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明細書 :トランスファーライン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3523085号 (P3523085)
公開番号 特開2000-104900 (P2000-104900A)
登録日 平成16年2月20日(2004.2.20)
発行日 平成16年4月26日(2004.4.26)
公開日 平成12年4月11日(2000.4.11)
発明の名称または考案の名称 トランスファーライン
国際特許分類 F17D  1/02      
F16L 59/06      
FI F17D 1/02
F16L 59/06
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願平10-275292 (P1998-275292)
出願日 平成10年9月29日(1998.9.29)
審査請求日 平成15年5月29日(2003.5.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】武田 常広
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100099265、【弁理士】、【氏名又は名称】長瀬 成城
審査官 【審査官】内山 隆史
参考文献・文献 特開 昭62-196496(JP,A)
実開 平2-29394(JP,U)
実開 昭63-139754(JP,U)
調査した分野 F17D 1/00 - 5/08
F16L 59/00 - 59/22
特許請求の範囲 【請求項1】
液体ヘリウム貯留槽で気化した高温ヘリウムガスを回収し、回収した高温ヘリウムガスの大部分を冷凍機の第1熱交換器によって極低温まで冷却されたヘリウムガスとして前記液体ヘリウム貯留槽に供給するとともに、残りの高温ヘリウムガスを冷凍機の第1熱交換器と第2熱交換器によって液化し、この液体ヘリウムを前記冷却されたヘリウムガスにより高温部に直接触れないようにして前記液体ヘリウムを前記液体ヘリウム貯留槽に供給するようにした多重循環式液体ヘリウム再凝縮装置に使用するトランスファーラインであって、前記トランスファーラインは前記第2熱交換器で液化された液体ヘリウムを流すことができる第1パイプと、その第1パイプの周囲に前記第1熱交換器で冷却された冷却へリウムガスを流すことができ、かつ、第1パイプの周囲に配置された第2パイプと、さらに、第2パイプの周囲に真空層を形成する真空ジャケット23とから構成されていることを特徴とするトランスファーライン。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、極低温の液化ガスを安定した状態で長距離移送できるトランスファーラインに関するものであり、さらに詳細には、脳磁気計測システム内等で使用する機器を極低温に維持する液体ヘリウム貯留槽に液体ヘリウムを補充する際に、液体ヘリウムを安定した状態で補充供給できるトランスファーラインに関するものである。また、このトランスファーラインは前記脳磁気計測システム以外にも心磁図やMRIを測定する装置等に利用可能である。

【10】
本発明に係わるトランスファーラインを使用する液体ヘリウム再循環システムは、液体ヘリウム貯留槽で約300Kにまで昇温したヘリウムガスを回収し、回収ヘリウムガスの大部分を冷凍機の第1段目の冷凍サイクルを利用して約40Kにまで冷却して、液体ヘリウム貯留槽に還流する。そして、残りの少量のヘリウムガスを冷凍機の第2段目の冷凍サイクルを利用して液化し、液体ヘリウム貯留槽に還流し、同槽内で蒸発して減量した液体ヘリウムを補充できるようにする。この場合、液体ヘリウム貯留槽内では冷却ヘリウムガスの顕熱によって大量の熱を奪うことが可能なため、蒸発する液体ヘリウムは極めて少量に押さえることが可能である。

【11】
この時、冷凍機の第2段目の冷凍サイクルによって液化された液体ヘリウムはトランスファーライン内のパイプを使用して液体ヘリウム貯留槽に送られるが、このパイプの周囲には第1段目の冷凍サイクルを利用して約40Kにまで冷却されたヘリウムガスが流れるようにしておき、さらにそのヘリウムガスの周囲を断熱用の真空層としておくことによって、液体ヘリウムは冷却されたヘリウムガスによって高温部と接触すること無く移送される。この結果、移送距離が長い場合でも移送中に於ける液体ヘリウムの気化が極力防止され、安定した状態で液体ヘリウムを移送することができる。

【12】

【課題を解決するための手段】このため、本発明が採用した課題解決手段は、液体ヘリウム貯留槽で気化した高温ヘリウムガスを回収し、回収した高温ヘリウムガスの大部分を冷凍機の第1熱交換器によって極低温まで冷却されたヘリウムガスとして前記液体ヘリウム貯留槽に供給するとともに、残りの高温ヘリウムガスを冷凍機の第1熱交換器と第2熱交換器によって液化し、この液体ヘリウムを前記冷却されたヘリウムガスにより高温部に直接触れないようにして前記液体ヘリウムを前記液体ヘリウム貯留槽に供給するようにした多重循環式液体ヘリウム再凝縮装置に使用するトランスファーラインであって、前記トランスファーラインは前記第2熱交換器で液化された液体ヘリウムを流すことができる第1パイプと、その第1パイプの周囲に前記第1熱交換器で冷却された冷却へリウムガスを流すことができ、かつ、第1パイプの周囲に配置された第2パイプと、さらに、第2パイプの周囲に真空層を形成する真空ジャケット23とから構成されていることを特徴とするトランスファーラインである。

【13】
削除

【14】

【実施の形態】以下図面を参照して本発明に係わるトランスファーラインを説明すると、図1が同トランスファーラインを使用する多重循環式液体ヘリウム再凝縮装置の概略構成図、図2はトランスファーラインの断面図である。図1において、1は磁気シールド室内に配置され脳磁計を収容している液体ヘリウム貯留槽、1aは同槽内に配置した気液分離器、1bは液面計、1cは貯留槽1内からヘリウムガスを回収するための管、2は気化したヘリウムガスを回収しヘリウムガス内の水分を除去するためのドライポンプ、3はヘリウムガスを一次的に溜めておくバッファーの機能を果たす中圧タンク、5は最近進歩の著しい4KGM冷凍機、6は同冷凍機の第1熱交換器、7は第2熱交換器、8はヘリウムコンプレッサー、9は前記冷凍機から液体ヘリウム貯留槽1にヘリウムガスまたは液体ヘリウムを供給するトランスファーライン(詳細構造は後述する)、10は緊急時にヘリウムガス不足を補うことができるヘリウム補給用ボンベであり、各機器は、図示のように矢印で流れ方向を示している流路で連通されており、またトランスファーラインは液体ヘリウム貯留槽内で気液分離器1aに接続されている。流路中には、圧力計P、流量調整弁4が配置されている。

【15】
次に図2を参照してトランスファーライン9の詳細を説明すると、図2は冷凍機から液体ヘリウムを液体ヘリウム貯留槽に移送するためのトランスファーラインの全体断面図、および同図中のAーA断面図、BーB断面図、CーC断面図である。トランスファーラインは中心部に液体ヘリウムを通すステンレス製の第1パイプ21を備えており、その第1パイプ21の導入口側(図中左側)は、図1に示す第2熱交換器7に連通されており、また第1パイプ21の出口側は液体ヘリウム貯留槽内に挿入する挿入管11に接続され、挿通管11の端部は図1に示すように気液分離器に接続されている。

【16】
液体ヘリウムを通す前記第1パイプ21の周囲には、ステンレス製の第2パイプ22が同心状に配置され、第1パイプ21の外周面と第2パイプ22の内周面との間に冷却ヘリウムガスを流がすことができるように構成されている。このヘリウムガスが流れる流路の導入口側(図中左側)は、冷却ヘリウムガスを生成する図1中左側の第1熱交換器6に接続されており、第1熱交換器6で冷却されたヘリウムガスが第1パイプ21の外周面と第2パイプ22の内周面との間に流入できるようにしてある。第2パイプの出口側は、冷却ヘリウムガスを液体ヘリウム貯留槽に供給するためのパイプ24に接続され、パイプ24は液体ヘリウム貯留槽1内に配置される。

【17】
第2パイプ22の周囲には、同パイプ22と同心状にフレキシブルな真空ジャケット23が配置され第2パイプ22の外周面と真空ジャケット23の内周面との間は真空室として区画され、この真空室によって第2パイプ22周囲が断熱されている。また、真空室のトランスファーライン導入室側の端部には開度調節ノブ24が配置され、さらに、真空室には真空排気口26が備えられている。また、第1パイプ21、第2パイプ22には流量を調節するための図示せぬ開閉弁が適宜配置されている。

【18】
以上のように構成された多重循環式液体ヘリウム再凝縮装置の作動を説明する。液体ヘリウム貯留槽1内に貯留された液体ヘリウムは同槽内で、4Kの液体からガス化され、さらに、約300Kの常温状態になるまで昇温しながら同槽内に配置された脳磁計の冷却作用を行う。昇温したヘリウムガスは、ヘリウムガス回収管1cを介してドライポンプ2で吸引され、さらに中圧タンク3を経由して小型冷凍機の第1熱交換器6に送られる。この時、流量調整弁の開度を調整しながらヘリウムガスの大部分を第1熱交換器によって約40Kまで冷却し、冷却したヘリウムガスをトランスファーライン内の流路を通して液体ヘリウム貯留槽内に供給する。トランスファーラインに送りこまれた冷却ヘリウムガスはトランスファーライン9内の第1パイプ21と第2パイプ22の間を通りながら、第1パイプ21を高温部と触れぬようにしながら、さらにパイプ24を経て液体ヘリウム貯留槽1内に送りこまれる。なお、何らかの非常事態により装置内のヘリウムガスが不足した場合には、必要に応じてヘリウムガスを補給用ボンベ10から補給することができる。

【19】
また、残りのヘリウムガスは小型冷凍機の第1熱交換器6、第2熱交換器7を経て液化され、液体ヘリウムはトランスファーライン9の第1パイプ21を通って、液体ヘリウム貯留槽1内の気液分離器1aに供給され、ここで液体ヘリウムが分離されて液体ヘリウム貯留槽1に戻される。トランスファーライン内の第1パイプ21を通る液体ヘリウムは第1パイプ21と第2パイプ22の間を通る約40Kに冷却された冷却ヘリウムガスで高温部に直接触れないようにして、液体ヘリウム貯留槽1に送られる。この構造により、移送途中で液体ヘリウムが気化することを極力防止することができ、また液化ヘリウムを長距離を安定した状態で移送することができる。

【2】

【従来の技術】人間の脳から発生する磁界を検出する脳磁気計測システムの開発が進められている。このシステムでは脳の活動を高時空間分解能で非侵襲的に計測できるSQUID(超電導量子干渉素子)が利用されており、このSQUIDは断熱された槽内に貯留されている液体ヘリウムに侵漬され、冷却された状態で用いられる。

【20】
以上のように、本トランスファーラインによれば、第1パイプ内部を流れる液体ヘリウムは第1パイプと第2パイプの間を通る冷却ヘリウムガスによって高温部と触れぬようにされた状態にあるため、移送中に気化することが防止される。また第2パイプの周囲は真空層としてあり、外気と完全に遮断され断熱効果も大きい。

【21】
なお、上記実施形態中で説明したトランスファーラインはあくまで一例であり、液体ヘリウムの代わりに他の低温液化ガスを移送するものにも当然使用することができ、この場合にも低温液化ガスを流すパイプの周囲に冷却されたガスを流し、液体ガスの気化を極力防止できる構成とする。また、上記実施形態において、液体ヘリウムの周囲に流す冷却ヘリウムガスの温度は、40Kに限定されることはない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいかなる形でも実施できる。そのため、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず限定的に解釈してはならない。

【22】

【発明の効果】本発明によれば、第2段目の冷凍サイクルによって液化された液体ヘリウムを移送するパイプの周囲には第1段目の冷凍サイクルを利用して冷却されたヘリウムガスが流れるようにしておき、さらにそのヘリウムガスの周囲を真空層としておくことにより極めて断熱性の優れたトランスファーラインを構成できる。さらに、移送中の液体ヘリウムは、冷却されたヘリウムガスによって高温部と接触することを無くした状態で移送されることになり、移送距離が長い場合でも移送中に於ける液体ヘリウムの気化を極力防止することができる。等の優れた効果を奏することができる。

【3】
上記システムに使用している従来からの液体ヘリウム貯留槽では、同槽から蒸発したヘリウムガスはほとんどの場合大気に開放している。しかしこの方式では1リットル当たり1200円以上する高価なヘリウムを多量に無駄に消費するため経済的に極めて不利である。また小さなシステムではガスバッグ等に回収し再液化を行ったりしているがこのための作業が面倒でありさらに高価な液体ヘリウムを完全に回収することが不可能である。いずれの方式でも液体ヘリウム貯留槽で減少した分の液体ヘリウムを液体ヘリウムボンベから補う必要があるが、液体ヘリウムを補充するための作業は極めて煩雑で業者に依頼する場合にはコストも嵩む等の問題がある。

【4】
上記背景から最近では、液体ヘリウム貯留槽で気化したヘリウムガスを全量回収し再凝縮して液化し、再び液体ヘリウム貯留槽内に戻す液体ヘリウム再循環システムの開発が進められている。こうした液体ヘリウム再循環システムの一例の概略構成を図3を参照して簡単に説明すると、図中101は脳磁計を収容している液体ヘリウム貯留槽、102は貯留槽101内で気化したヘリウムガスを回収するドライポンプ、103はヘリウムガス内に混入している水分を除去する乾燥器、104は流量調整弁、105は精製器、106は補助冷凍機、107は同補助冷凍機106の第1熱交換器、108は再凝縮冷凍機、109は再凝縮冷凍機108の再凝縮熱交換器であり、液体ヘリウム貯留槽101で気化し昇温した約300Kのヘリウムガスはドライポンプ102で吸引され、乾燥器103、精製器105を経て補助冷凍機106で約40Kの極低温ヘリウムガスに冷却され、さらに再凝縮冷凍機108の再凝縮熱交換器109で4Kの液体ヘリウムに液化され、ここからトランスファーライン110を経由して液体ヘリウム貯留槽に供給される構成となっている。

【5】
この液体ヘリウム再循環システムは基本的に、液体ヘリウム貯留槽内で蒸発したヘリウムガスを全量回収し再利用する方式であるため、従来のように大気開放したり、あるいはガスバッグ等に回収して再液化を行う方法に比較して、ヘリウムの無駄な消費がなくなり極めて経済的、かつ、効率的であり、最近では積極的にその実用化が進められている。また、不足分の液体ヘリウムを充填する作業の回数も不必要であるため装置の維持管理の面で取扱いが容易となる。

【6】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような再循環システムでは次のような改善すべき問題点がある。即ち、従来のシステムでは再凝縮熱交換器109で液化された液体ヘリウムはパイプの周囲を断熱用の真空層とした断熱構造型のトランスファーライン110を使用して液体ヘリウム貯留槽101に移送されているが、このトランスファーライン101では断熱性が充分でなく、たとえば再凝縮冷凍機109から液体ヘリウム貯留槽101までの距離が長い場合には、移送途中において液体ヘリウムが気化してしまい、液体ヘリウムを効率良く貯留槽101に移送することができないという問題がある。特に再循環システムのように移送すべき液体ヘリウム量が約1リットル/日程度の少量の場合には移送しようとする液体ヘリウムが全量気化してしまうといった危険性をもち、事態は深刻である。

【7】
また、上記以外にもヘリウムガスを液体ヘリウムにするためには、冷凍機を作動するための非常に大きな電気エネルギーが必要である、冷凍機用の圧縮ポンプを冷却するために大量の水が必要となる、など全体として装置の維持管理に莫大な運転コストがかかり、結果的に大気開放と同程度のコストとなっている。このためさらに経済効率に優れた新しい形態の液体ヘリウム再循環システムの開発が必要とされている。

【8】
上記のような背景のもと、本発明者らは、液体ヘリウム貯留槽内における液体ヘリウムの冷却効果について研究してきた結果、液体ヘリウムは、4Kの液化状態から約4Kのガス状態に状態変化する際に必要とする熱量(気化熱)よりも、約4Kのガスから約300のガスに昇温するまでに必要とする熱量(顕熱)の方が遙かに大きいことを見いだした。同時に高温ヘリウムガスを低温ヘリウムガスに冷却するのは、それほどエネルギーを必要としないが、低温ヘリウムガスを液体ヘリウムに液化する際には大きなエネルギーを必要とすることを確認した。即ち、従来の再循環システムでは、蒸発したヘリウムガスを全量液化して機器を低温に保持していたため、冷却効率、エネルギー効率が悪いということを見いだした。

【9】
本発明は上記知見に基づいて成されたものであり、特に液体ヘリウム再循環システムにおいて、冷凍機から液体ヘリウム貯留槽に液体ヘリウムを移送する際に、移送中の液体ヘリウムの気化を極力防止し、安定した状態で液体ヘリウムの連続充填を行うことができる新規なトランスファーラインを提供することにより、上記問題点を解決することを目的とする。
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
2