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明細書 :DNA合成酵素

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3880173号 (P3880173)
公開番号 特開平11-155578 (P1999-155578A)
登録日 平成18年11月17日(2006.11.17)
発行日 平成19年2月14日(2007.2.14)
公開日 平成11年6月15日(1999.6.15)
発明の名称または考案の名称 DNA合成酵素
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   9/12        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 9/12
請求項の数または発明の数 9
微生物の受託番号 FERM BP-6189
FERM BP-6190
全頁数 16
出願番号 特願平09-332100 (P1997-332100)
出願日 平成9年12月2日(1997.12.2)
審査請求日 平成16年6月1日(2004.6.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】500520628
【氏名又は名称】セレスター・レキシコ・サイエンシズ株式会社
発明者または考案者 【氏名】土居 洋文
【氏名】金井 昭夫
【氏名】石野 良純
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】飯室 里美
参考文献・文献 特開平5-328969(JP,A)
特開平7-298879(JP,A)
調査した分野 C12N15/00-15/90
BIOSIS/WPI(DIALOG)
PubMed
JSTPlus(JDream2)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/Geneseq
特許請求の範囲 【請求項1】
1本鎖DNAに相補的なDNA鎖の合成を触媒するに際して合成DNAがより長く伸長するようにアミノ酸配列を人為的に改変したPfuDNA合成酵素であって、野生型PfuDNA合成酵素のアミノ酸配列における第2位IleValに、第717位LeuProにそれぞれ置換した、配列番号2のアミノ酸配列からなる改変型PfuDNA合成酵素。
【請求項2】
さらに、第710位ProArgに、第712位SerArgに、第713位LeuProにそれぞれ置換した、配列番号1のアミノ酸配列からなる請求項1の改変型PfuDNA合成酵素。
【請求項3】
配列番号2のアミノ酸配列をコードするDNA
【請求項4】
配列番号1のアミノ酸配列をコードするDNA
【請求項5】
請求項3のDNAを含む組換え体ベクター。
【請求項6】
請求項4のDNAを含む組換え体ベクター。
【請求項7】
大腸菌HMS174(DE3)/pDP5C4(FERM BP-6190)が保有する組換え体プラスミドpDP5C4である請求項5の組換え体ベクター。
【請求項8】
大腸菌HMS174(DE3)/pDP5b17(FERM BP-6189)が保有する組換え体プラスミドpDP5b17である請求項6の組換え体ベクター。
【請求項9】
請求項3または4に記載のDNAを含む発現ベクターにより形質転換した細胞を培養し、培地中に生産された目的酵素を単離・精製することを特徴とする改変型PfuDNA合成酵素の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、DNA鎖の試験管内での合成や増幅、塩基配列の決定等に用いる新規なDNA合成酵素と、この酵素をコードするDNA配列、並びにこのDNA合成酵素の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
DNA合成酵素(DNA polymerase)は1本鎖DNAに相補的なDNA鎖の合成を触媒する酵素の総称である。DNAの塩基配列決定や試験管内でのDNA増幅などには必須の酵素であるが、特にPCR(Polymerase chain reaction) においては、その一連の反応サイクルを自動化する上で「耐熱性DNA合成酵素」は不可欠である。
【0003】
このような耐熱性DNA合成酵素としては、Taq、Pfu、KOD等が知られており、それぞれの特性に応じて使い分けられている。特に、PfuDNA合成酵素はDNA鎖合成時における読み違いが極めて少ない(忠実性が高い)酵素として知られている。
しかしながら、このPfuDNA合成酵素は、合成量が少なく、また合成鎖に対する伸長活性が不十分であるために、ゲノムDNA等の高分子DNAを増幅するには不適当であった。
【0004】
この発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、DNA鎖をPCR等により合成、増幅するに際して、PfuDNA合成酵素の特徴である高忠実性を維持しつつ、鋳型DNA鎖をより長く効率的に増幅することのできる新規な耐熱性DNA合成酵素を提供することを目的としている。
またこの発明は、このDNA合成酵素をコードするDNA配列と、このDNA配列の発現産物として上記DNA合成酵素を製造する方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するものとして、1本鎖DNAに相補的なDNA鎖の合成を触媒するに際して合成DNA鎖がより長く伸長するようにPfuDNA合成酵素のアミノ酸配列を人為的に改変したことを特徴とするDNA合成酵素を提供する。
【0006】
このDNA合成酵素は、具体的には、配列番号1または2のアミノ酸配列からなる酵素である。
またこの発明は、配列番号1または2のアミノ酸配列をコードするDNA配列と、これらのDNA配列を含む組換え体ベクターを提供する。このようなベクターとしては、大腸菌HMS174(DE3)/pDP5b17 (FERM BP-6189) が保有する組換え体プラスミドpDP5b17(配列番号1のアミノ酸配列をコードするDNA配列を保有するベクター)、および大腸菌HMS174(DE3)/pDP5C4 (FERM BP-6190)が保有する組換え体プラスミドpDP5C4 (配列番号1のアミノ酸配列をコードするDNA配列を保有するベクター)をも提供する。
【0007】
さらにまた、この発明は、上記DNA配列を含む発現ベクターにより形質転換した細胞を培養し、培地中に産生された目的酵素を単離・精製することを特徴とするDNA合成酵素の製造方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明のDNA合成酵素は、具体的には、ピロコッカスフリオサス(Pyrococcus furiosus)由来の耐熱性PfuDNA合成酵素を公知の変異遺伝子作成法 (Strategies, vol 9, p3-4,1996) によって遺伝子工学的に改変した酵素である(以下、この発明の耐熱性DNA合成酵素を「改変型PfuDNA合成酵素」と記載することがある)。この酵素の作成は以下のとおりに行なった。すなわち、PfuDNA合成酵素の遺伝子は塩基配列が公知(Nucleic Acids Research, vol.21, p259-265, 1993) であるため、その両端に相補的なオリゴヌクレオチドを合成し、これをプライマーとして、上記細菌のゲノムDNAを鋳型とするPCR法によりPfuDNA合成酵素の遺伝子を調製した。この遺伝子DNA断片をベクターにクローニングし、上記文献に記載の方法により変異させた。遺伝子の変異は、PfuDNA合成酵素のアミノ酸配列の一部がKODDNA合成酵素のアミノ酸配列に置き変わるように塩基を置換させた。PfuDNA合成酵素とKODDNA合成酵素は、アミノ酸配列が約80%相同であり、PCRの際に同様の合成停止を生じさせるが(図1)、KODDNA合成酵素の伸長速度はPfuDNA合成酵素の約6倍である。そこで、PfuDNA合成酵素のアミノ酸残基をKODDNA合成酵素のアミノ酸残基に置換することによって、伸長速度が速く、従って合成DNA鎖をより長く伸長させることのできる酵素が得られる可能性があるからである。そして、このようにして変異させた遺伝子を大腸菌で発現させ、その発現産物を回収し、精製することによってこの発明の改変型PfuDNA合成酵素を得た。
【0009】
実際には、この発明の発明者等は、上記の方法により数多くの改変型PfuDNA合成酵素を作成し、それぞれについてDNA合成実験をおこない、伸長したDNA鎖を電気泳動的に解析することによって、従来酵素に比べて合成量を高め、合成鎖の伸長を促進させることのできるDNA合成酵素を得、この発明を完成させた。
【0010】
この発明の耐熱性DNA合成酵素(改変型PfuDNA合成酵素)は、具体的には、配列番号1または2のアミノ酸配列を有する酵素である(以下、これらを改変型PfuDNA合成酵素I およびIIと記載することがある)。これらのアミノ酸配列は、従来公知のPfuDNA合成酵素のアミノ酸配列のうち、表1に示すアミノ酸残基がそれぞれ置換された新規な配列である。そして、これらの新規酵素を用いてPCR等のDNA合成を行なった場合には、下記の実施例に示すように、大量かつ高分子の合成産物を得ることが可能となる。
【0011】
【表1】
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【0012】
これらの改変型PfuDNA合成酵素をコードするDNA配列としては、上記の酵素作成過程で得られたPfuDNA合成酵素遺伝子の変異遺伝子を例示することができる。これらの変異遺伝子は、例えば配列番号1または2のアミノ酸配列をコードするDNA配列については、それぞれ組換え体プラスミドpDP5b17およびpDP5C4 にクローニングされており、これらの組換え体プラスミドは大腸菌HMS174(DE3)に導入され、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている (各々、寄託番号FERM BP-6189およびFERM BP-6190) 。
【0013】
また、この発明のDNA配列は、例えば配列番号1または2の各アミノ酸残基に対応する塩基コドンをつなぎ合わせたDNA配列として適宜にデザインすることもできる。
この発明の耐熱性DNA合成酵素は、大腸菌などの微生物で発現させて得ることができる。例えば、微生物中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、cDNAクローニング部位、ターミネーター等を有する発現ベクターに、上記DNA配列を挿入結合して発現ベクターを作成し、この発現ベクターで宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養してやれば、DNA配列にコードされている酵素を微生物内で大量生産することができる。
【0014】
以下、実施例を示し、この発明のDNA合成酵素についてさらに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。
【0015】
【実施例】
実施例1:PfuDNA合成酵素遺伝子のクローニング
PfuDNA合成酵素遺伝子の塩基配列(Nucleic Acids Research, vol.21, p259-265, 1993) に従ってPCRプライマーを合成し、ピロコッカスフリオサス (P. furiosus)のゲノムDNAを鋳型とするPCRによって目的遺伝子を増幅し、これを大腸菌用の発現ベクターにクローニングした。クローニング方法の詳細は以下のとおりである。
【0016】
P.furiosus DSM3638を上記文献に記載された方法で培養した。先ず、文献記載の培地を調製し、高温加圧滅菌ののち、蜜素ガスを吹き込み、植菌して95℃で15時間静置培養した。200mlの培養掖から遠心分離により約0.5mgの菌体を得た。集菌体を緩衝液A(10mMトリス-HCL,pH8.0, 1mMEDTA, 100mM NaCl )に懸濁し、10% SDSを1ml加え、撹拌の後、プロテイナーゼKを0.5mg 加えて55℃で60分反応させた。反応液を順次フェノ一ル抽出、フェノ一ル/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出し、エタノールを加えてDNAを不溶化し、回収した。得られたDNAを1mlのTEバッファー(10mMトリス-HCl,pH8.0,1mMEDTA)に溶解し、0.5mgのRNase Aを加えて37℃で60分反応させたのち、再度フェノール抽出、フェノ一ル/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出し、エタノ一ル沈殿でDNAを回収してTEバッファ-に溶解させ、約0.3mgのDNAを得た。
【0017】
次いで、目的のDNA合成酵素遺伝子をPCR増幅するために、既知の配列データをもとに配列番号3および4に示す2種のプライマ-DNAを合成した。すなわち、フォアードプライマー配列中には目的遺伝子の開始コドンATGおよび制限酵素NcoI配列(5'-CCATGG-3')を導入し、リバースプライマーは終止コドンの下流の適当な位置に結合するように設計した。PCRは、P.furiosusDNA2μgとプライマー各10pmolを用い、LATaq(宝酒造)と添付のバッファー条件で、50μlの反応系で行った。サイクル条件は、酵素を加える前に93℃/3分を行い、94℃/0.5 分、55℃/0.5 分、72℃/1.0 分を30サイクルした。増幅したDNA断片を精製し、NcoIで処理した後、同じくNcoIで切断後に平滑末端化し、さらにNcoI処理した発現ベクターpET15-bのT7プロモーター下流に組み込んだ。この発現ベクターをpDPWT100とし、挿入遣伝子の塩基配列を確認した。
実施例2:改変型PfuDNA合成酵素I 遺伝子の作成
クローン化したPfuDNA合成酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターpDPWT100に対して、期待する変異を含んだオリゴヌクレオチド(配列番号5および6)とプロメガ社の突然変異導入キットを用い、公知の方法 (Strategies, vol 9, p3-4,1996) に従って改変型PfuDNA合成酵素I の遺伝子を、発現ベクターpDPWT100上で作成し、発現ベクターpDP5b17を構築した。なお、この改変型遺伝子の塩基配列を決定することにより、改変型PfuDNA合成酵素I のアミノ酸配列(配列番号1)を確認した。
実施例3:改変型PfuDNA合成酵素II遺伝子の作成
配列番号7および8のオリゴヌクレオチドを用いたことを除き、実施例2と同一の方法により、改変型PfuDNA合成酵素IIの遺伝子を作成し、発現ベクターpDP5C4 を構築した。この改変型遺伝子の塩基配列を決定することにより、改変型PfuDNA合成酵素IIのアミノ酸配列(配列番号2)を確認した。
実施例4:改変型PfuDNA合成酵素I の大腸菌での発現と精製
実施例2で作成した改変型PfuDNA合成酵素I の遺伝子を次のとおりに大腸菌で発現させ、精製した。
【0018】
改変型PfuDNA合成酵素I 遺伝子をもつ発現ベクターpDP5b17を大腸菌HMS174(DE3)株に導入し、終濃度0.1mMのIPTGを含んだLB培地で14時間培養し、酵素を大腸菌体内に発現誘導した。遠心して菌体を集めた後、150mM Tris/HCl(pH7.5)、2mM EDTA、0.24mM APMSFおよび0.2%のTween20を含む緩衝液で超音波処理を行いながら、改変型PfuDNA合成酵素I を抽出した。この粗抽出液を80℃、15分の熱処理を行うことで大腸菌由来のDNA合成酵素を失活させると共に、改変型PfuDNA合成酵素I の部分精製を行なった。部分精製画分は50mMTris/HCl(pH7.5)、1mMEDTA、0.2%Tween20、7mM 2-mercaptoethanol および10% glycerolの緩衝液に対し透析した。この段階で改変型PfuDNA合成酵素I に特異的なDNA合成活性を検出した。
実施例5:改変型PfuDNA合成酵素IIの大腸菌での発現と精製
実施例3で構築した発現ベクターpDP5C4 を用い、実施例4と同様の方法により改変型PfuDNA合成酵素IIを抽出し、部分精製した。
実施例6:改変型PfuDNA合成酵素I およびIIによるプライマー伸長反応
実施例4および5でそれぞれ部分精製した改変型PfuDNA合成酵素I およびIIを用い、鋳型DNAに相補的なDNA鎖のプライマー伸長反応を試験した。
【0019】
20mMTris/HCl(pH8.0)、2mM MgCl2、50μg/mlBSA、0.1%Triton X-100、1mMの各cold dNTPs(0.1mM for dCTP)、[α-32P] dCTPの10μCiとM13(-21)のプライマーをアニールさせた0.63μgのpBLUESCRIPT プラスミドを含む反応液20μlに、上記の部分精製酵素画分1μgを入れ、75℃で1分および3分間反応させた。伸長したDNA鎖を8M ureaを含んだポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離した後、イメージアナライザ-によりそのパターンを解析した。また対照として、従来の野性型PfuDNA合成酵素を用いて同様のDNA合成を行なった。
【0020】
結果は図2に示したとおりである。従来の野性型PfuDNA合成酵素を用いた場合には、約1000ベースに大きな合成停止領域が存在し、このことによる不完全なDNA鎖の存在を示すバンドが観察された。一方、この発明の改変型PfuDNA合成酵素I およびIIによるDNA合成では、約1000ベースのバンドも含めて合成量が増大し、しかもより高分子の(すなわち、より伸長した)PCR産物の存在を示すバンドも観察された。
【0021】
以上の結果から、この発明のDNA合成酵素は、PCR法によるDNA合成において、合成DNA鎖のより長い伸長が可能であることが確認された。
【0022】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、高分子DNAをPCR等によって増幅する場合であっても、その全長を効率よく合成、増幅することのできる新規な耐熱性DNA合成酵素が提供される。これによって、DNA鎖の試験管内での合成や増幅、塩基配列の決定等を簡便かつ高精度で行なうことが可能となる。
【0023】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】従来のPfuDNA合成酵素とKODDNA合成酵素のプライマー伸長活性を示す電気泳動の結果である。
【図2】従来のPfuDNA合成酵素(野性型)とこの発明の改変型PfuDNA合成酵素のプライマー伸長活性を示す電気泳動の結果である。
図面
【図1】
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【図2】
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