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明細書 :研削加工方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3789672号 (P3789672)
公開番号 特開2000-237942 (P2000-237942A)
登録日 平成18年4月7日(2006.4.7)
発行日 平成18年6月28日(2006.6.28)
公開日 平成12年9月5日(2000.9.5)
発明の名称または考案の名称 研削加工方法
国際特許分類 B24B  13/00        (2006.01)
FI B24B 13/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願平11-040899 (P1999-040899)
出願日 平成11年2月19日(1999.2.19)
審査請求日 平成15年1月29日(2003.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】鈴木 浩文
【氏名】樋口 俊郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】今関 雅子
参考文献・文献 特開平04-304961(JP,A)
特開平08-229792(JP,A)
特開平10-034512(JP,A)
「微細加工はここまできている」,機械技術,日刊工業新聞社,1996年 9月25日,第44巻、第10号,第18頁~第22頁
「マイクロ非球面レンズ成形型の超精密研削」,機械技術,日刊工業新聞,1998年 5月25日,第46巻、第6号,第31頁~第34頁
「超精密非球面加工機の開発と応用」,精密工学会「第270回講習会」非球面加工の基礎 テキスト,精密工学会,2000年,第1頁~第8頁
調査した分野 B24B 13/00
B24B 9/14
特許請求の範囲 【請求項1】
先端が尖った軸対称の円盤状の研削砥石と、軸対称の工作物の回転軸に対して前記研削砥石の砥石回転軸が直交し、さらに前記工作物上で接する前記研削砥石の回転方向が工作物の回転方向と平行となるように配置された状態で、前記研削砥石を工作物の半径方向及び回転軸方向に駆動させ、複数の不連続な曲面で構成される軸対称な非球面形状の部品を製造することを特徴とする研削加工方法。
【請求項2】
請求項1記載の研削加工方法において、前記非球面形状の部品は硬質のフレネル形状の光学部品である研削加工方法。
【請求項3】
請求項2記載の研削加工方法において、前記非球面形状の部品はガラス製マイクロフレネルレンズである研削加工方法。
【請求項4】
請求項1記載の研削加工方法において、前記研削砥石の送り速度を制御可能にする研削加工方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、研削加工方法に係り、特に、ホログラフィー光学素子等のマイクロフレネルレンズの研削加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、このような分野の技術としては、以下に示すようなものがあった。
(1)山崎雄司、中村和人、橋本洋:フレネルレンズの内蔵LEDの開発,精密工学会誌,59,4(1993)123.
(2)春原正明,梅谷誠,清水義之,白藤芳則:ホログラム非球面レンズを成形-DVD・CD併用可能にした金型技術-,日経メカニカル,458,(1995)40.
(3)山形豊,樋口俊郎,上田勝宣,高島譲,大野元治:精密切削によるブレーズ化された自由曲面回折格子の製作,1996年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,(1996)533.
(4)森田晋也,山形豊,樋口俊郎:ホログラム光学素子の切削条件に関する研究,1997年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集,(1997)21.
(5)H.Suzuki,S.Kodera,T.Nakasuji,T,Ohta and K.Syoji:Precision Grinding of Aspherical CVD-SiC Molding Die,Int.J.JSPE,32,(1998)25.
(6)鈴木浩文,小寺直,前川茂樹,森田訓子,桜井英一,田中克敏,武田弘,厨川常元,庄司克雄:マイクロ非球面の超精密研削に関する研究-斜軸研削法によるマイクロ非球面の鏡面研削の可能性検証-,精密工学会誌,64,4(1998)541.
近年、ホログラフィー光学素子などのマイクロフレネルレンズのニーズが増大している。このようなフレネルレンズは、その利用目的上多数の不連続な曲面で構成されている微細な型を用いた成形法により量産加工しなければならない。
【0003】
図19は従来のガラス製フレネルレンズの成形工程の一例を示す図である。
【0004】
まず、図19(a)に示すように、下型51と上型52間にガラス材料53をセットし、図19(b)に示すように、ガラス材料53を加熱するとともに、上型52でプレスする。次に、図19(c)に示すように、上型52をアンロードする。なお、54はフレネルレンズである。
【0005】
一方、これまでは型の加工は微小な単結晶ダイヤモンドバイトによる切削加工が中心であり、型材としては、無酸素銅、黄銅、無電解Niなどの軟質金属に限られていた。その結果、レンズ材質は成形温度が低いプラスチックレンズが中心となっていた。しかし、DVD(Digital Video Disc)やCD(Compact Disc)用などのデバイスでは、その性能の向上のため、ガラスレンズ化による光学特性および耐熱強度の向上が不可欠であり、このような微細な形状を有するセラミック型の超精密・微細加工技術の開発が必要である。
【0006】
図20はかかる従来のセラミック型の研削加工装置を示す斜視図、図21はその研削加工装置による研削加工方法の説明図である。
【0007】
これらの図において、101は砥石軸、102は研削砥石、103は主軸、104は工作物(フレネル形状の工作物)である。
【0008】
この図に示すように、軸対称の円盤状の研削砥石102を用い、軸対称の工作物104上で接する研削砥石102の回転方向が工作物104の回転方向と直角に配置されている。
【0009】
これらの図から明らかなように、これまでの軸対称非球面工作物の研削加工はX,Z軸の同時2軸制御加工機により行われていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の研削加工装置では、不連続な曲面で構成される軸対称な非球面形状の光学部品(フレネルレンズ)を研削加工すると、図20及び図21に示すように、加工点における工作物104の回転方向と研削砥石102の回転方向が直交しており、研削砥石102の円弧形状が段差部に転写され、鋭利な段差で構成されるフレネル形状の精密加工は困難であるといった問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題点を除去し、複数の不連続な曲面で構成される軸対称な非球面形状の部品の不連続部分でも、シャープなエッジを精密に加工することができる研削加工方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕研削加工方法において、先端が尖った軸対称の円盤状の研削砥石と、軸対称の工作物の回転軸に対して前記研削砥石の砥石回転軸が直交し、さらに前記工作物上で接する前記研削砥石の回転方向が工作物の回転方向と平行となるように配置された状態で、前記研削砥石を工作物の半径方向及び回転軸方向に駆動させ、複数の不連続な曲面で構成される軸対称な非球面形状の部品を製造するようにしたものである。
【0013】
〔2〕上記〔1〕記載の研削加工方法において、前記非球面形状の部品は硬質のフレネル形状の光学部品である。
【0014】
〔3〕上記〔2〕記載の研削加工方法において、前記非球面形状の部品はガラス製マイクロフレネルレンズである。
【0015】
〔4〕上記〔1〕記載の研削加工方法において、前記研削砥石の送り速度を制御可能にする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の実施例を示す研削加工装置の要部斜視図、図2はその研削加工装置による研削加工方法の説明図である。
【0018】
これらの図に示すように、砥石軸1を有し、先端2Aが鋭利なナイフエッジ形状の研削砥石2を用い、研削点における工作物4の回転方向と研削砥石2の回転方向が平行関係にあるような砥石軌跡で研削する。なお、3は工作物4が装着される主軸である。
【0019】
ここで、この実施例では、研削砥石2の回転軸であるY軸(縦軸)と、工作物4の回転軸であるZ軸(横軸)の同時2軸制御による研削方法を用いた。
【0020】
以下、詳細に説明する。
【0021】
(1)研削砥石の位置決め
刃先が円弧形状になった研削砥石による軸対称非球面の切削加工では、次式に示すように、研削砥石の位置決めの基点となる円弧中心の座標を計算し、NC制御しながら加工を行う。
【0022】
【数1】
JP0003789672B2_000002t.gif【0023】
ここで、(YW ,ZW )は工作物の座標、(Y0 ,Z0 )は研削砥石の刃先円の中心座標であり、Rは研削砥石の刃先円の曲率半径、θは加工点における接線方向角である。
【0024】
本発明の研削方法では、図1及び図2に示すように、先端2Aが鋭利な研削砥石2でフレネル形状を創成するため、上記式(1)において、R=0として計算した。
【0025】
(2)送り速度制御
図3に示すように、軸対称の工作物4を回転させながら研削砥石2をY方向に送る場合、工作物4の半径方向位置をr(mm)、研削砥石2および工作物4の回転数を各々ω1 ,ω2 (rpm)とすると、研削砥石2の1回転当たりの工作物4の円周方向の送り量FC (mm/min)は次式で表される。
【0026】
C =2πr・ω2 /ω1 …(2)
研削砥石送り速度をFY (mm/min)とすると、工作物4の1回転当たりに研削砥石2が工作物4の半径方向に移動する距離Fr (mm/rev)は次式のように表せる。
【0027】
r =FY /ω2 …(3)
次に、工作物4と接触可能領域における作用砥粒数をN,1砥粒による平均研削痕の長さをlW とすると、工作物4上の円周方向における砥粒引掻き痕のピッチPは次式で表される。
【0028】
P=FC ・Fr /N・lW …(4)
上記式(2),式(3),式(4)より次式が得られる。
【0029】
P=2π・FY ・r/N・lW ・ω1 …(5)
ここで、砥粒切刃数Nは、研削砥石表面の作用砥粒密度δ(/mm2 )、工作物と研削砥石の接触面積をA(mm2 )とすると、次式で表される。
【0030】
N=δ・A …(6)
ここで、δは研削砥石の硬度、集中度等により決定され、δとAが加工中は一定とすると、Nも一定となる。
【0031】
また、研削砥石の表面に突出した砥粒の刃先の平均頂角をθとし、砥粒の形状が転写されると仮定するならば、図4より工作物の表面粗さ(Ry )は次式のように表現できる。
【0032】
y =(P/2)cot(θ/2) …(7)
上記式(5)及び式(7)より次式が得られる。
【0033】
y =(π・FY ・r/N・lW ・ω1 )cot(θ/2) …(8)
すなわち、この式から、従来のように砥石送り速度FY が固定されている場合、工作物4の表面粗さは工作物の半径方向位置に比例して悪化することがわかる。そこで、本発明の方法では、研削砥石2の送り速度FY を次式のように変化させた。
【0034】
Y (r)=k・P・N・lW ・ω1 /2πr …(9)
ここで、kは比例定数である。
【0035】
さらに、図3に示すように、研削砥石2が1回転する間に加工面上において加工点が移動する円周方向の長さL(r)は次式のように表される。
【0036】
L(r)=2πr・ω2 /ω1 …(10)
ここで、研削砥石2が1回転する間の工作物との干渉面積をA(r)とすると、その間の工作物4の除去量V(r)は次式のようになる。
【0037】
V(r)=L(r)・A(r) …(11)
上記式(10)及び式(11)より次式が得られる。
【0038】
V(r)=2πr・(ω2 /ω1 )・A(r) …(12)
工作物4の形状が平面の場合、切込みをδとすると、次式の関係が成り立つ。
【0039】
A(r)=FY (r)・δ …(13)
上記式(12)及び式(13)より次式が得られる。
【0040】
V(r)=2πr・(ω2 /ω1 )・FY (r)・δ …(14)
上記式(9)及び式(14)より次式が得られる。
【0041】
V(r)=k・ω2 ・δ・P・N・lW =const …(15)
すなわち、この場合V(r)が一定となるため、研削抵抗が工作物と研削砥石の干渉体積(除去速度)に比例するものと仮定すると、形状精度も向上することを意味する。
【0042】
なお、半径方向位置rが小さい場合、FY (r)の値は大きくなるが、本発明では、送り量FY (r)/ω1 が大きくなりすぎないように上限を設けた、ここでは、上限値を0.4mm/min(1.3μm/rev)に設定した。
【0043】
(3)研削装置および研削システム
図5は本発明の実施例を示す研削加工装置の斜視図である。なお、上記した図1~図4に示したと同様の部分には同じ番号を付してそれらの説明は省略する。
【0044】
この図において、11は主軸を回転させるモータ、12は真空チャック、13はジグ、14はX-Z軸案内テーブル、15はY軸案内テーブル、16は砥石軸1を回転させるモータ、17はクーラントノズルである。
【0045】
研削装置としては、図5に示すような、同時4軸(X,Y,Z,C)制御加工機〔東芝機械(株)製ULG100A(H3)〕を用いた。Z軸案内テーブル上に主軸3が横向きに取り付けられ、自由曲面の加工が可能である。
【0046】
ここで、X,Y,Z軸テーブルは、V-V溝面にニードルを配置した転がり案内であり、位置決めは温度変化による変動を抑えるためにリニア(ガラス)スケールフィードバック制御により行い、その位置決め分解能は1nmである。X-Z軸案内テーブル14上には、Y軸案内テーブル15が取り付けられ、そのY軸案内テーブル15に高速回転の研削スピンドルを設置した。主軸3は最大回転数3000rpmの空気静圧軸受であり、研削スピンドルは最大回転数4×104 rpmの空気静圧軸受である。
【0047】
軸対称の工作物4はジグ13を介して真空チャック12により主軸3に取り付けた。この際、電気マイクロメータにより計測しながら、±0.5μm以下の同軸度が得られるように調整した。さらに、主軸3および砥石軸1に設けられたネジ穴にバランス重りを取り付けて、主軸3および研削砥石2のアンバランスがそれぞれ0.1μmおよび0.01μm以下になるように調整した。同装置を用いて、Y軸(縦軸)とZ軸の同時2軸制御を行いながら試作を行った。なお、X軸とC軸は研削砥石2の原点調整時のみに用いた。
【0048】
(4)ダイヤモンドホイール(砥石)およびそのツルーイング法
本発明の実施例では、図6に示すような、研削砥石2として円盤状のダイヤモンドホイール(砥石)を用いた。先端2Aがθ(例えば、45°)とナイフエッジ状に尖らせ、このホイール先端2Aにより、微小な段差で構成されるフレネル形状を創成する。なお、図6において、φL1 は70mm、L2 は3mm、L3 は3mm、φL4 は10mmである。研削加工のみで仕上げるために、また、工作物の形状誤差に影響を与える砥石磨耗を極力抑制するために、砥粒径#1200と比較的粗粒のレジノイドダイヤモンドホイール2Bを用いた。2Cはホイールのスチール台座である。
【0049】
図7はダイヤモンドホイールのツルーイングの説明図であり、図7(a)は砥石側面のツルーイング概念図、図7(b)は端砥石面のツルーイング概念図をそれぞれを示している。
【0050】
ダイヤモンドホイール2のツルーイングは、これらの図に示すように、機上でツルア5を主軸3に取り付けて、ダイヤモンドホイール2の下面と上面(45°テーパ部)をトラバースさせて行った。
【0051】
ここで、ツルーイング条件を表1に示す。
【0052】
【表1】
JP0003789672B2_000003t.gif【0053】
ツルア5には、ストレート形状の#200のレジノイドボンドダイヤモンドホイールを用いて湿式で行った。ツルア5はジグを介して真空チャックにより主軸3に取り付け、外周を電気マイクロメータにより測定しながら、1μm以下の同軸度が得られるように調整した。ホイール2のエッジ部(先端部)2Aは鋭利に成形され、このエッジ部2Aで研削を行った。
【0054】
(5)研削条件
型材料としてはガラス成形を行うことを想定し、微粒子超硬合金WCを用いた。ここでは、始めに平面形状の工作物の研削加工を行い、上記した(2)〔送り速度制御〕の効果を検討した。最後に、図8のフレネル形状の型を試作し、検証を行った。
【0055】
本実施例では、図8に示すように、次式で表される軸対称のフレネル形状の型を試作した。
【0056】
Z(Y)=mod{g(Y),b} …(16)
ここで、Yは工作物の半径方向の位置、Zは工作物の回転軸方向の位置、g(Y)は非球面関数(多項式)、bはフレネルレンズの溝の段差である。
【0057】
また、g(Y)は一般の軸対称の非球面多項式関数と同様に次式で表される。
【0058】
【数2】
JP0003789672B2_000004t.gif【0059】
ここで、CV ,K,Ci (i=n)は非球面定数である。
【0060】
また、ここでは、g(Y)を約50mmの近似曲率半径の非球面(有効径:約φ4mm)とし、段差b≒0.005mm(5μm)に設定した。ガラスプレスを行うことを前提にし、型材に微粒子超硬合金を用いた。
【0061】
研削条件を表2に示す。
【0062】
【表2】
JP0003789672B2_000005t.gif【0063】
仕上げ加工用の研削砥石としては#1200のレジノイドボンドダイヤモンドホイールを用いた。切り込みは2μmとし、送り速度を0.025~0.4mm/minと変化させた。
【0064】
(6)平面研削
砥石送り速度制御による表面粗さと形状精度の改善の効果について検証する。以下では、工作物に平面形状の超硬合金を用いた場合の結果を示す。
【0065】
(a)表面粗さ
表2に示した条件で平面研削したときの表面粗さの変化を図9に示す。非接触表面粗さ計(ZYGO社製MaxinNT)を用いて工作物の半径方向位置において測定したものである。評価面積は約180μm×160μmであった。横軸は工作物の半径方向の位置で、縦軸はP-V値で最大高さRy に相当する。○印は砥石送り速度を式(9)により、0.025~0.4mm/minと変化させたもの、●印は砥石送り速度を0.2μm/minに固定したものである。砥石送り速度を制御することにより、表面粗さが改善され、均一化しているのがわかる。
【0066】
(b)形状精度
先端に2μmのダイヤモンドスタイラスをもつ形状測定機〔松下電器(株)製UA3P〕により、同工作物を測定して得られた形状誤差曲線を図10に示す。上の曲線aが研削砥石の送り速度を一定としたもので、下の曲線bが式(9)により変化させたものである。送り速度が一定の場合、式(14)より工作物の除去量V(r)は外周部で大きく内周部で小さくなり、その結果、研削抵抗も変動し形状誤差が大きくなっている。一方、送り速度を式(15)に従って制御する場合、V(r)は外周部と内周部で一定となるため、その結果、研削抵抗が一定化し、形状誤差も小さくなっているものと考えられる。
【0067】
(7)フレネル形状の研削実験
本発明の研削方法により、図8のフレネルレンズの成形型の超精密研削を行い、研削加工の可能性検証を行った。表1の条件でダイヤモンドホイールのツルーイングを行った後、表2の条件で図11に示すように研削加工を行った。
【0068】
(a)形状精度
上記実験において、1次加工を行った後に測定した断面形状を図12に示す。形状誤差曲線は、表2の条件で3回切り込みを与えて研削した後に工作物を主軸から取り外し、先端の曲率半径2μm、頂角60°のダイヤモンドスタイラスを備えた接触式形状測定装置〔松下電器(株)製UA3P〕により測定したものである。いずれの段差部においても設計形状通りに約5μmの段差がある。
【0069】
この結果を基に段差部近傍を除去して計算した目標形状との差、すなわち形状誤差曲線を図13に示す。形状精度は約2.41μmP-Vであった。これは研削砥石の原点位置の誤差によるものである。
【0070】
この測定結果を基にダイヤモンドホイールの原点位置をY方向に補正して研削加工を行い、同様の測定方法により得られた結果を図14に示す。約0.11μmP-Vの形状精度が得られている。
【0071】
また、非接触形状測定装置(三鷹光器(株)製NH-3)により測定した3次元形状を図15に示す。比較的に鋭利なエッジが得られていることが分かる。
【0072】
最後に、研削後のフレネル形状の段差部のみを上述の接触式形状測定装置により測定し、拡大して表示した断面曲線を図16に示す。鋭利に見える段差部の横に約25μmの幅の形状誤差領域が存在している。これはダイヤモンドホイール先端が円弧形状になっているためであると考えられる。この形状誤差領域をさらに減少させるためには、ダイヤモンドホイールのツルーイング法を改善して先端の形状をさらに鋭利にする必要がある。
【0073】
(b)表面粗さ
この研削後の工作物の中心付近において測定した表面粗さを図17に示す。非接触表面粗さ計(ZYGO社製MaxinNT)を用いて工作物の中心付近において測定したものである。評価面積は、約180μm×160μmであった。約10nmRy の表面粗さが得られ、高い鏡面性が得られている。
【0074】
最後に、研削面のノマルスキー顕微鏡写真(図示なし)で見たところ、表面に非常に微細な砥粒引っかき痕が見られるが、延性モードの加工面が得られていることがわかる。加工点における研削砥石の回転方向が従来の非球面研削方式では工作物の回転方向に対して直交しているが、本発明の研削方法では工作物の回転方向に対して研削砥石は平行な位置関係にある。そのために表面粗さは従来法に比べ悪化しやすい傾向にあると考えられる。しかし、研削砥石の送り速度を工作物の半径位置に対応して変化させることにより、良好な表面粗さが得られることが明らかとなった。
【0075】
以上の結果から、セラミックスなどの硬質ぜい性材料製のフレネル形状の加工において、本発明の研削法が有効であることが明らかとなった。
【0076】
(8)結果
上記したように、多数の不連続な曲面で構成されている微細なフレネル形状の研削加工を実現し、ガラス製マイクロフレネルレンズを量産(プレス成形)するのを可能にするため、本発明では以下の特徴をもつ研削システムを開発した。
【0077】
(a)空気静圧軸受け方式の縦型の砥石スピンドルと横型の主軸を備え、分解能1nmのリニアスケールフィードバックシステムによる同時4軸(X、Y、Z、C)制御が可能である。
【0078】
(b)先端がナイフエッジ状で鋭利な円盤状の研削砥石をY軸(縦軸)とZ軸(横軸)の同時2軸制御しながら駆動することにより、不連続な非球面形状の創成が可能である。
【0079】
(c)軸対称の非球面工作物において半径方向の位置に対応した研削砥石の送り速度制御が可能である。
【0080】
以上の研削システムにより微粒子超硬合金製フレネル形状の研削を行い、研削加工の可能性について検討を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。
【0081】
(1)送り速度を制御した場合、工作物の表面粗さは良好になり、全面において均一化し、形状精度も同様に良好になる。
【0082】
(2)超硬合金製フレネル形状の型を試作した結果、約0.1μmの形状精度と約10nmRy の表面粗さが得られ、本発明の研削方法は、フレネル形状の研削に有効である。
【0083】
また、図1において、鋭利なナイフエッジ形状の研削砥石を図18のように駆動するようにしてもよい。すなわち、Y、Z軸のみならず、X軸も複合させてもよく、要はフレネル段差部の加工において砥石回転軸と工作物回転軸が平行となるようにすればよい。
【0084】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0085】
【発明の効果】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0086】
(A)複数の不連続な曲面で構成される軸対称な非球面形状の部品の不連続部分でも、シャープなエッジを精密に加工することができる。
【0087】
(B)送り速度を制御した場合、工作物の表面粗さは良好になり、全面において均一化し、形状精度も同様に良好になる。
【0088】
超硬合金製フレネル形状の型を試作した結果、約0.1μmの形状精度と約10nmRy の表面粗さが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す研削加工装置を示す要部斜視図である。
【図2】 本発明の実施例を示す研削加工装置を用いた研削加工方法の説明図である。
【図3】 本発明の実施例を示す研削加工装置の研削砥石の送り速度制御方法の説明図である。
【図4】 本発明の実施例を示す研削加工装置の研削砥石の送り速度と表面粗さプロファイルの関係を示す図である。
【図5】 本発明の実施例を示す研削加工装置の斜視図である。
【図6】 本発明の実施例を示す研削加工装置の研削砥石の構成図である。
【図7】 本発明の実施例を示すダイヤモンドホイールのツルーイングの説明図である。
【図8】 本発明の実施例を示すフレネル形状の型の断面図である。
【図9】 本発明の実施例を示す種々の径方向位置における平面状表面の表面粗さを示す図である。
【図10】 本発明の実施例を示す種々の径方向位置における平面状表面の表面粗さを示す図である。
【図11】 本発明の実施例を示す非球面研削装置の斜視図である。
【図12】 本発明の実施例を示す1次加工を行った後のフレネル表面の計測断面を示す図である。
【図13】 本発明の実施例を示す1次研削後の偏差プロファイルを示す図である。
【図14】 本発明の実施例を示す2次研削後の偏差プロファイルを示す図である。
【図15】 本発明の実施例を示すフレネル表面の3次元トポクラフィである。
【図16】 本発明の実施例を示すスタイラス装置(接触式形状測定装置)を用いて計測されたフレネルの深さプロファイルである。
【図17】 本発明の実施例による研削加工後の表面粗さプロファイルである。
【図18】 本発明における他の実施例を示す研削加工装置を示す要部斜視図である。
【図19】 従来のガラス製フレネルレンズの成形工程の一例を示す図である。
【図20】 従来の研削加工装置を示す斜視図である。
【図21】 従来の研削加工装置による研削加工方法の説明図である。
【符号の説明】
1 砥石軸
2 鋭利なナイフエッジ形状の研削砥石
2A 先端
2B ダイヤモンドホイール
2C ホイールのスチール製台座
3 主軸
4 工作物
5 ツルア
11 主軸を回転させるモータ
12 真空チャック
13 ジグ
14 X-Z軸案内テーブル
15 Y軸案内テーブル
16 砥石軸を回転させるモータ
17 クーラントノズル
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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