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明細書 :パターンの形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5618599号 (P5618599)
公開番号 特開2010-263202 (P2010-263202A)
登録日 平成26年9月26日(2014.9.26)
発行日 平成26年11月5日(2014.11.5)
公開日 平成22年11月18日(2010.11.18)
発明の名称または考案の名称 パターンの形成方法
国際特許分類 H01L  21/208       (2006.01)
H01L  21/316       (2006.01)
FI H01L 21/208 Z
H01L 21/316 G
請求項の数または発明の数 9
全頁数 20
出願番号 特願2010-090578 (P2010-090578)
出願日 平成22年4月9日(2010.4.9)
優先権出願番号 2009095500
優先日 平成21年4月10日(2009.4.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年8月28日(2012.8.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
発明者または考案者 【氏名】下田 達也
【氏名】松木 安生
【氏名】川尻 陵
【氏名】増田 貴史
【氏名】金田 敏彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100080609、【弁理士】、【氏名又は名称】大島 正孝
【識別番号】100109287、【弁理士】、【氏名又は名称】白石 泰三
審査官 【審査官】越本 秀幸
参考文献・文献 特開2001-179167(JP,A)
特開平06-191821(JP,A)
特開2005-093611(JP,A)
調査した分野 H01L 21/208
H01L 21/316
B29C 59/02
C01B 33/02
C01B 33/027
特許請求の範囲 【請求項1】
基板とパターン状モールドとの間隙に、水素化ケイ素化合物およびハロゲン化ケイ素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物を配置する第一の工程と
配置した前記シラン化合物に熱処理および紫外線照射処理から選択される少なくとも1種の処理を施す第二の工程と
を含むパターンの形成方法において、
前記第一の工程が、基板上にシラン化合物の被膜を形成し、次いで該被膜上にパターン状モールドを配置して加圧することにより行われるものである、前記パターンの形成方法。
【請求項2】
前記シラン化合物が高次シラン化合物であり、第二の工程における処理が熱処理である、請求項1に記載のパターンの形成方法。
【請求項3】
前記高次シラン化合物が、下記式(2)および(3)
Si2i (2)
Si2j-2 (3)
(上記式中、Xは、それぞれ、水素原子またはハロゲン原子であり、iは3~8の整数であり、jは4~14の整数である。)
のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物に紫外線を照射して得られたものである、請求項2に記載のパターンの形成方法。
【請求項4】
前記高次シラン化合物の粘度が0.0005~1,000Pa・sである、請求項3に記載のパターンの形成方法。
【請求項5】
前記第二の工程における熱処理が、基板およびパターン状モールドの間隙に高次シラン化合物を配置した状態において行われるものである、請求項2に記載のパターンの形成方法。
【請求項6】
前記第二の工程における熱処理が、高次シラン化合物上のパターン状モールドを除去した状態において行われるものである、請求項2に記載のパターンの形成方法。
【請求項7】
前記シラン化合物が記式(2)および(3)
Si2i (2)
Si2j-2 (3)
(上記式中、Xは、それぞれ、水素原子またはハロゲン原子であり、iは3~8の整数であり、jは4~14の整数である。)
のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、前記第二の工程における処理が前記紫外線照射処理である、請求項1に記載のパターンの形成方法。
【請求項8】
前記第二の工程が不活性雰囲気または還元性雰囲気下で行われ、形成されるパターンがシリコンからなるものである、請求項1~7のいずれか一項に記載のパターンの形成方法。
【請求項9】
前記第二の工程の少なくとも一部が酸素含有雰囲気下で行われ、形成されるパターンがシリコン酸化物からなるものである、請求項1~7のいずれか一項に記載のパターンの形成方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路、薄膜トランジスタの如き半導体デバイスには、パターン状に形成されたシリコン膜、例えばアモルファスシリコン膜、多結晶シリコン膜、単結晶シリコン膜が使用されている。シリコン膜のパターン形成は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法の如き気相プロセスによって全面にシリコン膜を形成した後、フォトリソグラフィーによって不要部分を除去するプロセスで行われることが一般的である。しかしながら、この方法では気相プロセスを用いるため、大掛かりな装置が必要であること、原料の使用効率が悪いこと、原料が気体であるため扱いにくいこと、大量の廃棄物が発生すること等の問題がある。
【0003】
一方、半導体デバイスの電気絶縁膜、誘電体膜および保護膜としてはシリコン酸化膜が多用されている。シリコン酸化膜の形成方法としては、気相プロセス、ゾルゲル法等が知られている。上記気相プロセスとしては、例えばシリコンを空気中で熱酸化する方法、シランガスやジシランガスを原料として酸素、酸化窒素の如き酸化性ガス中で行うプラズマCVD法、石英から直接スパッタリング法で形成する方法等を;
上記ゾルゲル法としては、例えばテトラエトキシシランの如きアルコキシシランを部分加水分解したゾル状態で基板に塗布した後に加熱分解する方法等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち、気相プロセスはシリコン膜形成の場合と同様の問題点がある。またゾルゲル法は、反応が進むにつれて水が生成するため、緻密なシリコン酸化膜が得られにくく、膜中の内部応力の発生に起因する亀裂が発生しやすい欠点があるほか、高温で加熱する工程を経るため、耐熱性の低い基板、例えばプラスチック基板には適用できなかった。
【0004】
そこで、液相プロセスを用いるシリコン膜およびシリコン酸化膜の形成方法が種々検討されている。例えば特許文献1および特許文献2には、液体状のシラン化合物、例えばシクロペンタシランと、
上記液体状のシラン化合物に紫外線を照射することによって光重合させて得られる高次シラン化合物と、
デカリン、テトラリン、メチルナフタレン、トルエン、デカン、オクタン、キシレン、ベンゼン等の溶媒と
を含有する高次シラン組成物を原料として用い、この高次シラン組成物を基板上に塗布し、溶媒を除去した後、熱処理することによってシリコン膜またはシリコン酸化膜を形成する方法が提案されている。
この液相プロセスによると、重厚長大な装置は不要となるため、工程面およびコスト面で大きな利点がある。しかしながら、アスペクト比の大きいパターンを形成するためには未だフォトリソグラフィーの如き付加的な工程を要し、工程の煩雑性は完全には解消されていない。さらに、環境面の負荷についての懸念も払拭されてはいない。
【0005】
ところで近年、ナノインプリント技術が開発され、注目されている。非特許文献1および非特許文献2には、金型に形成した数十~数百nmの凹凸パターンを、基板上に塗布した樹脂材料に押し付けることにより、樹脂材料にパターンを転写する技術が記載されている。ナノインプリント工程は、低コストにて短い工程時間で行うことができ、形成しうるパターン形状の自由度が大きい等の利点がある。しかしながら、ナノインプリント工程自体の工程コストは低廉であるが、パターンの元型となる金型が高価であるとの問題がある。さらに、この技術のより本質的な問題として、パターン形成が可能な樹脂材料が熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の有機樹脂材料に限られているため、上記半導体デバイスのシリコン膜またはシリコン酸化膜には、もとより適用しうるべくもない。
最近、上記ゾルゲル法とナノインプリント技術を組み合わせた技術が報告された。特許文献3には、アルコキシシランの如き加水分解性シラン化合物の部分加水分解をゾル状態で基板に塗布し、凹凸パターンを有する金型を押し付けた後に加熱焼成してさらに加水分解することにより、パターン状シリコン酸化膜を形成する技術が記載されている。この技術は、結局はゾルゲル法であるため、緻密なシリコン酸化膜が得られにくいこと、膜中に亀裂が発生しやすいこと、耐熱性の低いプラスチック基板等には適用できないことといった上記したゾルゲル法の欠点を継承しているほか、原理上、パターン状シリコン膜を形成することができるものではない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2003-313299号公報
【特許文献2】国際公開第00/59022号パンフレット
【特許文献3】特開2003-100609号公報
【特許文献4】特開2001-262058号公報
【0007】

【非特許文献1】Chou, S. Y. et.al., Appl. Phys. Lett., 67(21), 3114(1995)
【非特許文献2】Chou, S. Y. et.al., Science, 272, 85(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、半導体デバイスの製造プロセスにおける上記の如き現状を打破するべく、従来にないユニークな方法を提供することを目的とする。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、簡易な方法により、高温加熱を要しない穏やかな条件下で、パターン状のシリコン膜またはシリコン酸化膜を迅速且つ低コストで形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、本発明の上記目的および利点は、
基板とパターン状モールドとの間隙に、水素化ケイ素化合物およびハロゲン化ケイ素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物を配置する第一の工程と
配置した前記シラン化合物に熱処理および紫外線照射処理から選択される少なくとも1種の処理を施す第二の工程と
を含むパターンの形成方法において、
前記第一の工程が、基板上にシラン化合物の被膜を形成し、次いで該被膜上にパターン状モールドを配置して加圧することにより行われるものである、前記パターンの形成方法によって達成される。

【発明の効果】
【0011】
本発明によると、穏和条件下において簡易、迅速、低コストにパターン状のシリコン膜またはシリコン酸化膜を形成する方法が提供される。これらシリコン膜またはシリコン酸化膜は、パターン状モールドの有していた凹凸と契合する凹凸を有するシリコンまたはシリコン酸化物からなるパターンであり、好ましくは転写パターンである。
本発明の方法によると、前駆体がシリコンまたはシリコン酸化物となったときにすでにパターン状凹凸を有することとなるので、形成されたパターンは、その後にフォトリソグラフィー、化学機械研磨といった付加的工程を経ることなく、直接に使用に供することができる。
本発明の方法によって形成されたパターンは、半導体デバイス、光学デバイス、表示デバイス等に応用されるシリコン膜またはシリコン酸化膜、あるいはナノインプリント法に使用されるレプリカモールド等として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1で形成されたパターンを示す光学顕微鏡写真である。
【図2】実施例1で形成されたパターンを示す原子間力顕微鏡写真である。
【図3】実施例2で形成されたパターンを示す光学顕微鏡写真である。
【図4】実施例3で形成されたパターンを示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例4で形成されたパターンを示す光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のパターンの形成方法は、基板とパターン状モールドとの間隙に、水素化ケイ素化合物およびハロゲン化ケイ素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物を配置する第一の工程と
配置した前記シラン化合物に熱処理および紫外線照射処理から選択される少なくとも1種の処理を施す第二の工程と
を含むことを特徴とする。

【0014】
<基板>
本発明のパターンの形成方法に使用される基板としては、特に限定されないが、例えば石英;ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス等のガラス;プラスチック;シリコーン樹脂;カーボン;金、銀、銅、シリコン、ニッケル、チタン、アルミニウム、タングステン等の金属;これらの金属またはその酸化物もしくは混合酸化物等を表面に有するガラスまたはプラスチック等からなる基板を使用することができる。前記混合酸化物としては、例えばITO等の透明導電性酸化物を挙げることができる。
本発明のパターンの形成方法は、高温の加熱を必要としないので、耐熱性の低いプラスチック基板にも適用することができるという利点がある。

【0015】
<パターン状モールド>
本発明のパターンの形成方法に使用されるパターン状モールドとしては、基板を構成する材料として上記したものと同様の材料からなるものを使用することができる。これらのうち、微細なパターンの形成が可能であること、加工性等の観点から、シリコン、石英、酸化膜付きシリコン、シリコーン樹脂、金属等が好ましい。前記シリコーン樹脂としては、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)等を;
前記金属としては、例えばニッケル等を、それぞれ挙げることができる。また、本発明の方法により形成されたパターンも、パターン状モールドのレプリカモールドとして使用することができる。後述する第二の工程において熱処理を行う場合には、該熱処理における加熱に耐える材質であることが好ましい。一方、第二の工程において紫外線照射処理を行う場合には、使用する紫外線を透過する材料からなるものであることが好ましい。これらの要請を満たすとの観点から、パターン状モールドの材質としては、例えば石英、シリコーン樹脂等を好ましく使用することができる。
上記パターン状モールドの有するパターンとしては、例えばラインアンドスペースパターン、円柱状もしくは多角柱状(例えば4角柱状)、円錘状もしくは多角錘状(例えば4角錘状)またはこれらを平面で切断した形状の突起または孔、またはこれらの組み合わせからなるパターン等を挙げることができるほか、鏡面であってもよい。

【0016】
本発明のパターンの形成方法によると、親パターンであるパターン状モールドの有する任意の微細なパターンも再現することができ、幅が例えば10nm以上、好ましくは50nm以上において、アスペクト比が例えば5以下、好ましくは3以下のパターンを形成することが可能である。なおここで、アスペクト比とは、ラインアンドスペースパターンにおいてはラインの高さをラインまたはスペースの幅で除した値を、突起においては突起の高さを突起の直径または一辺の長さで除した値を、孔においては孔の深さを孔の直径または一辺の長さで除した値を、それぞれ意味する。

【0017】
<シラン化合物>
本発明のパターンの形成方法に使用されるシラン化合物は、水素化ケイ素化合物およびハロゲン化ケイ素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物である。ハロゲン化ケイ素化合物の有するハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。本発明で使用されるシラン化合物は、Si-O結合およびSi-C結合のいずれをも実質的に有さないものであることが好ましい。
本発明のパターンの形成方法に使用されるシラン化合物としては、高次シラン化合物および低次シラン化合物を挙げることができる。

【0018】
[高次シラン化合物]
本発明における高次シラン化合物は、好ましくは下記組成式(1)
SiX (1)
(上記式中、Xは水素原子またはハロゲン原子であり、mは1~3の数である。)
で表される元素比を有する高分子化合物である。mは、より好ましくは1.5~2.5である。
上記高次シラン化合物は、その粘度が、好ましくは0.0005~1,000Pa・sであり、より好ましくは0.001~10Pa・sである。高次シラン化合物につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは300~120,000であり、より好ましくは1,000~12,000である。
このような高次シラン化合物は取扱いが容易であるとともに、パターンの形成性に優れ、且つ良好な品質の均質なパターンを形成することのできる利点を有する。

【0019】
このような高次シラン化合物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば高次シラン化合物の前駆体である低次シラン化合物を出発原料とし、この低次シラン化合物につき、これをそのまま(neatで)または溶液中において重合を行い、好ましくは次いで熟成することにより得ることができる。本発明において、低次シラン化合物とは、このものを重合させることにより高次シラン化合物が得られる化合物を意味し、常温、常圧下において気体または液体の状態にあるものが好ましく用いられる。かかる低次シラン化合物としては、例えば光照射、電子線照射、加熱等によって重合して、高次シラン化合物となるものが挙げられるが、光照射によって高次シラン化合物に変換するもの、すなわち光重合性を有するものが好適に用いられる。かかる低次シラン化合物を出発原料とし、重合条件および任意的に行われる熟成の条件を適当に調節することにより、上記の好ましい性状を有する高次シラン化合物を容易に得ることができる。

【0020】
上記光重合性を有する低次シラン化合物としては、例えば低分子の水素化ケイ素化合物、低分子のハロゲン化ケイ素化合物等を挙げることができ、好ましくは分子中に1個以上の環状構造を有する水素化ケイ素化合物またはハロゲン化ケイ素化合物である。さらに好ましいものとして下記式(2)および(3)
Si2i (2)
Si2j-2 (3)
(上記式中、Xは、それぞれ、水素原子またはハロゲン原子であり、iは3~8の整数であり、jは4~14の整数である。)
のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の水素化ケイ素化合物またはハロゲン化ケイ素化合物を挙げることができる。
上記式(2)で表される化合物は、分子中に環状構造を1個有する水素化ケイ素化合物またはハロゲン化ケイ素化合物であり、上記式(3)で表される化合物は、分子中に環状構造を2個有する水素化ケイ素化合物またはハロゲン化ケイ素化合物である。上記式(2)および(3)のそれぞれで表される化合物としては、Xが水素原子である水素化ケイ素化合物が好ましい。

【0021】
このような低次シラン化合物の具体例としては、上記式(2)で表されるものとして、例えばシクロトリシラン、シクロテトラシラン、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シクロヘプタシラン等を;
上記式(3)で表されるものとして、例えばビシクロ[1.1.0]ブタシラン、ビシクロ[2.1.0]ペンタシラン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサシラン、ビシクロ[3.2.0]ヘプタシラン、1,1’-シクロブタシリルシクロペンタシラン、1,1’-シクロブタシリルシクロヘキサシラン、1,1’-シクロブタシリルシクロヘプタシラン、1,1’-シクロペンタシリルシクロヘキサシラン、1,1’-シクロペンタシリルシクロヘプタシラン、1,1’-シクロヘキサシリルシクロヘプタシラン、スピロ[2.2]ペンタシラン、スピロ[3.3]ヘプタシラン、スピロ[4.4]ノナシラン、スピロ[4.5]デカシラン、スピロ[4.6]ウンデカシラン、スピロ[5.5]ウンデカシラン、スピロ[5.6]ドデカシラン、スピロ[6.6]トリデカシラン等を、それぞれ挙げることができる。これらの化合物の水素原子の一部または全部をSiH基やハロゲン原子に置換した化合物であってもよい。上記式(2)におけるiは、好ましくは3~7の整数であり、上記式(3)におけるjは、好ましくは4~7の整数である。これらの化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの低次シラン化合物は、光に対する反応性が極めて高く、光重合を効率よく行うことができる化合物である。

【0022】
低次シラン化合物としては、上記式(2)で表される化合物が好ましく、特にシクロテトラシラン、シクロペンタシラン、シクロヘキサシランおよびシクロヘプタシランよりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが、上記した理由に加えて、これらの低次シラン化合物はその合成および精製が容易であるという観点から特に好ましい。
上記の如き低次シラン化合物は、紫外線照射による光重合プロセスを阻害しない範囲で、必要に応じてn-ペンタシラン、n-ヘキサシラン、n-ヘプタシラン等の直鎖の水素化ケイ素化合物や、ホウ素原子、リン原子等により変性された変性水素化ケイ素化合物等を含有していてもよい。
低次シラン化合物の重合を行う場合に任意的に使用することのできる溶媒は特に限定されないが、その例として例えば炭化水素溶媒、エーテル溶媒、極性溶媒等を挙げることができる。

【0023】
上記炭化水素溶媒の具体例としては、例えばn-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-デカン、ジシクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、スクワラン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、テトラヒドロジシクロペンタジエン、パーヒドロフルオレン、テトラデカヒドロアントラセン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等を;
上記エーテル溶媒の具体例としては、例えばジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、p-ジオキサン等を;
上記極性溶媒の具体例としては、例えばプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等を、それぞれ挙げることができ、これらを単独で、または混合して用いることができる。

【0024】
低次シラン化合物に照射する紫外線としては、低次シラン化合物を確実に重合させることができ、また、溶媒を使用する場合にはその溶媒を分解しない波長の光であるのが好ましい。ここで、「溶媒を分解しない波長」とは、紫外線の照射によって溶媒分子中の化学結合が切断されない程度の波長を意味する。200~500nmであることが好ましく、254~420nmであることがより好ましい。かかる波長域の紫外線を用いることにより、低次シラン化合物を確実に重合させることができるとともに、高次シラン化合物を単離する際に、溶媒に起因する炭素原子等の不純物原子が混入することを防止することができる。
紫外線の照射強度としては、好ましくは0.1~10,000mW/cmであり、より好ましくは1~1,000mW/cmである。紫外線の照射量は、特に限定されないが0.1~10,000J/cm程度であることが好ましく、1~100J/cm程度がより好ましい。このような照射量とすることにより、前述の好ましい性状の高次シラン化合物を得ることができる。
低次シラン化合物を重合することにより得られた高次シラン化合物を含有する溶液から高次シラン化合物を単離する場合には、例えば次のようにすればよい。

【0025】
すなわち、溶液中に高次シラン化合物が溶解している場合には、例えばサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)法等を用いることによって高次シラン化合物を単離(分離精製)することができ;溶液から高次シラン化合物が析出している場合には、例えばマイクロフィルターを用いる濾過法等を用いることによって析出した高次シラン化合物を単離することができる。すなわち、低次シラン化合物が残存する溶液中から高次シラン化合物を単離することができる。
上記紫外線照射による重合に次いで任意的に行われる熟成は、上記の如くして得られた重合体を例えば-200~200℃、好ましくは0~100℃において、例えば360日間以下程度、より好ましくは60日間以下程度、静置することにより行うことができる。この熟成の際の周囲雰囲気は、不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。ここで使用することのできる不活性ガスとしては、例えば窒素、へリウム、アルゴン等を挙げることができる。この不活性ガスは、酸素濃度を1ppm以下に制御したものを用いることが好ましい。このような熟成工程を経ることにより、本発明のパターンの形成方法に最適の高次シラン化合物を得ることができる。

【0026】
[低次シラン化合物]
本発明における低次シラン化合物としては、例えば上記式(2)および(3)のそれぞれで表される化合物を挙げることができ、これら化合物のうちから選択される1種以上を好適に使用することができる。これら化合物の具体例および好ましい化合物は上記と同様であり、任意的に上記の如き直鎖のシラン化合物、変性シラン化合物等を併用してもよい。

【0027】
<パターンの形成方法>
本発明のパターンの形成方法は、上記の如き基板とパターン状モールドとの間隙にシラン化合物を配置する第一の工程と
配置した前記シラン化合物に熱処理および紫外線照射処理から選択される少なくとも1種の処理を施す第二の工程と
を含む。

【0028】
[第一の工程]
基板とパターン状モールドとの間隙にシラン化合物を配置するには、基板上にシラン化合物の被膜を形成し、次いで該シラン化合物の上にパターン状モールドを押し付ける方法による。この方法は、操作が簡便であり、パターン状モールドの有するパターンの再現性に優れる点で好ましい。
基板上にシラン化合物の被膜を形成する方法としては、シラン化合物が高次シラン化合物である場合、基板上に高次シラン化合物をそのまま置く方法、高次シラン化合物を適当な溶媒に溶解してこれを基板上に塗布し、次いで必要に応じて溶媒を除去することにより高次シラン化合物の被膜を形成する方法等を好ましく採用することができる。


【0029】
高次シラン化合物を適当な溶媒に溶解してこれを基板上に塗布する方法において使用することのできる溶媒としては、例えば炭化水素溶媒、エーテル溶媒、極性溶媒等を挙げることができる。これら溶媒の具体例としては、炭化水素溶媒として、例えばn-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-デカン、ジシクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、スクワラン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、テトラヒドロジシクロペンタジエン、パーヒドロフルオレン、テトラデカヒドロアントラセン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等を;
エーテル溶媒として、例えばジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、p-ジオキサン等を;
極性溶媒として、例えばプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち、シラン化合物の溶解性および得られる溶液の安定性の点で炭化水素溶媒またはエーテル溶媒を使用することが好ましく、とりわけ炭化水素溶媒を使用することが好ましい。
これらの溶媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用することができる。

【0030】
高次シラン化合物および上記の如き溶媒を含有する溶液における高次シラン化合物の濃度としては、0.1~50重量%であることが好ましく、1~30重量%であることがより好ましい。このような濃度範囲とすることにより、上記溶液において高次シラン化合物の不均一な析出が防止されることとなるとともに、良好な被膜形成性が確保されることとなり、均一な膜厚にて均質な膜がより確実に得られることとなる。また、かかる範囲内で、高次シラン化合物の濃度を適宜設定することにより、形成される高次シランの被膜の膜厚を所望の値に制御することができる。
上記高次シラン化合物溶液は、必要に応じてドーパント源、表面張力調節剤等をさらに含有することができる。

【0031】
上記ドーパント源としては、周期表の第3B族元素を含む物質または周期表の第5B族元素を含む物質を挙げることができる。これらの元素の具体例としては、例えばリン、ホウ素、砒素等の元素を挙げることができる。本発明の高次シラン組成物がこのような物質または元素を含有することにより、これらの元素がドープされたシリコン膜、すなわちn型シリコン膜またはp型シリコン膜を得ることができる。ドーパント源としては、例えば特開2000-31066号公報に挙げられているような物質が例示できる。高次シラン組成物におけるドーパント源の濃度は、得られるシリコン膜において最終的に必要なドーパント濃度に応じて適宜に選択される。

【0032】
上記表面張力調節剤としては、例えばフッ素系、シリコーン系、ノニオン系等の各種界面活性剤を使用することができる。これら表面張力調節剤を添加することにより、高次シラン組成物の基板に対する濡れ性が向上し、基板上に形成される液状被膜のレベリング性を改善して、形成される膜のぶつぶつの発生、ゆず肌の発生等をより確実に防止することができる。
基板上に上記の高次シラン組成物を塗布するにあたっては、例えばスピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレー法、液滴吐出法等の適宜の塗布方法を採用することができる。次いで、高次シラン組成物からなる液状被膜から、必要に応じて溶媒を除去することにより、基板上に高次シラン化合物の被膜を形成することができる。このとき、高次シラン化合物の被膜中に溶媒が残存していたとしても、本発明の効果を減殺するものではない。

【0033】
一方、シラン化合物が低次シラン化合物である場合における、基板上にシラン化合物の被膜を形成する方法としては、基板上に液体状の低次シラン化合物をそのまま置く方法または塗布する方法によることができる。ここで、低次シラン化合物とともに、ホウ素原子、リン原子等により変性された変性シラン化合物等を併用してもよい。ここで、変性シラン化合物の含有割合は、得られるシリコン膜において最終的に必要なドーパント濃度に応じて適宜に選択される。低次シラン化合物を塗布する場合における塗布方法としては、上記した高次シラン化合物溶液を塗布する場合の塗布方法と同様の方法を採用することができる。
シラン化合物の塗布工程およびシラン化合物が高次シラン化合物である場合に好ましく行われる塗布後の溶媒除去工程における雰囲気としては、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下や、減圧状態のような非酸化性雰囲気下で行うのが好ましい。これにより、この段階における高次シラン化合物の変質をより確実に防止することができる。
基板上に形成されるシラン化合物の被膜の厚さは、使用するパターン状モールドの有するパターンの凹凸の深さないし高さに応じて適宜に設定することができるが、例えば0.01~1μmとすることができ、さらに0.05~0.5μmとすることができる。

【0034】
上記の如くして基板上に形成されたシラン化合物の被膜に、次いでパターン状モールドを押し付けることにより、基板およびパターン状モールドの間隙にシラン化合物を配置することができる。ここで、パターン状モールドを押し付ける際の押し付け圧としては、シラン化合物が高次シラン化合物である場合、好ましくは1~30MPaであり、より好ましくは1~10MPaである。一方、シラン化合物が低次シラン化合物である場合、好ましくは0.1~10MPaであり、より好ましくは0.1~1MPaである。
基板およびパターン状モールドの間隙にシラン化合物を配置するにあたっては、少なくともパターン状モールドに予め離型処理を施しておくことが好ましい。離型処理は、必要に応じて基板およびパターン状モールドのそれぞれに施してもよい。ここで使用することのできる離型剤としては、例えば界面活性剤、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン(F-DLC)等を挙げることができる。前記界面活性剤としては、例えばフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の公知のものを使用することができる。

【0035】
[第二の工程]
第一の工程において、基板とパターン状モールドとの間隙にシラン化合物を配置した後に行われる第二の工程は、配置した前記シラン化合物に熱処理および紫外線照射処理から選択される少なくとも1種の処理を施す工程である。ここで、シラン化合物が高次シラン化合物である場合には熱処理を行うことが好ましく、一方、シラン化合物が低次シラン化合物である場合には紫外線照射処理を行うことが好ましい。
シラン化合物が高次シラン化合物である場合に行われる熱処理は、第一工程の後に、基板およびパターン状モールドの間隙に高次シラン化合物を配置した状態のまま行ってもよく、あるいは高次シラン化合物上のパターン状モールドを除去した後に行ってもよい。

【0036】
上記熱処理は、好ましくは200~600℃、より好ましくは300~500℃において、好ましくは10~240分、より好ましくは30~120分行われる。この加熱処理は、一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよく、あるいは加熱温度を連続的に変化させつつ行ってもよい。
上記紫外線照射処理における紫外線の波長は、200~500nmであることが好ましく、254~420nmであることがより好ましい。紫外線の照射強度は、好ましくは0.1~10,000mW/cmであり、より好ましくは1~1,000mW/cmである。紫外線の照射量は、特に限定されないが0.1~10,000J/cm程度が好ましく、1~100J/cmであることがより好ましい。
上記紫外線照射処理および加熱処理は、これらを同時に行ってもよい。
この第二の工程を不活性ガス雰囲気下または非酸化性雰囲気下で行うことにより、シラン化合物はパターン状モールドの有する凹凸が転写された形状を有するシリコンに変換されることとなる。

【0037】
一方、第二の工程の少なくとも一部を酸素含有雰囲気下、好ましくは酸素中または空気中、で行うことにより、シラン化合物はパターン状モールドの有する凹凸が転写された形状を有するシリコン酸化物に変換されることとなる。第二の工程を熱処理による場合、周囲雰囲気を適当に制御することにより、形成されるシリコン酸化物パターンの線幅を調製することができる。すなわち、本発明におけるシラン化合物は、200℃程度よりも低い温度においてその有する水素原子またはハロゲン原子を放出する性質を有するので、シラン化合物の温度が200℃よりも低い温度にある時点から酸素を供給することにより、酸素吸収を促進してパターンの線幅を太くすることができる。一方、加熱処理を段階的または連続的に昇温しつつ行い、シラン化合物の温度が200℃よりも低い温度にある時点では不活性ガス雰囲気下または非酸化性雰囲気下において水素原子またはハロゲン原子の放出を促進し、シラン化合物がこれよりも高い温度に達してから酸素の供給を開始することにより、パターン状モールドの有する凹凸の線幅と同等ないしこれよりも細い線幅とすることができる。所望の線幅と第二の工程における適当な雰囲気との相関は、当業者による少しの予備実験によって容易に知ることができる。
上記の如くしてパターン状モールドの有する凹凸が転写されたシリコンまたはシリコン酸化物の膜を得ることができる。

【0038】
第二の工程における加熱を、シラン化合物上のパターン状モールドを除去した後に行った場合には、得られたシリコンまたはシリコン酸化物の膜をそのまま、あるいは必要に応じて基板から離型した後に、使用に供することができる。
一方、第二の工程における加熱を、基板およびパターン状モールドの間隙に高次シラン化合物を配置した状態のまま行った場合には、得られたシリコンまたはシリコン酸化物の膜をパターン状モールドから離型し、さらに必要に応じて基板から離型した後に、使用に供することができる。
上記いずれの場合であっても、基板または基板およびパターン状モールドから離型する前または後に、任意的にさらなる加熱処理を行ってもよい。この任意的な加熱処理は、好ましくは200~600℃、より好ましくは300~500℃において、好ましくは10~240分、より好ましくは30~120分行われる。

【0039】
<シリコン膜またはシリコン酸化物膜>
本発明の方法によって上記の如くして形成されたシリコン膜のパターンは、不純物を実質的に含まない高純度のシリコンからなるものであり、良好な半導体特性を示す。本発明の方法によって形成されたシリコン膜中の不純物濃度は、炭素濃度として1×1022atoms/cm以下、好ましくは1×1021atoms/cm以下とすることができ;
酸素濃度として1×1021atoms/cm以下、好ましくは1×1020atoms/cm以下とすることができ;
水素濃度として1×1023atoms/cm以下、好ましくは1×1022atoms/cm以下とすることができる。

【0040】
本発明の方法によって形成されたシリコン酸化物膜のパターンは、不純物を実質的に含まない高純度のシリコン酸化物からなるものであり、良好な絶縁性を示す。本発明の方法によって形成されたシリコン酸化物膜中の不純物濃度は、炭素濃度として1×1019atoms/cm以下とすることができ、好ましくは二次イオン質量分析(SIMS)の検出限界以下とすることができる。
また、本発明の方法によって形成されたシリコン酸化物膜のパターンは、組成の均一性の高い非常に緻密な膜であり、公知のゾルゲル法によって形成されたシリコン酸化物膜と比較して顕著に高い絶縁破壊電圧を示す。例えば膜厚0.2μm程度のシリコン酸化物膜の場合、絶縁破壊電圧を6MV/cm以上とすることができ、さらに7MV/cm以上とすることができる。

【0041】
<半導体デバイス、光学デバイスまたは表示デバイス>
本発明の半導体デバイス、光学デバイスまたは表示デバイスは、上記の如くして得られたパターンを具備するものである。上記半導体デバイスとしては、例えば太陽電池、トランジスタ、発光ダイオード、メモリ、IC、LSI、CPU等を挙げることができる。
【実施例】
【0042】
以下の操作は、特に記載のない限り、酸素濃度を1ppm以下とした窒素中において行った。
以下の合成例における高次シラン化合物および比較例におけるシリコーン樹脂の重量平均分子量は、それぞれ以下の測定装置を用いて以下の条件下で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のデータから求めたポリスチレン換算の値である。
高次シラン組成物の粘度は以下の測定装置を用いて測定した値である。
【実施例】
【0043】
<重量平均分子量>
測定装置:Agilent Technologies社製、型式「1200 Series」
カラム:昭和電工(株)製「Packed Column for HPLC KF-G」および「Packed Column for HPLC K-805L」を直列に接続して使用した。
溶媒:溶媒としては、高次シラン化合物の測定にはシクロヘキセンを、シリコーン樹脂の測定にはトルエンを、それぞれ使用した。
標準試料:単分散ポリスチレン(東ソー(株)製、商品名「TSK standard POLYSTYRENE」)
【実施例】
【0044】
<粘度>
測定装置:CBC(株)製、型式「ビスコメイト VM-10A-L」
シクロペンタシランは特許文献4(特開2001-262058号公報)に従って合成したものを、溶媒は蒸留によって精製したものを、それぞれ用いた。
ナノインプリントの実験は、実施例1、2および5については東洋合成(株)製のUVナノインプリント実験キットを、実施例3および4についてはプレス機付きナノインプリント実験装置(試作機)を、それぞれ用いて行った。
東洋合成(株)製のUVナノインプリント実験キットは、主として台座、モールドホルダおよびプレス用おもりからなる。上記台座に転写用基板を設置してその上に試料の被膜を形成した後、モールドをモールドホルダに固定してプレス用おもりを用いて転写用基板に押し付け、その後、加熱処理または紫外線照射を行うことにより、モールドの転写を行った。
プレス機付きナノインプリント実験装置は、主として台座、モールドホルダおよび2枚のプレス用金属板からなる。2枚のプレス用金属板は、それぞれ加熱装置および温度調節機を備えており、これらに挟持された台座、モールドホルダ等を200℃まで加熱することができる。これら2枚のプレス用金属板は、これらに挟持された台座、モールドホルダ等を、梃子の原理によりプレスすることができ、ロードセルによりそのプレス圧力を知ることができる。
【実施例】
【0045】
<レプリカモールドの製造>
製造例1
親モールドとしてNTT-ATナノファブリケーション(株)製「PH-350」(商品名、線幅0.35~3μmの異なる線幅の複数のライン・アンド・スペース・パターン、直径0.5~10μmの異なる大きさの複数の円柱状突起および一辺0.5~10μmの異なる大きさの複数の角パターンを有するナノインプリント試験用のモールドである。)を使用した。この親モールドは、使用に先立ち、ダイキン化成品販売(株)製の精密金型離型剤「デュラサーフHD-1100」をスピンコート法により塗布し、次いで60℃にて5分加熱することにより、離型処理を施した。
また、ガラス基板を準備し、上記親モールドと同様にして離型処理を施した。
室温、大気中で、東レ・ダウコーニング(株)製の二液系の硬化性ポリジメチルシロキサン(PDMS)であるSYLGARD 184 SILICONE ELASTOMER BASE(A剤)とSYLGARD 184 SILICONE ELASTOMER CURING AGENT(B剤)とを、質量比10:1で混合した。この混合物を上記親モールド上に滴下し、ガラス基板を上から押し当ててその状態で100℃にて45分加熱することにより、PDMSを硬化した。
加熱後、室温まで放冷した後、PDMSをピンセットで静かに剥がし、これを石英基板上に両面テープで固定し、これをレプリカモールドとした。
【実施例】
【0046】
<高次シラン化合物の合成>
合成例1
シクロペンタシランを無溶媒にて撹拌しつつ、波長390nmの輝線を含む紫外線25mW/cmを1時間照射してシクロペンタシランの光重合を行い、高次シラン化合物を得た。得られた高次シラン化合物をシクロオクタンに溶解することにより、高次シラン化合物を10重量%含有するシクロオクタン溶液である高次シラン組成物を得た。この高次シラン組成物に含まれる高次シラン化合物の重量平均分子量は10,000であり、粘度は100mPa・sであった。
【実施例】
【0047】
<ナノインプリントの実験例>
実施例1
上記製造例1で得たレプリカモールドに、「デュラサーフHD-1100」をスピンコート法により塗布し、次いで60℃にて5分加熱することにより、離型処理を施した。
転写用基板としてはシリコンウェハーを用いた。このシリコンウェハーの表面上に、上記合成例1で得た高次シラン組成物をスピンコート法によって塗布することにより、膜厚0.2μmの高次シラン化合物の被膜を形成した。
この被膜を有するシリコンウェハーを実験キットに装着し、被膜上に、上記離型処理を施したレプリカモールドを押し付け、実験キットごと200℃にて10分間の加熱処理を行った。放冷後、転写用基板をキットから取り出し、レプリカモールドを剥離した後に、さらに300℃にて30分間の加熱処理を行うことにより、レプリカモールドの有するパターンが転写された、干渉縞の見られるパターンを得た。
【実施例】
【0048】
上記パターンにつき、光学顕微鏡および原子間力顕微鏡を用いて観察したところ、良好な転写が確認された。このとき撮影された3枚の光学顕微鏡写真および3枚の原子間力顕微鏡写真を図1および図2にそれぞれ示す。これらの写真により、線幅3μm、高さ650nmのライン・アンド・スペース・パターン;直径3μm、深さ400nmのホール;および直径2μm、深さ250nmのホールが、いずれも良好な転写性で形成されていることが確認された。
上記パターンについてX線光電子分光分析(XPS)によって分析したところ、ケイ素の2p軌道エネルギーに帰属されるピークが99eVに観測されたことから、このパターンはシリコンからなるものであることが判った。このパターンの凹凸領域外の平坦な膜領域で、SIMSによる不純物分析を行ったところ、炭素含有量は1×1020atoms/cmであり、酸素含有量は1×1019atoms/cmであり、そして水素含有量は6×1021atoms/cmであった。
上記パターンの平坦領域において、擬似太陽光ランプ(ウシオ電機(株)製、「ソーラMiniUSS-40」)を用いて明暗電導度を測定したところ、明状態において1×10-5S/cmであり、暗状態で3×10-11S/cmであった。
【実施例】
【0049】
実施例2
上記製造例1で得たレプリカモールドに、「デュラサーフHD-1100」をスピンコート法によって塗布し、次いで60℃にて5分加熱することにより、離型処理を施した。
転写用基板として石英基板を用い、この基板の表面上に滴下によってシクロペンタシランを配置した。このシクロペンタシランが配置されたシリコンウェハーを実験キットに装着し、シクロペンタシラン上に上記離型処理を施したレプリカモールドを押し付けつつ、実験キット付属のUVペンライトにて波長365nmの輝線を含む紫外線10mW/cmを5分間照射してシクロペンタシランの光重合を行った。次いで、実験キットごと200℃にて30分間の加熱処理を行った。放冷後、転写用基板をキットから取り出し、レプリカモールドを剥離することにより、レプリカモールドの有するパターンが転写された、干渉縞の見られるパターンを得た。
【実施例】
【0050】
上記パターンにつき、光学顕微鏡を用いて観察したところ、良好な転写が確認された。このとき撮影された光学顕微鏡写真を図3に示した。この写真により、最小で線幅4μm、高さ500nmのライン・アンド・スペース・パターンおよび4μm角の角パターンが、いずれも良好な転写性で形成されていることが確認された。
上記パターンにつきXPSにより分析したところ、ケイ素の2p軌道エネルギーに帰属されるピークが99eVに観測されたことから、このパターンはシリコンからなるものであることが判った。このパターンの凹凸領域外の平坦な膜領域で、SIMSによる不純物分析を行ったところ、炭素含有量は3×1020atoms/cmであり、酸素含有量は5×1019atoms/cmであり、そして水素含有量は5×1021atoms/cmであった。
上記パターンの平坦領域において、実施例1と同様にして明暗電導度を測定したところ、明状態において1×10-5S/cmであり、暗状態で2×10-11S/cmであった。
【実施例】
【0051】
実施例3
線幅0.1~10μmの異なる線幅の複数のライン・アンド・スペース・パターンと直径0.1~10μmの異なる大きさの複数のホールパターンとを有するナノインプリント試験用のモールドであるTEOS加工基板モールドに、「デュラサーフHD-1100」をスピンコート法により塗布し、次いで60℃にて5分加熱することにより、離型処理を施した。
転写用基板としてシリコンウェハーを用い、このウェハーの表面上に、上記合成例1で得た高次シラン組成物をスピンコート法によって塗布することにより、膜厚0.2μmの高次シラン化合物の被膜を形成した。
この被膜を有するシリコンウェハーをプレス機付きナノインプリント実験装置に装着し、被膜上に、TEOS加工基板モールドを圧力1×10N/mで押し付けた状態で、170℃にて60分間の加熱処理を行った。放冷後、加圧を除去し、加圧および加熱後の被膜を有するシリコンウェハーおよびTEOS加工基板モールドを取り出し、被膜上にTEOS加工基板モールドを載せたままの状態で、ホットプレート上でさらに300℃にて30分間の加熱処理を行った。その後、TEOS加工基板モールドを静かに剥離することにより、TEOS加工基板モールドの有するパターンが転写された、干渉縞の見られるパターンを得た。
【実施例】
【0052】
上記パターンにつき、走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、良好な転写が確認された。このとき撮影された2枚の走査型電子顕微鏡写真を図4に示した。これらの写真により、線幅0.2μm、高さ300nmのライン・アンド・スペース・パターン;および直径0.4μm、高さ0.5nmのドットが、いずれも良好な転写性で形成されていることが確認された。
上記パターンにつきXPSにより分析したところ、ケイ素の2p軌道エネルギーに帰属されるピークが99eVに観測されたことから、このパターンはシリコンからなるものであることが判った。このパターンの凹凸領域外の平坦な膜領域で、SIMSによる不純物分析を行ったところ、炭素含有量は2×1019atoms/cmであり、酸素含有量は8×1018atoms/cmであり、そして水素含有量は4×1021atoms/cmであった。
上記パターンの平坦領域において、実施例1と同様にして明暗電導度を測定したところ、明状態において2×10-5S/cmであり、暗状態で3×10-11S/cmであった。
【実施例】
【0053】
実施例4
密閉容器中に、実施例3で使用したのと同様のTEOS加工基板モールドおよび(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン(市販品、Gelest社製)を封入し、120℃で2時間熱処理を行った。その後、容器からTEOS加工基板を取り出し、トルエン溶媒中で10分間超音波洗浄を行い、次いで80℃で10分間熱処理を行うことにより、TEOS加工基板の離型処理を施した。
転写用基板としてシリコンウェハーを用い、このウェハーの表面上に、上記合成例1で得た高次シラン化合物のシクロオクタン溶液をスピンコート法により塗布し、膜厚0.2μmの高次シラン化合物の被膜を形成した。この被膜付き基板を、さらに50℃で10分間加熱した。
この被膜を有するシリコンウェハーをプレス機付きナノインプリント実験装置に装着し、被膜上に上記離型処理を施したTEOS加工基板モールドを圧力1×10N/mで押し付けた状態で、室温にて10分間の加圧処理を行った。加圧を除去した後、加圧後の被膜を有するシリコンウェハーおよびTEOS加工基板モールドを実験装置から取り出し、被膜上にTEOS加工基板モールドを載せたままの状態で、ホットプレート上で400℃にて30分間の加熱処理を行った。その後、TEOS加工基板モールドを静かに剥離することにより、TEOS加工基板モールドの有するパターンが転写された、干渉縞の見られるパターンを得た。
【実施例】
【0054】
上記パターンにつき、光学顕微鏡を用いて観察したところ、良好な転写が確認された。このとき撮影された光学顕微鏡写真を図5に示した。この写真により、線幅1μmのライン・アンド・スペース・パターンが良好な転写性で形成されていることが確認された。
上記パターンにつきXPSにより分析したところ、ケイ素の2p軌道エネルギーに帰属されるピークが99eVに観測されたことから、このパターンはシリコンからなるものであることが判った。このパターンの凹凸領域外の平坦な膜領域で、SIMSによる不純物分析を行ったところ、炭素含有量は8×1019atoms/cmであり、酸素含有量は2×1019atoms/cmであり、そして水素含有量は5×1021atoms/cmであった。
上記パターンの平坦領域において、実施例1と同様にして明暗電導度を測定したところ、明状態において2×10-5S/cmであり、暗状態で5×10-11S/cmであった。
【実施例】
【0055】
実施例5
上記製造例1で得たレプリカモールドに、「デュラサーフHD-1100」をスピンコート法により塗布し、次いで60℃にて5分加熱することにより、離型処理を施した。
転写用基板としてシリコンウェハーを用い、このウェハーの表面上に、上記合成例1で得た高次シラン化合物のシクロオクタン溶液をスピンコート法によって塗布することにより、膜厚0.2μmの高次シラン化合物の被膜を形成した。
この被膜に、上記離型処理を施したレプリカモールドを押し付け、実験キットごと200℃にて10分間の加熱処理を行った。放冷後、転写用基板をキットから取り出してレプリカモールドを剥離した後、ホットプレート上で200℃30分加熱し、空気中でさらに400℃にて30分の加熱処理を行うことにより、レプリカモールドの有するパターンが転写された、干渉縞の見られるパターンを得た。
【実施例】
【0056】
上記パターンにつき、光学顕微鏡を用いて観察したところ、良好な転写が確認された。
上記パターンにつきX線光電子分光分析(XPS)により分析したところ、ケイ素の2p軌道エネルギーに帰属されるピークが103eVに観測されたことから、このパターンはシリコン酸化物からなるものであることが判った。さらにSIMSによる深さ方向の分析により、組成が一様なシリコン酸化物膜が形成されていることが確認された。このシリコン酸化物膜の組成はSi:O=33:67(atomic%)であり、炭素濃度は検出限界以下であった。
上記パターンの抵抗率は1×1013Ωcmであった。さらに、上記パターンにつきI-V測定を行ったところ、8MV/cmでも絶縁破壊を起こさずに良好な絶縁性を維持していることが確認された。
【実施例】
【0057】
比較例1
窒素置換した石英製フラスコに、メチルトリメトキシシラン60.9g、テトラメトキシシラン177.3gおよびn-ブチルエーテル599.1gを仕込んだ。これを水浴で60℃に加熱した後に、20重量%シュウ酸水溶液2.3gおよび超純水160.4gを加えて60℃で5時間撹拌下に反応を行った。この反応混合物を液量が500gとなるまで減圧下で濃縮し、原料化合物の共加水分解縮合物であるシリコーン樹脂を20重量%含有するn-ブチルエーテル溶液を得た。さらにこの溶液にn-ブチルエーテルを加えてシリコーン樹脂濃度10重量%まで希釈することにより、シリコーン膜形成用組成物を得た。この組成物に含まれるシリコーン樹脂についてGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は3,600であった。
【実施例】
【0058】
8インチシリコンウェハ上に、上記シリコーン膜形成用組成物をスピンコート法により塗布し、大気中80℃で5分間、次いで窒素下200℃で5分間加熱したのち、さらに真空下425℃で1時間加熱することにより、無色透明のガラス状膜を形成した。
得られた膜についてXPS測定により組成分析を行ったところ、この膜の組成はSi:O:C=30:45:25(atomic%)であった。また、この膜の抵抗率は8×1010Ωcmであった。得られた膜についてI-V測定を実施したところ、5MV/cmで絶縁破壊を起こした。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4