々な生命現象に関わっていると考えられている。具体的なmiRNAの配列は、Arabidopsis、ヒト、マウスなどの生物において約数百種類が特定されており、それらの配列はmiRbaseなどのデータベースにより既知である。
【0032】
より具体的には、本実施形態においては、Arabidopsis由来のmiRNAである、miR164、miR170、miR171を用いることができるが、これらには限定されない。
【0033】
本実施形態におけるsmall RNA結合部位3は、特定のsmall RNAに相補的な配列とすることができる。または、small RNAの全ての塩基配列に対して相補的でなくとも、少なくとも15塩基以上、好ましくは20塩基以上の塩基に対して相補的であればよい。また、この相補的な配列のうち、1~3の変異があってもよい場合もある。これは、特には、相補的な配列を形成する部位がGCリッチである場合に強固な水素結合を形成することができる場合が挙げられる。
【0034】
small RNA結合部位3は、リボソーム結合部位2の5’側に設けられる。本実施形態において、mRNA1のリボソーム結合部位2の5’側とは、リボソーム結合部位2から1塩基以上15塩基以下離れた個所をいう。好ましくは、リボソーム結合部位2から1塩基以上10塩基以下離れた個所であり、さらに好ましくは、1塩基以上5塩基以下離れた個所である。この範囲は、目的となる基質small RNAに応答した翻訳反応の活性化を達成できる範囲で決定することができる。なお、図1中では、small RNA結合部位3とリボソーム結合部位2との間が線で記載されているが、これはsmall RNA結合部位3とリボソーム結合部位2とが必ずしも隣接している必要はなく、本実施形態において、smallRNA結合部位3とリボソーム結合部位2との間に存在してもよい塩基配列は、特定の塩基配列に限定されるものではない。
【0035】
[リボソーム結合部位と相補的な配列]
mRNA1におけるsmall RNA結合部位3の5’側には、リボソーム結合部位と相補的な配列5を設ける。リボソーム結合部位と相補的な配列5は、同一のmRNA1上にあるリボソーム結合部位2と相補的に結合して、ステム構造を形成させるためのものである。したがって、リボソーム結合部位と相補的な配列5は、具体的には、5’側から、UCUCCUとすることができる。なお、リボソーム結合部位は、AGGAGAに限らず、AGリッチな配列であることが知られているので、リボソーム結合部位に相補的な配列であれば、これに限定されない。なお、リボソーム結合部位と相補的な配列5は、さらに、リボソーム結合部位2の3’側に隣接する約1~10塩基および/または5’側に隣接する約1~10塩基に対しても相補的な配列としてもよい。
【0036】
リボソーム結合部位と相補的な配列5は、small RNA結合部位3の5’側に隣接して設けてもよく、1~10塩基、好ましくは1~5塩基を介して設けてもよい。なお、図1中では、small RNA結合部位3とリボソーム結合部位と相補的な配列5との間が線で記載されているが、これはsmall RNA結合部位3とリボソーム結合部位と相補的な配列5とが必ずしも隣接している必要はなく、本実施形態において、smallRNA結合部位3とリボソーム結合部位と相補的な配列5との間あいだに存在してもよい塩基配列は、特定の塩基配列に限定されるものではない。
【0037】
[RNAスイッチとしての作用]
上記のような特徴を有するmRNA1は、人工RNAスイッチとして作用することができる。すなわち、特定のsmall RNAの存在に応答して、翻訳が始まるように作用することができる。かかる作用を、図面を用いて説明する。本実施形態によるmRNA1は、25~42℃、好ましくは約33~41℃、pHが約6.0~8.5、好ましくはpHが約6.5~8.0のHepes緩衝液中で、特定のsmall RNAの非存在下では、図1に示す構造(スイッチオフ状態)をとっている。すなわち、リボソーム結合部位2は、その5’側にあるリボソーム結合部位と相補的な配列5と相補鎖を形成して、ステム構造を形成している。そのため、リボソームが存在しても、リボソームはリボソーム結合部位2に結合することができない。したがって、mRNA1による翻訳は行われない。そして、このとき、small RNA結合部位3は、図示するように、ループ構造を形成している。
【0038】
次に、mRNAが、25~42℃、好ましくは33~41℃付近、pHが約6.0~8.5、好ましくは約6.5~8.0のHepes緩衝液中で、上記図1に示す構造をとっている状態で、mRNAに対して0.25~20倍(モル)のsmall RNA6を添加する。このsmall RNA6は、上記small RNA結合部位3に相補的な配列を有するものである。miRNA6の存在する状態を図2に示す。図2中では、small RNA6が、small RNA結合部位3に相補的に結合し、この結合により、リボソーム結合部位2におけるステム構造が崩れて、リボソーム結合部位2は、リボソーム7により結合可能な状態となる。そして、リボソーム7が存在する場合には、mRNA1の翻訳が開始され(スイッチオン)、特定の蛋白質がつくられる。
【0039】
さらに、mRNAの量に対して、small RNAの添加量を変化させることで、添加量依存的な翻訳制御が可能になる。また、small RNAのアンチセンスを加えれば、再び翻訳をOFFにすることができる。
【0040】
上記作用に鑑みれば、第一の実施形態によるmRNAを用いて、mRNAの翻訳制御方法をも提供することができ、かかる方法は、mRNAと、small RNA結合部位に相補的に結合するsmall RNAとを混合することによる。また、上記mRNAと、small RNA結合部位に相補的に結合するsmall RNAとを混合することによるmRNAの翻訳制御方法を提供することもできる。さらに、上記mRNAを含んでなる、翻訳発現制御システムとすることもできる。この場合、small RNAをも含むシステムとすることが好ましい。さらには、上記mRNAを用いて、small RNAの発現量を検知する工程と、目的蛋白質の翻訳を活性化する工程とを含む、人工情報変換方法とすることもできる。人工情報変換方法においては、第一の実施形態によるmRNAの特性により、small RNAが発現する系においては、small RNAの存在量、すなわち発現量に応じて、目的蛋白質の翻訳が活性化され、蛋白質が発現される。このように、small RNAによる「入力」を、蛋白質による「出力」に情報変換することができる。
【0041】
第一の実施形態によるmRNAは、small RNAの存在、及びその存在量に応答して遺伝子の翻訳を行うことができる。また、生体細胞内で、small RNAの発現量が生体反応に応じて変化することが知られているが、本実施形態によるmRNAを用いることにより、small RNAの発現量の変化を検出できるという利点を有する。
【0042】
次に、本発明は、第二の実施形態によれば、mRNA又はDNAと、無細胞翻訳系とを内包したリポソームである。また、mRNA又はDNAと、無細胞翻訳系とを内包したリポソームの製造方法であって、油性液体中に、1種以上のリン脂質と、mRNA及び/又はDNAと、蛋白質類を含む無細胞翻訳系と、水性溶液とを混合し、前記無細胞翻訳系が前記リン脂質小胞に内包されたWOエマルジョンを形成する工程と、水相に外膜脂質を溶解した油性液体を加え、油水の分離界面に前記脂質が並んだ分子膜を形成させる工程と、前記WOエマルジョンを前記分離界面における油相側に加え、前記WOエマルジョンを前記分離界面における水相側に自発的に移行させて前記WOエマルションの外側に前記外膜脂質を付加してリポソームを形成する工程とを含む。
【0043】
リポソームに内包させるmRNA又はDNAは、任意のオープンリーディングフレームをもつmRNA、またはmRNAの配列をコードするDNAであってよい。したがって、上記第一実施形態によるmRNAであってもよい。リポソーム内で、任意の蛋白質を発現させるものであればよい。また、二種以上の蛋白質を発現させることが好ましい場合には、二種以上の別のDNAや、mRNAとDNAとの組み合わせを用いることもできる。
【0044】
リポソームに内包させる無細胞翻訳系とは、細胞外で、上記mRNA又はDNAを発現させることができる組成物であって、リボソーム、複数種類の蛋白質因子、アミノ酸および緩衝液などから構成される。一例として、酵素類、大腸菌リボソーム、アミノアシルtRNA合成酵素(20種類)、T7RNAポリメラーゼ、buffer類(最終濃度で、50mM Hepes-KOH,pH7.6,100mM K-Glu、2mM spermidine、13mM Mg(OAc)2、1mM DTT、0.3mM each 20アミノ酸、56OD/ml tRNAmix、10mg/ml 10-formyl-5,6,7,8-tetrahydrofolic acid、2mM ATP、2mM GTP、1mM UTP、1mM CTP、20mM CP)を挙げることができるが、これらには限定されない。無細胞翻訳系に含まれる具体的な構成要素は、Shimizu et. al. Methods 36 (2005) 299-304に詳細に記載されており、当業者であれば、かかる文献に基づいて無細胞翻訳系を構成することができる。特に、精製された蛋白質から構成される無細胞翻訳系が好ましい。精製された蛋白質から構成される無細胞翻訳系では、RNaseが少なく、RNAの分解等が少ないことや、構成要素が明確であるため、本実施形態による、人工細胞システムを構成しうるリポソームにおいて好適に用いられる。
【0045】
上記mRNAを内包したリポソームは、引用することにより本明細書の一部をなすものとするPCT/JP2006/317517の記載およびLangmuir 2006, 22,9824-9828の記載に基づいて製造することができる。
【0046】
具体的には、油性液体中に、eggPC(卵由来のホスファチジルコリン)または、ホスファチジルセリン及びその誘導体、並びにホスファチジルエタノールアミン及びその誘導体から選択される脂質と、mRNA、またはmRNAの配列をコードするDNAと、miRNAと、蛋白質類を含む無細胞翻訳系と、水性溶液とを混合し、WOエマルジョンを形成する。次に、水相に、eggPCまたは、ホスファチジルセリン及びその誘導体、並びにホスファチジルエタノールアミン及びその誘導体から選択される外膜脂質を溶解した油性液体を加え、油水の分離界面に外膜脂質が並んだ分子膜を形成させる。
【0047】
ここで、内膜リン脂質の油性液体中の濃度が、0.5mM~0.75mMであるように配合することが好ましい。内膜リン脂質として2種以上を用いる場合は、それらの合計濃度を上記範囲とすることが好ましい。また、油性液体と水性液体との配合比率を、体積比で(水性液体/油性液体)=1/1000~1/10となるようにすることが好ましい。
【0048】
油性液体は、内膜リン脂質を安定に分散させるものであれば特に制限されることはなく、例えば、鉱物油(ミネラルオイル)を用いることができる。水性液体は特に制限されないが、上記mRNAを含有させ、所望の反応を生じさせるために必要な特性を有する液体、例とすることができる。
【0049】
リポソーム中を適切な状態、具体的には、収縮や破裂を起こさない状態で保つための浸透圧の条件は、リポソームの外圧を、内圧よりも少し小さい状態に保つことが好ましい。
【0050】
このように、リポソーム内に、mRNA、またはmRNAの配列をコードするDNAと、miRNAと、蛋白質類を含む無細胞翻訳系とを内包させることで、リポソーム内で翻訳制御または人工情報変換を行うことができ、人工細胞システムを構築することが可能になる。また、同様に、リポソーム内に、mRNA、またはmRNAの配列をコードするDNAと、蛋白質類を含む無細胞翻訳系とを内包させることで、リポソーム内で翻訳反応を構築することが可能になる。
【0051】
上記方法により得られた、無細胞翻訳系を含むリポソームは、上記工程を経て形成されたときに、油と水の界面にリポソームが集合する傾向がある。このため、顕微鏡上で、焦点の合った多くのリポソームが同時に検出できる。かかる点を利用して、本実施形態の変形形態によれば、リポソーム内での蛋白質翻訳反応をリアルタイムでモニタリングする方法であって、リポソームを形成する工程の後に、前記リポソームを顕微鏡で観察する工程を含む。かかるモニタリング方法によれば、リポソーム内での翻訳スイッチのオンオフをリアルタイムでモニタリングすることができるという利点がある。
【0052】
このように、本発明の第二の実施形態によれば、全てのリポソームに翻訳反応系を内包できるという利点がある。また、リポソームが油と水の界面にとどまるため、顕微鏡上で複数リポソームの焦点の定まった像を取得できる。従って、複数リポソーム内部での翻訳反応をリアルタイムでモニタリングすることも可能になる。
【0053】
人工RNAスイッチによる翻訳制御システムの構築及びそれらのリポソームへの導入法を示す。本手法は特定のRNAに応答して構造変化を起こし、遺伝子の翻訳反応を制御する人工RNAスイッチシステムの構築とこの人工RNAスイッチをリポソームへと導入し、リポソーム内で翻訳反応の制御を行う技術である。以下具体的実験例を挙げる。人工RNAスイッチシステムの構築の概略は、入力基質(small RNAなど)が、mRNA上流に挿入した「基質RNA認識RNAモチーフ」に結合し、基質とRNAモチーフの結合がmRNA翻訳開始領域の構造変化を誘導し、リボソームとmRNAの結合により、目的蛋白質(GFPなど)翻訳の制御が可能になる、というものである。
【0054】
次に、本発明は、第三の実施形態によれば、mRNAであって、開始コドンの3’側にsmall RNA結合部位を設けたものである。本実施形態によるmRNAは、small RNAに応答して、翻訳をONからOFFへと制御するOFFスイッチ型のmRNAとして機能させることができる。
【0055】
図15に、本実施形態に係るmRNAの模式図を示す。図15に示すmRNAでは、開始コドンAUG(4a)の3’側に、small RNA結合部位3が隣接している。small RNA結合部位3の3’側には、発現させる蛋白質の遺伝子をコードする塩基配列4bが隣接している。すなわち、このmRNAにおいて、オープンリーディングフレームは、5’側から順に、開始コドンAUG(4a)、small RNA結合部位3、発現させる蛋白質の遺伝子をコードする塩基配列4bで構成される。
【0056】
本実施形態において、small RNAは、第一実施形態において説明した任意のsmall RNAであってよい。以下の説明においては、miRNAをsmall RNAとして用いる場合について説明する。small RNA結合部位3は、miRNAに相補的な配列である。目的のmiRNAに相補的に結合する限り、相補的な配列のうち、1~3の変異があってもよい場合もある。これは、特には、相補的な配列を形成する部位がGCリッチである場合に強固な水素結合を形成することができる場合が挙げられる。本実施形態において、図示したmRNAにおいては、開始コドンAUG(4a)の3’側に、別の塩基を介することがなく、small RNA結合部位3が隣接している。しかし、開始コドンAUG(4a)とsmall RNA結合部位3との間には、別の塩基が存在することもできる。具体的には、3塩基、6塩基、9塩基程度の比較的短い、3の倍数の塩基が存在することもできる。3の倍数の塩基とするのは、翻訳の読み枠をずらさないためである。
【0057】
発現させる蛋白質の遺伝子をコードする塩基配列4bは、任意の蛋白質の遺伝子をコードする塩基配列であってよい。例えば、マーカーとして機能する蛍光蛋白質、具体的には、DsRedやEGFPが挙げられるが、これらには限定されない。図示したmRNAにおいては、small RNA結合部位3の3’側に、別の塩基を介することがなく、蛋白質の遺伝子をコードする塩基配列4bが隣接している。しかし、small RNA結合部位3の塩基数が3の倍数ではない場合には、small RNA結合部位3と蛋白質の遺伝子をコードする塩基配列4bとの間に、1つまたは2つの塩基を挿入する。これは、蛋白質の読み枠がずれないようにするためである。また、small RNA結合部位3の塩基数が3の倍数であっても、small RNA結合部位3と、蛋白質の遺伝子をコードする塩基配列4bとの間には、別の塩基が存在することもできる。具体的には、3塩基、6塩基、9塩基程度の比較的短い、3の倍数の塩基が存在することもできる。
【0058】
図15に示すmRNAにおいては、開始コドンAUGの5’側に、リボソーム結合部位を明記していないが、リボソーム結合部位は存在していてもよく、真核細胞生物のmRNAの場合には存在しなくてもよい。
【0059】
本発明の第三実施形態による上記構成を有するmRNAは、特定のsmall RNAの存在下で、OFFスイッチ型のmRNAとして機能する。このようなmRNAの機能について以下に説明する。
特定のsmall RNA、すなわち、第三実施形態によるmRNAに特異的に結合するmiRNA6の非存在下において、25~42℃、pH6~8.5の条件下で、上記mRNAは、翻訳されて、N末端に、miRNAがコードするアミノ酸が付着している所望の蛋白質を生ずる。ここへ、miRNA6を添加すると、miRNA6は、その特異的に結合する配列(small RNA結合部位3)を持つように設計された上記mRNAと、相補二重鎖を形成して、特異的に結合する。このときの分子の模式図を図16に示す。その結果、リボソームによるmRNAの翻訳が阻害され、蛋白質の発現が抑制されることになる。
【0060】
このように、本実施形態によるmRNAと、これに特異的に結合するsmall RNAとを用いることにより、蛋白質の翻訳のONからOFFへの制御が可能になる。よって、第三実施形態の変形形態として、上記構成を有するmRNAと、これに特異的に結合するsmall RNAとを含む翻訳発現制御システム、または、mRNAと、small RNA結合部位に相補的に結合するsmall RNAとを混合することによるmRNAの翻訳制御方法が挙げられる。
この実施形態の応用形態としては、Pureシステム内での翻訳制御を達成することができ、人工シグナル細胞のツールとして有用である。
さらに、人工情報変換方法においては、第三の実施形態によるmRNAの特性により、small RNAが発現する系においては、small RNAの存在量、すなわち発現量に応じて、目的蛋白質の翻訳が抑制され、蛋白質が発現されなくなる。このように、small RNAによる「入力」を、蛋白質による「出力」に情報変換することができる。
【0061】
次に、本発明の、第四の実施形態について説明する。本発明の第四の実施形態は、人工翻訳システムに関する。具体的には、第一の実施形態に記載のONスイッチmRNAと、第三実施形態に記載のOFFスイッチmRNAと、これらの両方に特異的に結合するsmall RNAとを含む、人工翻訳システムに関する。
【0062】
本実施形態に係る人工翻訳システムを構成する、ONスイッチmRNAの模式図を図17(A)に、OFFスイッチmRNAの模式図を図17(B)に、small RNAの模式図を図17(C)に示す。本実施形態においては、ONスイッチmRNAが発現する蛋白質がDsred、OFFスイッチmRNAが発現する蛋白質がEGFPである場合について例示するが、発現する蛋白質の組み合わせは、例示であって、本発明を限定するものではない。
【0063】
本実施形態のONスイッチmRNAは、図示するように、リボソーム結合部位20の3’側に隣接してDsredをコードする塩基配列40を備え、リボソーム結合部位の5’側に、small RNAに相補的な配列30を備える。さらに、その5’側には、リボソーム結合部位に相補的な配列50を備える。そして、このONスイッチmRNAはsmall RNA60の非存在下では、図17(A)に示すように、ステム-ループ構造を形成している。そしてこのとき、リボソーム結合部位20が遮蔽されている。このため、この状態のONスイッチmRNAは、翻訳可能な条件下においても、翻訳が進行せず、Dsredが産生されない。
【0064】
いっぽう、本実施形態のOFFスイッチmRNAは、図17(B)示すように、開始コドンAUG(41a)の3’側に隣接して、small RNA60に相補的な配列30を備える。small RNA60に相補的な配列30の3’側には、EGFPをコードする塩基配列41bを備える。また、開始コドンAUG(41a)の5’側には、リボソーム結合部位が存在する場合もあり(図示せず)、存在しない場合もある。このようなOFFスイッチmRNAは、small RNA60の非存在下、翻訳可能な条件下において、翻訳が進行し、蛋白質EGFPが産生される。
【0065】
図17(C)示すsmall RNA60は、ONスイッチmRNA、OFFスイッチmRNAの双方において、small RNA60に相補的な配列30に、特異的に結合して相補鎖を形成することが可能な配列からなる。
【0066】
次に、上記ONスイッチmRNA、OFFスイッチmRNA、及びsmall RNA60が共存する場合のそれぞれの分子の状態を図18に模式的に示す。図18(A)に示すONスイッチmRNAは、図17(A)でループを形成していた配列30に、small RNA60が特異的に結合して相補鎖を形成している。その結果、ステム-ループ構造が崩壊して、リボソーム結合部位20には、リボソームが結合可能な状態になっている。いっぽう、図18(B)に示すOFFスイッチmRNAでは、開始コドンの直下にある配列30に、small RNA60が特異的に結合して相補鎖を形成している。その結果、図18(B)に示すOFFスイッチmRNAでは、翻訳が進行できない状態になっている。
【0067】
図18(A)に示すこのような状態においては、ONスイッチmRNAには、リボソームが結合可能であり、翻訳が可能な状態である。よって、リボソームが存在して、そのほかの条件が整えば、オープンリーディングフレーム40中の遺伝子が発現され、Dsredが産生される。いっぽう、OFFスイッチmRNAでは、開始コドンの直下で、二本鎖が形成されているため、mRNAの翻訳が不可能である。その結果、配列41bがコードするEGFPの生産はされないことになる。
【0068】
このように、第四実施の形態によれば、同一のsmall RNAの存在に応答して、別の挙動をする二つのmRNAをスイッチとして用いることができる。
この実施形態の応用形態としては、Pureシステム内での翻訳制御を達成することができ、人工シグナル細胞のツールとして有用である。
さらに、人工情報変換方法においては、第四の実施形態によるONスイッチmRNA及びOFFスイッチmRNAの特性により、small RNAが発現する系においては、small RNAの存在量、すなわち発現量に応じて、ONスイッチmRNAがコードする目的蛋白質の翻訳が活性化され、蛋白質が発現される。同時に、small RNAの存在量、すなわち発現量に応じて、OFFスイッチmRNAがコードする別の目的蛋白質の翻訳が抑制され、蛋白質が発現されなくなる。このように、small RNAによる「入力」を、二つの異なる蛋白質による別々の「出力」に情報変換することができる。
【0069】
次に、本発明の、第五の実施形態について説明する。第五の実施形態は、mRNAであって、small RNAの添加に対し、ONスイッチとして機能するmRNAである。本実施形態によるmRNAを、ダブルONスイッチmRNAという。
【0070】
図19に、本実施形態に係るmRNAの二次構造を模式的に示す。本実施形態に係るmRNAは、5’側から順に、small RNA結合部位3、リボソーム結合部位に相補的な配列5、small RNA結合部位3、リボソーム結合部位2、オープンリーディングフレーム4を備える。オープンリーディングフレーム4は、5’側から順に、開始コドンAUG4a、small RNA結合部位3の一部に相補的に結合する配列8、発現させる蛋白質の遺伝子をコードする塩基配列4bを備える。
ここで、small RNA結合部位3は、特定のsmall RNAと逆相補鎖を形成する塩基配列とすることができる。目的のsmall RNAに相補的に結合する限り、相補的な配列のうち、1~3の変異があってもよい場合もある。また、二つのsmall RNA結合部位3は、同一の配列であることが好ましい。
【0071】
small RNA結合部位3の一部に相補的に結合する配列8は、特定のsmallRNAの少なくとも連続した6塩基と同一の配列を有する。連続した塩基数は、好ましくは、6塩基以上であって、small RNAの塩基数以下の3の倍数である。具体的には、6塩基、9塩基、12塩基、15塩基、18塩基程度とすることが好ましいが、これらには限定されない。このような構成とする理由は、small RNAと相補鎖を形成するとともに、発現させる蛋白質の読み枠がずれないようにするためである。なお、small RNA結合部位3の一部に相補的に結合する配列8が、特定のsmallRNAと同一の配列と、それ以外の配列とから構成される場合にも、配列8の塩基数は3の倍数である。
【0072】
図19に示すmRNAは、特定のsmall RNAの非存在下で、図示するように、ステム-ループ構造を形成している。このとき、ステムの部分では、リボソーム結合部位に相補的な配列5とリボソーム結合部位2とが形成する第一の相補鎖部分と、small RNA結合部位3と、small RNA結合部位3の一部に相補的に結合する配列8とが形成する第二の相補鎖部分とが存在する。そして、リボソーム結合部位2は、相補鎖の形成により、遮蔽されている。そのため、リボソームが存在しても、リボソームはリボソーム結合部位2に結合することができない。よって、この状態のダブルONスイッチmRNAは、翻訳可能な条件下においても、翻訳が進行せず、配列4bがコードする蛋白質が産生されることがない。
第五実施形態にかかるmRNAにおいて、第一の相補鎖部分と、第二の相補鎖部分とが存在する利点は、二つの相補鎖の作用により、特定のsmall RNAの非存在下で、安定なOFF状態を形成でき、small RNAの存在下で、効率よくON状態を形成できる点である。
次に、図20に、上記mRNAと、特定のsmall RNA6とを共存させた場合の、mRNAの二次構造を模式的に示す。ここでは、特定のsmall RNA6が、mRNA上の二つのsmall RNA結合部位3の両方に特異的に結合して、相補鎖を形成している。その結果、ステム-ループ構造が崩壊して、リボソーム結合部位2の遮蔽が外れている。よって、リボソームが存在して、そのほかの条件が整えば、翻訳が進行し、塩基配列4bがコードする蛋白質が生産されることとなる。
【0073】
このように、第五実施の形態によれば、small RNAの結合部位の配列により、mRNA構造が安定なOFF状態とON状態を形成できない場合、第一の相補鎖部分と、第二の相補鎖部分の協調的作用により、効率のよいOFFからONへのスイッチを作成できるという利点が存在する。
【実施例1】
【0074】
[Original EGFP及びRNA応答人工RNAスイッチの作製]
Original EGFP並びにRNA応答人工RNA(EGFP)は、pEGFP(clontech社製)より、2回または3回のPCRを行い作製した。(EGFP 配列番号1)またここに出てくるプライマーはすべて北海道システムサイエンスにより合成されたものである。
【0075】
[Original EGFPの作成]
pEGFPをテンプレート、プライマーとしてEGFP fwd(配列番号2)、EGFP rev(配列番号3)を用いて1st PCRを行った。50μL反応液には、pEGFP 25ng 各10μM DNAプライマー 1.5μL、2 mM dNTPsを5μL、10×KOD-PLUS-buffer ver.2 5μL、25mM MgSO 2μL KOD-PLUS-DNA polymerase 1μLが混合してあり、初めに94℃ 2分インキュベートした後、94℃ 15秒、50℃ 30秒、68℃ 1分を20サイクルで行った。以下すべて同じPCR条件で行っているのでテンプレートとプライマーだけ今後は示す。
【0076】
反応後、フェノール処理、エタノール沈殿を行い、非変性色素(30%グリセリン、0.075%キシレンシアノール、0.075%ブロモフェノールブルー、69.85%超純水)に溶解し、低融点アガロースSEA PLAQUE GTG AGAROSE(FMC)で分離、目的のバンドを切り出した。切り出したアガロース断片にTE 200μL加え65℃ 30minインキュベートした後フェノール処理を3回、ジエチルエーテル処理、エタノール沈殿を行い、DNAを精製した。(EGFP 1st PCR、配列番号4)。次にEGFP 1st PCRをテンプレート、プライマーとしてUniversal primer(配列番号5)EGFP revを用いて2nd PCRを上記と同じの方法で行った。反応後、上記と同じ方法で分離、精製を行い、超純水に溶解してDU640 SPECTROPHOTOMETER(BECKMAN製)を用いて濃度測定を行った。これがOriginal EGFP template(配列番号6)である。Original EGFP templateを鋳型としてMEGAshortscript(商標)(Ambion製)を用いて転写反応を行った。MEGAshortscriptを用いた転写反応は以下の通りである。超純水に溶解した鋳型DNA 1μg、T7 10×Reaction Buffer 2μL、T7 ATP Solution (75mM) 2μL(CTP、GTP、UTPに関しても同様)、T7 Enzyme Mix 2μLを混合し,超純水で全20μLにした反応液を37℃で4時間から一晩反応させた。反応後は、TURBO DNase 1μL加え、37℃で15分インキュベートし、鋳型DNAを分解させた。転写反応によって得られたOriginal EGFP mRNA(配列番号7)をRneasy MinElute(商標) Cleanup Kit(QIAGEN)を用いて精製した。Rneasy MinElute(商標) Clean up Kitを用いた精製は以下の通りである。
【0077】
転写反応液に、超純水80μLを加え100μLとし、さらにBuffer RLT 350μLを添加して十分に混和した。250μLのエタノールを添加し、ピペッティングにより完全に混和した。2mLコレクションチューブにセットしたRNeasy MinElute Spin Columnに上記サンプルをアプライし微量高速冷却遠心機MX-100(TOMY製)を用いて、10,000rpm、15秒間遠心し、フロースルーは捨てた。スピンカラムを新しい2mlコレクションチューブ上に移し、スピンカラム上に500μLのBuffer RPEをピペットで添加した。10,000rpmで15秒間遠心しフロースルーは捨てた。RNeasy MinElute Spin Columnに500μLの80%エタノールを添加、10,000rpmで2分間遠心しフロースルーは捨てた。RNeasy MinElute Spin Columnを新しい2mlコレクションチューブに移し、スピンカラムのキャップを開け、14,000rpmで5分間遠心、フロースルーは捨てた。スピンカラムを新しい1.5mlコレクションチューブに移し、シリカゲルメンブレンの真ん中に20μLの超純水を加え、14,000 rpmで5分間遠心して溶出した。この溶出液をDU640 SPECTROPHOTOMETERを用いて濃度測定を行った。
【0078】
[RNA応答人工RNA(5’miR164 responsive EGFP)の作成]
EGFP 1st PCRをテンプレート、プライマーとして、5’UTR-miRNA164 fwd(配列番号8)とEGFP revを用いて2nd PCRを上記と同じの方法で行った。反応後、上記と同じ方法で分離、精製を行ったものが5’miR164 responsive EGFP 2nd PCR(配列番号9)である。次に5’miR164 responsive EGFP 2nd PCRをテンプレート、プライマーとしてT7-stem-loop uni(配列番号10)とEGFP revを用いて3rd PCRを上記と同じの方法で行った。反応後、上記と同じ方法で分離、精製を行い、超純水に溶解してDU640 SPECTROPHOTO METERを用いて濃度測定を行った。これが5’miR164 responsive EGFP template(配列番号11)である。5’miR164 responsive EGFP templateを鋳型として、MEGAshortscript(商標)を用いて上記と同じ方法で転写反応を行った。転写反応によって得られた5’miR164 responsive EGFP mRNA (配列番号12)を上記と同じ方法でRneasy MinElute(商標) Cleanup Kitを用いて精製、濃度測定を行った。図3Bは、5’miR164 responsive EGFP mRNAの二次構造を示す模式図であり、図3Aは、miRNA164を示す図である。
【0079】
[RNA応答人工RNA(5’miR164 responsive Dsred-Monomer)の作成]
RNA応答人工RNA(Dsred-Monomer)は、pDsred-Monomer(clontech社製)より、3回PCRを行い作製した(Dsred-Monomer 配列番号13)。pDsred-Monomerをテンプレート、プライマーとして、Dsred-Monomer fwd(配列番号14)と、Dsred-Monomer rev(配列番号15)を用いて1st PCRを上記と同じの方法で行った。反応後、上記と同じ方法で分離、精製を行ったものがDsred-Monomer 1st PCR(配列番号16)である。次にDsred-Monomer 1st PCRをテンプレート、プライマーとして、5’UTR-miRNA164 fwdと、Dsred-Monomer revを用いて2nd PCRを上記と同じの方法で行った。反応後、上記と同じ方法で分離、精製を行ったものが5’miR164 responsive Dsred-Monomer 2nd PCR(配列番号17)である。さらに、5’miR164 responsive Dsred-Monomer 2nd PCRをテンプレート、プライマーとして、T7-stem-loop uniとDsred-Monomer revを用いて3rd PCRを上記と同じの方法で行った。反応後、上記と同じ方法で分離、精製を行い、超純水に溶解してDU640 SPECTROPHOTO METERを用いて濃度測定を行った。これが5’miR164 responsive Dsred-Monomer template (配列番号18)である。5’miR164 responsive Dsred-Monomer templateを鋳型としてMEGAshortscript(商標)を用いて上記と同じ方法で転写反応を行った。転写反応によって得られた5’miR164 responsive Dsred-Monomer mRNA (配列番号19)を上記と同じ方法でRneasy MinElute(商標) Cleanup Kitを用いて精製、濃度測定を行った。
【0080】
[RNA応答人工RNA(5’miR170 responsive EGFP)の作成]
EGFP 1st PCRをテンプレート、プライマーとして、5’UTR-miRNA170 fwd(配列番号20)とEGFP revを用いて2nd PCRを上記と同じの方法で行った。反応後、上記と同じ方法で分離、精製を行ったものが5’miR170 responsive EGFP 2nd PCR(配列番号21)である。次に、5’miR170 responsive EGFP 2nd PCRをテンプレート、プライマーとして T7-stem-loop uniとEGFP revを用いて3rd PCRを上記と同じの方法で行った。反応後、上記と同じ方法で分離、精製を行い、超純水に溶解してDU640 SPECTROPHOTOMETERを用いて濃度測定を行った。これが5’miR170 responsive EGFP template(配列番号22)である。5’miR170 responsive EGFP templateを鋳型としてMEGAshortscript(商標)を用いて上記と同じ方法で転写反応を行った。転写反応によって得られた5’miR170 responsive EGFP mRNA (配列番号23)を上記と同じ方法でRneasy MinElute(商標) Cleanup Kitを用いて精製、濃度測定を行った。
【0081】
[RNA応答人工RNA(5’miR171 responsive EGFP)の作成]
EGFP 1st PCRをテンプレート、プライマーとして、5’UTR-miRNA171 fwd(配列番号24)とEGFP revを用いて2nd PCRを上記と同じの方法で行った。反応後、上記と同じ方法で分離、精製を行ったものが5’miR171 responsive EGFP 2nd PCR(配列番号25)である。次に、5’miR171 responsive EGFP 2nd PCRをテンプレート、プライマーとして、T7-stem-loop uniとEGFP revを用いて3rd PCRを上記と同じの方法で行った。反応後、上記と同じ方法で分離、精製を行い、超純水に溶解してDU640 SPECTROPHOTOMETERを用いて濃度測定を行った。これが、5’miR171 responsive EGFP template (配列番号26)である。5’miR171 responsive EGFP templateを鋳型として、MEGAshortscript(商標)を用いて上記と同じ方法で転写反応を行った。転写反応によって得られた5’miR171 responsive EGFP mRNA(配列番号27)を上記と同じ方法でRneasy MinElute(商標) Cleanup Kitを用いて精製、濃度測定を行った。
【実施例2】
【0082】
[RNA応答人工RNAスイッチの無細胞発現系を用いた翻訳制御アッセイ。]
RNA応答人工RNAスイッチの翻訳制御を確認するために無細胞発現システムである、Pure systemを用いた。Pure system、はSolutionAとSolutionBで構成される。今後単にSolutionA,Bと表記する。SolutionAの組成は100mM Hepes-KOH (pH7.6)、200mM L-Glutamic acid Monopotassium salt、4mM spermidine、26mM Mg(OAc)2、2mM DTT、112OD/ml tRNA mix、20μg/ml 10-formyl-5,6,7,8-tetrahydrofolic acid、4mM ATP、4mM GTP、2mM CTP、2mM UTP、40mM creatine phosphate、0.6mM 20 amino acidsであり、SolutionBは主に転写翻訳に必要な蛋白質である、T7RNA polymerase、IF1、IF2、IF3、EF-G、EF-Tu、EF-Ts、RF1、RF2、RF3、RRFなどで構成されている。以下に各RNA応答人工RNAスイッチのアッセイ法と結果を示す。
【0083】
[5’miR164 responsive EGFPのアッセイ]
5’miR164 responsive EGFP 20μM 1μL,超純水 1μL,SolutionA 5μL,SolutionB 2μLを混合したものを5本用意し、合成したmiRNA164(北海道システムサイエンス 配列番号29)40μM,20μM,10μM,5μM,0μMを、1μLずつ、それぞれ別個の溶液に加え、全量を10μLとし、37℃で75分間で反応させた。反応後、超純水で200μLにし、infinite F200(TECAN製)を用いて、励起波長485nm、吸収波長535nmで測定した(図4)。
【0084】
ネガティブコントロールとして、5’miR164 responsive EGFP 20μM 1μL,超純水 1μL,SolutionA 5μL,SolutionB 2μLを混合したものを5本用意し、合成したmiRNA163(北海道システムサイエンス 配列番号 28)40μM,20μM,10μM,5μM,0μMを、1μLずつ、それぞれ別個の溶液に加え、全量を10μLとし、37℃で75分間で反応させた。反応後、超純水で200 μLにし、infinite F200(TECAN)を用いて、励起波長485nm、吸収波長535nmで測定した(図4)。このアッセイによりこのRNA応答人工RNAスイッチ(5’miR164 responsive EGFP)が、miRNA164に特異的に反応し、翻訳制御が起きていることが確認された。
【0085】
[5’miR164 responsive Dsred-Monomerのアッセイ]
5’miR164 responsive Dsred-Monomer 10μM 1μL,超純水 1μL,SolutionA 5μL,SolutionB 2μLを混合したものを4本用意し、miRNA164 40μM,20μM,10μM,0μMを1μLを、それぞれ別個の溶液に加え、全量を10μLとし、37℃で75分間で反応させた。反応後、超純水で200μLにし、infinite F200(TECAN製)を用いて、励起波長535nm、吸収波長595nmで測定した(図5)。このアッセイにより、これらのRNA応答人工RNAスイッチ(5’miR164 responsive EGFP,5’miR164 responsive Dsred-Monomer)はオープンリーディングフレームの配列に依存しないことが分かった。
【0086】
[5’miR171 responsive EGFPのアッセイ]
5’miR171 responsive EGFP 2μM 1μL,超純水 1μL,SolutionA 5μL,SolutionB 2μLを混合したものを3本用意し、合成したmiRNA171(北海道システムサイエンス 配列番号31)40μM, 10μM,0μMを、1μLずつ、それぞれ別個の溶液に加え、全量を10μLとし、37℃で75分間反応させた。反応後、超純水で200μLにし、infinite F200(TECAN製)を用いて、励起波長485nm、吸収波長535nmで測定した(図6)。コントロールとして、5’miR171 responsive EGFP 2μM 1μL,超純水 1μL,SolutionA 5μL,SolutionB 2μLを混合したものを6本用意し、合成したmiRNA170(北海道システムサイエンス 配列番号30)又はmiRNA163又はmiRNA164 40μM,10μMを、1μLずつ、それぞれ別個の溶液に加え、全量を10μLとし、37℃ 75分間で反応させた。反応後、超純水で200μLにし、infinite F200(TECAN)を用いて、励起波長485nm、吸収波長535nmで測定した。(図6)このアッセイによりこのRNA応答人工RNAスイッチ(5’miR171 responsive EGFP)がmiRNA171に特異的に反応し、2塩基しか違わないmiRNA170とも翻訳効率に差が出ることが確認された。
【0087】
[5’miR170 responsive EGFPのアッセイ]
5’miR170 responsive EGFP 2μM 1μL,超純水 1μL,SolutionA 5μL,SolutionB 2μLを混合したものを3本用意し、miRNA170 10μM,5μM,0μMを、1μLずつ、それぞれ別個の溶液に加え、全量を10μLとし、37℃ 75分間で反応させた。反応後、超純水で200μLにし、infinite F200(TECAN製)を用いて、励起波長485nm、吸収波長535nmで測定した(図7)。コントロールとして5’miR170 responsive EGFP 2μM 1μL,超純水 1μL,SolutionA 5μL,SolutionB 2μLを混合したものを3本用意し、合成したmiRNA171 10μM,5μM,0μMを、1μLずつ、それぞれ別個の溶液に加え、全量を10μLとし、37℃ 75分間で反応させた。反応後、超純水で200μLにし、infinite F200(TECAN製)を用いて、励起波長485nm、吸収波長535nmで測定した(図7)。このアッセイにより、このRNA応答人工RNAスイッチ(5’miR170 responsive EGFP)がmiRNA170に特異的に反応し、2塩基しか違わないmiRNA171とも翻訳効率に差が出ることが確認された。
【実施例3】
【0088】
[遺伝子と無細胞発現系を内包するリポソームの調整及び発現の確認]
[遺伝子と無細胞発現系を内包するリポソームの調整法]
L-α-Phosphatidyl choline(Egg,Chicken)(Avanti製)を、メタノール:クロロホルム=1:2溶液に溶解し、10mM eggPC有機溶液とした。ダーラム管(マルエム製)に10mM eggPC溶液 25~37.5μLを入れて窒素ガス(太陽日酸製)を吹き付けてメタノール:クロロホルム溶液を蒸発させ、脂質フィルムを形成した。脂質フィルムを形成したダーラム管をアルミホイルに包み、デシケーターに入れてダイアフラム型ドライ真空ポンプDA-40S(ULVAC製)を用いて10分間真空に引いた。その後ミネラルオイル(ナカライ製)500μLを加え、パラフィルムで封をして、超音波洗浄器 US-1KS(SND製)を用いて50℃ 60分ソニケーションを行った。ソニケーション後ただちにVortexで20秒間振動させた。このようにして調整したものが0.5~0.75mM eggPC溶液である。顕微鏡で観察する為のチャンバーとしてPDMSを用いた。図8に、チャンバーを模式的に示す。図8中、カバーガラスにセットしたPDMSチャンバー10の穴にFeeding solution13(詳細は後述する)を10μL入れた。その上に上記のように調整したeggPC溶液12を10μL静かにアプライし、1時間静置した。eggPC溶液11 50μLに、2.5μLのLiposome inside solution15(詳細は後述する)を加え、ピペッティングによりW/Oエマルジョンを形成させ、エマルジョン14を上記の静置したFeeding solution-eggPC溶液の上にアプライし、リポソーム16を形成させた(図9)。37℃に設定したThermo Plate (TOKAI HIT)をセットした共焦点レーザースキャン顕微鏡 LSM510(ZEISS)上にPDMSチャンバーを移し観察した。
【0089】
[Feeding solutionとLiposome inside solutionの条件検討]
Feeding solutionと、Liposome inside solutionとの浸透圧の差によってリポソームの形成能とリポソーム内での翻訳効率がどのように変化するかをFeeding solution 3種類、Liposome inside solution 2種類の組み合わせ、計6種類で比較、検討した。Feeding solutionの3種類として
(A)SolutionA 9.6μL+Pure mix(SolutionA 5μL+SolutionB 2μL+超純水3μLを混ぜたもの) 0.4μL
(B)SolutionA 5μL+超純水5μL
(C)SolutionA 5μL+超純水4.6μL+Pure mix0.4μLを作成した。
【0090】
各Feeding solutionのBuffer濃度は次のようになる。
(A)98mM Hepes-KOH (pH7.6)、196mM L-Glutamic acid Monopotassium salt、3.92mM spermidine、25.48mM Mg(OAc)、1.96mM DTT
(B)50mM Hepes-KOH (pH7.6)、100mM L-Glutamic acid Monopotassium salt、2mM spermidine、13mM Mg(OAc)、1mM DTT
(C)52mM Hepes-KOH (pH7.6)、104mM L-Glutamic acid Monopotassium salt、2.08mM spermidine、13.52mM Mg(OAc)、1.04mM DTT
【0091】
Liposome inside solutionの2種類には
1.Pure(Original EGFP template DNA 2μg/μL 1μL+超純水 2μL+ SolutionA 5μL+SolutionB 2μL) 100%
2.Pure(Original EGFP template DNA 2μg/μL 1μL+超純水 2μL+ SolutionA 5μL+SolutionB 2μL) 50%+SolutionA 2倍希釈 50% (超純水 5μL+ SolutionA 5μL) 50%
を作成した。
【0092】
Liposome inside solutionのBuffer濃度は次のようになる。
1. 50mM Hepes-KOH (pH7.6)、100mM L-Glutamic acid Monopotassium salt、2mM spermidine、13mM Mg(OAc)2、1mM DTT
2. 50mM Hepes-KOH (pH7.6)、100mM L-Glutamic acid Monopotassium salt、2mM spermidine、13mM Mg(OAc)2、1mM DTT
【0093】
まず、リポソーム形成能の比較を行うため、あらかじめLiposome inside solution 2種類をリポソーム形成前に37℃でインキュベートしてEGFPを発現させ、その後でリポソームを調整した。Feeding solutionは上記の3種類、0.5mM eggPC溶液で行った。この結果Feeding solutionの浸透圧が高い(A)より(B)、(C)SolutionA 5μL+超純水4.6μL+Pure mix0.4μLを作成の方が、数が多く大きいリポソームを形成できることが確認できた。
【0094】
次にFeeding solution(A)、Liposome inside solution 2の条件で、eGFPをCodeするDNAを内包し、1h後にリポソーム内部でのeGFPの発現を確認した。図11(A)は、リポソーム内部の蛍光を現す写真であり、図11(B)は、リポソーム16が存在することを示す明視野顕微鏡像である。DNAを含まないリポソームも1h後に安定に存在した(図10(B))が、蛍光は発しなかった(図10(A))。なお、図10(B)、図11(B)においては、リポソームの輪郭を明確にするために、輪郭線を書き足している。
【0095】
次にリポソームの中での翻訳効率の差を確認するために、上記のFeeding solution 3種類、0.5mM eggPC溶液、Liposome inside solution 2種類を用いてリポソームを形成させた後、37℃でインキュベートした。60分後の顕微鏡写真を、図12に示す。この結果Liposome inside solution 2種類ではPure 100%の方が、蛍光強度が大きく、Feeding Solution 3種類では(A)が他の(B)、(C)より蛍光強度が大きかった。ただし数や大きさは上記の結果と同じく(A)より(B)、(C)の方が、数が多く大きいリポソームを形成していた。
【0096】
これらの結果を考慮して、Feeding solutionには、(C)Solution A 5μL+超純水4.6μL+Pure mix0.4μLを用い、Liposome inside solutionには1.Pure 100%を用いることに決定した。
【0097】
[リポソーム内でのOriginal EGFP templateの発現をTime lapseで確認]
RNA応答人工RNAスイッチの効率や持続時間などを分析するのに必要な遺伝子発現のTime lapseがリポソーム内で可能かを確認するために、まずOriginal EGFPで確認した。Feeding solutionには、(C)SolutionA 5μL+超純水4.6μL+Pure mix0.4μLを用い、eggPC溶液の濃度は0.75mM、Liposome inside solutionには、1.Pure 100%を用いた。結果を、図13に示す。0minでは観察されなかったリポソーム内の蛍光が、15分毎に明るく、明確に観察されるようになり、135minでは、はっきり見えることがわかる。この結果から、リポソーム内での発現のTime lapseが可能であることが確認できた。
【実施例4】
【0098】
[RNA応答人工RNAスイッチのリポソーム内での翻訳制御の確認]
[5’miR164 responsive EGFPのリポソーム内での翻訳制御のTime lapse]
RNA応答人工RNAスイッチである5’miR164 responsive EGFPの翻訳制御がリポソーム内で可能であることをTime lapseをとり確認した。Feeding solutionには、(C)SolutionA 5μL+超純水4.6μL+Pure mix0.4μLを用い、eggPC溶液の濃度は0.75mM、Liposome inside solutionには(5’miR164 responsive EGFP 30μM 1μL+miRNA164 60μM 1μL+超純水 1μL+ SolutionA 5μL+SolutionB 2μL)を用いた。結果を、図14に示す。図中、0minでは、リポソーム内で蛍光が観察されないのに対し、60minでは、明らかな蛍光が観察できた。これは、miRNAの存在により、遺伝子の翻訳がONになり、蛍光蛋白質が作られたことを意味する。この結果よりリポソーム内でのRNA応答人工RNAスイッチの翻訳制御が可能であることが確認できた。
【実施例5】
【0099】
ONスイッチ型のRNA応答人工RNAスイッチを作製し、その翻訳制御アッセイを行った。
【0100】
[RNA応答人工RNAスイッチの作製]
5’miR164 responsive EGFP、5’miR164 responsive Dsred Monomerは、実施例1と同様の方法で作製した。これらの各々に相補的に結合するmiRNAであるmiR164は、北海道システムサイエンス社から購入した。
【0101】
5’miR156 responsive EGFP(配列番号32)は、実施例1と同様の方法で作製した。
具体的には、人工RNAスイッチの鋳型DNAはすべてグラディエントマスターサイクラー(エッペンドルフ社)を用いて、2回または3回のPCRを行い作製した。PCRはすべてKOD-PLUS-(TOYOBO)を用い次のプロトコルで行った。PCR反応液50μLには、鋳型DNA 25ng 各10μM DNAプライマー 1.5μL、2mM dNTPsを5μL、10×KOD-PLUS-buffer ver.2 5μL、25mM MgSO 2μL KOD-PLUS-DNA polymerase 1μLが混合してあり、初めに94℃ 2分インキュベートした後、94℃ 15秒、50℃ 30秒、68℃ 1分を20サイクルで行った。反応後、フェノール処理、エタノール沈殿を行い、非変性色素(30%グリセリン、0.075%キシレンシアノール、0.075%ブロモフェノールブルー、69.85%超純水)に溶解し、低融点アガロースSEA PLAQUE GTG AGAROSE (FMC)で分離、目的のバンドを切り出した。切り出したアガロース断片にTE 200μL加え、65℃ 30分インキュベートした後フェノール処理を3回、ジエチルエーテル処理、エタノール沈殿を行い、DNAを精製した。超純水に溶解してDU640 SPECTROPHOTOMETER (BECKMAN)を用いて濃度測定を行った。
これらの方法で作製した鋳型DNAを用いてMEGAscript(商標)(Ambion)を用いて転写反応を行った。MEGAscriptを用いた転写反応は以下の通りである。超純水に溶解した鋳型DNA 1μg、T7 10×Reaction Buffer 2μL、T7 ATP Solution(75mM) 2μL(CTP、GTP、UTPに関しても同様)、T7 Enzyme Mix 2μLを混合し,超純水で全20μLにした反応液を37℃で4時間から一晩反応させた。反応後は、TURBO DNase 1μL加え、37℃で15分インキュベートし、鋳型DNAを分解させた。転写反応によって得られた各mRNAをRneasy MinElute(商標)Cleanup Kit(QIAGEN)を用いて精製した。
【0102】
各RNAを作製するのに用いた鋳型、プライマーの名前を示す。miRNA EGFP ONスイッチ製造スキームにおいて、1st PCRでは、Original EGFP mRNA(配列番号7)を 鋳型DNAとして用いた。2nd PCRでは、鋳型DNAとして、1st PCR後のEGFP DNAを用い、プライマー 5’UTR-miRNA156 fwd(5’GGGAGACCACAACGGTTTCCCTCTATCTCCTGTGCTCACTCTCTTCTGTCAAGAAGGAGATATACCAATG-3’ 配列番号33)、EGFP rev(配列番号3)を用いた。3rd PCRでは、鋳型DNAとして、2nd PCR後のmiRNA156応答EGFP DNAを用い、プライマーとしては、T7-stem-loop uni(配列番号10)、EGFP rev(配列番号3)を用いた。
【0103】
5’miR156 responsive Dsred Monomer(配列番号34)も、上記と同様の方法で作製した。
このmiRNA応答Dsred Monomer ONスイッチ製造スキームにおいては、1st PCRでは、鋳型DNAとして、pDsred Monomer (clontech)(配列番号13)を用い、プライマーとして、Dsred Monomer fwd(配列番号14)、Dsred Monomer rev(配列番号15)を用いた。2nd PCR では、鋳型DNAとして、1st PCR後のDsred Monomer DNAを用い、プライマーとして、5’UTR-miRNA156 fwd(配列番号34)、Dsred Monomer rev(配列番号15)を用いた。3rd PCRでは、鋳型DNAとして、2nd PCR後のmiRNA156応答Dsred Monomer DNAを用い、プライマーとしては、T7-stem-loop uni(配列番号10)、Dsred Monomer rev(配列番号15)を用いた。
また、5’miR156 responsive EGFP、5’miR156 responsive Dsred Monomerの各々に相補的に結合するmiRNAであるmiR156(5’-UGACAGAAGAGAGUGAGCAC-3’ 配列番号35)は、北海道システムサイエンス社から購入した。
【0104】
[RNA応答人工RNAスイッチの無細胞発現系を用いた翻訳制御アッセイ]
上記で作製した各RNA応答人工RNAスイッチ 2000nMに対し、各RNA応答人工RNAスイッチに相補的に結合する各miRNAを加え、PURE SYSTEMでEGFP、Dsred Monomerタンパク質の発現を行い、その蛍光量を各フィルターにより確認した。miRNAを加えていないときの各タンパク質の蛍光量を1とし、各miRNAの濃度変化と蛍光量の変化の比をプロットした。
【0105】
図21は、5’miR164 responsive EGFPスイッチに対し各濃度のmiR164、miR156、miR163を加え、蛍光量の変化の比をプロットしたグラフであり、図22は、5’miR156 responsive EGFPスイッチに対し各濃度のmiR156、miR164を加え、蛍光量の変化の比をプロットしたグラフである。図23は、5’miR164 responsive Dsred Monomerスイッチに対し各濃度のmiR164、miR156を加え、蛍光量の変化の比をプロットしたグラフであり、図24は、5’miR156 responsive Dsred Monomerスイッチに対し各濃度のmiR156、miR164を加え、蛍光量の変化の比をプロットしたグラフである。これらの結果から、各々のスイッチは、配列、長さの類似したmiRNAの中から、目的のmiRNAのみを特異的に認識し、翻訳を活性化できことがわかる。さらに、翻訳する遺伝子の種類は特定の配列に依存せず、任意の遺伝子の翻訳活性化を制御できることがわかった。
【実施例6】
【0106】
[異なる二つのONスイッチRNA]
異なるmiRNAに応答して遺伝子の発現がONになるRNA応答人工RNAスイッチを二つ作製し、それを組み合わせることにより最も単純な人工翻訳システムを構築した。
RNA応答人工RNAスイッチとしては、上記実施例5で作製した、5’miR164 responsive Dsred Monomerと、5’miR156 responsive EGFPを用いた。各RNA応答人工RNAスイッチに相補的に結合するmiRNAとして、miR164(配列番号29)、miR156(配列番号39)を用いた。
【0107】
二つのRNA応答人工RNAスイッチ各2000 nMの混合溶液に対し、各miRNAを4000 nM加えた。次に、PURE SYSTEMでEGFP、Dsred Monomerタンパク質の発現を行い、その蛍光量を各フィルターにより確認した。miRNAを加えていないときの各タンパク質の蛍光量を1とし、各miRNAを加えたときの蛍光量の変化の比をプロットした。結果を、図25に示す。グラフから、miRNA156を加えればEGFPの蛍光である緑色が、miRNA164を加えればDsred Monomerの蛍光である赤色が見え、選択的に緑色や赤色に光らせることができており、人工翻訳システムの構築に成功していることが分かった。
【実施例7】
【0108】
[OFFスイッチEGFP]
[設計]
miRNAに応答してEGFPの発現がOFFになるRNA応答人工RNAスイッチを作製した。図26、27に設計したRNA応答人工RNAスイッチ、これに特異的に結合するmiRNA、および当該miRNAの逆相補鎖を示す。また、各RNA応答人工RNAスイッチの下方には、miRNAの逆相補鎖を、開始コドンの3’側であって、EGFP遺伝子の5’側に挿入して発現させたときに、EGFPのN末端に付加するアミノ酸を示す。図26に示すRNA応答人工RNAスイッチ、は、miRNA156(配列番号35)の非存在下ではEGFPを発現し、miRNA156に応答して、EGFPの発現が抑制されることを意図するものである。このmRNAを、miR156 responsive EGFP OFFスイッチ(配列番号36)とする。miR156 responsive EGFP OFFスイッチには、miRNA156の逆相補鎖(5’-GUGCUCACUCUCUUCUGUCA-3’ 配列番号37)の配列が含まれている。
図27に示すRNA応答人工RNAスイッチは、miRNA164(配列番号29)の非存在下ではEGFPを発現し、miRNA164に応答して、EGFPの発現が抑制されることを意図するものである。このmRNAを、miR164 responsive EGFP OFFスイッチ(配列番号38)とする。miR164 responsive EGFP OFFスイッチには、miRNA164の逆相補鎖(5’-UGCACGUGCCCUGCUUCUCCA-3’ 配列番号39)の配列が含まれている。
【0109】
[製造]
人工RNAスイッチの鋳型DNAはすべてグラディエントマスターサイクラー(エッペンドルフ社)を用いて、2回または3回のPCRを行い作製した。PCRはすべてKOD-PLUS-(TOYOBO)を用い次のプロトコルで行った。PCR反応液50μLには、鋳型DNA 25ng 各10μM DNAプライマー 1.5μL、2mM dNTPsを5μL、10×KOD-PLUS-buffer ver.2 5μL、25mM MgSO 2μL KOD-PLUS-DNA polymerase 1μLが混合してあり、初めに94℃ 2分インキュベートした後、94℃ 15秒、50℃ 30秒、68℃ 1分を20サイクルで行った。反応後、フェノール処理、エタノール沈殿を行い、非変性色素(30%グリセリン、0.075%キシレンシアノール、0.075%ブロモフェノールブルー、69.85%超純水)に溶解し、低融点アガロースSEA PLAQUE GTG AGAROSE(FMC)で分離、目的のバンドを切り出した。切り出したアガロース断片にTE 200μL加え、65℃で30分インキュベートした後フェノール処理を3回、ジエチルエーテル処理、エタノール沈殿を行い、DNAを精製した。超純水に溶解してDU640 SPECTROPHOTOMETER(BECKMAN)を用いて濃度測定を行った。
これらの方法で作製した鋳型DNAを用いてMEGAscript(商標)(Ambion)を用いて転写反応を行った。MEGAscriptを用いた転写反応は以下の通りである。超純水に溶解した鋳型DNA 1μg、T7 10×Reaction Buffer 2μL、T7 ATP Solution(75mM) 2μL(CTP、GTP、UTPに関しても同様)、T7 Enzyme Mix 2μLを混合し,超純水で全20μLにした反応液を37℃で4時間から一晩反応させた。反応後は、TURBO DNase 1μL加え、37℃で15分インキュベートし、鋳型DNAを分解させた。転写反応によって得られた各mRNAをRneasy MinElute(商標) Cleanup Kit(QIAGEN)を用いて精製した。
上記miRNA応答EGFP OFF スイッチの作製において、1st PCRでは、鋳型DNAとして、pEGFP (clontech)(配列番号1)を用い、プライマーとしては、miR156 responsive OFF fwd(5’AAGGAGATATACCAATGGTGCTCACTCTCTTCTGTCAGGTGAGCAAGGGCGAGGAG-3 配列番号40)または、miR164responsive OFF fwd(5’AAGGAGATATACCAATGTGCACGTGCCCTGCTTCTCCAGTGAGCAAGGGCGAGGAG-3’ 配列番号41)、及びEGFP rev(配列番号3)を用いた。2nd PCRでは、鋳型DNAとして、1st PCR後のEGFP DNAを用い、プライマーとして、Universal primer(配列番号5)、EGFP rev(配列番号3)を用いた。miRNAおよび各プライマーは、北海道システムサイエンス社から購入した。
【0110】
[評価]
miR156 responsive EGFP OFFスイッチ、miR164 responsive EGFP OFFスイッチに対し、各濃度のmiRNA156、miRNA 164を加えた。これらについて、PURE SYSTEMでEGFPタンパク質の発現を行い、その蛍光量を確認した。miRNAを加えていないときの蛍光量を1とし、各miRNAの濃度変化と蛍光比率の変化をプロットした。結果を図に示す。
【0111】
図28は、miR156 responsive EGFP OFFスイッチ 200nMに対し、各濃度のmiRNA156、miRNA164を加え、蛍光量の変化の比をプロットしたグラフであり、図29は、miR164 responsive EGFP OFFスイッチ 100nMに対し、各濃度のmiRNA156、miRNA164を加え、蛍光量の変化の比をプロットしたグラフである。どちらも特異的に翻訳の抑制が起きていることがわかる。また、この結果から、開始コドンの直下にmiRNAの逆相補鎖を挿入した場合でも、EGFPのN末端に7つのアミノ酸が付加した蛋白質が発現しても、EGFPの発現効率が低下することがないことを発見した。これは、EGFP OFFスイッチの設計が、予想以上に成功したことを示す大きな成果である。
【0112】
[OFFスイッチDsred Monomer]
[設計]
miRNAに応答してDsred Monomerの発現がOFFになるRNA応答人工RNAスイッチを作製した。図30、31に設計したRNA応答人工RNAスイッチ、これに特異的に結合するmiRNA、および当該miRNAの逆相補鎖を示す。また、各RNA応答人工RNAスイッチの下方には、miRNAの逆相補鎖を、開始コドンの3’側であって、Dsred Monomer遺伝子の5’側に挿入して発現させたときに、Dsred MonomerのN末端に付加するアミノ酸を示す。図30に示すRNA応答人工RNAスイッチは、miRNA156の非存在下ではDsred Monomerを発現し、miRNA156に応答して、Dsred Monomerの発現が抑制されることを意図するものである。これを、miR156 responsive Dsred Monomer OFFスイッチRNA(配列番号42)という。図31に示すRNA応答人工RNAスイッチは、miRNA164の非存在下ではDsred Monomerを発現し、miRNA164に応答して、Dsred Monomerの発現が抑制されることを意図するものである。これを、miR164 responsive Dsred Monomer OFFスイッチRNA(配列番号43)という。
【0113】
[製造]
miR156 responsive Dsred Monomer OFFスイッチ及びmiR164 responsive Dsred Monomer OFFスイッチは、上記OFFスイッチEGFPと同様にして製造した。
1st PCRにおいては、鋳型DNAとして、pDsred Monomer(clontech)(配列番号13)を用い、プライマーとして、miR156 responsive OFF fwd(配列番号40)または、miR164responsive OFF fwd(配列番号41)、Dsred Monomer rev(配列番号16)を用いた。2nd PCRにおいては、鋳型DNAとして、1st PCR後のDsred Monomer DNAを用い、プライマーとしては、Universal primer(配列番号5)、Dsred Monomer rev(配列番号16)を用いた。
【0114】
[評価]
miR156 responsive Dsred Monomer OFFスイッチ200nM、miR164 responsive Dsred Monomer OFFスイッチ200nMに対し、各濃度のmiRNA156、miRNA 164を加えた。これらについて、PURE SYSTEMでEGFPタンパク質の発現を行い、その蛍光量を確認した。miRNAを加えていないときの蛍光量を1とし、各miRNAの濃度変化と蛍光比率の変化をプロットした。結果を図に示す。
【0115】
図32は、miR156 responsive Dsred Monomer OFFスイッチ200nMに対し、各濃度のmiRNA156、miRNA164を加え、蛍光量の変化の比をプロットしたグラフである。図33は、miR164 responsive Dsred Monomer OFFスイッチ200nMに対し、各濃度のmiRNA156、miRNA164を加え、蛍光量の変化の比をプロットしたグラフである。どちらも特異的に翻訳の抑制が起きていることがわかる。また、この場合も、EGFPと同様、開始コドンの直下に挿入したmiRNAの逆相補鎖が、Dsred Monomerの発現効率に与える影響は少なく、効率のよいOFFスイッチの設計に成功した。
【実施例8】
【0116】
[同一のsmall RNAに応答する異なるスイッチによる人工翻訳システム]
[GreenからRed]
同一のsmall RNAに応答する異なるスイッチによる人工翻訳システムの評価を行った。miR164に応答してEGFPの発現がONからOFFになる、miR164 responsive EGFP OFFスイッチ(図27)は実施例7に従って作成した。miR164に応答してDsred Monomerの発現がOFFからONになるmiR164 responsive Dsred Monomer ONスイッチ(配列番号19)は、実施例1に従って作製した。
【0117】
miR164 responsive EGFP OFFスイッチ 100nMとmiR164応答Dsred Monomer ONスイッチ 2000nMの混合溶液に各濃度のmiR156、miR164を加え、PURE SYSTEMでEGFP、Dsred Monomerタンパク質の発現を行い、その蛍光量を各フィルターにより確認した。miRNAを加えていないときの各タンパク質の蛍光量を1とし、各miRNAの濃度変化と蛍光量の変化の比をプロットした。結果を図34に示す。図34のグラフ中、左側の目盛は、miR156EGFP、miR156DsRed、miR164DsRedに関し、右の目盛は、miR164EGFPに関する。なお、miR156EGFPとは、miR156を加えたときのEGFPの蛍光比率を表し、miR156DsRedとは、miR156を加えたときのDsRedの蛍光比率を表し、miR164EGFPとはmiR164を加えたときのEGFPの蛍光比率を表し、miR164DsRedとはmiR164を加えたときのDsRedの蛍光比率を表す。miR164特異的に緑色から赤色への変化が確認でき、人工翻訳システムの構築に成功していることが分かる。また、miRNA156で蛍光変化しないことがコントロールとなっている。
【0118】
[RedからGreen]
同一のsmall RNAに応答する異なるスイッチによる、別の人工翻訳システムの評価を行った。
miR156に応答してEGFPの発現がOFFからONになる、5’miR156 responsive EGFP ONスイッチは、実施例5に従って作製した。いっぽう、miR156に応答してDsred Monomerの発現がONからOFFになる、miR156 responsive Dsred Monomer OFFスイッチ(図30)は、実施例7に従って作製した。
【0119】
PURE SYSTEMで、5’miR156 responsive EGFP ONスイッチ 2000nM、miR156 responsive Dsred Monomer OFFスイッチ500nMの混合溶液に、各濃度のmiR156、あるいはmiR164を加えて、EGFP、Dsred Monomerタンパク質の発現を行い、その蛍光量を各フィルターにより確認した。miRNAを加えていないときの各タンパク質の蛍光量を1とし、各miRNAの濃度変化と蛍光量の変化の比をプロットした。結果を、図35に示す。図35のグラフ中、左側の目盛は、miR156EGFP、miR164EGFP、及びmiR164Dsredに関し、右側の目盛は、miR156Dsredに関する。miR156特異的に赤色から緑色への変化が確認でき、人工翻訳システムの構築に成功していることが分かる。また、miRNA164で蛍光変化しないことがコントロールとなっている。
【0120】
miR164に応答してEGFPの発現がOFFからONになる、5’miR164 responsive EGFP ONスイッチは、実施例1に従って作製した。いっぽう、miR164に応答してDsred Monomerの発現がONからOFFになる、miR164 responsive Dsred Monomer OFFスイッチ(図31)は、実施例7に従って作製した。
【0121】
PURE SYSTEMで、5’miR164 responsive EGFP ONスイッチ 2000nM、miR164 responsive Dsred Monomer OFFスイッチ500nMの混合溶液に、各濃度のmiR156、あるいはmiR164を加え、EGFP、Dsred Monomerタンパク質の発現を行い、その蛍光量を各フィルターにより確認した。miRNAを加えていないときの各タンパク質の蛍光量を1とし、各miRNAの濃度変化と蛍光量の変化の比をプロットした。結果を、図36に示す。図36のグラフ中、左側の目盛は、miR156 EGFP、miR164 EGFP、miR156 Dsredに関し、右側の目盛は、miR164 Dsredに関する。miR164特異的に赤色から緑色への変化が確認でき、人工翻訳システムの構築に成功していることが分かる。miRNA156で蛍光変化しないことがコントロールとなっている。
【実施例9】
【0122】
[ダブルONスイッチ]
[RNA応答人工RNA(miRNA159a responsive EGFP ONスイッチ)の作成]
実施例1と同様の方法で、RNA応答人工RNA(miRNA159a responsive EGFP ONスイッチ)を作成した。図37に、miRNA159a(5’-UUUGGAUUGAAGGGAGCUCUA-3’ 配列番号44)と、その相補鎖(5’-UAGAGCUCCCUUCAAUCCAAA-3’ 配列番号45)、およびmiRNA159aに特異的に反応するダブルONスイッチmRNA(配列番号46)の二次構造を示す。
【0123】
[RNA応答人工RNA(miRNA163 responsive EGFP ONスイッチ)の作成]
実施例1と同様の方法で、RNA応答人工RNA(miRNA163 responsive EGFP ONスイッチ)を作成した。図38にmiRNA163(配列番号28)と、その相補鎖(5’-AUCGAAGUUCCAAGUCCUCUUCAA-3’ 配列番号47)、およびmiRNA163に特異的に反応するダブルONスイッチmRNA(配列番号48)の二次構造を示す。
【0124】
[RNA応答人工RNAスイッチの無細胞発現系を用いた翻訳制御アッセイ。]
上記二種のRNA応答人工RNAスイッチの翻訳制御を確認するために無細胞発現システムである、Pure systemを用いた。Pure systemに関しては、実施例2で説明したとおりである。
【0125】
[miRNA159a responsive EGFP ONスイッチのアッセイ]
miRNA159a responsive EGFP 20μM 1μL,超純水 1μL,SolutionA 5μL,SolutionB 2μLを混合したものを5本用意し、合成したmiRNA159a(配列番号44)40μM,20μM,10μM,5μM,0μMを、1μLずつ、それぞれ別個の溶液に加え、全量を10μLとし、37℃で75分間で反応させた。反応後、超純水で200μLにし、infinite F200(TECAN製)を用いて、励起波長485nm、吸収波長535nmで測定した(図39)。ネガティブコントロールとして、miRNA159a responsive EGFP 20μM 1μL,超純水 1μL,SolutionA 5μL,SolutionB 2μLを混合したものを5本用意し、合成したmiRNA163(北海道システムサイエンス 配列番号28)40μM,20μM,10μM,5μM,0μMを、1μLずつ、それぞれ別個の溶液に加え、全量を10μLとし、37℃で75分間で反応させた。反応後、超純水で200μLにし、infinite F200(TECAN)を用いて、励起波長485nm、吸収波長535nmで測定した(図39)。このアッセイによりこのRNA応答人工RNAスイッチ(miRNA159a responsive EGFP)が、miRNA159aに特異的に反応し、OFFからONへの翻訳制御が起きていることが確認された。
【0126】
[miRNA163 responsive EGFP ONスイッチのアッセイ]
上記miRNA159a responsive EGFPと同様にして、miRNA163 responsive EGFP ONスイッチ(配列番号48)のアッセイを行った。ネガティブコントロールとしては、miRNA163 responsive EGFP ONスイッチに、miRNA159aを添加したものを用いた。なお、miRNA163responsive EGFPスイッチ濃度は1μMとした。測定結果を図40に示す。このアッセイにより、miRNA163 responsive EGFP ONスイッチが、miRNA163に特異的に反応し、OFFからONへの翻訳制御が起きていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の活用例として、任意のRNAの発現に応答して、下流のシグナル蛋白質(蛍光、発光蛋白質など)の発現を制御できるバイオセンサー、人工遺伝子回路として機能できる。この人工RNAを細胞内に導入することで、細胞を破壊することなく特定のRNA(miRNAなど)を発現する細胞を検出するシステムや細胞運命を制御する技術へと展開できる。
また人工RNAをリポソームに無細胞翻訳系と共に内包することにより、リポソーム内で遺伝子ネットワークの構築が可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30
【図32】
31
【図33】
32
【図34】
33
【図35】
34
【図36】
35
【図37】
36
【図38】
37
【図39】
38
【図40】
39