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明細書 :超微細組織鋼の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4164589号 (P4164589)
公開番号 特開2001-073035 (P2001-073035A)
登録日 平成20年8月8日(2008.8.8)
発行日 平成20年10月15日(2008.10.15)
公開日 平成13年3月21日(2001.3.21)
発明の名称または考案の名称 超微細組織鋼の製造方法
国際特許分類 C21D   8/02        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
C22C  38/06        (2006.01)
FI C21D 8/02 A
C22C 38/00 301A
C22C 38/06
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願平11-246819 (P1999-246819)
出願日 平成11年8月31日(1999.8.31)
審査請求日 平成18年5月26日(2006.5.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
発明者または考案者 【氏名】鳥塚 史郎
【氏名】林 透
【氏名】中嶋 宏
【氏名】花村 年裕
【氏名】長井 寿
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】井上 猛
参考文献・文献 特開平09-279233(JP,A)
特開平08-295982(JP,A)
林透他,温間加工による超微細等軸フェライト高強度鋼の開発,日本機械学会年次大会講演論文集,日本機械学会,1999年 7月26日,p.261-262
林透他,超微細フェライト組織の等軸化に及ぼす温間加工パス間での変形方向変化度の影響,第47回日本熱処理技術協会講演大会講演概要集,日本熱処理技術協会,1998年12月,p.35-36
調査した分野 C21D 8/00
C22C 38/00-38/60
特許請求の範囲 【請求項1】
化学組成が量%でC:0.01-0.2%,Si:0.02-1.0%,Mn:0.2-2.0%、Al:0.001-0.1%,N:0.001-0.1%,P<0.2%,S<0.001%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる平均粒径が10μm以下のフェライトとオーステナイト、パーライト、セメンタイト、マルテンサイトの少なくとも1種からなる組織を有する鋼を、加工開始温度が700℃以下400℃以上であって、加工仕上温度が60℃以下400℃以上の温度範囲で、ひずみ0.7以上の加工を行うことを特徴とする超微細組織鋼の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の超微細組織鋼の製造方法において、鋼をAc3点以上に加熱してオーステナイト化した後、Ae3点以下の準安定オーステナイト域で加工を与え、平均粒径で10μm以下のフェライト粒と残部がオーステナイト、パーライトセメンタイト、マルテンサイトの少なくとも1種からなる状態を形成させることを特徴とする超微細組織鋼の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超微細組織鋼の製造方法において、平均粒径で10μm以下のフェライト粒の体積率が70%以上で、残部がオーステナイト、パーライトセメンタイト、マルテンサイトの少なくとも1種からなる状態を形成させることを特徴とする超微細組織鋼の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の超微細組織鋼の製造方法により得られた超微細組織鋼で、フェライトの平均粒径が1.5μm以下で、第2相としてセメンタイト、パーライト、マルテンサイト、オーステナイトの少なくとも1種を含み、引張強さが650MPa以上であることを特徴とするフェライト粒主体鋼。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、超微細組織鋼の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、高価な合金元素を必要とせず、平均粒径が1.5μm以下の超微細組織鋼の製造を可能とする新しい製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
フェライト粒の微細化は高価な合金元素の添加を必要とせず、また、延性脆性遷移温度も低下させることができるため、従来、理想的な高強度手法であると考えられてきている。しかしながら、実際には、最も広く用いられている制御圧延・制御冷却法では5μmがフェライト粒微細化の限界であった。
【0003】
一方、近年、フェライトの割合が50%以上の2相域で50%以上の圧下を行うことにより、2-3μmのフェライト粒組織を得る方法が提案されている(特開平8-60239)。しかし、この方法では、0.1-0.15%CのSi-Mn鋼の引張強度は、フェライト粒径が2.6μmの場合で520MPa程度で、微細化による高強度化が期待されたほどではない。
【0004】
さらに、粒子径が0.1-1μmの酸化物粒子を0.02-0.5個/μm2 の密度で分散させた鋼をオーステナイト域で累積圧下率10-70%の圧延を行い冷却後、フェライトの割合が50-90%の状態から累積圧下率30-90%の圧延を行うことによってフェライト粒径が1.4-2.2μmの微細組織を得る方法が提案されている(特開平9-202919)。しかし、この方法では、0.02-0.5個/μm2 という多くの酸化物を分散させる必要がある。さらに、0.13C-0.28Si-1.36Mn鋼(Al酸化物分散数0.06個/μm2 )で、平均フェライト粒径を1.9μmとなった場合でも、引張強度は448MPaであった。
【0005】
この出願の発明者らも、Ar3点以上の温度で50%以上の圧縮加工を加えることにより、平均粒径が3μm以下で方位差角15°以上の大角粒界に囲まれた超微細組織鋼の製造方法を発明した(特開平11-92861)。だが、この方法の場合には、1パス加工が検討されているため、より工業的に広く展開してゆくには、多パス化してゆく方法が求められてきた。
【0006】
また、この出願の発明者らは、マルテンサイト組織鋼をフェライト域に再加熱し、温間加工再結晶させて、フェライト平均粒径2.5μm以下の超微細フェライト主体鋼を発明した(特開平11-92860)。しかし、この方法は出発組織をマルテンサイトとすることや、再加熱工程が必要であることから、より平易な製造方法が求められている。
【0007】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの経緯を踏まえ、より工業的に実際化しやすく、平易なプロセスとして実現可能であって、しかも従来よりもはるかに微細組織化することが可能な、新しい超微細組織鋼の製造方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、化学組成が量%でC:0.01-0.2%,Si:0.02-1.0%,Mn:0.2-2.0%、Al:0.001-0.1%,N:0.001-0.1%,P<0.2%,S<0.001%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる平均粒径が10μm以下のフェライトとオーステナイト、パーライト、セメンタイト、マルテンサイトの少なくとも1種からなる組織を有する鋼を、加工開始温度が700℃以下400℃以上であって、加工仕上温度が60℃以下400℃以上の温度範囲で、ひずみ0.7以上の加工を行うことを特徴とする超微細組織鋼の製造方法を提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、第2には、上記第1の超微細組織鋼の製造方法において、鋼をAc3点以上に加熱してオーステナイト化した後、Ae3点以下の準安定オーステナイト域で加工を与え、平均粒径で10μm以下のフェライト粒と残部がオーステナイト、パーライトセメンタイト、マルテンサイトの少なくとも1種からなる状態を形成させることを特徴とする超微細組織鋼の製造方法を提供し、第3には、上記第1または第2の超微細組織鋼の製造方法において、平均粒径で10μm以下のフェライト粒の体積率が70%以上で、残部がオーステナイト、パーライトセメンタイト、マルテンサイトの少なくとも1種からなる状態を形成させることを特徴とする超微細組織鋼の製造方法を提供する。
さらにこの出願の発明は、第4として、上記第1ないし第3いずれか一つの超微細組織鋼の製造方法により得られた超微細組織鋼で、フェライトの平均粒径が1.5μm以下で、第2相としてセメンタイト、パーライト、マルテンサイト、オーステナイトの少なくとも1種を含み、引張強さが650MPa以上であることを特徴とするフェライト粒主体鋼を提供する。
【0012】
以上のとおりのこの出願の発明は、発明者らによる次のような検討と知見に基づいている。
すなわちまず、発明者らは、添付の図1に示すように、強度とフェライト粒径の関係を見出している(CAMP-ISIJ, Vol.12(1999) 365) 。SM490鋼の場合、フェライト粒径3.0μmではビッカース硬さで190であり、2.0μmでは195であった。フェライト粒径1.5μmでは210であるが、1.5μm以下になると硬さは大きく上昇し、フェライト粒径1.0μmでは、230となる。したがって、微細化によって効果的に高強度(ビッカース硬さで210以上、650MPaの引張強度に相当)を得るには、フェライト粒径は1.5μm以下とすべきことがわかった。
【0013】
なお、引張強度(MPa)はビッカース硬さの3.0-3.3倍である。
発明者らの先の提案(特開平11-92861)は相変態により、微細フェライトを形成せしめる方法であり、また、別の提案(特開平11-92860)は再結晶により微細フェライトを形成せしめる方法であることを特徴としている。これら提案のさらなる検討で、発明者らは、相変態においても、再結晶においても、生成するフェライト粒径は、加工前の粒径に大きく影響され、単純には式▲1▼で表することができることを明らかにした。
【0014】
【数1】
JP0004164589B2_000002t.gif【0015】
ここで、D0 (μm)は加工前のオーステナイト粒径またはフェライト粒径で、Dは加工後の相変態または再結晶して得られるフェライトの粒径で、εはひずみであり、符号は正である。加工前の粒径をできる限り微細にすることが、最終的に微細なフェライト粒組織を得るためには重要であり、また、加工量の軽減につながるのである。
【0016】
そこで、この出願の発明者は、加工前のフェライト粒径を微細にする方法として、オーステナイトの加工+変態を用い、微細なフェライト粒をさらに微細化する方法として、フェライトの加工+再結晶を利用し、両者を組み合わせるという方法を特徴としたこの出願の上記のとおりの発明を完成した。
【0017】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0018】
この出願の発明の超微細組織鋼の製造方法を具体的に説明すると、代表的には、「オーステナイト→(加工+変態)→微細フェライト粒<10μm+オーステナイトorパーライト→(加工+再結晶)→微細フェライト粒<1.5μm+パーライトorセメンタイト」のプロセスとなる。ここで、重要な点は変態生成するフェライト粒の大きさで、10μm以下、望ましくは5μm以下とすることである。10μm以下のフェライト粒径を変態生成させるためには、20μm程度の小さなオーステナイト粒を加速冷却することによっても得られるが、先の発明者らの提案(特開平11-92861でも示したように、準安定(過冷)オーステナイトを強加工することがより微細なフェライト粒径を得るために優れた方法であり、5μm以下のフェライト粒径を得ることができる。残部はオーステナイトでも、パーライト、セメンタイト、マルテンサイトのいずれか1種または2種以上でもよい。このような微細フェライト粒を再結晶温度域で加工することによって微細なフェライトが得られる。ここで再結晶温度域とは、加工開始温度が700℃以下400℃以上であって、加工仕上温度が650℃以下400℃以上の温度範囲をさす。加工温度が400℃未満となると、すべてのフェライト粒が再結晶せず、伸長粒が見られるようになる。さらに、加工仕上温度が650℃を超えると、微細なフェライト粒は得られない。加工量としては、フェライトを再結晶により微細化するためには、加工温度に依存するが、ひずみεが0.7以上は必要である。また、加工は多パスで与えてもよい。
【0020】
この出願の発明によって、平均粒径1.5μm以下の微細組織鋼が製造可能であり、たとえば、引張り強度で650MPa以上の鋼が得られることになる。
【0021】
【実施例】
そこで以下に、この発明の実施例を示し、さらに詳しく実施の形態について説明する。
【0022】
なお、全実施例および参考例においてフェライト粒径は直線切断法によって測定した。ビカース硬さの測定重は4.9Nであった。
参考例
表1の鋼種1の成分を有する(板厚12mm)を900℃に60s加熱を行い完全にオーステナイト化した。オーステナイト粒径は17μmであった。650℃まで10K/sで冷却し平均粒径8μmのフェライト+オーステナイト+パーライト組織にした。フェライトの体積率は70%であった。直ちに試験片中心部に圧縮ひずみε=2.3、ひずみ速度10/sの加工を与え、直ちに10K/sで冷却を行った。得られた組織はフェライト+セメンタイト組織であり、試験片中心部の平均フェライト粒径は0.8μmであった(図2)。ビッカース硬さは241であった。
実施例
表1の鋼種1の成分を有する(板厚12mm)を900℃に60s加熱を行い完全にオーステナイト化した。オーステナイト粒径は17μmであった。600℃まで10K/sで冷却し平均粒径8μmのフェライト+パーライト組織にした。フェライトの体積率は75%であった。直ちに試験片中心部に圧縮ひずみε=2.3の加工を与え、直ちに10K/sで冷却を行った。得られた組織はフェライト+セメンタイト組織であり、試験片中心部の平均フェライト粒径は0.5μmであった(図3)。ビッカース硬さは287であった。
実施例
表1の鋼種1の成分を有する棒鋼(φ115×L600mm)を900℃で完全にオーステナイト化した。オーステナイト粒径は30μmであった。この棒鋼を750℃まで冷却し、穴型圧延によりφ79mm(減面率53%)まで加工を与えた。この過程でオーステナイトの一部はフェライトに変態し、得られた平均フェライト粒径は10μmであり、残部はオーステナイトであった。この鋼を600℃まで冷却し組織をフェライト+パーライト+オーステナイトとした。フェライトの体積率は75%であった。直ちに穴型圧延により24mm角(減面率91%,圧縮ひずみε=2.4)まで多パス加工を行った。直ちに水冷した。仕上温度は600℃であった。得られた組織はフェライト+セメンタイト組織であり、平均フェライト粒径は1.0μmであった(図4)。ビッカース硬さは232であった。
実施例
表1の鋼種1の成分を有する板(T60×L60×W30mm)を900℃で完全にオーステナイト化した。オーステナイト粒径は25μmであった。この板を750℃まで冷却し、鍛造によりT60→30mmとなるように圧縮加工を加えた。この結果、幅W=約60mmとなったが、幅方向を圧縮加工としてふたたび、30mmとなるように圧縮加工した。この過程でオーステナイトの一部はフェライトに変態し、このときの平均フェライト粒径は3.5μmであり、残部はオーステナイト(体積率50%)であった。この鋼を700℃まで冷却し、直ちにT10mm(減面率65%,圧縮ひずみε=1.1)までロール圧延を行った。このときの仕上温度は600℃であった。得られた組織はフェライト+パーライト組織であり、平均フェライト粒径は1.3μmであった(図5)であった。ビッカース硬さは220、引張強さは、680MPaであった。
比較例1
表1の成分を有する板を1050℃で完全にオーステナイト化した。この板を830℃で圧延終了するように減面率50%の粗圧延をった。その後、直に0.4K/sで冷却し、フェライト平均粒径20μmのフェライト+オーステナイト組織とした。板を引き続き730から700℃で73%の仕上げ圧延を行った。得られたフェライト粒径は2.7μmであった。ビッカース硬さは156、引張強度は514MPaであった。
比較例2
表1の成分を有する板を1050℃で完全にオーステナイト化した。この板を830℃で圧延終了するように減面率73%の粗圧延をった。その後、直に0.7K/sで冷却し、フェライト平均粒径18μmのフェライト+オーステナイト組織とした。板を引き続き710から685℃で50%の仕上げ圧延を行った。得られたフェライト粒径は2.6μmであった。ビッカース硬さは160、引張強度は530MPaであった。
【0023】
【表1】
JP0004164589B2_000003t.gif【0024】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、より工業的に実際化しやすく、平易なプロセスとして実現可能であって、しかも従来よりはるかに微細組織化することが可能な、新しい超微細組織鋼の製造方法が提供される。
【0025】
平均粒径1.5μm以下の微細組織鋼が製造可能であり、たとえば、引張り強度で650MPa以下の鋼が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 フェライト粒径とビッカース硬さの関係を示した図である。
【図2】 参考例の組織のSEM写真図である。
【図3】 実施例の組織のSEM写真図である。
【図4】 実施例の組織のSEM写真図である。
【図5】 実施例の組織のSEM写真図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4