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明細書 :耐酸化性の改善されたフェライト系耐熱鋼

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4355782号 (P4355782)
公開番号 特開2000-248389 (P2000-248389A)
登録日 平成21年8月14日(2009.8.14)
発行日 平成21年11月4日(2009.11.4)
公開日 平成12年9月12日(2000.9.12)
発明の名称または考案の名称 耐酸化性の改善されたフェライト系耐熱鋼
国際特許分類 C23F  15/00        (2006.01)
C23C  14/14        (2006.01)
FI C23F 15/00
C23C 14/14 D
請求項の数または発明の数 1
全頁数 5
出願番号 特願平11-052009 (P1999-052009)
出願日 平成11年2月26日(1999.2.26)
審査請求日 平成17年10月13日(2005.10.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】板垣 孟彦
【氏名】九津見 啓之
【氏名】藤綱 宣之
【氏名】五十嵐 正晃
【氏名】宗木 政一
【氏名】阿部 冨士雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】伊藤 寿美
参考文献・文献 特開平11-092878(JP,A)
特開平11-092879(JP,A)
特開平11-012704(JP,A)
特表平04-503377(JP,A)
特開平05-305521(JP,A)
特開平10-081979(JP,A)
特開平05-239614(JP,A)
調査した分野 C23F 11/00-11/18,
14/00-17/00
C23C 2/00- 2/40,
4/00- 6/00,
8/00-12/02,
14/00-14/58,
16/00-16/56,
18/00-20/08,
24/00-30/00
C25D 1/00- 3/66,
5/00- 7/12,
9/00- 9/12,
13/00-21/22
特許請求の範囲 【請求項1】
高温・低酸素ポテンシャル雰囲気下で使用される9Crフェライト系耐熱鋼であって、前記雰囲気下で保護性のあるクロム酸化物皮膜を形成させ、鉄酸化物の生成を抑制する白金族元素の1種または2種以上が、前記耐熱鋼の表面部にスパッタリングされてなることを特徴とする耐酸化性の改善されたフェライト系耐熱鋼。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐酸化性の改善されたフェライト系耐熱鋼に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、火力発電所用ボイラー、化学工業装置などの高温で、低酸素ポテンシャル雰囲気で使用可能な耐酸化性の改善されたフェライト系耐熱鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
耐熱鋼や耐熱合金等の耐熱金属材料の耐酸化性は、使用中に金属材料の表面に生成する緻密で保護性のある酸化物皮膜に依存していることが知られている。たとえばクロム(Cr)酸化物皮膜等がこの保護性の皮膜として知られている。
このため、従来、耐熱鋼や耐熱合金の化学組成について、そのような保護性のある酸化物皮膜を構成するCr等の元素の最適化等について検討が進められてきている。
【0003】
しかしながら、火力発電所用ボイラー等が使用される高温で、酸素ポテンシャルの低い環境下では、保護性の酸化皮膜の生成が十分でなく、逆に耐酸化性が低下するという問題が解消されないでいた。また、AlやTiの酸化物のように、潜在的に保護性のある皮膜となる能力が期待されていながら、十分に耐食性を発揮するに至っていない材料も少なくない。
【0004】
本発明は、以上の通りの従来技術の問題点を解消し、高温・低酸素ポテンシャル雰囲気下においても保護性のあるクロム酸化物皮膜の形成を促して耐酸化性を良好なものとすることができる耐酸化性の改善されたフェライト系耐熱鋼を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、高温・低酸素ポテンシャル雰囲気下で使用される9Crフェライト系耐熱鋼であって、前記雰囲気下で保護性のあるクロム酸化物皮膜を形成させ、鉄酸化物の生成を抑制する白金族元素の1種または2種以上が、前記耐熱鋼の表面部にスパッタリングされてなることを特徴としている。
【0006】
本発明は、上記の通り、表面に緻密な保護皮膜として形成するクロム酸化物の構成元素とは異なる白金族元素をフェライト系耐熱鋼耐に存在させることを本質的な特徴としている。白金族元素は、保護性のあるクロム酸化物皮膜の生成を促す触媒的作用を果たすものである。
白金族元素が高温酸化触媒として働くことは以前より知られていることであるが、フェライト系耐熱鋼の表面に保護性のあるクロム酸化物皮膜が形成することを促すという機能はこれまで全く知られておらず、報告もなされていない。保護性のあるクロム酸化物の形成と直接関係のない白金族元素のこのような触媒的な作用は、これまで未知の機序に基づくものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明においては、フェライト系耐熱鋼に白金族元素を存在させるが、フェライト系耐熱鋼については、クロム酸化物皮膜の形成が可能なクロムを構成元素の一つとして含む、いわゆるフェライト系耐熱鋼と呼ばれるものの内、クロムを9質量%含有する9Crフェライト系耐熱鋼を対象としている
【0008】
白金族元素には、Pd,Pt,Ir,Os,RuまたはRhの1種または2種以上が用いられる。これらの白金族元素は、スパッタリングによってフェライト系耐熱鋼の表面部に被覆される
【0009】
白金族元素を添加によって存在させる場合、当然、フェライト系耐熱鋼の強度、靱性等の機械的特性も考慮してその割合を定めればよいが、一般的には、白金族元素の総量は、原子%で0.01~30%の範囲で存在させることが考慮される。好適には、0.05~6%の範囲である。0.01原子%より少ない場合には、保護性のクロム酸化物皮膜の生成が必ずしも十分でなく、30原子%を超える場合には、その効果のさらなる向上が見込めず、経済的でなくなる。
【0010】
一方、フェライト系耐熱鋼の表面部にスパッタリングにより白金族元素を被覆する場合には、微量の白金族元素であってもその効果は十分に得られる。
通常、たとえば水蒸気雰囲気ではフェライト系耐熱鋼の表面には鉄(Fe)を主成分とする保護性のない酸化物膜が厚く形成する。このような保護性のない酸化物は、フェライト系耐熱鋼の腐食を進行させて劣化をもたらし、また、厚く成長した酸化物皮膜の剥離脱落は様々な不都合を生じさせる。
これに対し、本発明によれば、フェライト系耐熱鋼の使用中にCrを主成分とする緻密で保護性のあるクロム酸化物皮膜の形成が促進され、フェライト系耐熱鋼の耐酸化性(耐食性)が大きく向上する。耐酸化性と高温強度の両立が容易となる。
【0011】
白金族元素の被覆または注入を行う場合には、処理によってフェライト系耐熱鋼の機械的性質が影響を受けることはほとんどない。また、フェライト系耐熱鋼の使用中に形成する保護性のあるクロム酸化物皮膜は極めて薄いので、クロム酸化物皮膜の剥離の問題も生じない。
【0012】
以下に実施例を示す。
【0013】
【実施例】
参考例1)
9Cr-3.3W-0.08C-0.2V-0.05Nb-0.2Si-0.5Mn-0.05N-0.005B鋼(9Cr基準鋼)について、水蒸気中700℃-1000時間の酸化における表面皮膜成長に及ぼすPd(パラジウム)添加の効果を評価した。
【0014】
図1は、Pdを添加していない9Cr基準鋼についての表面皮膜の生成を示した破断面の顕微鏡写真である。母材料(9Cr基準鋼)の表面に130μm厚の皮膜が形成しており、最外表面には厚さ45μmの鉄酸化物(Fe)膜が、その下層には85μmの(Fe・Cr)の鉄・クロム混合酸化物膜が形成している。
【0015】
一方、図2は、3原子%Pdを添加して溶製した9Cr耐熱鋼の破断面の顕微鏡写真である。母材料の表面に0.5μm厚の保護性のあるクロム酸化物(Cr)皮膜のみが生成している。
以上の結果から、Pdの添加が、フェライト系耐熱鋼の表面での保護性のあるクロム酸化物皮膜の形成を促し、鉄酸化物の生成を抑えて耐酸化性を大きく向上させていることがわかる。しかも、クロム酸化物皮膜は薄いので、剥離の問題は生じない。
参考例2、実施例
同様にして、3原子%Irを添加した9Cr基準鋼(参考例2)およびスパッタリングにより表面にPdを被覆した9Cr基準鋼(実施例1)についても、700℃-1000時間の水蒸気酸化試験を行った。その結果を図3に示した。
【0016】
図3図中の試料の略記号は次のものを示している。
【0017】
8.5Cr基準材:作製した実験用合金
Fe-0.15C-8.5Cr-2W-0.2V-0.05Nb
9Cr基準鋼 :作製した実験用合金
Fe-0.08C-9Cr-3.3W-0.2V-0.05Nb-0.2Si-0.5Mn-0.05N-0.005B
Mod.9Cr :改良9Cr1Mo鋼(市販されているフェライト系耐熱鋼の一種)
Fe-0.1C-9Cr-1Mo-0.2V-0.06Nb-0.4Si-0.5Mn-0.1N
3%Ir :9Cr基準鋼にIrを3%原子添加した実験用合金
3%Pd :9Cr基準鋼にPdを3%原子添加した実験用合金
Pdスパッター材:9Cr基準鋼にPdをスパッター法によって被覆した実験用合金
【0018】
3%Ir添加では、酸化増量は1/3にまで低下し、3%Pd添加およびPdスパッター材では、1/20以下にまで低下していることがわかる。優れた耐酸化性の改善が認められる。また、いずれの場合も、クロムを主成分とする保護性のある酸化物皮膜の生成のみが確認されている。
【0019】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、本発明によって、高温・低酸素ポテンシャル雰囲気におけるフェライト系耐熱鋼の耐酸化性の改善が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 9Cr基準鋼の表面酸化膜を示した顕微鏡写真である。
【図2】 9Cr基準鋼に3%Pdを添加した表面酸化膜を示した顕微鏡写真である。
【図3】 3%Pd添加、3%Ir添加およびPdスパッター材について示した酸化増量の測定図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2