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明細書 :高速剪断流によるEEM加工方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3860352号 (P3860352)
公開番号 特開2000-167770 (P2000-167770A)
登録日 平成18年9月29日(2006.9.29)
発行日 平成18年12月20日(2006.12.20)
公開日 平成12年6月20日(2000.6.20)
発明の名称または考案の名称 高速剪断流によるEEM加工方法
国際特許分類 B24C   1/00        (2006.01)
B24B  57/02        (2006.01)
FI B24C 1/00 Z
B24B 57/02
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願平10-347596 (P1998-347596)
出願日 平成10年12月7日(1998.12.7)
審判番号 不服 2004-012414(P2004-012414/J1)
審査請求日 平成13年3月1日(2001.3.1)
審判請求日 平成16年6月17日(2004.6.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】森 勇藏
【氏名】石川 俊夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100074561、【弁理士】、【氏名又は名称】柳野 隆生
参考文献・文献 特開平8-222539(JP,A)
特開昭63-11278(JP,A)
特開平5-184917(JP,A)
特開平10-125645(JP,A)
特開平9-283477(JP,A)
調査した分野 B24C1/00
B24B57/02
特許請求の範囲 【請求項1】
超純水を主体として満たした加工槽内に被加工物と高圧力ノズルとを所定の間隔を置いて配設し、被加工物の表面近傍に高圧力ノズルから噴射した超純水によって該被加工物の表面に沿って速度勾配が5m/sec・μm以上の高速剪断流を発生させるとともに、超純水の流れによって被加工物の表面原子と化学的な反応性のある粒径10-9~10-6mの微粒子を被加工物表面に供給し、被加工物の表面原子と化学結合した微粒子を高速剪断流にて取り除いて被加工物表面の原子を除去し、加工を進行させてなることを特徴とする高速剪断流によるEEM加工方法。
【請求項2】
前記高圧力ノズルの噴出口が円孔である請求項1記載の高速剪断流によるEEM加工方法。
【請求項3】
前記高圧力ノズルの噴出口がスリット孔である請求項1記載の高速剪断流によるEEM加工方法。
【請求項4】
前記高圧力ノズルから超純水に微粒子を分散させた加工液を噴射してなる請求項1~3何れかに記載の高速剪断流によるEEM加工方法。
【請求項5】
前記高圧力ノズルから超純水を噴射し、該高圧力ノズル近傍に配した微粒子供給ノズルから微粒子を分散させた濃縮加工液を吐出させてなる請求項1~3何れかに記載の高速剪断流によるEEM加工方法。
【請求項6】
加工槽内に超純水に微粒子を分散させた加工液を満たし、前記高圧力ノズルから超純水を噴射してなる請求項1~3何れかに記載の高速剪断流によるEEM加工方法。
【請求項7】
前記高圧力ノズルによって発生した高速剪断流の後流側に回収手段を配設し、加工液を回収してなる請求項1~6何れかに記載の高速剪断流によるEEM加工方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被加工物の加工面に微粒子を流動接触させて歪み、クラック及び熱変質等を全く生じさせずに加工を進行させる高速剪断流によるEEM加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、粒径10-9~10-6mの微粒子を分散した懸濁液からなる加工液を被加工物の加工面に沿って流動させて、該微粒子を加工面上に略無荷重の状態で接触させ、その際の微粒子と加工面界面での相互作用(一種の化学結合)により、加工面原子を原子単位に近いオーダで除去して加工する、いわゆるEEM(Elastic Emission Machining) による超精密鏡面加工は、本発明者によって開発され既に知られている。このEEMは、結晶学的には化学エッチングと同等の優れた表面が得られ且つ加工制御性を有するという特徴を備えている。
【0003】
従来のEEMを使った加工では、ポリウレタン製等の低弾性率高分子材料からなる加工用球体又は円柱体(回転体)を、被加工物の加工面に対して微小ギャップを保ちながら回転させて加工面近傍に加工液流を発生させ、そして球体の場合には該球体を加工面全面に走査して、加工面上の微小領域に形成されるポイント状加工痕を連続させて、全面を精密に自由曲面加工し、円柱体の場合には該円柱体の軸方向を基準として所定角度傾斜した方向へ前記被加工物を相対的に平行移動させ、又は前記円柱体を相対的に軸方向へ往復移動させ且つ被加工物を該円柱体の軸方向と略直交する方向へ相対的に平行移動させて微粒子と加工面界面での相互作用により面加工を進行する超精密鏡面加工方法を既に提案している。つまり、これまでのEEMでは、被加工物表面に対向した回転体が作る弾性流体潤滑流れによって、被加工物表面に粉末粒子を供給していた。
【0004】
しかし、従来のEEMでは以下に示すような問題点を有している。先ず、回転体と被加工物との間の微小ギャップに一様な流れを作るためには、回転体の周囲で発生する不要な流れが影響を与えないように加工槽を大型化する必要があった。また、回転体の材質にポリウレタン製等の低弾性率高分子材料を使用する必要があったため、寸法精度や耐久性が劣るばかりでなく、加工液の有機汚染が発生し、更に水による膨潤滑のため回転体が変形し、流れの安定性が得られないといった欠点を有する。更に別の問題点として、球体の回転体では非対称なポイント状加工痕しか得られないこと、微小ギャップが1μm程度のため加工液中の粗粒の影響による外乱を受け易いこと、加工能率が低いことが挙げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
EEMでは、超純水の流れを利用して、被加工物と化学的な反応性のある微粒子を被加工物表面に供給し、被加工物・微粒子表面間で化学結合が生じた後に、更に流れによって微粒子が被加工物表面から取り除かれる際、被加工物表面の原子を微粒子が持ち去ることによって加工が進行する。本発明者は、被加工物表面に化学結合を伴って付着した微粒子を取り除くためには、被加工物表面上に所定の強さ以上の剪断流が必要であることを、理論的に予測し、実験において確認したのである。つまり、回転体による加工痕の形状と、回転体による剪断流の速度勾配分布を対応させ、加工には剪断流の一定の速度勾配以上が必要であることを見出したのである。
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、回転体を用いずに、制御された範囲及び分布を有する一定の速度勾配以上の剪断流を被加工物表面に沿って発生させることによって、前述の問題点を一挙に解決し、高品質の加工を高能率で行うことが可能な高速剪断流によるEEM加工方法を提供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題解決のために、超純水を主体として満たした加工槽内に被加工物と高圧力ノズルとを所定の間隔を置いて配設し、被加工物の表面近傍に高圧力ノズルから噴射した超純水によって該被加工物の表面に沿って速度勾配が5m/sec・μm以上の高速剪断流を発生させるとともに、超純水の流れによって被加工物の表面原子と化学的な反応性のある粒径10-9~10-6mの微粒子を被加工物表面に供給し、被加工物の表面原子と化学結合した微粒子を高速剪断流にて取り除いて被加工物表面の原子を除去し、加工を進行させてなる高速剪断流によるEEM加工方法を確立した。
【0008】
ここで、前記高圧力ノズルの噴出口が円孔であるとポイント加工ができ、被加工物表面を任意形状に加工することが可能であり、またスリット孔であるとライン加工ができ、被加工物表面を広い面積にわたり平面形状又は波形形状に加工することが可能である。
【0009】
また、本発明の加工方法では、前記高圧力ノズルから超純水に微粒子を分散させた加工液を噴射するか、或いは前記高圧力ノズルから超純水を噴射し、該高圧力ノズル近傍に配した微粒子供給ノズルから微粒子を分散させた濃縮加工液を吐出させるか、或いは加工槽内に超純水に微粒子を分散させた加工液を満たし、前記高圧力ノズルから超純水を噴射するのである。更に、前記高圧力ノズルによって発生した高速剪断流の後流側に回収手段を配設し、加工液を回収することもより好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
先ず、被加工物表面に化学結合を伴って付着した微粒子を取り除くためには、被加工物表面上にどの程度の剪断流の強さ(速度勾配)が必要であるかを見積もった。粒径0.1μmのZrO2 微粒子をSi(100)表面に超純水中で吸着させ、この表面上に様々な強さの超純水の剪断流を作用させた時、微粒子がSi表面から除去される様子を光学顕微鏡により観察した。その結果、5m/sec ・μm程度の速度勾配を越えると効果的な微粒子の除去が進行することが分かった。一方、従来のEEMにおいて、回転体による加工痕の形状と、シミュレーションによって得られた剪断流の速度勾配が5m/sec ・μm程度以上の領域の形状とが略一致した。この両者の結果から、加工には一定の速度勾配以上の剪断流が必要であることが判ったが、その下限は被加工物の材質と、微粒子の種類及び粒径によって変わることが予想される。
【0011】
本発明は、高圧力ノズルから超純水又は超純水と加工用微粒子との懸濁液(加工液)を被加工物の加工面に噴射し、加工面に沿った剪断流を作り、微粒子と被加工物表面原子との化学結合力を利用して、被加工物表面から微粒子が表面原子を取り去ることによって加工を進行させるものである。そこで、高圧力ノズルから噴射した超純水又は加工液の流れが、ノズル直下近傍でどのようになるかを流体解析モデルを用いて数値計算した。
【0012】
解析モデルはノズルを被加工物表面に対して直角な軸対称とし、非圧縮性流体近似の基でナビエ・ストークスの運動方程式を差分法によって数値的に解いた。計算は、ノズルの穴径を0.1mmφ、外径を2mmφとし、ノズル先端と被加工物表面間のギャップを1mm及び2mmの場合について行った。また、ノズルへの流体の供給圧力は1000気圧とした。それぞれのギャップにおいて圧力分布、ノズル穴方向(Z軸方向)及び半径方向(R方向)の流れ分布を出した。図1にギャップが1mmの場合、図2にギャップが2mmの場合の結果を示している。
【0013】
この計算結果より、解析領域における流体の粘性による圧力損失は約50気圧程度であることが分かる。流入部では、約950気圧の動圧に相当するノズル穴方向の流れ(約450m/sec )が発生しており(図1(a) 参照)、この流れは被加工物の表面近傍(被加工物表面から約75μm)までほぼ直進した後、減速する。その際、被加工物の表面近傍で動圧が静圧に変換され、約950気圧の静圧が発生した後(図1(b) 参照)、半径方向の流れとして動圧に再変換される(図1(c) 参照)。半径方向の流れは、被加工物表面に沿って極めて薄く層状に発生しており(被加工物表面から約25μmの範囲)、EEMにおいて必要となる被加工物表面上の剪断流れを非常に効果的に発生できることが分かった。また、ギャップ1mmの場合と2mmの場合では、ほぼ同等の流れが発生しており、このことはギャップ制御が極めて容易であることを示している。本条件では、ギャップ1mmと2mmの場合とも、被加工物表面上の最大速度勾配は、100m/sec ・μm程度が得られている。
【0014】
次に、本発明の詳細を添付した図面に基づき更に説明する。図3~図5は、高圧力ノズルの概念的構造を示しており、高圧力ノズル1の先端より加工液又は超純水を噴出し、被加工物2の表面上に所定の剪断流を作る。ここで、高圧力ノズル1から超純水のみを噴き出す場合、超純水の流れに合わせて別口より加工液を供給する。又は、予め加工槽内に超純水に微粒子を分散させた加工液を満たしておき、この加工液内に高圧力ノズルから超純水を噴射し、同様に被加工物2の表面上に所定の剪断流を作る。
【0015】
図3は、高圧力ノズル1の噴出口3から超純水と加工用微粒子を混合した加工液を噴射する構造であり、図3(a) は噴出口3の方向を被加工物2の表面と直角に配した垂直入射タイプであり、図3(b) は噴出口3の方向を被加工物2の表面に対して傾斜させた斜め入射タイプである。ここで、前記噴出口3が円孔の場合には、加工面上の微小領域に形成されるポイント状加工痕を連続させて、被加工物2の表面を精密に自由曲面加工することが可能であり、また前記噴出口3がスリット孔である場合には、加工面上にライン状加工痕が形成され、被加工物2の表面を平坦に鏡面加工することが可能である。
【0016】
図4は、高圧力ノズル1の噴出口3から超純水のみを噴出し、加工用微粒子を超純水で流動化した濃縮加工液を供給管4から供給するものであり、図4(a) は垂直入射タイプの高圧力ノズル1の噴出口3の内部に供給管4を通して、先端で該噴出口3から噴出した超純水と濃縮加工液とを混合して被加工物2の表面に加工液を供給する構造であり、図4(b) は斜め入射タイプの高圧力ノズル1の側方からギャップを臨む位置に供給管4を配し、噴出口3から噴出した超純水に濃縮加工液を巻き込ませる構造である。更に図示しないが、図3(a) の垂直入射タイプの高圧力ノズル1の側方からギャップを臨む位置に供給管4を配する構造、図3(b) の斜め入射タイプの高圧力ノズル1の噴出口3の内部に供給管4を通した構造も可能である。ここで、何れの場合も高圧力ノズル1の噴出口3は、円孔とスリット孔があり、噴出口3がスリット孔の場合には前記供給管4は偏平管とするか又は細い円管を複数列設したものとすることが必要である。
【0017】
また、高圧力ノズル1の噴出口3から噴射した加工液又は供給管4から吐出した濃縮加工液が噴出口3から噴射した超純水と混合した後の加工液を、直ちに効率良く回収することも可能である。この概念図を図5に示している。図5(a) は、回収手段として、垂直入射タイプの高圧力ノズル1の先端部周囲に一定の間隔を置いて環状の回収板5を配置し、高圧力ノズル1と回収板5の間に加工液が流れるようにしたものである。また、図5(b) は、回収手段として、斜め入射タイプの高圧力ノズル1の加工液の下流側に一定の間隔を置いて部分的に回収板5を配置したものである。
【0018】
ここで、被加工物の材質と加工用微粒子の材質について若干説明する。本発明における加工原理は、加工用微粒子と被加工物表面との界面での一種の化学結合による相互作用により、微粒子が表面原子と結合し、それを高速剪断流で表面から取り去ることによって微粒子と共に表面原子を除去して加工を進行させるので、被加工物の材質と加工用微粒子の材質の組み合わせは、加工速度に大きく影響を及ぼすのである。被加工物としてシリコンウエハ(Si)を選択した場合、SiO2 の粉体よりもZrO2 の粉体を用いる方が加工速度は速いのである。
【0019】
次に、前記高圧力ノズル1へ高圧力の超純水を供給するシステムを図6に基づいて簡単に説明する。圧力発生用のポンプ10には、プランジャーポンプを使用する。また、加工用の超純水を直接ポンプで加圧すると、ポンプ内の摺動部で発生するパーティクル等の汚染が問題となるため、PTFE又はSUS製のダイヤフラム又はブローズを介して加工用超純水を加圧するシステムを採用している。超純水の加圧部11,12は2連となっており、一台のプランジャーポンプ10により市水を所定圧力に加圧し、それをレギュレータ13で2流路に分岐し、それぞれバルブ14,15を介して前記加圧部11,12に接続している。一方、加工用超純水は、超純水供給装置16から各加圧部11,12にそれぞれバルブ17,18を介して接続している。そして、前記各加圧部11,12は、内部をPTFE又はSUS製の隔膜19,20で市水と超純水が分離されており、該隔膜19,20を通じて市水の圧力で超純水を加圧し、各加圧部11,12で加圧された超純水はバルブ21,22を介して合流して前記高圧力ノズル1に供給される。また、前記バルブ14と加圧部11との間には排水用バルブ23が、前記バルブ15と加圧部12との間には排水用バルブ24が設けられている。これら全バルブは、電磁バルブを採用しコンピュータで開閉制御できるようになっている。
【0020】
そして、この高圧力の超純水供給システムの運転は以下のようになっている。先ず、前記超純水供給装置16では、大気圧とほぼ同じ圧力の超純水が製造される。この超純水を連続的に加圧することは困難であるので、前述のシステムでは二つの加圧部11,12で交互に超純水を大気圧から所定の圧力まで加圧し、高圧力ノズル1に連続的に高圧力の超純水を供給するようになっている。つまり、一方の加圧部11の系統では、バルブ14、21を開き、バルブ17、23を閉じて加圧した市水を加圧部11内に供給し、該加圧部11内で隔膜19を介して加圧された超純水が高圧力ノズル1へ供給され、他方の加圧部12の系統では、バルブ15、22を閉じ、バルブ18、24を開き、加圧部12から市水を排水しながら超純水供給装置16から加圧部12内へ超純水を供給する。ここで、バルブ24を開いて加圧部12内を大気圧に戻した後に、バルブ18を開き、超純水供給装置16が圧力破壊しないようにしている。次に、バルブ18、24を閉じ、バルブ15を開いて加圧部12内に加圧した市水を供給し、超純水を加圧して供給圧力に達すると、バルブ22を開き、バルブ21、14を閉じ、バルブ23を開いて加圧部11内の市水を排水して加圧部11内が大気圧になった後、バルブ17を開いて市水を排水しながら超純水供給装置16から超純水を加圧部11内に供給するのである。以後は、この繰り返しであり、各バルブの開閉タイミングはコンピュータ制御され、連続的に高圧力の超純水が高圧力ノズル1に供給されるのである。
【0021】
次に、本発明の高速剪断流によるEEM加工方法を採用した加工装置の例を図7に示している。この加工装置100は、上部に超純水を満たした加工槽101を有し、下部にX-Y-θ駆動系を内蔵した駆動機構部102を有し、加工槽101と駆動機構部102とは非磁性体の隔壁103で区画され、駆動系の摺動部から発生するパーティクル等によって加工槽101内が汚染されないようになっている。前記加工槽101内には、上部にZ軸駆動系104に接続された高圧力ノズル1を設け、下部に超純水静圧支持によって水平移動且つ回転可能に設けた試料台105を設け、それに被加工物2を固定し、前記高圧力ノズル1に対向させている。前記駆動機構部102には、X軸駆動系106とY軸駆動系107によって水平移動可能に設けたXYテーブル108を有し、該XYテーブル108にθ軸駆動系109を設けている。そして、前記試料台105の下面に固定した永久磁石110とθ軸駆動系109に固定した永久磁石111とを前記隔壁103を介して対面させて磁気的に結合し、X-Y-θ駆動系による変位を永久磁石111、永久磁石110を介して試料台105に伝達している。このように、各駆動系によって高圧力ノズル1と被加工物2とはX-Y-Z-θ軸方向に相対的に変位可能となり、高圧力ノズル1によって被加工物2を所定の形状に加工ができるようになっている。
【0022】
そして、本加工装置100では、高圧力ノズル1から噴射される超純水と、試料台105の超純水静圧支持部から加工槽101内に流入する超純水と同量の超純水を加工槽101から液相分離して抜き取るシステムが備えられ、抜き取られた超純水は精製装置により、不純物濃度を極限まで低減させた後、再度静圧支持部に送られる。本システムにより、加工槽101内の構造物から溶出する極微量の金属イオン等の除去までが可能になっている。
【0023】
【発明の効果】
以上にしてなる本発明の高速剪断流によるEEM加工方法によれば、必要な領域のみに被加工物の表面に沿った高速剪断流を発生できるため、EEM(Elastic Emission Machining)による加工装置の小型化が可能であり、また従来のEEM装置のように高分子材料を使用しないので、加工液が有機物に汚染されることがなく、十分に大きなギャップでの加工が可能であるので、流れを安定させるためのギャップ制御が極めて容易であり、また粗粒混入等の外乱に対して安定である。それにより、被加工物の加工面原子を原子単位に近いオーダで除去し、歪み、クラック及び熱変質等を全く生じさせずに加工を進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 高圧ノズルから被加工物表面に1mmのギャップで直角に超純水を噴出した場合の圧力と速度成分のシミュレーション結果を示し、(a) はZ方向速度成分、(b) は圧力分布、(c) はR方向速度成分をそれぞれ示している。
【図2】 高圧ノズルから被加工物表面に2mmのギャップで直角に超純水を噴出した場合の圧力と速度成分のシミュレーション結果を示し、(a) はZ方向速度成分、(b) は圧力分布、(c) はR方向速度成分をそれぞれ示している。
【図3】 加工液を直接噴射する高圧力ノズルの概念を示す簡略断面図であり、(a) は垂直入射タイプ、(b) は斜め入射タイプをそれぞれ示している。
【図4】 高圧力ノズルから超純水のみ噴射し、別に設けた供給管から吐出した濃縮加工液を混合するタイプの概念を示す簡略断面図であり、(a) は高圧力ノズルの噴出口内に供給管を設けたタイプ、(b) は高圧力ノズルの先端側方に供給管を設けたタイプをそれぞれ示している。
【図5】 加工液を回収する機能を備えたノズル構造を示した簡略断面図であり、(a) は垂直入射タイプの高圧力ノズルの周囲に回収板を配した構造、(b) は斜め入射タイプの高圧力ノズルの下流側に回収板を配した構造をそれぞれ示している。
【図6】 高圧力の超純水供給システムの簡略配管図である。
【図7】 本発明の方法を採用した加工装置を一部破断して示した簡略斜視図である。
【符号の説明】
1 高圧力ノズル
2 被加工物
3 噴出口
4 供給管
5 回収板(回収手段)
10 ポンプ
11,12 加圧部
13 レギュレータ
14,15,17,18,21,22,23,24 バルブ
16 超純水供給装置
19,20 隔膜
100 加工装置
101 加工槽
102 駆動機構部
103 隔壁
104 Z軸駆動系
105 試料台
106 X軸駆動系
107 Y軸駆動系
108 XYテーブル
109 θ軸駆動系
110,111 永久磁石
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6