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明細書 :リウマチ関節炎好発モデル動物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3570674号 (P3570674)
公開番号 特開2001-178308 (P2001-178308A)
登録日 平成16年7月2日(2004.7.2)
発行日 平成16年9月29日(2004.9.29)
公開日 平成13年7月3日(2001.7.3)
発明の名称または考案の名称 リウマチ関節炎好発モデル動物
国際特許分類 A01K 67/027     
C12N 15/09      
G01N 33/15      
G01N 33/50      
FI A01K 67/027
G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 9
出願番号 特願平11-373366 (P1999-373366)
出願日 平成11年12月28日(1999.12.28)
審査請求日 平成12年11月24日(2000.11.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】中村 晃
【氏名】貫和 敏博
【氏名】高井 俊行
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】上條 肇
参考文献・文献 J.Exp.Med.,1999年 1月 4日,Vol.189,No.1,p.187-194
実験動物技術体系,アドスリー,1996年 7月 5日,p.126
Life Sciences,1997年,Vol.61,No.19,p.1861-1878
調査した分野 A01K 67/027
G01N 33/15
G01N 33/50
JSTPlus
WPI(DIALOG)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
免疫グロブリンFcγレセプターIIB遺伝子機能が染色体上で欠損した齧歯類動物と該齧歯類動物と同種の野生型コラーゲン関節炎発症性齧歯類動物とを戻し交配することにより得られ、II型コラーゲンで免疫するとコラーゲン関節炎を発症することを特徴とするリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物。
【請求項2】
リウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物がリウマチ関節炎好発モデルマウス又はリウマチ関節炎好発モデルラットであることを特徴とする請求項1記載のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物。
【請求項3】
免疫グロブリンFcγレセプターIIB遺伝子機能が染色体上で欠損したマウスと野生型DBA/1Jマウスとを戻し交配することを特徴とする請求項2記載のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物。
【請求項4】
戻し交配を6回以上行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物。
【請求項5】
II型コラーゲンが、ウシ関節由来II型コラーゲンであることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか記載のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物をII型コラーゲンで免疫し、免疫の前後若しくは免疫と同時に、又は免疫後リウマチ関節炎の未発症時に、該齧歯類動物に被検物質を投与し、コラーゲン関節炎の発症の程度を指標として評価することを特徴とするリウマチ関節炎の発症促進物質又は発症抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項7】
コラーゲン関節炎の発症の程度を指標として評価するに際し、対照としての野生型コラーゲン関節炎非発症性齧歯類動物及び/又は野生型コラーゲン関節炎発症性齧歯類動物との比較評価を行うことを特徴とする請求項6記載のリウマチ関節炎の発症促進物質又は発症抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか記載のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物をII型コラーゲンで免疫し、免疫後リウマチ関節炎の発症時に、該齧歯類動物に被検物質を投与し、コラーゲン関節炎の症像の程度を指標として評価することを特徴とするリウマチ関節炎の症像促進物質又は症像抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項9】
コラーゲン関節炎の症像の程度を指標として評価するに際し、対照としての野生型コラーゲン関節炎非発症性齧歯類動物及び/又は野生型コラーゲン関節炎発症性齧歯類動物との比較評価を行うことを特徴とする請求項8記載のリウマチ関節炎の症像促進物質又は症像抑制物質のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物や、これを用いたリウマチ関節炎に対する発症促進物質若しくは発症抑制物質又は症像促進物質若しくは症像抑制物質のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
免疫グロブリン(Ig)は、魚類から哺乳類に至る全ての脊椎動物の体液中に存在し、リンパ系細胞によって産生され、物理化学的性質や免疫学的性質によって5つのクラス、すなわちIgG,IgM,IgA,IgD及びIgEに分類され、分子の基本構造は各クラス共通で、分子量5~7万のH鎖と分子量2.3万のL鎖とから構成され、IgG,IgM,IgA,IgD,IgEに対応してγ,μ,α,δ,ε鎖と呼ばれる構造のH鎖を有することが知られている。このIg分子をパパインで分解して得られるヒンジ部からC末端までのH鎖2本がS-S結合で結ばれているものはFcフラグメントと呼ばれ、このFcフラグメントが結合する細胞表面上の受容体はFcレセプター(以下「FcR」という)と呼ばれている。また、Igと同様の構造を持つ分子(免疫グロブリンスーパーファミリー)には、Fcレセプター、Tリンパ球上の抗原に対する受容体分子、主要組織適合性抗原、β2ミクログロブリン、癌胎児性抗原及びリンパ球の細胞膜蛋白質等が知られている。
【0003】
上記FcRは、免疫系などの細胞の表面上に存在し、その中でも体液中のIgGのγ鎖に特異的に結合する受容体蛋白質であるFcγレセプター(以下「FcγR」という)は遺伝子構造の類似性に基づいてタイプI(CD64抗原)、II型(CD32抗原)、II型I(CD16抗原)の3種に大きく分類されている。これらのうち、FcγRIIは、他のFcRとは異なりモノマーのIgGに対して低親和性であり、免疫複合体となった多価IgGと結合し、単球、マクロファージ、多形核白血球(PMN)、マスト細胞、血小板、いくつかのT細胞リンパ球及びいくつかのB細胞リンパ球を含む造血幹細胞に広く発現する。また、FcγRIIには遺伝子配列が異なるFcγRIIA、FcγRIIB及びFcγRIICの3種類の受容体が存在しており、いずれも染色体の1q23に位置していることが知られている。
【0004】
上記FcγRIIBは、他のFcRとは異なり、γ鎖と会合することなく、しかも細胞内領域に抑制性シグナルを伝達するアミノ酸配列(ITIM:Immunoreceptor Tyrosine-based Inhibition Motif)を有している(Immunol. Rev. 125, 49-76, 1992、Science 256, 1808-1812, 1992)。このようなFcγRIIBの生理的機能を解明するために、本発明者らはFcγRIIBノックアウトマウスを既に作出し(Nature 379, 346-349, 1996)、FcγRIIBノックアウトマウスをII型コラーゲンで免疫することによって関節炎モデルマウス(J. Exp. Med. 189,187-194, 1999)を作製しているが、関節炎症像はDBA/1Jマウスのものと同様であり、それほど有用なものではなかった。
【0005】
他方、ヒトの慢性関節リウマチや炎症の動物モデルとして、コラーゲン関節炎(collagen-induced arthritis:CIA)や、アジュバント関節炎が知られている。CIAは、慢性関節リウマチ患者の血清や関節滑液中にII型コラーゲンに対する抗体がかなりの頻度で存在するとの知見に基づいてラットをII型コラーゲンで感作することにより誘導された関節炎であり、アジュバント関節炎と比較して、皮膚粘膜症状がないこと、マウスやラットの他サルでも誘導可能なこと、寛容憎悪傾向を示すことがあることなど、より慢性関節リウマチに近い動物モデルとして知られている。また、CIAの発症には、用いる動物の系統の有するMHCハプロタイプと相関性があり、マウスではH-2q(DBA/1Jマウス)、H-2r(RIIIS/Jマウス)及びH-2d(BALB/cマウス)ハプロタイプを有するマウスに発症率が高く、H-2qのDBA/1Jマウスがよく使われ、ラットでもLewis,Wister,BB/DRなどがよく使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
CIAは遺伝的背景が明らかなマウスにおいてその解析が進み、前記のように、ハプロタイプをもつH-2q(DBA/1Jマウス)、H-2r(RIIIS/Jマウス)及びH-2d(BALB/cマウス)のマウスは疾患モデルマウスとして関節炎を誘導することができるが、発症率は100%ではなく、また関節炎の程度も最高値に達しないという問題点があった。本発明の課題は、従来のCIAモデル動物に比べて、よりよいリウマチ関節炎モデル動物、すなわちリウマチ関節炎の程度が最高値に達し、かつ発症率が100%であるリウマチ関節炎好発モデル動物や、これを用いたリウマチ関節炎症の治療薬等のスクリーニング方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、一般的にコラーゲン関節炎(CIA)が発症しないとされているハプロタイプH-2bのFcγRIIB欠損マウスにおいてウシ関節由来II型コラーゲン(C-II)を免疫することでCIAを誘導できることを報告している(J. Exp. Med. 189, 187-194, 1999)。このFcγRIIB欠損マウスでは抗II型コラーゲン抗体価が高く、その関節炎症像は野生型のDBA/1Jマウスのものと同様であった。自己免疫疾患であるCIAの発症はMHCハプロタイプに拘束されていることから、FcγRIIBの欠損によりかかる拘束の解除が起こるとの知見が得られた。そこで、DBA/1Jマウスに8世代、2年半をかけて戻し交配し、得られたFcγIIB欠損DBA/1Jマウスが発症するCIAは、DBA/1Jマウスよりも早期に関節炎を発症し、かつ症状が増悪することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、免疫グロブリンFcγレセプターIIB遺伝子機能が染色体上で欠損した齧歯類動物と該齧歯類動物と同種の野生型コラーゲン関節炎発症性齧歯類動物とを戻し交配することにより得られ、II型コラーゲンで免疫するとコラーゲン関節炎を発症することを特徴とするリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物(請求項1)に関する。
【0009】
また本発明は、リウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物がリウマチ関節炎好発モデルマウス又はリウマチ関節炎好発モデルラットであることを特徴とする請求項1記載のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物(請求項2)や、免疫グロブリンFcγレセプターIIB遺伝子機能が染色体上で欠損したマウスと野生型DBA/1Jマウスとを戻し交配することを特徴とする請求項2記載のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物(請求項3)や、戻し交配を6回以上行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物(請求項4)や、II型コラーゲンが、ウシ関節由来II型コラーゲンであることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物(請求項5)に関する。
【0010】
さらに本発明は、請求項1~5のいずれか記載のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物をII型コラーゲンで免疫し、免疫の前後若しくは免疫と同時に、又は免疫後リウマチ関節炎の未発症時に、該齧歯類動物に被検物質を投与し、コラーゲン関節炎の発症の程度を指標として評価することを特徴とするリウマチ関節炎の発症促進物質又は発症抑制物質のスクリーニング方法(請求項6)や、コラーゲン関節炎の発症の程度を指標として評価するに際し、対照としての野生型コラーゲン関節炎非発症性齧歯類動物及び/又は野生型コラーゲン関節炎発症性齧歯類動物との比較評価を行うことを特徴とする請求項6記載のリウマチ関節炎の発症促進物質又は発症抑制物質のスクリーニング方法(請求項7)や、請求項1~5のいずれか記載のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物をII型コラーゲンで免疫し、免疫後リウマチ関節炎の発症時に、該齧歯類動物に被検物質を投与し、コラーゲン関節炎の症像の程度を指標として評価することを特徴とするリウマチ関節炎の症像促進物質又は症像抑制物質のスクリーニング方法(請求項8)や、コラーゲン関節炎の症像の程度を指標として評価するに際し、対照としての野生型コラーゲン関節炎非発症性齧歯類動物及び/又は野生型コラーゲン関節炎発症性齧歯類動物との比較評価を行うことを特徴とする請求項8記載のリウマチ関節炎の症像促進物質又は症像抑制物質のスクリーニング方法(請求項9)に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、免疫グロブリンFcγレセプターIIB(FcγIIB)遺伝子機能が染色体上で欠損した齧歯類動物とは、FcγRIIBをコードする齧歯類動物の内在性遺伝子が破壊・欠損・置換等の遺伝子変異により不活性化され、FcγRIIBを発現する機能を失なったマウス、ラット等の齧歯類動物をいう。また、本発明において、かかる齧歯類動物と同種の野生型コラーゲン関節炎(CIA)発症性齧歯類動物とは、CIAを発症するMHCハプロタイプを有するマウス、ラット等の齧歯類動物であり、マウスではDBA/1JマウスやRIIIS/JマウスやBALB/cマウス等を、ラットではLewisラットやWisterラットやBB/DRラット等を具体的に例示することができ、特にDBA/1Jマウス系統を用いることはかかるマウスがコラーゲン関節炎を高率で発症するマウスであり、このマウス系統に戻し交配することで更に発症率を高めることができる点で好ましい。そしまた、本発明において、リウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物とは、II型コラーゲンを用いて免疫した場合に、上記野生型CIA発症性齧歯類動物と比較して、少なくともCIAの発症率が高く、また発症憎悪の程度が大きいマウス、ラット等の齧歯類動物をいう。以下、FcγRIIB遺伝子機能が染色体上で欠損した齧歯類動物の作製方法を以下にFcγRIIBノックアウトマウスを例に挙げて説明する。
【0012】
FcγRIIB遺伝子機能が染色体上で欠損したマウス、すなわちFcγRIIBノックアウトマウスは、本発明者らの前掲の文献(Nature 379, 346-349, 1996)に記載する方法等によって作製することができる。具体的には、マウス遺伝子ライブラリーからPCR等の方法により得られた遺伝子断片を用いて、FcγRIIB遺伝子をスクリーニングし、スクリーニングされたFcγRIIB遺伝子を、ウイルスベクター等を用いてサブクローンし、DNAシーケンシングにより特定する。このクローンのS2エキソン及びEC1エキソンを含むフラグメントをpMC1ネオ遺伝子カセット等に置換することによって、ターゲットベクターを調製する。この線状化されたベクターをエレクトロポレーション(電気穿孔)法等によってES細胞に導入し、相同的組換えを行い、その相同的組換え体の中から、G418等に抵抗性を示すES細胞を選択し、その細胞のクローンをマウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションし、かかる胚盤胞を仮親のマウスに戻し、キメラマウスを作製する。このキメラマウスを野生型のマウスとインタークロスさせると、ヘテロ接合体マウスを得ることができ、また、このヘテロ接合体マウスをインタークロスさせることによって、FcγRIIBノックアウトマウスを得ることができる。
【0013】
本発明のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物は、上記FcγRIIB遺伝子機能が染色体上で欠損した齧歯類動物を、該齧歯類動物と同種の前記野生型CIA発症性齧歯類動物とを常法により戻し交配することによって得ることができる。コンジェニック系統(DBA/1J系統)とする場合には、通常12世代以上の戻し交配を必要とするが、本発明における戻し交配においては、複数回、特に6回以上行うことがCIAの発症率や発症憎悪の程度の点で好ましく、さらに均一な実験結果を得られる点で8回以上の戻し交配をすることがより好ましい。複数回の戻し交配は、FcγRIIB遺伝子機能が染色体上で欠損した齧歯類動物と該齧歯類動物(例えば、FcγRIIBノックアウトマウス)と同種の前記野生型CIA発症性齧歯類動物(例えば、DBA/1Jマウス)との雑種第1代(F1)と、上記野生型CIA発症性齧歯類動物とを交配し、次いで得られた雑種第2代(F2)と上記野生型CIA発症性齧歯類動物とを再び交配し、以下かかる交配を繰り返していくことにより行うことができ、本発明において例えば6回の戻し交配を行うとは、雑種第6代(F6)同士を交配して得られるFcγRIIB遺伝子機能が染色体上で欠損した齧歯類動物をいう。
【0014】
本発明のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物は、II型コラーゲンを用いて公知の方法で免疫することによりCIAを発症するが、野生型CIA発症性齧歯類動物と比較した場合、CIAの発症率が高く、また発症憎悪の程度が大きいものが好ましい。また、本発明のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物にCIAを発症させるために用いられるII型コラーゲンとしては特に限定されるものでなく、ウシ関節由来II型コラーゲン、ニワトリ関節由来II型コラーゲン、ヒト血清由来II型コラーゲン、ヒト関節滑液由来II型コラーゲン等の市販のII型コラーゲンを用いることができるが、リウマチ関節炎好発モデルマウスの場合、ウシ関節由来II型コラーゲンを用いることが好ましい。また、本発明のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物にCIAを誘導することができるものであれば、II型コラーゲンのアミノ酸配列の一部を含むペプチドやアミノ酸配列の一部が変異したものなども免疫源として使用することができる。
【0015】
本発明のリウマチ関節炎の発症促進物質又は発症抑制物質のスクリーニング方法は、リウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物をII型コラーゲンで免疫し、免疫の前後若しくは免疫と同時に、又は免疫後リウマチ関節炎の未発症時に、該齧歯類動物に被検物質を投与し、コラーゲン関節炎の発症の程度を指標として評価することを特徴とし、また、本発明のリウマチ関節炎の症像促進物質又は症像抑制物質のスクリーニング方法は、リウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物をII型コラーゲンで免疫し、免疫後リウマチ関節炎の発症時に、該齧歯類動物に被検物質を投与し、コラーゲン関節炎の症像の程度を指標として評価することを特徴とする。
【0016】
上記スクリーニング方法における被検物質を投与する方法としては、経口投与、静脈注射、筋肉注射等の公知の投与方法であれば特に制限されるものではない。また、コラーゲン関節炎の発症の程度を指標として評価する方法としては、指関節の腫脹等の発生日、発生率、発生の程度等、公知のリウマチ関節炎の評価方法を用いることができ、コラーゲン関節炎の症像の程度を指標として評価する方法としては、発症した指関節の腫脹等の症状改善の程度を観察することにより行うことができる。そして、これらの評価に際しては、対照としての野生型コラーゲン関節炎非発症性齧歯類動物や野生型コラーゲン関節炎発症性齧歯類動物との比較評価を行うことが好ましい。
【0017】
そして、これらスクリーニング方法により得られるリウマチ関節炎発症促進物質やリウマチ関節炎症像促進物質は、CIA発症の機構を解明する上で有用であり、また、リウマチ関節炎発症抑制物質やリウマチ関節炎症像抑制物質は、リウマチ関節炎発症抑制物質やリウマチ関節炎症像抑制物質を必要としている患者を治療するのに用いられる治療薬、すなわち慢性リウマチ関節炎の予防及び又は症状改善剤として有用である。さらに、リウマチ関節炎発症抑制物質やリウマチ関節炎症像抑制物質は、リウマチ関節炎の外科的治療に用いることができる可能性がある。
【0018】
【実施例】
以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれら実施例により限定されるものではない。
参考例(FcγRIIB欠損マウスの作製)
129/Sv/J(H-2b)マウスのゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、FcγRIIB遺伝子のゲノムDNAのクローンを単離した。このクローンのS2及びEC1の2つの独立したエキソンを含む2.65KbのフラグメントをpMC1ネオ遺伝子カセット(東洋紡社製)に、置換することによってターゲットベクターを作製した。この線状化したベクターをエレクトロポレーションによってES細胞(J1)に導入し、相同的組換えを行った。
【0019】
上記の相同的組換えを起こしたES細胞からESクローンを単離し、G418及びGANC(ガンシクロビア)に対してネオマイシン耐性ESクローンをスクリーニングし、サザンブロット法によって相同的組換え体を同定した。その同定された相同的組換え体からゲノムDNAを単離して、HindIIIでダイジェストし、pMC1ネオ遺伝子カセットを含むターゲティングされた対立遺伝子を含んでいることを確認した。かかる確認されたESクローンを胚盤胞中にマイクロインジェクションし、キメラマウスを作製し、作製されたマウスを野生型のC57BL/6(H-2b)マウスとインタークロスさせることによってヘテロ接合体マウスを得て、また、ホモ接合体マウスを得るために、このヘテロ接合体マウスをインタークロスさせて、FcγRIIB遺伝子が染色体上で欠損した欠損マウスを作製した。
【0020】
実施例1(リウマチ関節炎好発モデルマウスの作製)
参考例1により得られたFcγIIB欠損雄マウスをH-2qのDBA/1J雌マウスとを交配させて、産まれてきたハプロタイプH-2qのFcγIIB+/-DBA/1Jマウス(F1)とDBA/1Jマウスとを再び交配させて、産まれてきたハプロタイプH-2qのFcγIIB+/-DBA/1Jマウス(F2)とDBA/1Jマウスとを再び交配させ、以下同様に交配を8回繰り返し、得られた8回戻し交配マウス(ハプロタイプH-2qのFcγIIB+/-DBA/1Jマウス)同士を交配して、ハプロタイプH-2qのFcγIIB-/-(欠損)DBA/1Jマウスを作製した。
【0021】
実施例2(アジュバンドの作製)
0.02MのHCl溶液に0.15MのNaOH溶液を加えた溶液(pH8.0)に、牛関節から調製したII型コラーゲン(コラーゲン技術株式会社)を最終濃度で4.0mg/mlになるように溶解し、II型コラーゲン溶液を作製した。このII型コラーゲン4.0mg/mlと、流動パラフィン、界面活性剤及び結核死菌からなる完全フロイントアジュバンド(CFA)4.0mg/mlとを連結シリンジ中で混合して、またII型コラーゲン(pH8.0)4.0mg/mlと、流動パラフィンと界面活性剤とからなる不完全フロイントアジュバント(IFA)4.0mg/mlとを連結シリンジ中で混合して、2種類のオイルエマルジョンを作製した。
【0022】
実施例3(リウマチ関節炎好発モデルマウスを用いたCIAの発症)
上記実施例1記載の方法により作製したFcγIIB欠損DBA/1Jマウス(8週齢:雌雄差なし)をエーテルで麻酔し尾根部を剃毛し、II型コラーゲンとCFAとをそれぞれ200μg含むエマルジョン100μlをマウスの皮内に注射して一次免疫を行い、その一次免疫後、21日目と42日目にII型コラーゲンとIFAとをそれぞれ200μg含むエマルジョン100μlを皮内に注射し免疫し、リウマチ関節炎好発モデルマウスにCIAを発症させ、リウマチ関節炎の評価を以下のように行った。
【0023】
実施例4(関節炎の発症率と関節炎スコア)
CIA発症マウスの関節炎の評価を1肢につき、症状なし:0点、指関節が1本のみ腫脹:1点、2本以上の指関節:2点、関節全体の腫脹:3点と点数化し、計12点満点で採点した。また、コントロールとしてDBA/1Jマウスを用いた。図1に示すように、コントロールのDBA/1Jマウス(●:n=5)では、初回免疫で関節炎の発症率は40%で、発症日23.3±4.6日であった。また、関節炎スコアは3回免疫後でも平均8.5点で最高値に達しなかった。一方、FcγIIB欠損DBA/1Jマウス(□:n=12)では初回免疫のみで全例関節炎を発症し、発症日も17.1±1.9日と早く、2回目の免疫後には関節炎スコアは全例満点の12点となった。以上のことから、FcγIIB欠損DBA/1Jマウスは、これまでCIA(collagen-induced arthritis)において一般的に用いられてきたDBA/1Jマウスと比較して、発症率及び関節炎スコアの高い、効率の良い関節炎モデルマウスであることがわかった。
【0024】
【発明の効果】
本発明によると、II型コラーゲンで免疫すると、リウマチ関節炎の程度が最高値に達しかつ発症率が100%であるリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物を得ることができる。したがって、かかる本発明のリウマチ関節炎好発モデル齧歯類動物を用いることによって、従来のリウマチ関節炎好発モデルマウスやラットにおける場合よりも、一層効率的にリウマチ特効薬の開発や治療法の開発を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリウマチ関節炎好発モデルマウスとDBA/1Jマウスにおける関節炎の発症率の結果を示す図である。
【図2】本発明のリウマチ関節炎好発モデルマウスと従来のDBA/1Jマウスにおける関節炎スコアの結果を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1