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明細書 :コンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3018001号 (P3018001)
登録日 平成12年1月7日(2000.1.7)
発行日 平成12年3月13日(2000.3.13)
発明の名称または考案の名称 コンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置
国際特許分類 C30B 23/08      
B01J 19/00      
H01L 21/203     
H01L 43/08      
FI C30B 23/08 M
B01J 19/00
H01L 21/203
H01L 43/08
請求項の数または発明の数 10
全頁数 9
出願番号 特願平10-258969 (P1998-258969)
出願日 平成10年9月11日(1998.9.11)
審査請求日 平成11年9月2日(1999.9.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】鯉沼 秀臣
【氏名】川崎 雅司
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸 (外1名)
審査官 【審査官】宮澤 尚之
参考文献・文献 米国特許5776359(US,A)
国際公開96/11878(WO,A1)
Science 268(1995)P.1738-1740
Nature 389(1997)P.944-948
Appl.Phys.Lett.(1997)P.3353-3355
調査した分野 C30B 23/08
B01J 19/00
H01L 21/203
H01L 43/08
要約 【課題】 分子層ごとにエピタキシャル成長して主として無機系超構造を形成するとともに、短時間で効率的な物質探索をするためのコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置を提供する。
【解決手段】 コンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置20は、共通室22、成長室24、アニール室26、余熱加熱室28、ターゲットロードロック室32及び基板ホルダーロードロック室34を備え、これらの各室は真空シールドされ独立して高真空に排気される真空チャンバーとなっている。成長室24には基板ホルダー48に対向して、ターゲット12を装填したターゲットテーブル10と、マスクプレート102とを有し、ターゲット12を気化するエキシマレーザー光13と、薄膜成長基板上の分子層エピタキシャル成長をその場でモニターする反射高速電子線回折とを備えている。
特許請求の範囲 【請求項1】
基板を加熱する加熱手段と、一以上の基板を保持し成長位置に回転搬送する基板ホルダーと、エキシマレーザーの照射によって気化する複数の異なる固体原料のターゲットと、これらのターゲットを装填し上記基板に対向する位置に上記ターゲットを配置する回転かつ上下移動可能なターゲットテーブルと、上記ターゲットと上記基板との間に配設した移動可能なマスクプレートと、上記基板表面にガスを供給するガス供給手段と、上記基板表面での単分子層ごとのエピタキシャル成長をその場で観察する反射高速電子線回折とを圧力制御可能な高真空室内に備え、
上記基板及び上記基板の所定領域のいずれか、あるいは両方に上記マスクプレートにより元素の組み合わせや積層シーケンスが異なる多層膜を系統的に上記反射高速電子線回折に基づいて分子層ごとのエピタキシャル成長で合成する、コンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置。

【請求項2】
前記マスクプレートが、複数のマスクパターンを有して回転かつ上下移動可能であり異なる上記マスクパターンを順次交換することを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置。

【請求項3】
前記マスクプレートが前記基板に対して水平移動可能なシャッターの可動マスクであり、前記基板及び前記基板の所定領域のいずれか、あるいは両方を上記可動マスクで覆ったりはずしたりすることを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置。

【請求項4】
前記基板がα-Al2 3 、YSZ、MgO、SrTiO3、LaAlO3 、NdGaO3 、YAlO3 、LaSrGaO4 、NdAlO3、Y2 5 、SrLaAlO4 、CaNdAlO4 、Si及び化合物半導体のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置。

【請求項5】
前記ターゲットの固体原料が高温超伝導体、発光材料、誘電体、強誘電体、巨大磁気抵抗材料及び酸化物のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置。

【請求項6】
前記基板が基板表面を原子レベルで平坦化し最表面原子層を特定した基板であることを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置。

【請求項7】
前記高真空室内の前記ターゲットテーブルに、高真空を保持したまま前記ターゲットを装填するためのターゲットロードロック室を備えたことを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置。

【請求項8】
前記高真空室に加え、共通室と、薄膜成長後の基板をアニールするアニール室と、薄膜成長前に前記基板を高真空かつ所定温度で加熱しておく余熱加熱室とを備え、上記共通室内にて前記加熱手段と前記基板ホルダーとを一体的に上記成長室、アニール室及び余熱加熱室に回転搬送し独立して真空シールして真空チャンバーを形成することを特徴とする、請求項1に記載のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置。

【請求項9】
前記共通室に、高真空を保持したまま前記基板ホルダーを交換するための基板ホルダーロードロック室を備えたことを特徴とする、請求項8に記載のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置。

【請求項10】
前記加熱手段がランプヒーターであり、このランプヒーターの焦点位置に前記基板ホルダーを配置したことを特徴とする、請求項1又は8に記載のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】この発明は、分子層ごとにエピタキシャル成長する主として無機系超構造を形成するために利用し、特に短時間で効率的な物質探索をするためのコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置に関する。

【10】

【発明の実施の形態】以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明の実施形態にかかるコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置の外観図である。本実施形態に係るコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置20は、共通室22、成長室24、アニール室26、余熱加熱室28、ターゲットロードロック室32及び基板ホルダーロードロック室34を備え、これらの各室は真空シールドされ独立して高真空に排気される真空チャンバーとなっている。なお、図1中のTMPはターボ分子ポンプの略称を示すが、図示しないゲートバルブを介して超高真空ポンプにより排気されるようになっており、補助ポンプとしてロータリポンプを使用している。

【11】
また各真空チャンバーは図示しないバルブの開閉度を調節して圧力制御でき、さらに図示しないバルブ及び質量流量計が所定個所に設けられて、酸素及びドライ窒素などを流量制御して導入できるようになっている。

【12】
共通室22は成長室24、アニール室26及び余熱加熱室28と隔壁39に設けられた開口部42,42,42を介して連結され、この開口部の周囲の溝にOリング41が埋め込まれている。さらに成長室24、アニール室26及び余熱加熱室28は隔壁39に対してそれぞれ真空シールドされて固定保持されている。

【13】
共通室22には基板ホルダー48、基板ホルダーのチャッカー45及びランプヒーター8(図2を参照)とを円筒状のハウジング35内に格納した基板加熱部36が図1では3つ設けられている。これらの基板加熱部36は公転移動シャフト43によって回転搬送及び上下方向に移動する搬送プレート38にハウジング35のフランジ部31で真空シールドされ、かつ、保持されている。公転移動シャフト43は共通室22を真空シールドしたまま回転機構60により回転し、移動機構70により上下方向に移動するようになっている。

【14】
ハウジング35の他端のフランジ部33は、搬送プレート38が下方の終点に移動したとき隔壁39の開口部42の周囲の溝に埋め込まれたOリング41に当接し、共通室22と隔離して真空シールドされている。このとき各基板加熱部36,36,36と、成長室24、アニール室26及び余熱加熱室28とで形成される各真空チャンバーは独立して真空排気及び圧力制御され、かつ、所定温度に加熱されるようになっている。

【15】
図1に示すように、共通室22にゲートバルブ46を介して設けられた基板ホルダーロードロック室34には、基板5が装填された基板ホルダー48を複数個保持したストッカー49が設置されており、基板ホルダーロードロック室34を高真空に保持したまま外部から操作するクリップ52で基板ホルダー48を基板加熱部36のチャッカーに装填するようになっている。

【16】
また、成長室24にゲートバルブ47を介して設けられたターゲットロードロック室32には、ターゲット12を複数個保持したプレート54が設置されており、ターゲットロードロック室32を高真空に保持したまま外部から操作するクリップ56でターゲット12を図示しないターゲットテーブルに装填できるようになっている。

【17】
次に、基板加熱部について説明する。図2は基板加熱部の詳細断面図であり、搬送プレートが下方の終点に移動して基板加熱部が隔壁に当接している状態を示す図である。図2に示すように、基板加熱部36は、フランジ31,33を両端に有する円筒状のハウジング35と、このハウジングの中心線上に設けられたランプホルダー82と、このランプホルダーに設置されたランプヒーター8とを有し、基板ホルダーを回転させる基板回転機構を備えている。なお、ランプヒーター8は安全性と温度制御性のため水冷配管が設けられ、水冷されている。

【18】
基板回転機構は、ランプホルダー82の外側に配設された基板ホルダー回転部84と、この回転部に設けられていて基板ホルダー48をランプヒーター8の焦点位置に配置するチャッカー45とを備えている。基板ホルダー回転部84の上部には回転用ギヤ83が設けられ、自転シャフト86のギヤ85と噛み合っており、またこの自転シャフト86の他端に設けられた自転用ギヤ88は公転用ギヤ65と噛み合っている。さらに基板ホルダー回転部の下部には、ベアリング87が設けられている。

【19】
次に、成長室について説明する。図3は成長室の要部外観図であり、基板加熱部と成長室とでなる独立した真空チャンバーを示す図である。図3に示すように、基板加熱部36が隔壁(図示省略)に当接して基板加熱部36と成長室24とで独立した真空チャンバー100を形成し、複数の基板5を有する基板ホルダー48が基板加熱部36の基板ホルダー回転部84に設けられており(図2に示す)、基板ホルダーが回転可能になっている。成長室24には、基板ホルダー48に対向して設けられた回転可能なターゲットテーブル10と、基板ホルダー48とターゲットテーブル10との間に設けられたマスクプレート102とが備えられている。マスクプレート102には例えば8種類のマスクパターン104が形成されている。図3に示すマスクプレートは円板状であるが、他のマスクプレートの例として基板に対して両方向から可動なシャッター状であってもよく、その場合マスクプレートは可動マスクとして水平方向及び上下方向に移動可能になっている。

【2】

【従来の技術】近時、ランタン・バリウム・銅酸化物系超伝導体が発見され、高温超伝導酸化物の薄膜形成技術が格段の進歩をとげるにつれ、金属材料、無機材料及び有機材料など様々な新機能物質の探索及び研究が行われている。高温超伝導酸化物の薄膜形成では、ペロブスカイトなどの酸化物機能材料自体が多成分の複酸化物を基にしているため、成分の最適化や薄膜作製条件と特性との相関関係を理論的に予測することが困難であり、試行錯誤的に最適化を図らざるを得ない。

【20】
さらに、ターゲットテーブル10に装填された複数の異なる固定原料のターゲット12と、これらのターゲット12を気化するエキシマレーザー光13の光源14と、このレーザ光を集光するレンズ15と、レーザー光を真空チャンバー100内に導入する窓16と、薄膜成長基板上の分子層エピタキシャル成長をその場でモニターする反射高速電子線回折(以下、「RHEED」という。)の電子銃18と、RHEEDのスクリーン17とが備えられている。ターゲットテーブル10及びマスクプレート102は成長室24の真空度を維持したまま回転可能かつ上下移動可能になっており、それぞれマスク回転機構、ターゲットテーブル回転機構、マスク上下移動機構及びターゲットテーブル上下移動機構を有している。特にマスク回転機構は所定領域での薄膜成長の膜厚を制御して可動できるように、例えばステッピングモーターで精密制御されている。

【21】
また成長室24には、常圧復帰のための大気及び窒素や高温超伝導関連の酸化エピタキシーのために、ノズルなどで供給される酸素及び反応性ガスなどのガス供給系(図示せず)が設けられている。

【22】
さらに基板ホルダー48、マスクプレート102及びターゲットテーブル10のホームポジションと回転位置は、図示しない制御装置により管理されると共に、この制御装置により薄膜成長させる基板の位置に対して各回転機構によりマスクパターン104の種類及びターゲットの種類が選択され、単分子層ごとのエピタキシャル成長をその場でRHEEDでモニターしつつ、このモニターと連動してエキシマレーザーをパルス状に照射する時間が制御されるようになっている。

【23】
基板として、α-Al2 3 、YSZ、MgO、SrTiO3 、LaAlO3、NdGaO3 、YAlO3 、LaSrGaO4 、NdAlO3 、Y2 5 、SrLaAlO4 、CaNdAlO4 、Si及び化合物半導体が使用できる。

【24】
ところで分子層エピタキシーに基づくRHEED振動を検出し、しかもこのRHEED振動をモニターして単分子層ごとに制御して単分子層エピタキシャル成長を持続させるには、基板表面の原子レベルでの平坦化と最表面原子層の特定が極めて重要である。例えばABO3 の一般式で表されるペロブスカイト酸化物はAOとBO2 の原子層の繰り返しで構成されるが、最表面がAOの場合、BO2 の場合、両者が共存する場合で、その上に堆積していく膜の成長モードが異なる。

【25】
例えばSrTiO3 研磨基板は最表面が主としてTiO2 であり、表面荒さは数nmである。このSrTiO3 (100)基板をHF/NH3 緩衝溶液(pH=4.5)でウエットエッチング処理すると表面を原子レベルで平坦化でき、最表面原子層がTiO2 面にできる。このように表面が原子レベルで平坦化された基板では、単分子層ごとの成長に起因するRHEED振動を検出できる。したがって、本実施形態では、基板表面を原子レベルで平坦化し最表面原子層を特定した基板を用いるのが好ましい。

【26】
ターゲットの固体原料としては固体であれば何でも使用可能であるが、例えば、YBa2 Cu3 7 などの高温超伝導体、ZnO,(ZnMg)O,(ZnCd)Oなどの発光材料、SrTi O3 ,BaTiO3 ,PZT,(SrBa)TiO3 などの誘電体や強誘電体、(LaSr)MaO3 などの巨大磁気抵抗材料等が使用可能である。さらに単成分及び多成分の酸化物を使用して成分ごとに供給することも可能である。

【27】
次に、コンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置の薄膜形成時の動作について説明する。図3を参照すると、例えば真空チャンバー100を10-4Torr程度の高真空に制御し、ランプヒーター8で基板5を例えば850℃の成長温度に制御しつつ、基板ホルダー6が回転して基板5を成長位置に配置する。この基板5に対応してマスク回転機構によりマスクパターン104を選択し、この成長位置にある基板5に対向するようにターゲットテーブル10が回転してターゲット12を所定位置に配置し、このターゲット12にエキシマレーザー光13を例えばパルス状に所定時間照射する。

【28】
このエキシマレーザー光の照射によって、ターゲットの表面で急激な発熱と光化学反応の両方が起き、原料成分が爆発的に気化し、基板上に狙い通りの組成の薄膜を形成する。さらにRHEEDの鏡面反射点では、一層ごとの成長による核発生と平坦化の繰り返しに伴う振動を観測でき、厳密に一分子層ごとの自己制御性のある膜厚モニターをする。単分子層ごとのエピタキシャル成長後、ターゲットテーブル10が回転し他のターゲット12を所定位置に配置し、他の超格子構造物である薄膜成長を行う。

【29】
一つの基板に新たな格子構造を有する人工結晶や超格子を作製後、基板ホルダー6が回転し、次の基板の処理をする。エピタキシャル成長膜が超伝導体の場合、成長室24内の酸素分圧を高くして必要な酸化条件を満たしておく。なお、本実施形態では減圧度が低く、成長室内の酸素分圧を広い範囲で制御可能である。

【3】
このような中で、X.-D.Xiangらは多元スパッタリング法による薄膜形成を基板上の特定の場所をマスクで覆うマスクパターンニング技術と組み合わせ、多数の無機物質を並行して合成する無機材料のコンビナトリアル薄膜合成により酸化物高温超伝導体の探索を行い、多元系物質の機能探索に威力を発することを示している(X.-D.Xiangら、Science., 268、1738(1995))。

【30】
以上は多基板に対してマスクパターンを固定してコンビナトリアル合成をした場合であるが、一つの基板に対して異なるマスクパターンを順次交換移動させて、つまりマスクプレートを移動させたマスクパターンを可動マスクとして、複数の所定領域に組成の異なる薄膜や積層構造の異なる超格子を作製してもよい。さらに基板に対してシャッター状のマスクプレートを可動マスクとして、基板の所定領域を覆ったりはずしたりして組成の異なる薄膜や積層構造の異なる超格子を作製してもよい。

【31】
このようにして、本実施形態のコンビナトリアルレーザー分子層エピタキシー装置では、[多原料]×[多基板]×[マスクパターン]×[温度,圧力及び気相からのフラックス(堆積速度)などの反応パラメータ]の組合せを独立に制御し、1シリーズの反応により構造を系統的に制御した物質群を合成することができる。

【32】
次に、搬送プレートを回転搬送する回転機構と上下方向に移動する移動機構とを説明する。図1に示すように、搬送プレート38を回転させる回転機構60は、移動プレート72に設けられたモーター61と、このモーター61の回転駆動力を伝達するシャフト62と、このシャフト62の端部に設けられた駆動ギヤ64とを備え、この駆動ギヤ64が公転移動シャフトに設けられた公転用ギヤ65に噛み合って回転機動力を伝達するようになっている。なお、回転シャフト62は、移動プレート72と成長室22との間に真空シールドするために設けられたフレキシブルチューブ82の内部を通っている。

【33】
図2を参照して、公転移動シャフト43の端部には搬送プレート38を複数の固定用シャフト91を介して固定する支持部92が固定されて設けられており、この支持部92に対してベアリング93を介して所定トルクで回転するように、公転用ギヤ65が設けられている。

【34】
図1を参照して、移動機構70は、共通室22の上蓋71に固定されたブラケット73と、このブラケット73に設けられたモーター74により回転駆動する回転シャフト75と、この回転シャフト75の回転により上下移動する移動プレート72とを備え、公転移動シャフト42は移動プレート72と成長室22との間に真空シールドするために設けられたフレキシブルチューブ83の内部を通り、移動プレート72上に固定された磁気シールドユニット77により磁気シールドされ、かつ、回転可能に保持されている。なお、この磁気シールドユニットは磁性流体により公転移動シャフトを真空シールドしている。

【35】
先ず、移動機構の動作を説明する。移動プレート72が上始点にあるとき、モーター74により回転シャフト75が回転し移動プレート72が下降する。このとき移動プレート72と成長室22の上蓋71間のフレキシブルチューブ82,83が縮んでいく。移動プレート72が下降するにつれて公転移動シャフト43が下降し、この公転移動シャフト43の下降につれて搬送プレート38に設けられた基板加熱部36のフランジ33がOリング41に当接し、Oリング41を圧縮して停止する。したがって、各真空チャンバーは基板加熱部で真空シールドされ、さらに独立して真空排気及び圧力制御され、かつ、所定温度に加熱できる。

【36】
次に、搬送プレート及び基板回転機構の動作について説明する。移動プレート72が上始点にあるとき、モーター61により回転駆動力がシャフト62に伝達し駆動ギヤ64が回転する。この駆動ギヤ64により公転用ギヤ65とともに公転移動シャフト43が回転し、この回転につれて搬送プレートが回転し、基板加熱部36が公転する。このとき自転用ギヤ88も回転するため、自転シャフト86により回転駆動力を回転ギヤ83に伝達し、基板ホルダー回転部85が回転し、基板ホルダー48が回転する。なお、公転移動シャフト43、回転シャフト62及び自転シャフト86は各真空チャンバーにおいて真空シールドされたまま回転する。これにより、搬送プレートに設けられた基板加熱部を各真空チャンバーまで搬送することができるとともに、基板ホルダーを回転することができる。

【37】
搬送プレート38が下方の終点に移動して基板加熱部が共通室と隔離して真空シールドされているとき、回転シャフト62の回転駆動力を公転用ギヤ65に伝達するが、基板加熱部はOリングに当接してロック状態にあるため、公転用ギヤ65だけがベアリング93に沿って回転し、この回転につれて自転用ギヤ88が回転して基板ホルダー回転部85が回転し、基板ホルダー48が回転する。これにより、各真空チャンバー内で基板ホルダーを回転することができる。

【38】
つぎに、本実施形態のプロセスにおける動作について説明する。所定圧力の室温下、搬送プレート38が上始点のホームポジションにあるとき第1基板ホルダー48を余熱加熱室に対応する基板加熱部のチャッカー45に装填後、搬送プレート38が下降し、各基板加熱部36が隔壁のOリング41に当接し圧縮して停止する。余熱加熱室28を高真空の例えば10-6Torrに維持しクリーニングを行うとともに、昇温レート10℃/分で950℃まで温度を上げていく。

【39】
所定時間経過後、各基板加熱部の温度を維持したまま各真空チャンバー及び共通室を所定圧力に戻し、搬送プレート38が上始点まで移動する。この搬送プレート38が回転し、余熱加熱室28に対応して第1基板ホルダーを装填している基板加熱部を成長室24まで搬送する。このとき室温下、つまりランプヒーター8をOFFにした基板加熱部に、次の処理をする第2基板ホルダー48を余熱加熱室に対応する基板加熱部36のチャッカー45に装填しておく。

【4】
また、G.Bricenoらは、超巨大磁気抵抗(CMR)材料の探索のために、コバルト酸化物をベースとする新材料のLnx y CoO3-δ(Ln=La,Y、M=Ba,Sr,Ca,Pb)をコンビナトリアル合成法で組成の異なる128個の試料をスパッタ蒸着し、酸素雰囲気中での焼結後に磁気抵抗を測定して、CoO2 をベースとする複酸化物も最大磁気抵抗比72%CMRを示すことを明らかにし、焼結条件を変えたわずか2回のコンビナトリアル合成で、Co系CMR材料の発見と最適化を行っている。

【40】
搬送プレート38が下降して各真空チャンバーを隔離し、成長室24を高真空の例えば10-4Torrに維持し、950℃に加熱したまま所定時間、レーザー分子線エピタキシー成長を行う。このとき余熱加熱室28では10-6Torrに維持され、昇温レート10℃/分で950℃まで昇温中である。

【41】
成長室24で単分子層ごとの分子層エピタキシャル成長で超格子構造などを基板ホルダーを回転して各基板に形成後、設定温度950℃を維持したまま各真空チャンバー及び共通室を所定圧力に戻し、搬送プレート38が上始点まで移動する。この搬送プレート38が回転し、成長室24に対応して第1基板ホルダーを装填している基板加熱部をアニール室26まで搬送する。このとき、余熱加熱室28に対応する基板加熱部36のチャッカー45に第3基板ホルダー48を装填しておく。

【42】
搬送プレート38が下降して各真空チャンバーを隔離し、アニール室28を例えば1Torrに維持したまま、例えば950℃から降温レート10℃/分で所定時間アニールを行う。このアニール室28では、酸素分圧を最適に制御している。ランプヒーター8をOFFにしてアニール室28が室温になったら、他の基板加熱部は950℃に維持したまま、各真空チャンバー及び共通室を所定圧力に戻し、搬送プレート38が上始点まで移動して、この搬送プレート38が回転してホームポジションに帰る。そして、エピタキシャル成長後の基板ホルダーを取り出してストッカー49に格納後、新たな第4基板ホルダーを基板加熱部36のチャッカー45に装填し、逐次処理していく。

【43】
このようにして、本実施形態では、[多原料]×[多基板]×[マスクパターン]×[温度,圧力及び気相からのフラックス(堆積速度)などの反応パラメータ]の組合せを独立に制御し、1シリーズの反応により構造を系統的に制御した物質群を合成することができる。さらに基板に単分子層エピタキシャル成長層を形成する成長室24、薄膜成長させた基板をアニールするアニール室28及び基板をクリーニングしつつ加熱する余熱加熱室28を各対応した基板加熱部36,36,36とともに独立して圧力制御及び温度制御しているので、基板温度を下げることなく搬送でき、異なる基板温度及び圧力でのプロセスを連続的に行うことができる。

【44】

【発明の効果】以上の説明から理解されるように、本発明のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置では、[多原料]×[多基板]×[マスクパターン]×[温度,圧力及び気相からのフラックス(堆積速度)などの反応パラメータ]の組合せを独立に制御し、1シリーズの反応により単分子層ごとのエピタキシャル成長した超格子構造を系統的に合成することができるという効果を有する。

【5】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記無機材料に対するコンビナトリアル合成では薄膜形成がいずれも室温で堆積されているため組成制御の役割を果たしているにすぎず、また有機・無機系いずれの材料においても分子層ごとのエピタキシャル成長で超格子構造を形成した薄膜をコンビナトリアル合成することは未だ実現されていない。

【6】
そこで、本発明は上記課題にかんがみて、分子層ごとにエピタキシャル成長して主として無機系超構造を形成するとともに、短時間で効率的な物質探索をするためのコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置を提供することを目的とするものである。

【7】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の発明のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置は、基板を加熱する加熱手段と、一以上の基板を保持し成長位置に回転搬送する基板ホルダーと、エキシマレーザーの照射によって気化する複数の異なる固体原料のターゲットと、ターゲットを装填し基板に対向する位置にターゲットを配置する回転かつ上下移動可能なターゲットテーブルと、ターゲットと基板との間に配設した移動可能なマスクプレートと、基板表面にガスを供給するガス供給手段と、基板表面での単分子層ごとのエピタキシャル成長をその場で観察する反射高速電子線回折とを圧力制御可能な高真空室内に備え、基板及び基板の所定領域のいずれか、あるいは両方にマスクプレートにより元素の組み合わせや積層シーケンスが異なる多層膜を系統的に反射高速電子線回折に基づいて分子層ごとのエピタキシャル成長で合成する構成とした。

【8】
さらに請求項2記載の発明は、マスクプレートが複数のマスクパターンを有して回転かつ上下移動可能であり、異なるマスクパターンを順次交換することを特徴とする。また請求項3記載の発明は、マスクプレートが基板に対して水平移動可能なシャッターの可動マスクであり、基板及び基板の所定領域のいずれか、あるいは両方を可動マスクで覆ったりはずしたりすることを特徴とするものである。さらに請求項4記載の発明は、基板が、α-Al2 3 、YSZ、MgO、SrTiO3 、LaAlO3 、NdGaO3 、YAlO3 、LaSrGaO4 、NdAlO3 、Y2 5 、SrLaAlO4 、CaNdAlO4 、Si及び化合物半導体のいずれかであることを特徴とする。また請求項5記載の発明は、ターゲットの固体原料が高温超伝導体、発光材料、誘電体、強誘電体、巨大磁気抵抗材料及び酸化物のいずれかであることを特徴とするものである。酸化物は単成分及び多成分のいずれでもよい。さらに請求項6記載の発明は、基板が基板表面を原子レベルで平坦化し最表面原子層を特定した基板であることを特徴とする。また請求項7記載の発明は、高真空室内のターゲットテーブルに高真空を保持したままターゲットを装填するためのターゲットロードロック室を備えたことを特徴とする。さらに請求項8記載の発明は上記高真空室に加え、共通室と、薄膜成長後の基板をアニールするアニール室と、薄膜成長前に前記基板を高真空かつ所定温度で加熱しておく余熱加熱室とを備え、共通室内にて加熱手段と基板ホルダーとを一体的に成長室、アニール室及び余熱加熱室に回転搬送し独立して真空シールして真空チャンバーを形成することを特徴とするものである。また請求項9記載の発明は、共通室に、高真空を保持したまま基板ホルダーを交換するための基板ホルダーロードロック室を備えたことを特徴とする。さらに請求項10記載の発明は、加熱手段がランプヒーターであり、ランプヒーターの焦点位置に基板ホルダーを配置したことを特徴とするものである。

【9】
このような構成の請求項1~3記載の発明のコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシー装置では、[多原料]×[多基板]×[マスクパターン]×[温度,圧力及び気相からのフラックス(堆積速度)などの反応パラメータ]の組合せを独立に制御し、1シリーズの反応により単分子層ごとのエピタキシャル成長した超格子構造を系統的に合成することができる。また請求項4及び5記載の発明では、ターゲットの原料組成を忠実に基板表面に供給し、成分によらず付着確率がほぼ1である点が有利に働くので、単分子層ごとにエピタキシャル成長した薄膜の高温超伝導体、発光材料、誘電体、強誘電体、巨大磁気抵抗材料を形成できる。さらに請求項6記載の発明では、格段に規則正しく、長く続くRHEED振動を観察できるので、単分子層ごとに進行するエピタキシャル成長を確実に実現することができる。また請求項7及び9記載の発明では、高真空のロードロック室を設けているので、基板及びターゲットを大気にさらすことなく清浄な状態で交換することができる。さらに請求項8記載の発明では、基板ホルダーを加熱したまま回転搬送でき、さらにアニール室、余熱加熱室及び超高真空室を独立して温度制御及び圧力制御することができる。また請求項10記載の発明では、例えば酸素量が特性に大きく影響する高温超伝導薄膜の作製時のような酸化雰囲気下で基板加熱ができるとともに、赤外線が基板ホルダーに集光し、基板を効果的に加熱することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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