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明細書 :分岐ポリアルキレングリコール誘導体、感光性組成物、架橋体及び基板

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5388126号 (P5388126)
登録日 平成25年10月18日(2013.10.18)
発行日 平成26年1月15日(2014.1.15)
発明の名称または考案の名称 分岐ポリアルキレングリコール誘導体、感光性組成物、架橋体及び基板
国際特許分類 C08G  65/329       (2006.01)
C08F 299/02        (2006.01)
C12M   3/00        (2006.01)
G03F   7/008       (2006.01)
G03F   7/027       (2006.01)
FI C08G 65/329
C08F 299/02
C12M 3/00 A
G03F 7/008
G03F 7/027
請求項の数または発明の数 9
全頁数 33
出願番号 特願2009-544727 (P2009-544727)
出願日 平成20年12月5日(2008.12.5)
国際出願番号 PCT/JP2008/072123
国際公開番号 WO2009/072590
国際公開日 平成21年6月11日(2009.6.11)
優先権出願番号 2007316316
優先日 平成19年12月6日(2007.12.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年11月30日(2011.11.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】大塚 英典
【氏名】里見 智美
【氏名】上野 耕治
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】佐藤 玲奈
参考文献・文献 国際公開第03/010302(WO,A1)
特開2004-54085(JP,A)
特開2003-249266(JP,A)
Sato Y; Satomi T; Ueno K; Tateishi T; Otsuka H,Synthesis and evaluation of PEG hydrogel incorporating two dimensionally dispersed cell spheroid,Transactions of the Materials Research Society of Japan,日本,2007年10月24日,32(3),p.773-776
Katritzky A R; Meher N K; Hanci S; Gyanda R; Tala S R; Mathai S; Duran R S; Bernard S; Sabri F; Singh S K; Doskocz J; Ciaramitaro D A,Preparation and characterization of 1,2,3-triazole-cured polymers from endcapped azides and alkynes,Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry,2007年11月21日,46(1),p.238-256
Fernandez-Megia E; Correa J; Riguera R,"Clickable" PEG-Dendritic Block Copolymers,Biomacromolecules,2006年,7(11),p.3104-3111
大塚英典、里見智美、山本雅、中曽根祐一,高分子表面のパターニング技術とスフェロイドアロイ,機能材料,2007年10月 5日,vol.27, no.11,p.61-69
調査した分野 C08G 65/329
C08F 299/02
C12M 3/00
G03F 7/008
G03F 7/027
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
末端に下記一般式(5)で表される重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基の3以上と、前記ポリアルキレングリコール基と結合する3価以上の連結基と、を有する分岐ポリアルキレングリコール誘導体。
【化1】
JP0005388126B2_000018t.gif


[式中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Rは置換基を表し、iは0、1又は2を表す]
【請求項2】
前記ポリアルキレングリコール基の4以上を有する請求項1に記載の分岐ポリアルキレングリコール誘導体。
【請求項3】
前記ポリアルキレングリコール基は、下記一般式(1)で表される請求項1又は請求項2に記載の分岐ポリアルキレングリコール誘導体。
【化2】
JP0005388126B2_000019t.gif

[式中、Xは前記一般式(5)で表される重合性置換基を表し、mは2~4の整数を、nは5~1000の整数をそれぞれ表す]
【請求項4】
下記一般式(2)で表される請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の分岐ポリアルキレングリコール誘導体。
【化3】
JP0005388126B2_000020t.gif

[式中、Lは単結合又はメチレン基を表し、pは1又は2を表し、qは1~70の整数を表す。Rは末端に前記一般式(5)で表される重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基又は末端に水酸基を有するポリアルキレングリコール基を表す]
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の分岐ポリアルキレングリコール誘導体を含有する感光性組成物。
【請求項6】
請求項に記載の感光性組成物を硬化させて形成された架橋体。
【請求項7】
基材と、前記基材上に配置された請求項に記載の架橋体とを含む基板。
【請求項8】
前記基材は、アミノ基を有するシランカップリング剤、エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤、及びポリリジンから選ばれる少なくとも1種で表面処理された基材である請求項に記載の基板。
【請求項9】
前記基材は、細胞接着性タンパク質で表面処理された基材である請求項または請求項に記載の基板。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
Technical Field
本発明は、分岐ポリアルキレングリコール誘導体、感光性組成物、架橋体及び基板に関する。
【背景技術】
【0002】
Background Art
近年の細胞工学の発展および再生医療への注目と相まって、生体外にて細胞を適切な形で培養し、治療への応用および生体反応のシュミレーターとして使用する試みが現在活発に行われている。このような目的において、培養される細胞は各種臓器機能の担い手である実質細胞が中心であるが、一般に生体外にて実質細胞の機能を維持した状態で長期の培養を行うことは困難であり、この点を解決するための様々な試みがなされている。
【0003】
例えば、多数の細胞の三次元的凝集状態を作って培養を行うスフェロイド(細胞凝集塊)培養系は、細胞極性および細胞間相互作用の維持という観点から、生体外における優れた実質細胞培養系として、様々な報告がなされており、膵細胞、骨芽細胞、肝細胞、など多種の細胞に適用された例が存在する。いずれも単層培養系とは異なった生物学的応答を示し、分化マーカーが高レベルで維持されている例も報告されている。
【0004】
スフェロイド形成の手法としては、細胞接着性U字底を有する96穴プレートに細胞数を定めて細胞を播種することによってサイズをコントロールしたスフェロイドを形成する手法(例えば、非特許文献1参照)や、温度感応性高分子と細胞接着性物質からなる培養基材を用いる手法(例えば、特許文献1参照)などが報告されている。また、プラズマエッチングによるフォトリソグラフィーを用いて、細胞非接着性表面上、数十~数百マイクロのサイズを有する細胞接着性マイクロドメインを有する培養基材を作製し、その基板上にスフェロイドを形成する手法(例えば、特許文献2参照)が知られており、高い効率でスフェロイドを形成可能とされている。
一方、光架橋により親水性で生体適合性の高い表面コーティングを形成可能な感光性樹脂が知られている(例えば、特許文献3及び4参照)。

【特許文献1】特開平7-31464号公報
【特許文献2】特開2006-67987号公報
【特許文献3】特開2006-307184号公報
【特許文献4】特開2007-269973号公報
【非特許文献1】Yamauchi et al.J.Reprod.Dev.47(2001)165-171
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Disclosure of Invention
しかしながら、特許文献1や非特許文献1に記載の方法ではスフェロイド形成の培養面積当たりの効率が極めて低いという問題点があった。また特許文献2に記載の方法では、基板を作製する工程が複雑であり、細胞非接着性表面の環境安定性が不十分であるという問題点があった。更に特許文献3又は4に記載の感光性樹脂では、細胞非接着性表面の経時安定性が不十分であるという問題点があった。
本発明は、高精度にパターニング可能で、細胞の非接着状態を経時安定的に維持可能な親水性領域を有する基板、該親水性領域を形成する架橋体、並びに該架橋体を形成可能な感光性組成物及びそれに含まれる分岐ポリアルキレングリコール誘導体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基の3以上と、前記ポリアルキレングリコール基と結合する3価以上の連結基と、を有する分岐ポリアルキレングリコール誘導体である。前記ポリアルキレングリコール基は4以上であることが好ましく、前記ポリアルキレングリコール基は、下記一般式(1)で表されることがより好ましい。
【0007】
【化1】
JP0005388126B2_000002t.gif

【0008】
[式中、Xは重合性置換基を表し、mは2~4の整数を、nは5~1000の整数をそれぞれ表す]
【0009】
また、本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体は下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【0010】
【化2】
JP0005388126B2_000003t.gif

【0011】
[式中、Lは単結合又はメチレン基を表し、pは1又は2を表し、qは1~70の整数を表す。Rは末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基又は末端に水酸基を有するポリアルキレングリコール基を表す]
【0012】
前記重合性置換基は、下記一般式(3)及び一般式(4)の少なくとも1種で表される置換基であることが好ましく、前記重合性置換基の少なくとも1つは、下記一般式(5)で表されることがより好ましい。
【0013】
【化3】
JP0005388126B2_000004t.gif

【0014】
[式中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Lは2価の連結基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す]
【0015】
【化4】
JP0005388126B2_000005t.gif

【0016】
[式中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Rは置換基を表し、iは1又は2を表す]
【0017】
また本発明の第2の態様は、前記分岐ポリアルキレングリコール誘導体を含有する感光性組成物である。
また本発明の第3の態様は、前記感光性組成物を硬化させて形成された架橋体である。
【0018】
更に本発明の第4の態様は、基材と、前記基材上に配置された前記架橋体とを含む基板である。前記基材は、アミノ基を有するシランカップリング剤、エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤、及びポリリジンから選ばれる少なくとも1種で表面処理された基材であることが好ましく、前記基材は、細胞接着性タンパク質で表面処理された基材であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高精度にパターニング可能で、細胞の非接着状態を経時安定的に維持可能な親水性領域を有する基板、該親水性領域を形成する架橋体、並びに該架橋体を形成可能な感光性組成物及びそれに含まれる分岐ポリアルキレングリコール誘導体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
Brief Description of Drawings
【図1】重合性置換基の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】実施例10で作製した基板表面の拡大写真である。
【図3】基板上に形成されたスフェロイドの拡大写真である。
【図4】基板上に形成された内皮細胞集合体の拡大写真である。
【図5】基板上の内皮細胞集合体上に形成されたスフェロイドの拡大写真である。
【図6】培養1日後のスフェロイドの拡大写真である。
【図7】培養3日後のスフェロイドの拡大写真である。
【図8】培養4週間後のスフェロイドの拡大写真である。
【図9】培養1日後のスフェロイドの拡大写真である。
【図10】培養3日後のスフェロイドの拡大写真である。
【図11】培養4週間後のスフェロイドの拡大写真である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
Best Mode of Carrying Out the Invention
本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体は、末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基の3以上と、前記ポリアルキレングリコール基と結合する3価以上の連結基とを有することを特徴とする。
かかる構成の分岐ポリアルキレングリコール誘導体は、親水性の架橋体を形成することができる。かかる親水性の架橋体は、細胞非接着性の経時安定性が良好であり、例えば、本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体を用いて基材上に親水性領域と疎水性領域とが高精度に形成された基板は、該基板上で細胞を培養した場合に、疎水性領域にのみ特異的に細胞が接着するため、高精度に区画化された細胞集合体を形成することができる。また、前記親水性領域は細胞非接着性の経時安定性が良好であり、長期に渡って区画化された細胞集合体を維持することができる。更に前記細胞集合体は、例えば、単層の細胞集合体とすることもできるし、細胞が3次元的凝集状態を形成した細胞凝集塊(スフェロイド)とすることもできる。
【0022】
本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体において、末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基の含有数は3以上である。前記ポリアルキレングリコール基の含有数が2以下では、これによって形成された親水性領域の細胞非接着性の経時安定性が不十分であり、区画化された細胞集合体を長期間維持することができない。
また前記ポリアルキレングリコール基の含有数は、経時安定性と良好なスフェロイド形成性の点から、4以上であることが好ましく、4以上64以下であることがより好ましく、4以上16以下であることが更に好ましい。
【0023】
本発明における前記ポリアルキレングリコール基は、末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基であれば特に制限はない。
また前記重合性置換基としては重合性の官能基を有する置換基であってポリアルキレングリコールの末端に結合可能なものであれば特に制限はない。重合性置換基のポリアルキレングリコールの末端への結合態様としては、ポリアルキレングリコールに由来する酸素原子を介した結合態様であっても、ポリアルキレングリコールの末端水酸基が他の元素に置換された結合態様であってもよい。
【0024】
前記重合性置換基は、重合性の官能基そのものであっても、重合性の官能基と連結基とを含んで構成された置換基であってもよい。
本発明における重合性の官能基としては、通常用いられる重合性官能基を特に制限なく用いることができ、例えば、エチレン性不飽和結合を有する基、アジド基等を挙げることができる。本発明においては、親水性領域のパターン形成性の観点から、エチレン性不飽和結合を有する基及びアジド基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アジド基であることがより好ましい。
【0025】
また前記重合性置換基における連結基としては重合性の官能基とポリアルキレングリコール基とを連結可能な基であれば特に制限はなく、例えば、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ジスルフィド及び水素原子から選ばれる少なくとも1種を含んで構成することができる。
具体的には例えば、カルボニル基、アリーレン基、アルキレンカルボニル基、カルボニルアリーレン基、カルバモイルアリーレン基等を挙げることができる。
更に連結基の価数としては少なくとも2価であればよく、3価以上の連結基であってポリアルキレングリコールと2以上の重合性官能基とを連結する連結基であってもよい。
【0026】
末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基を構成するポリアルキレングリコール基は、本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体に親水性を付与可能なポリアルキレングリコール基であれば特に制限はない。例えば、炭素数2~4のアルキレングリコール構造単位(例えば、エチレンオキシ、n-プロピレンオキシ、イソプロピレンオキシ、ブチレンオキシ、イソブチレンオキシ等)を含むポリアルキレングリコール基を好ましく用いることができる。
【0027】
前記ポリアルキレングリコール基におけるアルキレングリコール構造単位は、1種のアルキレングリコール構造単位からなるものであっても、2種以上アルキレングリコール構造単位の組合せからなるものであってもよい。ポリアルキレングリコール基が2種以上のアルキレングリコール構造単位の組合せからなる場合、ブロックポリマーであってもランダムポリマーであってもよい。
また、ポリアルキレングリコール基の重合度としては、親水性の観点から5以上であればよく、5~1000の重合度を有するポリアルキレングリコール基を好ましく用いることができ、より好ましくは10~500である。
【0028】
本発明における、末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基と結合する3価以上の連結基は、少なくとも3つの前記ポリアルキレングリコール基における重合性置換基が結合していない方の末端と結合し、前記ポリアルキレングリコール基を互いに連結可能なものであれば特に制限はない。結合様式としては共有結合、配位結合、イオン結合のいずれであってもよい。
具体的には例えば、糖類に由来する連結基、多価アルコールに由来する連結基、多価カルボン酸に由来する連結基、配位結合を介して前記ポリアルキレングリコール基を含む基を結合可能な金属原子等を挙げることができる。
【0029】
前記糖類としては、例えば、グリセルアルデヒド、エリトロース、リボース、グルコース等を挙げることができる。また、多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール等を挙げることができる。更に、多価カルボン酸としては、プロパントリカルボン酸、クエン酸、ベンゼントリカルボン酸等を挙げることができる。また、前記金属原子としては、金、銀、白金、ニッケル、銅等を挙げることができる。
【0030】
本発明においては、親水性と経時安定性の観点から、多価アルコールに由来する連結基であることが好ましく、グリセリンに由来する連結基又はペンタエリスリトールに由来する連結基がより好ましく、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、及びポリペンタエリスリトールから選ばれる化合物に由来する連結基であることが特に好ましい。
【0031】
本発明における末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基は、経時安定性と良好なスフェロイド形成性の観点から、下記一般式(1)で表される置換ポリアルキレングリコール基であることが好ましい。
【0032】
【化5】
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【0033】
一般式(1)中、mは2~4の整数を表すが、2又は3であることが好ましく、2であることがより好ましい。またnは5~1000の整数を表すが、10~500であることが好ましく、10~300であることがより好ましい。
【0034】
一般式(1)中、Xは重合性置換基を表す。本発明において前記重合性置換基は、本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体の架橋硬化性の観点から、下記一般式(3)及び一般式(4)の少なくとも1種で表される重合性置換基であることが好ましい。
【0035】
【化6】
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【0036】
一般式(3)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。前記2価の連結基としてはエチレン性不飽和基とポリアルキレングリコール基とを連結可能であれば特に制限はない。例えば、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、酸素原子、窒素原子、イミノ基、及び水素原子の少なくとも1種を含んで構成される2価の連結基を挙げることができ、カルボニル基、エステル基、アミド基、フェニレン基、炭素数2~4のアルキレン基、から選ばれる2価の連結基又はこれらの組合せからなる2価の連結基であることが好ましい。
本発明においてLは、単結合、又は、カルボニル基、カルボニルフェニレン基、カルバモイルフェニレン基から選ばれる2価の連結基であることがより好ましい。
【0037】
また、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。炭素数1~3のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基を挙げることができる。本発明においては、分岐ポリアルキレングリコール誘導体の架橋反応性の観点から、Rは水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0038】
一般式(4)におけるLは2価の連結基を表すが、その定義及びその好ましい範囲は前記Lにおける2価の連結基と同様である。
【0039】
また本発明においては、前記重合性置換基の少なくとも1つは下記一般式(5)で表される置換基であることが好ましい。これにより、重合性置換基の反応開始がより長波長の光照射によって可能となる。
【0040】
【化7】
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【0041】
一般式(5)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。Lで表される2価の連結基は、前記Lにおける2価の連結基と同様である。
また、iは1又は2を表す。
【0042】
一般式(5)中、Rは置換基を表すが、一般式(5)で表される重合性置換基の極大吸収波長を変化させることができる置換基であれば特に制限はない。中でも一般式(5)で表される重合性置換基の極大吸収波長を長波長側にシフト可能な置換基であることが好ましい。具体的には例えば、ニトロ基、水酸基、アルキルオキシ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、ニトロソ基等を好適に挙げることができる。
iが2の場合、2つのRは同一でも異なっていてもよい。
【0043】
また、本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体は、親水性と架橋反応性の観点から、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0044】
【化8】
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【0045】
一般式(2)中、Lは単結合又はメチレン基を表し、pは1又は2を表す。pが1のときLは単結合であることが好ましく、pが2のときLはメチレン基であることが好ましい。
qは1~70の整数を表す。本発明においては、親水性と架橋反応性の観点から、pが1のとき、qは1~64であることが好ましく、2~10であることがより好ましい。またpが2のとき、qは1~32であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。
【0046】
一般式(2)中、Rは末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基又は末端に水酸基を有するポリアルキレングリコール基を表す。中でも架橋反応性の観点から、Rは末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基であることが好ましく、前記一般式(1)で表される置換ポリアルキレングリコール基であることがより好ましい。
【0047】
本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体は、経時安定性とスフェロイド形成性の観点から、末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基を4以上16以下有し、前記ポリアルキレングリコール基が前記一般式(1)で表されるものであって、前記重合性置換基が前記一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)の少なくとも1種で表されるものであることが好ましい。
【0048】
本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体の具体例を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、下記具体例中のポリアルキレングリコールの重合度(n)は分岐ポリアルキレングリコール誘導体の重量平均分子量から算出される平均重合度を意味する。また、分岐ポリアルキレングリコール誘導体の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0049】
【化9】
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【0050】
【化10】
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【0051】
【化11】
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【0052】
本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体は、例えば、3以上のポリエチレングリコール基を有する化合物(以下、「マルチアームPEG」ということがある。例えば、日油(株)製、SUNBRIGHT(登録商標)PTEシリーズ、HGEOシリーズ等)の末端水酸基に対して、重合性置換基を、通常用いられる方法を用いてエステル結合、エーテル結合等で結合することによって合成することができる。例えば、エステル結合の形成は酸塩化物法、活性エステル法等で行うことができる。
【0053】
本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体は、例えば、後述の感光性組成物の成分とすることができる。また、架橋反応により親水性の架橋体を形成することができる。
【0054】
本発明の感光性組成物は、前記分岐ポリアルキレングリコール誘導体の少なくとも1種を含有することを特徴とする。本発明の感光性組成物を用いることで、例えば、基材上に高精度に区画化された親水性領域と疎水性領域とを形成することができる。
本発明の感光性組成物においては、前記分岐ポリアルキレングリコール誘導体を1種単独で含有することもできるし、2種以上を含有することもできる。
また本発明の感光性組成物は、前記分岐ポリアルキレングリコール誘導体に加えて、光重合開始剤、溶剤、細胞培養液、界面活性剤、緩衝液、消泡剤、防腐剤等の各種の添加剤等を含んで構成することができる。
【0055】
前記光重合開始剤としては、光照射によって重合反応を開始可能なものであれば特に制限はないが、生細胞に対する障害性が低いものであることが好ましい。具体的には、例えば、IRGACURE 2959、IRGACURE 184(いずれもチバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)等を挙げることができ、細胞毒性と水溶性の点からIRGACURE 2959が好ましい。
【0056】
前記溶剤としては、前記分岐ポリアルキレングリコール誘導体を溶解可能であれば特に制限はない。ここでいう溶解可能とは前記分岐ポリアルキレングリコール誘導体を質量基準で0.1%以上溶解できることをいう。
前記溶剤として具体的には、ベンゼン、トルエン、THF、DMF、クロロホルム等の有機溶媒、及び水を好ましく用いることができる。また、溶剤は1種単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
本発明の感光性組成物における前記分岐ポリアルキレングリコール誘導体の含有率としては、例えば0.1~50質量%とすることができ、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0058】
本発明の架橋体は、前記感光性組成物を架橋硬化させて形成されたものである。前記架橋硬化は光照射による重合反応に起因するものであれば特に制限はなく、感光性組成物に応じて適宜架橋硬化条件を選択することができる。
【0059】
本発明の架橋体は、例えば、基材上に形成された前記感光性組成物からなる観光性組成物層を硬化させたものであっても、媒体中で分散状態とした前記感光性組成物を硬化させたものであってもよい。基材上に形成された前記感光性組成物層を硬化させることで、基材上に架橋体からなる親水性領域を形成することができる。また、媒体中で分散状態とした前記感光性組成物を硬化させることで、親水性表面を有する粒子状の架橋体を形成することができる。
【0060】
本発明の基板は、基材と、前記基材上に配置された前記架橋体とを含むことを特徴とする。本発明における基材としては、通常用いられる基材を特に制限なく用いることができる。基材の材質としては、例えば、ガラス、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、シリコーン、ダイヤモンド、金属、及びセラミックス等を挙げることができる。本発明においては、基材と架橋体との接着性の観点から、ガラス又は熱可塑性樹脂であることが好ましく、ガラスであることがより好ましい。
【0061】
また本発明における基材は、アミノ基を有するシランカップリング剤、エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤、及びポリリジンから選ばれる少なくとも1種で表面処理された基材であることが好ましい。これにより、基材とその上に形成された架橋体との結合安定性を向上させることができる。
また、前記基材は、細胞接着性タンパク質の少なくとも1種で表面処理された基材であることもまた好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤、エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤、及びポリリジンから選ばれる少なくとも1種で表面処理された基材を、細胞接着性タンパク質の少なくとも1種で更に表面処理した基材であることがより好ましい。
表面処理された基材を用いて、基板を構成することにより、例えば、基板上で細胞を培養する場合に、より効率的に細胞集合体を形成することができる。
ここで、細胞接着性タンパク質としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、テイネシン及びエラスチン等を挙げることができ、中でも、細胞集合体の形成性の観点から、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチンが好ましく、コラーゲン、ゼラチンがより好ましい。
【0062】
本発明の基板を作製する方法は、例えば、基材上に前記分岐ポリアルキレングリコール誘導体を含む感光性組成物を付与して感光性組成物層を形成する工程と、前記感光性組成物層を、露光処理する硬化工程とを含むことができる。これにより、基材上に、前記架橋体が形成された基板を作製することができる。
本発明の基板を作製する方法は、必要に応じて、前記硬化工程後に加熱工程、洗浄工程、乾燥工程、滅菌工程等を更に含むことができる。
【0063】
本発明において、基材上に感光性組成物層を形成する工程には、特に制限なく通常の薄膜形成方法を適用することができ、例えば、塗布法、ディップコート法、スピンコート法等を好適に適用することができる。
基材上に形成された感光性組成物層の層厚としては、特に制限はなく基板の使用目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5nm~1000μmとすることができる。特に、本発明の基板を後述の細胞培養基板として使用する場合には、10nm~1000nmとすることが好ましく、10nm~500nmであることがより好ましい。
【0064】
前記基材上に感光性組成物層を形成する工程は、必要に応じて、感光性組成物中の溶剤を除去する工程を含むことができる。前記溶剤を除去する工程としては、前記溶剤に応じて適宜その条件を選択することができ、常温乾燥であっても、加熱乾燥であってもよい。例えば、30℃~150℃で1分~10時間とすることができ、好ましくは35℃~120℃で3分~1時間である。
【0065】
前記硬化工程における露光処理は、前記感光性組成物層を全面露光する工程であっても、所望のパターン様に部分露光する工程であってもよい。本発明においては、所望のパターン様に部分露光する工程であることが好ましく、前記部分露光する工程後に更に現像工程を含むことがより好ましい。これにより、前記架橋体からなる親水性領域と架橋体が形成されていない疎水性領域とが、パターン様に基材上に形成された基板を作製することができる。
【0066】
前記所望のパターン様に部分露光する工程は、所望のパターン様に光透過性を有するマスク(フォトマスク)を介して、部分露光する工程であることが好ましい。また、前記マスクを感光性組成物層に密着させて部分露光を行うことにより、より高精度でパターン様に露光することができる。
【0067】
露光に用いる光源としては、前記感光性組成物層を硬化可能な光源であれば特に制限はない。光源として例えば、X線、電子線、エキシマレーザー、キセノンランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ及び高圧水銀ランプ等を挙げることができる。中でも低圧又は高圧水銀ランプを好適に用いることができ、10W~2000Wの高圧水銀ランプであることが好ましい。
また露光波長及び露光量についても特に制限はなく、前記感光性組成物に応じて適宜選択することができる。露光波長としては、例えば200nm~400nmとすることができ、280nm~400nmであることが好ましい。露光量としては、例えば、0.1mJ/cm~1000mJ/cmとすることができ、1mJ/cm~200mJ/cmであることが好ましく、10mJ/cm~20mJ/cmであることがより好ましい。
【0068】
前記現像工程は、前記感光性組成物層における未露光領域を基材上から除去できる方法であれば特に制限はなく、例えば、溶剤を用いた洗浄、及び溶剤への浸漬等を挙げることができ、本発明においては、溶剤として水を用いる洗浄及び水への浸漬であることが好ましい。
【0069】
本発明の基板は、例えば、架橋体からなる親水性領域と、基材が露出した疎水性領域とが区画化(パターニング)されて基材上に形成された基板として作製することにより、細胞培養基板として好適に用いることができる。すなわち、前記疎水性領域にのみ細胞が配置され、前記親水性領域には細胞が接着しないことにより、所望のパターン様に細胞が配置可能な細胞培養基板とすることができる。
【0070】
本発明の基板を細胞培養用基板として用いる方法としては、通常の細胞培養方法を制限なく適用することができる。例えば、本発明の基板上に細胞培養培地を配置し、前記細胞培養培地へ所望の細胞を播種した後、所望の細胞に応じて選択される培養条件を適用することで、基板上の疎水性領域に所望の細胞を選択的に配置することができる。
【0071】
本発明における前記細胞は、接着性細胞であれば、種および由来組織は特に限定されない。例えば、生体より採取した直後の細胞および癌化した樹立細胞系等を挙げることができ、好ましくは特定の臓器の機能発現および病態に関連する細胞である。より具体的には、薬物代謝に関連する肝実質細胞、血糖値制御に関連する膵臓β細胞、骨再生に関連する骨芽細胞、軟骨細胞、神経伝達にかかわる神経幹細胞、発毛に関連する毛母細胞、がん細胞、繊維芽細胞、および様々な細胞へ分化誘導できる胚性幹細胞、及び間葉系幹細胞等を挙げることができる。またこれら細胞と相互作用する非実質細胞も用いることができる。
また本発明においては、前記疎水性領域に配置された細胞は、単層を形成していてもよく、また、細胞凝集塊(スフェロイド)を形成していてもよい。
【0072】
各種細胞の通常の細胞培養培地としては、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、Mem-α、RPMI1640等を挙げることができ、培養対象となる細胞種に応じて適宜選択される。またこれらの培地に対しては、必要に応じて、血清、各種ビタミン、各種抗生物質等、通常の細胞培養に適用可能な各種添加剤を添加してもよい。これらの添加剤の濃度は通常用いられる濃度であればよく、例えば、血清は培地量の5~10容量%とすることができる。
また各種細胞の培養条件は、細胞に応じて適宜選択できるが、例えば、5%CO、37℃とすることができる。
【0073】
本発明における親水性領域及び疎水性領域の形状には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、疎水性領域を円状、三角形をはじめとする多角形状、楕円状、ストライプ状等に形成することができる。また親水性領域及び疎水性領域の大きさについても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0074】
例えば、本発明の基板を前記細胞培養基板として使用する場合、疎水性領域を円状に形成した場合の大きさとしては、直径として5μm~1000μmとすることが好ましく、50μm~500μmとすることがより好ましい。また、隣接する疎水性領域を隔てる親水性領域の幅としては、50μm~500μmであることが好ましく、100μm~200μmであることがより好ましい。更に前記親水性領域における層の厚みとしては、10nm~1000nmであることが好ましく10nm~500nmであることがより好ましい。
本発明における親水性領域及び疎水性領域の形状及び大きさは、上述の硬化工程における露光処理を、マスクを介した露光処理とすることで、容易にかつ高い精度で制御することができる。
【0075】
本発明の基板は、特にスフェロイド形成用の細胞培養用基板として好適に用いることができる。本発明の基板は、前記分岐ポリアルキレングリコール誘導体からなる親水性領域を有するため、高精度にパターニングされた疎水性領域を形成することができる。また、前記親水性領域は細胞非接着性の経時安定性が極めて良好であり、長期間にわたって良好な機能性を示すスフェロイドを維持することが可能となる。すなわち、スフェロイドを形成する各実質細胞に特異的な機能が維持されうる。例えば、肝細胞にあっては高レベルの肝細胞機能(例えば、高レベルのアルブミン産生能、薬物代謝活性)、膵β細胞にあってはインスリン分泌機能、心筋細胞にあっては拍動運動機能等が長期間にわたって維持される。
このようなスフェロイドが形成された基板は、例えば、各種細胞に影響を及ぼし得る環境又は物質のスクリーニングに用いることができる。各種細胞に対する影響は、スフェロイドの形態の変化や産生物(例えば、肝細胞におけるアルブミン、モデル薬物の代謝生成物等)の産生能の変化をモニターすることで評価することができる。
【0076】
本発明の基板においては、前記親水性領域を、分岐ポリアルキレングリコール誘導体として、末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基を4以上有する化合物を用いて形成することで、形成されたスフェロイドの経時安定性が顕著に向上する。
【0077】
本発明の基板をスフェロイド形成用基板として使用する場合、疎水性領域を例えば、円状に形成した場合の大きさとしては、直径として5μm~1000μmとすることが好ましく、50μm~500μmとすることがより好ましい。また、隣接する疎水性領域を隔てる親水性領域の幅としては、50μm~500μmであることが好ましく、100μm~200μmであることがより好ましい。また親水性領域における層の厚みとしては10nm~1000nmであることが好ましく10nm~500nmがより好ましい。
親水性領域と疎水性領域とを前記大きさで構成することにより、機能性の高いスフェロイドをより効率的に作成することができ、更により長期に渡って維持することが可能となる。
【0078】
本発明の基板をスフェロイド形成用基板として用いる場合、前記疎水性領域に予めフィーダー細胞を配置することが好ましい。すなわち本発明においては、本発明の基板上の疎水性領域にフィーダー細胞層を形成し、形成されたフィーダー細胞層上で、該細胞層を形成する細胞とは異なる細胞、好ましくは実質細胞を培養することが好ましい。
予めフィーダー細胞層を形成することで、実質細胞のスフェロイド形成がより効率的に進行する。前記フィーダー細胞は、スフェロイドを形成させる細胞に応じて適宜選択することができる。例えば、肝細胞や軟骨細胞のスフェロイドを形成する場合には、フィーダー細胞としてCOS-1細胞、血管内皮細胞(例えば、大日本製薬製「ヒト臍帯静脈血管内皮細胞」)、繊維芽細胞等を好適に用いることができる。
【0079】
また、本発明の基板上でスフェロイドを形成する場合、通常の培養条件で数十分~48時間程度培養を行うことでスフェロイドを形成することができる。更に培地中の細胞の播種濃度としては例えば、1×10~1×10cells/mLとすることができ、1×10~1×10cells/mLであることが好ましい。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り「%」は質量基準であり、平均分子量は重量平均分子量である。
【0081】
(実施例1)
~分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PA20K)の合成~
4-アジド-安息香酸12g(93.6mmol)を40mLの塩化チオニルに溶解し、1.5時間、加熱還流した。反応混合物を減圧で濃縮、少量のヘキサンを加えて再度減圧で濃縮した後、真空下で乾燥し、白色固体として目的物の4-アジド-安息香酸クロリド9.3g(51.2mmol、収率70%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.11-8.15 (2H, m), 7.11-7.16 (2H, m).
【0082】
次に、3mLのジクロロメタン(脱水)に、トリエチルアミン81mg(0.8mmol)、4-ジメチルアミノピリジン147mg(1.2mol)を加え、氷浴で冷却しながら攪拌した。この溶液に、上記で得られた4-アジド-安息香酸クロリド363mg(2.0mmol、マルチアームPEGの末端OH基に対して5モル当量)のジクロロメタン(脱水)溶液(5mL)を滴下し、そのまま5分攪拌を続けた後、反応容器を遮光し、マルチアームPEG(日油(株)製SUNBRIGHT(登録商標) PTE-20000、4つのポリエチレングリコール基を有するペンタエリスリトール誘導体)2g(0.1mmol)のジクロロメタン(脱水)溶液(20mL)をゆっくり滴下した。反応溶液を氷浴からはずし、そのまま室温で18時間攪拌した。反応混合物を減圧で濃縮し、ベンゼンを加えて懸濁させたものをろ過して塩を除いた後、再び減圧で濃縮した。粗生成物を少量のベンゼンに溶解し、0℃に冷却したイソプロピルエーテルに滴下して得られた沈殿を濾取する工程を3回繰り返して、得られた白色固体を減圧下で乾燥し、目的物とする分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PA20K)1.74g(収率85%)を得た。
H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
【0083】
(実施例2)
実施例1において、マルチアームPEGとしてPTE-20000の代わりに下記表1に示したマルチアームPEGを用いた以外は、実施例1と同様にして分岐ポリアルキレングリコール誘導体を合成した。収率、性状等を表1に示した。
【0084】
【表1】
JP0005388126B2_000013t.gif

【0085】
(実施例3)
実施例1において、マルチアームPEGとしてPTE-20000の代わりに下記表2に示したマルチアームPEGを用いた以外は、実施例1と同様にして分岐ポリアルキレングリコール誘導体を合成した。収率、性状等を表2に示した。
【0086】
【表2】
JP0005388126B2_000014t.gif

【0087】
(比較例1)
実施例1において、マルチアームPEGとしてPTE-20000の代わりに下記表3に示したマルチアームPEGを用いた以外は、実施例1と同様にして分岐ポリアルキレングリコール誘導体を合成した。収率、性状等を表3に示した。
【0088】
【表3】
JP0005388126B2_000015t.gif

【0089】
(実施例4)
5-アミノ-サリチル酸15.3g(0.1mol)を蒸留水80mLと濃塩酸20mLの混合溶液に懸濁させ、室温で30分攪拌した。混合溶液を氷浴中で冷却した後、亜硝酸ナトリウム6.9g(0.1mol)の水溶液10mLを溶液の反応液の液温が5℃を超えないような速度で滴下し、そのまま1時間攪拌した。続いて、アジ化ナトリウム7.15 g(0.11mol)の水溶液30mLを反応液の液温が10℃を超えない速度で滴下した。氷浴を外して室温に戻しつつ、気泡が発生しなくなるまで激しく攪拌した。生成した沈殿を濾取し、さらに沈殿を蒸留水で洗浄した。得られた固体は、暗所で風乾した後、減圧下で完全に乾燥し、5-アジド-サリチル酸を白色固体として12.0g(67.0mmol、収率=67%)得た。
5-アジド-サリチル酸及び4-アジド安息香酸の紫外吸収スペクトルを図1に示した。溶媒として光学分析用メタノールを用いて、濃度は1μmol/Lとして測定した。また併せて365nmにおける吸光度を表4に示した。
1H-NMR(DMSO-d6) δ: 11.14(1H, bs), 7.41 (1H, d, J = 3.0 Hz), 6.88 (1H, dd, J = 8.5, 3.0 Hz), 6.68 (1H, d, J = 8.4 Hz).
【0090】
得られた5-アジド-サリチル酸5g(27.9mmol)を塩化チオニル50mLに懸濁し、70℃で1時間攪拌した。反応混合物を室温まで放冷し、過剰の塩化チオニルを減圧で除き、5-アジド-サリチル酸クロリドの赤色固体を定量的に得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 7.39 (1H, d, J = 2.9 Hz), 7.26 (1H, dd, J = 8.8, 2.9 Hz), 7.00 (1H, d, J = 8.8 Hz).
【0091】
【表4】
JP0005388126B2_000016t.gif

【0092】
次に、3mLのジクロロメタン(脱水)に、トリエチルアミン81mg(0.8mmol)、ジメチルアミノピリジン147mg(1.2mol)を加え、氷浴で冷却しながら攪拌した。この溶液に、上記で得られた5-アジド-サリチル酸クロリド358mg(2mmol、マルチアームPEGの末端OH基に対して5モル当量)のジクロロメタン(脱水)溶液(5mL)を滴下し、そのまま5分攪拌を続けた後、反応容器を遮光し、マルチアームPEG(日油(株)製SUNBRIGHT(登録商標) PTE-20000、4つのポリエチレングリコール基を有する化合物)2g(0.1mmol)のジクロロメタン(脱水)溶液(20mL)をゆっくり滴下した。反応溶液を氷浴からはずし、そのまま室温で18時間攪拌した。反応混合物を減圧で濃縮し、ベンゼンを加えて懸濁させたものをろ過して塩を除いた後、再び減圧で濃縮した。粗生成物を少量のベンゼンに溶解し、0℃に冷却したイソプロピルエーテルに滴下して得られた沈殿を濾取する工程を3回繰り返して、得られた白色固体を減圧下で乾燥し、目的物とする分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PB20K)1.77g(収率85%)を得た。
H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
【0093】
(実施例5)
実施例4において、マルチアームPEGとしてPTE-20000の代わりにHGEO-20000(日油(株)製、8つのポリエチレングリコール基を有するヘキサグリセリン誘導体)を用いた以外は実施例4と同様にして、目的物とする分岐ポリアルキレングリコール誘導体(8PB20K)1.72g(収率85%)を得た。
H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
【0094】
(実施例6)
5-アミノ-2-ニトロ安息香酸18.1g(0.1mol)を蒸留水80mLと濃塩酸20mLの混合溶液に懸濁させ、室温で30分攪拌した。混合溶液を氷浴中で冷却した後、亜硝酸ナトリウム6.9g(0.1mol)の水溶液10mLを溶液の反応液の液温が5℃を超えないような速度で滴下し、そのまま1時間攪拌した。続いて、アジ化ナトリウム7.15 g(0.11mol)の水溶液30mLを反応液の液温が10℃を超えない速度で滴下した。氷浴を外して室温に戻しつつ、気泡が発生しなくなるまで激しく攪拌した。生成した沈殿を濾取し、さらに沈殿を蒸留水で洗浄した。得られた固体は、暗所で風乾した後、減圧下で完全に乾燥し、5-アジド-2-ニトロ安息香酸を白色固体として19.2g(92.4mmol、収率=92%)を得た。
5-アジド-2-ニトロ安息香酸の紫外吸収スペクトルを図1に示した。溶媒として光学分析用メタノールを用いて、濃度は1μmol/Lとして測定した。また併せて365nmにおける吸光度を表4に示した
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 13.99(1H, bs), 8.09-8.06 (1H, m), 7.45-7.42 (2H, m).
【0095】
得られた5-アジド-2-ニトロ安息香酸1.0g(4.8mmol)を塩化チオニル10mLに懸濁し、70℃で1時間攪拌した。反応混合物を室温まで放冷し、過剰の塩化チオニルを減圧で除き、5-アジド-サリチル酸クロリドの赤色固体を定量的に得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 8.10-8.07 (1H, m), 7.46-7.42 (2H, m).
【0096】
次に、3mLのジクロロメタン(脱水)に、トリエチルアミン81mg(0.8mmol)、ジメチルアミノピリジン147mg(1.2mol)を加え、氷浴で冷却しながら攪拌した。この溶液に、上記で得られた5-アジド-2-ニトロ安息香酸クロリド417mg(2mmol、マルチアームPEGの末端OH基に対して5モル当量)のジクロロメタン(脱水)溶液(5mL)を滴下し、そのまま5分攪拌を続けた後、反応容器を遮光し、マルチアームPEG(日油(株)製SUNBRIGHT(登録商標) PTE-20000、4つのポリエチレングリコール基を有する化合物)2g(0.1mmol)のジクロロメタン(脱水)溶液(20mL)をゆっくり滴下した。反応溶液を氷浴からはずし、そのまま室温で18時間攪拌した。反応混合物を減圧で濃縮し、ベンゼンを加えて懸濁させたものをろ過して塩を除いた後、再び減圧で濃縮した。粗生成物を少量のベンゼンに溶解し、0℃に冷却したイソプロピルエーテルに滴下して得られた沈殿を濾取する工程を3回繰り返して、得られた白色固体を減圧下で乾燥し、目的物とする分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PC20K)1.81(収率85%)を得た。
H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
【0097】
(実施例7)
実施例6において、マルチアームPEGとしてPTE-20000の代わりにHGEO-20000(日油(株)製、8つのポリエチレングリコール基を有するヘキサグリセリン誘導体)を用いた以外は実施例6と同様にして、目的物とする分岐ポリアルキレングリコール誘導体(8PC20K)1.71g(収率85%)を得た。
H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
【0098】
(実施例8)
アクリロイルクロリド181mg(2.0mmol、マルチアームPEGの末端OH基に対して5モル当量)のベンゼン(脱水)溶液(5mL)を滴下し、そのまま5分攪拌を続けた後、反応容器を遮光し、マルチアームPEG(日油(株)製SUNBRIGHT(登録商標) PTE-20000、4つのポリエチレングリコール基を有するペンタエリスリトール誘導体)2g(0.1mmol)のベンゼン(脱水)溶液(20mL)をゆっくり滴下した。反応溶液を氷浴からはずし、そのまま室温で18時間攪拌した。反応混合物を減圧で濃縮し、ベンゼンを加えて懸濁させたものをろ過して塩を除いた後、再び減圧で濃縮した。粗生成物を少量のベンゼンに溶解し、0℃に冷却したイソプロピルエーテルに滴下して得られた沈殿を濾取する工程を3回繰り返して、得られた白色固体を減圧下で乾燥し、目的物とする分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PD20K)1.74g(収率85%)を得た。
H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
【0099】
(実施例9)
実施例8において、マルチアームPEGとしてPTE-20000の代わりに、HGEO-20000(日油(株)製、8つのポリエチレングリコール基を有するヘキサグリセリン誘導体)を用いた以外は、実施例8と同様にして、目的物とする分岐ポリアルキレングリコール誘導体(8PD20K)1.74g(収率85%)を得た。
H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
【0100】
(実施例10)
以下の作業は、すべてイエロールーム内で行った。
実施例1で作製した分岐ポリアルキレングリコール誘導体(マルチアームPEG-アジド:4PA20K)をトルエンに溶解し、感光性組成物Aとして4PA20Kのトルエン溶液(1%)を調製した。基材としてポリ-L-リジンコートスライドガラス(松浪硝子工業(株)製。白切放NO.1スライドガラス丸型21mmΦ。以下「PLLコートガラス」と略す)を使用し、PLLコートガラス上に、感光性組成物Aを110μL滴下後、スピンコート法(500rpm×5秒+3000rpm×20秒+6000rpm×1秒)により成膜し、常温で放置して乾燥させた。これに、石英ガラス製フォトマスク(直径100μmの円形パターンが多数配置されたもの)を密着させ、高圧水銀灯(200W)を用いて40秒間露光を行った後、脱イオン水で洗浄(現像工程:流水15秒間+浸漬20分間)した。常温で乾燥し、表面に微細加工された親水性の架橋体を有する基板を得た。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡(倍率×100)により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた(図2)。
【0101】
(実施例11)
実施例10において、基材としてPLLコートガラスに代えて、アミノプロピルシランコートガラス(松浪硝子工業(株)製。APSコートNO.1カバーガラス丸型21mmΦ。以下「APSコートガラス」と略す)を用いた以外は、実施例10と同様にして基板を作製し、表面に微細加工された親水性の架橋体を有する基板を得た。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
【0102】
(実施例12)
実施例10において、基材としてPLLコートガラスに代えて、MASコートガラス(松浪硝子工業(株)製)を用いた以外は、実施例10と同様にして基板を作製し、表面に微細加工された親水性の架橋体を有する基板を得た。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
【0103】
(実施例13)
実施例10において、基材としてPLLコートガラスに代えて、PLLコート上にコラーゲンをさらにコーティングした「コラーゲンコートガラス」を用いた以外は、実施例10と同様にして基板を作製し、表面に微細加工された親水性の架橋体を有する基板を得た。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡(倍率×100)により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
尚、コラーゲンコートガラスは、PLLコートガラス上にブタI型コラーゲン(日本ハム(株)製)の0.1%水溶液を400μL滴下し、スピンコート法(350rpm×5秒+500rpm×5秒+1000rpm×10秒+1500rpm×10秒+6000rpm×1秒)にて成膜した後、室温で乾燥する工程を2回繰り返して作製した。
【0104】
(実施例14)
実施例10において、基材としてPLLコートガラスに代えて、PLLコート上にゼラチンをさらにコーティングした「ゼラチンコートガラス」を用いた以外は、実施例10と同様にして基板を作製し、表面に微細加工された親水性の架橋体を有する基板を得た。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
尚、ゼラチンコートガラスは、PLLコートガラスを用い、ゼラチン(新田ゼラチン社製)の0.1%溶液を400μL滴下し、スピンコート法(350rpm×5秒+500rpm×5秒+1000rpm×10秒+1500rpm×10秒+6000rpm×1秒)にて成膜した後、室温で乾燥して作製した。
【0105】
(実施例15)
実施例13において、コラーゲンコートガラスの作製方法を、PLLコートガラスをブタI型コラーゲン(日本ハム(株)製)の0.02%水溶液に3時間浸漬後、脱イオン水の流水で洗浄、乾燥させる方法に変更した以外は、実施例13と同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
【0106】
(実施例16)
実施例13、実施例14、実施例15において、基材としてPLLコートガラスに代えて、APSコートガラスを用いた以外は、実施例13、実施例14、実施例15とそれぞれ同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、いずれの基板においても良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
【0107】
(実施例17)
実施例13、実施例14、実施例15において、基材としてPLLコートガラスに代えて、MASコートガラスを用いた以外は、実施例13、実施例14、実施例15とそれぞれ同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、いずれの基板においても良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
【0108】
(実施例18)
実施例10において、露光時間を10秒に変更した以外は、実施例10と同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
【0109】
(実施例19)
実施例10において、感光性組成物Aに代えて、マルチアームPEG-アジド(4PA20K)の濃度を0.5%とした感光性組成物Bを用いた以外は、実施例7と同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
【0110】
(実施例20)
実施例10において、分岐ポリアルキレングリコール誘導体として4PA20Kに代えて、実施例2、実施例3、及び実施例4~7で合成した各種の分岐ポリアルキレングリコール誘導体を用いた以外は実施例10と同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
【0111】
(実施例21)
実施例10において、分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PA20K)に代えて、実施例6で合成した分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PC20K)を用い、露光条件として高圧水銀灯(200W)で3秒間とした以外は、実施例10と同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡(倍率×100)により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
【0112】
(実施例22)
実施例10において、分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PA20K)に代えて、実施例6で合成した分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PC20K)を用い、露光条件をフォトマスク上にフィルター(シグマ光機(株)製、UTVAF36U)を配置して、高圧水銀灯(200W)で10秒間の露光とした以外は、実施例10と同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡(倍率×100)により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
【0113】
(実施例23)
実施例11~17において、分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PA20K)に代えて、実施例4で合成した分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PB20K)又は実施例6で合成した分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PC20K)を用い、露光条件をフォトマスク上にフィルター(シグマ光機(株)製、UTVAF36U)を配置して、高圧水銀灯(200W)で10秒間の露光とした以外は、実施例11~17とそれぞれ同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
【0114】
(実施例24)
実施例8及び実施例9で作製した分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PD20K、8PD20K)の濃度が1%であって、光重合開始剤としてIRGACURE2959の濃度が0.05%となるようにトルエンに溶解して、感光性組成物Dを調製した。基材としてポリ-L-リジンコートスライドガラス(松浪硝子工業(株)製。白切放NO.1スライドガラス丸型21mmΦ。以下「PLLコートガラス」と略す)を使用し、PLLコートガラス上に、感光性組成物Dを110μL滴下後、スピンコート法(500rpm×5秒+3000rpm×20秒+6000rpm×1秒)により成膜し、常温で放置して乾燥させた。これに、石英ガラス製フォトマスク(直径100μmの円形パターンが多数配置されたもの)を密着させ、高圧水銀灯(200W)を用いて40秒間露光を行った後、脱イオン水で洗浄(現像工程:流水15秒間+浸漬20分間)した。常温で乾燥し、表面に微細加工された親水性の架橋体を有する基板を得た。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡(倍率×100)により観察したところ、いずれの分岐ポリアルキレングリコール誘導体を用いた場合にも、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
【0115】
(実施例25)
~基板の滅菌作業~
実施例10~12、18~24で作製した基板(表面にコラーゲンコート又はゼラチンコートを施さなかった基板)については、オートクレーブ(121℃、20分)による滅菌作業を行った。
また実施例13~17で作製した基板(表面にコラーゲンコート又はゼラチンコートを施しているもの)に関しては、クリーンベンチに設置されているUVランプを15分間照射し、滅菌作業を行った。
【0116】
~スフェロイド形成~
実施例10~24において作製した後、滅菌作業を行った基板を、FALCON社製12ウェルプレート底面にセットし、培地としてDMEMを添加し、ウシ関節軟骨細胞(コンドロサイト)を細胞濃度5×10cells/mL(2mL/well)にて播種した。培養条件5%CO、37℃で培養したところ、いずれの実施例で作製した基板を用いた場合においても、24時間以内に基材上に形成した疎水性領域に対応するパターン状に並んだ軟骨細胞の細胞塊(スフェロイド)が得られた。代表的な顕微鏡写真(倍率×40)を図3に示した。
【0117】
(実施例26)
実施例25と同様にして滅菌作業を行った実施例10~24で作製した基板を、FALCON社製12ウェルプレート底面にセットし、培地としてDMEMを添加し、ウシ動脈血管内皮細胞(株名:HH)を細胞濃度5×10cells/mL(2mL/well)にて播種した。培養条件5%CO、37℃で24時間培養したところ、基材上に形成した疎水性領域に対応するパターン状に接着した血管内皮細胞集合体が確認できた(図4)。
続けて、初代肝実質細胞をラットから常法により採取し、細胞濃度5×10cells/mL(2mL/well)で播種した。5時間後に培地交換を行い、培養条件5%CO、37℃で24時間培養したところ、基材上に形成した疎水性領域に対応するパターン状に並んだ肝細胞の細胞塊(スフェロイド)が得られた。代表的な顕微鏡写真(倍率×40)を図5に示した。
【0118】
(実施例27)
~軟骨細胞スフェロイドアレイの染色~
通常のカルチャーディッシュで培養したウシ関節軟骨細胞(コンドロサイト)を2%トリプシン処理し、細胞懸濁液の状態でSIGMA社製PKH-26キットにて染色した。細胞懸濁液はPBS(-)またはタンパク質不含の培地で洗浄後、細胞数をカウントし、2×10cellsに調製した。これを遠心分離(400G、5分)し、上澄みを除去し、キット中のDiluentC 1mLにて分散させた。ここに4×10-6MのPKH-26染色液を調製して、細胞懸濁液に1mL加えた。これを室温で2~5分間静置することで反応させ、タンパク質含有の培地にて反応を止めた。この後、タンパク質含有の培地で3回の洗浄をし、実施例25と同様にして播種を行った。培養後24時間以内に基材上に形成した疎水性領域に対応するパターン状に並んだ軟骨細胞の細胞塊(スフェロイド)が得られた。これを蛍光顕微鏡(倍率×40)で観察したところ、スフェロイドが染色された状態で観察された。すなわち、スフェロイドは軟骨細胞によって形成されていた。
【0119】
(実施例28)
実施例10で作製した基板、実施例20において、分岐アルキレングリコール誘導体として4PA20K、4PB20K、4PC20K、8PA20K、8PB20K、及び8PC20Kを用いてそれぞれ作製した基板、並びに実施例24で作製した基板を用いて、実施例25と同様にしてスフェロイドを形成した。
得られたスフェロイドを、培養条件5%CO、37℃で培養を更に継続し、スフェロイドの状態を顕微鏡で観察した。
いずれの基板を用いた場合も、1日後~4週間後のいずれにおいても、区画化されたスフェロイドが維持されていた。また、スフェロイドを形成していない細胞は浮遊状態のままで、スフェロイド間の親水性領域への付着は観察されなかった。
代表的例として分岐アルキレングリコール誘導体として8PA20Kを用いた場合の顕微鏡写真として、1日後(図6、100倍)、3日後(図7、40倍)、4週間後(図8、40倍)をそれぞれ示した。
【0120】
(実施例29)
実施例20において、分岐アルキレングリコール誘導体として3PA5K、及び3PA20Kを用いてそれぞれ作製した基板を用いて、実施例25と同様にしてスフェロイドを形成した。
得られたスフェロイドを、培養条件5%CO、37℃で培養を更に継続し、スフェロイドの状態を顕微鏡で観察した。
3日後までは良好に区画化されたスフェロイドが維持されたが、4週間後にはスフェロイド間の親水性領域に付着した軟骨細胞が観察された。
【0121】
(比較例2)
実施例10において、分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PA20K)の代わりに、比較例1で合成したポリアルキレングリコール誘導体(2PA2K、及び2PA3K)を用いて、実施例10と同様にして基板を作製した。
次いで得られた基板を用いて実施例25と同様にして、スフェロイドを形成した。得られたスフェロイドを、培養条件5%CO、37℃で培養を更に継続し、スフェロイドの状態を顕微鏡で観察した。
1日後にはスフェロイド間の親水性領域に付着した軟骨細胞が観察され、区画化されたスフェロイドを維持することができなかった。
代表的例として分岐アルキレングリコール誘導体として2PA3Kを用いた場合の顕微鏡写真として、1日後(図9、100倍)、3日後(図10、40倍)、4週間後(図11、40倍)をそれぞれ示した。
【0122】
(実施例30)
実施例25において、コンドロサイトの代わりに下記表5に示した細胞種を用いて、実施例25と同様にしてスフェロイドを形成した。形成されたスフェロイドを下記評価基準に従って評価した。結果を表5に示した。
<評価基準>
+++ : 極良好
++ : 良好
+ : 普通
【0123】
【表5】
JP0005388126B2_000017t.gif

【0124】
上記の結果から、本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体を含む感光性組成物を用いることで、高精度にパターニングされた疎水性領域と親水性領域とを基材上に有する基板を形成できることがわかる。
また、本発明の基板を用いることで、高精度にパターニングされたスフェロイドを効率よく形成することができることが分かる。
更に、本発明の基板を用いることで、形成されたスフェロイドを長期に渡って経時安定的に維持することができることがわかる。特に、末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基を4以上有する分岐ポリアルキレングリコール誘導体を用いることで、形成されたスフェロイドの経時安定性が飛躍的に向上することが分かる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10