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明細書 :コンビナトリアル分子層エピタキシー装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3018000号 (P3018000)
登録日 平成12年1月7日(2000.1.7)
発行日 平成12年3月13日(2000.3.13)
発明の名称または考案の名称 コンビナトリアル分子層エピタキシー装置
国際特許分類 C30B 23/08      
H01L 21/203     
FI C30B 23/08 M
H01L 21/203
請求項の数または発明の数 10
全頁数 9
出願番号 特願平10-258967 (P1998-258967)
出願日 平成10年9月11日(1998.9.11)
審査請求日 平成11年9月2日(1999.9.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】鯉沼 秀臣
【氏名】川崎 雅司
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸 (外1名)
審査官 【審査官】宮澤 尚之
参考文献・文献 米国特許5776359(US,A)
国際公開96/11878(WO,A1)
Science 268(1995)P.1738-1740
Nature 389(1997)P.944-948
Appl.Phys.Lett.(1997)P.3353-3355
調査した分野 C30B 23/08
H01L 21/203
B01J 19/00
H01L 43/08
要約 【課題】 分子層ごとにエピタキシャル成長して無機系超構造、金属や有機系超構造を形成するとともに、短時間で効率的な物質探索をするためのコンビナトリアル分子層エピタキシー装置を提供する。
【解決手段】 真空チャンバー2と、超高真空ポンプ4と、複数の基板5を保持し回転可能な基板ホルダー6と、基板ホルダー6を加熱するランプヒーター8と、基板ホルダー6に対向して設けられた回転可能なターゲットテーブル10,10と、複数の異なる固体原料のターゲット12と、これらのターゲット12を気化するエキシマレーザー光13,13と、レーザー光を真空チャンバー2内に導入する窓16,16と、薄膜成長基板上の分子層エピタキシャル成長をその場でモニターする反射高速電子線回折の電子銃18と、RHEEDのスクリーン17とを備えている。
特許請求の範囲 【請求項1】
基板を加熱する加熱手段と、複数の基板を保持し成長位置に搬送する基板ホルダーと、この基板ホルダーの成長位置にある基板に対して薄膜組成の原料を供給する多原料供給手段と、基板表面にガスを供給するガス供給手段と、基板表面での単分子層ごとのエピタキシャル成長をその場で観察するその場観察手段と、を圧力制御可能な高真空室内に備え、
上記各基板ごとに成長温度、圧力及び供給原料を制御し、系統的に上記その場観察手段に基づいて分子層ごとのエピタキシャル成長をした物質群を合成するコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置。

【請求項2】
前記多原料供給手段が、ターゲットテーブルに装填した複数の異なる固体原料のターゲットをエキシマレーザーで気化し前記各基板上に狙い通りの組成の薄膜を形成するようにしたレーザー分子線エピタキシーであることを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置。

【請求項3】
前記多原料供給手段がレーザー分子線エピタキシーであって、前記その場観察手段が反射高速電子線回折であることを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置。

【請求項4】
前記多原料供給手段がレーザー分子線エピタキシーであって、前記基板がα-Al2 3 、YSZ、MgO、SrTiO3 、LaAlO3 、NdGaO3 、YAlO3 、LaSrGaO4 、NdAlO3 、Y2 5 、SrLaAlO4 、CaNdAlO4 、Si及び化合物半導体のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置。

【請求項5】
前記多原料供給手段がレーザー分子線エピタキシーであって、ターゲットの固体原料が高温超伝導体、発光材料、誘電体、強誘電体、巨大磁気抵抗材料及び酸化物のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置。

【請求項6】
前記多原料供給手段がガスソース有機金属を流量制御してノズルにより前記各基板に吹き付けて供給するガスソース分子線エピタキシーであることを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置。

【請求項7】
前記多原料供給手段がガスソース分子線エピタキシーであって、前記その場観察手段が光を利用した反射率差分光法、表面光吸収法及び表面光干渉法のいずれかの方式に基づくものであることを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置。

【請求項8】
前記多原料供給手段がガスソース分子線エピタキシーであって、前記基板がSi及び化合物半導体であることを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置。

【請求項9】
前記基板が、基板表面を原子レベルで平坦化し最表面原子層を特定した基板であることを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置。

【請求項10】
前記高真空室が成長室であって、アニール室と、余熱加熱室とを備え、前記加熱手段と前記基板ホルダーとを一体的に上記成長室、アニール室及び余熱加熱室へ搬送し独立して真空チャンバーを形成することを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】この発明は、分子層ごとにエピタキシャル成長する無機系超構造、金属や有機系超構造を形成するのに利用し、特に短時間で効率的な物質探索をするためのコンビナトリアル分子層エピタキシー装置に関する。

【10】
さらに請求項7記載の発明は、多原料供給手段がガスソース分子線エピタキシーであって、その場観察手段が光を利用した反射率差分光法、表面光吸収法及び表面光干渉法のいずれかの方式に基づくものであることを特徴とする。また請求項8記載の発明は、多原料供給手段がガスソース分子線エピタキシーであって、前記基板がSi及び化合物半導体であることを特徴とする。さらに請求項9記載の発明は、基板が基板表面を原子レベルで平坦化し最表面原子層を特定した基板であることを特徴とする。また請求項10記載の発明は、高真空室が成長室であって、アニール室と、余熱加熱室とを備え、前記加熱手段と前記基板ホルダーとを一体的に上記成長室、アニール室及び余熱加熱室に搬送し独立して真空チャンバーを形成することを特徴とする。

【11】
このような構成の請求項1記載の発明のコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置では、[多原料]×[多基板]×[温度,圧力及び気相からのフラックス(堆積速度)などの反応パラメータ]の組合せを独立に制御し、1シリーズの反応により単分子層ごとにエピタキシャル成長した超格子構造を系統的に合成することができる。

【12】
また請求項2記載の発明では、波長の短いエキシマレーザー光によりターゲットの限られた表面を瞬時に気化するので、狙い通りの組成の薄膜が形成でき、例えば無機系超構造の形成が可能である。さらに請求項3記載の発明では、分子層ごとのエピタキシャル成長をモニターしながら、例えば高融点、多成分の酸化物を薄膜化できる。また請求項4及び5記載の発明では、ターゲットの原料組成を忠実に基板表面に供給し、成分によらず付着確率がほぼ1である点が有利に働くので、単分子層ごとにエピタキシャル成長した薄膜の高温超伝導体、発光材料、誘電体、強誘電体、巨大磁気抵抗材料を形成できる。

【13】
さらに請求項6記載の発明では、有機金属などの気化原料を用いて、例えば金属や有機系構造を形成することができる。また請求項7記載の発明では、単分子層ごとのエピタキシャル成長をモニターしながら薄膜成長ができる。さらに請求項8記載の発明では、単分子層ごとにエピタキシャル成長した化合物半導体が形成できる。また請求項9記載の発明では、格段に規則正しく長く続くRHEED振動を観察することができるので、単分子層ごとに進行するエピタキシャル成長を確実に実現できる。さらに請求項10記載の発明では、基板ホルダーを加熱したまま搬送でき、さらにアニール室、余熱加熱室及び超高真空室を独立して温度制御及び圧力制御することができる。

【14】

【発明の実施の形態】以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明の実施形態にかかるコンビナトリアル分子層エピタキシー装置の概略図であり、薄膜成長装置としてコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置を例示したものであり、このコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置に代えてコンビナトリアルガスソース有機金属分子線エピタキシー装置を用いてもよい。

【15】
本発明のコンビナトリアル分子層エピタキシー装置には、原料と作製する物質成分に応じて薄膜成長装置の構成が一部異なり、パルスレーザー光によって固体原料を気化して分子層ごとにエピタキシャル成長させて無機系超構造をコンビナトリアル合成するのに適するコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置と、有機金属などの気化原料を用いて金属や有機系超構造を分子層ごとにエピタキシャル成長させて形成するのに適するコンビナトリアルガスソース有機金属分子線エピタキシー装置とがある。両装置は薄膜原料の供給方法が異なる他はほぼ同一の装置構成である。

【16】
先ず、コンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置について説明する。図1を参照すると、本実施形態に係るコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置は、真空チャンバー2と、この真空チャンバー2とゲートバルブ(図示せず)を介して高真空に排気するターボ分子ポンプ、イオンポンプ及びクライオポンプ等の超高真空ポンプ4と、複数の基板5を保持し回転可能な基板ホルダー6と、この基板ホルダー6の後部に配設され基板を加熱するランプヒーター8とを備えている。

【17】
さらにこの装置は、回転可能なシャフト9に支持された基板ホルダー6と、基板ホルダー6に対向して設けられた回転可能なターゲットテーブル10,10と、これらのターゲットテーブル10,10に装填された複数の異なる固体原料のターゲット12と、これらのターゲット12を気化するエキシマレーザー光13,13の光源14,14と、このレーザ光を集光するレンズ15,15と、レーザー光を真空チャンバー2内に導入する窓16,16と、薄膜成長基板上の分子層エピタキシャル成長をその場でモニターする反射高速電子線回折(以下、「RHEED」という。)の電子銃18と、RHEEDのスクリーン17とを備えている。

【18】
さらに、基板ホルダー6及びターゲットテーブル10,10のホームポジションと回転位置は図示しない制御装置により管理されるとともに、この制御装置により基板が成長する位置に対してターゲットの種類が選択され、エキシマレーザーをパルス状に照射する時間が制御されている。超高真空ポンプ4は真空チャンバー2を10-10 Torr程度に保持できる能力を有することが望ましく、また真空チャンバー2は図示しないバルブの開閉度を調節して圧力制御するようになっている。なお、超高真空ポンプはロータリーポンプを補助ポンプとして用いている。

【19】
ランプヒーター8は基板5に薄膜を成長させている位置にあるとき成長プロセスに適した温度で加熱しているが、その他の位置にあるときは他の余熱用のランプヒータ7で加熱している。これらのランプヒーターは基板ホルダー6の近傍に配設されている。ランプヒーターは基板ホルダー自体に配設されていてもよいが、この場合ランプヒーターは基板が成長位置にあるときは成長温度に制御され、余熱用の位置にあるときは所定温度に制御されるようになっている。

【2】

【従来の技術】近時、ランタン・バリウム・銅酸化物系超伝導体が発見され、高温超伝導酸化物の薄膜形成技術が格段の進歩をとげるにつれ、金属材料、無機材料及び有機材料など様々な新機能物質の探索及び研究が行われている。高温超伝導酸化物の薄膜形成では、ペロブスカイトなどの酸化物機能材料自体が多成分の複酸化物を基にしているため、成分の最適化や薄膜作製条件と特性との相関関係を理論的に予測することが困難であり、試行錯誤的に最適化を図らざるを得ない。

【20】
図1に示した例では、余熱用と薄膜成長用の真空チャンバーは兼用していて一つであるが、基板に薄膜を成長させるチャンバーと余熱しておく真空チャンバーとを別途に隣接して設け、各チャンバーを独立して形成しておいてもよい。

【21】
また真空チャンバーには、常圧復帰のための大気及び窒素や高温超伝導関連の酸化物エピタキシーのために、ノズル19で供給する酸素及び反応性ガスなどのガス供給系が設けられている。なお、図1のガス供給系は略図であり、通常は質量流量計で制御され、真空ポンプと連動して制御可能になっている。

【22】
さらに基板としては、α-Al2 3 、YSZ、MgO、SrTiO3 、LaAlO3 、NdGaO3 、YAlO3 、LaSrGaO4 、NdAlO3 、Y25 、SrLaAlO4 、CaNdAlO4 、Si及び化合物半導体が使用できる。

【23】
ところで、分子層エピタキシーに基づくRHEED振動を検出し、しかもこのRHEED振動をモニターして単分子層ごとに制御して単分子層エピタキシャル成長を持続させるには、基板表面の原子レベルでの平坦化と最表面原子層の特定が極めて重要である。例えばABO3 の一般式で表されるペロブスカイト酸化物はAOとBO2 の原子層の繰り返しで構成されるが、最表面がAOの場合、BO2 の場合、両者が共存する場合、その上に堆積していく膜の成長モードが異なる。

【24】
例えばSrTiO3 研磨基板は最表面が主としてTiO2 であり、表面荒さは数nmである。このSrTiO3 (100)基板をHF/NH3 緩衝溶液(pH=4.5)でウエットエッチング処理すると表面を原子レベルで平坦化でき、最表面原子層がTiO2 面にできる。したがって、本実施形態では基板表面を原子レベルで平坦化し最表面原子層を特定した基板を用いるのが好ましい。

【25】
ターゲットの固体原料としては固体であれば何でも使用可能であるが、例えば、YBa2 Cu3 7 などの高温超伝導体、ZnO,(ZnMg)O,(ZnCd)Oなどの発光材料、SrTi O3 ,BaTiO3 ,PZT,(SrBa)TiO3 などの誘電体や強誘電体、(LaSr)MaO3 などの巨大磁気抵抗材料等が使用可能である。さらに、単成分及び多成分の酸化物を使用して成分ごとに供給することも可能である。

【26】
次に、コンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置の薄膜形成時の動作について説明する。例えば真空チャンバー2を10-4Torr程度の高真空に制御し、ランプヒーター8で基板5を例えば850℃の成長温度に制御しつつ、基板ホルダー6を回転して基板5を成長位置に配置する。この成長位置にある基板5に対向するようにターゲットテーブル10,10が回転してターゲット12,12を所定位置に配置し、このターゲット12,12にエキシマレーザー光13,13を例えばパルス状に所定時間照射する。

【27】
このエキシマレーザー光の照射によってターゲットの表面で急激な発熱と光化学反応の両方が起き、原料成分が爆発的に気化し、基板上に狙い通りの組成の薄膜を形成する。さらにRHEEDの鏡面反射点では一層ごとの成長による核発生と平坦化の繰り返しに伴う振動を観測でき、厳密に一分子層ごとの自己制御性のある膜厚モニターをする。単分子層ごとのエピタキシャル成長後、ターゲットテーブル10,10が回転し、他のターゲット12,12を所定位置に配置し、他の超格子構造物である薄膜成長を行う。

【28】
一つの基板に新たな格子構造を有する人工結晶や超格子を作製後、基板ホルダー6が回転して次の基板の処理を行う。エピタキシャル成長膜が超伝導体の場合、反応系の真空チャンバー2内の酸素分圧を高くして必要な酸化条件を満たしておく。なお、本実施形態では減圧度が低く、反応系内の酸素分圧を広い範囲で制御することが可能である。

【29】
このようにして本実施形態のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置では、[多原料]×[多基板]×[温度,圧力及び気相からのフラックス(堆積速度)などの反応パラメータ]の組合せを独立に制御し、1シリーズの反応により構造を系統的に制御した物質群を合成することができる。

【3】
このような中で、X.-D.Xiangらは多元スパッタリング法による薄膜形成を基板上の特定の場所をマスクで覆うマスクパターンニング技術と組み合わせ、多数の無機物質を並行して合成する無機材料のコンビナトリアル薄膜合成により酸化物高温超伝導体の探索を行い、多元系物質の機能探索に威力を発することを示している(X.-D.Xiangら、Science., 268、1738(1995))。

【30】
次に、コンビナトリアルガスソース有機金属分子線エピタキシー装置について説明する。図1はコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置の例示であるが、装置構成が共通する点が多いので図1を参照して説明する。図1を参照して本実施形態に係るコンビナトリアルガスソース有機金属分子線エピタキシー装置は、真空チャンバー2と、この真空チャンバー2とゲートバルブ(図示せず)を介して高真空に排気するターボ分子ポンプ、イオンポンプ及びクライオポンプ等の超高真空ポンプ4などの真空排気系とを備えている。

【31】
さらに、複数の基板5を保持し回転可能な基板ホルダー6と、この基板ホルダー6の後部に配設され基板を加熱するランプヒーター8と、基板ホルダー6とランプヒーター8とを支持して回転可能なシャフト9とを備え、有機金属などの気化原料である複数の反応性ガスを流量制御してノズル19により基板に吹き付けるようになっており、ガス流量、ガス導入のオン・オフ又はガス導入のタイミングなどと真空排気とは連動して制御されている。

【32】
またコンビナトリアルガスソース有機金属分子線エピタキシー装置では、原料がガスソース有機金属であり吸着表面反応が支配的であることから、分子層エピタキシャル成長のその場でモニターするその場観察手段としてレーザー光を照射し、その強度変化をモニターするのが効果的である。例えば直線偏光を基板にほぼ垂直に入射させ、反射光の偏光特性により表面構造の異方性を検知して分子層ごとのエピタキシャル成長をモニターする反射率差分光方式、表面吸着原子又は分子による光吸収及び光の位相変化による反射強度変化を測定して分子層ごとのエピタキシャル成長をモニターする表面光吸収方式及び表面光干渉方式が利用できる。

【33】
さらに基板としては例えばIII-V族、II-VI族、I-VII族、II-IV族、IV-VI族の種々の組合せの化合物半導体が利用できる。さらに化合物半導体でなくても、例えばSi基板でもよい。

【34】
このような構成のコンビナトリアルガスソース有機金属分子線エピタキシー装置では、各基板ごとに単分子層ごとの成長をモニターしてエピタキシャル成長することができ、1シリーズの反応により構造を系統的に制御した物質群を合成することができる。

【35】
次に、他の実施形態を説明する。図2は他の実施形態にかかるコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置の外観図である。他の実施形態に係るコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置20は、共通室22、成長室24、アニール室26、余熱加熱室28及び基板ホルダーロードロック室34を備え、これらの各室は真空シールドされ独立して高真空に排気される真空チャンバーとなっている。なお、図2中のTMPはターボ分子ポンプの略称を示すが、図示しないゲートバルブを介して超高真空ポンプにより排気されるようになっており、補助ポンプとしてロータリポンプを使用している。

【36】
また各真空チャンバーは図示しないバルブの開閉度を調節して圧力制御でき、さらに図示しないバルブ及び質量流量計が所定個所に設けられて、酸素及びドライ窒素などを流量制御して導入できるようになっている。

【37】
共通室22は、成長室24、アニール室26及び余熱加熱室28と隔壁39に設けられた開口部42,42,42を介して連結され、この開口部の周囲の溝にOリング41が埋め込まれている。さらに成長室24、アニール室26及び余熱加熱室28は、隔壁39に対してそれぞれ真空シールドされて固定保持されている。

【38】
共通室22には、基板ホルダー48、基板ホルダーのチャッカー45及びランプヒーター8(図3を参照)を円筒状のハウジング35内に格納した基板加熱部36が、図2では3つ設けられている。これらの基板加熱部36は公転移動シャフト43によって回転搬送及び上下方向に移動する搬送プレート38にハウジング35のフランジ部31で真空シールドされ、かつ、保持されている。公転移動シャフト43は共通室22を真空シールドしたまま回転機構60により回転し、移動機構70により上下方向に移動するようになっている。

【39】
ハウジング35の他端のフランジ部33は、搬送プレート38が下方の終点に移動したとき隔壁39の開口部42の周囲の溝に埋め込まれたOリング41に当接し、共通室22と隔離して真空シールドされている。このとき各基板加熱部36,36,36と、成長室24、アニール室26及び余熱加熱室28とで形成される各真空チャンバーは独立して真空排気及び圧力制御され、かつ、所定温度に加熱されるようになっている。

【4】
またG.Bricenoらは超巨大磁気抵抗(CMR)材料の探索のために、コバルト酸化物をベースとする新材料のLnx y CoO3-δ(Ln=La,Y、M=Ba,Sr,Ca,Pb)をコンビナトリアル合成法で組成の異なる128個の試料をスパッタ蒸着し、酸素雰囲気中での焼結後に磁気抵抗を測定して、CoO2 をベースとする複酸化物も最大磁気抵抗比72%CMRを示すことを明らかにし、焼結条件を変えたわずか2回のコンビナトリアル合成で、Co系CMR材料の発見と最適化を行っている。

【40】
図2に示すように、共通室22にゲートバルブ46を介して設けられた基板ホルダーロードロック室34には、基板5が装填された基板ホルダー48を複数個保持したストッカー49が設置されており、基板ホルダーロードロック室34を高真空に保持したまま外部から操作するクリップ52で基板ホルダー48を基板加熱部36のチャッカーに装填するようになっている。

【41】
成長室24の構成は図1に示したコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置の構成と同様であるが、ランプヒーターは成長室24に対して一つだけ設けられている点が異なる。なお、レーザー分子線エピタキシーでは、図2に示すように、成長室24にゲートバルブ47を介して設けられたターゲットロードロック室32にターゲット12を複数個保持したプレート54が設置されており、ターゲットロードロック室32を高真空に保持したまま外部から操作するクリップ56でターゲット12を図示しないターゲットテーブルに装填できるようになっている。

【42】
次に、基板加熱部について説明する。図3は他の実施形態にかかる基板加熱部の詳細断面図であり、搬送プレートが下方の終点に移動して基板加熱部が隔壁に当接している状態を示す図である。図3に示すように、基板加熱部36は、フランジ31,33を両端に有する円筒状のハウジング35と、このハウジングの中心線上に設けられたランプホルダー82と、このランプホルダーに設置されたランプヒーター8とを有し、基板ホルダーを回転させる基板回転機構を備えている。なお、ランプヒーター8は安全性と温度制御性のため水冷配管が設けられ、水冷されている。

【43】
基板回転機構は、ランプホルダー82の外側に配設された基板ホルダー回転部84と、この回転部に設けられていて基板ホルダー48をランプヒーター8の焦点位置に配置するチャッカー45とを備えている。基板ホルダー回転部84の上部には回転用ギヤ83が設けられ、自転シャフト86のギヤ85と噛み合っており、またこの自転シャフト86の他端に設けられた自転用ギヤ88は公転用ギヤ65と噛み合っている。さらに基板ホルダー回転部の下部にはベアリング87が設けられている。

【44】
次に、搬送プレートを回転搬送する回転機構と上下方向に移動する移動機構とを説明する。図2を参照して、搬送プレート38を回転させる回転機構60は、移動プレート72に設けられたモーター61と、このモーターの回転駆動力を伝達するシャフト62と、このシャフトの端部に設けられた駆動ギヤ64とを備え、この駆動ギヤ64が公転移動シャフトに設けられた公転用ギヤ65に噛み合って回転駆動力を伝達するようになっている。なお、回転シャフト62は、移動プレート72と成長室22との間を真空シールドするために設けられたフレキシブルチューブ82の内部を通っている。

【45】
図3を参照して、公転移動シャフト43の端部には搬送プレート38を複数の固定用シャフト91を介して固定する支持部92が固定されて設けられており、この支持部92に対してベアリング93を介して所定トルクで回転するように、公転用ギヤ65が設けられている。

【46】
図2を参照して、移動機構70は、共通室22の上蓋71に固定されたブラケット73と、このブラケットに設けられたモーター74により回転駆動する回転シャフト75と、この回転シャフトの回転により上下移動する移動プレート72とを備え、公転移動シャフト42は移動プレート72と成長室22との間に真空シールドするために設けられたフレキシブルチューブ83の内部を通り、移動プレート72上に固定された磁気シールドユニット77により磁気シールドされ、かつ、回転可能に保持されている。なお、この磁気シールドユニットは磁性流体により公転移動シャフトを真空シールドしている。

【47】
先ず、移動機構の動作を説明する。移動プレート72が上始点にあるとき、モーター74により回転シャフト75が回転し移動プレート72が下降する。このとき移動プレート72と成長室22の上蓋71間のフレキシブルチューブ82,83が縮んでいく。移動プレート72が下降するにつれて公転移動シャフト43が下降し、この公転移動シャフト43の下降につれて搬送プレート38に設けられた基板加熱部36のフランジ33がOリング41に当接し、Oリング41を圧縮して停止する。したがって、各真空チャンバーは基板加熱部で真空シールドされ、さらに独立して真空排気及び圧力制御され、かつ、所定温度に加熱できる。

【48】
次に、搬送プレート及び基板回転機構の動作について説明する。移動プレート72が上始点にあるときモーター61により回転駆動力がシャフト62に伝達し、駆動ギヤ64が回転する。この駆動ギヤ64により公転用ギヤ65とともに公転移動シャフト43が回転し、この回転につれて搬送プレートが回転し、基板加熱部36が公転する。このとき自転用ギヤ88も回転するため、自転シャフト86により回転駆動力を回転ギヤ83に伝達し、基板ホルダー回転部85が回転し、基板ホルダー48が回転する。なお、公転移動シャフト43、回転シャフト62及び自転シャフト86は各真空チャンバーにおいて真空シールドされたまま回転する。したがって、搬送プレートに設けられた基板加熱部を各真空チャンバーまで搬送することができるとともに、基板ホルダーを回転することができる。

【49】
搬送プレート38が下方の終点に移動して基板加熱部が共通室と隔離して真空シールドされているとき、回転シャフト62の回転駆動力を公転用ギヤ65に伝達するが、基板加熱部はOリングに当接してロック状態にあるため、公転用ギヤ65だけがベアリング93に沿って回転し、この回転につれて自転用ギヤ88が回転して基板ホルダー回転部85が回転し、基板ホルダー48が回転する。したがって、各真空チャンバー内で基板ホルダーを回転することができる。

【5】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記無機材料に対するコンビナトリアル合成では、薄膜形成がいずれも室温で堆積されているため、組成制御の役割を果たしているにすぎず、また有機・無機系いずれの材料においても、分子層ごとのエピタキシャル成長で超格子構造を形成した薄膜をコンビナトリアル合成することは未だ実現されていない。

【50】
つぎに他の実施形態のプロセスにおける動作について説明する。なお、成長室ではレーザー分子線エピタキシーの例を用いて説明した。さらに具体的な条件は例示である。所定圧力の室温下、搬送プレート38が上始点のホームポジションにあるとき第1基板ホルダー48を余熱加熱室に対応する基板加熱部のチャッカー45に装填後、搬送プレート38が下降して各基板加熱部36が隔壁のOリング41に当接し、圧縮して停止する。余熱加熱室28を高真空の例えば10-6Torrに維持しクリーニングを行うとともに昇温レート10℃/分で950℃まで温度を上げていく。

【51】
所定時間経過後、各基板加熱部の温度を維持したまま各真空チャンバー及び共通室を所定圧力に戻し、搬送プレート38が上始点まで移動する。この搬送プレート38が回転し、余熱加熱室28に対応して第1基板ホルダー48を装填している基板加熱部36を成長室24まで搬送する。このとき室温のもと、つまりランプヒーター8をOFFにした基板加熱部36に、次の処理をする第2基板ホルダー48を余熱加熱室28に対応する基板加熱部36のチャッカー45に装填しておく。

【52】
搬送プレート38が下降して各真空チャンバーを隔離し、成長室24を高真空の例えば10-4Torrに維持し、950℃に加熱したまま所定時間、レーザー分子線エピタキシー成長を行う。このとき余熱加熱室28では10-6Torrに維持され、昇温レート10℃/分で950℃まで昇温中である。

【53】
成長室24において、単分子層ごとの分子層エピタキシャル成長で超格子構造などを基板ホルダーを回転して各基板に形成後、設定温度の950℃を維持したまま各真空チャンバー及び共通室22を所定圧力に戻し、搬送プレート38が上始点まで移動する。この搬送プレート38が回転し、成長室24に対応して第1基板ホルダー48を装填している基板加熱部36をアニール室26まで搬送する。このとき、余熱加熱室28に対応する基板加熱部36のチャッカー45に、第3基板ホルダー48を装填しておく。

【54】
搬送プレート38が下降して各真空チャンバーを隔離し、アニール室28を例えば1Torrに維持したまま、例えば950℃から降温レート10℃/分で所定時間アニールを行う。このアニール室28では酸素分圧が最適に制御されている。ランプヒーター8をOFFにしてアニール室28が室温になったら、他の基板加熱部36,36は950℃に維持したまま、各真空チャンバー及び共通室22を所定圧力に戻し、搬送プレート38が上始点まで移動して、この搬送プレート38が回転してホームポジションに帰る。そして、エピタキシャル成長後の基板ホルダーを取り出してストッカー49に格納後、新たな第4基板ホルダーを基板加熱部36のチャッカー45に装填し、逐次処理していく。

【55】
このようにして他の実施形態では、[多原料]×[多基板 ×[温度,圧力及び気相からのフラックス(堆積速度)などの反応パラメータ]の組合せを独立に制御し、1シリーズの反応により構造を系統的に制御した物質群を合成することができる。さらに、基板に単分子層エピタキシャル成長層を形成する成長室24、薄膜成長させた基板をアニールするアニール室28及び基板をクリーニングしつつ加熱する余熱加熱室28を、各対応した基板加熱部36,36,36とともに独立して圧力制御及び温度制御しているので、基板温度を下げることなく搬送でき、異なる基板温度及び圧力でのプロセスを連続的に行うことができる。

【56】

【発明の効果】以上の説明から理解されるように、本発明のコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置では、[多原料]×[多基板]×[温度,圧力及び気相からのフラックス(堆積速度)などの反応パラメータ]の組合せを独立に制御し、1シリーズの反応により単分子層ごとにエピタキシャル成長した超格子構造を系統的に合成することができるという効果を有する。

【6】
そこで、本発明は上記課題にかんがみて、分子層ごとにエピタキシャル成長して無機系超構造、金属や有機系超構造を形成するとともに、短時間で効率的な物質探索をするためのコンビナトリアル分子層エピタキシー装置を提供することを目的とするものである。

【7】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の発明のコンビナトリアル分子層エピタキシャル成長装置は、基板を加熱する加熱手段と、複数の基板を保持し成長位置に搬送する基板ホルダーと、基板ホルダーの成長位置にある基板に対して薄膜組成の原料を供給する多原料供給手段と、基板表面にガスを供給するガス供給手段と、基板表面での単分子層ごとのエピタキシャル成長をその場で観察するその場観察手段とを圧力制御可能な高真空室に備え、各基板ごとに成長温度、圧力及び供給原料を制御し、系統的にその場観察手段に基づいて分子層ごとのエピタキシャル成長をした物質群を合成するものである。

【8】
また請求項2記載の発明は上記構成に加え、多原料供給手段がターゲットテーブルに装填した複数の異なる固体原料のターゲットをエキシマレーザーで気化し各基板上に狙い通りの組成の薄膜を形成するようにしたレーザー分子線エピタキシーであることを特徴とする。さらに請求項3記載の発明は、多原料供給手段がレーザー分子線エピタキシーであって、その場観察手段が反射高速電子線回折であることを特徴とする。また請求項4記載の発明は、多原料供給手段がレーザー分子線エピタキシーであって、基板がα-Al2 3 、YSZ、MgO、SrTiO3 、LaAlO3、NdGaO3 、YAlO3 、LaSrGaO4 、NdAlO3 、Y2 5 、SrLaAlO4 、CaNdAlO4 、Si及び化合物半導体のいずれかであることを特徴とするものである。

【9】
さらに請求項5記載の発明は、多原料供給手段がレーザー分子線エピタキシーであって、ターゲットの固体原料が高温超伝導体、発光材料、誘電体、強誘電体、巨大磁気抵抗材料及び酸化物のいずれかであることを特徴とする。酸化物は単成分及び多成分のいずれでもよい。また請求項6記載の発明は、多原料供給手段がガスソース有機金属を流量制御してノズルにより各基板に吹き付けて供給するガスソース分子線エピタキシーであることを特徴とするものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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