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明細書 :導電性透明酸化物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3850978号 (P3850978)
公開番号 特開平11-278834 (P1999-278834A)
登録日 平成18年9月8日(2006.9.8)
発行日 平成18年11月29日(2006.11.29)
公開日 平成11年10月12日(1999.10.12)
発明の名称または考案の名称 導電性透明酸化物
国際特許分類 H01B   1/08        (2006.01)
C01G   3/00        (2006.01)
C01G   5/00        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
H01L  31/0264      (2006.01)
FI H01B 1/08
C01G 3/00
C01G 5/00 Z
H01B 13/00 503B
H01L 31/08 M
請求項の数または発明の数 1
全頁数 11
出願番号 特願平10-086599 (P1998-086599)
出願日 平成10年3月31日(1998.3.31)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 1997年10月2日 社団法人応用物理学会発行の「1997年(平成9年)秋季第58回応用物理学会学術講演会講演予稿集第2分冊」に発表
審査請求日 平成13年12月25日(2001.12.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】川副 博司
【氏名】細野 秀雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】小川 進
参考文献・文献 Takuya Otabe et al.,“n-type electrical conduction in transparent thin films of delafossite-type AgInO2”,APPLED PHYSICS LETTERS,1998年 3月 2日,VOL.72 , No.9,p.1036-1038
調査した分野 H01B 1/08
C01G 3/00
C01G 5/00
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
組成式ABO2(A:1価の陽イオンとなる元素、B:3価の陽イオンとなる元素、O:酸素)で示されるデラフォサイト系酸化物であ、Aは、1価のCu又はAgで、Bは、Al、Ga、In、Sc、Y、及びLaからなる群から選択される元素の1種であり、透明でp型導電性を示す導電性透明酸化物であって、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、及びCdからなる群から選択される1種以上の元素が添加され、B元素が一部置換されたことを特徴とする導電性透明酸化物。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、導電性透明酸化物に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、平面型表示装置用等の透明電極をはじめ、透明半導体素子としての応用展開が可能な、新しい導電性透明酸化物に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
光学的に透明な酸化物は、その大きなバンドギャップ(約3eV)がゆえに電気絶縁体である。可視域での高い透過率と導電性は、多くの場合、相反する性質として認識されている。だが、注目すべき例外として、ITO、AZO等の透明で導電性を示す物質が幾つか存在し、透明電極素材として実際に応用されてもいる。これらITO、AZO等の導電性透明酸化物は、ギャップ上の伝導帯に2×1021/cm3 以下の濃度の電子がドープされたものものであり、光学的には透明でありながら、金属的導電性を示す。
【0003】
このような導電性透明酸化物については、新たな物質の探索が精力的に進められている。
この発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、全く新たな導電性透明酸化物を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するものとして、組成式ABO2 (A:1価の陽イオンとなる元素、B:3価の陽イオンとなる元素、O:酸素)で示されるデラフォサイト系酸化物であ、Aは、1価のCu又はAgで、Bは、Al、Ga、In、Sc、Y、及びLaからなる群から選択される元素の1種であり、透明でp型導電性を示す導電性透明酸化物であって、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、及びCdからなる群から選択される1種以上の元素が添加され、B元素が一部置換されたことを特徴とする導電性透明酸化物を提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の導電性透明酸化物についてさらに詳しく説明する。
これまでに知られている導電性透明酸化物は、ITO、AZOをはじめその全てがn型導電性のみを示す。そこで、この発明の発明者らは、p型導電性を示す導電性透明酸化物の存在を検証してみた。
【0006】
p型導電性を示す導電性透明酸化物がこれまでに存在しなかったのは、酸化物の電子構造上の特徴に端を発している。つまり、酸化物では、価電子帯上端部の電子は酸素イオン上に局在するのである。言い換えるならば、この価電子帯上端部における電子の酸素イオン上への局在を解消すれば、p型導電性が実現される可能性がある。
【0007】
そこで、酸化物を構成する陽イオン種には、酸素イオンの2p電子レベルのエネルギーにほぼ匹敵する閉殻電子構造を持つ陽イオンが適当であり、原子内励起に従う着色を起こさないCu+ 及びAg+ が選択される。Cu+ 及びAg+ の電子配置は、それぞれ、3d104s0 、4d105s0 であり、d100 の等電子配置を持つ。d10電子は閉殻電子と呼ばれるが、これらCu+ 及びAg+ のd10電子のエネルギーは、同様な等電子配置を持つ陽イオンの中で最も高い。等電子配置を持つ陽イオンであっても、その酸化物は、酸素の電気陰性度が大きいために、通常大きなバンドギャップを持ち、電気絶縁体となりやすい。しかしながら、Cu+ 及びAg+ のd10電子のエネルギーは十分高く、酸素イオン上の2p6 電子と重なり合う可能性がある。
【0008】
次に、酸化物については、酸素イオンと金属イオンの結合の共有原子価が高くなる結晶構造が適当である。そのような結晶構造には、Cu2 Oがp型導電性の酸化物である事実から、酸素イオンが正四面体型となるイオン配位が選択される。
さらに、結晶構造としては、Cu+ 同士、Ag+ 同士の相互作用の空間的次元性を低減させるのが適当でもある。隣接するCu+ やAg+ 上のd10電子間に及ぼす直接相互作用は、バンドギャップを縮小するおそれがあるからである。次元数の低減により、バンドギャップは拡大され、可視光の吸収は起こらなくなる。
【0009】
以上の観点からp型導電性を示す導電性透明酸化物として、組成式ABO2 (Aは、Cu又はAg)で示されるデラフォサイト系酸化物が選択される。B元素には、化学量論から見て、3価の陽イオンとなるIIIa族及びIIIb族に属するAl、Ga、In、Sc、Y、及びLaが選択される。
図1は、デラフォサイト系酸化物の結晶構造の一例を示した結晶構造図である。
【0010】
この図1は、CuAlO2 の結晶構造を示しているが、この結晶構造においてCu+ 及びO2-の周りの対称性は、O2-の場合、近接する陽イオンが1個のCu+ と3個のAl3+であることを除けば、Cu2 Oのそれに等しい。一方、各イオンは、c軸に垂直な平面に位置し、2次元の層状構造が形成されている。このため、Cu+ 上のd10電子間相互作用が2次元に低減されており、CuAlO2 のバンドギャップはCu2 Oよりも拡大される。なお、結晶構造中の繰り返し単位は、c軸方向にCu-O-Al-O-Cuとなっている。
【0011】
この組成式ABO2 で示されるデラフォサイト系酸化物(A:Cu又はAg、B:Al、Ga、In、Sc、Y、又はLaの1種)は、後述する実施例に示すように、p型導電性を示す導電性透明酸化物であることが実際に確認された。正孔が何に由来するのか今のところ解明されていないが、過剰酸素に起因すると考えられる。過剰酸素となるモデルのは2通りあり、一つは、陽イオン欠損で、他の一つは、隙間酸素の存在である。これらはいずれもCu2 Oについて報告されていることであるが、デラフォサイト系酸化物にも同様のことがあてはまると推測される。
【0012】
のデラフォライト系の導電性透明酸化物は、従来のITO、AZO等と同様に、平面型表示装置用等の透明電極はもちろんのこと、pn接合を形成することにより、透明なトランジスタ等の透明半導体素子が実現される可能性がある。たとえば、窓上に配置される太陽電池などの実現の可能性もある。
【0013】
また、デラフォイト系の導電性透明酸化物は、適当な元素を添加し、B元素及び酸素を一部置換することによって、より高い導電性を示す。p型導電性のためには、B元素の置換には、IIa族及びIIb族の元素が適当であり、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、又はCdの1種以上の添加が例示される。酸素の置換には、Nが適当である。具体的な置換対象及び置換元素は、たとえば表1、表2に示すことができる。
【0014】
【表1】
JP0003850978B2_000002t.gif
【0015】
【表2】
JP0003850978B2_000003t.gif
【0016】
以下にこの発明の導電性透明酸化物の実施例を示す。
もちろん、この発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0017】
【実施例】
参考例1)
Cu2OとAl23、Cu2OとGa23をそれぞれ固相反応させ、CuAlO2及びCuGaO2の粉末を合成した。次いで、これらの粉末から焼結体を作製し、これをターゲットとしてRFスパッタリング法により、Ar/O2雰囲気下に各々の薄膜を室温においてSiO2ガラス基板上に作製した。これらの薄膜は非晶質であったため、CuAlO2についてはN2ガス下700℃で12時間、CuGaO2はN2ガス下800℃で12時間アニールした。
【0018】
そして、得られたそれぞれの薄膜について、X線回折、光透過率、及び電気伝導度の温度依存性を測定した。光透過率の測定は、可視光からこれに近接する赤外領域で行った。電気伝導度の測定は、直流2端子法により行った。図2、図3、及び図4は、各々、CuAlO2 の測定結果を示している。
図2は、CuAlO2 の焼結体及び薄膜のX線回折図である。
【0019】
回折パターンに見られるピークから、いずれも、R3m空間群に属するデラフォサイト構造であるとが確認される。薄膜には、さらに、(001)面上に配向する傾向が見られ、単相であることも確認される。
図3は、CuAlO2 の光透過率の測定結果を示した光透過率-波長相関図及び(αhν)2 -hν相関図である。
【0020】
この図3からCuAlO2 の光学的バンドギャプは3.0eV以上であり、可視域での透明性が確認される。
図4は、CuAlO2 の電気伝導度の温度依存性を示したlog σ-温度相関図である。
図4に示した温度依存曲線から、CuAlO2 は、半導体的な温度依存性を示すことが確認される。また、高温域での活性化エネルギーを大まかに見積もると、ほぼ0.2eV程度であり、バンドギャップの半分以下であることが分かる。価電子帯における正孔伝搬が示唆される。150K以下の低温域では、図4図中に合わせて示したように、電気伝導度は、ほぼT1/4 法則に従う。これらの事実は、また、フェルミレベルに近いギャップ準位の存在を示唆している。
【0021】
なお、室温での電気伝導度σは0.95×10-1Scm -1 であった。
さらに、ホール係数を測定したところ、CuAlO2 のホール係数Rhは、+48.6cm3 -1であった。p型導電性であることが示唆される。
これら電気伝導度及びホール係数の測定結果から、キャリア濃度N1.3×1017cm-3及びホール移動度μ10.4cm2 -1-1が得られる。
【0022】
そして、室温度のゼーベック係数を測定したところ、CuAlO2 のゼーベック係数Sは、+183μV/Kであった。p型導電性であることがまた示唆される。
以上の結果から見て、CuAlO2 は、透明で導電性を示すデラフォサイト系酸化物であると認められる。しかも、このCuAlO2 は、p型導電性を示す導電性透明酸化物であるとも認められる。
【0023】
CuGaO2についても、CuAlO2と全く同様に、p型導電性を示すデラフォサイト系導電性透明酸化物であると認められた。
参考例2)
イオン交換法により合成したAgInO2粉末から焼結体を作製した。この焼結体をターゲットとし、RFスパッタリング法により、薄膜を、Ar/O2雰囲気下に400℃のSiO2基板上に作製した。成膜条件は以下の通りとした。
【0024】
RFパワー :180W
スパッタ圧 :0.1torr
スパッタ圧比:Ar/O2 =40/10
成膜時間 :30分
ターゲット-基板間距離:25mm
次いで、この薄膜をO2 ガス下500℃で12時間アニールした。
【0025】
同様に、Snを5%添加(ドープ)した薄膜も作製した。
これらの薄膜について、ICP組成分析を行うとともに、実施例1と同様にして、X線回折により相の同定を行うとともに、光吸収スペクトルを3200~200nmの範囲で測定した。また、直流2端子法による電気伝導度、並びに室温におけるゼーベック係数の測定も合わせて行った。これらの結果を示したのが、図5、図6、及び図7である。
【0026】
ICP組成分析の結果は、以下の表3に示す通りであった。
【0027】
【表3】
JP0003850978B2_000004t.gif
【0028】
図5に示した薄膜X線回折パターンからは、各々の薄膜が単相からなることが確認される。また、図6に示した光吸収スペクトルから、光学的バンドギャップは4.4eVと求められ、可視域で透明であることが確認される。図7に示した電気伝導度の温度依存曲線からは、AgInO2 薄膜は、室温付近において10-4S/cm程度の電気伝導度を示した。一方、Sn添加AgInO2 薄膜は、6.0×100 S/cmという高い電気伝導度を示した。
【0029】
これらいずれの薄膜もゼーベック係数Sは負の値となり、n型導電性であることが確認される。Sn添加AgInO2 のゼーベック係数は、-70μV/Kであった。
なお、Sn添加AgInO2 のホール係数Rh、キャリア濃度N、及びホール移動度μは、それぞれ、-2.3×10-1 cm3-1、2.7×1019cm -3 、0.47cm2 -1-1であった。
【0030】
以上の測定結果から総合的に見て、AgInO2は、透明で導電性を示すデラフォサイト系酸化物であり、n型導電性を示す導電性透明酸化物であると認められる。さらに、SnによるInの一部置換は、n型導電性を向上させるとも認められる。
実施例1
Ca、Cd、及びSrを各々1%添加する以外は、実施例2と同様にして薄膜を成膜した。また、Caについては3、5、及び7%の添加も試みた。
【0031】
図8、図9、及び図10は、各々、このようにして得られた薄膜のX線回折図、光透過率-波長相関図、及びlog σ-温度相関図である。
いずれの薄膜の場合にも、室温付近で約10-2-10-3S/cmという高い電気伝導度を示し、また、ゼーベック係数は正の値となった。これらの結果から、p型のAgInO2 が実現されることが確認される。
【0032】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、新規な導電性透明酸化物が提供される。また、p型導電性を示す全く新しい導電性透明酸化物も提供される。この導電性透明酸化物は、従来のITO、AZO等と同様に平面型表示装置用等の透明電極はもちろんのこと、透明半導体素子としての応用も可能であり、透明トランジスタや窓上に配置される太陽電池などの実現が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の導電性透明酸化物の一例として示したCuAlO2 の結晶構造図である。
【図2】CuAlO2 の焼結体及び薄膜のX線回折図である。
【図3】CuAlO2 の光透過率の測定結果を示した光透過率-波長相関図及び(αhν)2 -hν相関図である。
【図4】CuAlO2 の電気伝導度の温度依存性を示したlog σ-温度相関図である。
【図5】AgInO2 薄膜及びSn添加AgInO2 薄膜のX線回折図である。
【図6】AgInO2 及びSn添加AgInO2 の光透過率の測定結果を示した光透過率-波長相関図及び(αhν)2 -hν相関図である。
【図7】AgInO2 及びSn添加AgInO2 の電気伝導度の温度依存性を示したlog σ-温度相関図である。
【図8】Ca添加AgInO2 薄膜のX線回折図である。
【図9】Ca添加AgInO2 の光透過率-波長相関図である。
【図10】Ca、Cd、Srをそれぞれ添加したAgInO2 のlog σ-温度相関図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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