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明細書 :液体ヘリウム再凝縮装置およびその装置に使用するトランスファーライン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3446883号 (P3446883)
公開番号 特開2000-193364 (P2000-193364A)
登録日 平成15年7月4日(2003.7.4)
発行日 平成15年9月16日(2003.9.16)
公開日 平成12年7月14日(2000.7.14)
発明の名称または考案の名称 液体ヘリウム再凝縮装置およびその装置に使用するトランスファーライン
国際特許分類 F25J  1/02      
FI F25J 1/02
請求項の数または発明の数 13
全頁数 7
出願番号 特願平10-369064 (P1998-369064)
出願日 平成10年12月25日(1998.12.25)
審査請求日 平成12年8月31日(2000.8.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】武田 常広
個別代理人の代理人 【識別番号】100099265、【弁理士】、【氏名又は名称】長瀬 成城
審査官 【審査官】中野 孝一
参考文献・文献 特開 昭63-129280(JP,A)
特開 平10-245208(JP,A)
特開 昭59-204286(JP,A)
特開 平11-118349(JP,A)
実開 昭55-126168(JP,U)
実開 昭55-94688(JP,U)
実開 昭55-94687(JP,U)
調査した分野 F25J 1/02
特許請求の範囲 【請求項1】
液体ヘリウム貯留槽と、該貯留槽で気化したヘリウムガスを回収し同ヘリウムガスを冷却および液化する冷凍機とを有し、同冷凍機によって冷却した冷却ヘリウムガスあるいは液化した液体ヘリウムを前記貯留槽内に戻すことができるようにした液体ヘリウム再凝縮装置において、同装置は前記液体ヘリウム貯留槽内で昇温した高温ヘリウムガスを前記冷凍機に供給し前記冷凍機で冷却ヘリウムガスにして前記貯留槽内の上部に供給するラインと、前記液体ヘリウム貯留槽内の液体ヘリウムの液面近傍の低温ヘリウムガスを前記冷凍機に供給し前記冷凍機で液体ヘリウムにして前記貯留槽内に供給するラインとを備えてなることを特徴とする液体ヘリウム再凝縮装置。

【請求項2】
前記冷凍機と前記液体ヘリウム貯留槽内の上部とを接続するラインと、前記低温ヘリウムガスを前記冷凍機に供給し前記冷凍機で液体ヘリウムにして前記貯留槽内に供給するラインとを周囲が真空層で断熱された一つの管内に配置したことを特徴とする請求項1に記載の液体ヘリウム再凝縮装置。

【請求項3】
前記配置は、液体ヘリウムを供給するラインを中心とし、その周囲に低温ヘリウムガスを冷凍機に供給するラインを配置し、さらにその周囲に冷凍機で冷却された冷却ヘリウムガスを供給するラインを配置した3重管となるように形成したことを特徴とする請求項2に記載の液体ヘリウム再凝縮装置。

【請求項4】
前記配置は、液体ヘリウムを供給するラインと、低温ヘリウムガスを冷凍機に供給するラインと、冷凍機で冷却された冷却ヘリウムガスを供給するラインとを互いに並列に配置してなることを特徴とする請求項2に記載の液体ヘリウム再凝縮装置。

【請求項5】
前記ラインは夫々が真空層を周囲に有する管で形成されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の液体ヘリウム再凝縮装置。

【請求項6】
前記冷凍機と前記液体ヘリウム貯留槽内の上部とを接続するラインと、前記低温ヘリウムガスを前記冷凍機に供給し前記冷凍機で液体ヘリウムにして前記貯留槽内に供給するラインとを分離して配置し、各ラインを真空層で断熱した管として構成したことを特徴とする請求項1に記載の液体ヘリウム再凝縮装置。

【請求項7】
前記冷凍機で液化された液体ヘリウムはその周囲を低温ヘリウムガスによって高温部と断熱した状態で貯留槽に供給されるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の液体ヘリウム再凝縮装置。

【請求項8】
前記高温ヘリウムガスの一部を冷凍機で液化し、前記貯留槽に供給可能にしたことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の液体ヘリウム再凝縮装置。

【請求項9】
前記冷凍機によって液化された液化ヘリウムは気液分離器を通して貯留槽内に供給されるようにしたことを特徴とする請求項1~請求項8に記載の液体ヘリウム再凝縮装置。

【請求項10】
液体ヘリウム貯留槽で気化したヘリウムガスを回収し、同ヘリウムガスを冷却および液化し再び液体ヘリウム貯留槽に供給するヘリウム再凝縮方法において、前記液体ヘリウム貯留槽内で昇温した高温ヘリウムガスを冷凍機に供給し、同冷凍機で冷却ヘリウムガスにして前記貯留槽内の上部に供給し、また前記液体ヘリウム貯留槽内の液体ヘリウムの液面近傍の低温ヘリウムガスを冷凍機に供給し同冷凍機で液体ヘリウムにして前記貯留槽内に供給してなることを特徴とする液体ヘリウム再凝縮方法。

【請求項11】
前記液体ヘリウムを、少なくとも低温ヘリウムガスまたは冷却ヘリウムガスの一方のガスによって高温部に直接触れないようにしながら前記液体ヘリウム貯留槽内に供給するようにした請求項10に記載の液体ヘリウム再凝縮方法。

【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の液体ヘリウム再凝縮方法に使用するトランスファーラインであって、前記トランスファーラインは、液体ヘリウムを供給するラインと、低温ヘリウムガスを供給するラインと、前記低温ヘリウムガスよりも高温の冷却ヘリウムガスを供給するラインとを備え、前記ラインは夫々が真空層を外周に有する管で形成されているとともに、各管は周囲が真空層で断熱された一つの管内に配置して構成されていることを特徴とするトランスファーライン。

【請求項13】
請求項10または請求項11に記載の液体ヘリウム再凝縮方法に使用するトランスファーラインであって、前記トランスファーラインは、液体ヘリウムを供給するラインを中心に、その周囲に低温ヘリウムガスを供給するラインを配置し、さらにその周囲に前記低温ヘリウムガスよりも高温の冷却ヘリウムガスを供給するラインを配置し、前記ラインは夫々が真空層を外周に有する管で構成されていることを特徴とするトランスファーライン。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、液体ヘリウム再凝縮装置およびその装置に使用するトランスファーラインに関するものであり、具体的には、脳磁気計測システム内で使用する脳磁計を極低温に維持するための液体ヘリウム貯留槽において、同槽から気化したヘリウムガスを再び液体ヘリウム貯留槽に循環利用できる液体ヘリウム再凝縮装置およびトランスファーラインに関するものである。また、この液体ヘリウム再凝縮装置およびトランスファーラインは前記脳磁気計測システム以外にも心磁図やMRIを測定する装置や、極低温における様々の材料物性の開発評価研究等に利用可能である。

【10】
さらに、冷凍機で液化したヘリウムを供給するラインの周囲に、冷却したヘリウムガスや低温のヘリウムガスを流すことにより、液体ヘリウムを供給するラインを外部の高温部と遮断し、輸送中の液体ヘリウムの気化を防止しているため、ヘリウムガスを液化するためのエネルギロスがなくなり、効率の良いヘリウム再凝縮装置を得ることができる。

【11】

【課題を解決するための手段】このため、本発明が採用した課題解決手段は、液体ヘリウム貯留槽と、該貯留槽で気化したヘリウムガスを回収し同ヘリウムガスを冷却および液化する冷凍機とを有し、同冷凍機によって冷却した冷却ヘリウムガスあるいは液化した液体ヘリウムを前記貯留槽内に戻すことができるようにした液体ヘリウム再凝縮装置において、同装置は前記液体ヘリウム貯留槽内で昇温した高温ヘリウムガスを前記冷凍機に供給し前記冷凍機で冷却ヘリウムガスにして前記貯留槽内の上部に供給するラインと、前記液体ヘリウム貯留槽内の液体ヘリウムの液面近傍の低温ヘリウムガスを前記冷凍機に供給し前記冷凍機で液体ヘリウムにして前記貯留槽内に供給するラインとを備えてなることを特徴とする液体ヘリウム再凝縮装置であり、前記冷凍機と前記液体ヘリウム貯留槽内の上部とを接続するラインと、前記低温ヘリウムガスを前記冷凍機に供給し前記冷凍機で液体ヘリウムにして前記貯留槽内に供給するラインとを周囲が真空層で断熱された一つの管内に配置したことを特徴とする液体ヘリウム再凝縮装置であり、前記配置は、液体ヘリウムを供給するラインを中心とし、その周囲に低温ヘリウムガスを冷凍機に供給するラインを配置し、さらにその周囲に冷凍機で冷却された冷却ヘリウムガスを供給するラインを配置した3重管となるように形成したことを特徴とする液体ヘリウム再凝縮装置であり、前記配置は、液体ヘリウムを供給するラインと、低温ヘリウムガスを冷凍機に供給するラインと、冷凍機で冷却された冷却ヘリウムガスを供給するラインとを互いに並列に配置してなることを特徴とする液体ヘリウム再凝縮装置であり、前記ラインは夫々が真空層を周囲に有する管で形成されていることを特徴とする液体ヘリウム再凝縮装置であり、前記冷凍機と前記液体ヘリウム貯留槽内の上部とを接続するラインと、前記低温ヘリウムガスを前記冷凍機に供給し前記冷凍機で液体ヘリウムにして前記貯留槽内に供給するラインとを分離して配置し、各ラインを真空層で断熱した管として構成したことを特徴とする液体ヘリウム再凝縮装置であり、前記冷凍機で液化された液体ヘリウムはその周囲を低温ヘリウムガスによって高温部と断熱した状態で貯留槽に供給されるようにしたことを特徴とする液体ヘリウム再凝縮装置であり、前記高温ヘリウムガスの一部を冷凍機で液化し、前記貯留槽に供給可能にした特徴とする液体ヘリウム再凝縮装置であり、前記冷凍機によって液化された液化ヘリウムは気液分離器を通して貯留槽内に供給されるようにしたことを特徴とする液体ヘリウム再凝縮装置であり、液体ヘリウム貯留槽で気化したヘリウムガスを回収し、同ヘリウムガスを冷却および液化し再び液体ヘリウム貯留槽に供給するヘリウム再凝縮方法において、前記液体ヘリウム貯留槽内で昇温した高温ヘリウムガスを冷凍機に供給し、同冷凍機で冷却ヘリウムガスにして前記貯留槽内の上部に供給し、また前記液体ヘリウム貯留槽内の液体ヘリウムの液面近傍の低温ヘリウムガスを冷凍機に供給し同冷凍機で液体ヘリウムにして前記貯留槽内に供給してなることを特徴とする液体ヘリウム再凝縮方法であり、前記液体ヘリウムを、少なくとも低温ヘリウムガスまたは冷却ヘリウムガスの一方のガスによって高温部に直接触れないようにしながら前記液体ヘリウム貯留槽内に供給するようにした液体ヘリウム再凝縮方法であり、前記液体ヘリウム再凝縮方法に使用するトランスファーラインであって、前記トランスファーラインは、液体ヘリウムを供給するラインと、低温ヘリウムガスを供給するラインと、前記低温ヘリウムガスよりも高温の冷却ヘリウムガスを供給するラインとを備え、前記ラインは夫々が真空層を外周に有する管で形成されているとともに、各管は周囲が真空層で断熱された一つの管内に配置して構成されていることを特徴とするトランスファーラインであり、前記液体ヘリウム再凝縮方法に使用するトランスファーラインであって、前記トランスファーラインは、液体ヘリウムを供給するラインを中心に、その周囲に低温ヘリウムガスを供給するラインを配置し、さらにその周囲に前記低温ヘリウムガスよりも高温の冷却ヘリウムガスを供給するラインを配置し、前記ラインは夫々が真空層を外周に有する管で構成されていることを特徴とするトランスファーラインである。

【12】

【実施の形態】以下図面を参照して本発明に係わる多重循環式液体ヘリウム再凝縮装置を説明すると図1は同装置の概略構成図である。図1において、1は磁気シールドルーム内に配置されSQUIDを収容するための液体ヘリウム貯留槽、1aは同槽内に配置した気液分離器、1bは槽内の液体ヘリウムの液面を測定する液面計、1cは貯留槽1内で約300°Kに昇温した高温ヘリウムガスを回収するための管、2は管1cを介して回収した高温ヘリウムガスを小型冷凍機に供給する流量調節ポンプ、4は流量調整弁、5は最近進歩の著しい4KGM冷凍機、6は同冷凍機の第1熱交換器、7は第2熱交換器、6a、7aは万一貯留槽内の液体ヘリウムが不足した時に貯留槽内から回収した高温ヘリウムガスあるいはヘリウム補給用ボンベ10からのヘリウムガスをライン20を経由して液化するための第3熱交換器、第4熱交換器、8はヘリウムコンプレッサー、9は冷凍機5によって液化された液体ヘリウムを液体ヘリウム貯留槽1に供給する管9aと貯留槽1内から低温ヘリウムガスを回収するための管9bと冷凍機5によって約40°Kにまで冷却されたヘリウムガスを液体ヘリウム貯留槽1に供給する管9cとを束ねてなるトランスファーライン、10は緊急時にヘリウムガス不足を補うことができるヘリウム補給用ボンベ、11はトランスファーライン9に接続されるとともに液体ヘリウム貯留槽1に配置される挿入管であり、各機器は、図示のように流れ方向を矢印で示している流路で連通されている。また、前記装置内の流路中には、圧力計Pが図のように配置されている。

【13】
前記トランスファーラインの構造について説明すると、トランスファーラインには種々の形態のものが考えられるが、ここでは図2、図3を参照して二つの例を説明する。図2はトランスファーラインの一部破断側面図、図3(イ)は図2中のA-A断面図、同(ロ)は異なる構造からなるトランスファーラインの断面図である。第1の例は、図3中(イ)に示すように周囲に真空層9dを有しその中心部に約4°Kの液体ヘリウムが流れる流路を備えた管9aと、周囲に真空層9dを有しその中心部に貯留槽1内から回収した約10°Kの低温ヘリウムガスが流れる流路を備えた管9bと、周囲に真空層9dを有しその中心部に冷凍機によって約40°Kに冷却された冷却ヘリウムガスが流れる流路を備えた管9cとを並列に配置し、さらにこれらの三つの管9a、9b、9cの周囲に断熱用の真空層9dを有している大径の管9Aを配置して構成したものであり、大径の管9A内には断熱材13が配置されている。

【14】
また、第2の例は、トランスファーライン9を3重管として構成したものであり、周囲に真空層9dを有する大径の管9’cの中心部に周囲に真空層9dを有する中径の管9’bを配置し、さらに中径の管9’bの中心部に周囲に真空層9dを有する小径の管9’aを配置し、中径の管9’bの周囲に約40°Kの冷却ヘリウムガスを、小径の管9’aの周囲に約10°Kの低温ヘリウムガスを、さらに、小径の管9’aの中心部に約4°Kの液体ヘリウムを流すことができるようにしてある。前記(イ)の例の場合には、三つの管を束ねることができるため、前記(ロ)のように3重管とする場合に比較してトランスファーラインの外径を小さくできるというメリットがある。

【15】
前記いずれのトランスファーライン9も貯留槽側端部は図1に示すように液体ヘリウム貯留槽1に配置される挿入管11に接続され、さらに挿入管11の端部には気液分離器1aが設けられている。この気体液分離器1aは本発明に関わる装置では必須の構成要件ではなく、液体ヘリウム輸送中に生じる僅かなヘリウムガスが貯留槽内の温度平衡を乱すことを防止する必要がある場合に設けることが望ましい。トランスファーライン9内に配置されている三つの管のうち、冷凍機によって液化された液体ヘリウムを貯留槽1に供給する管9aの端部は気液分離器1aに接続され、さらに、貯留槽1内の低温ヘリウムガスを回収し冷凍機に供給する管9bの端部は、槽内の可能な限りの低温域(約4°Kに近い低温域)から低温ヘリウムガスを回収できるよう挿入管11の気液分離器1aの近く、もしくは、貯留槽1内の液体ヘリウムの液面近傍に配置され、さらに、冷凍機によって約40°Kに冷却された冷却ヘリウムガスを貯留槽1内に供給する管9cの端部は挿入管11の上部(貯留槽1内の上部)において貯留槽1に開放されている。

【16】
以上のように構成された液体ヘリウム再凝縮装置の作動を説明する。液体ヘリウム貯留槽1内に貯留された液体ヘリウムは、同槽内で約4°Kの液体からガス化され、さらに、約300°Kの常温状態になるまで昇温しながら顕熱によって同槽1内の冷却作用を行う。

【17】
約300°Kに昇温した高温ヘリウムガスは、貯留槽1の上部に配置したヘリウムガス回収管1cを介して流量調節ポンプ2で吸引され、その全量が小型冷凍機5の第1熱交換器6に送られる。第1熱交換器6では、ヘリウムガスを約40°Kまで冷却し、冷却したヘリウムガスをトランスファーライン内の管9cを通して液体ヘリウム貯留槽1内の上部に供給する。液体ヘリウム貯留槽1に送られた約40°Kの冷却ヘリウムガスは同槽内で約300°Kに昇温するまで間、顕熱により効率的に液体ヘリウム貯留槽1を冷却する。また、貯留槽1の下部は液体ヘリウムの気化により常に約4°Kに保持され、上記ヘリウムガスが上部からの熱侵入を押さえることから液体ヘリウム蒸発量が押さえられる。なお、貯留槽の保冷性能を上げるためには貯留槽1内に約40°K以下のできるだけ冷えた冷却ヘリウムガスを供給することが望ましいが、冷凍能力がその分多く必要となり、コスト面で不利となる。

【18】
また、貯留槽1内の液体ヘリウムの液面近傍に開口部を有する管9bから約10°Kの低温ヘリウムガスを回収し小型冷凍機5の第2熱交換器7で液化する。液化されたヘリウムはトランスファーライン9内の管9aを通って必要に応じて気液分離器1aを介して貯留槽1内に供給される。こうして同槽内で蒸発によって減少した分の液体ヘリウムは約10°Kの低温ヘリウムガスを小型冷凍機5で液化することにより低いエネルギーコストで常時補われる。また、トランスファーライン9内を流れる液体ヘリウムは同ライン9内を通る冷却ヘリウムガスあるいは低温ヘリウムガスによって高温部から保護されながら移送されるため、液体ヘリウムの気化が極力押さえられる。なお、液化するために回収する低温ヘリウムガスは貯留槽1内のできるだけ温度の低いヘリウムガスを吸引すると、冷凍機による液化効率がよくなり、冷凍機に小型のものを使用でき、ランニングコストが少なくできる。

【19】
上記実施形態では、冷凍機で約40°Kにまで冷却したヘリウムガスを貯留槽に供給する管9c、貯留槽1内から回収した約10°Kの低温ヘリウムガスを移送する管9b、液体ヘリウムを移送する管9aをトランスファーライン9内に配置したものについて説明したが、冷却ヘリウムガスを貯留槽1に供給する管9cのみをトランスファーラインから分離し、独立した断熱管として構成することも可能である。また、上記実施形態では貯留槽1内で約300°Kに昇温した高温ヘリウムガスを全量約40°Kまで冷却し、冷却ヘリウムガスをトランスファーライン9内の流路を通して液体ヘリウム貯留槽1内の上部に供給する構成としているが、貯留槽1内に供給する液体ヘリウムの補充量が不足する場合には、流量調整弁4を操作し、図中20で示すラインを通して高温ヘリウムガスの一部を冷凍器5内の前述とは別の第1熱交換器6a、第2熱交換器7aを通して液化し、前述の管9aを介して貯留槽1に供給することも可能である。

【2】

【従来の技術】人間の脳から発生する磁界を検出する脳磁気計測システムの開発が進められている。このシステムでは脳の活動を高時空間分解能で非侵襲的に計測できるSQUID(超電導量子干渉素子)が利用されており、このSQUIDは断熱された槽内に貯留されている液体ヘリウムに侵漬され、冷却された状態で用いられる。

【20】
以上のように、上記液体ヘリウム再凝縮装置では、液体ヘリウム貯留槽で約300°Kにまで昇温したヘリウムガスを回収し、回収ヘリウムガスの全量を冷凍機の第1段目の冷凍サイクルを利用して約40°Kにまで冷却して液体ヘリウム貯留槽に還流し、また、貯留槽内の液体ヘリウムの液面近傍に開口部を有する管からは約10°Kの低温ヘリウムガスを回収し小型冷凍機の第2熱交換器7を経て液化し、蒸発して不足した分の液体ヘリウムを補充することができるようにしたため、約40°Kのヘリウムガスが約300°Kにまで昇温して行く間に奪う大量の熱量によって液体ヘリウム貯留槽を冷却することができ、貯留槽下部は液体ヘリウムによって約4°Kに保たれるため冷却効果としては従来の装置と遜色のない装置とすることができる。また、貯留槽内で蒸発し不足した液体ヘリウムは、貯留槽内の液面に近い冷えた低温ヘリウムガスを回収して液化し貯留槽に戻す構成としたため、液体ヘリウムを生成する際のエネルギーロスを極めて小さくでき、高効率、かつ、低コストの液体ヘリウム再凝縮装置を構成することができる。

【21】
また、冷凍機で液化された液体ヘリウムは、少なくとも前記冷凍機で冷却されたヘリウムガスあるいは貯留槽から回収した低温ヘリウムガスによって高温部と接触することを無くした状態で移送されるため、移送中に液体ヘリウムが気化する量を大幅に低減できる。また、約40°Kのヘリウムガスを約4°Kの液体ヘリウムに凝縮するまでに必要とするエネルギーは莫大であるが、本発明では約10°Kの低温ヘリウムガスを液体ヘリウムとするため、液化するためのエネルギーを少なく押さえることができ、小型の冷凍機を使用することができる。

【22】
なお、上記実施形態中で説明した小型冷凍器に代えて他の冷凍機を使用することができることは当然であり、多段の冷凍機を用いてさらに多くの温度のガスを還流させる方法を含むこともでき、また、本システムで液体ヘリウムを補うための流量調整弁等の制御は液体ヘリウム貯留槽内に配置した液面計等のセンサからの情報により図示せぬ制御機器によって制御することができる。また、装置内に使用する機器の材質等は適宜最適なものを選択して使用することができる。上記例では液体ヘリウム、冷却ヘリウムガスを生成するために一台の小型冷凍器を使用しているが、パワーの小さい冷凍機を機能別に複数使用することも可能である。さらに、上記実施形態では冷凍機において冷却するヘリウムガスの温度は約40°Kとしているが、この温度に限ることはなく目的に応じて種々の温度のヘリウムガスを使用することができる。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいかなる形でも実施できる。そのため、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず限定的に解釈してはならない。

【23】

【発明の効果】以上詳細に説明したように本発明によれば、貯留槽内の液体ヘリウムの液面近傍に開口部を有する管から低温ヘリウムガス(約10°K)を回収し小型冷凍機で液化し、貯留槽内で蒸発して不足した液体ヘリウムを補充することができるようにしたため、液体ヘリウムを生成する際のエネルギーロスを極めて小さくでき、高効率、かつ、低ランニングコストの液体ヘリウム再凝縮装置を構成することができる。約40°Kのヘリウムガスが約300°Kにまで昇温する間に必要とする大量の顕熱を液体ヘリウム貯留槽を冷却するために有効利用できるため、従来装置のようにヘリウムガスを全量液体ヘリウムにする必要がなくなり、従来システムに比較して多大なエネルギー、費用を節約できる。また、ヘリウムを完全回収して再利用できるため、煩雑なヘリウムガスの補充作業を不要にできるとともに液体ヘリウムに掛かる費用を大幅に低減できる。冷凍機で液化された液体ヘリウムは、前記冷凍機で冷却されたヘリウムガスによって高温部と接触することを無くした状態で移送されるようにしてあるため移送中に液体ヘリウムが気化することを防止でき、安定した状態で液体ヘリウムを槽内に還流することができる。等の優れた効果を奏することができる。

【3】
上記システムに使用している従来からの液体ヘリウム貯留槽では、同槽から蒸発したヘリウムガスはほとんどの場合大気に開放している。しかしこの方式では1リットル当たり1200円以上する高価なヘリウムを多量に無駄に消費するため経済的に極めて不利である。また、液体ヘリウム貯留槽で減少した分の液体ヘリウムを液体ヘリウムタンクから補う必要があるが、液体ヘリウムを補充するための作業は極めて煩雑である上、業者に依頼する場合にはコストが嵩む等の問題がある。

【4】
上記背景から最近では、液体ヘリウム貯留槽で気化したヘリウムガスを全量回収し再凝縮して液化し、再び液体ヘリウム貯留槽内に戻す液体ヘリウム再循環システムの開発が進められている。こうした液体ヘリウム再循環システムの一例の概略構成を図4を参照して簡単に説明すると、図中101は脳磁計を収容している液体ヘリウム貯留槽、102は貯留槽101内で気化したヘリウムガスを回収するドライポンプ、103はヘリウムガス内に混入している水分を除去する乾燥器、104は流量調整弁、105は精製器、106は補助冷凍機、107は同補助冷凍機106の第1熱交換器、108は再凝縮冷凍機、109は再凝縮冷凍機108の再凝縮熱交換器であり、液体ヘリウム貯留槽101で気化し昇温した約300°Kのヘリウムガスはドライポンプ102で吸引され、乾燥器103、精製器105を経て補助冷凍機106で約40°Kの極低温ヘリウムガスに冷却され、さらに再凝縮冷凍機108の再凝縮熱交換器109で約4°Kの液体ヘリウムに液化され、ここからトランスファーライン110を経由して液体ヘリウム貯留槽に供給される構成となっている。

【5】
この液体ヘリウム再循環システムは基本的に、液体ヘリウム貯留槽内で蒸発したヘリウムガスを全量回収し再利用する方式であるため、従来のように大気開放したり、あるいはガスバッグ等に回収して再液化を行う方法に比較して、ヘリウムの使用量が非常に少なく、極めて経済的、かつ、効率的であり、最近では積極的にその実用化が進められている。また、不足分の液体ヘリウムを充填する作業もほとんど必要ないため装置の維持管理の面で取扱いが容易である。

【6】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような再循環システムでは次のような改善すべき問題点がある。即ち、液体ヘリウムはSQUIDなどを冷却するためには不可欠であるが、ヘリウムガスを液体ヘリウムにするためには、冷凍機を作動するための非常に大きな電気エネルギーが必要となり、また、冷凍機用の圧縮ポンプを冷却するために大量の水が必要となる。また、冷凍機で液化した液体ヘリウムをトランスファーラインを経由して液体ヘリウム貯留槽に循環する際に、液体ヘリウムを高温部と完全に隔離することが難しく液体ヘリウムが、移送途中で気化する割合が高くなり移送効率が悪くなる。よって装置の維持管理に莫大な運転コストが必要となり、結果的に大気開放と同程度のコストがかかっている。このためさらに経済効率に優れた新しい形態の液体ヘリウム再循環システムの開発が必要とされている。

【7】
上記のような背景の中で、本発明者は、液体ヘリウムは約4°Kの液化状態から約4°Kのガス状態に状態変化する際に必要とする熱量(気化熱)よりも、約4°Kのガスから約300°Kのガスに昇温するまでに必要とする熱量(顕熱)の方が遙かに大きいこと、同時に高温ヘリウムガスを低温ヘリウムガスに冷却するのは、それほどエネルギーを必要としないが、低温ヘリウムガスを液体ヘリウムに液化する際には大きなエネルギーを必要とすることに着目して、本発明を成すに至った。

【8】
即ち、本発明はヘリウムを循環する際に、液体ヘリウム貯留槽内の約300°Kにまで昇温した高温ヘリウムガスを回収し、冷凍機で比較的容易に冷却できる温度、例えば約40°Kの冷却ヘリウムガスにして前記貯留槽内の上部に供給し、また前記液体ヘリウム貯留槽内の液体ヘリウムの液面近傍で冷えている低温ヘリウムガス、例えば約10°Kの低温ヘリウムガスを回収し、冷凍機で約4°Kの液体ヘリウムにして前記貯留槽内に供給し、貯留槽内で蒸発した分の液体ヘリウムを容易に補充できる新しい液体ヘリウム再循環装置を提供し、上記従来の再循環システムのもつ問題点を解決することを目的とする。

【9】
こうして本装置では、液体ヘリウム貯留槽内では冷却ヘリウムガスの顕熱によって大量の熱を奪うことができ、蒸発する液体ヘリウムを極めて少量に押さえることが可能となる。また約300°Kの高温ヘリウムガスから約40°Kの冷却ヘリウムガスにまで冷却するエネルギーは、約40°Kのヘリウムガスから約4°Kの液体ヘリウムとするまでに必要とするエネルギーに比較して格段に少なくてすむことから、本装置では従来のように回収したヘリウムガスを全量液化する従来の方法に比較してヘリウムガスを液化するための冷凍機運転等に必要なエネルギーを大幅に低下させることが可能となり極めて経済的である。また、本装置によれば液体ヘリウム貯留槽内に貯留されている液体ヘリウムの液面近傍の低温ヘリウムガスを回収し液化することでヘリウムガスを液化するためのエネルギーを大幅に節約することができランニングコストの低減を図ることができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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