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明細書 :超伝導化合物及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5558115号 (P5558115)
登録日 平成26年6月13日(2014.6.13)
発行日 平成26年7月23日(2014.7.23)
発明の名称または考案の名称 超伝導化合物及びその製造方法
国際特許分類 C01G   1/00        (2006.01)
C01B  25/08        (2006.01)
C01G  49/00        (2006.01)
C01G  53/00        (2006.01)
FI C01G 1/00 S
C01B 25/08 Z
C01G 49/00 D
C01G 53/00 A
請求項の数または発明の数 2
全頁数 15
出願番号 特願2009-554329 (P2009-554329)
出願日 平成21年2月17日(2009.2.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 Inorganic Chemistry Vol.46 No.19(2007年9月17日、日本時間2007年8月18日にweb公開)American Chemical Society発行第7719-7721ページに発表
特許法第30条第1項適用 2007年秋季第68回応用物理学会学術講演会講演予稿集 第1分冊(2007年9月4日)社団法人応用物理学会発行第275ページに発表
特許法第30条第1項適用 http://mat-gcoe-titech.jp/eng/event/2007/12/post.php(2007年12月10日)に発表
国際出願番号 PCT/JP2009/052714
国際公開番号 WO2009/104611
国際公開日 平成21年8月27日(2009.8.27)
優先権出願番号 2008035977
優先日 平成20年2月18日(2008.2.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年8月26日(2010.8.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】神原 陽一
【氏名】平野 正浩
【氏名】神谷 利夫
【氏名】柳 博
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】佐藤 哲
参考文献・文献 特開2007-320829(JP,A)
神原陽一 他,Fe系層状超伝導体LaOFePの電気伝導特性と磁性,日本物理学会講演概要集,2007年 8月21日,第62巻第2号(第62回年次大会)第3分冊,Page609(22pWH-14)
Y.KAMIHARA et al.,Iron-Based Layered Superconductor: LaOFeP,Journal of The American Chemical Society,2006年 8月 9日,Vol.128 No.31,Pages10012-10013
岡田宏成 ,オキシニクタイド化合物LaFeAs(O1-xFx)とSmFeAsOの圧力効果,第49回高圧討論会講演要旨集,日本高圧力学会,2008年11月 1日,第18巻 特別号,Page166
D.JOHRENDT et al.,Pnictide Oxides:A New Class of High-Tc Superconductors, Angewandte Chemie International Edition,2008年 6月16日,Vol.47 No.26,Pages4782-4784
T.WATANABE et al.,Nickel-Based Oxyphosphide Superconductor with a Layered Crystal Structure, LaNiOP,Inorganic Chemistry,2007年 9月17日,Vol.46 No.19,Pages7719-7721
調査した分野 C01G 1/00 - 23/08
C01B 25/00 - 25/46
C01G 49/00 - 49/08
C01G 49/10 - 99/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
化学式LaNiOPn[ここで、Pnは、P又はAsである。]で示され、ZrCuSi
As型(空間群P4/nmm)の結晶構造を有する化合物のLaイオンをCa2+で一部置
換した構造を有し、超伝導転移を示すことを特徴とする超伝導化合物。
【請求項2】
化学式LaNiOPn[ここで、Pnは、P又はAsである。]で示される化合物のLa
イオンをCa2+で一部置換することによって、該置換量に応じて超伝導転移温度が制御さ
れた超伝導化合物を形成すること特徴とする超伝導化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属元素のNiを骨格構造に有する層状超伝導化合物及びその製造方法に
関する。
【背景技術】
【0002】
1911年に水銀において超伝導現象が見出されて以来、数多くの化合物において超伝導
が見出され、超伝導磁石及び磁気センサ(SQUID)などとして実用化されている。また、
高温超電導体(ペロブスカイト型銅酸化物)が発見されて以来、室温超伝導体を目指した
材料の研究開発が活発に行われ、超伝導転移温度(Tc)が100Kを超える超伝導化合物
が見出された。
【0003】
ペロブスカイト型銅酸化物の超伝導発現機構についても理解が進んでいる(例えば、非特
許文献1、2)。また、銅以外の遷移金属イオンを含む化合物、又は新規化合物として、
Sr2RuO4(Tc=0.93K)(非特許文献3)、二ホウ化マグネシウム(Tc=3
9K)(非特許文献4、特許文献1)、Na0.3CoO2・1.3H2O(Tc=5K)(
非特許文献5、特許文献2,3)などが新たに見出された。
【0004】
伝導帯バンド幅に比べて、伝導電子間の相互作用が大きな強相関電子系化合物は、d電子
の数が特定の値の場合に、高いTcを有する超伝導体となる可能性が高いことが知られて
いる。強相関電子系は、遷移金属イオンを骨格構造に有する層状化合物で実現されている
。こうした層状化合物の多くは、電気伝導性はモット絶縁体で、電子のスピン同士には、
反平行に配列しようとする、反強磁性相互作用が作用している。
【0005】
しかし、例えば、ペロブスカイト型銅酸化物であるLa2CuO4では、La3+サイトにS
2+を添加しLaの一部をSrで置換したLa2-xSrxCuO4において、xの値が0.
05から0.28の範囲では、金属伝導を示す遍歴電子状態となり、低温で超伝導体状態
が観測され、x=0.15で最高のTc=40Kが得られている(非特許文献6)。
【0006】
最近、本発明者らは、Feを主成分とする新しい強電子相関化合物、LaOFeP及びL
aOFeAsが超電導体であることを見出し、特許出願した(特許文献4、非特許文献7
)。すなわち、強電子相関系では、d電子の数が特定の値のとき、金属伝導を示す遍歴電
子状態となり、温度を低温にすると、ある特定温度(超伝導転移温度)以下で、超伝導状
態へ転移する。さらに、この超伝導体のTcは伝導キャリアの数によって5Kから40K
まで変化する。また、Hg、Ge3Nbなどの旧来の超電導体が、結晶格子の熱揺らぎ(
格子振動)に基づく電子対(クーパー対)が、超伝導発生機構(BCS機構)とされてい
るのに対して、強電子相関系での超伝導は、電子スピンの熱揺らぎに基づく電子対が、超
伝導発生機構とされている。その後、LaONiPについても超伝導体であることが見出
された(非特許文献8~10)。
【0007】
こうした超伝導化合物での電子対では、それぞれの電子のスピンが反平行に配置したスピ
ン一重項となっているが、最近、Sr2RuO4(Tc=0.93K)(非特許文献3)な
どで、電子対中の電子のスピンが平行に配置したスピン3重項電子対による超伝導が見出
された。こうした電子対は、電子のスピン間相互作用が強磁性的(スピンを平行に整列さ
せようとする相互作用)であるためと考えられている。該超伝導体では、超伝導状態が磁
場によって壊される臨界磁場が大きいと考えられ、該超伝導体は、強磁場中で用いる(例
えば、タンデム的に磁場を発生させる場合の内側コイル)場合に優位である。
【0008】

【非特許文献1】津田惟雄、那須奎一郎、藤森敦、白鳥紀一、 改訂版「電気伝導性酸化物」,pp.350~452,裳華房,(1993)
【非特許文献2】前川禎通,応用物理,Vol.75,No.1,pp.17-25,(2006)
【非特許文献3】Y.Maeno, H.Hashimoto, K.Yoshida, S.Nishizaki,T.Fujita, J.G.Bednorz, F.Lichtenberg,Nature,372,pp.532-534(1994)
【非特許文献4】J. Nagamatsu, N. Nakagawa, T. Muranaka,Y.Zenitani, and J.Akimitsu,Nature,410,pp.63-64,(2001)
【非特許文献5】K.Takada, H.Sakurai, E.Takayama-Muromachi,F.Izumi, R.A.Dilanian, T.Sasaki,Nature,422,pp.53-55,(2003)
【非特許文献6】J.B.Torrance et al.,Phys.Rev.,B40,pp.8872-8877,(1989)
【非特許文献7】Y.Kamihara et al.,J.AM.CHEM.SOC.,(Published on Web 07/15/2006),128,10012-10013(2006)
【非特許文献8】T.Watanabe et al.,Inorganic Chemistry,46(19)(2007)7719-7721(Published on Web 17/August/2007)
【非特許文献9】T.Watanabe et al.,Extended Abstracts(The 68thAutumn Meeting,2007);The Japan Society of Applied Physics,No.1,P.275,4p-ZE-2(2007)
【非特許文献10】M.tegel et al.,Solid State Science, 10(2008)193-197(Published on Web 2/September/2007)
【特許文献1】特開2002-211916号公報
【特許文献2】特開2004-262675号公報
【特許文献3】特開2005-350331号公報
【特許文献4】特開2007-320829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
超伝導技術の応用を飛躍的に広げるために、室温超伝導体の発見が強く望まれている。層
状ペロブスカイト型銅酸化物において、Tcが100Kを超える高温超電導体が見出され
ているが、まだ、室温超伝導体は見出されていない。室温超伝導体を開発するための一つ
の方策は、ペロブスカイト型銅酸化物に代わる遷移金属元素を骨格構造に有する新しい層
状化合物群を見出し、電子濃度、格子定数などの物質パラメータを、Tcの高温化を図る
ために、最適化し、それを実現する化合物組成を発見することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、LnTMOPn化合物群 「Lnは、Y及び希土類金属元素(La,Ce
,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)の少な
くとも一種であり、TMは、遷移金属元素(Fe,Ru,Os,Ni,Pd,Pt)の少
なくとも一種であり、Pnは、プニクタイド元素(N,P,As,Sb)の少なくとも一
種である。」において、Ln(Y及び希土類金属元素)、TM(遷移金属元素)、Pn(
プニクタイド元素)イオンの種類を変化させ、新しい超伝導体を見出し、さらに、超伝導
体に、不純物添加などにより、電子又はホールをドープすることによって、あるいは、L
nTMOPn結晶体の格子定数を変化させることによって、Tcを制御し得ることを見出
し、Tcが最高温度になるように、LnTMOPn化合物組成を決定した。
【0011】
また、超伝導発生機構には、遷移金属のd電子間の相互作用が主要な役割を果たしている
ために、該相互作用を制御することも必要である。そのための一つの方策は、遷移金属元
素に最適のプニクタイドイオンを見出すことである。例えば、砒素(As)イオン、燐(
P)イオンは、p電子のエネルギー準位がFe3d電子のそれに近いため、p-d軌道混
成が大きくなり、キャリア・電子間相互作用が大きくなる。また、層状化合物の層間相互
作用を減少させ、電子の層内閉じ込め効果を大きくすることが有効である。閉じ込められ
た電子は、2次元性を有し、磁気整列の阻害となるため、超伝導が実現しやすくなる。
【0012】
こうした材料探索方針に基づき、本発明者らが、新たに見出した遷移金属イオンを骨格構
造に有する層状構造化合物LnTMOPnを精力的に研究した結果、本発明者らは、新た
な超伝導化合物を実現することに加えて、LnTMOPnの酸素イオンを電荷の異なるイ
オンで適量だけ置換し、その置換濃度を最適化することにより、Tcが25K以上の超伝
導化合物を見出した。特に、LaNiOPnで示される超伝導化合物のLaイオンを二価
の金属イオンであるCa2+で適量だけ置換することによりTcを高めることができること
を見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、(1)化学式LaNiOPn[ここで、Pnは、P又はAsである
。]で示され、ZrCuSiAs型(空間群P4/nmm)の結晶構造を有する化合物の
LaイオンをCa2+で一部置換した構造を有し、超伝導転移を示すことを特徴とする超伝
導化合物、である。
【0014】
また、本発明は、(2)化学式LaNiOPn[ここで、Pnは、P又はAsである。]
で示される化合物のLaイオンをCa2+で一部置換することによって、該置換量に応じて
超伝導転移温度が制御された超伝導化合物を形成すること特徴とする超伝導化合物の製造
方法、である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、高い超伝導転移温度を実現可能な超伝導化合物を提供するものであり、新規超
伝導物質開発のブレークスルーとなる画期的効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】比較例1,参考例1,参考例2で得られた焼結体のX線回折パターンである。
【図2】比較例1,参考例1,参考例2で得られた焼結体の電気抵抗率の温度変化を示すグラフである。
【図3】比較例1,参考例1,参考例2で得られた焼結体のTc付近での磁気モーメント(EMU)の温度変化を示すグラフである。
【図4】比較例3,参考例で得られた焼結体のX線回折パターンである。
【図5】参考例で得られた焼結体の電気抵抗率の温度変化(A)及び磁化率の温度変化(B)を示すグラフである。
【図6】参考例で得られた焼結体の超伝導転移温度のフッ素イオン添加量依存性を示すグラフである。
【図7】比較例4,比較例5で得られた焼結体のX線回折パターンである。
【図8】比較例4,比較例5で得られた焼結体の電気抵抗率の温度変化を示すグラフである。
【図9】比較例4,比較例5で得られた焼結体の帯磁率の温度変化を示すグラフである。
【図10】比較例4,実施例,比較例5,実施例で得られた無添加及び添加物を含む焼結体の電気抵抗率の温度変化を示すグラフである。
【図11】(a)は、比較例6で得られた焼結体のZrCuSiAs型結晶構造を示す模式図である。(b)は、比較例6及び参考例で得られた焼結体のX線回折パターンである。
【図12】比較例6,参考例で得られた焼結体の電気抵抗率の温度変化を示すグラフである。
【図13】比較例6,参考例で得られた焼結体の帯磁率の温度変化を示すグラフである。
【図14】参考例で得られた焼結体の超伝導転移温度のフッ素イオン添加量依存性を示すグラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の超伝導化合物は、一般化学式LaNiOPnで示される遷移金属元素を骨格構造
に有する層状化合物であり、該化合物は、ZrCuSiAs型(空間群P4/nmm)の
結晶構造を有する。ここで、Pnは、P又はAsである。
【0018】
該化合物の結晶構造は、電気伝導度の低いLaO層と、金属的な電気伝導を示すNiPn
層が交互に積層した層状構造である。このため、電気伝導又は超伝導に寄与する電子は、
NiPn層内に2次元的に閉じ込められている。電子の2次元性により、電子間に強い相
互作用が生じ、電子スピンの磁気整列を抑制する。超伝導を発現するためには、伝導電子
間の磁気相互作用を、磁気整列状態の発現を抑制する程度までに低減することが不可欠で
ある。一方で、d電子による超伝導は、伝導電子間の磁気相互作用の熱揺らぎにより発現
するので、磁気整列が生じない範囲で、磁気相互作用が大きいほど、超伝導転移温度(T
c)が大きくなると考えられる。
【0019】
該磁気相互作用の大きさは、一般的に、伝導電子の磁気モーメントと伝導電子間の交換相
互作用の大きさの積で与えられる。したがって、まず、磁気整列相の発現を抑制するため
に、電子の磁気モーメントが小さいことが必要である。偶数個のd電子数(n)を有する
遷移金属元素のd電子系は、n/2個の電子のスピンを、互いに反平行に配置することに
より、全体として、磁気モーメントをゼロにすることができる。こうしたことから、Ln
TMOPn化合物群では、骨格構造にnが偶数であるFe(3d6)、Ru(4d6)、O
s(4d7)、Ni(3d8),Pd(4d8)及びPt(5d8)が遷移金属元素として選
ばれる。固体中のd電子は、主量子数が大きくなるにつれ、電子の有効質量が大きくなり
、その結果、Tcが低くなる傾向があるので、主量子数の一番小さな3d電子を有するF
e及びNiが最も望ましい。
【0020】
該交換相互作用は、元素間の共有結合性が増加するほど大きくなる。TM-Pnの結合は
、例えば、TM-Ch(O,S,Se)に比較して大きいため、LnTMOPn化合物群
は、単純な酸化物より、d電子間の交換相互作用が大きくなり、超伝導相が発現しやすい
。磁気モーメントを有する希土類金属イオンは、一般的には、超伝導相の発現を阻害する
作用がある。しかし、LnTMOPn化合物群では、LnO層とTMPn層が空間的に離
れているために、磁気モーメントによる阻害効果は小さいと考えられる。
【0021】
磁気モーメントを有しないY,La,Luは、磁気モーメントによる超伝導相発生阻害効
果が原理的にないために望ましい元素である。該元素はイオン半径が異なるために、該元
素を含むLnTMOPn化合物では、格子常数が異なり、その結果、間接的に、TM-P
n結合の共有性の大きさに影響を与え、Tcが変化する。イオン半径の大きさが適切で化
合物の合成が容易な点で、Laイオンが最も適している。
【0022】
電気伝導又は超伝導に寄与する電子の数及び状態は、LnTMOPn化合物の構成元素と
電荷が異なるイオンを添加してO又はLnを一部置換することにより、微少に変化させる
ことができ、その変化の結果として、置換量に応じてTcを制御することができる。電荷
の異なるイオンは、LnO層に添加する方が、TMPn層に添加するより望ましい。これ
は、TMPn層への添加は、超伝導相を根底から破壊してしまう可能性が大きいからであ
る。これに対して、LnO層への添加は、TMPn層へ電子又はホールを供給はするが、
TMPnを大きくは変化させず、超伝導相の壊滅的な破壊はもたらさないからである。
【0023】
すなわち、LnO層の酸素イオン(O2-)を一価の陰イオン(F-,Cl-,Br-)で、
一部、好ましくは約25モル%以下まで置換することにより、TMPn層に電子を供給し
、Tcを上昇させることができる。特に、参考例及び参考例にも示すように、LaF
eOAs及びSmFeOAs中の酸素イオンを、約4原子%以上約20原子%以下の弗素
イオン(F-)で置換することにより、Tcが20K超に上昇した。
【0024】
また、LnO層のLnイオン(Ln3+)を二価の金属イオン(Mg2+,Ca2+,Sr2+
Ba2+)で約25モル%以下まで置換することにより、Tcを変化させることができる。
参考例2に示すように、LaFeOPにCa2+を添加してLaイオンをCaイオンで一部
置換すること、実施例1、2に示すように、LaNiOP及びLaNiOAsにCa2+
添加してLaイオンをCaイオンで一部置換することにより、Tcが2K以上上昇した。
また、LnO層のLnイオン(Ln3+)を四価の金属イオン(Ti4+,Zr4+,Hf4+
4+,Si4+,Ge4+,Sn4+,Pb4+)で約25モル%以下まで置換することで、置換
量に応じてTcを制御することができる。
【0025】
上記記載の異電荷イオンの添加は、格子常数の変化ももたらし、それによるTcへの影響
も考えられる。また、Pn及び酸素イオン(O2-)含有量の化学当量組成からのずれも、
格子定数の変化をもたらし、該変化がTcに影響を与える。極端な場合は、超伝導相が消
失したり、新たに発生したりする。このように、Tcが化合物組成に敏感なことは、本発
明のオキシプニクタイド化合物の超伝導発生機構そのものに由来していると考えられる。
【0026】
本発明の超伝導化合物の形は、焼結多結晶体、単結晶、薄膜のいずれでもよい。LnTM
OPn焼結多結晶体は、LnTMOPn化合物の構成元素の金属単体、プニクタイド化物
及び酸化物を化学当量比に混合した粉体の混合物、好ましくは 焼成物に対して、一価の
陰イオン、二価の金属イオン、又は四価の金属イオンの原料粉末を混合したものを、不活
性雰囲気中で、約800℃以上1800℃以下、より好ましくは1000~1300℃程
度の温度で焼結すればよい。800℃未満では原料間の反応が進まず、LnTMOPn相
が得られない。1800℃を超えると揮発性の大きな成分が失われ、LnTMOPn相以
外の異相化合物が生成されるので好ましくない。LnTMOPn化合物の単結晶は、KC
l、NaClなどの金属塩をフラックスとして、上記混合粉体から育成することができる

【0027】
LnTMOPn化合物薄膜は、単結晶基板上に、まずテンプレートとして機能するTM極
薄膜を蒸着法により成膜し、その上に、上記方法により得られた焼結多結晶体をターゲッ
トとして、気相法(パルスレーザー蒸着法、スパッター法など)により、アモルファス状
態膜を堆積する。最後に、得られた多層膜を、不活性雰囲気中で、約800℃以上180
0℃以下の温度でアニールすればよい。
【0028】
以下に、LaFeOAsを例に、LnTMOPn超伝導化合物焼結多結晶体の製造方法を
具体的に説明する。まず、La,Fe,Asの各粉末を1:3:3モル比率で混合した混
合体を石英管中に入れ、真空に排気した後、室温で不活性ガスを導入する。不活性ガスは
、Arガスが適しているが、これに限られるものでない。また、不活性ガスの圧力は、1
気圧以下であればよい。不活性ガスを封入することにより、焼結中の石英ガラス管の収縮
破裂を防ぐことができる。また、蒸気圧の高い砒素化合物の蒸発を抑え、焼結体の化学量
論組成からの組成ずれを防ぐ効果がある。
【0029】
得られた焼結体(LaAs,Fe2As,及びFeAsの混合物である。)と無水化した
La23を、LaとFeのモル比が1:1になるように混合した混合体を石英管中に入れ
、真空に排気した後、室温で不活性ガスを導入する。LaFeOAsにフッ素をドーピン
グする場は、前記混合体に、LaF3とLaの混合体をLa23に対するモル比率で、約
0.01以上0.2以下を添加すればよい。
【0030】
焼結は不活性ガス雰囲気中で、1100℃~1250℃に加熱保持することにより行なう
。好ましくは、該混合体を封入した石英管を約1200~1250℃に昇温し、40時間
程度保持する。前記砒素化合物のAsが昇華しやすいことを考慮し、混合粉末には、As
を約2モル%過剰に加えることにより化学当量組成の化合物を得ることができる。次に、
石英管を約1100~1050℃に冷却し、10時間程度保持した後、250℃/時間程
度の速度で、室温まで冷却する。約1200~1250℃にまで昇温するのは、化学反応
速度を大きくし、LaFeOAsの単一相を得るためであり、その後約1100~105
0℃に長時間保持するのは、焼成度を上げるためである。約1200~1250℃に長時
間保持すると、Asが揮発し、異相が生じてしまう。
【0031】
図4(a)に、比較例3で得られた焼結体のX線回折パターンを示している。この図4(
a)から、該焼結体の結晶構造は、ZrCuSiAs型(空間群P4/nmm)であり、
さらに、その相が90%超で構成されていることが分かる。
【0032】
該焼結体をターゲットにして、パルスレーザー堆積法により、550℃~900℃、より
好ましくは、600℃~700℃に昇温したMgO基板上にLaFeOAs薄膜を成膜す
ることができる。基板としては、MgOが適しているが、900℃の温度に耐えられるシ
リカガラス、アルミナ、イットリウム安定化ジルコニアなどの基板を使用することができ
る。また、室温の基板上に堆積し、シリカガラス中に不活性ガスと共に封入し、900℃
から1100℃、10時間未満加熱してアニールしてもよい。LaFeOP膜の堆積法は
、パルスレーザー堆積法が簡便であるが、スパッター法、蒸着法などの他の気相法を用い
ることもできる。
【0033】
図2に、比較例1で得られた焼結体の電気抵抗率の温度変化を示している。図2から、得
られた焼結体は約5Kで電気抵抗がゼロとなり、超伝導相へ転移したことが分かる。超伝
導相では、マイスナー効果により、帯磁率が完全反磁性を示すので、図3に示すこの焼結
体の磁化の温度変化から、該化合物が超伝導相に転移したことを確認できる。次に、実施
例及び比較例により、本発明を詳細に説明する。
[比較例1]
【0034】
(LaFeOP焼結多結晶体)
市販のLa23(純度99.99モル%、日本高純度化学株式会社)を600℃で10時
間空気中で加熱して脱水した。また、La金属(純度99.5モル%、信越化学工業株式
会社)、Fe金属(純度99.9モル%、日本高純度化学株式会社)、P(純度99.9
99%、株式会社レアメタリック)を1:3:3のモル比率で混合した。各原料の秤量・
微粉化・混合は、全て乾燥不活性ガスで充満したドライボックス中で行った。次に、混合
した粉末(混合粉末A)を、シリカ管中に封入し、シリカ管内部を、室温で0.1気圧の
アルゴンガスで充填し、700℃で10時間焼成した。
【0035】
得られた焼成体は、LaP,Fe2P,FePの混合物(混合物A)であった。混合物A
と脱水したLa23を、1:1のモル比で、該ドライボックス中で混合し、混合物Aを得
るために用いたと同じ方法でシリカ管に封入し、1200℃で40時間焼結した。得られ
た焼結体は、図1(a)に示すX線回折(XRD)パターン(無添加)から、90%以上
の純度を有するLaFeOP多結晶体であることが示された。
【0036】
上記で得られたLaFeOP焼結多結晶体の電気抵抗を、銀ペーストで電極を形成し、四
端子法により、2Kから300Kの範囲で測定した。また、試料振動型磁化測定装置(V
SM装置)を用いて、磁気モーメントを1.8~300Kの温度範囲で測定した。これら
の測定には、Quantum Design Physical社のPPMS装置を用いた。
【0037】
図2(a)に示すように、2~4Kの温度領域で電気抵抗は、急速に減少し、ゼロとなっ
た。また、図3(a)に示すように、同じ温度で磁化が急速に減少し、マイナスの値とな
った。ゼロ電気抵抗及びマイナス磁化(マイスナー効果)から、得られたLaFeOP多
結晶体が超伝導体であることが分かった。また、作成した試料により、Tcにばらつきが
みられるが、このばらつきは、酸素イオン(O2-)又はリン元素(P)含有量が化学当量
組成からずれていることによると考えられる。ずれの大きさは格子定数で評価でき、得ら
れたLaFeOP多結晶体では、格子定数とTcには良い相関が見られ、該格子定数が小
さくなると、Tcが高くなることが示された。
[参考例1]
【0038】
(F-添加LaFeOP焼結多結晶体)
比較例1により作成した無水La23の10モル%を、LaF3とLa金属を1:1のモ
ル比で混合した粉末で置換した。得られた粉末と混合物Aを1:1のモル比で混合し、比
較例1に示した方法と同じ方法で、シリカ管中に封入し、1200℃で40時間焼結した

【0039】
得られた焼結体は、図1(c)に示すXRDパターン(F-添加)から、90%以上の純
度を有するLaFeOP相であることがわかった。また、比較例1で得られたLaFeO
P多結晶体に比較し、格子定数が小さくなっていることから、F-がO2-を一部置換した
ことが示された。
【0040】
上記で作成されたF-添加LaFeOP焼結多結晶体の電気抵抗と磁化の温度変化を、比
較例1で示した方法と同じ条件で測定した。図2(c)及び図3(c)(F-添加)に示
すように、7K付近で、電気抵抗がゼロとなり、同じ温度で、磁化がマイナスの値を示す
ことから、F-添加LaFeOP焼結多結晶体は超伝導転移を示すことが示された。F-
よるO2-の適量の置換によりTcが3K超高くなった。
[参考例2]
【0041】
(Ca2+添加LaFeOP焼結多結晶体)
Fe金属とPを1:1のモル比で混合し、シリカ管にアルゴンガスとともに封入し、1,
000℃で10時間焼成し、FePを作成した。また、CaC3(純度99.99%、
日本高純度化学株式会社)を、空気中で、920℃、10時間焼成し、無水CaOを作成
した。該FePと該CaOを比較例1で示したLaFeOP焼結体を作成するための混合
物Aに混ぜ、比較例1に示す方法で、シリカ管中にアルゴンガスとともに封入し、120
0℃で、40時間焼結した。
【0042】
得られた焼結体は、図1(b)に示すXRDパターン(Ca添加)から、90%以上の純
度を有するLaFeOP相であることがわかった。また、比較例1で得られたLaFeO
P多結晶体に比較し、格子定数が小さくなっていることから、Ca2+がLa3+を一部置換
したことが示された。
【0043】
上記で作成されたCa2+添加LaFeOP焼結多結晶体の電気抵抗と磁化の温度変化を、
比較例1で示した方法で測定した。図2(b)及び図3(b)(Ca2+添加)に示すよう
に、5K付近で、電気抵抗がゼロとなり、同じ温度で、磁化がマイナスの値を示すことか
ら、Ca2+添加LaFeOP焼結多結晶体は超伝導転移を示すことが示された。Ca2+
よるLa3+の適量の置換によりTcが1K程度高くなった。
[比較例2]
【0044】
(SmFeOP焼結多結晶体)
比較例1のLa金属をSm金属に置き替え、その他は比較例1と同じ条件で、焼結体を作
成した。得られた焼結体は、90%超の純度を有するSmFeOP多結晶体であった。こ
れは、電気抵抗及び磁化の温度変化から、Tcが2Kの超伝導体であった。LaをSmで
完全置換しても、超伝導相は発現するが、Tcが低下することが示された。
[比較例3]
【0045】
(LaFeOAs焼結多結晶体)
市販のLa23(純度99.99モル%、日本高純度化学株式会社)を600℃で10時
間空気中で加熱して脱水した。また、La金属(純度99.5モル%、信越化学工業株式
会社)、Fe金属(純度99.9モル%、日本高純度化学株式会社)、As(純度99.
999%、株式会社レアメタリック)を1:3:3のモル比率で混合した。各原料の秤量
・微粉化・混合は、全て乾燥不活性ガスで充満したドライボックス中で行った。次に、混
合した粉末(混合粉末B)を、シリカ管中に封入し、シリカ管内部を、室温で0.1気圧
のアルゴンガスで充填し、700℃で10時間焼成した。得られた焼成体は、LaAs,
Fe2As,FeAsの混合物(混合物B)であった。混合物Bと脱水したLa23を、
1:1のモル比で、該ドライボックス中で混合し、混合物Bを得るために用いたのと同じ
方法で、シリカ管に封入し、1200℃で40時間焼結した。
【0046】
得られた焼結体は、図4(a)に示すXRDパターン(無添加LaFeOAs)から、9
0モル%以上の純度を有するLaFeOAs多結晶体であることがわかった。
[参考例]
【0047】
(F-添加LaFeOAs多結晶体)
比較例1により作成した無水La23のXモル%(X=0モル%~20モル%)を、La
3とLa金属を1:1のモル比で混合した粉末で置換した。得られた粉末と混合物Bを
1:1のモル比で混合し、比較例1に示した方法と同じ方法で、シリカ管中にアルゴンガ
スとともに封入し、1200℃で、40時間焼結した。
【0048】
得られた焼結体は、図4(b)に示すXRDパターン(5モル%フッ素添加LaFeOA
s)から、90%以上の純度を有するLaFeOAs相であることがわかった。また、格
子定数は、Xモル%の値にほぼ比例して減少した。測定された格子定数の減少から、F-
によるO2-の置換量を決定した。F-の含有量は、約20モル%まで可能であった。それ
以上にLaF3を原料に仕込むと、未反応LaF3相が不純物相として折出することがXR
Dパターンから確認された。特開2007-320829号公報記載の合成法では、F-
は、3モル%未満しかLaFeOAs相に含有させることができなかった。
【0049】
(F-添加LaFeOAsの超伝導転移温度の評価)
上記で得られたLaFeOAs焼結多結晶体及びフッ素を含むLaFeOAs焼結多結晶
体の電気抵抗を、比較例1と同じ方法で測定した。フッ素を含まないLaFeOAs多結
晶体は、電気抵抗は低下するものの、300Kから2Kまでの温度域では、電気抵抗はゼ
ロにはならず、超伝導転移は示さなかった。
【0050】
LaFeOAs多結晶体の合成法では、混合物Bの作成プロセスを経ているため、特開2
007-320829号公報で示した合成方法に比較して、合成プロセス中でのLa金属
の酸化が低減され、作成されたLaFeOAs多結晶体中のO2-及びAsの含有量が制御
され、化学当量組成に近くなったため超伝導転移が観測できなかったと考えられる。
【0051】
一方、フッ素イオンを4モル%以上添加したLaFeOAs多結晶体では、図5(A)に
示すように、30K付近から電気抵抗が低下しはじめ、20K付近でゼロとなる超伝導転
移を示した。この抵抗ゼロ化が超伝導転移であることは、図5(B)に示したF-を5モ
ル%含むLaFeOAs多結晶体の磁化が大きなマイナスの値を示すことで確認できた。
【0052】
図6に、得られた焼結体の超伝導転移温度のフッ素イオン添加量依存性を示す。黒丸は、
中点転移温度、白丸は、電気抵抗の低下が始まる温度(オフセット転移温度)を示す。図
6に示すように、LaFeOAs多結晶体中のF-含有量によるTcは、該F-含有量に依
存し、該F-含有量が11モル%のときに、最高転移温度(転移前の電気抵抗の1/2の
電気抵抗を示す温度:中点転移温度)が、26Kとなった。すなわち、F-を、4モル%
以上添加することにより、LaFeOAs焼結多結晶体は超伝導転移を示し、Tcが20
K超の高温となることが示された。
[比較例4]
【0053】
(LaNiOP焼結多結晶体)
La(純度99.5%、信越化学工業株式会社)とP(純度99.9999%、株式会社
レアメタリック)を1:1のモル比で混合して、シリカ管にアルゴンガスとともに封入し
、400℃12時間焼成してLaPを合成した。該LaとNiO(純度9
9.97%、日本高純度化学株式会社)を混合し、混合粉末Cを作成し、低温プレスによ
りペレットを作成した。該ペレットを、アルゴンガスとともにシリカ管に封入して、1,
000℃で、24時間焼結した。
【0054】
得られた焼結体は、図7(A)に示すXRDパターンから、LaNiOP多結晶体である
ことが確認された。該LaNiOP焼結多結晶体の電気抵抗及び磁化の温度変化を比較例
1と同様の方法で測定した。該LaNiOP多結晶体は、図8、図9(A)に示すように
、Tcが2.5Kの超伝導体であることが示された。
【実施例1】
【0055】
(F-,Ca2+,又はY3+添加LaNiOP焼結多結晶体)
比較例4と同様の方法でLaNiOPにF-、Ca2+、又はY3+を添加したLaNiOP
焼結多結晶体を作成した。F-、Ca2+の添加は、参考例1及び参考例2と同様の方法で
行った。Y3+の添加はCaOの代わりにY23を用いて実施例のCa2+の添加と同様の
方法で行った。図10(A)に示すように、Y3+,Ca2+、又はF-添加により、Tcが
上昇した。特に、La3+をY3+で適量だけ置換することにより、Tcが上昇したことから
、格子定数が小さくなることで、Tcの高温化に有効であることが示された。
[比較例5]
【0056】
(LaNiOAs多結晶焼結体)
比較例4でのPをAsに置き替え、その他は比較例4と同じ条件で、焼結体を作成した。
得られた焼結体は、図7(B)に示すXRDパターンから、純度が90%以上のLaNi
OAs多結晶体であることが示された。該LaNiOAs多結晶体の電気抵抗及び磁化の
温度変化を、比較例1で示した方法で測定し、該LaNiOAs多結晶体は、図8、図9
(B)に示すように、Tcが4Kの超伝導体であることが示された。
【実施例2】
【0057】
(F-,Ca2+,又はY3+添加LaNiOAs多結晶焼結体)
実施例と同様の方法でLaNiOAsにF-、Ca2+、又はY3+を添加したLaNiO
As焼結体を作成した。図10(B)に示すように、Y3+,Ca2+、又はF-添加により
、Tcが上昇した。特に、La3+をY3+で適量だけ置換することにより、Tcが上昇した
ことから、格子定数が小さくなることで、Tcの高温化に有効であることが示された。
[比較例6]
【0058】
(SmFeAsO多結晶焼結体)
Sm23粉末(純度99.99重量%、株式会社レアメタリック)を、空気中で、100
0℃、5時間熱処理し、脱水した。Sm金属(純度99.9重量%、株式会社ニラコ)、
Fe金属(純度99.9%重量%以上、日本高純度化学研究所株式会社)、As金属(純
度99.9999重量%、日本高純度化学研究所株式会社)を、金属元素比が、1:3:
3の当量比に混合し、石英管中に封入した。該石英管を、850℃で、10時間焼成した
。焼成物は、SmAs-Fe2As-FeAs混合粉末(混合物C)であった。
【0059】
脱水したSm23粉末と、混合物粉Cを、1:1の当量比で混合し、加圧プレスし、ペレ
ットを作成した。該ペレットを、アルゴンガス0.2気圧で充填した石英管中に封入し、
1300℃で、15時間、焼結した。得られた焼結体は、X線回折パターン(図11(b
)のx=0)から、ZrCuSiAs型結晶構造(図11(a))を有するSmFeAs
O多結晶焼結体あることが示された。また、FeAsが不純物相として含まれているが
、その重量%は、5%未満であった。
[参考例4]
【0060】
(F-添加SmFeAsO多結晶焼結体)
比較例6により作成した無水Sm23粉末にSmF3(純度99.99重量%、株式会社
レアメタリック社)及びSm金属粉末(純度99.5重量%、株式会社レアメタリック社
)を設定重量%加えた。該混合粉末と混合物Cを比較例6に示した方法と同じ方法で、石
英管中にアルゴンガスとともに封入し、1300℃で、15時間焼結した。
【0061】
得られた焼成ペレットは、X線回折スペクトル(図11(b)のx=0.069)から、
ZrCuSiAs型結晶構造を有するSmFeAsO1-xx(xは、フッ素含有量の原子
比)であることが示された。格子定数が、SmFeAsOより減少しており、Oの一部が
Fイオンで置換されていることが示された。フッ素の含有量は、格子状数から決定した。
格子定数から求めた重量%は、仕込み量とほぼ一致した。また、FeAs、Sm23、及
びSmOFが不純物相として含まれているが、その総重量は、5%未満であった。
【0062】
(F-添加SmFeAsO多結晶焼結体の電気伝導度及び磁化温度変化測定)
比較例6及び参考例で得られた多結晶焼結体の電気抵抗及び磁化を4.2K~300K
の範囲で測定した。電気伝導度測定は4端子法、磁化の測定は試料振動型磁化測定装置(
Quantum Design社;PPMS VSM option)を用いた。酸素を6.9原子%のフッ素で置換した
-添加SmFeAsO1-xx(x=0.069)では、低温において、電気抵抗がゼロ
となり、超伝導状態になることが示された(図12)。
【0063】
また、図12に示すように、x=0(フッ素ノンドープ)の試料では、磁化は温度と共に
増加し、常に正の値を示した。一方、x=0.069の試料では、磁化は温度共に次第に
増加するが、Tc付近で、急激に減少し、負の値となるマイスナー効果が観測された(図
13)。図14に、超伝導転移温度(黒丸)とオンセット温度(白丸)を示す。超伝導転
移温度は、x=0.045から有限の値となり、フッ素濃度の増加と共に、急激に上昇す
るが、やがて増加の割合は小さくなる。得られた最高の超伝導転移温度は、約55Kであ
った。すなわち、フッ素を含まないSmFeAsOでは、超伝導を示さないが、フッ素添
加により、超伝導体に変化することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の超伝導化合物は、公知のペロブスカイト型銅酸化物系超伝導化合物と異なり、遷
移金属のNiを含むオキシプニクタイド化合物であり、安価に製造することができる。さ
らに、本発明は、化学組成を変化させることで、Tcの更なる高温化の可能性があり、臨
界磁場を大きくできる超伝導化合物を提供する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13