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明細書 :光学レンズ接合装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3422710号 (P3422710)
公開番号 特開2000-206387 (P2000-206387A)
登録日 平成15年4月25日(2003.4.25)
発行日 平成15年6月30日(2003.6.30)
公開日 平成12年7月28日(2000.7.28)
発明の名称または考案の名称 光学レンズ接合装置
国際特許分類 G02B  7/02      
FI G02B 7/02 A
G02B 7/02
請求項の数または発明の数 7
全頁数 6
出願番号 特願平11-011070 (P1999-011070)
出願日 平成11年1月19日(1999.1.19)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 1998年10月1日~10月4日 社団法人日本機械学会主催の「日本機械学会第76期全国大会」において文書をもって発表
審査請求日 平成13年2月26日(2001.2.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】新田 勇
個別代理人の代理人 【識別番号】100107010、【弁理士】、【氏名又は名称】橋爪 健
審査官 【審査官】峰 祐治
参考文献・文献 実開 平3-309(JP,U)
特表 平5-506110(JP,A)
調査した分野 G02B 7/02
特許請求の範囲 【請求項1】
第1の径を有する第1の光学レンズと、
前記第1の光学レンズの径と異なる径を有する第2の光学レンズと、
前記第1及び第2の光学レンズを内部に収容する鏡筒と、
熱膨張係数が前記鏡筒よりも大きい高分子材料で形成され、前記第1及び第2の光学レンズの径に対応して異なる内径の接合部分と、前記第1及び第2の光学レンズをその外周の幅より狭い接合幅で接合するための接合面を有し、前記鏡筒と前記第1及び第2の光学レンズとを接合するための接合部材とを備えた光学レンズ接合装置。

【請求項2】
第1の径を有する第1の光学レンズと、
前記第1の光学レンズの径と異なる径を有する第2の光学レンズと、
前記第1及び第2の光学レンズを内部に収容する鏡筒と、
熱膨張係数が前記鏡筒よりも大きい高分子材料で形成され、前記第1及び第2の光学レンズの径に対応して異なる内径の接合部分と、ひも状の部材を通して前記接合部材内に前記第1及び第2の光学レンズを固定するための円周方向に溝を有し、前記鏡筒と前記第1及び第2の光学レンズとを接合するための接合部材とを備えた光学レンズ接合装置。

【請求項3】
第1の径を有する第1の光学レンズと、
前記第1の光学レンズの径と異なる径を有する第2の光学レンズと、
前記第1及び第2の光学レンズを内部に収容する鏡筒と、
熱膨張係数が前記鏡筒よりも大きい高分子材料で形成され、前記第1及び第2の光学レンズの径に対応して異なる内径の接合部分と、一部又は全部の厚さにわたって半径方向にスリットを有し、前記鏡筒と前記第1及び第2の光学レンズとを接合するための接合部材とを備えた光学レンズ接合装置。

【請求項4】
前記第1及び第2の光学レンズは、同形及び/又は異形の形状の複数のレンズ群であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の光学レンズ接合装置。

【請求項5】
前記接合部材は、ひも状の部材を通して前記接合部材内に前記第1及び第2の光学レンズを固定するための円周方向に溝を備えたことを特徴とする請求項1又は3に記載の光学レンズ接合装置。

【請求項6】
前記接合部材は、一部又は全部の厚さにわたって半径方向にスリットを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学レンズ接合装置。

【請求項7】
前記接合部材は、前記第1及び第2の光学レンズをその外周の幅より狭い接合幅で接合するための接合面を備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の光学レンズ接合装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は、光学レンズ接合装置に係り、特に、一体型のプラスチックリング等の接合部材を用いることにより光学レンズを鏡筒に組み込むようにした光学レンズ接合装置に関する。

【02】

【従来の技術】近年、レーザープリンターやコピー機、レーザー顕微鏡など、レーザーの応用分野の拡大に伴って、レーザー応用装置の高解像度化・高精度化が望まれてきている。このような高解像度化・高精度化のためには、レーザービーム径を広い走査幅にわたって安定的に絞り込むことが必要である。一般的に、顕微鏡は、解像度を上げるとその視野は狭くなり、例えばレーザー顕微鏡もその例外ではない。また、高解像度化の実現のためには、例えばレーザースキャナー等の高性能化が必要である。そのために光学系の中で、レーザーを広い走査幅にわたって結像する走査用レンズの高精度化が重要となってくる。

【03】
図6は、従来技術における走査用レンズ系の縦断面図を示す。鏡筒600は、図中右側のレーザーが入射する方向から順にレンズ61~66を備えている。各レンズ61~66は、すきまばめによる接合方法で鏡筒600内に接合されている。これらの各レンズ61~66は、レーザーを矢印1方向から入射し、通過させてイメージプレート2上のイメージポイント3に結像するものである。

【04】

【発明が解決しようとする課題】上述のような高解像度化・高精度化を実現するためには、走査レンズ群の位置決めを高精度にする必要がある。しかしながら、従来技術では走査レンズ群と鏡筒の接合方法は、基本的にすきまばめでするため、接合時に各レンズは偏心が生じる場合がある。そのため、従来においては、レーザーの絞り込み精度に限界が生じていた。また、この方法では量産が難しく、加えて接合時に各レンズが偏心しやすいため、レーザーの結像精度に限界が生じる。また、レンズと鏡筒では熱膨張係数に大きな差があることにより、温度変化の影響をうけてしまい、結像性能がさらに悪くなる。

【05】
本発明では、レンズの偏心を最小限におさえるために、一例としてシュリンクフィッタ(接合部材)を用いた締りばめによる光学レンズ接合装置を提供し、レーザー応用装置等の高解像度化・高精度化を達成することを目的とする。

【06】
本発明は、レンズ群と鏡筒を一体型の高分子材料の接合部材を用いることにより、締りばめによるレンズの接合を可能とした光学レンズ接合装置を提供することを目的とする。本発明は、鏡筒内のレンズ群が異径又は同径でも、異形又は同形の形状でも、複数又は単数でも締りばめを適用することができる光学レンズ接合装置を提供することを目的とする。また、本発明は、レンズ群を接合部材に挿入する時点でレンズの軸間距離を正確に位置決めすることができ、その上で鏡筒にレンズを組み込むことができるようにした光学レンズ接合装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、レンズの偏心を改善し、分解や再組立を容易に行うことができる光学レンズ接合装置を提供することを目的とする。

【07】

【課題を解決するための手段】本発明の解決手段によると、第1の径を有する第1の光学レンズと、前記第1の光学レンズの径と異なる径を有する第2の光学レンズと、前記第1及び第2の光学レンズを内部に収容する鏡筒と、熱膨張係数が前記鏡筒よりも大きい高分子材料で形成され、前記第1及び第2の光学レンズの径に対応して異なる内径の接合部分を有し、前記鏡筒と前記第1及び第2の光学レンズとを接合するための接合部材とを備えた光学レンズ接合装置を提供する。

【08】

【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る光学レンズ接合装置の第1の実施の形態の縦断面図を示す。ここでは一例として走査用レンズ群等について説明するが、これに限定されるものではなく、様々なレーザー応用装置等の光学装置に適用することもできる。また、図中の寸法は、一例を示すものであり、これに限定されない。

【09】
図1(A)中の光学レンズ接合装置は、鏡筒100、走査用レンズ群11~16及びシュリンクフィッタ(接合部材)110、111を備えている。鏡筒100は、例えばアルミニウム等の金属で形成することができる。鏡筒100は、レーザーが入射する方向(例えば図中右側)から順にレンズ11~16、及びシュリンクフィッタ110、111を備えている。各レンズ11~16は、この図では複数個備えられているが、個数は適宜変えることができ、また、ひとつの場合でもよい。各レンズ11~16は、鏡筒100内でシュリンクフィッタ110及び111により接合されている。また、各レンズ11~16の径は、異径でも同径でもよく、さらには、各レンズ11~16の形は、凸または凹等適宜の形状とすることもできる。

【10】
シュリンクフィッタ110及び111は、熱膨張係数がアルミニウム等の金属の鏡筒100よりも大きい高分子材料の円筒形状の機械要素である。ここでは一例として、耐熱高分子材料のポリイミドまたはアクリル等を材料として使用している。本発明の光学レンズ接合装置では、このようなシュリンクフィッタ110及び111を用いることにより、締りばめを適用することを可能としている。シュリンクフィッタ111は、レンズ群を囲んでいる外周の円周方向に溝120、121を有しているが、この溝120及び121は、必要に応じて設けることができる。この実施の形態では、溝120及び121がある場合を示しており、溝120及び121は、針金・ひもなどを通すことによって、レンズ群を接合しているシュリンクフィッタ110を固定するためのものである。また、シュリンクフィッタ110又は111は、レンズ群の半径方向にスリットをいれるようにしても良い。このスリットは、シュリンクフィッタを完全に分割するようにいれてもよいし、一部残して分割しないようにしても良い。シュリンクフィッタ110及び111に、半径方向に上述のようなスリットをいれ、かつ、シュリンクフィッタ110及び111の厚みを最適にすることで、レンズの半径方向の熱膨張を有効に活用でき、シメシロの減少を防ぐことが可能となる。なお、シメシロを大きくするとレンズの偏心は小さくなるが、レンズ球面が大きく変形して結像精度が悪化してしまう。そのため、最適な寸法設計を行えば、温度変化によらずにシメシロを一定にすることが可能であり、締りばめを光学部品の接合に適用することができる。このシメシロの設定は、例えば、3次元FEM解析により求めることができる。

【11】
図1(B)は、本発明に係る光学レンズ接合装置の部分拡大図を示す。図1(B)は、図1(A)の破線で囲まれた部分の部分拡大図である。図1(B)中のレンズ16は、両面が凹面であり接合面が広いために、わずかな締め付け圧力で変形が生じやすい。このような変形を防ぐために、図からわかるようにレンズの外周厚より狭い接合面130を設けて、シュリンクフィッタ111とレンズ16の接合幅がレンズの厚みより小さくなるようにし、また、中心付近のレンズが変形しにくい部分に接合面を集中するようにしている。このような接合面130は、適宜の位置の適宜の形状のレンズに対して設けることができる。

【12】
図2は、本発明に係る光学レンズ接合装置の第2の実施の形態の縦断面図を示す。図2中の光学レンズ接合装置は、鏡筒200、レンズ群21~26及びシュリンクフィッタ210を備えている。図2(A)の光学レンズ接合装置の鏡筒200、レンズ群21~26及びシュリンクフィッタ210の材料・構成等は、図1における場合と同様のものを用いている。ただし、図1(A)では、シュリンクフィッタ110及び111は分離していたが、図2(A)中のシュリンクフィッタ210は、一体型となっている点が異なる。

【13】
鏡筒200は、レーザーが入射する方向(例えば図中右側)から順に、レンズ21~26及びシュリンクフィッタ210を備えている。各レンズ21~26は、上述の図1(A)と同様に複数個あるが、個数は適宜変えることができ、ひとつの場合でもよく、また、レンズの径は異径又は同径とすることができる。さらには、レンズの形は、凸または凹とすることもできる。シュリンクフィッタ210は、レンズ群を囲んでいる外周の円周方向に溝220、221を有している。また、レンズ26を締め付ける部分や内外径などの寸法・形状は、シュリンクフィッタ210が個別の分離していた図1の場合と同様にし、温度変化を考慮せずシュリンクフィッタ210にスリットをいれないで作製することもできる。

【14】
図2(B)は、本発明に係る光学レンズ接合装置の部分拡大図を示す。図2(B)は、図2(A)の破線で囲まれた部分の部分拡大図である。

【15】
図2(B)中のレンズ26は、図1(B)と同様に両面が凹面であるためにわずかな締め付け圧力で変形が生じる。このような変形をふせぐために、図1(B)と同様に、図示のような接合面230を設けて、シュリンクフィッタ210とレンズ26の接合幅がレンズの厚みより小さくなるようにしている。

【16】
次に、本発明と従来技術との比較結果を説明する。図3は、本発明に係る光学レンズ接合装置の特性を測定する実験装置の構成図を示す。図3の実験装置は、45度に切断されたミラー30、本発明又は従来の光学レンズ接合装置300及びスポット測定装置32を備えている。

【17】
次に、この実験装置の動作を説明する。光源からのレーザー光は、45度に切断されたミラー30を回転させることにより、走査幅-15mm~+15mmで走査させられる。走査されたレーザー光は、結像面33で結像し、結像面33上のスポット径が測定される。測定は、ビームスポットの半値幅と1/eの両方について行う。

【18】
図4に、測定されたレーザー光の説明図を示す。図4(A)は、図3の実験装置により測定されたレーザーの強度分布図を示す。また、図4(B)は、図3の実験装置により測定されたスポット形状の特性図を示す。一般に、レーザースキャナー等のレーザー応用装置では、図4(A)における1/eの幅が、光学レンズ接合装置の性能に特に関わってくる。

【19】
図5に、本発明及び従来の光学レンズ接合装置によるスポット径の特性図を示す。ここでは、レーザーはX方向にのみ走査する。図5(A)は、X方向のスポット径、図5(B)は、Y方向のスポット径をそれぞれ示す。図5(A)及び(B)中それぞれにおいて、○プロットの線は従来の光学レンズ接合装置によるもの、□プロットの線は本発明に係る分離したシュリンクフィッタを用いた第1の実施の形態の光学レンズ接合装置のもの、◇プロットの線は本発明に係る一体型のシュリンクフィッタを用いた第2の実施の形態の光学レンズ接合装置のものをそれぞれ表している。

【20】
図示のように従来の平均スポット径は、13.4μmであり、中央部から離れるにしたがって、理論値6.6μmに対して極端にスポット径が広がっていることがわかる。一方、本発明に係る分離したシュリンクフィッタを用いた第1の実施の形態の光学レンズ接合装置の場合には、平均スポット径は9.4μmとなり、両端部に近づくにしたがって明らかにスポット径が改善されていることがわかる。しかし、両端部ではまだスポット径が広がっている。これは、シュリンクフィッタをレンズの径に合わせて個別に作製したことにより、形状誤差の影響が顕著に現れていると考えられる。また、本発明に係る一体型のシュリンクフィッタを用いた第2の実施の形態の光学レンズ接合装置の場合は、図からもわかるように分離したシュリンクフィッタを用いたものよりも良くなっていることがわかる。

【21】
以上の実験の結果から、シュリンクフィッタを個別に分離して作製した場合よりも一体型として作製した第2の実施の形態の光学レンズ接合装置の場合の方が、スポット径の改善を一層はかれることがわかる。シュリンクフィッタを一体型とすることにより、鏡筒内にレンズ群を接合するとき、レンズの偏心を改善するだけでなく、分解や再組立を行うのも容易にすることができる。さらに、スペーサーの一つの軸方向の寸法を変えてレンズ23とレンズ24の距離を設計値より0.2mm離すことで、6.9μmまで絞り込むことが可能である。

【22】

【発明の効果】本発明によると、レンズの偏心を最小限におさえるために、一例としてシュリンクフィッタ(接合部材)を用いた締りばめによる光学レンズ接合装置を提供し、レーザー応用装置等の高解像度化・高精度化を達成することができる。

【23】
本発明によると、レンズ群と鏡筒を一体型の高分子材料の接合部材を用いることにより、締りばめによるレンズの接合を可能とした光学レンズ接合装置を提供することができる。本発明によると、鏡筒内のレンズ群が異径又は同径でも、複数または単数でも締りばめを適用することができる。また、本発明によると、レンズ群を接合部材に挿入する時点でレンズの軸間距離を正確に位置決めすることができ、その上で鏡筒にレンズを組み込むことができる。さらに、本発明によると、レンズの偏心を改善し、分解や再組立を容易に行うことができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5