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明細書 :波長可変短パルス光発生装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3390755号 (P3390755)
公開番号 特開2000-105394 (P2000-105394A)
登録日 平成15年1月17日(2003.1.17)
発行日 平成15年3月31日(2003.3.31)
公開日 平成12年4月11日(2000.4.11)
発明の名称または考案の名称 波長可変短パルス光発生装置及び方法
国際特許分類 G02F  1/35      
FI G02F 1/35
請求項の数または発明の数 23
全頁数 12
出願番号 特願平10-275604 (P1998-275604)
出願日 平成10年9月29日(1998.9.29)
審査請求日 平成12年10月23日(2000.10.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】後藤 俊夫
【氏名】西澤 典彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】佐藤 宙子
参考文献・文献 特開 平8-146474(JP,A)
OPTICS LETTERS,1986年,Vol11,No.10,659-661
調査した分野 G02F 1/35
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)短パルス光源と、
(b)該短パルス光源からの光の特性を調整する光特性調整器と、
(c)該光特性調整器から入射パルスが入射されるとともに、出力パルスの波長を入射パルスの光強度に対し帯域に線形に変化させる光ファイバとを具備することを特徴とする波長可変短パルス光発生装置。

【請求項2】
請求項1記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記光特性調整器が光強度調整器である波長可変短パルス光発生装置。

【請求項3】
請求項1記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記短パルス光源がフェムト秒ファイバレーザである波長可変短パルス光発生装置。

【請求項4】
請求項1記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記短パルス光源がピコ秒ファイバレーザである波長可変短パルス光発生装置。

【請求項5】
請求項1記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記光ファイバが定偏波ファイバである波長可変短パルス光発生装置。

【請求項6】
請求項1記載の波長可変短パルス光発生装置において、他の波長の短パルス光を生成するために前記光ファイバに接続される非線形結晶を備えることを特徴とする波長可変短パルス光発生装置。

【請求項7】
請求項1記載の波長可変短パルス光発生装置において、生成されるパルス光の波長を更に変換するために、四光波混合手段を具備する波長可変短パルス光発生装置。

【請求項8】
請求項1記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記光ファイバによって生成されたパルス光を増幅する光増幅器を具備する波長可変短パルス光発生装置。

【請求項9】
請求項1記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記出力パルスが理想的なソリトンパルスである波長可変短パルス光発生装置。

【請求項10】
請求項2記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記光強度調整器を電気的に調整し、パルス光の波長を制御する手段を具備する波長可変短パルス光発生装置。

【請求項11】
(a)短パルス光源と、
(b)該短パルス光源からの光強度を調整する光強度調整器と、
(c)該光強度調整器から入射パルスが入射されるとともに、出力パルスの波長を入射パルスの光強度に対し広帯域に線形に変化させる光ファイバとを備え、
(d)可搬型に組み立てることを特徴とする波長可変短パルス光発生装置。

【請求項12】
請求項11記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記短パルス光源がフェムト秒ファイバレーザである波長可変短パルス光発生装置。

【請求項13】
請求項11記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記短パルス光源がピコ秒ファイバレーザである波長可変短パルス光発生装置。

【請求項14】
短パルス光源からの光強度を調整し、前記短パルスを光ファイバへ入射することによって波長を入射パルスの光強度に対し広帯域に線形に変化させた出力パルスを発生させることを特徴とする波長可変短パルス光発生方法。

【請求項15】
請求項14記載の波長可変短パルス光発生方法において、前記光ファイバの長さを変化させることによって、生成されるパルス光の波長を変化させる波長可変短パルス光発生方法。

【請求項16】
請求項14記載の波長可変短パルス光発生方法において、前記出力パルスを非線形結晶に通し、他の波長の短パルス光を生成する波長可変短パルス光発生方法。

【請求項17】
請求項14記載の波長可変短パルス光発生方法において、四光波混合によって、生成されるパルス光の波長を更に変換する波長可変短パルス光発生方法。

【請求項18】
請求項14記載の波長可変短パルス光発生方法において、前記光ファイバによって生成されたパルス光を光増幅器を用いて増幅する波長可変短パルス光発生方法。

【請求項19】
請求項14記載の波長可変短パルス光発生方法において、前記出力パルスとして理想的なソリトンパルスを発生させる波長可変短パルス光発生方法。

【請求項20】
請求項14記載の波長可変短パルス光発生方法において、前記光強度調整器を電気的に調整し、パルス光の波長を制御する波長可変短パルス光発生方法。

【請求項21】
請求項14記載の波長可変短パルス光発生方法において、入射パルスの時間波形やスペクトル幅を変化させることによって、ソリトンパルスのパルス幅やスペクトル幅、及び中心波長を変化させる波長可変短パルス光発生方法。

【請求項22】
請求項14記載の波長可変短パルス光発生方法において、入射パルスの偏光方向を調整することにより、ソリトンパルスの波長やスペクトルを調整する波長可変短パルス光発生方法。

【請求項23】
請求項14記載の波長可変短パルス光発生方法において、前記出力パルスとして、長波長側に生成されるソリトンパルスと共に、短波長側に生成される反ストークスパルスを生成する波長可変短パルス光発生方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、波長可変短パルス光発生装置及び方法に係り、特に、波長可変なフェムト秒台の短パルス光を発生させる装置及び方法に関するものである。

【10】
〔3〕上記〔1〕記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記短パルス光源がフェムト秒ファイバレーザである。

【100】
(H)レーザーからの入射パルスとともに、もう一つの異なる波長のレーザー光を光ファイバに入射した時、光ファイバ中の四光波混合によって、短波長側と長波長側に新たなパルス光が生成される。このパルス光の波長は、二つの光の周波数の和と差の周波数のところに対応する。そして、ソリトンパルスと励起用レーザーの波長を変化させることによって、1230~1550nm帯の領域にもパルス光を生成することができる。また、短波長側に生成される反ストークスパルスを用いることでも同様に、広帯域な短パルス光を得ることができる。

【101】
(I)光ファイバ中で生成されたソリトンパルスは、光ファイバラマン増幅作用を用いて短パルスのまま増幅することができる。

【11】
〔4〕上記〔1〕記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記短パルス光源がピコ秒ファイバレーザである。

【12】
〔5〕上記〔1〕記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記光ファイバが定偏波ファイバである。

【13】
〔6〕上記〔1〕記載の波長可変短パルス光発生装置において、他の波長の短パルス光を生成するために前記光ファイバに接続される非線形結晶を備えるようにしたものである。

【14】
〔7〕上記〔1〕記載の波長可変短パルス光発生装置において、生成されるパルス光の波長を更に変換するために、四光波混合手段を具備するようにしたものである。

【15】
〔8〕上記〔1〕記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記光ファイバによって生成されたパルス光を増幅する光増幅器を具備するようにしたものである。

【16】
〔9〕上記〔1〕記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記出力パルスが理想的なソリトンパルスである。

【17】
〔10〕上記〔2〕記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記光強度調整器を電気的に調整し、パルス光の波長を制御する手段を具備するようにしたものである。

【18】
〔11〕波長可変短パルス光発生装置において、短パルス光源と、この短パルス光源からの光強度を調整する光強度調整器と、この光強度調整器から入射パルスが入射されるとともに、出力パルスの波長を入射パルスの光強度に対し広帯域に線形に変化させる光ファイバとを備え、可搬型に組み立てるようにしたものである。

【19】
〔12〕上記〔11〕記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記短パルス光源がフェムト秒ファイバレーザである。

【2】

【従来の技術】これまで、波長可変なフェムト秒パルス光の生成は、色素レーザーや固体レーザーにおいて実現されてきた。しかし、これらのレーザーは多くの光学素子を必要とする大がかりな装置で、波長の調整や安定な動作を得るためには、光学系の精密な調整が必要であり、波長の可変範囲も数十nmとあまり広くなかった。

【20】
〔13〕上記〔11〕記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記短パルス光源がピコ秒ファイバレーザである。

【21】
〔14〕波長可変短パルス光発生方法において、短パルス光源からの光強度を調整し、前記短パルスを光ファイバへ入射することによって波長を入射パルスの光強度に対し広帯域に線形に変化させた出力パルスを発生させるようにしたものである。

【22】
〔15〕上記〔14〕記載の波長可変短パルス光発生方法において、前記光ファイバの長さを変化させることによって、生成されるパルス光の波長を変化させるようにしたものである。

【23】
〔16〕上記〔14〕記載の波長可変短パルス光発生方法において、前記出力パルスを非線形結晶に通し、他の波長の短パルス光を生成するようにしたものである。

【24】
〔17〕上記〔14〕記載の波長可変短パルス光発生方法において、四光波混合によって、生成されるパルス光の波長を更に変換するようにしたものである。

【25】
〔18〕上記〔14〕記載の波長可変短パルス光発生方法において、前記光ファイバによって生成されたパルス光を光増幅器を用いて増幅するようにしたものである。

【26】
〔19〕上記〔14〕記載の波長可変短パルス光発生方法において、前記出力パルスとして理想的なソリトンパルスを発生させるようにしたものである。

【27】
〔20〕上記〔14〕記載の波長可変短パルス光発生方法において、前記光強度調整器を電気的に調整し、パルス光の波長を制御するようにしたものである。

【28】
〔21〕上記〔14〕記載の波長可変短パルス光発生方法において、入射パルスの時間波形やスペクトル幅を変化させることによって、ソリトンパルスのパルス幅やスペクトル幅、及び中心波長を変化させるようにしたものである。

【29】
〔22〕上記〔14〕記載の波長可変短パルス光発生方法において、入射パルスの偏光方向を調整することにより、ソリトンパルスの波長やスペクトルを調整するようにしたものである。

【3】
近年、光ファイバで構成されるコンパクトな短パルスレーザーが実現されてきた。しかし、特開平10-213827号公報に開示されているように、これまでの技術開発では如何に短いパルス光を如何に高強度で取り出すかについて主眼が置かれ、出力されるパルス光の波長を変化させることはあまりできなかった。

【30】
〔23〕上記〔14〕記載の波長可変短パルス光発生方法において、前記出力パルスとして、長波長側に生成されるソリトンパルスと共に、短波長側に生成される反ストークスパルスを生成するようにしたものである。

【31】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。

【32】
まず、本発明の第1実施例について説明する。

【33】
図1は本発明の第1実施例を示す波長可変短パルス光発生装置の模式図である。

【34】
この図において、1は短パルス光源、2はこの短パルス光源からの光特性を調整する光特性調整器、3はこの光特性調整器から入射パルスを入射するとともに、出力パルスの波長を線形に変化させることができる光ファイバ、Rは励起パルス、Sはソリトンパルスである。

【35】
この図に示すように、励起光源には、例えば、フェムト秒パルス光を安定に生成するコンパクトな短パルス光源(ファイバレーザー)1を用いる。その短パルス光源1の出力は、光特性調整器2を通し、パルス光を所望の光特性に調整した後、光ファイバ3に入射される。光ファイバ3の長さが十分に長く、入射光強度が十分に大きいとき、誘導ラマン散乱によって、入射パルスの長波長側に新たなパルス光が生成される。

【36】
このパルス光は、自己位相変調と、波長分散の相互作用であるソリトン効果によって、パルス波形とスペクトル波形がsech2 型をとる理想的なソリトンパルスSになっていく。このソリトンパルスSは光ファイバ3を伝搬するのに伴い、ラマン散乱効果によってスペクトルの中心が長波長側にシフトしていく。この効果をソリトン自己周波数シフトという。この時、周波数のシフト量は光ファイバ3の長さやパルス光の強度に依存するため、両者を変化させることにより、波長のシフト量を調整することができる。特に、入射光強度を変化させることで、波長シフト量を線形に変化させることができる。

【37】
次いで、この波長可変短パルス光発生装置をより具体化した第2実施例について説明する。

【38】
図2は本発明の第2実施例を示す波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置の模式図である。

【39】
この図において、11はフェムト秒ファイバレーザー、12はこのフェムト秒ファイバレーザーからの光強度を調整する光強度調整器、13はこの光強度調整器12から入射パルスを入射するとともに、出力パルスの波長を線形に変化させることができる定偏波光ファイバである。なお、14は光スペクトル分析器、15はパルス幅測定器、16は光パワーメータであり、これらは、出力パルスを測定するために用いられるものであって、本発明の構成要件となるものではない。

【4】
これまで、光ファイバに短パルス光を入射すると、長波長側に新たなパルスが生成されることが、P.Beaudらによって見出された〔IEEE J.Quantum Electron.,QE-23,p1938(1987)〕。

【40】
励起光源には、フェムト秒パルス光を安定に生成するコンパクトなフェムト秒ファイバレーザー11を用いる。フェムト秒ファイバレーザー11の出力は、光強度調整器12を通し、パルス光を所望の光強度に調整した後、定偏波光ファイバ13に入射される。この時、入射光の偏光方向は定偏波光ファイバ13の複屈折軸に平行に合わせる。定偏波光ファイバ13の長さが十分に長く、入射光強度が十分に大きいとき、誘導ラマン散乱によって、入射パルスの長波長側に新たなパルス光が生成される。

【41】
このパルス光は、自己位相変調と、波長分散の相互作用であるソリトン効果によって、パルス波形とスペクトル波形がsech2 型をとる理想的なソリトンパルスSになっていく。このソリトンパルスSは定偏波光ファイバ13を伝搬するのに伴い、ラマン散乱効果によってスペクトルの中心が長波長側にシフトしていく。この効果をソリトン自己周波数シフトという。この時、周波数のシフト量は定偏波光ファイバ13の長さやパルス光の強度に依存するため、両者を変化させることで、波長のシフト量を調整することができる。特に、入射光強度を変化させることにより、波長シフト量を線形に変化させることができる。

【42】
本実施例において使用されるこの種のフェムト秒ファイバレーザ11としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。

【43】

(1)機械的特性としては、
大きさ レーザー本体 :182×101×57mm
コントローラー:249×305×72mm
重量 レーザー本体 :3.0kg
コントローラー:2.8kg
(2)電気的特性としては、
消費電力 :100V 0.63Amax、平均14W、最大22W
(3)光学的特性としては、
中心波長 :1559nm
パルス幅 :190~760fs可変、本実験では190fsで使用
繰り返し周波数:48.9MHz
平均出力 :11.1mW(760fs時)~36.1mW(190
fs時)、本実験では36.1mWで使用
耐久性 :半導体レーザーの寿命2年、交換可
また、使用したファイバの諸特性としては、
コア径 :5.5±0.5μm
光学的損失 :2.6dB/km(1550nmの光に対し)
長さ :110m、75m、40m
である。

【44】
図3は本発明の第2実施例による光ファイバの出力におけるソリトンパルスのスペクトルの測定結果を示す図であり、75mの光ファイバに6.1mWのパルス光を入射したときに生成されたソリトンパルスのスペクトルの測定結果を示している。

【45】
この図に示すように、1558nm付近に現れているのは、光ファイバに入射した励起パルスRのスペクトルである。この波長から長波長側に大きくシフトしたソリトンパルスSのスペクトルが1650nmのところに現れており、スペクトル波形が綺麗なsech2 型になっているのが分かる。スペクトル幅は約16nmであり、この時、パルス幅は180fsになっている。さらに、入射光強度を上げてスペクトルをシフトしても、スペクトルの形状は綺麗なsech2 型を保った。

【46】
図4は本発明の第2実施例による光ファイバへの入射光強度に対するソリトンパルスのスペクトルの中心波長の変化を40m、75m、110mの光ファイバについて表している。

【47】
入射光強度を2mWよりも大きくすると、ソリトンパルスの中心波長が線形に増加していく。波長のシフト率は、ファイバ長が長いほど大きくなった。最大150nm程度のスペクトルシフト(中心波長1710nm)が110m、及び75mのファイバにおいて観測された。更に、入射光強度を大きくし、また、ファイバ長を長くすることによって、ソリトンパルスの波長を約2μm程度までシフトできる。

【48】
上記した波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置(図2参照)からも分かるように、この装置はコンパクトなファイバレーザーと数十~数百mの光ファイバで構成されるため、装置全体が非常にコンパクトな可搬型になっている。つまり、光ファイバをファイバレーザーと一体化することにより、ポータブルなパルス光発生装置を実現することができる。また、入射光強度を変化させるだけで、ソリトンパルスの波長を線形に変化させることを実現できた。

【49】
図5は本発明の第2実施例による光ファイバ長とスペクトル幅、パルス幅の関係を表す図である。

【5】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、P.Beaudらの報告では、パルス光の波長の可変性は議論されていなかった。また、通常の非定偏波ファイバが用いられていたため、出力は時間的に安定ではなく、得られるスペクトルもあまり綺麗ではなかった。更に、新たに生成されるパルス光へのエネルギーの変換効率も約45%とあまり良くなかった。

【50】
この図から明らかなように、光ファイバ長が長くなるに従って、スペクトル幅は狭くなり、パルス幅は拡がる傾向を見せた。ここで、光ファイバ長40~110mの範囲で、スペクトル幅は18~15nm、パルス幅は155~195fsと変化した。このように、波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置(図2参照)において用いる光ファイバの長さを変化させることによって、ソリトンパルスのパルス幅やスペクトル幅を変化させることができる。

【51】
図6は本発明の第2実施例を示すファイバ長と波長シフト量の関係を示す図である。

【52】
この図から明らかなように、光ファイバ長が長くなるほど波長のシフト量は単調に増加した。これは、パルス光が光ファイバを伝搬するほどソリトン自己周波数シフトによって波長が長波長側にシフトしていくためである。このように、光ファイバ長を変化させることによって、ソリトンパルスの波長を変化させることができる。

【53】
次に、本発明の第3実施例について説明する。

【54】
図7は本発明の第3実施例を示す波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置の模式図である。なお、図2における部分と同じ部分については同じ符号を付してそれらの説明は省略する。

【55】
第2実施例で示した波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置の出力を非線形結晶21に通し、ソリトンパルスの第2高調波短パルスDを生成する実験について説明する。

【56】
図7に示すように、波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置において生成されるパルス光は、ピークパワーが数百Wあるため、非線形結晶21を用いることによって、第2高調波短パルスDを生成することができる。定偏波光ファイバ13からの出力光をKTPなどの非線形結晶21に入射し、結晶の角度を調整することによって、1550~2000nmのソリトンパルスSから780~1000nmの波長の短パルス光を生成することができる。ソリトンパルスSの波長を変化させることによって、第2高調波パルスDの波長を同様に変化させることができる。

【57】
図8は本発明の第3実施例による波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置を用いて生成された第2高調波の中心波長の入射光強度依存性を示す図であり、光ファイバは40m、75m、110mについて示している。

【58】
入射光強度を変化させることによって、ソリトンパルスの波長が線形に変化するため、第2高調パルスの波長も、線形にシフトしていく。入射光強度が大きいほど、また、光ファイバ長が長いほどシフト量は大きくなる。

【59】
次に、本発明の第4実施例について説明する。

【6】
また、近年、非線形結晶を用いたパラメトリック変換が、光の波長を変換する技術として注目を集めているが、この手法では、大きな励起光強度が必要であり、更に、波長を変化させるためには結晶やミラーなどの光学素子を調整することが必要で、装置の取り扱いはあまり簡便ではなかった。

【60】
図9は本発明の第4実施例を示す四光波混合を用いたフェムト秒パルスの広帯域波長可変パルス発生装置の模式図である。

【61】
図9に示すように、光ファイバ33に励起パルスとともに、励起用半導体レーザー(励起用LD)31からの波長の異なる励起用レーザーをファイバカプラ等の結合器32を介して入射する。

【62】
上述したように、励起パルスRによって長波長側にソリトンパルスSが生成されるが、このソリトンパルスSと励起用レーザー(フェムト秒ファイバレーザー)11からの光が四光波混合を起こし、二つの光の周波数の差と和の周波数のところに、新しいパルス光を生成する。ソリトンパルスと励起用レーザー11の波長を変化させることによって、1230~1550nm等の領域にもパルス光を生成することができる。

【63】
図10は第4実施例の四光波混合によって生成されたパルス光と励起光、ソリトンパルスの波長と周波数の関係を示す図である。

【64】
四光波混合では、励起用LD31の光とソリトンパルスの相互作用によって、短波長側と長波長側に新しいパルス光が生成される。励起用LD31の周波数をω0、ソリトンパルスの周波数をω1とすると、生成されるパルス光の周波数は2ω0-ω1、2ω1-ω0となる。長波長側への変換効率は光ファイバの特性から低いことが予想されるため、ここでは短波長側に生成されるパルス光に注目する。

【65】
ソリトンパルスSの波長は1560~2000nmまで変化可能であるため、励起用LD31の波長を1550nmとすると、短波長側に生成される短波長パルスTの波長は1230~1540nmまで可変することができる。ソリトンパルスSの波長は入射光強度に対し線形に変化するため、四光波混合パルスの波長も線形に変化し、入射光強度による波長の調整が可能となる。

【66】
次に、本発明の第5実施例について説明する。

【67】
図11は本発明の第5実施例を示す光ファイバを用いた波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置の模式図である。

【68】
この図において、41はフェムト秒ファイバレーザー、42はこのフェムト秒ファイバレーザーからの光強度を調整する光強度調整器、43はこの光強度調整器42から入射パルスを入射するとともに、出力パルスの波長を線形に変化させることができる光ファイバ、Rは励起パルス、Sはソリトンパルス(ストークスパルス)、Hは反ストークスパルスである。

【69】
この実施例では、第2実施例で示した波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置において、長波長に生成されるソリトンパルスSだけでなく、図12に示すように、短波長側にも反ストークスパルスHが生成される。この反ストークスパルスHの波長はソリトンパルスSとは逆に短波長側にシフトする。ソリトンパルスSが1560~2000nmまでシフトするとき、反ストークスパルスHは1560~1280nmまでシフトする。この反ストークスパルスHをソリトンパルスSと合わせて用いることによって、1280~2000nmにおける広帯域な波長可変パルス光源を実現することができる。

【7】
本発明は、上記問題点を除去し、光学系の調整をすることなく波長を変化させることができ、理想的なフェムト秒のソリトンパルスを生成するコンパクトな波長可変短パルス光発生装置及び方法を提供することを目的とする。

【70】
次に、本発明の第6実施例について説明する。

【71】
図13は本発明の第6実施例を示す波長制御装置付波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置の模式図である。

【72】
この図において、51はフェムト秒ファイバレーザー、52はこのフェムト秒ファイバレーザーからの光強度を調整する光強度調整器、53は光分岐器、54は光受光器、55は制御回路、56は前記光分岐器53から入射パルスを入射するとともに、出力パルスの波長を線形に変化させることができる定偏波光ファイバ、Rは励起パルス、Sはソリトンパルス(ストークスパルス)である。なお、14は光スペクトル分析器、15はパルス幅測定器、16は光パワーメータであり、これらは、出力パルスを測定するために用いられるものであって、本発明の構成要件となるものではない。

【73】
この実施例では、第2実施例で示した波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置(図2参照)において、光強度調整器52における出力光を光分岐器53で分岐し、その出力光強度の一部を光受光器54でモニターし、透過光量を所望の大きさに合わせることによって、出力パルスの波長を安定にコントロールすることができる。

【74】
次に、本発明の第7実施例について説明する。

【75】
図14は本発明の第7実施例を示す波長制御装置付波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置の模式図である。

【76】
この図において、61はフェムト秒ファイバレーザー、62はこのフェムト秒ファイバレーザーからの光強度を調整する光強度調整器、63は光分岐器、64は光受光器、65は制御回路、66は発振器、67は前記光分岐器63から入射パルスを入射するとともに、出力パルスの波長を線形に変化させることができる定偏波光ファイバ、Rは励起パルス、Sはソリトンパルス(ストークスパルス)である。なお、14は光スペクトル分析器、15はパルス幅測定器、16は光パワーメータであり、これらは、出力パルスを測定するために用いられるものであって、本発明の構成要件となるものではない。

【77】
この実施例では第2実施例で示した波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置(図2参照)において、光強度調整器62を任意の周波数で変調することによって、ソリトンパルスSの波長を周期的に変化させることができる。このように、光強度調整器62を変調することにより、波長スキャン機能をもったソリトンパルス発生装置を実現できる。

【78】
次に、本発明の第8実施例について説明する。

【79】
この実施例では、第2実施例で示した波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置(図2参照)において、フェムト秒ファイバレーザーから出力されるパルス光のパルス幅やスペクトル幅を調整することによって、発生するソリトンパルスのスペクトル幅やパルス幅を変化させることができる。スペクトル幅の狭いパルスは波長分解が必要な計測において重要になる。

【8】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕波長可変短パルス光発生装置において、短パルス光源と、この短パルス光源からの光の特性を調整する光特性調整器と、この光特性調整器から入射パルスが入射されるとともに、出力パルスの波長を入射パルスの光強度に対し広帯域線形に変化させる光ファイバとを具備するようにしたものである。

【80】
次に、本発明の第9実施例について説明する。

【81】
この実施例では、第2乃至第4実施例で示した波長可変ソリトンパルスの発生装置において、出力にラマン光増幅器等の非線形増幅器を用いることにより、短パルス光をパルス幅を広げることなく増幅することができる。この手法を用いれば、ある波長のソリトンパルスを、パルス幅を広げることなく任意の大きさに増幅することができる。

【82】
なお、本発明によれば、短パルス光源としては、主にフェムト秒ファイバレーザについて説明したが、ピコ秒ファイバレーザを用いるようにしてもよいことは言うまでもない。特に、ピコ秒ファイバレーザを用いる場合には、以下のような利点が挙げられる。

【83】
ピコ秒パルスで光ファイバを励起すると、入射光強度に対する波長のシフト量がフェムト秒パルスの時よりも小さいため、正確な波長の同調が可能となる。このようなパルス光の波長の正確な調整は、波長多重光通信用デバイスの評価や分光等の応用において、精密な波長の調整が必要となる場合に有用である。

【84】
このように、本発明によれば、
(1)光源にコンパクトでフェムト秒パルスを生成するファイバレーザーを用い、定偏波光ファイバにおける非線形効果を利用することにより、励起光強度を変化させるだけで線形に波長を変化させることができ、装置全体もコンパクトで持ち運びのできるフェムト秒パルス光源を得ることができる。

【85】
(2)光源にコンパクトで安定なフェムト秒パルスを出力するファイバレーザーを用い、偏波保持型でコア断面積の小さい数十~数百mの光ファイバと光強度を連続的に可変することのできる光強度調整器を具備し、理想的なフェムト秒ソリトンパルスを発生し、光強度を変化させるだけでソリトンパルスの波長を広帯域に線形に変化させることのできるポータブルなパルス光発生装置を得ることができる。

【86】
(3)理想的なフェムト秒ソリトンパルスを安定に生成することができる。また、光ファイバへの入射光強度を変化させるだけで、従来のように、光学系の調整を全く行わずに、パルス光の波長を線形に広帯域に変化させることができる。更に、装置全体が非常に小型であるため、持ち運びもできるポータブルなものであり、ほぼメンテナンスフリーである。

【87】
このような本発明の波長可変短パルス光発生装置及び方法は、波長多重通信用光デバイスの周波数特性・波長依存性の測定装置への応用が考えられる。

【88】
近年、情報化社会の急速な発展に伴い、光通信技術における更なる情報量の増大が求められている。情報量の増大のため、光通信の時間的な高速化や伝送する光波長の多重化が研究・開発されている。この様な状況の中、光通信に用いられる光デバイスの適切な特性評価は欠くことのできない重要な事項である。特に、発光素子・光変調器・光受光器の周波数特性や波長依存性はシステムの特性を決める基本的な特性である。しかし、動作速度の高速化や広帯域化に伴い、素子の特性評価はそれ自身が難しい技術になってきている。

【89】
本発明によれば、広帯域に渡って素子の波長依存性を評価することができる。また、フェムト秒パルスを入射したときの時間応答を測定することで、素子の周波数特性を規定することが可能となる。この技術は、今後の波長多重通信の更なる広帯域化・高速化に伴い、益々重要になっていくと考えられる。

【9】
〔2〕上記〔1〕記載の波長可変短パルス光発生装置において、前記光特性調整器が光強度調整器である。

【90】
また、本発明の波長可変短パルス光発生装置は非常にコンパクトで安定であり、ソリトンパルスの波長を入射光強度を変化させるだけで変化させることができる。これらの長所のため、本発明は光化学や生物系の分野における高速光応答技術や高速分光、更に高速光エレクトロニクスや非線形光学の分野において、広く活用されると考えられる。

【91】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。

【92】

【発明の効果】本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。

【93】
(A)光ファイバの長さが十分に長く、入射光強度が十分に大きいとき、誘導ラマン散乱によって、入射パルスの長波長側に新たなパルス光が生成される。このパルス光は、自己位相変調と、波長分散の相互作用であるソリトン効果によって、パルス波形とスペクトル波形がsech2 型をとる理想的なソリトンパルスになっていく。このソリトンパルスは光ファイバを伝搬するのに伴い、ラマン散乱効果によってスペクトルの中心が長波長側にシフトしていく(この効果をソリトン自己周波数シフトという)。この時、周波数のシフト量は光ファイバの長さやパルス光の強度に依存するため、両者を変化させることで、波長のシフト量を調整することができる。特に、入射光強度を変化させることにより、波長シフト量を線形に変化させることができる。

【94】
(B)光源にコンパクトでフェムト秒パルスを生成するファイバレーザーを用い、定偏波光ファイバにおける非線形効果を利用することにより、励起光強度を変化させるだけで線形に波長を変化させることができ、装置全体もコンパクトで持ち運びのできる可搬型のフェムト秒パルス光源を得ることができる。

【95】
(C)光源にコンパクトで安定なフェムト秒パルスを出力するファイバレーザーを用い、偏波保持型でコア断面積の小さい数十~数百mの光ファイバと光強度を連続的に可変することのできる光強度調整器を具備し、理想的なフェムト秒ソリトンパルスを発生させ、光強度を変化させるだけでソリトンパルスの波長を広帯域に線形に変化させることのできるポータブルなパルス光発生装置を提供することができる。

【96】
(D)本発明の波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生装置では、理想的なフェムト秒ソリトンパルスを安定に生成することができる。また、光ファイバへの入射光強度を変化させるだけで、光学系の調整を全く行わずに、パルス光の波長を線形に広帯域に変化させることができる。更に、装置全体を非常に小型にすることができる。また、ほぼメンテナンスフリーである。

【97】
(E)フェムト秒ソリトンパルスの波長を1560~1710nmまで変化させることができる。更に、実験系を最適化することで、約2000nmまで波長を変化させることができる。

【98】
(F)波長可変フェムト秒ソリトンパルス発生器の出力を非線形結晶に通すことによって、第2高調波の短パルス光を得ることができる。ソリトンパルスの波長を線形に1560~2000nmまで変化させることによって、780~1000nmの領域で線形に波長を変化させることのできる短パルス光を得ることができる。

【99】
(G)本発明の波長可変ピコ秒パルスで光ファイバを励起すると、入射光強度に対する波長のシフト量がフェムト秒パルスの時よりも小さいため、正確な波長の同調が可能となる。このようなパルス光の波長の正確な調整は、波長多重光通信用デバイスの評価や分光等の応用において、精密な波長の調整が必要となる場合に有用である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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