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明細書 :磁気特性と耐食性に優れる熱延電磁鋼板およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3706765号 (P3706765)
公開番号 特開2000-336464 (P2000-336464A)
登録日 平成17年8月5日(2005.8.5)
発行日 平成17年10月19日(2005.10.19)
公開日 平成12年12月5日(2000.12.5)
発明の名称または考案の名称 磁気特性と耐食性に優れる熱延電磁鋼板およびその製造方法
国際特許分類 C22C 38/00      
B21B  3/02      
C21D  8/12      
FI C22C 38/00 303S
B21B 3/02
C21D 8/12 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願平11-148325 (P1999-148325)
出願日 平成11年5月27日(1999.5.27)
審査請求日 平成12年7月7日(2000.7.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】594208536
【氏名又は名称】安彦 兼次
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】安彦 兼次
個別代理人の代理人 【識別番号】100080687、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 順三
【識別番号】100077126、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 盛夫
【識別番号】100080687、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 順三
審査官 【審査官】佐藤 陽一
参考文献・文献 特開平05-101919(JP,A)
特開平07-048657(JP,A)
調査した分野 C22C 38/00-38/60
C21D 8/12
C21D 9/46,501
B21B 3/02
特許請求の範囲 【請求項1】
Fe:99.95mass%以上、C+N+S:10mass ppm以下、O:50mass ppm以下で、残部は不可避的不純物の超高純度鉄からなり、X線回折強度比(100/I0)21以上である、磁気特性と耐食性に優れる熱延電磁鋼板。
【請求項2】
Fe:99.95 mass%以上、
C+N+S:10 mass ppm 以下、
O:50 mass ppm 以下
で、残部は不可避的不純物の超高純度鉄を、γ域に加熱し、合計圧下率を50%以上、かつ少なくとも1パスはロールと圧延材との摩擦係数を0.3 以下とする熱間圧延をγ域にて行い、その後、Ar3変態点~300 ℃の平均冷却速度0.5 ~150 ℃/分にて冷却することを特徴とする、磁気特性と耐食性に優れる熱延電磁鋼板の製造方法。
【請求項3】
Fe:99.95 mass%以上、
C+N+S:10 mass ppm 以下、
O:50 mass ppm 以下
で、残部は不可避的不純物の超高純度鉄を、γ域に加熱し、合計圧下率を50%以上、かつ少なくとも1パスは、ロールと圧延材との摩擦係数を0.3 以下、かつひずみ速度を150 1/秒以上とする熱間圧延をγ域にて行い、その後、Ar3変態点~300 ℃の平均冷却速度0.5 ~150 ℃/分にて冷却することを特徴とする、磁気特性と耐食性に優れる熱延電磁鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱延電磁鋼板、特に熱延のままの状態で板面垂直方向に〈100〉軸が高密度に集積して磁気特性に優れるとともに、耐食性にも優れる純鉄系の熱延電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
変圧器や発電機の鉄心には、従来から、電磁特性が優れた珪素鋼板が用いられてきた。この珪素鋼板には、2次再結晶を利用して{110}〈001〉方位粒いわゆるゴス方位粒を発達させた一方向性珪素鋼板と、板面に平行に{100}面をもつ結晶粒を発達させた無方向性珪素鋼板の2種類がある。このうち、無方向性珪素鋼板は板面内の種々の方向に磁界が作用する場合に特に良好な特性を有するので、発電機や電動機などに多く使用されている。
ところで、このような用途に用いられる無方向性珪素鋼板を製造する際に、板面に平行に{100}面を密度高く集積させるためには、従来、雰囲気を制御した脱炭焼鈍、冷間圧延時に圧延方向を変化させる交差圧延などが必要であった。
【0003】
例えば、特開平1-108345号公報には、Si:0.2 ~6.5 wt%の珪素鋼を、また特開平4-224624号公報には、Al+Si:0.2 ~6.5 wt%の鋼を冷間圧延後、弱脱炭性雰囲気、例えば、0.1 torr以下の真空中または露点0℃以下のH2 、He、Ne、Nr、Ar、Xe、Rn、N2 の1種または2種からなる雰囲気において、850 ℃で1~48時間の焼鈍を行い、板表面から5~50μmの深さの領域にα単相域を形成させ、次いで強脱炭性の雰囲気、例えば、露点-20℃以上のH2 中、または露点-20℃以上のH2 に不活性ガスもしくはCO、CO2 を添加したガス中において、650 ~900 ℃で5~20分焼鈍を行い、表層部に生成したα単相域を板厚内部に向かって成長させることにより、磁気特性を向上させる技術が開示されている。
このように、従来から、板面に平行に{100}面を高密度に集積させるためには、熱間圧延-冷間圧延の工程に加えて脱炭焼鈍を含む複雑な工程が必須とされてきた。また、3%Si鋼を始めとする従来の電磁鋼板は、耐食性が極めて低いため、最終製品には耐食性に優れた絶縁被膜が施されており、製品コストを上昇させる要因となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、電気製品の普及にともない、より安価で高性能な特性が求められるようになり、上述した従来技術では対応できないようになってきた。かかる要請に応えるには、製造工程をより単純化することが考えられるが、従来の技術では、熱間圧延のままで、板面に平行に{100}方位の集積を高めることは困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、熱間圧延を終了した時点で、板面に平行に{100}方位を集積させ、磁気特性に優れ、しかも耐食性に優れる熱延電磁鋼板およびその製造方法を提案することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、熱延電磁鋼板における上記課題の解決に向けて鋭意研究を重ねた結果、鋼を高純度化して純鉄系の成分組成にするとともに、熱延条件(特に、所定温度域での圧下率、摩擦係数)および熱延後のα域での冷却速度を適正にすれば、板面に平行に{100}の方位、すなわち鋼板の<100>//ND(板面垂直方向)の方位、の形成が促進されることを見いだし、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、Fe:99.95mass%以上、C+N+S:10mass ppm以下、O:50mass ppm以下で、残部は不可避的不純物の超高純度鉄からなり、X線回折強度比(100/I0)21以上である、磁気特性と耐食性に優れる熱延電磁鋼板である。
【0007】
また、本発明は、上記熱延電磁鋼板を製造するための方法として、Fe:99.95 mass%以上、C+N+S:10 mass ppm 以下、O:50 mass ppm 以下で、残部は不可避的不純物の超高純度鉄を、γ域に加熱し、合計圧下率を50%以上、かつ少なくとも1パスはロールと圧延材との摩擦係数を0.3 以下とする熱間圧延をγ域にて行い、その後、Ar3変態点~300 ℃の平均冷却速度0.5 ~150 ℃/分にて冷却することを特徴とする、磁気特性と耐食性に優れる熱延電磁鋼板の製造方法を提案する。
さらに、本発明は、より好ましい製造方法として、Fe:99.95 mass%以上、C+N+S:10 mass ppm 以下、O:50 mass ppm 以下で、残部は不可避的不純物の超高純度鉄を、γ域に加熱し、合計圧下率を50%以上、かつ少なくとも1パスは、ロールと圧延材との摩擦係数を0.3 以下、かつひずみ速度を150 1/秒以上とする熱間圧延をγ域にて行い、その後、Ar3変態点~300 ℃の平均冷却速度0.5 ~150 ℃/分にて冷却することを特徴とする、磁気特性と耐食性に優れる熱延電磁鋼板の製造方法を提案する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明の純鉄系電磁鋼板の化学組成の限定理由について説明する。
・Fe:99.95 mass%以上
<100>//NDの方位粒は、高純度Feの素材をγ域で熱間圧延し、その後のα域での冷却中に発達する。Feの純度は本発明において特に重要であり、99.95 mass%に満たない純度では上記<100>//NDの方位粒が冷却中に発達しにくくなる。よって、Feは99.95 mass%以上、好ましくは99.98 mass%以上とする。
【0009】
・C+N+S:10 mass ppm 以下、O:50 mass ppm 以下
純鉄中のこれらのガス成分は、同じく純鉄中に数~数十mass ppmの単位で極微量に含まれる金属元素(Al、Ti、Nb、Mnなど)と炭化物、酸化物などを形成し、<100>//NDの方位粒の核発生および成長を阻害する。また、純鉄系材料の腐食は、主として粒界に偏析したC、N、Sや粒界、粒内に存在する酸化物を起点にして発錆する。
C、N、SおよびOによるこのような悪影響は、C+N+Sが10 mass ppm を超えても、Oが50 mass ppm を超えても現れるので、C+N+S:10 mass ppm 以下およびO:50 mass ppm 以下をともに満たすことが必要である。なお、好ましい含有範囲は、C+N+S:5 mass ppm 以下、O:20 mass ppm 以下である。
【0010】
つぎに、本発明の純鉄系電磁鋼板の製造条件について説明する。
・熱間圧延
上記成分組成の純鉄系の鋼素材をα域で熱延すると結晶粒が微細化して、<100>//ND方位粒がまったく発達しない。このため熱延はγ域の温度で行う必要がある。このγ域圧延において、ロールと素材との摩擦係数が0.3 を超えると、板厚の1/10近傍の位置に<110>//ND方位粒が発生し易く、<100>//ND方位粒の発生と成長が抑制される。このため摩擦係数を0.3 以下、好ましくは0.2 以下として熱延する。この条件での圧延(いわゆる、潤滑圧延)は、熱延の少なくとも1パスで行えば効果が現れるが、特に最終パスで行うと、変態前に鋼板表層に剪断ひずみが集中しないので、より大きい効果がもたらされる。さらに、潤滑圧延時に、圧延のひずみ速度を150 1/秒以上とすると、<100>//ND方位粒の形成が促進される。このような傾向がもたらされるのは、鋼板表層部に形成されやすい<110>//NDなど、<100>//ND以外の方位粒の形成が抑制されるからであると考えられる。なお、ひずみ速度を200 1/秒以上とすればさらに大きな効果が得られる。
【0011】
上述したγ域における熱間圧延は、合計圧下率を50%以上とする必要がある。というのは、γ域熱延時の合計圧下率を50%以上とすることにより、熱延中の再結晶が促進され、γ粒径が微細化して、γ→αの変態後の冷却過程において、<100>//ND方位粒が優先的に板厚方向に成長するからである。合計圧下率が50%未満では、等軸でランダムな方位を有する結晶粒が板厚中心部に残留し、磁気特性が低下してしまう。
【0012】
・熱延後の冷却
超高純度鉄中の<100>//ND方位粒は、γ→α変態後のα域で鋼板表面から中心に向かって、新らたに変態して発生したα粒を浸食しながら成長する。このとき、Ar3~300 ℃の冷却速度が150 ℃/分を超えると粒成長速度が冷却速度に追いつかず、板厚中心部に等軸粒が残存する。一方、冷却速度が0.5 ℃/ 分よりも遅くなると、<100>//ND方位粒が粗大化し、かえって磁気特性の低下を招いてしまう。したがって、圧延後のAr3~300 ℃の温度範囲での冷却速度は0.5 ~150 ℃/分とする必要がある。なお、好ましい冷却速度は1.0 ~100 ℃/分である。
【0013】
以上述べたように、本発明は、純鉄系の鋼を素材として、所定の条件で製造することによって始めてその効果が現れ、そのうちのいずれかの条件が満たされないと、<100>//ND方位粒の集積度を高めることはできない。なお、耐食性は製造条件には殆ど影響を受けず、成分組成に依存する。
【0014】
【実施例】
本発明を実施例により、具体的に説明する。
表1に示す化学組成の純鉄系の鋼を水冷式銅坩堝を備えた超高真空(10-8Torr)溶解炉で溶解し、10Kgのインゴットとした。これらインゴットをγ域で熱間鍛造し、厚さ25 mm の棒状の素材とした。この棒状素材を1100℃に加熱後、熱間圧延により板厚1 mm (一部,板厚5mmおよび13mm)まで熱延した。この際、最終パスにおいて、ロールと素材との摩擦係数、ひずみ速度等を変えて熱延した。さらに、圧延後の冷却速度も広い範囲で変更した。これら製造条件を表2に示す。
【0015】
【表1】
JP0003706765B2_000002t.gif
【0016】
【表2】
JP0003706765B2_000003t.gif
【0017】
得られた熱延板の板厚1/4位置において、X線による集合組織測定をおこなった。また、各熱延板の板厚中心部より板厚1.0 mm の試験片を切り出して、これからさらに内径50mm、外径60mmのリング状試験片を打ち抜き、各試験片に1次コイル、2次コイルを100 ターンづつ巻いて磁気特性を測定した。採用した磁気特性としては、50000 A/m の外部磁界をかけた場合の磁束密度(B50)と、50Hzの交流磁界中で1.5 Tまで磁化した場合の鉄損(W15/50)である。
耐食性は、20℃の王水(濃硝酸と濃塩酸を体積比で1:3で混合した溶液)中に100 秒間浸漬し、腐食速度を測定することによって行った。腐食速度が1.0 g/m2以下であれば通常の使用環境で十分な耐食性を有していると言える。
【0018】
試験結果を表2に合わせて示す。表2から、発明例は磁気特性と耐食性の両者とも優れていることがわかる。これに対し、比較例は磁気特性または耐食性の少なくとも一方の特性が発明例よりも大幅に劣っていることがわかる。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、冷間圧延後の脱炭焼鈍などの複雑な工程を経なくとも、熱間圧延終了時にすでに板面に平行に{100}方位を集積させることが可能となるので、安価で磁気特性に優れる熱延電磁鋼板を提供することが可能となる。