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明細書 :硫酸化・リン酸化三糖セリンの製造に有用な脱離基としてトリクロロアセトイミデートを持つ糖供与体、その製法およびその中間体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3268299号 (P3268299)
公開番号 特開2001-158797 (P2001-158797A)
登録日 平成14年1月18日(2002.1.18)
発行日 平成14年3月25日(2002.3.25)
公開日 平成13年6月12日(2001.6.12)
発明の名称または考案の名称 硫酸化・リン酸化三糖セリンの製造に有用な脱離基としてトリクロロアセトイミデートを持つ糖供与体、その製法およびその中間体
国際特許分類 C07H 23/00      
FI C07H 23/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願平11-342839 (P1999-342839)
出願日 平成11年12月2日(1999.12.2)
審査請求日 平成11年12月10日(1999.12.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】田村 純一
個別代理人の代理人 【識別番号】100110168、【弁理士】、【氏名又は名称】宮本 晴視
審査官 【審査官】中木 亜希
参考文献・文献 Tetrahedron Letters,1992,Vol.33,No.35,p.5099-5102
調査した分野 C07H 23/00
特許請求の範囲 【請求項1】
(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-O-アセチル-6-O-t-ブチルジフェニルシリル-4-O-(4-メチルベンゾイル)-D-ガラクトピラノシルトリクロロアセトイミデート。

【請求項2】
4-メトキシフェニル 2-O-アセチル-3-O-アリル-6-O-t-ブチルジフェニルシリル-β-D-ガラクトピラノシド。

【請求項3】
4-メトキシフェニル 2-O-アセチルー3-O-アリル-6-O-t-ブチルジフェニルシリル-4-O-(4-メチルベンゾイル)-β-D-ガラクトピラノシド。

【請求項4】
4-メトキシフェニル 2-O-アセチル-6-O-t-ブチルジフェニルシリル-4-O-(4-メチルベンゾイル)-β-D-ガラクトピラノシド。

【請求項5】
4-メトキシフェニル (2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-O-アセチルー6-O-t-ブチルジフェニルシリル-4-O-(4-メチルベンゾイル)-β-D-ガラクトピラノシド。

【請求項6】
(2,3,4,6-テトラ-O-アセチルーβーDーガラクトピラノシル)-(1→3)-2-O-アセチル-6-O-t-ブチルジフェニルシリル-4-O-(4-メチルベンゾイル)-D-ガラクトピラノース

【請求項7】
反応式1により式2の化合物から式3の化合物を得、式3の化合物から式5の化合物を得、式5の化合物から式6の化合物を得、式6の化合物と式7の化合物から式8の化合物を得、式8の化合物から式9の化合物を得、そして式9の化合物から請求項1に記載の化合物を合成する方法。
【化1】
JP0003268299B2_000002t.gif
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、硫酸化・リン酸化三糖セリンであるβ-Gal(1→3)β-Gal(6-SO3Na)(1→4)-β-Xyl(2-OPO3Na2)Ser〔但し、Galはガラクトース、Xylはキシロース、Serはセリンである。〕の製造に有用なGal-Gal糖供与体に関する。より具体的には受容体である式(1)の化合物と

【11】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、硫酸化・リン酸化三糖セリンであるβ-Gal(1→3)β-Gal(6-SO3Na)(1→4)-β-Xyl(2-OPO3Na2)Ser(但し、Galはガラクトース、Xylはキシロース、Serはセリンである。)の製造に有用な、特に位置選択的に硫酸基が導入されるような化学構造のリン酸化三糖セリンが得られる、Gal-Gal二糖供与体、および前記二糖供与体の合成方法を確立することであり、また、更に前記二糖供与体の製造に有用な保護基を有する中間体である糖誘導体を提供することである。

【12】

【課題を解決するための手段】本発明の第1は、(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-O-アセチル-6-O-t-ブチルジフェニルシリル-4-O-(4-メチルベンゾイル)-D-ガラクトピラノシルトリクロロアセトイミデート(以下、「Gal-Gal二糖供与体」という。)である。本発明の第2~第6は、前記Gal-Gal二糖供与体を合成するのに有用な新規な中間体である。また、本発明の第7は、反応式1により前記Gal-Gal二糖供与体を合成する方法に関する。

【13】

【化4】
JP0003268299B2_000005t.gif【0014】
【本発明の実施の態様】本発明を詳細に説明する。硫酸化・リン酸化三糖セリンの合成には、前記本発明者が公表している二糖セリンまでの製法が、リン酸化および硫酸化・リン酸化三糖セリンを製造する際の二糖セリンまでの製法に適用できなかったことである。従って、前記したように、硫酸化・リン酸化三糖セリンの製造に有用なGal-Gal二糖供与体を提供すること、更に前記Gal-Gal二糖供与体を合成するのに有用な新規な中間体を提供すること、および前記Gal-Gal二糖供与体を合成する方法を提供することである。本発明は、前記硫酸化・リン酸化三糖セリンの合成には単糖、二糖の糖供与体、受容体の化学構造を工夫するところまでさかのぼなければならなかったところにある。

【15】
前記のことは以下の多くの試みの不成功からも理解されよう。すなわち、前記硫酸化・リン酸化三糖セリンを製造するのに、前記文献Aに記載の糖鎖の逐次的カップリング反応により、反応式Zに従い

【16】

【化5】
JP0003268299B2_000006t.gif【0017】化学式(A)のリン酸化三糖セリンを合成し、脱ベンジリデン化により、位置選択的に硫酸化可能な化学式(B)を得るという試みもされているが、化学式(B)への反応が進まないために実現されていない。また、反応式X、またはX’を経由する

【18】

【化6】
JP0003268299B2_000007t.gif【0019】糖鎖の逐次的カップリング反応による合成の試みも、目的化合物(C)が得られないために実現できなかった。更に、更に、反応式Yによる受容体の合成を経由する試みは、反応式Y’に至る

【2】

【化2】
JP0003268299B2_000003t.gif【0003】カップリングし、位置選択的に硫酸基を導入することにより前記硫酸化・リン酸化三糖セリンを形成しうる三糖鎖が得られる糖供与体に関する。

【20】

【化7】
JP0003268299B2_000008t.gif【0021】ために実現できなかった。前記本発明の特徴および前記工夫については、具体的には、実施例に記載の反応工程から理解されるであろう。

【22】

【実施例】実施例1
I.本発明の目的化合物である式1α、βの化合物を製造する方法を反応式1にしたがって説明する。

【23】

【化8】
JP0003268299B2_000009t.gif【0024】式S2の化合物から式2の化合物(4-メトキシフェニル 2,4,6-トリ-O-アセチル-3-O-アリル-β-D-ガラクトピラノシド)を得る市販の1,2,3,4,6ーペンタアセチルーβーDーガラクトピラノース(S1)から文献〔F. Goto and T. Ogawa, Tetrahedron Lett., 33 (35) 5099 (1992)〕に従って得られる式S2の化合物(54.1g,165mmol)をトルエン(400ml)とTHF(400ml)に懸濁させ、酸化n-ジブチルすず(49.6g,199mmol)を加え、水分分離装置を装着し6時間加熱還流した。放冷後溶媒を留去し、残渣にTHF(400ml)、テトラn-ブチルアンモニウムブロミド(5.31g,16.5mmol)、アリルブロミド(210ml,2.48mol)を加え30分間加熱還流した。放冷後トリエチルアミン(350ml)を加え、溶媒を留去し、残渣にピリジン(300ml)と無水酢酸(300ml)を加え、室温で一晩撹拌した。この溶液に破砕氷(100g)を加え数時間撹拌した。反応液をクロロホルムで希釈して、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200,1200g,ヘキサン-酢酸エチル1:1~1:5)で精製し、式2の化合物(58.4g、72%)を得た。
式2の化合物
Rf 0.64 (トルエン-酢酸エチル1:3)
融点 130-131℃ (ヘキサン-酢酸エチルから再結晶)
〔α〕D +23.60(c 1.52、クロロホルム)
元素分析
計算値(C22H28010) C:58.39,H:6.26
実測値 C:58.38,H:6.25
H-NMRデータ:シフト値はppm、結合定数(J)はHzで表す。基準はテトラメチルシラン〔(CH3)4Si=0ppm〕。測定は重クロロホルム(CDCl3)中25℃で行った。
4.86(H-1)、5.34(H-2、J1,2=8.05、J2,3=10.01)、3.59(H-3、J3,4=3.66)、5.46(H-4)、3.90~3.96(H-5,6a)、4.13~4.24(H-6b、OCH2CHCH2)、5.75~5.85(OCH2CHCH2),5.17~5.28(OCH2CHCH2),2.08,2.11,2.17(3OCOCH3),3.77(OCH3),6.79~6.83,6.93~6.97(Ph)。

【25】
式2の化合物から式3の化合物および式4の化合物を得る式2の化合物(590.6mg、1.31mmol)をメタノール(4ml)に溶解し、トリエチルアミン(2ml)、水(2ml)を加えて室温で16時間撹拌した。減圧留去した残渣をジメチルホルムアミド(8ml)に溶解し、イミダゾール(216.6mg、3.18mmo1)とt-ブチルクロロジフェニルシラン(0.55ml、2.11mmol)を加え19時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200,40g,トルエン-酢酸エチル20:1~1:1)で精製し、式3の化合物(670.6mg、85%)と式4の化合物(77.0mg、10%)を得た。
式3の化合物
Rf 0.65 (トルエン-酢酸エチル 2:1)
融点 116℃ (ヘキサンー酢酸エチルから再結晶)
〔α〕D +3.960(c 0.91、クロロホルム)
元素分析
計算値(C34H42SiO8) C:67.29,H:6.69
実測値 C:67.41,H:7.02
式4の化合物
Rf 0.39 (トルエン-酢酸エチル 2:1)
〔α〕D -13.20(c 1.145、クロロホルム)
元素分析
計算値(C32H40SiO8) C:68.04,H:7.15
実測値 C:67.77,H:7.18

【26】
式3の化合物から式5の化合物を得る式3の化合物(497.3mg、0.819mmol)をピリジン(5ml)に溶解し、塩化p-メチルベンゾイル(0.32ml、2.46mmol)と触媒量のジメチルアミノピリジンを加えて室温で一晩撹拌した。この溶液にメタノール(1ml)を加え4時間撹拌した。反応液をクロロホルムで希釈し、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200,50g,ヘキサン~ヘキサンー酢酸エチル 2:1)で精製し、式5の化合物(576.4mg、97%)を得た。
式5の化合物
Rf 0.50 (ヘキサン-酢酸エチル 2:1)
〔α〕D +33.50(cl.55、クロロホルム)
元素分析
計算値(C42H48SiO9) C:69.58,H:6.69
実測値 C:69.66,H:6.69

【27】
式5の化合物から式6の化合物を得る触媒量のイリジウム錯体〔Ir(COD)(Ph2MeP)2PF6〕をTHF(5ml)に懸濁させ、水素置換して赤色が消失するまで撹拌した。その後。脱気、アルゴン置換を数回行い、化合物5(346.2mg、0.478mmol)のTHF(6mL)を加え、室温で一晩撹拌した。氷冷して水(7.2ml)、炭酸水素ナトリウム(1.52g、18.1mmol)、ヨウ素(242mg、0.95mmol)を順次加え撹拌した。30分後反応液をクロロホルムで希釈して、有機層をハイポ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200,12g,ヘキサン-酢酸エチル 30:1~1:1)で精製し、式6の化合物(322.7mg、99%)を得た。
式6の化合物
Rf 0.48 (ヘキサン-酢酸エチル1:1)
〔α〕D -0.230(c 1.72、クロロホルム)
元素分析
計算値(C39H44SiO9・0.1H20) C:67.89,H:6.47
実測値 C:67.89,H:6.45

【28】
式6の化合物と式7の化合物から式8の化合物を得る式7の化合物〔公知化合物:P.H.Amvam-Zollo and P.Sinay,Carbohydr.Res.,150,199(1986)〕(195.9mg、0.398mmol)と式6の化合物(169.5mg、0.247mmo1)のジクロロメタン(10ml)溶液に乾燥モレキュラーシーブスAW300(1.2g)を加え、室温で35分間撹拌した。この懸濁液を-200℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(50μL、0.28mmol)を加えた。2時間で連続的に80℃まで昇温させ、反応液をクロロホルムで希釈して、適当量の飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。不溶物をろ別し、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣をゲルろ過(S-X1,2.8φ×89cm、トルエン)で分離後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-300,10g,ヘキサン-酢酸エチル 4:1~1:3)で精製し、式8の化合物(108.8mg、43%)を得た。
式8の化合物
Rf 0.26 (ヘキサン-酢酸エチル1:1)
〔α〕D +26.40(c 1.12、クロロホルム)
元素分析
計算値(C53H62SiO8・0.5H20) C:62.15, H:6.21
実測値 C:62,24,H:6.16

【29】
式8の化合物から式9の化合物を得る式8の化合物(312.0mg、0.307mmol)のアセトニトリル(20mL)と水(5mL)の溶液に硝酸二アンモニウムセリウム(843mg、1.54mmol)を加え、0℃で50分間撹拌した。この溶液にクロロホルムと適当量の飽和食塩水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200,25g,ヘキサン-酢酸エチル 4:1~1:5)で精製し、化合物9(260.5mg、93%)を得た。式9の化合物はそれ以上精製せず、そのまま次の反応に用いた。
式9の化合物
Rf 0.18 (ヘキサン-酢酸エチル 1:1)

【30】
式9の化合物から式1β及び1αの化合物を得る式9の化合物(260.5mg、0.287mmol)のジクロロメタン(6mL)溶液にトリクロロアセトニトリル(1.6mL)を加え0℃に冷却し、撹拌しつつ1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセンを1滴を加え、同温で30分、室温で20分間撹拌した。反応液は直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200,60g,ヘキサン-酢酸エチル 10:1~1:1)で精製し、化合物1(279.3mg、93%)〔βとαの混合物(積分比で約7:3)〕を得た。式1β及び1αの混合物は互いに分離できなかったのでそれ以上精製せず、そのまま次の反応に用いた。
式1(β)の化合物
Rf 0.39,0.29 (ヘキサン-酢酸エチル 1:1)

【31】
ここに、前記目的化合物のH-NMRデータ(400MHzを用いた1H NMR)を示す。シフト値はppm,結合定数(J)はHzで表す。基準はテトラメチルシラン〔(CH3)Si4=0ppm〕。重クロロホルム(CDCl3)中25℃で行った。プロトンについては、例えばGal2-3の如く表示し、これは還元末端から2番目のガラクトース残基の3位のプロトンを意味する。
化合物1β
5.87(Gal1-1、J1,2=8.29)、5.60(Gal1-2、J2,3=10.00)、4.08(Gal1-3)、5.75(Gal1-4、J3,4=3.17)、3.99(Gal1-5)、3.74(Gal1-6a、J5,6a=6.59)、3.83(Gal1-6b、J5,6b=5.61、J6a,6b=10.73)、4.65(Gal2-1、J1,2=7.81)、5.03(Gal2-2、J2,3=10.49)、4.92(Gal2-3、J3,4=3.42)、5.32(Gal2-4)、3.87(Gal2-5、J5,6a=J5,6b=7.57)、4.04~4.19(Gal2-6)、8.68(NH)。
化合物1α
6.62(Gal1-1、J1,2=3.66)、5.44(Gal1-2、J2,3=10.49)、4.38(Gal1-3、J3,4=3.42)、5.88(Gal1-4)、4.34(Gal1-5)、3.68(Gal1-6a、J5,6a=6.83、J6a,6b=10.73)、3.77(Gal1-6b、J5,6b=6.10)、4.72(Gal2-1、J1,2=7.81)、5.09(Gal2-2、J2,3=10.49)、4.96(Gal2-3、J3,4=3.42)、5.33(Gal2-4)、3.91(Gal2-5、J5,6a=J5,6b=7.20)、4.04~4.19(Gal2-6)、8.65(NH)。1βと1αのどちらのものとは断定できない以下のピークも認められた。0.99〔C(CH33〕,1.92,1.93,1.94,2.05,2.05,2.08,2.08,2.08,2.10,2.11(OCOCH3),2.42(PhCH3),7.23~7.40,7.54~5.61,7.88,7.90(Ph)。

【32】

【発明の効果】以上述べたように、本発明は、新規なオリゴ糖を得るのに有用な糖供与体、受容体を提供するものであり、オリゴ糖のライブラリーの豊富化に役立つことによって、GAGの生合成機構の解明や新しい医薬品の開発を始めとする生化学・医学・薬学分野へ効果がもたらされる。

【4】

【従来技術】細胞外マトリックスの主要成分であるプロテオグリカン(PG)は、細胞間の情報伝達に重要な役割を持つことで近年注目されている。構造的にはPGは、コアタンパク質とそこから枝状に延びる直鎖のグリコサミノグリカン(GAG)から構成されている。GAG鎖は、二糖当たりの硫酸基0~3個を持つ繰り返し単位により、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸に分類されている。GAGは、コアタンパク質に結合した「共通四糖部分」(Xyl-Gal-Gal-GlcA)と、ウロン酸とアミノ糖の二糖単位が非還元側に続く「繰り返し二糖領域」からなる。生合成においてGAGは、コアタンパク質のセリン(Ser)水酸基を起点として対応するUDP糖と糖転移酵素により順次非還元側に単糖単位で糖鎖を延ばして行くと考えられている。繰り返し二糖領域はヘキソサミン(α-GlcNAcとβ-GalNAc)の種類によってヘパリン型とコンドロイチン型に分類され、それらの生合成過程における仕分け機構(還元末端五番目の異なる二種の糖転移制御)は未だ解明されていない。

【5】
生化学情報の担い手は、主に繰り返し二糖領域にある。特に、糖鎖を構成している単糖の水酸基やアミノ基の立体配置や糖の結合位置、加えてこれらを修飾している硫酸基の数と位置のバリエーションが膨大な量の情報伝達を可能にしている。糖鎖の修飾は硫酸基がメインであり、GAGの一種であるヘパリンを中心にその位置特異性と機能の発現の関連の研究が盛んに行われている。リン酸基の存在の発見は比較的最近のこと(例えば、T.R.Oegema Jr,E.L.Kraft,G.W.Jourdian and T.R.Van Valen,J.Biol.Chem.,259,1720 (1984).K.Sugahara,Y.Ohi,T.Harada,P.de Waard and J.F.Vliegenthart,J.Biol.Chem.,267,6027(1992).)である。このことは、リン酸基が天然から糖を単離する際に脱落し易かったためと分かっている。また、GAGにおけるリン酸基の存在は、前記リン酸基の存在の発見後、その位置は還元末端(セリン水酸基に結合)のキシロース(Xyl)の2位に限定されていることは確認されたが、生化学的な意義は未だ解明されていない。

【6】
リン酸化糖の生化学的な意義については、フランソン(Franssson)らの報告から、前記仕分け機構を含めた糖鎖の伸長に何らかの影響を与えているものと推測される〔J.Moses,Å,Oldberg,F.Cheng and L.Å,Fransson,Eur.J.Biochem.,248,521 (1997)〕。こうした中で、天然から抽出した純粋な硫酸化糖は、既にヘパリンの抗血液凝固作用を持つ医薬品として市販されているし、GAGの多彩な生化学的機構の解明といった分野で多量の需要がある。GAG糖鎖の生合成機構やその制御機構が明らかになれば、バイオ技術を駆使して効率的な前記医薬品を含めて多くの新製品の開発に貢献できると考えられ、更なるバイオ関連の技術の発展をもたらすことは明らかである。しかし、前記したように天然からの単離中にリン酸基は脱落し易く、天然からの抽出によって得られる純粋なリン酸化糖だけでは前記需要を賄うには不十分である。従って、前記リン酸化糖を化学的に合成できれば、前記酵素による反応による糖鎖伸長のメカニズムの解明に大きな貢献をすることになり、その結果、バイオ技術を駆使した効率的な医薬品製造や多くの新製品の開発に貢献できることは明らかである。

【7】
これまで、GAG還元末端リン酸化オリゴ糖の合成については2つのグループからの報告がある。
1.JacquinetらはGAG還元末端リン酸化二糖および四糖セリルグリシンの合成について報告している。しかし、このものはセリンのアミノ基がアセチル化されており、完全な天然型ではない〔S.Rio,J.-M.Beau and J.-C.Jacquinet,Carbohydr.Res.,255,103(1994)〕。
2.Nilssonらは2~4糖を合成しているが、メチルグリコシドであり非天然型である〔M.Nilsson,J.Westman and C.-M,Svahn,J.Carbohydr.Chem.12,23(1993)〕。これらの報告ではいずれも、リン酸基と硫酸基とを同時に持ち合わせた糖鎖を得ていない。

【8】
本発明者は、一般式2

【9】

【化3】
JP0003268299B2_000004t.gif【0010】で示す天然型の天然型の単糖セリン(1)および二糖セリン(2)および(3)の合成方法を既に開発している〔Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,1911-1914, 9(1999):以下、文献A〕。そこでは、リン酸基で置換し、更に硫酸基置換のGal-Xyl-Ser生成物を得るために、その目的に合うように適切に設計された糖供与体であるガラクトシルドナーを合成しカップリング手法により目的の化合物を得ている。また、一般に、糖鎖の伸長に及ぼす保護基、脱離基、リン酸基などの影響、作用・効果は実際に合成を試行錯誤で行うことによってしか得られないところに、糖鎖の合成の難さがある。従って、前記文献に、リン酸基で置換し、更に硫酸基置換のGal-Xyl-Ser生成物を得る方法が開示されているけれども、硫酸化・リン酸化三糖セリンの合成において、二糖鎖の合成までに前記公知の合成方法がそのまま応用できないということだけでなく、糖供与体、受容体の化学構造を工夫するところまでさかのぼってリン酸化三糖セリンを製造する方法を確立することにより、また、糖供与体、受容体の化学的構造を工夫するところまでさかのぼって位置選択的に硫酸基が導入されるような化学構造のリン酸化三糖セリンが得られる製造方法を確立することが必要である。よって、β-Gal(1→3)β-Gal(6-SO3Na)(1→4)-β-Xyl(2-OPO3Na2)Serの三糖セリンを得るにも、前記のことは例外でなく、前記三糖セリンを得ることができる、特に位置選択的に硫酸基が導入されるような化学構造のリン酸化三糖セリンがを得ることができる、糖供与体、糖受容体の化学的構造を工夫することが必要である。