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明細書 :第2高調波発生用非線形光学結晶

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3936483号 (P3936483)
公開番号 特開2000-221551 (P2000-221551A)
登録日 平成19年3月30日(2007.3.30)
発行日 平成19年6月27日(2007.6.27)
公開日 平成12年8月11日(2000.8.11)
発明の名称または考案の名称 第2高調波発生用非線形光学結晶
国際特許分類 G02F   1/37        (2006.01)
G02F   1/355       (2006.01)
FI G02F 1/37
G02F 1/355 501
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願平11-020550 (P1999-020550)
出願日 平成11年1月28日(1999.1.28)
審査請求日 平成15年2月24日(2003.2.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】佐々木 孝友
【氏名】森 勇介
【氏名】吉村 政志
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】▲高▼ 芳徳
参考文献・文献 古屋博之 他,日本結晶成長学会誌,1998年12月24日,Vol.25, No.5, pp.193-199
M.Yoshimura et al.,Proceedings of SPIE - The International Society for Optical Engineering,1998年 9月19日,Vol.3556, pp.210-213
調査した分野 G02F 1/35 - 1/39
H01S 3/108 - 3/109
CA(STN)
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
次式
【化1】
JP0003936483B2_000006t.gif
で表わされる二次非線形光学結晶に通過させることにより、レーザー入射方位が結晶のy軸において非臨界位相整合条件下で第2高調波へ変換することを特徴とするレーザー光発生方法
【請求項2】
次式
【化2】
JP0003936483B2_000007t.gif
で表わされる二次非線形光学結晶を、レーザー入射方位が結晶のy軸において非臨界位相整合条件下で第2高調波発生用手段として備えていることを特徴とするレーザー光発生装置。
【請求項3】
請求項2の装置において、非線形光学結晶が、レーザー入射方位が結晶のy軸において非臨界位相整合条件下で第2高調波とともに第3高調波発生用手段とされていることを特徴とするレーザー光発生装置
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、第2高調波発生用非線形光学結晶とこれを用いた線色レーザー光発生方法、並びにレーザー光発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
近年、レーザー技術の急速の発展にともなって、近赤外の固体レーザー光を非線形光学結晶を用いて波長変換することが大きな技術課題になってきている。
固体レーザーは、スペクトル幅が狭く、出力が安定しており、メンテナンスが容易で小型化が可能であることから、レーザー加工やレーザー医療の手段として、そして表面改質、光情報処理への応用として注目されているものであり、このような固体レーザーの長所を生かすためにも波長変換技術が重要になっている。
【0003】
このような波長変換のための理想的な非線形結晶については、▲1▼大きな非線形光学定数、▲2▼短い吸収端、▲3▼適度な複屈折率、を持つことがその要件となる。また、結晶としては、▲4▼機械的な特性に優れていることが実用上の観点より必要となる。
なお、▲3▼の適度な複屈折率とは、発生させたい波長に対して、最も波長変換が高効率で行われる非臨界位相整合条件を満たすような複屈折率のことである。複屈折率が理想値よりも小さいと波長変換が不可能になり、大きいと非臨界位相整合条件から離れるため変換効率が低下する。
【0004】
非線形光学結晶についてはこれまでにも様々な試みがなされてきているが、その一つとしてカルシウムオキシボレート(COB)系の結晶が注目されるものとしてある。
たとえば、AkaらによってGdCa4 O(BO3 3 :GdCOBの非線形性が見出されており、その単結晶の育成と光学特性についての報告がなされている(1996年)。このGdCOBについては、
・Cz法により育成可能であって、非水溶性であること
・ビッカース硬度:600程度(水晶程度)であること
・deff (at1064nm):1.3pm/V(KDPの約3.4倍)
・位相整合限界波長840nmであって、
Nd:YAGの第三高調波発生が不可能であること
が明らかにされている。
【0005】
しかしながら、このGdCOBについては、複屈折率が0.033と小さいことが大きな問題であった。
すなわち、GdCa4 O(BO3 3 (GdCOB)結晶は育成が容易で機械的特性に優れているが、複屈折率が小さいため波長変換で発生できる波長が長くなる。そこで、この出願の発明者らは、複屈折率を大きくするための手段について検討を行い、GdCa4 O(BO3 3 (GdCOB)結晶のGdをYと置換させると複屈折率が大きくなることを見い出した。その結果、GdCOB結晶はNd:YAGレーザーの第2高調波しか発生できないが、GdをYと置換したYCOBではNd:YAGレーザーの第3高調波発生が可能になった。
【0006】
この新たに見出されたYCOB結晶については、この出願の発明者らによってすでに具体的に提案がなされているところである。
ただ、これまでのCOB結晶については、複屈折率について自在に制御することは可能とされていないことから、この出願の発明者らは、波長変換のための非線形光学結晶としてのCOBについてさらに検討を進め、機械的性質とともに光学特性、特に波長変換のための重要な要件としての複屈折率について最適化制御を可能とする新しい技術手段を提供することを課題としてきた。
【0007】
その結果として、この出願の発明者らは、以上の課題を解決するものとして、次式
【0008】
【化4】
JP0003936483B2_000002t.gif
【0009】
で表わされる波長変換結晶とその具体例として、前記式中のM1 およびM2 が、Gd、Y、LaおよびLuから選択された波長変換結晶を、第2高調波に変換するのに有効な手段であることを見出し、これを提供することを可能とした(特願平10-82309号)。
このものは、GdCa4 O(BO3 3 のGdCOBについて、GdをYに置換する場合だけでなく、Lu、Laなどの希土類元素もGdサイトに導入することができ、格子定数を変化することができることを焼結体のX線回折観察により確認したことを手がかりとしている。格子定数と屈折率とは相関があるので、格子定数が変化するということは結晶の複屈折率が変化していることを意味する。そこで、さらに検討を進め、Gd、Y、Lu、Laの比率を変えることにより、複屈折率を自由に制御することができることを見い出している。たとえば複屈折率は、Lu>Y>Gd>Laの順で変化する。
【0010】
しかしながら、上記の新しい波長変換結晶については、第2高調波への変換についてはあまり充分に検討されていないのが実情である。
この第2高調波への変換については、現在、Nd:YAGレーザーの第2高調波発生のための波長変換結晶として、LBO(LiB3 5 )結晶が利用されている。しかし、LBO結晶は、水溶性の結晶であるため、その寿命や信頼性が十分ではなく、しかも結晶を148度もの高温に加熱しなければならず、育成が困難であることから品質上の問題があり、また、育成コストも高いという問題があた。したがって、LBO結晶に代わる、Nd:YAGレーザーの第2高調波発生のための波長変換結晶の開発が求められてきた。特に、室温での非臨界位相整合条件におけるNd:YAGレーザーの第2高調波発生はこれまで実用化されておらず、これを可能とする波長変換結晶の開発が、強く望まれてきた。
【0011】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、COB結晶の複屈折率について最適化制御を可能として、従来、第2高調波発生に用いられてきたLBO結晶に代わる、新しい第2高調波発生のための手段を提供することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、次式
【0013】
【化5】
JP0003936483B2_000003t.gif
【0014】
で表わされる二次非線形光学結晶に通過させることにより、レーザー入射方位が結晶のy軸において非臨界位相整合条件下で第2高調波へ変換することを特徴とするレーザー光発生方法を提供する。また、この出願の発明は、第2には、次式
【0015】
【化6】
JP0003936483B2_000004t.gif
【0016】
で表わされる二次非線形光学結晶を、レーザー入射方位が結晶のy軸において非臨界位相整合条件下で第2高調波発生用手段として備えていることを特徴とするレーザー光発生装置を提供する。さらにこの出願の発明は、前記第の発明の装置において、前記非線形光学結晶が、レーザー入射方位が結晶のy軸において非臨界位相整合条件下で第2高調波とともに第3高調波発生用手段とされているレーザー光発生装置も提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、以上のとおりの特徴と背景をもつものであるが、以下に実施例を示し、詳しく発明の実施の形態について説明する。
前記のとおり、この出願の発明者らは、Gd部分を置換したGdx 1-x Ca4 O(BO3 3 結晶で室温における非臨界位相整合条件下での第3高調波の発生を実現しているが、この出願の発明では、同様のことを、前記組成の非線形光学結晶として、第2高調波発生(波長:532nmのグリーン光)においても可能としているのである。
【0018】
ここで、組成比Xは、0.25~0.35と限定された範囲であることが留意される。なかでも、X=0.28もしくはその近傍が第2高調波発生に最適であることも留意される。
たとえばGdの割合が28%(X=0.28)付近で確実に第2高調波が非臨界位相整合条件で発生することになる。図1は、その第2高調波発生を例示したものである。
【0019】
これまで実用レベではLBO結晶を148度に加熱した状態でのみ可能であったが、この発明の結晶は室温で可能としていることにおいて画期的である。特性としては、角度に対する安定性(角度許容幅)が他の結晶に比べ著しく向上していることが、図2のこの発明の結晶のデータから、また、従来の場合と比較した次の表1からよくわかる。角度許容幅とは、1cmの素子に対して、出力が半減するまでの角度の幅を表わしている。
【0020】
【表1】
JP0003936483B2_000005t.gif
【0021】
また、基本波(赤外光、波長:1064nm)と第2高調波(緑光)の進行方向が全く同じ(ウォークオフ角が0度)なので、相互作用長が長くなる。また、その特徴として、次のステージでさらに高次の高調波発生を行うときに、入射光がうまく重なり合って入射できるので、波長変換に有利となる。
もう一つ重要なことは、Gdの組成がX=0.28付近では第3高調波の非臨界位相整合条件を満たす方向と同方向に第2高調波も出力できるという点である。これは世界で初めて確認されたことである。基本波から第3高調波までを同時に、直接発生させることはできないが、この同方向性を利用すると次のような応用が期待できる。
【0022】
1.素子数が多くなるのを望まない共振器内部にこの結晶を一つだけ挿入し、第2高調波及び、第3高調波を発生させる。
2.結晶にレーザー媒質(Nd:ネオジウム,Yb:イッテルビウム)をドーピングして、さらにレーザー発振の機能も加えて単一素子を使ってレーザー発振から紫外光の発生までを行う。
【0023】
この出願の発明の緑色レーザー光線発生方法(および紫外レーザー光線発生方法)において用いられる、レーザー発振装置の概要を図3に示すことができる。たとえばこの装置においては、Nd:YAG赤外レーザー光発振器(1)より出力される波長1064nmの近赤外光(2)は、凸レンズ(3)で細く絞られ、この発明の非線形光学結晶(4)により、波長532nmの第2高調波(または波長355nmの第3高調波)へ波長変換され、緑色レーザー光線発生(または紫外レーザー光線)(5)として、凸レンズ(6)でレーザー径を制御され、かつ、出力される。
【0024】
たとえば以上のとおりの手段をもつ装置を、この発明のレーザー光発生装置とすることができるのである。
また、結晶の育成については、その手法は特に限定されることはないが、たとえば高周波誘導加熱型Cz法により育成することができる。
【0025】
【実施例】
結晶の育成は、高周波誘導加熱型Cz法により行った。原料としては、CaCO3 、B2 3 とともに、Gd2 3 およびY2 3 を用いた。
Ir(イリジウム)坩堝で、Ar(アルゴン)雰囲気中において、たとえば約1500℃の温度において育成した。
【0026】
Gdの割合(X)を変化させてX=0.30以下の各種組成物の結晶を育成した。
得られた結晶は、均一な組成であって、固溶体であることが確認された。
図2に例示したように、この実施例においては、第2高調波発生(type2)について、X=0.28付近で、位相整合角度が90°の非臨界位相整合条件を室温において満たすことが確認された。
【0027】
また、Gdの組成(X)が28%付近の結晶では、第3高調波の非臨界位相整合条件を満たす方向と同方向に第2高調波もほぼ非臨界位相整合条件にて出力できることも確認された。
なお、参考として、図4に、X=0.28付近での第3高調波発生(type1)が確認されるデータを示した。
【0028】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、新しい第2高調波発生用の非線形光学結晶と、これを用いた第2高調波発生方法と装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】第2高調波発生における組成(X)と位相整合角度との関係を例示した図である。
【図2】外部角と規格化第2高調波出力との関係を示した図である。
【図3】第2高調波の発生方法とその装置の構成を例示した概要図である。
【図4】第3高調波発生における組成(X)と位相整合角度との関係を例示した図である。
【符号の説明】
1 Nd:YAG赤外レーザー光発振器
2 近赤外光
3 凸レンズ
4 非線形光学結晶
5 緑色レーザー光線発生または紫外レーザー光線
6 凸レンズ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3