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明細書 :化学集積回路

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4458313号 (P4458313)
公開番号 特開2001-158000 (P2001-158000A)
登録日 平成22年2月19日(2010.2.19)
発行日 平成22年4月28日(2010.4.28)
公開日 平成13年6月12日(2001.6.12)
発明の名称または考案の名称 化学集積回路
国際特許分類 B81B   7/02        (2006.01)
FI B81B 7/02
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願平11-342745 (P1999-342745)
出願日 平成11年12月2日(1999.12.2)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 1999年6月11日 社団法人日本機械学会発行の「ロボティクス・メカトロニクス講演会’99講演論文集」に発表
審判番号 不服 2008-012686(P2008-012686/J1)
審査請求日 平成16年6月14日(2004.6.14)
審判請求日 平成20年5月19日(2008.5.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】生田 幸士
個別代理人の代理人 【識別番号】100099265、【弁理士】、【氏名又は名称】長瀬 成城
参考文献・文献 特表2000-506432(JP,A)
特開平11-170377(JP,A)
特開平9-269315(JP,A)
特許請求の範囲 【請求項1】
単一機能を達成する構成要素を少なくとも一つ以上組み込んだマイクロチップを液状の光硬化性樹脂を用いてマイクロ光造形法によって構成し、また前記単一機能とは異なる単一機能を達成する構成要素を少なくとも一つ以上組み込んだマイクロチップを液状の光硬化性樹脂を用いてマイクロ光造形法によって構成し、さらに、上記と同様の方法で構成した単一機能を達成する構成要素を少なくとも一つ以上組み込んだマイクロチップを少なくとも一つ以上構成し、前記構成した各マイクロチップの中から必要とする単一機能を達成するマイクロチップを取り出し、これらチップ同志を組み合わせることにより目的とする化学反応回路を構成することを特徴とする化学集積回路。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ化学反応回路を内部にもつ「化学IC」に関するものであり、特に光造形法等を利用して一つのチップ内に同一機能、同一機構からなる部品を複数配置してなる単一機能チップ、あるいは一つのチップ内に異なる機能を持つ部品を複数配置してなる複数機能チップを形成し、異なる単一機能あるいは複数機能を持つチップ同志を複数層に組み合わせることにより、目的とする化学反応回路を構成することができる化学集積回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在欧米で研究が進むシリコン半導体技術を用いた化学ICは、一つのシリコンチップに全ての機能を盛り込む単目的型が主であり、汎用性、即応性の点で問題があり、さらには構造上機能を拡張し高度化させることが困難という問題がある。
【0003】
また、シリコンプロセスによるμ-TAS(Micro Total Analysis System)では、化学反応系が変わるごとに新しいマスクを作製し、シリコン基盤上の流体系の設計製作を必要とする。一般にシリコンプロセスはメモリのような特定の微細回路を大量生産する目的には最適だが、多品種少量生産や個別生産にはコスト的にも、製造時間的にも適さない。
【0004】
このため発明者らは、従来のシリコンプロセスによる問題点を解決する手法としてマイクロ光造形法の開発に成功した(特開平11-170377号公報参照)。
また、上記マイクロ造形法を更に改善した、硬化樹脂に対して透過性を有する近赤外パルスレーザ光を利用し、2光子吸収を誘起することによって焦点近傍のみにおいて紫外レーザーと同じエネルギーに高め、ピンポイントで樹脂を硬化できる2光子マイクロ光造形方法も提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のようなマイクロ光造形法を使用することにより、シリコン半導体技術を用いた従来型のマイクロ化学装置では構成することが難しかった化学集積回路を、容易に構成できるようにするものであり、その特徴は、単機能を達成できるマイクロチップを構成し、異なる単機能を達成できるチップを複数組み合わせることによって目的とする化学集積回路を構成せんとするものである。また、一つのチップ内に異なる機能を持つ部品を複数配置してなる複数機能チップを形成し、異なる単一機能あるいは複数機能を持つチップ同志を複数層に組み合わせることにより、目的とする化学集積回路を構成せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明が採用した技術解決手段は、
単一機能を達成する構成要素を少なくとも一つ以上組み込んだマイクロチップを液状の光硬化性樹脂を用いてマイクロ光造形法によって構成し、また前記単一機能とは異なる単一機能を達成する構成要素を少なくとも一つ以上組み込んだマイクロチップを液状の光硬化性樹脂を用いてマイクロ光造形法によって構成し、さらに、上記と同様の方法で構成した単一機能を達成する構成要素を少なくとも一つ以上組み込んだマイクロチップを少なくとも一つ以上構成し、前記構成した各マイクロチップの中から必要とする単一機能を達成するマイクロチップを取り出し、これらチップ同志を組み合わせることにより目的とする化学反応回路を構成することを特徴とする化学集積回路である。
【0007】
【実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明に係る化学集積回路の構成について説明をすると、図1はマイクロ光造形法を使用して作成した1形態としての化学集積回路の分解斜視図である。
図にしめす化学集積回路は、4つのチップを積層して構成したものであり、最上部のチップ1が外部と化学流体の入出力用コネクタ群をもつ「コネクターチューブ」の機能を達成するコネクタチップ、第2層のチップ2が複数のマイクロバルブをもつ「バルブチップ」、第3層のチップ3が複数のマイクロリアクタ(反応部)を持つ「リアクタチップ」、第4層のチップ4が複数のマイクロ濃縮器を持つ「濃縮チップ」である。これらの4つのチップは図2に示すように、バルブチップは厚さが1mm、リアクタチップは厚さが2mm、濃縮チップは厚さが3mmとして構成され、各チップ間の各マイクロ流路は液漏れが無いように密着して積層結合され一つの目的を達成できる化学反応回路を構成している。
【0008】
上記各チップとも、従来の積層法を用いずに本発明者らが開発した液状の光硬化性樹脂の内部にレーザスポットを走査し任意の3次元構造を形成する方法(紫外レーザーを光源とした内部硬化型マイクロ造形法:Super IH process 略してSIH)を使用して一体化した透明立体構造となっており、これら各チップの製造方法は本発明の特徴ではないので、詳しい説明は省略する。
【0009】
以下、上記化学反応回路を構成する各チップの詳細を以下の述べる。
コネクターチップ1は、化学ICにおいて合成あるいは分析する物質を外部装置に輸送するためのマイクロチューブを接続する役割をもっており、図3に示す形状、図4に示す断面を有している。コネクターチップ1は、内径1mmのマイクロチューブを18本同時に接続することができるポート1aを有するように設計されている。
【0010】
バルブチップ2は、化学ICに物質を注入する際に、その流量を制御したり、逆流を防止する重要な役割をもっており、図5に示す形状、図6に示す断面(図5中のA-A断面)を有している。このバルブチップ2では、厚み1mmのチップの内部に、内径2mmの1方向弁2aを18個内蔵している。バルブ部分のシリコン膜は、光造形法によってバルブチップを形成してゆく過程の中で、ハイブリッドIHプロセスによって組み込んだものである。この例では、受動バルブであるが、形状記憶合金等のアクチュエータを内蔵させることで、能動バルブの作製も可能である。
【0011】
リアクタチップは2つの注入口と1つの排出口を持つリアクタを9つ内蔵しており、図7上方に示す形状、図8に示す断面を有している。なお図8はリアクタチップと濃縮チップを積層した状態の断面図である。
リアクタチップ3は、厚み2mmであり各リアクターの容積は、約3.1μlとして形成されている。
【0012】
濃縮チップ4は、リアクタチップで合成した微量な物質を濃縮する役割をもっており、このため、各種フィルター4aをハイブリッドIHプロセスによって、内蔵させて構成され、図7中下方に示す形状、図8に示す断面を有している。この濃縮チップ4には限外濾過膜が内蔵されており、蛋白質の濃縮に利用することができる。
以上のように構成された各チップは図2に示すように組み合わされ、一つの目的を達成する化学反応回路(化学集積回路)を構成する。
【0013】
化学ICの機能検証の1例として、濃縮チップを用いて、蛋白質の濃縮を行うことを試みた。
実験では、蛋白質としてルシフェラーゼ・アッセイ・キット(Premega)を用い、蛋白質であるルシフェラーゼを濃縮するためのフィルターとして限外濾過膜(YM30:MILLIPORE)を用いた。このアッセイ・キットでは、ルシフェラーゼにフシフェリンを混合することで、発光反応が生じるので、その発光量を光検出器で検出することによって、蛋白質が濃縮される様子を確認できる。
【0014】
図9(a)は蛋白質濃縮時の濃縮チップの写真である。
図9(b)は濃縮部の拡大写真であり、この写真によって限外濾過膜によって蛋白質が分離されていることが確認できる。図10は蛋白質の時間応答を測定した結果である。グラフの縦軸は、光検出器からの出力電圧であり、横軸は、注入した試料の外積を濃縮部の容積で規格化した値である。この結果から、10倍の体積の試料を濃縮チップに注入した際に、約10倍の発光量が得られていることから、濃縮チップの有効性が実証された。
【0015】
上記のような複数のチップを結合制御することで、より高度なマイクロ化学デバイスを構築する技術として有効であり、この手法を用いることにより、多機能な化学ICを作製できる。また、本ICは、センサーやポンプ・能動バルブ等を内蔵した化学ICファミリを開発し、様々な分析装置や合成装置、さらには人工臓器等に利用することができる。
【0016】
また、本発明は上述した例に限定されるものでなく、各機能チップの変更は随時行え、ポンプチップや検出チップなど今後新技術に応じて新規の化学ICチップを追加してゆくこと、さらに、この基本構成を水平、垂直方向に3次元的に拡張することも可能である。また、上記例では単一機能を達成するマイクロチップについて説明したが、当然のことながら複数機能を達成するマイクロチップを構成し、前記構成したチップの中から異なる複数機能を有するチップを複数取り出し、これらチップ同志を組み合わせることにより目的とする化学反応回路を構成することを特徴とする化学集積回路を構成することもできる。さらにこうしたチップの作製法は、必ずしもマイクロ光造形法に限定されるものではなく、樹脂の射出成形、あるいは金属加工、その他の成形方法によってチップを成形することも可能である。
【0017】
本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいかなる形でも実施できる。そのため、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず限定的に解釈してはならない。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、複数のチップを結合制御することで、より高度なマイクロ化学デバイスを容易に構築することができる。本手法を用いることにより、多機能な化学ICを作製できる。さらに本ICは、センサーやポンプ・能動バルブ等を内蔵した化学ICファミリを開発し、様々な分析装置や合成装置、さらには人工臓器等に利用することができる。このように機能毎のチップでその組み合わせが可変なので、ユーザがシステムチップを新たに作ることなく、選択組み付けのみで機能拡張が容易に可能となる。等の優れた効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 マイクロ光造形法を使用して作成した1形態としての化学集積回路の分解斜視図である。
【図2】 図1の化学集積回路の組立断面図である。
【図3】 図1中のコネクターチップの斜視図である。
【図4】 同コネクターチップの断面図である。
【図5】 図1中のバルブチップの斜視図である。
【図6】 同バルブチップの断面図である。
【図7】 図1中のリアクタチップおよび濃縮チップの斜視図である。
【図8】 同リアクタチップおよび濃縮チップを組み付けた状態の断面図である。
【図9】(a)は蛋白質濃縮時の濃縮チップの写真、(b)は濃縮部の拡大写真である。
【図10】 蛋白質の時間応答を測定した結果のグラフである。
【符号の説明】
1 コネクタチップ
2 バルブチップ
3 リアクタチップ
4 濃縮チップ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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