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明細書 :全自動遺伝子解析システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3552871号 (P3552871)
公開番号 特開平10-239300 (P1998-239300A)
登録日 平成16年5月14日(2004.5.14)
発行日 平成16年8月11日(2004.8.11)
公開日 平成10年9月11日(1998.9.11)
発明の名称または考案の名称 全自動遺伝子解析システム
国際特許分類 G01N 30/88      
C12M  1/00      
C12Q  1/68      
G01N 30/24      
G01N 33/50      
FI G01N 30/88 E
C12M 1/00 A
C12Q 1/68
C12Q 1/68 A
G01N 30/24 A
G01N 33/50 P
G01N 33/50 U
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願平09-046414 (P1997-046414)
出願日 平成9年2月28日(1997.2.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 平成8年7月25日 社団法人日本生化学会発行の「生化学Vol.68,No.7,1996」に発表
審査請求日 平成13年2月6日(2001.2.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】近藤 壽彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】宮澤 浩
参考文献・文献 特開平01-145000(JP,A)
特開平06-078799(JP,A)
特表平05-500598(JP,A)
特開平 1-108999(JP,A)
特開平 3-147800(JP,A)
特開平 6-303998(JP,A)
特表平 8-505700(JP,A)
Nucleic Acid Research,1993年,21,1061-1066
Anal.Chem.,1994年,67,578-585
Chromatograpy,1997年,18,122-125
調査した分野 G01N 30/88
C12M 1/00
C12Q 1/68
G01N 30/24
G01N 33/50
特許請求の範囲 【請求項1】
全自動遺伝子解析システムであって、
<a>遺伝子試料の調製からカラム注入までの一連の操作を行うオートサンプラーユニット、
<b>少くとも緩衝液と反応液とを送液する送液用グラジエンターユニット、
<c>固相DNAプローブを充填したカラムと温度センサー並びに温度調節機構とを備えたサーマルコントローラーユニット、
<d>吸光度測定、蛍光測定、および化学発光測定のうちの少くとも一つ以上の測定手段を備えたフロー式モニターユニットとを備え、これらのユニットについて、
全自動で、オートサンプラーからの試料を、送液用グラジエンターからの送液とともにサーマルコントローラー内の固相DNAプローブを充填したカラムに送り、このサーマルコントローラーに設定されたプログラムに従いPCR反応が実行され、ついで、流出する試料をフロー式モニターにより測定するようにした制御機構が配備されていることを特徴とする全自動遺伝子解析システム。
【請求項2】
請求項1のシステムであって、さらに試料分離のために配備されるフラクションコレクターユニットを備え、このフラクションコレクターで、分離するようにした制御機構が配備されていることを特徴とする全自動遺伝子解析システム。
【請求項3】
オートサンプラーユニットは、前処理機能手段とインジェクター機能手段とを有し、前処理機能手段では、少くとも、試料からのDNAの抽出・精製、DNA断片の両末端へのプライマーリンカーの付加が行われるように制御機構によりコントロールされている請求項1または2のシステム。
【請求項4】
送液用グラジエンターユニットには送液用ポンプが付設されている請求項1または2のシステム。
【請求項5】
サーマルコントローラーユニットには、固相DNAプローブを充填したカラム内への試料のトラップと、複数のカラムを直列または並列に繋ぎ換える高圧バルブ手段が付設されている請求項1または2のシステム。
【請求項6】
サーマルコントローラーユニットは、カラム内の試料の熱変性反応、ハイブリダイゼーション反応と、PCR増幅反応を順次実行するように制御機構によりコントロールされている請求項1または2のシステム。
【請求項7】
サーマルコントローラーユニットは、一定の昇温勾配の下で熱溶出を行う手段を有し、この手段が制御機構によりコントロールされている請求項1または2のシステム。
【請求項8】
フロー式モニターユニットは、サーマルコントローラーユニットからの熱溶出にともなう溶出挙動と、サーマルコントローラーユニット内の温度センサーからの温度シグナルを記録する請求項1または2のシステム。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、全自動遺伝子解析システムに関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、被検試料の調製が遺伝子解析までの全過程を同一のシステムにおいて行うことのできる、操作性、効率性、利便性に優れた新しい全自動遺伝子解析システムに関する物である。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、分子遺伝学の長足の進歩により、多くの疾患で遺伝子異常の存在が明らかとなり、種々の遺伝子変異による機能低下症、不応症、発癌、奇形など多くの事例が報告されている。そして、病因遺伝子の解明により、それらの疾患あるいはその前段階を判定するDNA診断法の重要性が益々増大しつつある。しかしながら、初期の頃の、言わば第一世代のDNA診断法は、多型性マーカーによる連鎖解析を利用する方法(RFLP法)、異常遺伝子をクローニングしてから、その塩基配列を決定する方法など、試料調製から最終判定までに、多大の時間や労力を要するものが多かった。
【0003】
また、その後の、第二世代のDNA診断法は、所謂簡便法が中心で、PCR法やLCR法等といった特定のDNA断片が増幅されるか否か、或いは特定のDNA断片が繋がるか否かを判定する方法であったり、電気泳動的挙動の解析から変異を検出する方法(SSCP法など)、蛍光偏光解消時間の遅延から遺伝子の有無を判定する方法等々、被検試料のスクリーニングを目的としたものが殆どである。しかしながら、簡便法に属する診断法であっても、複数の技術を組み合わせた繁雑なものが多く、現在、最も簡便かつ迅速な技術とされるPCR法においてさえ、PCR増幅の前後には、DNA調製、電気泳動、DNA検出といった、他技術との併用が不可欠である。したがって、多種類の機器やRIの使用に制限がある臨床検査領域においてDNA診断法を広く普及させるためには、被検試料のDNA調製から診断までの全行程を同一のシステム、或いは同一の機器で行うことの可能な全自動の機器の開発が急務となっている。
【0004】
ところで、完全な自動化装置を実現するためには、二つの開発の方向性がある。一つは、現在、人力で為されている全ての既存の操作を完全に自動機械によって置き換えることであり、もう一つは、現在、既に開発されている装置、或いは将来開発されるであろう装置の中から、原理的にも、自動化に向いた方式を選びだし、その方式を基盤として新しい技術を開発、発展させてゆくことである。
【0005】
自動機械技術は我が国の得意とするところであり、比較的実現性の高い技術と云える。事実、プラスミドの調製やシークェンサーに掛けるための試料調製等、単一目的の装置については、既に実用化され始めている。しかしながら、DNA診断に必要な全ての操作の自動化となると、大規模な自動機械システムの開発が不可欠となり、DNA診断法を広く普及させる目的には実際上は合致しないと判断せざるをえない。
【0006】
以上のような観点から原理的にも将来にわたって自動化に適した方式を選択的に採用し、今後への展開についても対応が容易であるシステムを基盤にDNAの調製、DNAの増幅、DNAの検出、DNAの解析等の諸技術を付加して、全ての操作をコンピューター制御によって一括制御する完全自動型のDNA診断システムを開発することが望まれていた。
【0007】
このような状況において、この出願の発明者らが開発した核酸固相化技術を基盤にした固相化DNAプローブを用いての塩基配列特異的熱溶出のクロマトグラフ法は、今後の自動化DNA分析装置のための中核として発展させていくことが期待されているものである。そこで、この出願の発明は、この新しい技術を、全自動遺伝子解析システムとして構成していくことを課題としているものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、全自動遺伝子解析システムであって、<a>遺伝子試料の調製からカラム注入までの一連の操作を行うオートサンプラーユニット、<b>少くとも緩衝液と反応液とを送液する送液用グラジエンターユニット、<c>固相DNAプローブを充填したカラムと温度センサー並びに温度調節機構とを備えたサーマルコントローラーユニット、<d>吸光度測定、蛍光測定、および化学発光測定のうちの少くとも一つ以上の測定手段を備えたフロー式モニターユニットとを備え、これらのユニットについて、全自動で、オートサンプラーからの試料を、送液用グラジエンターからの送液とともにサーマルコントローラー内の固相DNAプローブを充填したカラムに送り、このサーマルコントローラーに設定されたプログラムに従いPCR反応が実行され、ついで、流出する試料をフロー式モニターにより測定するようにした制御機構が配備されていることを特徴とする全自動遺伝子解析システム(請求項1)を、前記のシステムであって、さらに試料分離のために配備されるフラクションコレクターユニットを備え、このフラクションコレクターで、分離するようにした制御機構が配備されていることを特徴とする全自動遺伝子解析システム(請求項2)を提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、上記システムにおいて、オートサンプラーユニットは、前処理機能手段とインジェクター機能手段とを有し、前処理機能手段では、少くとも、試料からのDNAの抽出・精製、DNA断片の両末端へのプライマーリンカーの付加が行われるように制御機構によりコントロールされているシステム(請求項3)や、送液用グラジエンターユニットには送液用ポンプが付設されているシステム(請求項4)、サーマルコントローラーユニットには、固相DNAプローブを充填したカラム内への試料のトラップと、複数のカラムを直列または並列に繋ぎ換える高圧バルブ手段が付設されているシステム(請求項5)、サーマルコントローラーユニットは、カラム内の試料の熱変性反応、ハイブリダイゼーション反応と、PCR増幅反応を順次実行するように制御機構によりコントロールされているシステム(請求項6)、サーマルコントローラーユニットは、一定の昇温勾配の下で熱溶出を行う手段を有し、この手段が制御機構によりコントロールされているシステム(請求項7)、フロー式モニターユニットは、サーマルコントローラーユニットからの熱溶出にともなう溶出挙動と、サーマルコントローラーユニット内の温度センサーからの温度シグナルを記録するシステム(請求項8)等をその態様としてもいる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以上の構成を特徴とするこの出願の発明について、以下に実施例を示し、さらにその実施の形態を説明する。
【0011】
【実施例】
まず添付した図面の図1は、この発明の全自動遺伝子解析システムの構成を例示した概要図である。
たとえばこの図1に例示したように、このシステムは、▲1▼前処理機能付オートサンプラーユニット、▲2▼送液用グラジエンターユニット、▲3▼ポンプ、▲4▼サーマルコントローラーユニット、▲5▼カラム、▲6▼高圧バルブ、▲7▼フロー式モニターユニット、▲8▼フラクションコレクターユニット、及び、▲9▼コンピュータとを備えている。
【0012】
前処理機能付オートサンプラーユニットは、試料の前処理機能とインジェクター機能とを有し、任意に設定可能なプログラムに基づいて全ての操作が行われる。また、恒温ラックにより、少なくとも2種類の反応温度、保管温度が選定できるようにされている。送液用グラジエンターユニットは、少なくとも3種類の緩衝液や反応液の送液が可能なもので、通常のイソクラティック送液とグラジェント送液に加えて、洗浄液や保存液などの送液が可能なものとする。ポンプは、溶離液・反応液を輸送するためのもので、DNA試料を扱う関係からイナート仕様の装置が望ましい。
【0013】
サーマルコントローラーユニットは、各種の固相DNAプローブを充填可能な1本又は複数のカラムと、カラム温度を実測、モニターするための温度センサーを組み込んだカラムを搭載したPCR増幅用の装置であり、0℃から100℃までの温度調節機能、高速昇温機能、高速冷却機能、プログラム機能を有するものであることが望ましい。また、DNA試料をカラム内にトラップするため、及び、複数のカラムを直列もしくは並列に繋ぎ換えるために不可欠な高圧バルブ、さらには、カラム内にトラップしたDNA試料を緩やかに揺り動かすことの可能なポンプを搭載していることが望ましい。
【0014】
フロー式モニターユニットは、カラムを通過した試料をモニターする装置で、吸光度測定、蛍光測定、化学発光測定用の何れかの装置であり、測定目的に応じてこれらの装置を切り替えて使用できることが望ましい。フラクションコレクターユニットは、カラムから溶出された試料を分画・分取するための装置であり、分析目的の場合には必要ないが、試料の分離が目的の場合には不可欠である。そして、コンピューターは、各構成ユニットを一括コントロールし、分析結果の表示、記録、更にはデータ解析を行うための装置であり、CPU、CRT、MO、プリンター等が含まれる。
【0015】
たとえば以上のシステムでは、先ず、前処理機能付オートサンプラーユニットに配されたサンプルカップに適当量(5~20μl)の生体試料(血液など)を注入しておく。そして、プログラムの開始とともに試薬が加えられ、DNAを抽出・精製するための一連の操作が始まる。その後、制限酵素反応、リガーゼ反応等、何段階かの酵素反応、精製操作が行われ、DNA断片の両末端にプライマーリンカーが付加される。このプライマーリンカーは、試料由来の全てのDNA断片をPCR増幅するために必須のオリゴマーDNAであり、その5′末端は蛍光物質などで標識され、DNAの高感度検出を実現するとともに、DNA試料をカラムに効率よくトラップするためのシグナルとしても役立つ。付属のインジェクターによって流路系に注入されたDNA試料は、送液用グラジエンターユニットにより固相DNAプローブが充填されているカラムに送液される。
【0016】
そしてこの発明のシステムでは、カラムを通過して、フロー式モニターユニットに到達した試料のシグナルをもらって高圧バルブを切り替え、DNA試料をカラム内にトラップするように設計されている。カラム内の試料は、サーマルコントローラーユニットのプログラムに従い、熱変性反応、ハイブリダイゼーション反応が順次実行される。固相化DNAプローブと結合しなかったDNA断片を洗浄した後、PCR反応用の緩衝液、プライマー、ポリメラーゼ、基質等を含む溶液をカラム中に送液し、トラップさせる。そして、PCR反応によって固相プローブと特異的に結合したDNA断片を増幅した後、再び、固相プローブとのハイブリダイゼーション反応を行う。
【0017】
一定時間の洗浄後、一定の昇温勾配の下で熱溶出(昇温溶出)操作を行い、適当なフロー式モニターユニットによってDNAの溶出挙動を記録するとともに、サーマルコントローラーユニット内の温度センサーからの温度シグナルを記録しておく。もし、試料を分画・分取する目的もあれば、同時に、フラクションコレクターユニットを作動させておく必要がある。記録された画像は、コンピュータにより、目的に応じて種々の解析が可能である。
【0018】
この発明のシステムでは、既にこの発明者らが開発した核酸固相化アンカー技術(公開特許公報平3-147800)及び公知の核酸固相化技術によって調製された固相DNAプローブを充填したカラムを用いることによって、既に普及している高速液体クロマトグラフ装置との合体を可能とし、また、カラム内に試料をトラップするこの発明の方法によって、従来のPCR技術との合体を可能とし、試料調製から遺伝子解析までの全過程の操作を同一のシステムで行うことができるようにしている。
【0019】
なお、この発明のシステムで実現されるクロマトグラフ法は、塩基配列特異的熱溶出クロマトグラフ法(Sequence-Specific Thermal-Elution Chromatography以下SSTEC法と略記する。)と呼ぶべき新規な技術で、このSSTECパターンの一例を図2に示すことができる。ピークの位置は、被検DNAの融解温度(Tm値)を与え、再現性が極めて良く、測定精度は±0.1℃以内と従来法の10倍以上の高精度が得られTm値0.2℃の差は、ピーク位置の差として明確に区別できるものである。
【0020】
分光学的(Hyperchromisity或いはHypochromisity) 測定からTm値を求める従来法の測定例を参考のため、図3に示した。この従来法では、積分型の温度・吸光度曲線をもとに、吸光度変化の開始点と終了点の丁度中間にあたる位置の温度としてTm値を求めねばならなく、Tm値の再現性は低いものであった。また、温度・吸光度曲線を数値微分して得られたdA/dtカーブも図上に示しておいたが、何れの方法でも本システムのような高精度の測定は期待できない。
【0021】
そして、この発明のシステムでは、特定の塩基配列をもった固相DNAプローブが用いられるため、この発明を最も有効に活用できる応用分野は、遺伝子変異の解析である。図4は、我々がクローニングしたウシの性決定遺伝子(bSRY-DNA)の一部の配列を固相プローブ(60mer)として用いたときの、遺伝子変異解析の一例を示したものである。図中の1から7は、固相プローブと完全に相補的な30merDNA、8から12、13から17は、それぞれ、1又は7のDNAとたった一塩基だけ異なる塩基配列をもった30merDNAである。それぞれのSSTECパターンを図5のA~Fに示したが、塩基配列の違い、一塩基だけの変異によって、Tm値のみならず、パターンも大きく変化することが分かる。この発明のシステムで求められるTm値と熱力学的計算から求められるTm値とを比較したのが表1である。遺伝子変異は、従来の方法(Total Fitting Model) で予測される値よりも遥かに大きく、 Maximum Fitting Modelで計算される値よりは小さい。ほぼ、両者の中間の値を示すことが明らかである。
【0022】
【表1】
JP0003552871B2_000002t.gif【0023】
次に、Taq polymeraseのFidelity解析に応用した結果を示す。FidelityとはDNA合成酵素の転写反応の忠実度を表わすもので、これまでの方法は、遺伝子変異から直接求めるものでなく、特定の遺伝子に着目し、その表現型の異常頻度から算出されるため、解析系の違いによっても、10倍程度の誤差を生じるものである。図6のAは、図4と同じ60merの固相プローブ、Bは、675merのbSRY-DNAを固相プローブとして用い、Taq polymeraseによってPCR増幅したbSRY遺伝子を解析した結果が示されている。比較的短い固相プローブのAでは、10回の増幅でも50回の増幅でもTm値変化が見られなかったが、比較的長いプローブのBでは、増幅回数に伴いTm値が低下することが見い出された。この現象は、プローブが長いほど、遺伝子変異の頻度が高いことを意味するものであり、Taq polymeraseのFidelityを直接観察することができる方法としてのこの発明のシステムの価値は大きい。
【0024】
また、この発明のシステムは、遺伝子ホモロジーの解析、遺伝子クローニング、染色体歩行、遺伝子ホモローグの探索など、多目的な遺伝子解析に応用可能な技術である。この発明のシステムはまた、極く微量のDNA試料からでも遺伝子解析が可能であり、RI法のように特別な施設で実施する必要がない。
この発明のシステムは、完全な自動化システムであるため、従来法より所要時間を格段に短縮し、大幅に省力化できるという利点がある。そして、遺伝子変異の有無、変異の種類といった質的情報をのみ与えるだけでなく、固相プローブに結合した特定の遺伝子だけを増幅、増感する方式を採用しているためS/N比が高く、従来のPCR法に比べて遥かに高い特異性と定量性が期待できる。また、末端ラベル法の採用によって、分子の個数に関する情報が直接得られるため、被検試料中に存在する遺伝子数、ウイルス数、細菌数などを直接定量でき、感染が成立しているかどうかの判定や、治療経過の追跡、治癒の判定などにも応用可能な技術である。
【0025】
そしてまた、異なるプローブが充填されている複数のカラムを、並列もしくは直列に繋ぐことにより、同一の試料から、同時に、複数の遺伝子解析が可能となり、遺伝子解析、DNA診断の確実性は、PCR法等の従来法より遥かに向上し、種々の遺伝子型の判定等、複数の情報が必要な遺伝子解析、DNA診断には、格段の威力を発揮するシステムとして期待される。
【0026】
なお、図1においては、システム構成のための細部の機構については示していない。これらは、機械的、電気的手段としての組立て、運転操作としての構造を有し、その具体的状態は多様なものとして可能とされる。コンピューターによる制御プログラムも同様であって、その個々の態様については各種のものが、この発明に含まれることになる。いずれの場合においても、この発明の全自動遺伝子解析システムは、以下の機能を発明としての要点としている。
【0027】
(1)試料の調製から最終解析までの全操作を同一のシステムで行う全自動遺伝子解析システムである。
(2)上記全自動式遺伝子解析システムにおいて、固相担体に結合した核酸の塩基配列の特異性をもとに核酸の分析又は分離に供するシステムである。
(3)上記全自動式遺伝子解析システムにおいて、固相担体に結合した核酸をプローブとし、昇温もしくはイオン強度の低下をもって物質を溶出するクロマトグラフ法を採用している。
【0028】
(4)上記全自動式遺伝子解析システムにおいて、固相担体に結合した核酸をプローブとし、核酸の融解温度を測定するシステムである。
(5)上記全自動式遺伝子解析システムにおいて、固相担体に結合した核酸をプローブの相補鎖特異性とともに、核酸の塩基配列の同一性、差異性、類似性を分析、もしくは、同一性、差異性、類似性をもとに核酸を分離するシステムである。
【0029】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおりのこの出願の発明によって、以下の効果が奏せられる。
(1)完全自動化DNA診断システムである。
試料の調製から診断までの全行程を同一のシステムによって一挙に行うことが可能である。将来、一体型の装置としても開発可能と考える。国の内外を問わず、全ステップの操作が完全に自動化されているDNA診断法は、他にない。
【0030】
(2)高精度、高感度、かつ短時間でDNA診断ができる。
遺伝子の塩基配列、鎖長、変異の有無などに基づいた微分形の熱融解曲線が、クロマトパターンとして直接得られるため、従来法より格段の精度向上が期待されるばかりでなく、自動制御装置であるため再現性が極めて良く、融解温度(Tm)測定に関して、測定精度は±0.1度以内であり、従来法の10倍以上の高精度が得られる。また、非RI標識プライマー・リンカー法の開発とPCR遺伝子増幅法の導入、蛍光検出器又は化学発光検出器の導入によって、高感度の非RI測定が可能となり、極微量のDNA試料からでも遺伝子診断が可能であり、RI法のように特別な施設で実施する必要がない。更には、本システムが完全な自動システムであるため、所要時間を格段に短縮し、大幅に省力化できる。
【0031】
(3)遺伝子の質的、量的評価が可能である。
固相プローブから熱溶出される核酸の挙動を下に、病因遺伝子の存在の有無、変異の有無、変異の種類といった、遺伝子又は変異遺伝子に関する質的情報を与えるだけでなく、固相プローブに結合した特定の遺伝子だけを増幅、増感する形式を採用しているためS/N比が高く、従来のPCR法に比べて遥かに高い特異性と定量性が期待できる。また、末端ラベル法の採用によって、個数に関する情報が直接得られるため、被検試料中に存在するウイルス数や細菌数が直接定量でき、感染が成立しているかどうかの判定や、治療経過の追跡、治癒の判定などに応用可能である。
【0032】
(4)複数のプローブによって同時に解析できる。
異なるプローブが充填されている複数のカラムを、並列もしくは直列に繋ぐことにより、同一の試料から、同時に、複数の遺伝子解析が可能になる。したがって、種々の遺伝子型の判定等、複数の情報が必要なDNA診断には、格段の威力を発揮する。また、同時に複数の評価ができるため、DNA診断の確実性は、PCR法等の簡便な方法よりも遥かに高いものとなる。
【0033】
(5)応用性が広く、将来への発展性が大きい。
この発明のシステムは、単に、DNA診断装置として臨床検査領域に応用可能なばかりではなく、突然変異率の解析に基づきDNA合成酵素のfidelityの測定等に広く応用が発展する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のシステムの構成を例示したブロック図である。
【図2】SSTECパターンを例示した図である。
【図3】従来法によるTm値の測定結果を例示した図である。
【図4】遺伝子変異の解析の一例を示した図である。
【図5】SSTECパターンとTm値の比較を示した図である。
【図6】PCR増幅反応のFidelity解析の例を示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5