TOP > 国内特許検索 > 胎盤型有機アニオントランスポーターとその遺伝子 > 明細書

明細書 :胎盤型有機アニオントランスポーターとその遺伝子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4435334号 (P4435334)
公開番号 特開2001-017174 (P2001-017174A)
登録日 平成22年1月8日(2010.1.8)
発行日 平成22年3月17日(2010.3.17)
公開日 平成13年1月23日(2001.1.23)
発明の名称または考案の名称 胎盤型有機アニオントランスポーターとその遺伝子
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
C07K  16/18        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/47
C07K 16/18
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 17
出願番号 特願平11-187244 (P1999-187244)
出願日 平成11年7月1日(1999.7.1)
審査請求日 平成18年6月19日(2006.6.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】遠藤 仁
【氏名】関根 孝司
【氏名】車 碩鎬
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査官 【審査官】冨永 みどり
参考文献・文献 Am J.Physiol. ,1999年,Vol.276,p.F122-F128
Toxicol. Lett.,1998年,Vol.102/103 ,p.29-33
J.Biol.Chem. ,1999年,Vol.274,No.19,p.13675-13680
調査した分野 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/GeneSeq
PubMed
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2で示されたアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつエストロン硫酸、デヒドロエピアンドロステロン硫酸、及び/又はオクラトキシンAを輸送する能力を有する胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4。
【請求項2】
配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2で示されたアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、かつエストロン硫酸、デヒドロエピアンドロステロン硫酸、及び/又はオクラトキシンAを輸送する能力を有する胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4をコードする核酸。
【請求項3】
配列表の配列番号1で示される塩基配列からなるDNA、又はその相補配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列からなる核酸であって、かつエストロン硫酸、デヒドロエピアンドロステロン硫酸、及び/又はオクラトキシンAを輸送する能力を有する胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4をコードする核酸。
【請求項4】
配列表の配列番号1で示される塩基配列又はその相補配列中に含まれる、連続する20塩基以上の塩基配列からなる核酸。
【請求項5】
請求項に記載の胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4をコードする遺伝子の存在を検出、同定又は定量するためのプローブとして使用されるための請求項に記載の核酸。
【請求項6】
請求項に記載の胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4に対する抗体。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有機アニオン(有機陰イオン)輸送に関与する遺伝子と、その遺伝子がコードするポリペプチドに関する。より詳細には、本発明は、胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4、それをコードする遺伝子、当該遺伝子を検出するためのプローブ、及び当該蛋白質を認識し得る抗体に関する。
【0002】
【従来の技術】
腎臓や肝臓は、生体異物や薬物の代謝および体外排出に関して重要な役割を果たしている。腎臓の尿細管細胞は極性を有する上皮細胞であり、側底膜を介して血液と接し、種々の物質の受け渡しを行っている。有機アニオンの一部は、輸送担体(トランスポーター)により側底膜を介して腎臓に取り込まれ、また細胞内で代謝により産生された有機アニオンもトランスポーターにより排出されることがこれまでの生理学的な研究から予測されてきた。
【0003】
有機アニオンは、薬物や環境毒素、またそれらの代謝物などの多くを含むことから、有機アニオン輸送系は、生体異物排泄系あるいは薬物輸送系としても広く知られてきた。
尿細管細胞の有機アニオンの取り込みについては、これまで摘出臓器灌流法や単離細胞膜小胞系などを用いた実験系により研究されてきた。しかし従来の手法では、側底膜を介した有機アニオン輸送系について詳細に解析することは困難であり、トランスポーターそのものを単離して解析することが望まれてきた。
【0004】
有機アニオン輸送は、腎臓や肝臓以外の組織においても行われている。胎盤は、胎児と母体との間で物質交換を活発におこなっている組織であり、糖やアミノ酸を含む生体必須物質はトランスポーターを介して、母体から効率良く胎児に輸送されている。
一方、胎盤は胎児の外部環境に対する組織バリアーとしての役目も担っている。胎盤は、母体が摂取した生体異物の胎児への自由な移行に対して、ある種の制限を与えており、この機能の一部は、異物排泄トランスポーターによる胎児循環からの異物除去によるものと想定される。
【0005】
さらに、胎児の体内においても種々の代謝反応がおこっており、その結果として有機アニオンが産生されている。胎児の解剖学的な特殊性から、こうした代謝物の排泄は主に胎盤を介している。有機アニオントランスポーターが胎盤に存在してこの役割を果たしていると考えるのは、合目的的である。
このように、胎盤における生体異物輸送(特に有機アニオン輸送)は、胎児の発育および遺伝毒性に関して重要な役割を担っていると考えられるにも関わらず、腎臓や肝臓以上にその輸送の詳細は不明である。
【0006】
本発明者らは、既に腎臓、肝臓、脳などにおいて中心的な役割を果たしている有機アニオントランスポーターOAT1(J. Biol Chem 272巻,18526-9頁、1997)、OAT2(FEBS letter 429、179-182頁、1998)、およびOAT3(J. Biol Chem ,274巻, 13675-13680頁、1999)を単離し報告してきた。また、これらについては、既に特許出願済みである。OAT1、OAT2およびOAT3は化学構造の異なる多くの有機アニオンを輸送することの出来るトランスポーターであり、種々のアニオン性薬物の輸送も行っている。
OAT1、OAT2さらにOAT3の単離、同定は有機アニオントランスポーターがファミリーを形成することを示している。このファミリーのメンバーは、腎臓や肝臓など生体異物の体外排泄に中心的な役割を果たしている臓器のみならず、組織関門を形成する脳にもその発現が認められる。
【0007】
これらの事実から、本発明者らは、組織関門の機能的単位および胎児の代謝物排泄経路として、胎盤における有機アニオントランスポーターの存在を予想し、胎盤に存在する新規な有機アニオントランスポーターを単離した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、胎盤における有機アニオン輸送に関与する新規な有機アニオンントランスポーター遺伝子およびその遺伝子がコードするポリペプチドである有機アニオントランスポーターを同定し、提供することにある。その他の目的については以下の記載より明白である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、既に述べたように、3つの有機アニオントランスポーターOAT1、OAT2およびOAT3を単離した。これらは相互に40%前後のアミノ酸配列の相同性を有している。これらの配列をもとに、ESTデータベース(expressed sequence tag data base)を検索し、OAT1,2および3と相同性を有する新規cDNA断片を同定した。このcDNA断片を用いて、ヒト腎臓cDNAライブラリーよりこれまでに報告のない新規クローン(OAT4)を同定した。そして、このものが胎盤型であることを確認した。
【0010】
したがって、本発明は、胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4に関し、より詳細には、本発明は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は、その一部のアミノ酸配列が欠失し、他のアミノ酸で置換もしくは付加されてもよいアミノ酸配列を有する胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4に関する。
本発明の胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4は、有機アニオンとしてエストロン硫酸、デヒドロエピアンドロステロン硫酸、及び/又はオクラトキシンAなどの有機アニオンを取り込む能力を有する胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4である。
【0011】
また、本発明は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は、その一部のアミノ酸配列が欠失し、他のアミノ酸で置換もしくは付加されていてもよいアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする塩基配列又はそれとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列を有する核酸、好ましくはDNAに関し、前記した本発明の胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4をコードする遺伝子に関する。
さらに、本発明は、配列表の配列番号1で示される塩基配列を有するDNAの連続する少なくとも14塩基以上、好ましくは20塩基以上、またはそれらの相補鎖よりなる塩基配列を有する核酸、好ましくはDNAに関し、当該DNAなどの核酸は前記下本発明の胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4をコードする遺伝子を検出、同定又は定量するためのプローブとして有用である。
また、本発明は、前記した本発明の胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4を認識し得る抗体にも関する。
【0012】
本発明の有機アニオントランスポーターOAT4は、異なる化学構造を持った有機アニオンに対してこれらを輸送する(取り込む)能力を有する、広い範囲の基質選択性を有するトランスポーターである。本発明の胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4は、エストロン硫酸、デヒドロエピアンドロステロン硫酸、及び/又はオクラトキシンAなどの有機アニオンを取り込む能力を有している。
【0013】
本発明者らは、既に本発明者らが単離したOAT1、OAT2およびOAT3の塩基配列情報をもとに、公開されているEST データベースを探索したところ、OAT1、OAT2およびOAT3と相同性を有する新規cDNA断片H12876を得た。このH12876を32Pでラベルしたプローブを用いて、既に構築してあったヒト腎臓cDNAライブラリーをスクリーニングした。
この結果、有機アニオン輸送活性を持つ新規cDNA(hOAT4 cDNA)が得た。得られたcDNA(OAT4 cDNA)の塩基配列の決定は、特異的プライマーを用いて、自動シークエンサー(アプライドバイオシステム社製)により行い、配列表の配列番号1に示す塩基配列であることが分かった。
【0014】
得られたOAT4が、有機アニオン輸送活性を持っていることを確認するために、関根らの方法(Sekine,T., et al.J Biol Chem 272巻、18526-9頁、1997年)に準じて、このcDNAを含むプラスミドからcRNA(cDNAに相補的なRNA)を調製し、これをアフリカツメガエルの卵母細胞に注入し、この卵母細胞について放射能標識された種々の有機アニオンおよび有機カチオンによる取り込み実験を行った。
この結果を図1に示す。図1に示されるように、OAT4を発現させた卵母細胞はH-エストロン硫酸、H-デヒドロエピアンドロステロン硫酸、及びH-オクラトキシンAの取り込みを示すことが判明した。これに対して代表的な有機カチオンである14C-TEA(テトラエチルアンモニウム)の取り込みは認められなかった。
【0015】
次に、前記したOAT4 cRNAを注入した卵母細胞を用いて、本発明のOAT4による種々の濃度におけるエストロン硫酸、デヒドロエピアンドロステロン硫酸の取り込み量の変化を調べ、有機アニオン輸送のミカエリスーメンテン動力学試験を行った。
この結果を図2に示す。この結果、本発明のOAT4は、ある濃度までは濃度依存的に有機アニオンの取り込み量を増加させるものであることがわかった。そして、エストロン硫酸、デヒドロエピアンドロステロン硫酸の取り込みのKm値はそれぞれ 1.01±0.15μM、0.63±0.04μMであった。
【0016】
本発明のOAT4の有機アニオン輸送におけるナトリウム依存性を検討した。OAT4によるエストロン硫酸の取り込みを、種々の細胞外陽イオンの存在下に実験した。結果を図3に示す。図3に示されるように、細胞外陽イオンとしてナトリウムイオン、コリンイオン及びリチウムイオンが存在するとOAT4を介したエストロン硫酸の取り込み活性が認められ、細胞外ナトリウムをリチウムおよびコリンに置換しても、OAT4を介したエストロン硫酸の輸送に変化は無く、OAT4が細胞外ナトリウム非依存性の有機アニオントランスポーターであることが明らかになった。
【0017】
さらに、本発明のOAT4の基質選択性を検討するために、H-エストロン硫酸の取り込み実験系において、系へ各種イオン性物質を添加し、その影響を調べた(阻害実験)。
その結果を図4に示す。この結果、種々のアニオン性物質(プロベネシド、ペニシリンG、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナック、フロセミド、ブメタニド、ブロモサルフォフタレイン、コール酸、タウロコール酸など)はOAT4によるH-エストロン硫酸の輸送を有意に阻害したが、テトラエチルアンモニウムのようなカチオン性物質および無機硫酸は阻害作用を示さなかった。以上の結果から、OAT4は多選択性有機アニオントランスポーターであることが判明した。
【0018】
本発明のOAT4が、エストロン硫酸及びデヒドロエピアンドロステロン硫酸の二つの硫酸抱合体の取り込み活性を示したため、各種硫酸抱合体およびグルクロン酸抱合体がOAT4と相互作用を示すか否かを、阻害実験により調べた。結果を図5に示す。この結果、ミノキシジル硫酸を除く硫酸抱合体は全てOAT4と相互作用を示した。一方、グルクロン酸抱合体は、αナフチルβグルクロナイド以外は、OAT4と弱い相互作用を示すのみであった。
【0019】
次に、本発明のOAT4が、ヒト組織のどの部位に発現しているかをノーザンブロット解析により調べた。
このノーザンブロットの結果を図6に示す。この結果、本発明のOAT4は腎臓および胎盤のみにおいて、強いバンドが検出され、本発明のOAT4が胎盤型のものであることが判明した。
したがって、本発明のOAT4は、ヒトの胎盤型有機アニオントランスポーターであり、本発明においてはこれを胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4という。
【0020】
本発明のタンパク質としては、配列番号2で示されたアミノ酸配列を有するもののほか、例えば、配列番号2で示されたアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するものが挙げられる。アミノ酸が欠失、置換もしくは付加は、有機アニオン輸送活性が失われない程度であればよく、通常1~約110個、好ましくは1~約55個である。このようなタンパク質は、配列番号2で示されたアミノ酸配列と通常、~75%、好ましくは~90%のアミノ酸配列のホモロジーを有する。
【0021】
本発明において、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、通常、ハイブリダイゼーションを、5×SSC又はこれと同等の塩濃度のハイブリダイゼーション溶液中、37~42℃の温度条件下、約12時間行い、5×SSCまたはこれと同等の塩濃度の溶液等で予備洗浄を行った後に、1×SSC又はこれと同等の塩濃度で洗浄を行うことにより実施できる。また、より高いストリンジェンシーを得るためには、洗浄を0.1×SSC又はこれと同等の塩濃度の溶液中で洗浄を行うことにより実施できる。
本発明におけるストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションし得る核酸とは、前記した条件下でハイブリダイゼーションし得るものが包含される。
【0022】
本発明の有機アニオントランスポーター及びその遺伝子は、ヒト以外に適当な哺乳動物の組織や細胞を遺伝子源として用いてスクリーニングを行うことにより単離取得することもできる。哺乳動物としては、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、サル、ブタ、ウサギ、ラット、マウスなどの非ヒト動物を用いることもできる。遺伝子のスクリーニングおよび単離は、ホモロジースクリーニングおよびPCRスクリーニングなどにより好適に実施できる。
得られたcDNAについては、常法により塩基配列を決定し、翻訳領域を解析して、これにコードされるタンパク質、即ちOAT4のアミノ酸配列を決定することができる。
【0023】
得られたcDNAが有機アニオントランスポーター遺伝子のcDNAであること、即ち、cDNAにコードされた遺伝子産物が有機アニオントランスポーターであることは、例えば次のようにして検証することができる。得られたOAT4cDNAから調製したcRNAを卵母細胞に導入して発現させ、有機アニオンを細胞内に輸送する(取り込む)能力を、適当な有機アニオンを基質とする通常の取り込み実験(Sekine,T.ら、J. Biol Chem 272巻,18526-9頁、1997)により、細胞内への基質取り込みを測定することにより確認できる。
【0024】
また、前記した発現細胞に同様の取り込み実験を応用して、OAT4の輸送特性や基質特異性などを調べることができる。
得られたOAT4遺伝子のcDNAを用いて、異なる遺伝子源で作製された適当なcDNAライブラリー又はゲノミックDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、異なる組織、異なる生物由来の相同遺伝子や染色体遺伝子等を単離することができる。
【0025】
また、開示された本発明の遺伝子の塩基配列(配列番号1)に示された塩基配列、もしくはその一部)の情報に基づいて設計された合成プライマーを用い、通常のPCR法によりcDNAライブラリーから遺伝子を単離することが出来る。
cDNAライブラリー及びゲノミックDNAライブラリー等のDNAライブラリーは例えば、「Molecular Cloning;Sambrook, J.,Fritsh,E.F.およびManiatis,T.著、Cold Spring Harbor Laboratory Pressより1989年に発刊」に記載の方法により調製することができる。あるいは、市販のライブラリーがある場合にはこれを用いてもよい。
【0026】
本発明の有機アニオントランスポーター(OAT4)は、例えば、有機アニオントランスポーターをコードするcDNAを用い、遺伝子組み換え技術により生産することができる。例えば、有機アニオントランスポーターをコードするDNA(cDNA等)を適当な発現ベクターに組み込み、得られた組み換えDNAを適当な宿主細胞に導入することができる。ポリペプチドを生産するための発現系(宿主ベクター系)としては、例えば、細菌、酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞の発現系等が挙げられる。このうち、機能タンパクを得るためには、昆虫細胞および哺乳動物細胞を用いることが望ましい。
【0027】
例えば、ポリペプチドを哺乳動物で発現させる場合には、有機アニオントランスポーターをコードするDNAを、適当な発現ベクター(例えば、レトロウイルス系ベクター、パピローマウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、SV40系ベクター等)中の適当なプロモーター(例えばSV40プロモーター、LTRプロモーター、エロンゲーション1αプロモーター等)の下流に挿入して発現ベクターを構築する。次に、得られた発現ベクターで適当な動物細胞を形質転換して、形質転換体を適当な培地で培養することによって、目的とするポリペプチドが生産される。宿主とする哺乳動物細胞としては、サルCOS-7細胞、チャイニーズハムスターCHO細胞、ヒトHela細胞または、腎臓組織由来の初代培養細胞やブタ腎由来LLC-PK1細胞、フクロネズミ腎由来OK細胞等の細胞株が挙げられる。
【0028】
有機アニオントランスポーターOAT4をコードするcDNAとしては、例えば、配列番号1に示される塩基配列を有するcDNAを用いることが出来るほか、前記のcDNAに限定されることなく、アミノ酸配列に対応するDNAを設計し、ポリペプチドをコードするDNAを用いることもできる。この場合、一つのアミノ酸をコードするコドンは各々1~6種類知られており、用いるコドンの選択は任意でよいが、例えば発現に利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、より発現の高い配列を設計することができる。設計した塩基配列をもつDNAはDNAの化学合成、前記cDNAの断片化と結合、塩基配列の一部改変等によって取得できる。人為的な塩基配列の一部改変、変異導入は、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用して部位変異導入法(site specific mutagenesis)「Mark,D.F.ら、Proc Natl Acad Sci USA 第18巻、5662-5666頁、1984年」等により実施できる。
【0029】
本発明の有機アニオントランスポーター遺伝子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド(オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド)は、有機アニオントランスポーター遺伝子を検出するためのプローブとして使用できるほか、有機アニオントランスポーターの発現を変調させるために、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、やリボザイム、デコイとして使用することもできる。このようなヌクレオチドとしては、例えば、配列番号1で示される塩基配列の中の通常、連続する14塩基以上の部分配列もしくはその相補的な配列を含むヌクレオチドを用いることができ、ハイブリダイズをより特異的とするためには、部分配列としてより長い配列、例えば20塩基以上あるいは30塩基以上の配列を用いても良い。
【0030】
また、本発明の有機アニオントランスポーターまたは、これと免疫学的同等性を有するポリペプチドを用いて、その抗体を取得することが出来、抗体は、有機アニオントランスポーターの検出や精製などに利用できる。抗体は、本発明の有機アニオントランスポーター、その断片、またはその部分配列を有する合成ペプチド等を抗原として用いて製造できる。ポリクロナール抗体は、宿主動物(たとえば、ラットやウサギ)に抗原を接種し、免疫血清を回収する通常の方法により製造することができ、モノクロナール抗体は、通常のハイブリドーマ法などの技術により製造できる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例をもって本説明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお下記実施例において、各操作は特に断りがない限り、「Molecular Cloning:Sambrook,J.,Fritsh,E.F.およびManiatis,T.著、Cold Spring Harbor Laboratory Pressより1989年に発刊」に記載の方法により行うか、または、市販のキットを用いる場合には市販品の指示書に従って使用した。
【0032】
実施例1(多選択性有機アニオントランスポーター4(OAT4)cDNAの単離とその解析)
既に本発明者らが単離したOAT1、OAT2およびOAT3の塩基配列情報をもとに、公開されているEST データベースを探索した。この結果、OAT1、OAT2およびOAT3と相同性を有する新規cDNA断片H12876を得た。
得られたH12876を32Pでラベルしたプローブを用いて、既に構築してあったヒト腎臓cDNAライブラリーをスクリーニングした。ハイブリダイゼーションは、50℃のハイブリダイゼーション用溶液中で一昼夜行い、その後フィルター膜は、50℃で0.1×SSC/0.1%SDSで洗浄した。ハイブリダイゼーション溶液としては、50%ホルムアミド、5×standard saline citrate(SSC)、3×デンハード液、0.2%SDS、10%硫酸デキストラン、0.2mg/ml変性サーモン精子DNA、2.5mMピロリン酸ナトリウム、25mM MES、0.01%Antifoam B(シグマ社製)を含むpH6.5の緩衝液を用いた。
【0033】
λZipLox中に単離されたクローンは、in vivo excision法によりプラスミドベクタ-pZLにさらにサブクローン化した。この結果、有機アニオン輸送活性を持つ新規cDNA(hOAT4 cDNA)が得られた。
上記により得られたcDNA(OAT4 cDNA)の塩基配列の決定は、特異的プライマーを用いて、自動シークエンサー(アプライドバイオシステム社製)により行った。この塩基配列を配列表の配列番号1に示す。
【0034】
実施例2(OAT4の機能の特定)
OAT4 cDNAを含むプラスミドから、T7 RNAポリメラーゼを用いて、インビトロでcRNA(cDNAに相補的なRNA)を調製した(Sekine,T.,et al.J. Biol Chem 272巻、18526-9頁、1997年参照)。
得られたcRNAを、既に報告されている方法に従い(Sekine,T., et al.J Biol Chem 272巻、18526-9頁、1997年)、アフリカツメガエルの卵母細胞に注入し、この卵母細胞について放射能標識された種々の有機アニオンおよび有機カチオンによる取り込み実験を行った。この結果、図1に示すようにOAT4を発現させた卵母細胞はH-エストロン硫酸、H-デヒドロエピアンドロステロン硫酸、H-オクラトキシンAの取り込みを示すことが判明した。これに対して代表的な有機カチオンである14C-TEA(テトラエチルアンモニウム)の取り込みは認められなかった。
【0035】
実施例3(OAT4の有機アニオン輸送の動力学試験)
OAT4の有機アニオン輸送のミカエリスーメンテン動力学試験を行った。種々の濃度のエストロン硫酸、デヒドロエピアンドロステロン硫酸のOAT4による取り込み量の変化を調べることにより、これらの基質のOAT4による輸送の濃度依存性を検討した。放射能標識されたエストロン硫酸、デヒドロエピアンドロステロン硫酸の取り込み実験は、OAT4 cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記記載方法に準じて実施した。
この結果(図2)、エストロン硫酸、デヒドロエピアンドロステロン硫酸の取り込みのKm値はそれぞれ 1.01±0.15μM、0.63±0.04μMであった。
【0036】
実施例4(OAT4の有機アニオン輸送における陽イオン依存性試験)
OAT4の有機アニオン輸送におけるナトリウム依存性を検討した。細胞外ナトリウムをリチウムおよびコリンに置換しても、OAT4を介したエストロン硫酸の輸送に変化は無く、OAT4が細胞外ナトリウム非依存性の有機アニオントランスポーターであることが明らかになった(図3)。
【0037】
OAT4の基質選択性をさらに検討するために、OAT4 cRNAを注入した卵母細胞によるH-エストロン硫酸の取り込み実験系において、系へ各種アニオン性物質を添加し、その影響を調べた(阻害実験)。H-エストロン硫酸の取り込み実験は、OAT4 cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記記載方法に準じて実施した。500μMの各種化合物(非標識)の存在下および非存在下で、50nM H-エストロン硫酸の取り込みを測定した。その結果、種々のアニオン性物質(プロベネシド、ペニシリンG、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナック、フロセミド、ブメタニド、ブロモサルフォフタレイン、コール酸、タウロコール酸など)はOAT4によるのH-エストロン硫酸の輸送を有意に阻害した(図3)。一方、テトラエチルアンモニウムのようなカチオン性物質および無機硫酸は阻害作用を示さなかった(図4)。以上の結果から、OAT4は多選択性有機アニオントランスポーターであることが判明した。
【0038】
実施例5(OAT4の各種硫酸抱合体およびグルクロン酸抱合体の取り込み試験)
OAT4がエストロン硫酸、デヒドロエピアンドロステロン硫酸の二つの硫酸抱合体の取り込み活性を示したため、各種硫酸抱合体およびグルクロン酸抱合体がOAT4と相互作用を示すか否かを、阻害実験を用いて行った。図5に示す通り、ミノキシジル硫酸を除く硫酸抱合体は全てOAT4と相互作用を示した。一方、グルクロン酸抱合体は、αナフチルβグルクロナイド以外は、OAT4と弱い相互作用を示すのみであった。
【0039】
実施例6(OAT4遺伝子のノーザンブロッティング解析)
ヒトの各組織におけるOAT4遺伝子の発現(ノーザンブロッティング)の解析を行った。OAT4 cDNAの全長を32P-dCTPでラベルし、これをプローブとして用いて、ヒトの種々の組織から抽出したRNAをブロッティングしたフィルター(クロンテック社製)のハイブリダイゼーションをおこなった。OAT4 cDNA全長を含んだハイブリダイゼーション液で一晩ハイブリダイセーションを行い、フィルターを65℃にて、0.1%SDSを含む0.1xSSCで洗浄した。ノーザンブロットの結果(図6)、腎臓および胎盤のみにおいて、強いバンドが検出された。なお、図6中のブロットは、左側から脳(brain)、心臓(heart)、骨格筋(skeletal muscle)、結腸(colon)、胸腺(thymus)、脾臓(spleen)、腎臓(kidney)、肝臓(liver)、小腸(small intestine)、胎盤(placenta)、肺(lung)、末梢血白血球(peripheral blood leukocytes)を示す。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、新規な胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4及びそれをコードする遺伝子を提供するものである。トランスポーターはチャネルと同様に細胞の生命維持に必要な物質を取り込むための蛋白質であり、その異常は種々の疾患の原因となっている。とりわけ本発明の胎盤型有機アニオントランスポーターOAT4は腎臓や胎盤に選択的に発現するものであり、この解明は各種腎疾患や胎児の生長異常などの予防治療に有用となるものである。
【配列表】
JP0004435334B2_000002t.gifJP0004435334B2_000003t.gifJP0004435334B2_000004t.gifJP0004435334B2_000005t.gifJP0004435334B2_000006t.gifJP0004435334B2_000007t.gif
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明OAT4をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させた時の、有機アニオン取り込み活性を示すものである。
【図2】図2は、本発明OAT4を発現させた卵母細胞を用いたエストロン硫酸、デヒドロエピアンドロステロン硫酸の輸送の動力学試験の結果を示すものである。
【図3】図3は、本発明OAT4を発現させた卵母細胞を用いたエストロン硫酸の輸送における各種陽イオンの存在による影響を示したものである。
【図4】図4は、本発明のOAT4の有機アニオン輸送における、各種有機物質の阻害作用の試験の結果を示すものである。
【図5】図5は、各種硫酸抱合体およびグルクロン酸抱合体による、OAT4の輸送阻害試験の結果を示すものである。
【図6】図6は、本発明のOAT4遺伝子のノーザンブロッティング解析の結果を示す図面に代わる写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5