TOP > 国内特許検索 > マイクロスクラッチ試験機を使用した薄膜付着強度測定方法 > 明細書

明細書 :マイクロスクラッチ試験機を使用した薄膜付着強度測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3586112号 (P3586112)
公開番号 特開2000-074819 (P2000-074819A)
登録日 平成16年8月13日(2004.8.13)
発行日 平成16年11月10日(2004.11.10)
公開日 平成12年3月14日(2000.3.14)
発明の名称または考案の名称 マイクロスクラッチ試験機を使用した薄膜付着強度測定方法
国際特許分類 G01N 19/04      
G01N  3/56      
FI G01N 19/04 C
G01N 3/56 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願平10-241934 (P1998-241934)
出願日 平成10年8月27日(1998.8.27)
審査請求日 平成15年11月28日(2003.11.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】馬場 茂
個別代理人の代理人 【識別番号】100099265、【弁理士】、【氏名又は名称】長瀬 成城
審査官 【審査官】▲高▼見 重雄
参考文献・文献 特公平3-64825(JP,B2)
特開平10-38792(JP,A)
特開昭63-37237(JP,A)
特開昭57-153247(JP,A)
吉田尚之、翠川司、中野武雄、馬場茂,マイクロスクラッチ試験機における摩擦応答信号の周波数解析,1998年春季第45回応用物理学関係連合講演会講演予稿集第2分冊,日本,1998年 3月28日,30p-PA-14,p.642
調査した分野 G01N 19/04
G01N 3/00-3/62
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
マイクロスクラッチ試験機を使用して薄膜付着強度測定を行う方法において、マイクロスクラッチ試験機の圧子針から生じる電気信号をフーリエ分解し、分解した信号の中から基本周波数の偶数次の高調波を検出し、薄膜の臨界損傷荷重を測定するようにしたことを特徴とするマイクロスクラッチ試験機を使用した薄膜付着強度測定方法。
【請求項2】
マイクロスクラッチ試験機を使用して薄膜付着強度測定を行う方法において、圧子針軸部を単振動させ摩擦によって生じる信号をフーリエ変換し、フーリエ変換後の各係数を演算し、摩擦信号の基本周波数の偶数次の高調波成分を測定して薄膜の臨界損傷荷重を測定するようにしたことを特徴とするマイクロスクラッチ試験機を使用した薄膜付着強度測定方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜の基板に対する付着強度を測定するマイクロスクラッチ試験機を使用した薄膜付着強度測定方法に関するものであり、さらに詳細にはマイクロスクラッチ試験機の圧子針から取り出される電気信号をフーリエ分解し、この分解した信号をもとに薄膜の臨界損傷荷重を精度よく測定することができる薄膜付着強度測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
薄膜試料の基板に対する付着強度は,ダイヤモンドなどでできた硬質の圧子針で薄膜をスクラッチ(引っかく)し、薄膜が剥離する最小荷重(臨界荷重:壊れ始める荷重)を測定して評価している。
近年、光学用コ-ティング,ICの配線,磁気記録膜,またそれらの保護膜は非常に薄く,薄膜の臨界損傷荷重の測定が重要となっているが、こうした薄膜の薄膜付着強度測定にはマイクロスクラッチ試験機(例えば、本発明者らが発明し、日本工業規格として採用されている特公平3-64825号公報に記載されている表面特性試験機)が適している。
【0003】
このマイクロスクラッチ試験機による薄膜の薄膜付着強度測定は、圧子針を例えば、厚さ0.1μm程度の薄膜試料に押しつけて薄膜が基板から剥離する臨界損傷荷重を測定することにより行われる。
ここで、図6を参照してマイクロスクラッチ試験機の概略構造を説明すると、図中、1は半球状圧子針、2は前記圧子針を支持するカンチレバー、3は圧子カートリッジ部、4はカートリッジ部3にカンチレバー2を保持する粘弾性材料支点4、5はカンチレバー2の動きを検知する永久磁石5、6はセンサーコイルであり、また7は試験片としての基板、8は前記基板に付着されている薄膜である。
【0004】
この試験機を使用した薄膜の付着強度測定の原理を説明すると、ダイヤモンド製圧子針1をカンチレバー2を介して試料薄膜面8に押しつけ、このカンチレバー2を薄膜8表面に数10μm程度の振幅で薄膜面上で振動させると薄膜面と圧子針1間に作用する摩擦力に応じて圧子針1にスティックスリップによる振動が生じる。薄膜8に損傷が生じると、圧子針1に作用する摩擦力が不規則に変化するので圧子針1先の運動は大きく変化する。摩擦力による圧子針1の運動遅れと,表面の荒れから生じる不規則な振動を,電気的なスクラッチノイズとして検出し、圧子針1に生じる不規則な振動から、計測制御部において臨界損傷をはじめとする薄膜8の付着損傷の発生を検出する。このようにマイクロスクラッチ試験機では,スクラッチ用の圧子針1を数10μm程度の振幅で試料面上で振動させ,摩擦力による圧子針1の運動遅れと,表面の荒れから生じる不規則な振動を,電気的なスクラッチノイズとして検出し、薄膜8の付着強度の測定を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記測定法はセラミックなどの硬質で脆い薄膜では独壇場的な成果を治めているが,銅やアルミニウムなど柔らかい薄膜ではスクラッチノイズが小さく,信号波形の読み取りにある程度の測定経験を必要としていた。
この状況をさらに説明すると、マイクロスクラッチ試験機を使用して、圧子針1に対して水平移動(10μm)と垂直移動(0.5μm)の操作をステップ的に行うと、圧子針1にかかる荷重が大きくなるとともに摩擦信号が大きくなる。やがて、薄膜/基板の界面がこの応力に耐えきれなくなり、薄膜の剥離が生じるが、損傷が生じると摩擦応答信号に重畳して所謂スクラッチノイズが加わる。
セラミック薄膜等の硬い薄膜では大きなスクラッチ信号が現れるので容易に臨界損傷点を検出できるが、延展性の強い金属の薄膜ではこのノイズ成分が小さく、明確に臨界点を決定することが困難であり、このため柔らかい薄膜の付着強度測定には熟練を必要としていた。
【0006】
そこで、本発明者は、延展性の強い金属の薄膜であっても容易に薄膜の付着強度測定を行える方法をさらに研究した結果、マイクロスクラッチ試験機の圧子針の動きからもたらされる電気信号のうち、皮膜損傷以外の摩擦応答信号には、励振周波数の奇数倍の信号しか含まれていないことを確認し、こうした知見をもとに、延展性の強い金属の薄膜を付着した試料であっても明確な薄膜臨界損傷を検出できるマイクロスクラッチ試験機による薄膜付着強度測定方法を提供し、上記問題点を解決することを目的とする。
本発明では、マイクロスクラッチ試験機の圧子針軸部を単振動させ、摩擦によって生じる圧子針からの電気信号をフーリエ変換し、フーリエ変換後の各係数を演算し、摩擦信号の基本周波数の偶数次の高調波成分を測定して薄膜の臨界損傷荷重を測定せんとするものである。本発明によれば、厚さ1μm以下の膜の薄膜付着強度を正確に評価できるとともに付着損傷を高感度かつより客観的に検出することができる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明が採用した技術解決手段は、
マイクロスクラッチ試験機を使用して薄膜付着強度測定を行う方法において、マイクロスクラッチ試験機の圧子針から生じる電気信号をフーリエ分解し、分解した信号の中から基本周波数の偶数次の高調波を検出し、薄膜の臨界損傷荷重を測定するようにしたことを特徴とするマイクロスクラッチ試験機を使用した薄膜付着強度測定方法である。
また、マイクロスクラッチ試験機を使用して薄膜付着強度測定を行う方法において、圧子針軸部を単振動させ摩擦によって生じる信号をフーリエ変換し、フーリエ変換後の各係数を演算し、摩擦信号の基本周波数の偶数次の高調波成分を測定して薄膜の臨界損傷荷重を測定するようにしたことを特徴とするマイクロスクラッチ試験機を使用した薄膜付着強度測定方法である。
【0008】
【実施の形態】
以下図面を参照して本発明に係わるマイクロスクラッチ試験機を使用した薄膜付着強度測定方法の説明をすると、図1はマイクロスクラッチ試験機の圧子針1と薄膜試料との摩擦応答機構のモデル図である。
【0009】
図1において、1はカンチレバーの先端に固定した球状圧子針1、2は前記圧子針1を支持するカンチレバー2、3は圧子カートリッジ本体、4はカンチレバー2とカートリッジ本体3との間に設けた粘弾性材料支点、5がカンチレバー2の動きを検知する永久磁石、6はセンサーコイル、7は基板、8は薄膜である。圧子針1は図示のように弾性的なカンチレバ-(片持ち梁)2の先端についておりカンチレバ-2の支点を含むカ-トリッジ本体3が試料表面に平行に強制振動(f=30.0Hz)できるように構成されている。
【0010】
カンチレバー2の圧子針1は薄膜8との摩擦力がなければ支点の運動に完全に追従するが,圧子針1と薄膜8との間に働く摩擦力のために,圧子針1の運動は支点の運動より遅れる。この時の圧子針1と支点の相対運動がセンサーコイル6を介して誘導起電力としてピックアップされる。
この時検出された波形は図2中、(イ)のような電圧信号波形になる。
そして、この交流電圧の絶対値の平均が摩擦力に比例することがわかっている。
【0011】
圧子針1荷重Lを増やしながら摩擦力Fを測定する場合,FとLが比例する普通の摩擦の法則では摩擦-荷重図で傾き一定の直線になるが,実際のスクラッチ環境では圧子針1の応力が100気圧以上にもなり,圧子針1が薄膜8中に押し込まれたり薄膜8物質が流動的になって,一般には曲線になる。
いずれにせよ薄膜8が損傷しなければ連続的な曲線が描けるのに対し,薄膜8に損傷が生じると,摩擦力が不連続に変化して,損傷の発生した臨界荷重を知ることができる。
【0012】
前述したように固いセラミック薄膜等では,薄膜8の破片を針先が踏みつけることによるスクラッチノイズが発生するので,大きな不連続が現れ,臨界点の検出は容易である.
一方,柔らかい金属膜は薄膜8の損傷に伴って,摩擦力の変化があまり大きくないので,摩擦-荷重図から臨界荷重を決定するのが必ずしも明瞭でなく,図2の(イ)示す摩擦応答の信号波形を注視していないとわかりにくかった.
そこで、本発明では、摩擦応答信号のもつ周波数特性に注目することで、金属薄膜の損傷を容易に測定できるようにした。
即ち、圧子針1軸部を単振動させた場合に,摩擦によって生じる信号波形は図2の(イ)に示される。この信号は,1周期をTとして,
v(t+T/2)=-v(t)
の特性を持つ。
この1周期の信号を
【0013】
【数1】
JP0003586112B2_000002t.gifとフーリエ変換すれば、各係数は、
【0014】
【数2】
JP0003586112B2_000003t.gifのように計算できる。
【0015】
ここでv(t+T/2)=-v(t)を考慮すると、
【数3】
JP0003586112B2_000004t.gifと変形されるので、nが偶数(2m)の場合a2m=b2m=0となり、本来の摩擦信号には基本周波数の偶数倍の高調波成分は存在しないことが分かる。
【0016】
一方,損傷した薄膜破片の上を圧子針1が走ることによって生じるスクラッチノイズは,図2の(ロ)に示すように,必ずしも対称でなく,むしろ不規則な信号である。これより,皮膜や基板野破壊に伴う不規則な信号の検出は偶数次の高調波成分に注目していると検出しやすいことが理解できる。
ここで、本発明に係わるマイクロスクラッチ測定機の動作原理のブロックを図3に示す.
【0017】
図において11は正弦波発振器、12はパワー増幅器、13は増幅器、14は演算器であり、増幅器12からの信号により図1に示すカンチレバー2の圧子針1をf〔Hz〕で振動させ、演算器14で摩擦応答信号を得る。この信号は増幅器13によって増幅され、この信号と正弦波発振器11からの信号により図2に示す1周期分の電圧信号を取り込み1周期毎にフーリエ分解し、偶数次のみの成分を積算することにより薄膜8の臨界損傷荷重を測定する。
なお、上記実施形態では、電圧信号を1周期毎に取込みフーリエ変換してパワースペクトルを計算しているが、必ずしも1周期毎に限定する必要はなく、例えば高速フーリエ変換手段(FFT)、音響信号の周波数スペクトルアナライザ、あるいはデジタル信号処理回路(DSP)などを用いれば、1周期毎に限定しなくても偶数次高調波を抽出することができ、これらを使用した場合には製造コストを上記実施形態のものに比較して低減することができる。
【0018】
測定は、例えば、圧子針1に対して水平移動(10μm)と垂直移動(0.5μm)の操作をステップ的に行ないながら行い、圧子針1にかかる荷重を大きくして行き摩擦信号を大きしてゆく。
【0019】
0.2μm厚の銅の蒸着膜に対して上記測定方法を使用して実際に測定を行った。
摩擦応答の信号波形の一周期分をフ-リエ分解して,そのパワ-スペクトルの圧子針荷重による変化を調べた。従来式の摩擦信号をそのまま出力した結果が図4であるのに対し,パワ-スペクトルで偶数次のみを積算した結果は図5に示されるように,圧子針1荷重14mN付近で信号が急に立ち上がっている.ほとんど無信号であった状態から急に信号が立ち上がるときの圧子針1荷重が,皮膜損傷が発生した臨界荷重である。
以上のように本発明では、圧子針1から取り出される電気信号をフーリエ分解し、この分解した信号の中から偶数次偶数次高調波を抽出し、薄膜8の臨界損傷荷重を容易に測定することができる。
【0020】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できる。そのため前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、
(1)厚さ1μm以下の膜の薄膜8付着強度を評価できる。
(2)付着損傷を高感度かつより客観的に検出できる。
(3)光学用薄膜8,記録媒質薄膜8,IC配線薄膜8,保護膜など膜の薄膜8付着強度を評価できる。
(4)有機膜を含む,多層膜構造を表面から順番に削り取りながら,各層の力学特性を評価できる。
等の優れた効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マイクロスクラッチ試験機の圧子針と試料との摩擦応答機構のモデル図である。
【図2】圧子針によって検出された電圧信号波形の図である。
【図3】本発明に係わるマイクロスクラッチ測定機の動作原理のブロック ル図である。
【図4】摩擦応答の信号波形の一周期分をフ-リエ分解して,そのパワ-スペクトルの圧子針荷重の変化示す図である。
【図5】圧子針荷重とパワ-スペクトルで偶数次のみを積算した結果を示す図である。
【図6】従来のマイクロスクラッチ測定機の構成図である。
【符号の説明】
1 半球状圧子針
2 圧子針を支持するカンチレバー
3 圧子カートリッジ本体
4 カンチレバーとカートリッジ本体との間に設けた粘弾性材料支点
5 カンチレバーの動きを検知する永久磁石
6 センサーコイル
7 基板
8 薄膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5