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明細書 :セシウム・リチウム・ボレート系結晶

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3115250号 (P3115250)
公開番号 特開平09-328395 (P1997-328395A)
登録日 平成12年9月29日(2000.9.29)
発行日 平成12年12月4日(2000.12.4)
公開日 平成9年12月22日(1997.12.22)
発明の名称または考案の名称 セシウム・リチウム・ボレート系結晶
国際特許分類 C30B 29/22      
FI C30B 29/22 C
請求項の数または発明の数 7
全頁数 6
出願番号 特願平09-012133 (P1997-012133)
出願日 平成9年1月27日(1997.1.27)
優先権出願番号 1996012352
優先日 平成8年1月26日(1996.1.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成9年1月28日(1997.1.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】佐々木 孝友
【氏名】森 勇介
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】五十棲 毅
参考文献・文献 特開 平8-91997(JP,A)
調査した分野 C30B 1/00 - 35/00
特許請求の範囲 【請求項1】
化学組成が次式
【化1】
JP0003115250B2_000002t.gif(Mは、CsおよびLi以外の少くとも1種のアルカリ金属元素を示し、0≦x+y<2であり、0≦x<1および0≦y<1である)で表わされ、アニールされているか、またはアニール状態に置かれていることを特徴とするセシウム・リチウム・ボレート系結晶。

【請求項2】
化学組成が次式
【化2】
JP0003115250B2_000003t.gif(Lは、少くとも1種のアルカリ土類金属元素を示し、0<z<1である)で表わされ、アニールされているか、またはアニール状態に置かれていることを特徴とするセシウム・リチウム・ボレート系結晶。

【請求項3】
異種元素がドープされている請求項1または2のいずれかのセシウム・リチウム・ボレート系結晶。

【請求項4】
異種元素が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属以外の金属、半金属または非金属である請求項3のセシウム・リチウム・ボレート系結晶。

【請求項5】
100℃以上の温度においてアニールされているかまたはアニール状態に置かれている請求項1ないし4のいずれかのセシウム・リチウム・ボレート系結晶。

【請求項6】
150℃以上450℃以下の温度においてアニールされているか、またはアニール状態に置かれている請求項1ないし5のいずれかのセシウム・リチウム・ボレート系結晶。

【請求項7】
250℃以上350℃以下の温度で、30分以上5時間以下でアニールされている請求項6のセシウム・リチウム・ボレート系結晶。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】この出願の発明は、セシウム・リチウム・ボレート系結晶に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、紫外線リソグラフィー、レーザー微細加工、レーザー核融合などに用いられるレーザー発振装置や光パラメトリック発振装置の波長変換用非線形光学結晶等として有用な、屈折率の均一性が向上し、クラックの発生も抑制されたセシウム・リチウム・ボレート系結晶に関するものである。

【10】

【化4】
JP0003115250B2_000005t.gif【0011】(Lは、少くとも1種のアルカリ土類金属元素を示し、0<z<1である)で表わされ、アニールされているか、またはアニール状態に置かれていることを特徴とするセシウム・リチウム・ボレート系結晶も提供する。さらにこの出願の発明は、アルカリ金属、アルカリ土類金属以外の金属、半金属または非金属から選択された異種元素がドープされた上記の焼鈍された結晶をも提供する。

【12】

【発明の実施の形態】この出願の発明の発明者は、従来の紫外光を発生するための波長変換用非線形光学結晶として一般的に用いられているベータバリウムメタボレート(β-BaB2 4 )や、リチウムトリボレート(LiB3 5 )、セシウムトリボレート(CsB3 5 )などのボレート(ホウ酸塩)結晶が、一般的に単独の金属を含んだボレート結晶であることに注目し、複数種の金属イオンを含ませることにより、これまでに知られていない高性能なボレート結晶が実現できることを見出した。

【13】
すなわち、この発明の発明者は、アルカリ金属やアルカリ土類金属等の2種以上の金属イオンを含むボレート結晶を数種類作り、それらのボレート結晶にNd-YAGレーザー(波長1064nm)を照射して、2倍高調波(波長532nm)の発生実験を行い、これらの数多くの実験的検証で、最適な金属の組み合わせを探索した。

【14】
その結果として、すでに提案しているように、とくにCsとLiの両方を含むボレート結晶から、非常に強い第2高調波が発生することを見出し、セシウム・リチウム・ボレート結晶とその組成置換体としての結晶という全く新しい結晶を実現した。そして、今般、この新しいセシウム・リチウム・ボレート系結晶は、アニールされているか、またはアニール状態に置かれていることにより光学的、機械的特性を大きく向上させることを見出し、ここに新たに提案している。

【15】
より具体的に説明すると、セシウム・リチウム・ボレート系結晶は、長時間の大気中での放置により、結晶表面での水分との反応により屈折率が変化しやすく、また、この結晶は、結晶加工に際して加工歪が結晶周辺部に残留し、その後、歪んだ領域が拡大しやすい傾向を有している。これは、結晶の表面付近のセシウム原子が表面での水分との反応や加工歪により影響を受けて平衡位置から移動し、結果的に格子定数が変わることが原因であると考えられる。格子定数が変わることにより屈折率が変化し、そしてその変化は徐々に内部に進行して行くことになると推察される。

【16】
セシウム原子のこのような不安定性は、セシウム原子周辺の化学結合力の弱さに起因する。しかしながら、結合力が弱いことから100℃程度の低温でのアニールによって、セシウム原子は再び平衡位置に戻ることができることが確認されている。これによって、屈折率の不均一性が低減され、光学特性が向上することになる。さらにまた、焼鈍による残留歪の低減により、クラックの発生が抑制されることになる。

【17】
アニールは、一般的には100℃以上の温度、より好ましくは150℃以上において行う。そして、適当な範囲としては150℃以上450℃以下、より好ましくは250℃以上350℃以下とする。雰囲気としては、大気中、あるいは不活性ガス雰囲気下、真空下において行われる。焼鈍のための装置等については特に限定されることはない。

【18】
アニールは、結晶を大気中に放置しておいた場合には、使用前にアニールしてもよいし、あるいはアニール状態、たとえば100℃以上の温度に継続して置いておくようにしてもよい。後者の場合には、ヒーター等によって加熱した雰囲気中に結晶を置いておくことでよい。結晶そのものの製造については、初期原料として炭酸セシウム(Cs2 CO3)、炭酸リチウム(Li2 CO3 )及び酸化ホウ素(B2 3 )等の適宜な原料混合物を加熱溶融させることによって所定の結晶を製造することができる。

【19】
アルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素(M)によって置換したセシウム・リチウム・ボレート結晶については、たとえば、アルカリ金属元素(M)が、Na(ナトリウム)の時は、0<x≦0.01程度の組成が、K(カリウム)の時は、0<x≦0.1程度の組成が、Rb(ルビジウム)の時は、0<x≦1程度の組成が製造や物理的性質等の観点から好適な範囲として例示される。もちろん、アルカリ金属元素は、複数種添加されてよい。

【2】

【従来の技術と課題】従来より、紫外線リソグラフィー、レーザー微細加工、および、レーザー核融合などに用いられるレーザー発振装置においては、安定した紫外光を効率よく得ることが必要とされており、そのためのひとつの方法として、現在では、非線形光学結晶を用いて光源を波長変換して紫外光を効率よく得る方法が注目されている。

【20】
これらのアルカリ金属イオンを添加することにより結晶の屈折率を変化させることが可能で、位相整合角度や角度許容、温度許容などの改善が図られるのみならず、同時に結晶の構造的変化を与えることにより、割れにくく、白濁化しない等の、より安定な結晶を得ることができる。また、前記のアルカリ土類金属(L)については、Ba、Sr、Ca、Mgのイオンが添加されることになる。

【21】
アルカリ金属のみの時と同様、これらのアルカリ土類金属イオンを添加することにより結晶の屈折率を変化させることが可能で、位相整合角度や角度許容、温度許容などの改善が図られると同時に結晶の構造的変化を与えることにより、割れにくい、より安定な結晶が得られる。そして、これらのアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンにより置換したセシウム・リチウム・ボレート系結晶は、この発明によって加熱されてアニールされることにより、またはアニール状態に置かれていることにより、前記のとおり、光学特性や機械的特性が大きく向上することになる。

【22】
さらにまた、この発明の結晶については、アルカリ金属およびアルカリ土類以外の異種元素をドープしたものが結晶の物理的、化学的、光学的な物性のさらなる向上をもたらす。このような異種元素としては、たとえば、Al、Ga、Ti、Hf、Zr、V、Mo、W、Nb、C、Si、Bi、Sb、Ta、Cu、Cd、Sn、Zn、P等が例示される。

【23】
以下、実施例を示しさらに詳しくこの発明について説明する。もちろんこの発明は以下の例によって限定されるものではない。

【24】

【実施例】
実施例1
炭酸セシウム(Cs2 CO3 )、炭酸リチウム(Li2 CO3 )及び酸化ホウ素(B2 3 )の混合物を加熱溶融させることにより化学量論組成からなるセシウム・リチウム・ボレート結晶(CsLiB6 10)を製造し、このセシウム・リチウム・ボレート結晶を5層制御育成炉においてトップシードのキロプロス法による種付け法により育成した。結晶育成に用いられた5層制御育成炉は、炉内温度を均一に保つことのできる垂直5段式抵抗加熱炉内に筒型白金坩堝が設置された構造となっている。この筒型白金坩堝内において、結晶育成用の核として白金ワイヤを用い、化学量論組成のセシウム・リチウム・ボレートの種結晶をこの白金ワイヤにつけ、この種結晶を1分間に15回転の速さで回転し、さらに3分毎に回転方向を反転しながら結晶育成を行った。この時の白金坩堝内の温度は結晶の融点である848℃に保っておく。これにより、約4日間で2.9cm×2.0cm×2.2cmの、クラックのない、透明で良質なセシウム・リチウム・ボレート結晶を育成することができた。これは、従来の波長変換用ボレート系非線形光学結晶の育成に比べ、非常に短期間な育成である。従って、この発明のセシウム・リチウム・ボレート系結晶の育成方法により非常に短期間で容易にセシウム・リチウム・ボレート系結晶を育成することができる。

【25】
セシウム・リチウム・ボレート系結晶は、Rigaku AFC5R X線回折装置による結晶構造解析の結果、空間群142d対称群に属する正方晶結晶であり、結晶の格子定数はa=10.494Å、c=8.939Å、計算上の密度は2.461g/cm3 であることがわかった。このセシウム・リチウム・ボレート結晶は、3次元構造を有し、ホウ素と酸素からなるボレートリングのチャンネル内にセシウム原子が位置している構造となっている。これは、従来から一般的に用いられている非線形光学結晶のLiB3 5 やCsB3 5 (ともに斜方晶)とは全く異なる構造である。

【26】
透過スペクトルを測定した結果、このセシウム・リチウム・ボレート結晶は、波長180nmから275nmの光で透明であった。吸収端は180nmにあり従来のBBO(189nm)よりも約9nm短かかった。ただ、上記のセシウム・リチウム・ボレート結晶は、長期空気中放置状況においては吸湿性があり、加工歪が結晶周辺部に残留し、この歪が拡大する傾向を持つため、光学的、機械的な特性が劣化しやすいことが確認された。

【27】
そこで、この結晶を、大気中で、300℃の温度で3時間アニールした。その結果、加工歪は除かれ、屈折率の均一化が図られ、光学特性が向上するとともに、クラックの発生も抑制されることがわかった。図1は、3ケ月空気中放置後のレーザー干渉透過波面と、300℃、3時間熱処理後のレーザー干渉透過波面とを対比させて示したものである。

【28】
この図1からも、アニールによる効果が優れたものであることがよくわかる。
実施例2
実施例1において育成した結晶を、300℃でのアニールに代えて、大気中、105℃の温度において保存した。6ケ月後にアニール状態を解除したところ、加工歪はなく、屈折率は当初のものとして均一であり、光学特性は良好であり、クラックの生成もなかった。
実施例3
実施例1において育成した結晶を3ケ月間大気中に放置したところ、屈折率の変化が認められた。

【29】
この結晶を、110℃の温度において24時間大気中に置いた。屈折率は当初のもので、光学特性に不都合は認められなかった。
実施例4
実施例1と同様にして、Rb(ルビジウム)置換のセシウム・リチウム・ボレート結晶Cs1-x LiRbx 6 10を製造した。

【3】
たとえば、レーザー発振装置の一つとして、パルスYAGレーザー発振装置においては、非線形光学結晶を用いて、光源の波長変換を行い、パルスYAGレーザーの3倍高調波(波長355nm)、または、4倍高調波(波長266nm)を発生させている。このような紫外光を発生させるために必要不可欠な波長変換用非線形光学結晶については、これまでにも多くの創意工夫が成されており、例えば、ベータバリウムメタボレート(β-BaB2 4 )や、リチウムトリボレート(LiB3 5 )、セシウムトリボレート(CsB3 5 )などのボレート(ホウ酸塩)結晶が知られている。このような紫外光を発生するための波長変換用非線形光学結晶は、波長が200nm以下の光を透過し、高い非線形光学定数を有している。

【30】
得られた結晶を粉末X線回折法で評価した結果、Rbを添加していないサンプル(Rb,x=0)のX線回折パターンに対して、x=0.2、0.5、0.7と順にRb量を増やして行くことにより、特に(312)面の反射と(213)面の反射の角度間隔が序々に狹くなっていることが確認された。これはCsとRbが任意の割合で結晶の中に入ることを示すものである。Rbを任意に添加した結晶はRbが添加されていないCLBOと同じ結晶形で正方晶結晶であり、また、格子定数が変化してゆくことがわかる。

【31】
このことよりRbイオンの添加はその量が任意に添加できるため、結晶の屈折率を変化させることが可能で、位相整合角度や角度許容、温度許容などの改善が図られることが判明した。また、同様にして、Rbの添加量(x)が0.1以下のものも製造した。結晶構造の安定性はより良好であることが確認された。

【32】
この結晶についても、実施例1と同様に、320℃の温度において、2時間のアニールを行った。これにより、同様に、光学的、機械的特性が改善されることを確認した。

【33】

【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によって、屈折率の均一化による光学特性の向上が図られ、またクラックの発生も抑制された、改善された特性のセシウム・リチウム・ボレート系結晶を提供することができる。

【4】
しかしながら、このような波長変換用非線形光学結晶の一つであるβ-BaB2 4 は、その製造過程において、融液成長の際に相転移を起こしやすいために結晶育成が非常に難しく、また、角度許容幅が狭く、そのため、汎用性が非常に乏しかった。またさらに、波長変換用非線形光学結晶の一つであるLiB3 6 やCsB36 は、その製造過程において、フラックス成長のために育成時間が非常に長くなってしまい、また、波長が555nm近辺までの光しか位相整合がとれないため、例えば、Nd-YAGレーザーで得られる3倍高調波(波長355nm)の発生においては利用できるものの、4倍高調波(波長266nm)の発生においては、利用できないという欠点があった。

【5】
このような状況において、この発明の発明者らは、従来技術の欠点を克服することができるものとして、より短波長の光を透過してその波長の変換が可能であり、その変換効率が高く、広い温度許容幅および角度許容幅を持つといった、高性能な波長変換用非線形光学結晶である新しいセシウム・リチウム・ボレート系結晶を開発し、この結晶そのものと、その製造方法、並びにその利用法を新たに提案した。このセシウム・リチウム・ボレート系結晶は、その組成置換結晶も含めて、これまでに知られていない画期的なものであることも明らかにされてきた。

【6】
しかしながら、この発明の発明者のその後の検討によると、その優れた特性の一方で、セシウム・リチウム・ボレート系結晶は比較的吸湿性が高く、光学的、機械的な特性が状況によっては劣化しやすいという問題があることがわかってきた。そのため、これらの課題を改善するための方策が求められていた。

【7】

【課題を解決するための手段】そこで、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、化学組成が次式

【8】

【化3】
JP0003115250B2_000004t.gif【0009】(Mは、CsおよびLi以外の少くとも1種のアルカリ金属元素を示し、0≦x+y<2であり、0≦x<1および0≦y<1である)で表わされ、アニールされているか、またはアニール状態に置かれていることを特徴とするセシウム・リチウム・ボレート系結晶を提供する。そしてまた、この出願の発明は、化学組成が次式
図面
【図1】
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