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明細書 :Si系クラスレートの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5641481号 (P5641481)
公開番号 特開2013-018679 (P2013-018679A)
登録日 平成26年11月7日(2014.11.7)
発行日 平成26年12月17日(2014.12.17)
公開日 平成25年1月31日(2013.1.31)
発明の名称または考案の名称 Si系クラスレートの製造方法
国際特許分類 C01B  33/02        (2006.01)
FI C01B 33/02 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2011-153635 (P2011-153635)
出願日 平成23年7月12日(2011.7.12)
審査請求日 平成26年3月26日(2014.3.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】野々村 修一
【氏名】久米 徹二
【氏名】伴 隆幸
【氏名】大橋 史隆
個別代理人の代理人 【識別番号】110000659、【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開平11-343110(JP,A)
特開平09-183607(JP,A)
特開2000-327319(JP,A)
特開2001-048517(JP,A)
調査した分野 C01B 33/00-33/193
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
Naを内包するII型のSi系クラスレートの製造方法であって、
Si粉末とGe粉末とNaとを混合して650℃以上の温度で加熱して、SiとGeとNaとからなる化合物を生成する陽圧加熱処理工程と、
前記陽圧加熱処理工程によって生成されたSiとGeとNaとからなる前記化合物を、10-2Pa以下の陰圧下で300℃以上450℃以下の温度により2時間以上72時間以下加熱する陰圧加熱処理工程と、
を備えており、
供給される前記Si粉末と前記Ge粉末の合計のモル数に対する前記Ge粉末のモル数の割合が1モル%以上20モル%以下であることを特徴とするII型のSi系クラスレートの製造方法。
【請求項2】
前記Naは、前記Si及び前記Geの合計モル数に対するモル比が、1.0よりも大きくなるように供給されることを特徴とする請求項1に記載のII型のSi系クラスレートの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムを内包し、II型の構造を有しているシリコン系クラスレート(以下、Si系クラスレートとも記載する)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラスレート(包接化合物)は、ホスト原子によって形成される三次元的な籠状の構造の中にゲスト原子が存在する化合物であり、従来の結晶構造物とは異なる特性を備えている。例えば、ホスト原子が主にシリコンで構成されているSi系クラスレートは、通常のダイヤモンド構造のSiと比較するとバンドギャップ(価電子帯と伝導帯の間の禁制帯幅)が広く半導体的性質を有することが知られている。
【0003】
引用文献1には、ゲスト原子の種類と割合とを種々変更したSiクラスレートとGeクラスレートを製造する技術が開示されている。引用文献1に開示されるSiクラスレートとGeクラスレートの製造方法は、アルカリ金属とSi又はGeとを500℃~650℃で反応させた化合物と、アルカリ土類金属とSi又はGeとを900℃~1200℃で反応させた化合物とを混合し、更に600℃で加熱処理し、最後に20Torr~200Torrの減圧下で300℃~600℃の加熱処理を行うことにより、様々なゲスト原子を内包したクラスレートを合成している。
【0004】
Si系クラスレートは、その三次元的な構造の違いによって、I型(構造1、Type Iとも言う)からVIII型(構造8、TypeVIIIとも言う)に分類される。従来の製造方法によって、ナトリウム(以下、Naとも記載する)をゲスト原子とし、Siをホスト原子としたSi系クラスレートを製造した場合には、主にI型とII型(構造2、TypeIIとも言う)の混合物からなるクラスレートが生成される。
【0005】
I型のSiクラスレートは、十二面体構造であるSi20と、十四面体構造であるSi24とで構成される立方晶構造を有している。II型のSiクラスレートは、十二面体構造であるSi20と、十六面体構造であるSi28とで構成される立方晶構造を有している。引用文献1に開示される製造方法からは、Si20とSi24を基本構造とするI型のクラスレートが製造されることが開示されている。
【0006】
近年、Naを内包するSi系クラスレートとして製造され、その後Naの一部が除去されることで、Naの含有量が低減されたSi系クラスレートが注目されている。ナトリウムを多く含むSiクラスレートは金属的性質を持つが、ナトリウムの含有量が低減されたSiクラスレートは半導体としてのバンドギャップ特性を有している。この半導体としての特性はダイヤモンド構造のSiとは大きく異なるものである。Naの含有量が低減されたSi系クラスレートと同じIV族半導体で性質の異なる半導体が近年注目されていることから、Naの含有量が低減されたSi系クラスレートもまた多くの分野での応用が期待される。特にSiは、IV族半導体の中でも環境に負荷が少ない材料であり、そのデバイス応用技術も進んでいることから注目されている。しかしI型のSi系クラスレートは、Na原子を一旦内包すると、その後の工程でNa原子がほとんど除去されないという特性があった。これに対してII型のSi系クラスレートは、加熱処理等を行うことによって、Naを除去できることが知られている。このため、Naを内包するII型のSi系クラスレートを安定して製造する技術が求められている。
【0007】
尚、本明細書においては、Siをホスト原子としたクラスレートをSiクラスレートと称し、Geをホスト原子としたクラスレートをGeクラスレートと称し、ホスト原子としてモル比で50%よりも多くのSiを使用したクラスレートをSi系クラスレートと称している。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開平09-183607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来知られている技術によってNaを内包したSi系クラスレートを製造した場合には、Naを除去できないI型のSi系クラスレート、Naの含有量を低減可能なII型のSi系クラスレートおよびダイヤモンド構造のSiとからなる混晶または混合物が得られていた。このため、半導体として利用することを目的として、Naの含有量を低減可能なII型のSi系クラスレートを、安定して単体で製造する技術が求められていた。しかし従来の製造方法からはII型のSi系クラスレートを単体で得ることは困難であった。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、Naを内包したII型のSi系クラスレートを、単体で安定して製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、Naを内包したII型のSi系クラスレートの製造方法に関する。本発明のII型のSi系クラスレートの製造方法は、Si粉末とGe粉末とNaとを混合して650℃以上の温度で加熱して、SiとGeとNaとからなる化合物を生成する陽圧加熱処理工程と、陽圧加熱処理工程によって生成されたSiとGeとNaとからなる前記化合物を、10-2Pa以下の陰圧下で300℃以上450℃以下の温度により2時間以上72時間以下の時間で加熱する陰圧加熱処理工程とを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明のSi系クラスレートの製造方法の陽圧加熱処理工程によって、SiとGeとNaとからなる化合物が生成される。次に、陽圧加熱処理工程によって生成されたSiとGeとNaからなる化合物に対して、陰圧加熱処理工程による処理を行うことにより、SiとGeとNaからなる化合物が、SiとGeによる三次元的な籠状の結晶構造がNaを内包するII型のSi系クラスレートに変化する。
【0013】
本発明において、Naは、Si及びGeの合計モル数に対するモル比が、1.0よりも大きくなるように供給されることが好ましい。本発明のII型のSi系クラスレートの製造方法は、Si粉末及びGe粉末の表面や耐熱容器の表面などに付着する不純物によって酸化されるNa量が、Si及びGeと反応するNa量と比較して充分に多いことにより、より安定的にSi系クラスレートを製造することが可能となる。
【0014】
本発明においては、供給されるSi粉末とGe粉末の合計のモル数に対するGe粉末のモル数の割合が1モル%以上20モル%以下であることが好ましい。Ge粉末のモル数の割合が1モル%未満となる割合でGeを供給した場合には、I型とII型のSi系クラスレートの混晶が製造され、そこからII型のSi系クラスレートを分離することは困難である。また20モル%を越える割合でGeを供給した場合には、Si系クラスレートの製造される割合が減少し、ダイヤモンド構造のSiが多く残存することになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のSi系クラスレートの製造方法によって、Naを内包したII型のSi系クラスレートを、単体で安定して製造することが可能となる。好ましくは、Si粉末とGe粉末の合計のモル数に対するGe粉末のモル数の割合が1モル%以上20モル%以下となるように供給することにより、I型のSi系クラスレートが混在しない状態でII型のSi系クラスレートを得ることができる。
【0016】
本発明の製造方法によって製造されたSi系クラスレートは、II型の構造を備えているためにNaの低減又は除去が容易であり、結果として、Naの含有量が低減されたかあるいはNaが除去されたSi系クラスレートを、大量に製造することが可能となる。
【0017】
本発明のSi系クラスレートの製造方法においては、Si及びGeの合計モル数に対するNaのモル比が1.0よりも大きくなるようにNaを供給することにより、より安定的にII型のSi系クラスレートを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明のII型のSi系クラスレートの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は、実施例1に示す製造方法によって製造されたSi系クラスレートのX線回折パターンを示す図である。
【図3】図3は、実施例2に示す製造方法によって製造されたSi系クラスレートのX線回折パターンを示す図である。
【図4】図4は、参考例に示すII型のSiクラスレートを製造してNaを除去する方法のフローチャートである。
【図5】図5は、参考例の低温加熱処理工程の真空熱処理時間を2時間から48時間の間で変化させた場合の、処理時間に対する製造されるI型のSiクラスレートとII型のSiクラスレートとダイヤモンド構造のSi結晶の体積比率の変化を示すグラフである。
【図6】図6は、参考例の低温加熱処理工程の真空熱処理時間を2時間から48時間の間で変化させた場合の、II型のSiクラスレートに内包されるNa量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した好適な実施形態について、図1を参照しつつ説明する。図1は、Naを内包したII型のSi系クラスレートを製造する好適な方法を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態のII型のSi系クラスレートの製造方法は、前処理工程と、陽圧加熱処理工程と、陰圧加熱処理工程と、分離工程とを備えている。

【0020】
図1のステップ1(S1)に示す前処理工程では、Si粉末とGe粉末の混合物に、Naを不活性ガス雰囲気下で添加して、耐熱容器に収容する。このときの、Si粉末とGe粉末の合計モル数に対するGe粉末のモル数の割合は、1モル%以上20モル%以下となるように調整されている。またNaの添加量は、SiとGeの合計モル数に対するモル比が1.0よりも大きくなるように調整されている。

【0021】
図1のステップ2(S2)に示す陽圧加熱処理工程では、耐熱容器に収容されたSi粉末とGe粉末とNaとを、650℃以上の温度で0.5時間以上48時間以下の間加熱する。本実施形態の陽圧加熱処理工程によって、SiとGeとNaとからなる化合物が生成される。Si粉末及びGe粉末の総モル数に対するNaのモル比が1.0よりも多くなるように調整されていることで、基板表面や、耐熱容器の表面などに付着する不純物により酸化されるNaの量が、Si粉末及びGe粉末と反応するNaの量と比較して充分に多くなり、より安定的してクラスレートを製造することが可能となる。

【0022】
図1のステップ3(S3)に示す陰圧加熱処理工程では、陽圧加熱処理工程によって生成されたSiとGeとNaとからなる化合物を不活性ガス雰囲気中で取り出して真空容器に収容し、10-2Pa以下の陰圧下で300℃以上450℃以下の温度に加熱する。加熱時間は2時間以上72時間以内に設定される。陰圧加熱処理工程の間に、SiとGeとNaとからなる化合物が、SiとGeによる三次元的な籠状の構造の中にNaが内包されるSi系クラスレートに変化する。また陰圧加熱処理工程の間は、常に真空ポンプによる吸引が行われるために、ゲスト原子としてSi系クラスレートに内包されていたNa原子の一部または全部が除去される。その結果、Naの含有量が低減されたかあるいはNaが除去されているSi系クラスレートが製造される。

【0023】
図1のステップ4(S4)に示す分離工程は、ステップ1から3の工程によってII型のSi系クラスレートのみが生成された場合には省略できるステップである。陰圧加熱処理工程によって、Si系クラスレートとダイヤモンド構造のSi結晶の混合物が生成された場合には、Si系クラスレートとダイヤモンド構造のSi結晶とを遠心分離により分離する。ステップ1からステップ4までの工程を行うことによって、Naの含有量が低減されたかあるいはNaが除去された、Si系クラスレートの単体を得ることができる。

【0024】
本実施形態に於いて、陰圧加熱処理工程を10-2Pa以下の陰圧下で300℃以上450℃以下の温度により2時間以上72時間以内の間行うことによって、II型のSi系クラスレートを製造することができる。陰圧加熱処理工程が250℃前後で行われた場合は、72時間を超える長時間の処理を行った場合であってもクラスレートは生成されない。また、予備実験の結果、450℃以上の温度により陰圧加熱処理工程を行うと、クラスレートの代わりに、ダイヤモンド構造のSi結晶が生成されることが、明らかとなっている。

【0025】
本実施形態のSi系クラスレートの製造方法は、Si粉末に対するGe粉末の添加量が最適化されており、さらにNaの添加量が最適化されていることによって、実施例に示すように、II型の構造を有するSi系クラスレートを単体で安定して製造することが可能となっている。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明をより具現化した実施例1について図面を参照しつつ説明する。本実施例では、前処理工程(ステップ1)において、Si粉末とGe粉末の合計のモル数に対するGe粉末のモル数の割合が約3モル%となるように、Si粉末とGe粉末とを混合してるつぼに収容した。言い換えれば、Si粉末とGe粉末とを、それぞれのモル数の比が96.6:3.4となるように混合してるつぼに収容した。そして、Ar雰囲気中でSiとGeの合計モル数に対するモル比が1.0よりも大きくなるように、Naを添加した。次に、Si粉末とGe粉末とNaとを収容したるつぼを金属容器で密閉し、650℃で48時間保持する陽圧加熱処理工程(ステップ2)を行って、Si粉末とGe粉末とNaとの反応を進めた。陽圧加熱処理工程が終了した後、生成されたSiとGeとNaとからなる化合物を不活性ガス雰囲気中で取り出した。更に、このSiとGeとNaとからなる化合物を、10-2Pa以下に陰圧した状態で、300℃で72時間保持する陰圧加熱処理工程(ステップ3)を行った。
【実施例1】
【0027】
図2に、上記の製造方法によって得られた粉末状のSi系クラスレートのX線回折パターンを示す。図2の下部に示された棒グラフは、I型のSi系クラスレートと、II型のSi系クラスレートと、ダイヤモンド構造のSi結晶(c-Si)の理論的なX線回折パターンである。図2に示すように、II型のSi系クラスレートに起因するピークが大きく確認された一方、I型のSi系クラスレートに由来するX線回折パターンは全く認識されなかった。またダイヤモンド構造のSi結晶に由来するX線回折パターンが少量確認された。以上のことから、本実施例の製造方法で製造されたSi系クラスレートは、II型の単体であることが明らかとなった。
【実施例1】
【0028】
以下の表1に、本実施例で製造されたSi系クラスレートのX線回折パターンをリートベルト解析した結果得られた、各結晶構造の重量比率を示す。Si系クラスレートは、II型が92.0重量%以上含まれており、I型は全く含まれないことが確認された。またダイヤモンド構造のSi結晶が8.0重量%確認されたが、このダイヤモンド構造のSi結晶はSi系クラスレートと比重が大きく異なるために、図1のステップ4に示した分離工程の遠心分離によって、Si系クラスレートと容易に分離することができた。得られたSi系クラスレートのSiとGeのモル比をX線光電子分光法によって求めたところ、Geが3.4モル%含まれることが確認された。このことから、Geは、クラスレートが形成される過程で結晶構造を決める役割を果たしていることが推定されている。
【実施例1】
【0029】
【表1】
JP0005641481B2_000002t.gif

【実施例2】
【0030】
本実施例のSi系クラスレートの製造方法では、Si粉末とGe粉末の合計のモル数に対するGe粉末のモル数の割合が1モル%となるように、Si粉末とGe粉末とを混合して使用している。言い換えれば、Si粉末とGe粉末とを、それぞれのモル数との比が99:1となるように使用している。Naの添加量とその他の工程条件については実施例1と同一であるため、重複説明を割愛する。図3に、本実施例の製造方法の前処理工程(ステップ1)から陰圧加熱処理工程(ステップ3)を行うことによって得られたSi系クラスレート粉末の、X線回折パターンを示す。また表2に、本実施例のSi系クラスレートのX線回折パターンについてリートベルト解析を行った結果を示す。
【実施例2】
【0031】
本実施例のSi系クラスレートをリートベルト解析した結果、I型のSi系クラスレートは検出されなかった。またII型のSi系クラスレートが91.7重量%含まれており、且つダイヤモンド構造のSi結晶が8.3重量%含まれることが確認された。一方で、図3に示すように、X線回折パターンからはI型のSi系クラスレートの小さなピークが検出された。図3において、右上の拡大図の中のI型(123)と付記された矢印によって示したピークが、I型のSi系クラスレートの存在を示すピークである。
【実施例2】
【0032】
【表2】
JP0005641481B2_000003t.gif

【実施例2】
【0033】
以上の結果から、本実施例の製造方法によって製造されたSi系クラスレートは、I型のクラスレートが僅かに含まれていることが確認された。このI型のSi系クラスレートに内包されているNaの全てを除去することは困難であったが、I型Si系クラスレートの重量比率がII型Si系クラスレートの重量比率と比較して微量であったことから、本実施例の製造方法によって製造されたSi系クラスレートは、半導体として利用することが可能であった。
【実施例3】
【0034】
本実施例のSi系クラスレートの製造方法は、Si粉末とGe粉末の合計のモル数に対するGe粉末のモル数の割合が20モル%となるように、Si粉末とGe粉末とを混合して使用している。言い換えれば、Si粉末とGe粉末とを、それぞれのモル数との比が80:20となるように使用している。Naの添加量とその他の工程条件については実施例1と同一であるため、重複説明を割愛する。表3に、本実施例の製造方法の前処理工程(ステップ1)から陰圧加熱処理工程(ステップ3)を行うことによって得られたSi系クラスレート粉末のX線回折パターンをリートベルト解析した結果を示す。
【実施例3】
【0035】
表3に示すように、リートベルト解析の結果、本実施例の製造方法によって生成された粉末の中に、II型のSi系クラスレートが45.6重量%以上含まれており、I型のSi系クラスレートは全く含まれないことが確認された。またダイヤモンド構造のSi結晶が54.4重量%確認されたが、このダイヤモンド構造のSi結晶はII型Si系クラスレートと比重が大きく異なるために、Si系クラスレートを分離することができた。
【実施例3】
【0036】
【表3】
JP0005641481B2_000004t.gif

【実施例3】
【0037】
(比較例1)比較例1においては、Ge粉末を使用することなくSi粉末とNaとのみを原料として、実施例1の製造方法に従ってSiクラスレートを製造した。表4に、本実施例の製造方法によって得られた粉末のリートベルト解析結果を示す。
【実施例3】
【0038】
【表4】
JP0005641481B2_000005t.gif

【実施例3】
【0039】
比較例の製造方法によって製造されたSi系クラスレートは、I型が7.0重量%含まれており、I型のSi系クラスレートの中に残存するNaは除去することができなかった。このため、生成されたI型Si系クラスレートは金属的性質を持っておりその重量比率が大きいことから、半導体として使用するには困難であることが判明した。
【実施例3】
【0040】
(比較例2)Ge粉末のモル数の割合が、Si粉末とGe粉末の総モル数に対して1モル%未満となるように調整し、実施例1と同一の方法に従ってSi系クラスレートを製造した。その結果、添加するGeのモル比が減少するに従って、実施例3よりも更にI型のクラスレートの割合が増大し、また製造されたクラスレートに残存するNaの除去が困難となった。このため、比較例1と同様に、生成されたI型Si系クラスレートは金属的性質を持っており、その重量比率が大きいことから、半導体として使用するには困難であることが判明した。
【実施例3】
【0041】
(比較例3)Ge粉末のモル数の割合が、Si粉末とGe粉末の総モル数に対して20モル%を越えるように調整し、実施例1と同一の方法に従ってSi系クラスレートを製造した。Geのモル比が増加するに従って、II型のSi系クラスレートに対するダイヤモンド構造のSi結晶の割合が増大し、II型のSi系クラスレートを分離するステップ4の分離工程の作業効率が著しく悪くなった。以上のことから、II型のSi系クラスレートを効率よく製造するためには、Si粉末とGe粉末の総モル数に対するGe粉末のモル数の割合は20モル%以下であることが好ましいことが判明した。
【実施例3】
【0042】
(参考例)Naを内包するSiクラスレートを製造した後に、内包されているNaを除去する方法の参考例を図4に示す。図4のステップ11に示す前処理工程では、ダイヤモンド構造を有するSi粉末にNaを、モル比が1:1となるように不活性ガス雰囲気下で混合し、耐熱容器に収容する。ステップ12に示す第一加熱処理工程で、耐熱容器に収容されたSi粉末とNaの混合物を、650℃以上の温度で48時間程度加熱する熱処理を行う。本実施形態の第一加熱処理工程によって、SiとNaの化合物(NaSi)が生成される。ステップ13に示す低温加熱処理工程では、第一加熱処理工程によって生成されたSiとNaとからなる化合物を、真空中で250℃に加熱する。加熱時間は10時間以上50時間以内に設定される。ステップ14に示す第二加熱処理工程では、さらに化合物を、10-2Pa以下の陰圧下で300℃以上450℃以下に加熱する。例えば、10-2Pa以下の陰圧下で450℃の加熱を行う場合には、3時間加熱処理を行う。以上の製造方法によって、図5及び図6に示されるように、II型の Siクラスレートの結晶割合を90%に保ったまま、Naの内包量を減少させることが可能となる。
【実施例3】
【0043】
図5は、ステップ13の低温加熱処理工程の処理時間を2時間から48時間の間で変化させた場合に製造される、I型のSiクラスレートとII型のSiクラスレートとダイヤモンド構造のSi結晶との体積比率の変化を示すグラフである。これらの体積比率は、参考例の製造方法によって得られた粉末のX線回折パターンを、リートベルト解析することにより算出された。低温加熱工程の処理時間を2時間から48時間の間で変化させた場合であっても、II型のSiクラスレートの体積比率は80~90%で安定している。また図6に示されるように、低温真空熱処理時間を10時間以上行った場合には、II型のSiクラスレートに含まれるNa量が有意に減少している。つまり、参考例の方法を用いることにより、II型のSiクラスレートの結晶割合を減少させることなくNa量を変化させることが可能である。
【実施例3】
【0044】
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば実施例では、SiとGeのモル比を99:1から80:20までの3段階に変更した製造方法について説明したが、Si粉末とGe粉末の合計のモル数に対するGe粉末のモル数の割合が1モル%以上20モル%以下であれば、好ましいSi系クラスレートを製造することができる。また実施例では、陰圧加熱処理工程で300℃72時間の加熱を行う場合について説明したが、陰圧加熱処理工程を10-2Pa以下の陰圧下で300℃以上450℃以下の温度により2時間以上72時間以下の時間で行うことにより、好ましいSi系クラスレートを製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の製造方法によって製造される、Naを内包しているII型のSi系クラスレートは、Naを除去することによって半導体として利用可能となる。半導体特性を有するクラスレートは、種々の波長で発光する特性、或いは種々の波長の光を吸収する特性を示すものがあるため、発光素子或いは光吸収素子としての利用が期待されている。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5