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明細書 :波長変換結晶

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3936466号 (P3936466)
公開番号 特開平11-282035 (P1999-282035A)
登録日 平成19年3月30日(2007.3.30)
発行日 平成19年6月27日(2007.6.27)
公開日 平成11年10月15日(1999.10.15)
発明の名称または考案の名称 波長変換結晶
国際特許分類 G02F   1/37        (2006.01)
G02F   1/355       (2006.01)
FI G02F 1/37
G02F 1/355 501
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願平10-082309 (P1998-082309)
出願日 平成10年3月27日(1998.3.27)
審査請求日 平成15年6月25日(2003.6.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】佐々木 孝友
【氏名】森 勇介
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】▲高▼ 芳徳
参考文献・文献 特表平09-512354(JP,A)
F.Mougel et al.,Optical Materials,1997年 9月,Vol.8, No.3, pp.161-173
G.Aka et al.,European Journal of Solid State and Inorganic Chemistry,1996年10月14日,Vol.33, No.8, pp.727-736
R.Norrestam et al.,Chemistry of Materials,1992年 6月,Vol.4, No.3, p.737-743
調査した分野 G02F 1/35 - 1/39
H01S 3/108 - 3/109
CA(STN)
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
次式
【化1】
JP0003936466B2_000002t.gif
(Mは、各々、Gd、Y、LaおよびLuから選択されるいずれか1種の希土類元素を示し、かつ、MとMとは互いに異なる希土類元素を示す。0<x<1を示す
で表わされ二次非線形光学結晶であることを特徴とする波長変換結晶。
【請求項2】
請求項1の結晶を備えていることを特徴とする第2高調波又は第3高調波への波長変換装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、波長変換結晶に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、非線形光学結晶として有用な、新しい波長変換結晶に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
近年、レーザー技術の急速の発展にともなって、近赤外の固体レーザー光を非線形光学結晶を用いて波長変換することが大きな技術課題になってきている。
固体レーザーは、スペクトル幅が狭く、出力が安定しており、メンテナンスが容易で小型化が可能であることから、レーザー加工やレーザー医療の手段として、そして表面改質、光情報処理への応用として注目されているものであり、このような固体レーザーの長所を生かすためにも波長変換技術が重要になっている。
【0003】
このような波長変換のための理想的な非線形結晶については、▲1▼大きな非線形光学定数、▲2▼短い吸収端、▲3▼適度な複屈折率、を持つことがその要件となる。また、結晶としては、▲4▼機械的な特性に優れていることが実用上の観点より必要となる。
なお、▲3▼の適度な複屈折率とは、発生させたい波長に対して、最も波長変換が高効率で行われる非臨界位相整合条件を満たすような複屈折率のことである。複屈折率が理想値よりも小さいと波長変換が不可能になり、大きいと非臨界位相整合条件から離れるため変換効率が低下する。
【0004】
非線形光学結晶についてはこれまでにも様々な試みがなされてきているが、その一つとしてカルシウムオキシボレート(COB)系の結晶が注目されるものとしてある。
たとえば、AkaらによってGdCa4 (BO3 3 :GdCOBの非線形性が見出されており、その単結晶の育成と光学特性についての報告がなされている(1996年)。このGdCOBについては、
・Cz法により育成可能であって、非水溶性であること
・ビッカース硬度:600程度(水晶程度)であること
・deff (at1064nm):1.3pm/V(KDPの約3.4倍)
・位相整合限界波長840nmであって、
Nd:YAGの第三高調波発生が不可能であること
が明らかにされている。
【0005】
しかしながら、このGdCOBについては、複屈折率が0.033と小さいことが大きな問題であった。
すなわち、GdCa4 O(BO3 3 (GdCOB)結晶は育成が容易で機械的特性に優れているが、複屈折率が小さいため波長変換で発生できる波長が長くなる。そこで、この出願の発明者らは、複屈折率を大きくするための手段について検討を行い、GdCa4 O(BO3 3 (GdCOB)結晶のGdをYと置換させると複屈折率が大きくなることを見い出した。その結果、GdCOB結晶はNd:YAGレーザーの第2高調波しか発生できないが、GdをYと置換したYCOBではNd:YAGレーザーの第3高調波発生が可能になった。
【0006】
この新たに見出されたYCOB結晶については、この出願の発明者らによってすでに具体的に提案がなされているところである。
ただ、これまでのCOB結晶については、複屈折率について自在に制御することは可能とされていないことから、この出願の発明者らは、波長変換のための非線形光学結晶としてのCOBについてさらに検討を進め、機械的性質とともに光学特性、特に波長変換のための重要な要件としての複屈折率について最適化制御を可能とする新しい技術手段を提供することを課題としてきた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、次式
【0008】
【化2】
1-xCaO(BO
(Mは、各々、Gd、Y、LaおよびLuから選択されるいずれか1種の希土類元素を示し、かつ、MとMとは互いに異なる希土類元素を示す。0<x<1を示す
【0009】
で表わさ二次非線形光学結晶であることを特徴とする波長変換結晶を提供する。以上のとおりのこの出願の発明は、GdCa4 O(BO3 3 のGdCOBについて、GdをYに置換する場合だけでなく、Lu、Laなどの希土類元素もGdサイトに導入することができ、格子定数を変化することができることを焼結体のX線回折観察により確認したことを手がかりとしている。格子定数と屈折率とは相関があるので、格子定数が変化するということは結晶の複屈折率が変化していることを意味する。そこで、さらに検討を進め、Gd、Y、Lu、Laの比率を変えることにより、複屈折率を自由に制御することができることを見出し、この発明を完成した。すなわち、複屈折率は、たとえばLu>Y>Gd>Laの順で変化する。その結果、Nd:YAGレーザーの第3高調波(355nm)から第2高調波発生(532nm)までの任意の波長に対して最適な複屈折率を得ることができるため、常に非臨界位相整合が実現される。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、以上のとおりの特徴と背景をもつものであるが、以下に実施例を示し、詳しく発明の実施の形態について説明する。
前記の式で表わされるこの発明の波長変換結晶においては、M1 およびM2 の希土類元素は各々相違したものである。Gd、Y、La、Luをはじめとする希土類元素であってよい。
【0011】
結晶の育成については、その手法は特に限定されることはないが、たとえば高周波誘導体加熱型Cz法により育成することができる。
【0012】
【実施例】
結晶の育成は、図1に例示した構成において高周波誘導加熱型Cz法により行った。原料としては、CaCO3 、B2 3 とともに、希土類元素の酸化物(RE2 3 )を用いた。
Ir(イリジウム)坩堝の径は50mmで、Ar(アルゴン)雰囲気中において、たとえば約1510℃の温度において育成した。
<1>Gd0.480.52COB
Gd0.480.52COBの結晶を次の条件において育成した。
【0013】
シード方向 :a軸(YCOB結晶)
育成スピード:7mm/h
回転速度 :20rpm
結晶長 :約45mm
4cm長の育成結晶について、図2のように5分割し、上部、中部および下部の組成をICPにより測定したところ、いずれもGd/Y=0.91と一定で、均一な組成であることが確認された。
【0014】
このことからも、GdX 1-X Ca4 (BO3 3 の結晶は固溶体であることが確認された。
そして、第2高調波発生における非臨界位相整合波長がGdCOB結晶の970nmとYCOB結晶の840nmとの間である920nmとなった。Z軸方向における非臨界位相整合波長を計算すると図3のとおりとなる。このことから、840nm~970nmの間で、GdX 1-X COB結晶は任意のxにおいて、均一な組成の結晶が育成可能で、複屈折率もxの値によって制御できることを示している。
<2>GdX 1-X COB
そこで、前記xの値を変更し、位相整合角度について検討した。その結果を図4に示した。Gdが24%付近において位相整合角度が90℃の非臨界位相整合条件を室温において満たすことになると判明した。
【0015】
なお、この場合でも、結晶の温度の変更により、最適なGdの割合を変化させることが考慮される。
<3>LaX Gd1-x Ca4 (BO3 3 ,YX Lu1-x Ca4 (BO3 3 前記と同様にして、GdとYの組合わせ以外にも検討した。
前記のGdx 1-X Ca4 (BO3 3 とともに、LaX Gd1-x Ca4 (BO3 3 ,YX Lu1-x Ca4 (BO3 3 についても、Nd:YAGレーザーの第3高調波(355nm)から第2高調波発生(532nm)についての優れた波長変換特性が期待できることが確認された。
【0016】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、均一な組成の固溶体を形成するGdx 1-X Ca4 (BO3 3 だけでなく、複数種の希土類元素のオキシボレート結晶が、複屈折率の制御が可能な、優れた光学特性を持つ、波長変換のための非線形光学結晶として提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】結晶育成の装置について例示した一部切欠き斜視図である。
【図2】育成された結晶の組成分析の部位とGd/Yの比を示した図である。
【図3】Z軸方向における非臨界位相整合波長の計算の結果を示した図である。
【図4】Gdx 1-x COBの位相整合角度を示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3