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明細書 :チタン酸バリウム系蛍光物質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5577542号 (P5577542)
公開番号 特開2011-126985 (P2011-126985A)
登録日 平成26年7月18日(2014.7.18)
発行日 平成26年8月27日(2014.8.27)
公開日 平成23年6月30日(2011.6.30)
発明の名称または考案の名称 チタン酸バリウム系蛍光物質
国際特許分類 C09K  11/67        (2006.01)
C09K  11/08        (2006.01)
FI C09K 11/67 CPQ
C09K 11/08 A
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2009-286076 (P2009-286076)
出願日 平成21年12月17日(2009.12.17)
審査請求日 平成24年12月5日(2012.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】秋重 幸邦
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】井上 恵理
参考文献・文献 特開2008-230959(JP,A)
特開2001-220138(JP,A)
Key Eng Mater,2002年,Vol.216,Page.57-60
ナノ構造透明チタン酸バリウムセラミックスの合成と新機能電子・光学物性の創製 平成9-11年度 No.09305043,2000年,Page.1-21
調査した分野 C09K 11/00-11/89
C01G 1/00-23/08
C04B 35/42-35/51
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ゾルゲル法によるチタン酸バリウム系結晶を得る前躯体ゲルにより構成されたことを特徴とする、希土類によらない蛍光物質。
【請求項2】
前躯体ゲルを形成する乾燥温度を130℃以下としたことを特徴とする請求項1に記載の蛍光物質。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸バリウム系蛍光物質に関し、特に、励起光波長に応じて発光色が変化するブロードな発光スペクトルの得られる新規な蛍光物質に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チタン酸バリウムとして、例えば、BaTiOやBaTiなどが知られ、その結晶は強誘電体材料として広く用いられている。これらの結晶は、固相反応法やゾルゲル法などにより得ることができ、セラミックス化する際には例えば1300℃程度で焼成する。
【0003】
ここで、一般にチタン酸バリウム系結晶は蛍光物質としては知られておらず、セラミックス化したものも蛍光材料としては全く認知されていない。
【0004】
一方、特許文献1では、本発明と同様にチタン酸バリウムを用いた蛍光物質が開示されているが、これは、添加する希土類元素に基づくシャープな蛍光を得る技術である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2001-220138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来知られていない新規な蛍光物質を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の蛍光物質は、ゾルゲル法によるチタン酸バリウム系結晶を得る前躯体ゲルにより構成されたことを特徴とする、希土類によらない蛍光物質である。チタン酸バリウム系結晶とは、例えば、BaTiOやBaTiをいい、前駆体ゲルとは、当該結晶を得るためのゲルをいう。すなわち、焼成(セラミックス化)はもとより仮焼成(有機物等の加熱による除去)前のゲルをいい、通常は、乾燥して水分をほとんど失っているが、使用の態様により微量の水分が含まれていてもよいものとする。ゾルゲル法としては金属アルコキシドを用いる方法が挙げられる。

【0008】
請求項2に記載の蛍光物質は、請求項1に記載の蛍光物質において、前躯体ゲルを形成する乾燥温度を130℃以下としたことを特徴とする。乾燥温度は好ましくは70℃であり、さらに好ましくは30℃である。乾燥温度が高温となるほど蛍光強度が弱くなり、乾燥温度が200℃程度となると蛍光特性は観測されなくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規な蛍光物質が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】BaTi前駆体乾燥ゲルのXRDパターンを測定した図である。
【図2】前駆体乾燥ゲルに紫色レーザを照射したときの蛍光スペクトルを示した図である。
【図3】前駆体乾燥ゲルに緑色レーザを照射したときの蛍光スペクトルを示した図である。
【図4】乾燥温度を異ならせて得られた前駆体ゲルの蛍光特性の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、様々な組成形態を有するチタン酸バリウムを金属アルコキシドからゾルゲル法により得る過程で発見されたものである。すなわち、仮焼成する前の60℃で乾燥した前駆体ゲルを粉末化して励起光を照射したところ、驚くべきことに蛍光発光が観測されたことに基づきなされた発明である。以下、詳細に説明する。

【0012】
まず、Ba(OC(高純度化学研究所製:純度99.0%以上):Ti[OCH(CH(キシダ化学製:純度99.0%以上)=1:2(モル比)として、窒素ガス中で室温においてメタノール(関東化学社製:純度99%)と2-メトキシエタノール(キシダ化学製:純度99%以上)の混合溶媒に1時間溶解させ、濃度1.0mol/Lの前駆体溶液を作成した。

【0013】
これを0℃まで冷却し、攪拌しながら蒸留水を噴霧して加水分解をおこなった。
次に、60℃で3日間エージングし水分の飛んだ前駆体ゲルを作製した。これを遊星ボールミルで砕き粉末化した。この乾燥ゲル(BaTi前駆体乾燥ゲル)のXRDパターンを測定した。結果を図1に示す。なお、図1では、乾燥ゲルを650℃で仮焼成したものおよびさらに1000℃で焼成した粉末のXRDパターンも描画した。図から明らかなように、乾燥ゲルは結晶化していないことが確認できる。

【0014】
次に、得られた粉末を蛍光顕微鏡(オリンパス製、BX-FLA)で観測した。水銀ランプを用いバンドパスフィルタを介して、紫外光(波長330nm~385nm)で励起したところ、緑色の蛍光発光が観測され、緑色光(波長510nm~550nm)で励起したところ、赤色の蛍光発光が観測された。

【0015】
次に、別の組成でも同様の蛍光が得られるか調べるため、10%のKFを添加したBaTiOの前駆体ゲルを作成した。作製プロセスは上記BaTiの場合と同様であるが、出発原料を、Ba(OC:Ti[OCH(CH:KF (Merck, 99%)=0.90:1.00:0.10(モル比)とした。

【0016】
得られた粉末を蛍光顕微鏡で観測したところ、BaTiのときと同様に、紫外光で励起すると緑色の蛍光発光が観測され、緑色光で励起すると赤色の蛍光発光が観測された。

【0017】
詳細に検討するために、それぞれ得られた乾燥ゲルに405nmの紫色のレーザを照射し、450nm以上の波長を通過させるハイパスフィルタを使用し、室温にて蛍光波長スペクトルを測定した。結果を図2に示す。図2から明らかなように、蛍光波長は450nm~750nmにわたるピーク530nmの緑色の連続スペクトルであった。

【0018】
また、それぞれ得られた乾燥ゲルに532nmの緑色のレーザを照射し、当該波長をカットするノッチフィルタを介して室温にて蛍光波長スペクトルを測定した。結果を図3に示す。図3から明らかなように、蛍光波長は500nm~750nmにわたるピーク630nmの赤色の連続スペクトルであった。

【0019】
これらの蛍光現象は、従来知られておらず、通常は、ゾルゲル法による場合には1000℃程度に焼成して結晶成長させる。よって、前駆体ゲルから得られる蛍光の乾燥温度依存性について検討した。実験は、まず、BaTの前駆体ゲルを30℃、70℃、130℃、195℃で水分がなくなるまで十分乾燥させた。次に、これらの乾燥ゲルに405nmの紫色のレーザを照射し、450nm以上の波長を通過させるハイパスフィルタを使用し、室温にて蛍光波長スペクトルをそれぞれ測定した。結果を図4に示す。図4から明らかなように、ピーク波長は530nm程度であるが、乾燥温度が高いほどピークが低くなり、195℃では、蛍光発光は観測されなくなった。以上の結果から、前駆体ゲルの乾燥温度が高いと蛍光が見られず、130℃以下が好ましいことを確認した。

【0020】
通常であれば、蛍光発光させるには結晶性が良いことが求められることが技術常識であるため、当業者は、焼成後の結晶の蛍光発光を測定する。Ti-Ba系酸化物は、蛍光素材として知られていないので、逆に前駆体ゲルの蛍光特性を測定しようとは思わず、本発明は驚くべき結果を示しているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、60℃程度の低温合成が可能であり、希土類や遷移元素によるものと異なり非常にブロードな蛍光発光が得られる。従って、励起波長を異ならせることにより、蛍光色を異ならせることが可能となる。これを利用して、例えば、生体染色をおこなうとき、背景色に応じて発光の色を決定でき、異なった物質で二度染色する必要がなく、利便性が高い。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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