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明細書 :不揮発性固体磁気メモリの記録方法及び不揮発性固体磁気メモリ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5611594号 (P5611594)
登録日 平成26年9月12日(2014.9.12)
発行日 平成26年10月22日(2014.10.22)
発明の名称または考案の名称 不揮発性固体磁気メモリの記録方法及び不揮発性固体磁気メモリ
国際特許分類 H01L  27/105       (2006.01)
H01L  21/8246      (2006.01)
H01L  43/08        (2006.01)
H01L  43/10        (2006.01)
G11C  11/15        (2006.01)
H01F  10/193       (2006.01)
FI H01L 27/10 447
H01L 43/08 S
H01L 43/08 Z
H01L 43/10
G11C 11/15 140
H01F 10/193
請求項の数または発明の数 11
全頁数 12
出願番号 特願2009-536988 (P2009-536988)
出願日 平成20年10月3日(2008.10.3)
国際出願番号 PCT/JP2008/068044
国際公開番号 WO2009/048025
国際公開日 平成21年4月16日(2009.4.16)
優先権出願番号 2007265747
優先日 平成19年10月11日(2007.10.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年9月14日(2011.9.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】大野 英男
【氏名】松倉 文▲礼▼
【氏名】千葉 大地
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100177149、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 浩義
審査官 【審査官】佐久 聖子
参考文献・文献 国際公開第2004/059745(WO,A1)
特開2004-055866(JP,A)
特開2001-196661(JP,A)
特開2005-011907(JP,A)
特開2009-021586(JP,A)
調査した分野 G11C 5/02- 5/12、11/00-11/12、
11/15-11/16、
H01L 21/8246、27/10-27/115、27/22、
27/28、29/82、43/00-43/14、51/05
特許請求の範囲 【請求項1】
磁性体からなる記録層を備える不揮発性固体磁気メモリの記録方法であって、
前記記録層は強磁性体層からなり、自身のキャリア濃度の変化にかかわらず強磁性を示し、二軸の磁気異方性と2つの一軸磁気異方性を持ち、印加電圧により、キャリア(電子・正孔)濃度が制御されることによって、前記2つの一軸磁気異方性が制御され、
前記不揮発性固体磁気メモリは、前記記録層と、前記記録層を支持する所定の基板と、前記記録層の上方において電気的絶縁層を介して設けられた金属電極層と、を備え、
前記2つの一軸磁気異方性による磁気異方性の容易軸と困難軸とが入れ替わって、さらに、元に戻る書き込み電圧を前記記録層と前記金属電極層との間に印加することにより、前記記録層の磁化の向きを回転または反転させて記録動作を実行し、前記記録層は印加電圧除去後も磁化の向きを保持する、
ことを特徴とする不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項2】
磁性体からなる記録層を備える不揮発性固体磁気メモリの記録方法であって、
前記記録層は強磁性体層からなり、自身のキャリア濃度の変化にかかわらず強磁性を示し、二軸の磁気異方性Bと2つの一軸磁気異方性U1とU2を持ち、印加電圧により、キャリア(電子・正孔)濃度の増加、減少若しくはそれらの組み合わせが制御されることによって、二軸の磁気異方性Bによる磁気異方性磁場をHB、2つの一軸磁気異方性U1,U2による磁気異方性磁場をそれぞれHU1,HU2としたときに、HU1/HB≡hU1とHU2/HB≡hU2とが制御され、
前記不揮発性固体磁気メモリは、前記記録層と、前記記録層を支持する所定の基板と、前記記録層の上方において電気的絶縁層を介して設けられた金属電極層と、を備え、
前記hU1とhU2との符号が反転して、元に戻る書き込み電圧を前記記録層と前記金属電極層との間に印加することにより、前記記録層の磁化の向きを回転または反転させて記録動作を実行し、前記記録層は印加電圧除去後も磁化の向きを保持する、
ことを特徴とする不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項3】
前記書き込み電圧は、三角波、サイン波、鈍った矩形波状の電圧パルスの何れか、から構成される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項4】
前記基板と前記記録層との間にバッファ層を有する、ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項5】
前記記録層は、キャリア誘起強磁性体半導体層からなる、ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項6】
前記記録層は、IV族、III-V族、II-VI族、II-VI-V2 族、酸化物半導体に遷移金属元素または希土類金属元素をドーピングした半導体層からなる、ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項7】
前記電気的絶縁層は、絶縁膜、又は、前記金属電極層と前記記録層との接合によって生じるショットキー障壁、から構成される、ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項8】
基板と、
該基板上に形成され、強磁性体層からなり、自身のキャリア濃度の変化にかかわらず強磁性を示し、二軸の磁気異方性と2つの一軸磁気異方性を持ち、印加電圧により、前記二軸の磁気異方性と2つの一軸磁気異方性が制御される記録層と、
該記録層上に形成される電気的絶縁層と、
該電気的絶縁層上に形成される金属電極層と、を備え、
前記2つの一軸磁気異方性による磁気異方性の容易軸と困難軸とが入れ替わって、さらに、元に戻る書き込み電圧が前記記録層と前記金属電極層との間に印加されることにより、前記記録層の磁化の向きを回転または反転する、
ことを特徴とする不揮発性固体磁気メモリ。
【請求項9】
基板と、
該基板上に形成され、強磁性体層からなり、自身のキャリア濃度の変化にかかわらず強磁性を示し、二軸の磁気異方性Bと2つの一軸磁気異方性U1とU2を持ち、印加電圧により、キャリア(電子・正孔)濃度の増加、減少若しくはそれらの組み合わせが制御されることによって、二軸の磁気異方性Bによる磁気異方性磁場をHB、2つの一軸磁気異方性U1,U2による磁気異方性磁場をそれぞれHU1,HU2としたときに、HU1/HB≡hU1とHU2/HB≡hU2とが制御される記録層と、
該記録層上に形成される電気的絶縁層と、
該電気的絶縁層上に形成される金属電極層と、を備え、
前記hU1とhU2との符号が反転して、元に戻る書き込み電圧を前記記録層と前記金属電極層との間に印加されることにより、前記記録層の磁化の向きを回転または反転する、
ことを特徴とする不揮発性固体磁気メモリ。
【請求項10】
前記書き込み電圧は、三角波、サイン波、鈍った矩形波状の電圧パルスの何れか、から構成される、ことを特徴とする請求項8または9に記載の不揮発性固体磁気メモリ。
【請求項11】
前記電気的絶縁層は、絶縁膜、又は、前記金属電極層と前記記録層との接合によって生じるショットキー障壁、から構成される、ことを特徴とする請求項8から10の何れか1項に記載の不揮発性固体磁気メモリ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性固体磁気メモリの記録方法及び不揮発性固体磁気メモリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、強磁性体の磁化方向は磁気記録媒体のビットとして利用されている。例えば、不揮発性磁気メモリ(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory) では、トンネルバリアを二層の磁性薄膜(フリー層とピン層) でサンドイッチしたトンネル磁気抵抗素子の上下層の磁化が平行か反平行かによって0と1の情報を区別している。一つの磁性ビット(以下セルと呼ぶ) の上下にはワード線とビット線が配線されており、両線に電流を流すことにより発生する合成磁場を利用してフリー層の磁化を反転することができる。
【0003】
強磁性体は微細化すればするほど反転磁場が高くなるため、セルサイズが小さくなると配線に流す電流を大きくしなければ磁化を反転することができなくなる。従って、この技術は高密度集積化に際して限界がある。
これを打開するための手法として、スピン注入磁化反転がある。これはピン層からのスピン偏極した電流によって直接フリー層の磁化を反転させる技術である。反転に必要な電流密度は素子面積にあまり影響されないので、面積が小さければ小さいほど必要な電流が下がる。すなわち、一つのビットに書き込むために必要な消費電力は小さくなる。現段階で、必要な電流密度は1平方センチメートル当たり107 A程度であり、さらなる低減化が低消費電力化に向けての技術課題となっている。
【0004】
しかし、情報の読み出しのために必要な電流は書き込み電流を常に下回らなければならないため、書き込み電流が低くなりすぎると今度は読み出しに必要な出力電圧を得ることが困難になるという課題も将来的には考慮していかなければならない。
電流磁場による磁化反転を用いた不揮発性磁気メモリはすでに製品化されている(下記非特許文献1参照) 。一方、スピン注入磁化反転を用いたメモリは試作段階である(下記非特許文献2参照)。

【非特許文献1】http: //www.freescale.com/
【非特許文献2】Digest of technical papers of 2007 IEEE International Solid-State Circuits Conference (ISSCC 2007) ,pp.480-481,February 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の特徴は、キャリア濃度の増減で磁気異方性が変化する磁性体を利用し、磁性体の磁化容易軸方向(磁化が向きやすい方向)を、キャリア濃度を増減させることで制御することにある。従って、無磁場での磁化の回転や反転が可能となる。また、キャリア濃度を増減するための手段として、電界を印加する手法を用いることにより、従来の磁化反転手法に比べると桁違いに小さな消費電力での書き込みが可能となり、超低消費電力の不揮発性固体磁気メモリを提供することができる。
【0006】
すなわち、本発明は、上記状況に鑑みて、キャリア濃度の増減で磁気異方性が変化する磁性体を利用し、磁性体の磁化容易軸方向(磁化が向きやすい方向)を、キャリア濃度を増減させることで制御することにより、超低消費電力の不揮発性固体磁気メモリの記録方法及び不揮発性固体磁気メモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕磁性体からなる記録層を備える不揮発性固体磁気メモリの記録方法であって、
前記記録層は強磁性体層からなり、自身のキャリア濃度の変化にかかわらず強磁性を示し、二軸の磁気異方性と2つの一軸磁気異方性を持ち、印加電圧により、キャリア(電子・正孔)濃度が制御されることによって、前記2つの一軸磁気異方性が制御され、
前記不揮発性固体磁気メモリは、前記記録層と、前記記録層を支持する所定の基板と、前記記録層の上方において電気的絶縁層を介して設けられた金属電極層と、を備え、
前記2つの一軸磁気異方性による磁気異方性の容易軸と困難軸とが入れ替わって、さらに、元に戻る書き込み電圧を前記記録層と前記金属電極層との間に印加することにより、前記記録層の磁化の向きを回転または反転させて記録動作を実行し、前記記録層は印加電圧除去後も磁化の向きを保持する、
ことを特徴とする。
〔2〕また、磁性体からなる記録層を備える不揮発性固体磁気メモリの記録方法であって、
前記記録層は強磁性体層からなり、自身のキャリア濃度の変化にかかわらず強磁性を示し、二軸の磁気異方性Bと2つの一軸磁気異方性U1とU2を持ち、印加電圧により、キャリア(電子・正孔)濃度の増加、減少若しくはそれらの組み合わせが制御されることによって、二軸の磁気異方性Bによる磁気異方性磁場をHB、2つの一軸磁気異方性U1、U2による磁気異方性磁場をそれぞれHU1、HU2としたときに、HU1/HB≡hU1とHU2/HB≡hU2とが制御され、
前記不揮発性固体磁気メモリは、前記記録層と、前記記録層を支持する所定の基板と、前記記録層の上方において電気的絶縁層を介して設けられた金属電極層と、を備え、
前記hU1とhU2との符号が反転して、元に戻る書き込み電圧を前記記録層と前記金属電極層との間に印加することにより、前記記録層の磁化の向きを回転または反転させて記録動作を実行し、前記記録層は印加電圧除去後も磁化の向きを保持する。
〔3〕前記書き込み電圧は、例えば、三角波、サイン波、鈍った矩形波状の電圧パルスの何れか、から構成される。
〔4〕前記基板と前記記録層との間にバッファ層を備えてもよい。
〔5〕前記記録層は、例えば、キャリア誘起強磁性体半導体層からなる。
〔6〕前記記録層は、例えば、IV族、III-V族、II-VI族、II-VI-V2 族、酸化物半導体に遷移金属元素または希土類金属元素をドーピングした半導体層からなる。
〔7〕前記電気的絶縁層は、絶縁膜、又は、前記金属電極層と前記記録層との接合によって生じるショットキー障壁、から構成されてもよい。
【0008】
〕不揮発性固体磁気メモリであって、基板と、該基板上に形成され、強磁性体層からなり、自身のキャリア濃度の変化にかかわらず強磁性を示し、二軸の磁気異方性と2つの一軸磁気異方性を持ち、印加電圧により、前記二軸の磁気異方性と2つの一軸磁気異方性が制御される記録層と、該記録層上に形成される電気的絶縁層と、該電気的絶縁層上に形成される金属電極層と、を備え、
前記2つの一軸磁気異方性による磁気異方性の容易軸と困難軸とが入れ替わって、さらに、元に戻る書き込み電圧が前記記録層と前記金属電極層との間に印加されることにより、前記記録層の磁化の向きを回転または反転する
〔9〕また、不揮発性固体磁気メモリであって、基板と、該基板上に形成され、強磁性体層からなり、自身のキャリア濃度の変化にかかわらず強磁性を示し、二軸の磁気異方性Bと2つの一軸磁気異方性U1とU2を持ち、印加電圧により、キャリア(電子・正孔)濃度の増加、減少若しくはそれらの組み合わせが制御されることによって、二軸の磁気異方性Bによる磁気異方性磁場をHB、2つの一軸磁気異方性U1,U2による磁気異方性磁場をそれぞれHU1,HU2としたときに、HU1/HB≡hU1とHU2/HB≡hU2とが制御される記録層と、該記録層上に形成される電気的絶縁層と、該電気的絶縁層上に形成される金属電極層と、を備え、
前記hU1とhU2との符号が反転して、元に戻る書き込み電圧を前記記録層と前記金属電極層との間に印加されることにより、前記記録層の磁化の向きを回転または反転する。
〔10〕前記書き込み電圧は、例えば、三角波、サイン波、鈍った矩形波状の電圧パルスの何れか、から構成される。
〔11〕前記電気的絶縁層は、例えば、絶縁膜、又は、前記金属電極層と前記記録層との接合によって生じるショットキー障壁、から構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
本発明による電界誘起磁化反転法では、磁場による磁化反転法またはスピン電流による磁化反転法と比較して、磁化を反転させるのに必要な消費電力は、百万分の1以下であることが見積もられるので、極めて低消費電力の不揮発性固体磁気メモリの記録方法が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る膜面内に磁化容易軸をもつ (Ga,Mn) Asの磁気異方性の特性を示す図である。
【図2】本発明に係る各条件における磁化の角度、規格化磁気エネルギー、規格化磁気エネルギーの極小値のそれぞれの時間依存性を示す図である。
【図3】本発明に係る各ゲート電圧Vの印加によるhU1とhU2の変調の度合いを表す係数a値のときの磁化の回転角度のマップを示す図である。
【図4】本発明に係るrのゲート電圧Vの印加によるhU1とhU2の変調の度合いを表す係数aに対するrの依存性を示す図である。
【図5】本発明に係る素子構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る磁性体を記録層として備える不揮発性固体磁気メモリの記録方法は、前記記録層はIV族、III-V族、II-VI族、II-VI-V2 族、酸化物半導体に遷移金属元素または希土類金属元素をドーピングしたキャリア誘起強磁性半導体層からなり、前記記録層を支持する所定の基板と、前記記録層の上方において電気的絶縁層を介して設けられた金属電極層を備えることにより、キャパシタンス構造の絶縁層部分を、前記電気的絶縁層として前記金属電極層と前記キャリア誘起強磁性半導体からなる記録層の接合によって生じるショットキー障壁として用い、前記記録層のキャリア(電子・正孔) 濃度を増加または減少させる操作若しくはそれらを組み合わせた操作を行なうことによって、磁化を回転または反転させて記録動作を実行し、前記記録層及び前記金属電極層は互いに符号の異なる電荷の蓄積層として機能するとともに、電圧を前記記録層と前記金属電極層間に印加することにより前記操作を行ない、かつ、前記基板と前記記録層との間にバッファ層を有するようにした。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明の原理について説明する。
強磁性体の磁化方向は磁気記録媒体のビットとして利用されている。不揮発性磁気メモリ (MRAM) ではトンネル磁気抵抗素子の上下の磁化が平行か反平行かによって0と1の情報を区別している。片方の磁化を電流によって発生する磁場によって反転させることで書き込みを行なうことができる。強磁性ビットのサイズがサブミクロンオーダになると、スピンカレント, すなわち、スピントランスファートルクを用いた磁化反転の方が消費電力の点で有利となる。それでも106-8 A/cm2 程度の密度の電流を要する。
【実施例】
【0013】
本願発明者らはキャリア誘起強磁性体の磁気異方性がキャリア濃度の関数であることを利用して、ゲート電界Eによってキャリア濃度を変調することで磁化方向を操作できる条件を調査した。正孔誘起強磁性体 (Ga,Mn) Asの磁気特性は詳しく調べられており、複雑な磁気異方性を持つことが分かっている。また、正孔濃度p及びキュリー温度TC はゲート電界Eにより制御できる。光照射による磁化方向の変化も観測されている。
【実施例】
【0014】
本願発明者らは基板上の膜面内に磁化容易軸をもつ (Ga,Mn) As層の磁気異方性を例にとって、外部磁場やスピンカレントを必要としない超低消費電力の磁化方向操作(回転及び反転) を一斉磁化回転モデルを用いてシミュレートした。
図1は本発明に係る膜面内に磁化容易軸をもつ (Ga,Mn) Asの磁気異方性の特性を示す図であり、図1(a)はその磁化の角度と結晶軸の関係を示す図、図1(b)はその素子構造の模式図、図1(c)はその入力電圧印加シーケンスを示す図、図1(d)はそれに伴う磁気異方性の変化の時間依存性を示す図である。
【実施例】
【0015】
図1(b)において、1は基板、2は基板1上の記録層としての (Ga,Mn) As層、3はその (Ga,Mn) As層2上の絶縁体層、4はその絶縁体層3上のゲート電極層である。また、図1(d)において、実線はa=2.0、点線はa=1.5、一点鎖線はa=1.0を示している。一般的に、基板1上に直接記録層2を直接堆積するのが困難であるために、記録層2の磁気的特性を予め最適化しておく。たとえば、基板1及び記録層2の双方と整合性が良いGaAsや(In,Ga)Asをバッファ層として基板1上に形成し、その上に記録層2を形成する。記録層2がその他のIV族、III-V族、II-VI族、II-VI-V2 族、酸化物半導体に遷移金属元素または希土類金属元素をドーピングした強磁性半導体であった場合にも同様に基板1と記録層2の双方と整合性の良いバッファ層を用いることができる。
【実施例】
【0016】
圧縮歪みを持つ (Ga,Mn) As層2は基板1上の膜面内に [100] と [010] 方向に沿った二軸の立方磁気異方性 (B) と [100] もしくは [010] 方向に沿った一軸磁気異方性 (U1) と [110] 若しくは [-110] 方向に沿った一軸磁気異方性 (U2) をもつことが知られている。二軸の立方磁気異方性 (B) は(Ga,Mn)As層2の価電子帯構造に起因した磁気異方性であると考えられている。一軸磁気異方性(U1)による異方性磁場は非常に小さく、感度の高い測定を行なわないと検出できないばかりでなく、その起源も明らかではない。一軸磁気異方性(U2)は正孔濃度pとMn組成に依存してその符号([110] か [-110] のどちらが容易軸になるかを示す) が変化することが報告されている。
【実施例】
【0017】
外部磁場がゼロのときの系の磁気エネルギーFは以下の式で与えられる、
【実施例】
【0018】
【数1】
JP0005611594B2_000002t.gif
【実施例】
【0019】
ここでは、Mは自発磁化、ψは磁化の〔100〕方向からの角度、HB ,HU1及びHU2はそれぞれ二軸の立方磁気異方性(B),一軸磁気異方性(U1,U2)による磁気異方性磁場である。自発磁化Mは、∂F/∂ψ=0, ∂2 F/∂ψ2 >0となる角度ψを向く〔図1 (a) 参照〕。一般的な(Ga,Mn)As層2では、キュリー温度TC より十分に低い温度ではHB >HU2≫HU1となり、温度が上昇して、キュリー温度TC に近づくと、HB は大きく減少して、場合によってはHB <HU2となる。GaMnAs電界効果素子〔図1(b)参照〕においては、ゲート電界Eの印加により、正孔濃度pを制御できるため、HB ,HU2,HU1の各大きさや符号までもが制御可能であることが期待される。
【実施例】
【0020】
ゲート電圧V (=Ed, ここでdはゲート絶縁体膜の厚み) を素子に入力すると、HB ,HU1,HU2はそれぞれVの関数となる。
ここで、簡単にするため、HU1/HB ( =hU1) およびHU2/HB ( =hU2) がVに比例して変化すると仮定し、入力電圧V (t) (0≦t≦1) ,(tは無次元の数) は三角波形状を持つとする〔図1 (c)参照〕;
【実施例】
【0021】
【数2】
JP0005611594B2_000003t.gif
【実施例】
【0022】
ここで、aはゲート電圧Vの印加によるhU1とhU2の変調の度合いを表す係数であり、a>1の場合、入力電圧によって一時的に異方性磁場の符号が変化する〔図1(d)参照〕。Vmax は印加するゲート電圧Vの最大値である。V (t) の入力により磁気エネルギーFのψ依存性の極小値が時間的に変化するので自発磁化Mは回転若しくは反転する。
図2は本発明に係る各条件における磁化の角度、規格化磁気エネルギー、規格化磁気エネルギーの極小値のそれぞれの時間依存性を示す図であり、図2 (a) ,(b) はa=2の場合の磁化の [100] 方向からの角度ψの時間依存性と規格化磁気エネルギーf=2F/MHB の磁化の [100] 方向からの角度ψ依存性の時間発展であり、図 2(c) ,(d)は規格化磁気エネルギーfの極小値 (=fmin ) の時間依存性である。hU1(0) =0.1,hU2(0) =0.5の場合、V (t) により自発磁化Mは回転するが、t=1で元の角度に戻る。hU1 (0) =0.1,hU2(0)=1の場合は自発磁化Mが時計回りに回転し、t=1で自発磁化Mは初期角度と180°反対を向く(反転) 。この場合、規格化磁気エネルギーの最小値fmin (t) がt=0.5に対して対称ではなく、また、不連続な自発磁化Mの回転が2度生じる。反転条件を調べるために、V(t) の入力前後の磁化の〔100〕方向からの角度ψの差ΔψをそれぞれのhU1(0) ,hU2(0) について計算した。
【実施例】
【0023】
図3は本発明に係る各ゲート電圧Vの印加によるhU1とhU2の変調の度合いを表す係数a値のときの磁化の回転角度のマップを示す図である。
図3 (a) はa=2のときのシミュレーション結果である。反転条件はアステロイド曲線で与えられることが分かる。
U12/3 (0)+hU22/3 (0)≧r ・・・(3)
ここで、rはアステロイド曲線の大きさに関係する定数であり、図3でアステロイド曲線が縦軸および横軸と交わる点はr3/2 になる。a=2の場合にはr=1である。また、反転が生じるときに、hU1 (0) とhU2 (0) の積が正(負) の場合、自発磁化Mは時計回り(反時計回り) に回転して反転する。a=1.5の場合〔図3(b)参照〕はrが大きくなる。
【実施例】
【0024】
図4は本発明に係るrのゲート電圧Vの印加によるhU1とhU2の変調の度合いを表す係数aに対するrの依存性を示す図である。
rはa→1で発散し、a≦1では反転が生じない(回転のみ) ことを示している。書き込み後、不揮発に情報を保持するため(入力電圧をオフしても磁化の向きが反転した状態のまま保持される)には反転を引き起こすことが応用上必要不可欠である。
【実施例】
【0025】
まとめると、ゲート電界Eの印加により二つの一軸磁気異方性の符号を変化させることができること(a>1)、hU1(0) 及びhU2(0) がアステロイド曲線の外側にあること〔上記式(3)参照〕が反転のための条件である。GaMnAsにおいては、比較的キュリー温度TC に近い温度では hU2 (0) が約1となる。また、TC より十分に低温ではあるものの、hU1 (0) が約0.01であることが報告されている。従って、aを2に近づけられれば、磁化反転が十分に期待できる。また、例えば、(In,Mn)Asなど、同様な磁気異方性をもつキャリア誘起強磁性体を記録層として用いれば、同様な効果を期待することができる。
【実施例】
【0026】
スピントランスファートルクを用いたMRAM(SPRAM) では、スピンカレントを発生するのに電流を必要とするため電力消費が生じる。本発明の電界誘起磁化反転RAMでは電流を必要としないため、消費電力は極めて小さいが、磁化反転のために消費されるわけではない外因的な電力消費、即ち電荷の充放電に伴う変位電流と絶縁膜への定常漏れ電流が発生する。一つのビットの面積及び印加電圧と時間が両手法を用いたビットで同じであるとして、磁化を反転させるのに必要な消費電力を比較すると、本発明のそれは非特許文献2で示されているSPRAMの百万分の1以下であることが見積もられる。本発明の素子の場合は変位電流によって素子のシート抵抗程度の大きさの直列抵抗で消費される電力と静電エネルギーによる電力が主な寄与である。
<実施の形態>
図5は本発明に係る素子構造の一例を示す図であり、図5(a)~(c)は素子の構造、図5(d)~(f)は磁性体層を上から見た図である。なお、磁性体層の矢印は磁化の向きを表している。
【実施例】
【0027】
図5に示すように、金属電極層13と絶縁体層12を持ち、基板10を有する磁性体層11(記録層)を準備する。これは金属電極層13-磁性体層11間に電源14から電圧を印加することにより、磁性体層11中のキャリア(電子若しくは正孔) 濃度を増減することを目的としている。従って、このような目的に沿う構造であれば構わない。例えば磁性体層11に磁性半導体を用いれば、絶縁体層12部分はショットキーバリアとしてもよい。また、磁性半導体を用いた場合、光を照射することによってもキャリアを励起する(増やすあるいは場合によっては減らす) ことができる。この場合、金属電極層13と絶縁体層12に相当する部分は不要である。
【実施例】
【0028】
磁性体層11としては、キャリア濃度を増減することで、その磁化容易軸方向(磁気異方性) が変化するものを用いる。また、磁性体層11部分は、磁性体と非磁性体や異種の磁性体の複合構造としてもよい。例えば、磁性体層11の部分を磁性体11/絶縁体/磁性体11という複合構造に置き換えても、一方もしくは両方の磁性体のキャリア濃度が増減できればよい。
【実施例】
【0029】
電界でキャリア濃度を増減できる、図5に示したような素子を例にとって説明を進める。金属電極層13/絶縁体層12/磁性体層11がそれぞれ層状になっているとし、磁性体層11の磁化容易軸が磁性体層は面内のある方向にあるとする〔図5 (a)参照〕。次に、電圧を金属電極層13-磁性体層11間に印加すると、キャリア濃度が増加(若しくは減少) するため磁化容易軸が変化し、磁化が回転する〔図5 (b)参照〕。磁性体層11が複雑な磁気異方性を持っている場合、キャリア濃度を増減させるだけで磁化を回転だけではなく反転させることができる。具体的には、二方向の異なる一軸の容易軸(U1,U2) と二軸の容易軸 (B) を同時に持つ場合である。一軸磁気異方性とは、180°周期で磁化の向きやすい方向(容易軸) と向きにくい方向(困難軸) が現れる異方性のことである。二軸の場合は90°周期となる。
【実施例】
【0030】
容易軸と困難軸が入れ替わるとき、便宜的に異方性磁場の符号を負ととる。それらの大きさを示す異方性磁場をそれぞれHU1,HU2,HB としたときに、HU1/HB ≡hU1とHU2/HB ≡hU2のそれぞれの比が電圧印加により制御でき、hU1とhU2の符号が反転して元に戻るような電圧印加シーケンスを与えると、磁化が反転する。具体例としては三角波やサイン波、鈍った矩形波状の電圧パルスが挙げられる。
【実施例】
【0031】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の不揮発性固体磁気メモリの記録方法及び不揮発性固体磁気メモリは、無磁場での磁化の回転や反転が可能となる不揮発性固体磁気メモリの記録方法及び不揮発性固体磁気メモリに利用可能である。
図面
【図1】
0
【図3】
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【図4】
2
【図5】
3
【図2】
4