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明細書 :ガスセンサ用複合膜、ガスセンサ及びガスセンサ用複合膜の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3686782号 (P3686782)
公開番号 特開2000-321232 (P2000-321232A)
登録日 平成17年6月10日(2005.6.10)
発行日 平成17年8月24日(2005.8.24)
公開日 平成12年11月24日(2000.11.24)
発明の名称または考案の名称 ガスセンサ用複合膜、ガスセンサ及びガスセンサ用複合膜の製造方法
国際特許分類 G01N 27/12      
FI G01N 27/12 C
G01N 27/12 M
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願平11-130572 (P1999-130572)
出願日 平成11年5月11日(1999.5.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成11年3月31日 電気化学会化学センサ研究会発行の「Chemical Sensors VoL.15 Supplement A(1999)」に発表
審査請求日 平成15年1月6日(2003.1.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小倉 興太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100107010、【弁理士】、【氏名又は名称】橋爪 健
審査官 【審査官】黒田 浩一
参考文献・文献 特開平11-083779(JP,A)
特表平05-504153(JP,A)
特表平05-503953(JP,A)
特開平10-123082(JP,A)
特開平06-052714(JP,A)
特開平08-261969(JP,A)
調査した分野 G01N 27/12
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
炭酸水素イオン(HCO3-)をドーパントとして取り込み可能な導電性ポリマーと、
吸湿性で水を保持可能な絶縁性ポリマーとを含み、
炭酸ガス(CO2)と前記絶縁性ポリマーにより保持される水分子との反応によりHCO3-が生成され、前記導電性ポリマーによるHCO3-の取り込み量により電気伝導度が変化するようにしたガスセンサ用複合膜。
【請求項2】
前記導電性ポリマーは、熱処理したポリアントラニル酸、塩基型ポリアニリン又はその誘導体のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ用複合膜。
【請求項3】
前記導電性ポリマーは、HCO3-を取り込む前は絶縁性であり、HCO3-を取り込むと導電性に変化することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ用複合膜。
【請求項4】
前記絶縁性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びポリアクリル酸のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガスセンサ用複合膜。
【請求項5】
前記導電性ポリマーと前記絶縁性ポリマーとの重量比は、1:6あることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のガスセンサ用複合膜。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のガスセンサ用複合膜と、
前記ガスセンサ用複合膜に形成された1対の電極と
を備えたガスセンサ。
【請求項7】
ポリアントラニル酸を所定の温度及び時間で熱処理することによりカルボン酸(-COOH)を除去して導電性ポリマーを生成する第1工程と、
前記導電性ポリマーを所定の溶媒に溶解した後、絶縁性ポリマーを含む溶液と混合して複合溶液を生成する第2工程と、
前記複合溶液を基板にキャストした後、乾燥処理により溶媒を除去する第3工程と
を含むガスセンサ用複合膜の製造方法。
【請求項8】
前記第1工程において、ポリアントラニル酸の粉末を所定の温度及び時間で熱処理することによりカルボン酸を除去して塩基型ポリアニリン又はその誘導体を生成することを特徴とする請求項7に記載のガスセンサ用複合膜の製造方法。
【請求項9】
前記第3工程において、前記複合溶液を基板にキャストする前又は後に、該基板に電極を形成するようにしたことを特徴とする請求項7又は8に記載のガスセンサ用複合膜の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、CO2ガスの濃度を検出するガスセンサ用複合膜、ガスセンサ及びガスセンサ用複合膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、気密空間の環境保全、温室での植物栽培、環境問題に関連した大気中の濃度監視などの多くの分野で、炭酸ガスを連続して計測する必要性が高くなってきている。炭酸ガス濃度を測定するには通常、CO2センサが用いられる。CO2センサは、大気中の炭酸ガスを吸着可能な材料の電気伝導度の変化により、炭酸ガス濃度を測定する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のCO2センサのほとんどは、400℃以上の測定条件を必要としており、室温付近で炭酸ガス濃度を(特に、連続的に)精度よく測定することは困難であった。
本発明は、以上の点に鑑み、特に室温付近で炭酸ガス濃度を精度よく、広いダイナミックレンジで、且つ、連続して測定することができるガスセンサ用複合膜、ガスセンサ及びガスセンサ用複合膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の解決手段によると、
炭酸水素イオン(HCO3-)をドーパントとして取り込み可能な導電性ポリマーと、
吸湿性で水を保持可能な絶縁性ポリマーとを含み、
炭酸ガス(CO2)と前記絶縁性ポリマーにより保持される水分子との反応によりHCO3-が生成され、前記導電性ポリマーによるHCO3-の取り込み量により電気伝導度が変化するようにしたガスセンサ用複合膜を提供する。本発明では、絶縁性ポリマーが保持している水とCO2ガスとの解離平衡により生成されたHCO3-を導電性ポリマーに取り込む。HCO3-の取り込み量に応じて複合膜の電気伝導度が変化するため、電気伝導度の値を測定することにより、CO2ガスの濃度を測定できる。
【0005】
また、本発明では、導電性ポリマーとして、HCO3-をドーピングすると導電性に変化する材料、例えば、塩基型ポリアニリン又はその誘導体を用いることができる。塩基型ポリアニリン自体は絶縁性であるが、HCO3-がドーピングされると、導電体に変化する。また、本発明では、絶縁性ポリマーとして、吸湿性に優れるポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びポリアクリル酸を用いることができる。なお、導電性ポリマーと絶縁性ポリマーとの重量比を例えば、略1:6にすると、複合膜を導電性にすることができる。
【0006】
本発明の第2の解決手段によると、このようなガスセンサ用複合膜と、前記ガスセンサ用複合膜に形成された1対の電極とを備えたガスセンサを提供する。
【0007】
さらに、本発明の第3の解決手段によると、
所定の温度及び時間で熱処理することによりポリアントラニル酸からカルボン酸(-COOH)を除去して導電性ポリマーを生成する第1工程と、
前記導電性ポリマーを所定の溶媒に溶解した後、絶縁性ポリマーを含む溶液と混合して複合溶液を生成する第2工程と、
前記複合溶液を基板にキャストした後、乾燥処理により溶媒を除去する第3工程と
を含むガスセンサ用複合膜の製造方法を提供する。
【0008】
また、前記第1工程においては、ポリアントラニル酸の粉末を所定の温度及び時間で熱処理することによりカルボン酸(-COOH)を除去して塩基型ポリアニリン又はその誘導体を生成することができる。さらに、前記第3工程において、前記複合溶液を基板にキャストする前又は後に、該基板に電極を形成するようにしてもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るガスセンサ用複合膜、ガスセンサ及びガスセンサ用複合膜の製造方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0010】
図1は、本発明に係るガスセンサ用複合膜を模式的に示した図である。図1の複合膜は、導電性ポリマー1及び絶縁性ポリマー2を材料として含む。このような複合膜は、CO2ガスの濃度により複合膜の電気伝導度が変化するような特性を有する。したがって、図1の複合膜に電極を形成して電気伝導度を測定することにより、雰囲気中のCO2ガスの濃度を測定可能なガスセンサが得られる。
【0011】
導電性ポリマー1としては、例えば、塩基型ポリアニリン(PAn)又はその誘導体を用いることができる。導電性ポリマー1の材料としては、ポリアニリンのようなイオン性ポリマー、ポリピロールなどの複素環ポリマーや、ポリパラフェニレンなどのポリフェニレン系ポリマー等適宜のものを用いることができる。具体的な材料名としては、例えば、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリペリナフタレンなどが考えられる。なお、複合膜を形成するためには導電性ポリマー1を溶媒に溶解させる必要があるので、導電性ポリマー1としては、溶解性に優れるものが望ましい。
【0012】
絶縁性ポリマー2としては、例えば、次式(I)に示すポリビニルアルコール(PVA)、次式(II)に示すポリアクリル酸(PAA)、次式(III)に示すポリビニルピロリドン(PVP)等を用いることができる。なお、絶縁性ポリマー2としては、これらに限定されず、絶縁性で、吸湿性及び溶解性のあるポリマーを適宜用いることができる。
【化1】
JP0003686782B2_000002t.gif
【0013】
以下の実施の形態では、複合膜の材料の一例として、塩基型PAn及びPVAを用いる場合について説明するが、他の導電性ポリマー1及び絶縁性ポリマー2の材料を適宜用いてもよい。
【0014】
図2は、ガスセンサ及びガスセンサ用複合膜の製造方法についての説明図である。以下、この図を用いてガスセンサ複合膜の製法を説明する。なお、材料の量、温度、時間等は、適宜設定することができる。
【0015】
ポリアントラニル酸(PANA)は、自己ドープポリアニリンの一つとして知られており、ポリアニリン(PAn)と同様に、化学重合法により調製される。具体的には、次式(IV)に示すモノマーのアントラニル酸50mMを含む硫酸水溶液(200mL)中に、酸化剤として0.2M過硫酸アンモニウム[(NH4)2S2O8](100mL)を加え、48時間室温で撹拌した。
【化2】
JP0003686782B2_000003t.gif
【0016】
さらに、ろ過及び洗浄の後、真空乾燥して次式(V)に示すPANA粉末を得た(ステップS1)。
【化3】
JP0003686782B2_000004t.gif
【0017】
次に、PANA粉末を、ヘリウム雰囲気下で所定温度及び所定時間(例えば、250℃で2h又は280℃で2h又は280℃で8h)で熱処理して脱カルボン酸(-4CO2)した(ステップS2)。
以上の処理により、次式(VI)で示す塩基型ポリアニリン(PAn)が得られた。
【化4】
JP0003686782B2_000005t.gif
【0018】
ステップS2でPAnが得られると、次に、PAnをジメチルスルホキジド(DMSO)に溶解した後、これを、式(I)で示されたポリビニルアルコール(PVA)のDMSO溶液に混合して複合溶液を生成する(ステップS3)。なお、複合溶液中のPAnとPVAとの重量比は、1:6程度が望ましい。この程度に重量比を設定すると、複合溶液から生成される複合膜は、絶縁性から導電性に移行する。
【0019】
つぎに、複合溶液を、図2に示すように、ガラス等の基板11上に形成された微小白金くし型等の電極12にキャストした後、真空乾燥により溶媒を除去してガスセンサ複合膜及びガスセンサ10を作製する(ステップS4)。基板11及び電極12は、適宜の材料及び形状を用いることができる。なお、電極12は、複合溶液をキャスティングした後に形成しても良い。
作製されたガスセンサ10に、ガルバノスタット(定電流装置)等の測定装置14を利用して、直流二端子法等により電気伝導度、電流又は電圧を測定することで、CO2ガス濃度を測定することができる。
【0020】
つぎに、本発明に係るガスセンサ用複合膜がCO2を吸収する原理について説明する。
図3に、ガスセンサ用複合膜によるCO2の吸収についての説明図を示す。ガスセンサ用複合膜中のPVA(絶縁性ポリマー2)は、吸湿性が高いため、複合膜中にはかなりの水(H2O)分子が含まれている。このH2O分子とCO2ガスとの解離平衡により、次式(VII)のように、炭酸水素イオン(HCO3-)が生成される。
【化5】
JP0003686782B2_000006t.gif
【0021】
このHCO3-は、複合膜中の塩基型PAn(導電性ポリマー1)にドーピングされる。より詳しくは、図示のように、HCO3-は、塩基型PAn中のN+イオンと結合する。このような結合は、複合膜中に空のサイト(N原子)が多いほど、起こりやすくなり、HCO3-とN+イオンとの結合が多く起こるほど、CO2ガスへの応答感度も高くなる。上述したように、PANAを280℃で8hで熱処理すると、空のサイトを数多くもった塩基型PAnが生成されるため、CO2を効率よく吸着することができる。なお、塩基型PAnは、本来は絶縁性であるが、HCO3-をドープすることにより導電性に変化する。すなわち、塩基型PAnを含む複合膜にHCO3-をドープすると、電気伝導度が変化する。したがって、複合膜の電気伝導度を測定することで、CO2ガスの濃度を精度よく測定できる。
【0022】
つぎに、本発明に係るガスセンサ用複合膜及びガスセンサの特性について説明する。なお、特性を調べるにあたり、一例として、ガスセンサを、真空系に連結したCO2ガス濃度と湿度が調製可能な測定セルに設置して、測定を行った。
【0023】
図4は、PANA粉末の熱処理条件と電気伝導度との関係を示す図である。図示のように、熱処理温度が高いほど、また熱処理時間が長いほど、電気伝導度は低くなる。これは、熱処理温度が高くて熱処理時間が長いほど、PANAからの脱カルボン酸化が促進するためと考えられる。
【0024】
図5に、PANAのフーリエ変換赤外吸収スペクトル図(FTIR(Fourier Transformation Infra Red)吸収スペクトル図)を示す。この図は、図2のステップS2でPANAを熱処理したときのFTIR吸収スペクトル図であり、図示の横軸は波数(cm-1)、縦軸は透過率(a.u.)を表している。図中の波形aは熱処理を行わなかった場合の未熱処理試料のスペクトル、波形bは250℃で2hの熱処理を行った場合のスペクトル、波形cは280℃で8hの熱処理を行った場合のスペクトルである。
【0025】
波形aに見られる波数1690 cm-1と1450 cm-1の吸収は、-COOHのC=OとC-Oの伸縮振動に起因する。また、波数1570 cm-1と1380 cm-1の吸収は、解離型-COO-の対称及び非対称振動に帰属される。一方、波数1600 cm-1、1500 cm-1及び1250 cm-1の吸収は、化学的に合成したPAnの一般的なスペクトルにも見られ、それぞれ、ポリマー骨格中のキノン(Q)、ベンゼン(B)ユニットの環伸縮振動とC-N伸縮振動に帰属される。また、上述した2種のカルボキシル基(-COOH、-COO-)による4本の吸収ピークはいずれも、熱処理温度が高くなるほど、また熱処理時間が長くなるほど、分解脱離により減少する。例えば、波形cでは、上述した4本の吸収ピークはほとんど消失し、ほぼポリマー主鎖のみに起因したスペクトルになる。つまり、PANAからカルボン酸(-COOH)が脱離し、塩基型のPAnを生じたことを示す。
【0026】
図6は、PANAを熱処理する過程で化学式が変化する様子を示す説明図である。同図に示すように、熱処理温度が250℃の場合には、PANAからカルボキシル基(-COOH)が脱離し、熱処理温度を280℃まで上げると、さらにカルボキシル基(-COO-)が脱離し、その温度で8h熱処理を継続すると、さらに自己ドープしたカルボキシル基(-COO-)が脱離して、最終的に塩基型PAnが得られる。
【0027】
図7は、それぞれ異なる温度及び時間でPANAを熱処理して形成された複数の複合膜のそれぞれについて、CO2ガス濃度に対する電気伝導度の変化をプロットした図である。図中の三角プロットは250℃で2hの熱処理を行った場合、四角プロットは280℃で2hの熱処理を行った場合、黒丸プロットは280℃で8hの熱処理を行った場合の測定結果を示している。なお、熱処理を行わなかった場合は、CO2ガス濃度に対する電気伝導度の変化は、ほとんど見られない。
【0028】
図示のように、PANAの熱処理温度が高く、かつ熱処理時間が長くなるにつれて、複合膜のCO2ガスに対する応答感度が高くなる結果が得られた。具体的には、280℃で8h熱処理したPANAとPVAとの複合膜の電気伝導度は、50~104ppmまでのガス濃度に対して、5.95×10-5から6.04×10-3Scm-1まで2桁にわたる直線的な変化を示した。CO2ガス濃度がゼロの場合の複合膜の電気伝導度の湿度依存性は、0~100%RHまではほとんど見られない(5×10-5Scm-1)。
【0029】
図8は、ガスセンサの電気伝導度の湿度依存性を示す図である。図中の横軸はCO2ガスの濃度(ppm)、縦軸は電気伝導度(Scm-1)であり、図中の白丸プロットは湿度が30%RHのときの電気伝導度、菱形プロットは湿度が50%RHのときの電気伝導度、三角プロットは湿度が70%RHのときの電気伝導度を示している。図示のように、湿度が低いほど、電気伝導度の変化が大きく、ガスセンサとしての感度が高いことがわかる。
【0030】
一方、図9は、ガスセンサについての湿度と電気伝導度との関係を示す図であり、横軸は湿度(%RH)、縦軸は電気伝導度(Scm-1)である。図9(A)は、一定湿度を調整する際に通常の水(若干CO2を溶解している)を用いた場合、図9(B)は、一定湿度を調整する際に通常の水とCO2を完全に脱ガスした水とを用いた場合の比較を、それぞれ示す。
【0031】
図9(A)では、白丸プロットは複合膜の雰囲気を加湿して測定した場合、黒丸プロットはそれを除湿して測定した場合の測定結果を示す。ここでは、PANAを280℃で8h熱処理し、ある湿度を与えるために通常の水(CO2が若干溶解している)を用いた場合を示している。
この複合膜の電気伝導度の湿度依存性は、0~40%RHまでは、ほとんどみられず(5×10-5Scm-1)、40%以上から湿度と共に上昇し、95%では3×10-3Scm-1であった。これは、通常の水の中に若干溶解しているCO2の影響である。そこで、一定の湿度を与える際に用いた水からCO2を脱ガスした水を用いて、図9(A)と同様のような測定を行い、通常の水を用いた場合と比較した。
【0032】
図9(B)では、白丸プロットと黒丸プロットは、CO2を脱ガスした水を用いた水を用いて湿度を変えて電気伝導度を測定したものである。一方、白三角プロット、黒三角プロット、白四角プロット及び黒四角プロットは通常の水を用いた場合の測定結果をそれぞれ示している。
なお、白丸プロット、白三角プロット、白四角プロットは、複合膜の雰囲気を加湿して測定した場合であり、黒丸プロット、黒三角プロット、黒四角プロットは、それを除湿して測定した場合である。また、白三角プロットと黒三角プロットは、PANAを熱処理しなかった場合であり、白丸プロット、黒丸プロット、白四角プロット及び黒四角プロットは、PANAを280℃で8h熱処理した場合である。
【0033】
図9(B)と図9(A)とを比較すると明らかなように、一定の湿度を与える際に用いた水からCO2を脱ガスした場合には、湿度によらず、低い一定の電気伝導度(3×10-5Scm-1)が得られた。すなわち、塩基型PAnの電気伝導度は湿度に依存せず、CO2のみに応答することが分かる。
【0034】
図10は、ガスセンサの応答性を示す図であり、横軸は時間、縦軸は電流である。同図は、ガスセンサに対して、CO2とH2Oの混合ガスを断続的に供給した場合に、ガスセンサで検出される電流の変化を示している。図中の上矢印はガスの供給開始時刻、下矢印はガスの供給停止時刻を表している。
ガスの供給を開始してから平衡値の90%の電流が流れるまでに29秒かかり、また、ガスの供給を停止してからガスセンサに流れる電流がゼロになるまでに60秒かかった。
図10からわかるように、本発明のガスセンサ用複合膜は、断続的にガスを供給した場合でも、応答性よくCO2ガスの濃度を測定することができる。すなわち、本発明のガスセンサ用複合膜は、CO2ガスの測定を連続的に行っても、精度良く測定することができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明では、以上のように、例えば、CO2ガスとPVAが保持している水との反応によりHCO3-を生成し、生成されたHCO3-をドーパントとして塩基型PAnに取り込んで複合膜の電気伝導度を変化させる。そのため、本発明によると、ガスセンサ複合膜の電気伝導度を測定することにより、CO2ガスの濃度を精度よく測定することができる。特に、本発明によると、室温でCO2ガスの濃度を精度よく測定でき、また、CO2ガスの濃度測定を長時間にわたり連続的に行うことができる。
【0036】
また、本発明によると、熱処理温度と熱処理時間を適正値に設定することにより、CO2ガス濃度に対する複合膜の電気伝導度の変化の度合いを大きくすることができ、ガスセンサの感度を向上できる。
また、塩基型PAnの電気伝導度は、CO2が存在しなければ、湿度に依存せず一定である。したがって、高湿度あるいは低湿度条件においてもCO2ガス濃度を高い精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るガスセンサ用複合膜を模式的に示した図。
【図2】ガスセンサ及びガスセンサ用複合膜の製造方法についての説明図。
【図3】HCO3-が塩基型ポリアニリン中のN+イオンと結合する様子を示す図。
【図4】PANA粉末の熱処理温度と電気伝導度との関係を示す図。
【図5】PANAのFTIR吸収スペクトル図。
【図6】PANAを熱処理する過程で化学式が変化する様子を示す説明図。
【図7】CO2ガス濃度に対する電気伝導度の変化をプロットした図。
【図8】ガスセンサの電気伝導度の湿度依存性を示す図。
【図9】ガスセンサの湿度と電気伝導度との関係を示す図。
【図10】ガスセンサの応答性を示す図。
【符号の説明】
1 導電性ポリマー
2 絶縁性ポリマー
10 ガスセンサ
11 基板
12 電極
14 測定装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9