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明細書 :光加工装置及び光加工方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5288498号 (P5288498)
公開番号 特開2010-120090 (P2010-120090A)
登録日 平成25年6月14日(2013.6.14)
発行日 平成25年9月11日(2013.9.11)
公開日 平成22年6月3日(2010.6.3)
発明の名称または考案の名称 光加工装置及び光加工方法
国際特許分類 B23K  26/40        (2006.01)
B23K  26/06        (2006.01)
H01L  21/027       (2006.01)
H01S   3/00        (2006.01)
FI B23K 26/40
B23K 26/06 A
H01L 21/30 531Z
H01S 3/00 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2010-021638 (P2010-021638)
分割の表示 特願2005-517943 (P2005-517943)の分割、【原出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
出願日 平成22年2月2日(2010.2.2)
優先権出願番号 2004034343
優先日 平成16年2月12日(2004.2.12)
優先権主張国 日本国(JP)
審判番号 不服 2012-018681(P2012-018681/J1)
審査請求日 平成22年2月2日(2010.2.2)
審判請求日 平成24年9月25日(2012.9.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】牧村 哲也
【氏名】村上 浩一
個別代理人の代理人 【識別番号】100110179、【弁理士】、【氏名又は名称】光田 敦
参考文献・文献 特開(JP,A)2003-167354
特開(JP,A)2001-68296
調査した分野 B23K 26/00
特許請求の範囲 【請求項1】
光源部と、集光照射手段とから成る光加工装置であって、
上記光源部は、レーザー光を集光光学系でターゲットに集光照射し、被加工物が切削又は切断されるための実効的な光吸収を生じるための軟X線を発生させる光源部であり、
上記集光照射手段は、上記軟X線の波長に応じて軟X線を高エネルギー密度に集光する光学系を備え、該高エネルギー密度に集光された軟X線を、被加工物に所定のパターンで照射し、加工用レーザー光をさらに吸収させることなく、上記被加工物を切削又は切断することを特徴とする光加工装置。
【請求項2】
上記軟X線の波長に応じて軟X線を高エネルギー密度に集光する光学系は、回転放物面ミラー、トロイダルミラー、回転楕円ミラー及び回転双曲線ミラーから成る群のうちのいずれか1種のミラー又は2種以上のミラーの組み合わせから成ることを特徴とする請求項1に記載の光加工装置。
【請求項3】
上記軟X線の波長に応じて軟X線を高エネルギー密度に集光する光学系は、回転双曲面ミラーと回転楕円面ミラーとを組み合わせて成るウォルターミラーであることを特徴とする請求項1に記載の光加工装置。
【請求項4】
光源部において、レーザー光を集光光学系でターゲットに集光照射し、被加工物が切削又は切断されるための実効的な光吸収を生じるための軟X線を発生させ、
上記軟X線を、該軟X線の波長に応じて集光照射手段にて高エネルギー密度に集光し、該高エネルギー密度に集光した軟X線を、所定のパターンで被加工物に照射し、加工用レーザー光をさらに吸収させることなく、上記被加工物を切削又は切断することを特徴とする光加工方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を多段階の工程を経ることなく1工程で、微細に(数nmまでの精度で)加工する汎用性の高い光加工装置及び光加工法に関するものである。本発明の加工対象である被加工物には、無機材料、有機材料、透明材料、不透明材料、或いはSi、SiO、シリコーン等のSi系材料等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
無機材料は、例えばフォトニッククリスタルや光導波路等の光素子、医療及びバイオテクノロジーにおける超微量な化学分析及び化学反応等の分野で利用価値が高く、無機材料の精度に優れ、低コストの加工や改質の技術が要請されている。
【0003】
従来、レーザー光を物質に強照射し、照射面を剥ぎ取ることで加工するレーザーアブレーションという技術は、炭酸ガスレーザーを用いた金属加工において既に実用化されている。最も微細化が進んでいる光リソグラフィーに代表される光を用いた加工では、加工精度は加工に用いるレーザー光の波長で制限され、よくて100nmの程度である。
【0004】
又、従来の光加工技術で、特に無機透明材料を加工しようとしても、無機透明材料は無色であるからレーザー光を吸収しないため加工は困難である。
【0005】
さらに、無機材料等の被加工物の光加工技術として既に知られている従来技術については次のとおりである。
(1)被加工物を光を吸収する溶液に浸してレーザー加工を行なう技術が報告されているが、加工精度は波長の程度まで到達していない。
【0006】
(2)被加工物表面にレーザーアブレーションにより生成したレーザープラズマを接触させて、この部分に加工用レーザー光を照射すると、そのエネルギーを吸収したプラズマで被加工物が削り取られることが報告されている。しかしこの技術においても、加工精度は波長の程度まで到達していない。
【0007】
(3)二酸化珪素にFレーザーを照射すると非晶質性に起因する状態に吸収され、その状態で同時にKrF(クリプトンフロライド)レーザー光を強照射することにより、加工を行なえることが報告されている。この技術では、第一のレーザー光を吸収する状態が予め存在することが前提となり、汎用性が低い。
【0008】
(4)被加工物にフェムト秒レーザー光を照射し、同時に複数の光子を吸収させる多光子吸収により透明な加工物でも吸収が起こり、切削や改質の加工が可能となるが、加工精度は波長程度までである。
【0009】
(5)被加工物の表面でフェムト秒レーザー光の2つのビームを干渉させ、数nmの干渉パターンで加工できることが報告されている。しかしながら加工できるパターンは限られている。
【0010】
さらに、5~200μmの厚さのポリイミドフィルムなどの絶縁性フィルムの表面をレーザによって25μmφ程度のバンプホールの穿孔することで生じたバンプホール内やその周辺に付着した「すす」や「かす」などのカーボン等をプラズマ処理及び/又はX線(軟X線)照射で処理し、除去することは知られている(特許文献1参照)。
【0011】
そして、本発明者は、石英等の無機透明材料をナノスケール(10nmまで)の精度で加工できる汎用性の高い加工技術を実現するために、図7に示すように、軟X線源1から放射される軟X線2を、凸面鏡と凹面鏡の組み合わせから成る光学系3により所定のパターンで無機透明材料4に集光して照射し、無機透明材料4の照射部分のみに新たな吸収を生じさせ、これに加工用のレーザー光5を照射することにより、パターニングした無機透明材料4の部分のみに高エネルギー密度の可視又は紫外の加工用のレーザー光5(Nd:YAGレーザー光(266nm))を吸収させて無機透明材料4を加工する加工装置及び加工方法をすでに提案している(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開2002-252258号公報
【特許文献2】特開2003-167354号公報
【特許文献3】米国特許第6,818,908号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1記載の技術は、5~200μmの厚さのポリイミドフィルムなどの絶縁性フィルムに25μmφ程度の穿孔をレーザ加工を行い、その残渣等の除去においてプラズマ処理及び/又はX線(軟X線)照射を利用するものであり、被加工物をナノ精度で加工するものではない。
【0014】
そして、上記特許文献2、3に記載の技術は、ナノスケールの精度で石英等の無機透明材料を加工できる汎用性の高い加工技術を実現するものであるが、パターニングした軟X線により生成された吸収体による紫外線吸収を利用しているために、パターニングした軟X線(パターニング光)と加工用のレーザー光の両方を照射しなくてはならないので、装置や加工操作が複雑になり、さらには、吸収体が生成される材料のみが加工可能であることから、さらに改良の余地があるという問題があった。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、加工用のレーザー光を照射することなく紫外光及び/又は軟X線のみで、被加工物のナノオーダーの加工を可能とすることを目的とするものであり、そのために加工に最適な紫外光及び/又は軟X線を発生するための光源を選択するとともに、紫外光及び/又は軟X線の波長とマッチして集光効率を向上させ紫外光及び/又は軟X線のエネルギー密度を高くする最適条件を備えた紫外光及び/又は軟X線と楕円ミラーの構成を実現することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題を解決するために、光源部と、集光照射手段とから成る光加工装置であって、上記光源部は、レーザー光を集光光学系でターゲットに集光照射し、被加工物が実効的に光吸収を生じるための紫外光及び/又は軟X線を発生させる光源部であり、上記集光照射手段は、上記紫外光及び/又は軟X線の波長に応じて紫外光及び/又は軟X線を高エネルギー密度に集光する光学系を備え、該高エネルギー密度に集光された紫外光及び/又は軟X線を、被加工物に所定のパターンで照射し、上記被加工物を切削又は切断することを特徴とする光加工装置を提供する。
【0017】
上記紫外光及び/又は軟X線の波長に応じて紫外光及び/又は軟X線を高エネルギー密度に集光する光学系は、回転放物面ミラー、トロイダルミラー、回転楕円ミラー及び回転双曲線ミラーから成る群のうちのいずれか1種のミラー又は2種以上のミラーの組み合わせから成る構成としてもよい。
【0018】
上記紫外光及び/又は軟X線の波長に応じて紫外光及び/又は軟X線を高エネルギー密度に集光する光学系は、回転双曲面ミラーと回転楕円面ミラーとを組み合わせて成るウォルターミラーである構成としてもよい。
【0019】
本発明は上記課題を解決するために、光源部において、レーザー光を集光光学系でターゲットに集光照射し、被加工物が実効的に光吸収を生じるための紫外光及び/又は軟X線を発生させ、上記紫外光及び/又は軟X線を、該紫外光及び/又は軟X線の波長に応じて集光照射手段にて高エネルギー密度に集光し、該高エネルギー密度に集光した紫外光及び/又は軟X線を、所定のパターンで被加工物に照射し、上記被加工物を切削又は切断することを特徴とする光加工方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
以上の構成からなる本発明によれば、加工に最適な軟X線を発生するための光源を選択するとともに、軟X線の波長とマッチして集光効率を向上させる楕円ミラーを利用することで、軟X線のエネルギー密度を高くし、パターニングした軟X線(パターニング光)と加工用のレーザー光の両方を照射することなく、パターニングした軟X線のみで、被加工物をナノスケールの精度で加工できる。
【0021】
本発明によれば、無機材料、有機材料、或いはSi、SiO、シリコーン等のSi系材料等の被加工物が加工でき、しかも、透明材料も不透明材料も加工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明の実施例1の構成を説明する図である。
【図2】図2は本発明の実施例1を説明する図である。
【図3】図3は本発明の実施例2の構成を説明する図である。
【図4】図4は本発明の実施例1を説明する図である。
【図5】図5は本発明の実施例1と実施例2を説明するために必要な引用資料である。
【図6】図6は本発明の実施例3の構成を説明する図である。
【図7】図7は本発明の従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る無機材料等の被加工物を加工する光加工装置及び光加工方法の実施の形態を実施例に基づいて図面を参照して説明する。

【0024】
本発明は、無機材料等の被加工物に数nmの精度で加工を可能とする加工装置及び加工方法であるが、まず、本発明の基本原理について説明する。従来のようにレーザで被加工物の加工を行おうとしても加工精度は波長程度までである。又、被加工物が無機透明材料の場合は無色であるから光を吸収しにくいために、直接レーザー光を照射しても加工はできない。

【0025】
本発明者による先行発明(特許文献2、3参照)は、パターニング光を照射した部分のみで新たな光吸収が生じることを利用し、コストや安定性等の面で有利なより波長の長い可視から紫外の波長領域の加工用レーザー光をさらに照射し吸収させて、容易に軟X線の波長程度までの加工精度が確保できる加工(切削、切断等の加工)や改質が可能とするものである。

【0026】
これに対して、本発明は、パターニング光として使用する軟X線を高エネルギー密度に被加工物に集光照射することで、別の加工用レーザー光をさらに吸収させることなく、軟X線の波長程度までの加工精度が確保できる加工(切削、切断等の加工)を可能とするものである。

【0027】
このような原理である本発明では、軟X線を無機材料等の被加工物に加工すべき所定の形状になるようにパターン化して照射することで、同時に被加工物の表面の加工(切削、切断等の加工)も可能とするものである。

【0028】
この原理を実現するために、本発明では、軟X線を、その波長にマッチした構成の光学系を用いて高エネルギー密度となるように集光を行い、これを、可動走査ステージ或いはマスタパターン等のパターニング光照射化手段を用いて被加工物に照射し、所定のパターンで加工(切削、切断等の加工)するものである。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明に係る光加工装置及び光加工方法の実施例1の構成を説明する図である。この実施例1の装置は、光源部7、集光照射手段である光学系15及び試料部9から構成される。
【実施例1】
【0030】
軟X線を発生する光源部7は、レーザー光を集光光学系12でターゲット13に集光照射し、軟X線14を発生させる構成としている。
【実施例1】
【0031】
レーザーとしては、エキシマレーザー、Nd:YAGレーザー、チタンサファイアレーザーに代表されるフェムト秒レーザー等が用いられ、ターゲットとしては、スズ、タンタル、ハフニウム、キセノン等のターゲットが用いられる。本実施例では、Nd:YAGレーザー11から720mJ/pulse、532nmのパルスレーザー光をTa(タンタル)ターゲットに集光することにより軟X線14を発生する。
【実施例1】
【0032】
光源部7から軟X線14を発生させて楕円ミラー15で集光させて、被加工物19(無機材料等)に照射する。これにより、被加工物19に所定のパターンで軟X線を照射し、被加工物19の加工(切削、切断等の加工)が可能となる。
【実施例1】
【0033】
被加工物に、軟X線を、加工すべき所定の形状に合わせたパターンになるように照射するパターン化照射手段は、本実施例1では、被加工物19を設置した可動なステージ20を軟X線に対して相対的に走査する構成とすることにより実現できる。これ以外のパターン化照射手段としては次のような構成がある。
【実施例1】
【0034】
(1)走査鏡により、軟X線を被加工物に集光照射し、走査することでパターニングする。
(2)被加工物の表面にコンタクトマスクを配置して、このコンタクトマスクのスリットを通して軟X線をパターン照射する。
(3)軟X線をマスタパターンと結像光学系により所定のパターンを転写する。
【実施例1】
【0035】
ここで本発明の特徴とする構成は、光源部7からの軟X線14は、単位時間、単位体積当たりの光子数の多い高エネルギー密度のレーザープラズマ軟X線を使用し、これを、楕円ミラー15を使用して広い立体角で集光して軟X線のエネルギー密度を高め、これを被加工物19に照射することで、従来のように、パターニング光(軟X線)を照射した部分に、さらに加工用レーザを照射する必要なく、加工可能とする構成である。
【実施例1】
【0036】
特に重要な点は、本発明者等は、使用する軟X線14の波長域における楕円ミラー表面での入射角及び反射率を考慮し、楕円ミラーの集光効率が高くなるよう楕円ミラー15の形状を設計した点である。このような楕円ミラー15の構成(設計)について次に説明する。
【実施例1】
【0037】
図2は、本発明に係る楕円ミラー15を説明するための図である。楕円ミラー15は、図2(a)に示すように、2つの焦点を通る回転軸X-X’の周りに楕円又はその一部を回転させることにより形成されるミラーである。その回転楕円体の内面が反射面となるものである。
【実施例1】
【0038】
図2(b)は楕円ミラー15を、楕円体の回転軸X-X’を含む平面で切断した断面図である。ここで、A、Bは楕円ミラー15の焦点であり、焦点Aの位置に軟X線14の発生源(ターゲット13)を配置し、焦点Bに配置した被加工物19に集光する。
【実施例1】
【0039】
2つの焦点A、Bの中点を原点とし、回転軸X-X’と同じ方向にx軸、それと垂直な方向にy軸をとることとする。この座標系において、断面を形成する楕円をx/a+y/b=1と表すこととする。
【実施例1】
【0040】
図2(b)において、2wは楕円ミラー15の回転軸方向の長さとする。焦点A、Bの座標をそれぞれ(-f、0)、(f、0)とする。このとき、楕円の焦点A、B間の距離は2fである。楕円ミラー15の反射面の回転軸方向の端点のうち焦点Aに近い方を点P、遠い方を点Qとする。このとき、「焦点Aと端点Pを通る直線AP」と「焦点Aと端点Qを通る直線AQ」がなす見込み角をφとする。
【実施例1】
【0041】
楕円とy軸の交点(0、b)を点Cとし、「点C(0、b)における楕円の接線」と「焦点A(-f、0)と点C(0、b)を通る直線」がなす角をθとする。この角θは、焦点Aから出た光が楕円ミラー15に入射する時の仰角である。
【実施例1】
【0042】
図2(c)は楕円ミラー15を、原点Oを通り、回転軸に垂直な平面で切断した断面図である。ψは楕円ミラー15を見込む角度である。点M、Nをそれぞれ楕円ミラーの端点とすると、ψは直線OMと直線ONがなす角である。
【実施例1】
【0043】
焦点Aに置いた軟X線14の発生源からの軟X線14を、どれだけ焦点Bにある被加工物上に集められるかは、「φとψで決まるミラーの立体角」と「ミラー表面の反射率R」によって決定される。ここで、ψは大きいほど集光できる光量が多くなる。
【実施例1】
【0044】
ψを加工可能な最大値に固定すると、集光効率は、反射率Rと見込み角の積Rφで決まる。以下では、これを「集光効率」ということにする。
【実施例1】
【0045】
楕円ミラー15の長軸方向の長さ2w及び焦点間距離2fの比を一定にした場合、θを大きくすると、φは大きくなるが反射率Rが小さくなる。逆に、θを小さくすると、φは小さくなるが反射率Rが大きくなる。本発明では、これらのことを考慮して集光効率R×φを大きくすることを楕円ミラー15の設計指針とする。
【実施例1】
【0046】
ところで、図2(b)において、楕円の焦点A、B(±f,0)は、次の数式2で表される。
【実施例1】
【0047】
【数2】
JP0005288498B2_000002t.gif
【実施例1】
【0048】
点Pの座標は、a=f/cosθ、b=ftanθ であることを注意すると、次の数式3で表される。
【実施例1】
【0049】
【数3】
JP0005288498B2_000003t.gif
【実施例1】
【0050】
従って、図2(b)に示す「焦点Aと端点Pを通る直線AP」と回転軸X-X’がなす角αとすると、tanαは次の数式4で表される。
【実施例1】
【0051】
【数4】
JP0005288498B2_000004t.gif
【実施例1】
【0052】
この数式4から、αは、「仰角θ」と「焦点間距離2fに対する楕円ミラー15の長軸方向の長さ2wの比2w/2f=w/f」により決まってくることがわかる。
【実施例1】
【0053】
同様に、図2(b)に示す「焦点Aと端点Qを通る直線AQ」と回転軸X-X’がなす角をβとすると、tanβは次の数式5のように表される。
【実施例1】
【0054】
【数5】
JP0005288498B2_000005t.gif
【実施例1】
【0055】
そして、見込み角φは次の数式6で表される。
なお、数式6中、tan-1はtanの逆関数である。
【実施例1】
【0056】
【数6】
JP0005288498B2_000006t.gif
【実施例1】
【0057】
以上からして、本発明を実施する加工装置の全体的な大きさから、軟X線の発生源(焦点A)と被加工物19(焦点B)との焦点間距離2fと、楕円ミラー15の長軸方向の長さ2wを設定し、仰角θを決めれば、α、β、φがそれぞれ一意に決まる。これにより、楕円ミラー15の楕円形状が決定され、楕円ミラー15の反射面が形成可能となる。
【実施例1】
【0058】
ところで、仰角θは次のように決めればよい。軟X線14の楕円ミラー15の反射面における反射率Rは、反射表面の材料と軟X線14の波長と仰角θに依存する。この依存性については既存値を使用する。一方、φは仰角θに依存し、数式6からφを算出できる。このようにして得られた使用する軟X線14の波長に対してR×φが最大となるように仰角θを決定する。
【実施例1】
【0059】
本実施例では、波長が10nm前後の軟X線を使用することとする。この波長領域で反射率Rが高い金を反射表面に使用する。実際には、楕円ミラー15本体を石英で作成し、石英の表面をクロムコートし、さらにその上に金コートする。
【実施例1】
【0060】
本発明者らが行った仰角θの決定の具体例を、図2と、図4に示すグラフを参照して説明する。図2(b)において、楕円ミラー15の長軸方向の長さ2w、楕円ミラー15の焦点A、B間の距離2fをそれぞれ2w=80mm、2f=150mmとした。
【実施例1】
【0061】
そして、10nm前後の波長の軟X線領域における波長及び仰角θに対する反射体である金(Au)の表面の反射率Rの既存値として、図5に示す引用資料である「Atomic Data and Nuclear Data Tables vol.54 No.2 July(1993) p.315」記載の「TABLE III. Specular Reflectivity for Mirrors」の表、及びこの表をプロットして作成されたグラフに示す値を引用した。
【実施例1】
【0062】
なお、この引用資料中、「Line」は、X線領域における各物質の発光線である。「E(eV)」は、当該各種のX線光源材料から発生したX線の光子エネルギー(1つの光子の持つエネルギー)である。「θ」は、X線が金表面に入射する入射角(金表面と入射するX線とのなす角度)であり、その単位はミリラジアン(mr)である。「P(%)」は反射率である。「ρ=19.30gm/cm 」は
反射体である金の密度を示す。
【実施例1】
【0063】
このようにして得られたのが図4(a)に示すグラフである。このグラフによると、θが4.6°~23.9°の範囲で、10nm前後の波長の軟X線14が効率良く集光できるという知見を得た。特に、図4(a)に示す例では、θ=11.5°にすると集光効率Rφが最大となる。又、より長波長の軟X線14を集光するには、θを大きくすると集光効率が高くなる。一方、特に8nm以下のより短波長の軟X線14を集光するにはθ=7.2°以下とすると集光効率Rφが高くなる。
【実施例1】
【0064】
ところで、焦点Aに置いた軟X線14の発生源からの軟X線14を、どれだけ焦点Bにある被加工物上に集められるかは、前述のとおり、「φとψで決まるミラーの立体角ω」と「ミラー表面の反射率R」によって決定されるが、ψを加工可能な最大値に固定すると、集光効率は、概略、反射率Rと見込み角の積Rφで決まる。そして、図4(a)は、このRφを「集光効率」と仮定して得られたグラフである。より正確に「φとψで決まるミラーの立体角ω」と「ミラー表面の反射率R」により算出して得られた、集光効率を表すグラフを図4(b)で示す。
【実施例1】
【0065】
即ち、図4(b)は、入射角θを50mr、…………400mrと変化させて、光子エネルギー(入射光の1つの光子の持つエネルギー)に対する集光効率R×ω/4πを示すグラフである。
【実施例1】
【0066】
図4(b)に示すグラフによると、100eVの光子エネルギーを有する軟X線14はθ=300mrとすると効率良く集光でき、また150eVの光子エネルギーを有する軟X線14はθ=200mrとすると効率良く集光できるという知見を得た。図4(a)でも、図4(b)でも、より高い光子エネルギーを有する軟X線を効率よく集光するためには、θを大きくする必要がある点で同じ傾向が得られた。図4(a)ではより簡便に、図4(b)ではより精密に最適な入射角θが求められる。
【実施例1】
【0067】
軟X線14が楕円ミラー15で試料部9に高エネルギー密度に集光される。この軟X線14は、可動なステージ20(載置台)上に載置された被加工物19に照射される。ステージ20が軟X線14に対して所定の移動をすることで、被加工物19に所定のパターンで加工を行う。
【実施例1】
【0068】
なお、パターニングとしては上記のとおり、可動なステージ20を採用するのではなく、コンタクトマスクを使用してもよい。即ち、軟X線14を集光光学系を用いて高エネルギー密度にし、さらにコンタクトマスクを用いて所定のパターンにパターニングして被加工物19に照射することで、切削、切断等の加工が可能となる。
【実施例1】
【0069】
コンタクトマスクとして、被加工物19の軟X線が照射される被加工面にパターニングするためのマスクの材料を直接成膜したものを用いてもよい。コンタクトマスクの成膜手段としては、例えば、蒸着又はスパッタリングを利用する。コンタクトマスクの材料としては、WS(タングステンシリサイド)、Au、Cr等の材料が利用される。パターニングには、光リソグラフィ法、電子ビームリソグラフィ法、又はレーザー加工法を用いる。
【実施例2】
【0070】
図3は、本発明に係る光加工装置及び光加工方法の実施例2を説明する図である。この実施例2は、実施例1同様に、レーザープラズマ軟X線14を、楕円ミラー15で集光しエネルギー密度を高くし、ステージ20上の被加工物19の表面に照射し加工を行う加工装置及び加工方法である。
【実施例2】
【0071】
この実施例2は、そのパターニングは、マスターパターン16を結像光学系17により転写する例である。即ち、楕円ミラー15で集光された軟X線14をマスターパターン16を透過させて、結像光学系17によりパターン光18として被加工物19に照射する構成を採用している。
【実施例3】
【0072】
図6は、本発明に係る光加工装置及び光加工方法の実施例3を説明する図である。この実施例3は、実施例2の光学系17に代えてウォルターミラー21を利用した構成であり、その他の構成は、実施例2と同じである。即ち、楕円ミラー15で集光された軟X線14をマスターパターン16を透過させて、ウォルターミラー21によりパターン光18として被加工物19に照射する構成を採用している。
【実施例3】
【0073】
この実施例3では、マスターパターン16を透過した軟X線14を、紫外光及び/又は軟X線の波長に応じて紫外光及び/又は軟X線を高エネルギー密度に結像する光学系としてウォルターミラー21を利用する。
【実施例3】
【0074】
ウォルターミラー21は、回転双曲面ミラーと回転楕円面ミラーとを組み合わせて成るミラーである。軟X線14をウォルターミラー21の反射面で2回反射させて、被加工物19にパターニング照射する。これにより、被加工物19に所定のパターンで軟X線を照射し、被加工物19の加工(切削、切断等の加工)が可能となる。
【実施例3】
【0075】
以上、本発明に係る光加工装置及び光加工方法の実施形態を実施例に基づいて説明したが、本発明は、特にこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることはいうまでもない。例えば、上記実施例1、2では、軟X線の波長に応じて軟X線を高エネルギー密度に集光する光学系として楕円ミラーを使用し、実施例3では楕円ミラーとウォルターミラーを利用したが、楕円ミラーやウォルターミラー以外に、回転放物面ミラー、トロイダルミラー、回転楕円ミラー又は回転双曲線ミラー、或いはこれらタイプの異なるミラーの組み合わせを採用する構成もある。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は以上の構成であるから、例えばフォトニッククリスタルや光導波路等の光学機能性部品、DNA分析や血液検査等のマイクロチップケミストリーの分野等に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 光源
2、18 パターニング光
3、17 光学系
4、19 被加工物
5 加工用レーザー光
6 加工用レーザー
7 光源部
8 パターン化照射手段部
9 試料部
11 紫外光及び/又は軟X線発生レーザー
12 集光光学系
13 Taターゲット
14 軟X線
15 楕円ミラー
16 マスターパターン
20 ステージ
21 ウォルターミラー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6